説明

蓄熱部材及びその製造方法

【課題】宇宙機に適用可能で、軽量且つ、安価な蓄熱部材を提供することを目的とする。
【解決手段】蓄熱部材は、多数のセルを有するハニカム構造体3を備え、各セル内に、蓄熱材が内包されたカプセルと、熱伝導フィラーと、が充填されてなる。ハニカム構造体3に蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導フィラーとを充填させることによって、蓄熱部材が厚い場合であっても熱伝導性の良い、軽量且つ、安価な蓄熱部材とすることができる。また、蓄熱部材は、蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導フィラーとを混合させた原料2を、ハニカム構造体3のセル開口部の少なくとも一方の面を覆うように接触配置させ、4MPa以上10MPa以下の圧力で一軸加圧成形することよって、セル内に、原料2を充填して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱部材に関し、特に、宇宙機に搭載された機器の熱制御のための蓄熱部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人口衛星やロケット等の宇宙機では、内部に設置された電子機器が発する熱を制御するため、電子機器と構造体との間に蓄熱部材を設置して、電子機器からの熱を吸収させる。蓄熱部材としては、従来、金属筺体の中に蓄熱材を充填したものが使用されている。
【0003】
住宅分野などでは、カプセル化させた蓄熱材を壁材や天井材などへ適用させ、蓄熱効果を持続させる試みがなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−348566号公報(請求項1、段落[0005]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から宇宙機で用いられている蓄熱部材は、金属筺体を使用するため、機器の形状に合わせて筺体を設計する必要がある。従って、機器に対して1点1様の筺体仕様が必要となり、製造コストが高くなる。筺体内部には、蓄熱材間の熱伝導性を得るために熱伝導フィンを数mm間隔で取り付けなければならず、更に製造コストが高くなる。
【0006】
宇宙機に適用される部材は、真空環境に曝される。従って、従来使用されている金属筺体は、内圧に耐え得るような構造としなくてはならず、質量が重くなる。
【0007】
一方、住宅用の蓄熱部材として、カプセル化させた蓄熱材をハニカムに充填した部材が知られている。上記ハニカムを用いた部材は、軽量であり、かつ、簡便に製造することができる。しかしながら、蓄熱部材の厚さを厚くすると、発熱体から遠い部分に位置する蓄熱部材まで熱が伝達し難くなるため、蓄熱効果が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、宇宙機に適用可能で、軽量且つ、安価な蓄熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、多数のセルを有するハニカム構造体を備え、各前記セル内に、蓄熱材が内包されたカプセルと、熱伝導フィラーと、が充填される蓄熱部材を提供する。
【0010】
本発明によれば、カプセル化した蓄熱材を適用することで、金属筺体を不要とすることができるため、蓄熱部材を軽量化することができる。
ハニカム構造体は、簡易な工具により形状を変化させ得るため、機器に合わせて容易に蓄熱部材の形状を変更することが可能となり、製造コストを低減することができる。
熱伝導フィラーは、バインダーであるとともに、カプセル化された蓄熱材間の熱伝導性を向上させる役割を担う。熱伝導フィラーを含有させることで、蓄熱部材の厚さが厚くなった場合であっても、蓄熱部材の厚さ方向に均一に熱を分散させることが可能となる。
【0011】
上記発明において、前記蓄熱材が内包されたカプセルの前記セル内への充填率が65%以上90%以下であることが好ましい。
蓄熱部材は、蓄熱材を多く含む方が、より蓄熱効果が高くなる。一方、蓄熱材が内包されたカプセルを充填しすぎると、カプセルが破壊されて、蓄熱材が露出する。それによって、蓄熱部材周辺が汚染される等の問題が生じる。蓄熱材が内包されたカプセルの前記セル内への充填率を上記範囲内とすることで、カプセルをあまり破壊させずに、より多くの蓄熱材を充填することができる。充填率は74%がより好ましい。そうすることで、カプセルを破壊させずに蓄熱材を最密充填することが可能となる。
【0012】
上記発明において、前記蓄熱材が内包されたカプセル100重量部に対して、前記熱伝導フィラーが10重量部以上45重量部以下の割合で含有されることが好ましい。
熱伝導フィラーが上記割合で配合されることによって、蓄熱部材の熱伝導性を向上させることができる。熱伝導フィラーの含有量が少ないと、蓄熱材が内包されたカプセルと混合した際の熱伝導フィラーの混合均一性が低下する。そのため、熱伝導フィラーは、蓄熱材が内包されたカプセル100重量部に対して20重量部以上45重量部以下の割合で含有されることが好ましく、25重量部以上45重量部以下の割合で含有されることが更に好ましい。
【0013】
本発明によれば、蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導フィラーとを混合させた原料を、ハニカム構造体のセル開口部の少なくとも一方の面を覆うように接触配置させ、4MPa以上10MPa以下の圧力で加圧成形することよって、前記セル内に、前記原料を充填する蓄熱部材の製造方法を提供する。
【0014】
上記範囲の圧力で加圧成形することによって、蓄熱材が内包されたカプセルをあまり破壊せずにセル内に充填することができる。成形時の圧力は、4MPa以上6MPa以下が更に好ましい。それによって、蓄熱材が内包されたカプセルを破壊させずにセル内に充填することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハニカム構造体に蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導フィラーとを充填させることによって、蓄熱部材が厚い場合であっても熱伝導性の良い、軽量且つ、安価な蓄熱部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】蓄熱部材の製造方法の手順を説明するための工程図である。
【図2】試験体Aにおける、成形圧力と蓄熱カプセル充填率との関係を示すグラフである。
【図3】試験体Bにおける、成形圧力と蓄熱カプセル充填率との関係を示すグラフである。
【図4】試験体A及び試験体Bの走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】試験体AFにおける、熱伝導フィラー含有量と蓄熱カプセル充填率との関係を示すグラフである。
【図6】試験体BFにおける、熱伝導フィラー含有量と蓄熱カプセル充填率との関係を示すグラフである。
【図7】試験体AFの熱伝導フィラー含有量と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【図8】試験体BFの熱伝導フィラー含有量と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【図9】温度分布測定装置の概略図である。
【図10】蓄熱部材の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る蓄熱部材の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る蓄熱部材は、ハニカム構造体のセル内に、蓄熱材が内包されたカプセルと、熱伝導フィラーとが充填された構成となっている。
【0018】
ハニカム構造体は、開孔を有するセル壁からなる構造体である。ハニカム構造体の材質、厚さ、サイズ、セル形状、及びセル径などは適宜選択される。ハニカム構造体は、軽量で、熱伝導性が良く、簡易な工具により形状を変化させ得るものであれば良く、更に壊れにくいことが好ましい。本実施形態おけるハニカム構造体は、アルミニウムを主とする金属からなる。なお、ハニカム構造体は、ステンレスなどを主としても良い。
【0019】
蓄熱材は、相転移にともなう潜熱を利用して蓄熱できる化合物を主とする。蓄熱材の融解熱量は、100kJ/kg〜200kJ/kg程度であることが好ましい。本実施形態における蓄熱材は、パラフィン系の化合物を主とするが、ステアリン酸、セチルアルコール、または水などであっても良い。
カプセルの膜材は、天然または合成の樹脂とする。本実施形態におけるカプセルの膜材は、メラミン系の樹脂とする。
蓄熱材が内包されたカプセル(以降、「蓄熱カプセル」と称する。)の融点や粒径などは、適宜設定される。蓄熱カプセルの融点は、0℃〜60℃程度が好ましい。蓄熱カプセルの粒径は、5〜50μm程度が好ましい。
【0020】
熱伝導フィラーは、熱伝導性の物質と接合剤を含む。熱伝導フィラーの熱伝導率は5W/(m・K)〜20W/(m・K)程度が好ましい。例えば、熱伝導性の物質100体積%に対して、接合剤5体積%以上50体積%以下、好ましくは10体積%以上40体積%以下であればよい。熱伝導性の物質としては、例えば、カーボンなどの炭素材料や、銀や銅といった金属が挙げられ、接合剤としては、コロイダルシリカや珪酸ソーダ、セメントといった無機バインダーや、エポキシ樹脂やフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0021】
蓄熱部材の蓄熱カプセル充填率は、65%以上90%以下、好ましくは70%以上78%以下とする。
【0022】
次に、本実施形態に係る蓄熱部材の製造方法を説明する。
蓄熱カプセルは、公知の技術によって蓄熱材をカプセルに内包させて作製すれば良い。
蓄熱カプセル100重量部に対して、熱伝導フィラーが10重量部以上45重量部以下の割合となるよう両者を配合し、混合させたものを原料とする。混合は、カプセルが破壊されないよう緩やかに実施するのが好ましい。
【0023】
図1に、蓄熱部材の製造方法の手順を説明するための工程図を示す。まず、所定の金型1に原料2の半量を投入する(図1(a))。次に、図1(b)に示すように、投入した原料2の上に、ハニカム構造体3を配置し、その上から残りの原料2を投入する(図1(c))。
次に、一軸方向に加圧することで、ハニカム構造体3のセル内に、原料2を充填させる(図1(d))。加圧は、4MPa以上10MPa以下で行う。
なお、原料2の充填は二軸方向に加圧することで行なってもよい。
【0024】
原料を充填させたハニカム構造体を脱型し(図1(e))、30℃で15時間静置して硬化させたものを蓄熱部材とする(図1(f))。硬化条件は、上記に限定されず、充填させた原料が硬化する条件であれば良い。例えば、60℃で2時間静置しても良い。
【0025】
なお、蓄熱部材は、必要に応じて表面研削や表面コーティングが施されても良い。
こうした表面コーティングによると、万が一、カプセルが壊れてしまった場合であっても、カプセルに内包された蓄熱材が蓄熱部材の外に漏れ出すことを確実に防ぐことができる。また、蓄熱部材を所望の大きさに切り出したりするために切断しても保形性を確保することができる。
こうした表面コーティングは、少なくともセル開口部を覆っていればよく、蓄熱部材全体を覆っていてもよい。
こうした表面コーティングの材質は、特に制限はないが、例えば、珪酸ソーダやリン酸アルミニウムといったセラミックス、シリコーンゴム、PTFEやPFAといったフッ素系樹脂、アルミニウムやステンレスといった金属が挙げられる。こうした表面コーティングは公知の技術で形成されればよい。
また、表面コーティングの厚さは、特に制限はないが、例えば10〜300μm、好ましくは50〜200μmであればよい。
【0026】
以下に、蓄熱部材の構成及び製造方法に関する数値限定の根拠を説明する。
ハニカム構造体としては、アルミニウムハニカム(日本軽金属(株)、セル径:3.2mm、箔厚み:25μm、サイズ:100mm×100mm×5mm、2.5g)を用いた。
蓄熱カプセルは、パラフィン系の化合物がメラミン樹脂からなるカプセルに内包された融点の異なる2種類の蓄熱カプセル(商品名:FP−39、FP−9)を三菱製紙(株)から入手した。融点が39℃の蓄熱カプセルを蓄熱カプセルA、融点が9℃の蓄熱カプセルを蓄熱カプセルBとした。蓄熱カプセルA及び蓄熱カプセルBは、融解熱量がそれぞれ180kJ/kg及び138kJ/kgであり、粒径が共に5〜50μmである。
熱伝導フィラーは、熱伝導率が12W/(m・K)となるようにエポキシ樹脂とカーボンとを配合させたもの(商品名:SST1−80−C)を薩摩総研(株)から入手した。
【0027】
蓄熱カプセル及び熱伝導フィラーの真密度を空気比較式比重計にて計測した。蓄熱カプセルA及び蓄熱カプセルBの真密度は、それぞれ0.899g/cm及び0.839g/cmであった。熱伝導フィラーの真密度は、1.291g/cmであった。
【0028】
(成形圧力の検討)
試験体A:蓄熱カプセルAを原料とした。原料の半量を金型(内寸:100mm×100mm)に投入し、その上アルミニウムハニカムを載せ、その上から更に残りの蓄熱カプセルAを投入した。プレス圧力を3MPa〜10MPaとし、それぞれの圧力で1分間、一軸加圧成形した。脱型後、30℃で15時間硬化させて試験体Aを作製した。
試験体B:蓄熱カプセルBを原料とし、上記試験体Aと同様の方法で試験体Bを作製した。
【0029】
試験体A及び試験体Bにおける蓄熱カプセル充填率を以下の式から算出した。
蓄熱カプセル充填率(%)={(試験体重量−アルミハニカム重量)/蓄熱カプセル真密度/(試験体体積−アルミハニカム体積)}×100
試験体重量は、作製した試験体重量の計測値である。試験体体積は、ハニカムの見掛体積とする。
【0030】
上記結果を図2(試験体A)及び図3(試験体B)に示す。同図において、横軸は成形圧力、縦軸は蓄熱カプセル充填率である。図2及び図3によれば、試験体A及び試験体Bのいずれの試験体においても、成形圧力の上昇にともない、蓄熱カプセル充填率は増加した。試験体A及び試験体Bの蓄熱カプセル充填率は、65%〜90%の範囲内とすることができた。
本発明者らは、別の試験において、蓄熱カプセル充填率が74%であるとき、蓄熱カプセルがハニカムのセル内に最密充填されることを確認している。これを上記結果と照らし合わせると、成形圧力は4MPa以上とすることがより好ましいといえる。
【0031】
次に、4MPa、5MPa、6MPa、7MPaでそれぞれ一軸加圧成形した後の試験体A及び試験体Bを走査型電子顕微鏡にて観察した。
上記結果を図4に示す。図4によれば、成形圧力が6MPa以下では、成形時の加圧によりカプセルが破壊されないことがわかった。一方、成形圧力が7MPaでは、試験体A及び試験体Bにおいて破壊されたカプセルが観察された。上記結果から、成形圧力は、6MPa以下であることがより好ましいといえる。
【0032】
(熱伝導フィラー含有量)
試験体AF:蓄熱カプセルAが100重量部に対して、熱伝導フィラーを0〜45重量部の範囲で含有させたものを原料とし、成形圧力を6MPaとした以外は、試験体Aと同様の方法で試験体AFを作製した。
試験体BF:蓄熱カプセルBが100重量部に対して、熱伝導フィラーを0〜45重量部の範囲で含有させたものを原料とした以外は、試験体AFと同様の方法で試験体BFを作製した。
【0033】
試験体AF及び試験体BFにおける蓄熱カプセル充填率を以下の式から算出した。
蓄熱カプセル充填率(%)={(試験体重量−アルミハニカム重量)×蓄熱カプセル配合量/(蓄熱カプセル配合量+熱伝導フィラー配合量)/蓄熱カプセル真密度/(試験体体積−アルミハニカム体積)}×100
【0034】
上記結果を図5(試験体AF)及び図6(試験体BF)に示す。同図において、横軸は熱伝導フィラー含有量、縦軸は蓄熱カプセル充填率である。図5及び図6によれば、試験体AF及び試験体BFのいずれの試験体においても、熱伝導フィラー含有量の増加にともない、蓄熱カプセル充填率は減少する傾向を示した。しかしながら、蓄熱カプセルA100重量部に対する熱伝導フィラー含有量が45重量部であった場合でも、蓄熱カプセル充填率は70%以上となることが確認された。一方、試験体AF及び試験体BFの作成時において、熱伝導フィラー含有量がそれぞれ25重量部及び20重量部以下であったとき、エポキシ樹脂量が不足し、均一な混合ができずに、フィラー塊が試験体内に残存してしまうという問題が生じた。上記結果から、蓄熱カプセル100重量部に対して熱伝導フィラー含有量が25重量部以上とすれば、より良好な成形性を得られることがわかった。
【0035】
次に、試験体AF及び試験体BFの熱伝導率を20℃で測定した。(熱流計法、JIS−A1412準拠)。計測には英弘精機(株)製のオートラムダ HC−110を用い、試験片のサイズはΦ60mmとした。
【0036】
上記結果を図7(試験体AF)及び図8(試験体BF)に示す。同図において、横軸は蓄熱カプセル100重量部に対する熱伝導フィラー含有量、縦軸は熱伝導率である。
図7及び図8によれば、蓄熱カプセル100重量部に対して10重量部以上の熱伝導フィラーを含有させたときの試験体AF及び試験体BFの熱伝導率は、0.4W/(m・K)以上となり、熱伝導フィラー含有量が0重量部の試験体と比べて熱伝導率は向上した。試験体AFでは、蓄熱カプセル100重量部に対する熱伝導フィラーの含有量が34重量部であったとき、熱伝導率が最も高い値(0.62W/(m・K))となった。
【0037】
上記結果から、蓄熱カプセル100重量部に対する熱伝導フィラー含有量は、10重量部以上とすると熱伝導率向上効果が得られ、25重量部以上とすると良好な成形性が得られることがわかった。一方、含有量が多くなりすぎると蓄熱カプセル充填率が低下していく。蓄熱カプセルがハニカムのセル内に最密充填される蓄熱カプセル充填率が74%であることを考慮すると、蓄熱カプセル100重量部に対する熱伝導フィラー含有量は、45重量部以下とすることが好ましい。
【0038】
(蓄熱部材の温度分布)
試験体AFのうち、蓄熱カプセル100重量部に対する熱伝導フィラー含有量が、0重量部または34重量部の試験体を2枚重ねたものをそれぞれ蓄熱部材AF0、蓄熱部材AF34として用いた。
【0039】
蓄熱部材の温度分布の測定方法を説明する。
図9に、温度分布測定装置の概略図を示す。はじめに、蓄熱部材の所定位置(CH1〜CH9)に熱電対を取り付けた。CH1、CH4、及びCH7は蓄熱部材の面中心に取り付けた。蓄熱部材は、アルミスペーサー(100mm×100mm×3.6mm)を介して、熱源であるシリコンラバーヒーター(スリーハイ製、100mm×100mm×1.5mm、125Ω)の両面に積層させて固定した。
次に、積層固定した蓄熱部材を、断熱材(ウレタンフォーム材、厚さ60mm、熱伝導率:0.0415W/(m・K)(25℃))で囲み、5℃に設定した恒温槽(ヤマト科学、IE21)に設置した。
積層固定した蓄熱部材の温度が安定したことを確認した後、ヒーター出力(20W)を開始し、蓄熱部材の所定位置での温度変化を測定した。
【0040】
図10に、蓄熱部材のCH1、CH4及びCH7における温度変化を示す。(a)は蓄熱部材AF0、(b)は蓄熱部材AF34である。同図において、横軸は加熱時間、横軸は温度である。
図10によれば、いずれの蓄熱部材でも、熱源から離れるほど、低温となる傾向をしめしてはいるが、蓄熱部材AF0と比較して蓄熱部材AF34の温度分布範囲は狭かった。すなわち、蓄熱部材AF34では、熱が均一に分散されていた。これは、熱伝導フィラーが含有されたことによって、熱に対する感度が向上したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 金型
2 原料
3 ハニカム構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルを有するハニカム構造体を備え、
各前記セル内に、蓄熱材が内包されたカプセルと、熱伝導フィラーと、が充填されてなる蓄熱部材。
【請求項2】
前記蓄熱材が内包されたカプセルの前記セル内への充填率が65%以上90%以下である請求項1に記載の蓄熱部材。
【請求項3】
前記蓄熱材が内包されたカプセル100重量部に対して、前記熱伝導フィラーが10重量部以上45重量部以下の割合で含有される請求項1に記載の蓄熱部材。
【請求項4】
蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導フィラーとを混合させた原料を、ハニカム構造体のセル開口部の少なくとも一方の面を覆うように接触配置させ、4MPa以上10MPa以下の圧力で加圧成形することよって、前記セル内に、前記原料を充填する蓄熱部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−178867(P2011−178867A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43541(P2010−43541)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)