説明

蓄積物検出装置

【課題】本発明の目的は、気体流路を流れる物質の蓄積量を検出することである。
【解決手段】蓄積物検出装置は、蓄積部に物質を蓄積させる。測定部は、大きくなった蓄積物の電気抵抗を測定する。測定される電気抵抗は、蓄積物の量に応じて変化する。蓄積物検出装置は、測定された電気抵抗の値があらかじめ定められた値に達すると、蓄積物の量があらかじめ定められた基準となる量に達したことを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄積物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚れを検知する装置が知られている。特許文献1では、ステンレス壁面等の金属壁面における付着物のない箇所と付着物のある箇所の温度差を測定して、汚損箇所とその程度を測定する汚れ検知装置が開示されている。また特許文献2では、同軸ケーブルの中心導体の一部または導電層の一部を露出させた電極を絶縁性樹脂で皮膜して形成した、油等の非導電性液体を検知する静電容量式センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−101187号公報
【特許文献2】特開2004−184192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、気体流路を流れる物質の蓄積量を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る蓄積物検出装置は、気体が流れる気体流路内に配置され、前記気体に含まれる物質が付着して蓄積される蓄積部と、前記蓄積部に蓄積されている前記物質に対し、蓄積量に応じて変化する電気特性を測定する測定手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る蓄積物検出装置は、前記測定手段の測定結果と予め定められた閾値とを比較し、比較結果を反映した情報を出力する比較手段を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る蓄積物検出装置は、前記蓄積部は、一対の電極を備え、前記測定手段は、前記一対の電極間に蓄積された前記物質の抵抗値を測定することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る蓄積物検出装置は、前記蓄積部は、抵抗素子を有し、前記測定手段は、前記抵抗素子と前記蓄積部に蓄積された前記物質との合成抵抗値を測定することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る蓄積物検出装置は、前記蓄積部は、2つの電極を備え、前記測定手段は、前記2つの電極間の静電容量または容量リアクタンスを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、気体流路を流れる物質の蓄積量を検出することができる。
請求項2に係る発明によれば、物質の蓄積量が予め定められた基準の量に達したことを検知することができる。
請求項3に係る発明によれば、一対の電極間に蓄積する物質の蓄積量を検出することができる。
請求項4に係る発明によれば、抵抗素子に付着する物質の蓄積量を検出することができる。
請求項5に係る発明によれば、抵抗値の測定が困難な物質の蓄積量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る蓄積物検出装置の外観図である。
【図2】気体流路に設置されたセンサ部を示す模式図である。
【図3】センサ部における等価回路の一例を示す図である。
【図4】蓄積物検出装置のブロック図である。
【図5】制御部の動作を示すフローチャートである。
【図6】物質の電気抵抗率の一例を示す表である。
【図7】3つの店舗で採取した油塵の電気抵抗を測定した結果を示すグラフである。
【図8】第2実施形態に係るセンサ部を説明する図である。
【図9】センサ部における等価回路の一例を示す図である。
【図10】第3実施形態に係る蓄積部を説明する図である。
【図11】蓄積部を表す模式図である。
【図12】物質の誘電率の一例を示す表である。
【図13】蓄積部における静電容量の測定値の変化を示すグラフである。
【図14】制御部の動作を示すフローチャートである。
【図15】2つの電極における静電容量を測定した結果を示すグラフである。
【図16】変形例1に係るセンサ部の外観図である。
【図17】変形例3に係る蓄積部の外観図である。
【図18】蓄積部が気体流路に設置されている状態の一例を示す模式図である。
【図19】蓄積部が気体流路に設置されている状態の一例を示す模式図である。
【図20】各種の形状の電極における静電容量を測定した実験の結果を示す図である。
【図21】被膜で覆われた電極における静電容量を測定した実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る蓄積物検出装置10の外観図である。図1の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。センサ部12は、蓄積部20、電極31および電極32を含んでいる。蓄積部20は、耐熱性の高い磁器等の絶縁体を材料とし、上端に開口部21と下端に底面22(図1(b)参照)を有する中空柱体状に形成されている。ここで、センサ部12の切断線C−Cにおける切断面を図1(b)に示す。電極31,32は、板状に形成され、蓄積部20の内側で対向する面上にそれぞれ配置されている。また、電極31,32は、ニクロム等の耐熱性の高い導電体を材料としている。蓄積部20は、開口部21から中空の内部に入り込んだ検出対象となる物質を電極31,32の間に蓄積する。
【0013】
図1(a)に戻る。電極31,32は、配線33によって筐体11と接続されている。筐体11は、蓄積部20に蓄積された物質の量を検出するための回路等を収める箱状の容器である。筐体11は、外部に露出する操作部70およびI/F(Infter Face:インターフェース)80を有する。操作部70は、利用者が蓄積物検出装置10に対して動作を指示するための操作を行うタッチパネル、ボタンなどの操作手段である。I/F80は、USB(Universal Serial Bus)などの外部装置と接続する端子である。
【0014】
センサ部12は、排気ダクトや排気フードなどの、気体が流れる通路となる場所(以下、「気体流路」という。)に設置される。ここで、図2に設置例を示す。図2においては、センサ部12は、開口部21を上方に向けて気体流路1の底面上に設置されている。気体流路1の内部には、物質Mを含んだ気体が矢印DR1の方向に流れている。この場合、物質Mは、油や埃などであり、気体は、空気である。物質Mの一部は、開口部21から蓄積部20の中空の内部に到達して付着して蓄積される。物質Mが蓄積されるのは、例えば、乱気流によって開口部21から蓄積部20の内部に入り込んだり、気体の流れが停止して気体流路1の下部に徐々に落下したりする場合など種々の要因が考えられるが、物質Mが蓄積部20に蓄積されるような状況で蓄積部20が設置されていればよい。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、蓄積部に付着して蓄積された物質Mのことを蓄積物Sという。
【0015】
続いて、蓄積物Sの量(以下、「蓄積量」という。)を検出する原理について、図1(b)を用いて説明する。図1(b)では、電極31,32の間に蓄積物Sが底面22から高さH1まで達した状態を示している。電極31および電極32の底面22からの高さを高さL1、電極31,32が蓄積部20の内部に有する対向する面S31,S32の間の距離を距離D1、面S31,S32の面積をB1とする。両電極間に印加される電圧をV1、両電極間全体での電気抵抗を抵抗RT、蓄積物Sの電気抵抗を抵抗RS、気体Gの電気抵抗を抵抗RGとすると、センサ部12における等価回路は図3のように示される。
【0016】
図3は、センサ部12における等価回路の一例を示す回路図である。電極31,32の間の領域では、抵抗RSと抵抗RGとが並列に配置された状態と等価となる。抵抗RTは、抵抗RSと抵抗RGとの合成抵抗である。抵抗RTの両端である電極31,32に、外部から気体Gが放電を起こす電圧より小さい電圧V1が印加されると、気体Gの抵抗RGは無限大となり、抵抗RSは、抵抗RTと等しくなる。抵抗RTおよび抵抗RSは、蓄積物Sの電気抵抗率を電気抵抗率ρSとすると次式で表わされる。
【0017】
【数1】

【0018】
ここで、距離D1,高さL1,面積B1および電気抵抗率ρSは測定可能な値である。(同一箇所の蓄積物Sの電気抵抗率ρSは概ね同じ値であるとする。)このため、抵抗RTは、高さH1との関係式で表わされ、高さH1の値が増加するに従い、抵抗RTの値は減少する。高さH1は、蓄積量を示し、抵抗RTは、蓄積物Sの抵抗RSを示す。すなわち、蓄積物Sの電気抵抗は、蓄積量に応じて変化する。以上が、本実施形態における蓄積量を検出する原理である。
【0019】
図4は、蓄積物検出装置10のブロック図である。測定部30は、電気抵抗を測定する機能を有し、配線33を介して電極31,32と電気的に接続されている。測定部30は、電極31,32に電圧V1を印加して両電極間の物質に電流を流し、その両者を測定することでその物質の電気抵抗を測定する。本実施形態においては、測定部30は、電極31,32に挟まれている蓄積物Sの電気特性として電気抵抗を測定する。測定部30は、測定した電気抵抗の値(以下、「抵抗値」という。)を示す情報を制御部40へ供給する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置やRAM(Random Access Memory)等の記憶手段を備え、測定部30および記憶部50の動作を制御する。記憶部50は、HDD(Hard Disk)等の記憶手段を備え、測定部30が測定した抵抗値などを記憶する。時計部60は、時刻の情報を生成する機能を有し、あらかじめ決められた間隔で制御部40へこの時刻の情報を供給する。制御部40は、この時刻の情報を用いて、日時などの時刻または時間に応じた制御をする。操作部70は、操作内容を示す情報を制御部40に供給する。I/F80は、破線で示された警報装置や、電話回線やインターネットを介して接続する外部装置などと情報のやり取りを行う際のインターフェースとなる。
【0020】
制御部40は、測定部30により測定された抵抗値から、数式(1)の関係を利用して、蓄積物Sの高さHを算出する。また、制御部40は、高さHと蓄積量との関係を示すあらかじめ作成されたテーブル等を用いて、算出した高さHに対応する蓄積量を検出する。一般に、気体流路1の底面、側面あるいは上面などに油や塵などが付着し、それがある量を超えると火災の原因になったり、気流に悪影響を与えたりすることがあるので、それを除去する清掃が必要となる。本実施形態においては、蓄積部20内の蓄積物Sの量がある値を超えた場合に、気体流路1の内部の清掃が必要になった状態であることを検知するようにしている。そこで、制御部40は、蓄積物Sの除去が必要と判断される基準となる蓄積量(以下、「基準量」という。)に対応する抵抗値を閾値RT1として予め設定し、閾値RT1と測定された抵抗値との比較から蓄積量が基準量に達したことを検知する。制御部40は、検出または検知した結果を示す情報を、I/F80を介して外部装置に出力する。具体的には、制御部40は、この結果を示す表示、音またはデータ等を示す情報を出力し、外部装置は、これらの情報に基づきその結果を各種の態様で出力する。
【0021】
図5は、制御部40の動作を示すフローチャートである。まず、利用者は、操作部70を操作して、蓄積物Sの基準量および測定の間隔を示す時間の情報を入力する。入力する時間の情報は、例えば、1時間や1日である。制御部40は、入力された基準量の情報を閾値RT1に変換し、その値を記憶部50に記憶させる。また、制御部40は、入力された時間の情報に基づいて時刻を算出し、算出した時刻を記憶部50に記憶させる。制御部40は、以上のとおり各値が設定されると、蓄積量を検出する処理を開始する。
【0022】
制御部40は、記憶部50に記憶された時刻を参照し、参照した時刻に抵抗RTを測定させるように測定部30を制御する(ステップS110)。次に、制御部40は、測定された抵抗RTの値と記憶部50に記憶されている閾値RT1とを比較する。測定された抵抗RTの値が閾値RT1以上である場合(ステップS120;Yes)は、制御部40は、抵抗RTの値から高さHを算出し、算出した高さHに対応する蓄積量の情報を外部装置に出力する(ステップS130)。そして、制御部40は、次の参照した時刻に抵抗RTの測定を行うように測定部30を制御する(ステップS110)。測定された抵抗RTの値が閾値RT1以下となった場合(ステップS120;No)は、制御部40は、検知した結果を示す情報を上述した警報装置または外部装置に出力する(ステップS140)。
【0023】
図6は、物質の電気抵抗率の一例を示す表である。表100は、左側の列に物質名、右側の列にこの物質の電気抵抗率が表わされている。図6に示すように、導電体でない物質の場合、電気抵抗率は(当然電気抵抗の値そのものも)非常に大きくなる傾向にある。ここで、蓄積物Sの電気抵抗を実際に測定した実験の結果を示す。
【0024】
図7は、3つの店舗で採取した油塵の電気抵抗を測定した結果を示すグラフである。縦軸は電気抵抗(単位は×10Ω)を示し、各店舗の結果を横軸に並べて示している。このグラフは、それぞれ異なる店舗A、B、Cで採取した油塵の電気抵抗を測定した実験結果を示している。この実験では、電極間を2cm離して測定した。電気抵抗の測定値は、店舗Aは1.10(×10Ω)、店舗Bは1.72(×10Ω)、店舗Cは1.71(×10Ω)であった。この油塵は、蓄積物Sとして想定される物質である。これらの実験結果に示されるように、油塵の電気抵抗は10Ω程度の単位で測定することが可能である。また、この実験の測定条件(電極間の距離)を基準量とする場合には、これらの測定値を閾値RT1として用いることが可能である。
【0025】
<第2実施形態>
第1実施形態では、箱状の蓄積部20を用いたが、棒状の蓄積部20aを用いる例について説明する。なお、第2実施形態における蓄積物検出装置10aは、第1実施形態における蓄積物検出装置10と同様の構成を備えるため、蓄積物検出装置10と同じ構成については同一の符号を用いて説明を割愛し、第1実施形態と異なる部分について説明をする。
【0026】
図8は、第2実施形態に係るセンサ部12aを説明する図である。図8(a)は、センサ部12aの模式図である。センサ部12aは、蓄積部20a、電極31aおよび電極32aを備える。蓄積部20aは、電気抵抗を有する抵抗素子を材料に用いて棒状に形成されている。電極31a,32aは、ニクロム等の耐熱性の高い導電体で形成されている。電極31a,32aは、蓄積部20の断面よりも大きな面S31a,S32aを持つ板状に形成されている。電極31a,32aは、それぞれ面S31a,S32aで蓄積部20aの長手方向の端部と接合されている。電極31a,32aは、配線33で測定部30と接続されている。
【0027】
図8(b)は、気体流路1に設置されるセンサ部12aの一例を示す図である。センサ部12aは、保持部材13によって蓄積部20aの長手方向を鉛直方向に向けて保持されて気体流路1に設置される。図8(b)では、気体流路1の内部を物質Mの含まれた気体が図の手前側から奥側に向けて流れている。物質Mの一部は、蓄積部20aに付着する。このとき、粘度が高い物質Mほど、蓄積部20aに付着する割合が増す。以下、蓄積部20aに蓄積された物質Mを蓄積物Sという。
【0028】
図8(a)は、蓄積物Sの大きさが、面S32aから高さHaまでに至った状態を示している。測定部30は、電極31a,32aに電圧を印加して、センサ部12aにおける電気抵抗を測定する。測定される電気抵抗の値である抵抗RTa1は、蓄積物Sの量の変化に伴って変化する。ここで、電極31a,32a間に印加される電圧をVa、蓄積物Sの電気抵抗の値を抵抗RS、蓄積部20aの電気抵抗の値を抵抗Raとすると、蓄積部20の等価回路は図9のように示される。
【0029】
図9は、センサ部12aにおける等価回路の一例を示す図である。抵抗RSと抵抗Ra2との合成抵抗を抵抗RTa2とすると、蓄積物Sの高さがHaに達したときの抵抗RTa1は、次の数式(2)で表わされる。
【0030】
【数2】

【0031】
すなわち、抵抗RTa1は、蓄積部20aと蓄積物Sとの合成抵抗となる。ここで、蓄積物Sが付着していない状態においては、抵抗RTa1=抵抗Ra1および抵抗RTa2=0の関係が成り立つ。そして、蓄積物Sが大きくなるにしたがって、抵抗RTa1における抵抗Ra1の割合が減少し、抵抗RTa2の割合が増加する。このとき、抵抗RTa2と抵抗Ra2との間には、次の関係が成り立つ。
【0032】
【数3】

【0033】
数式(3)に示されるように、抵抗RTa2は抵抗Ra2より小さい値となる。ここで、抵抗RSと抵抗Ra2とが概ね同じ値となるように蓄積部20aが形成されていると、抵抗RTa2は抵抗Ra2の半分程度の値となる。この場合、蓄積物Sが大きくなるにしたがって抵抗RTa1の値が減少し、蓄積物Sの高さHaが蓄積部20aの長さLaに達したときに抵抗RTa1は抵抗RSの半分程度の値となる。また、抵抗Ra2と抵抗RSとが異なる値であっても、数式(3)が示すように、抵抗RTa2は抵抗Ra2よりも小さくなる。このため、蓄積物Sが大きくなるにしたがって抵抗RTa1の値が減少する。抵抗RTa1の値の減少が最も顕著に現れるため、抵抗Ra2と抵抗RSとは概ね同じ値であることが望ましい。
【0034】
蓄積物検出装置10aにおいては、制御部40は、蓄積物Sの基準量に対応する抵抗RTa1の値を閾値RT2として記憶部50に記憶させる。後の動作は第1実施形態と同様なので説明を割愛する。以上のとおり、蓄積物検出装置10aは、測定部30が測定した抵抗値から、蓄積量を検出し、また、蓄積量が基準量に達したことを検知する。
【0035】
<第3実施形態>
上述した第1および第2実施形態では、蓄積物Sの電気抵抗を測定して蓄積量を検出する例について説明した。本実施形態においては、大きくなる蓄積物Sによる静電容量の変化を測定して蓄積量を検出する。なお、第3実施形態における蓄積物検出装置10bは、第1実施形態における蓄積物検出装置10と同様の構成を備えるため、蓄積物検出装置10と同じ構成については同一の符号を用いて説明を割愛し、第1実施形態と異なる部分について説明をする。
【0036】
図10は、第3実施形態に係る蓄積部20bを説明する図である。図10(a)は、蓄積部20bの模式図である。蓄積部20bは、電極31b,32bを含んで構成されている。電極31b,32bは、耐熱性の高いニクロム等の導電体で形成される長さLbで半径rbの円柱状の電極である。電極31b,32bは、各々が概ね平行になるように配置されている。配置された両電極の中心軸間の距離を距離Dbとする。電極31b,32bは、配線33によって測定部30bと電気的に接続されている。測定部30bは、静電容量を測定する機能を有し、電極31b,32bに電圧を印加して電極31b,32b間における静電容量を測定する。
【0037】
図10(b)は、気体流路1に設置される蓄積部20bの一例を示す図である。蓄積部20bは、保持部材13bによって保持された状態で物質Mを含む気体が流れる気体流路1に設置される。上述のとおり、物質Mの一部は、蓄積部20bに付着する。このとき、粘度が高い物質Mほど、蓄積部20bに付着する割合が増す。以下、蓄積部20bに付着して蓄積された物質Mを蓄積物Sという。ここで、蓄積物Sは、誘電体である。このとき、電圧を印加された電極31b,32bの間に生じる電界の領域に誘電体である蓄積物Sが存在することで、測定される静電容量が変化する。
【0038】
図11は、蓄積部20bを表す模式図である。測定部30が電極31b,32bに直流電圧を印加すると、図11(a)に示すように両電極に電荷が蓄積される。ここで、両電極の長さLbが中心軸間の距離Dbに比べて十分長く、両電極の両端における電界の影響を無視できるとする。この場合、電極31b,32bの周囲を満たす気体Gの誘電率をεGとすると、両電極間の静電容量Cb1は、数式(4)で表わされる。
【0039】
【数4】

【0040】
電極31b,32bに蓄積物Sが大きくなると、誘電体である蓄積物Sの影響で両電極間の静電容量は増大する。例えば、蓄積物Sの誘電率をεSとする。図11(b)は、電極31b,32bの端部から長さLb/2までの領域を蓄積物Sが満たしている状態を示している。図11(c)は、電極31b,32bの周囲全体の領域を蓄積物Sが満たしている状態を示している。図11(b)における両電極間の静電容量Cb2および図11(c)における両電極間の静電容量Cb3は数式(5)、(6)で示される。
【0041】
【数5】

数式(5)、(6)に示されるように、両電極間の静電容量は、電極31b,電極32b、気体Gおよび蓄積物Sが有する性質によって定まる電気特性のひとつである。
【0042】
図12は、物質の誘電率の一例を示す表200である。表200は、左側の列に物質名、右側の列にこの物質の真空を1として比較した比誘電率が表わされている。図12に示すように、固体、液体またはこれらの混在した物質である蓄積物Sの誘電率εSは、気体Gの誘電率εGより一般に大きい(εS>εG)ため、数式(4)〜(6)からCb1<Cb2<Cb3という関係が導き出せる。すなわち、測定部30bによって測定される静電容量は、蓄積量に応じて変化する。
ところで、電極31b,32bは円柱状の形状をしているため付着した蓄積物Sには支えがなく、蓄積物Sは自身の付着力によって両電極に付着している。しかし、付着した蓄積物Sが大きくなり、自身の重さによる重力が付着力を上回ると、蓄積物Sは電極31b,32bから剥離する。このような蓄積物Sの状態の変化によって、測定される静電容量が変化する様子を図13に示す。
【0043】
図13は、蓄積部20bにおける静電容量Cの測定値の変化を示すグラフである。このグラフの縦軸は静電容量Cの値を示し、横軸は時刻tを示す。蓄積物検出装置10bは、あらかじめ定められた時間の間隔で静電容量Cを測定している。蓄積部20bの静電容量Cの測定値は、時間が経過して蓄積物Sが増加するとともに、徐々に増加する。図13(a)のグラフでは、時刻t1における連続する静電容量Cの測定値の差分ΔC1が、蓄積物Sの剥離を示している。ここで、測定値の減少は蓄積物Sが有する水分の蒸発などでも生じる。このため、蓄積物検出装置10bは、連続する測定値の差分ΔCがあらかじめ定めた値よりも大きい場合に、蓄積物Sが剥離したことを検出する。このあらかじめ定めた値を閾値T3とする。すなわち閾値T3<ΔC1である。閾値T3は、付着して蓄積した物質Mの付着力や密度などに応じて定められる値である。
【0044】
蓄積物検出装置10bは、蓄積物Sの剥離を検出した回数(以下、「検出回数N」という。)によって、蓄積量が基準量に達したことを検知する。第3実施形態においては、例えば、蓄積物検出装置10bは、検出回数Nが3回に達したときに上述のとおり検知する。蓄積物検出装置10bは、この回数を閾値T4として設定して記憶部50に記憶している。なお、閾値T4は、蓄積物Sの付着力や密度などに応じて他の値を定めてもよい。図13(b)のグラフは、蓄積物検出装置10bが測定する静電容量の変化の一例を示している。図13(b)のグラフにおいては、時刻t2,t3,t4の差分ΔC2,ΔC3,ΔC4がそれぞれ閾値T3よりも大きい値となっている。このため、蓄積物検出装置10bは、時刻t2,t3,t4において蓄積物Sの剥離を検出する。蓄積物検出装置10は、時刻t4において検出回数Nが閾値T4に達するため、蓄積量が基準量に達したと検知する。そして、蓄積物検出装置10bは、このように検知したことを示す情報を出力する。
【0045】
図14は、制御部40の動作を示すフローチャートである。まず、制御部40は、閾値T3,T4および検出回数値Nを設定する(ステップS310)。閾値T3は、利用者が操作部70を操作して入力する情報に基づいて設定される。利用者は、差分ΔCを示す静電容量の値そのものを入力してもよいし、検出させたい蓄積量の程度を段階的に示した数値もしくは文字などを入力してもよい。差分ΔCを示す静電容量の値以外の情報が入力された場合は、蓄積物検出装置10は、入力された情報を、あらかじめ定められた関係式によって差分ΔCを表わす静電容量の値に変換する。閾値T4および検出回数Nは、利用者が操作部70を操作して入力する情報に基づいて設定される。制御部40は、こうして設定した閾値T3,T4および検出回数Nを、記憶部50に記憶させる。
【0046】
続いて、制御部40は、電極31b,32b間の静電容量をあらかじめ定められた間隔で測定させるように測定部30を制御し、測定された値を記憶部50へ順番に記憶させる(ステップS320)。制御部40は、記憶部50を参照し、記憶部50に順番に記憶されている測定値から1回前に測定した値を呼び出す。制御部40は、この測定した値と記憶部50から呼び出した前回測定した値との差分ΔCを算出する(ステップS330)。算出された差分ΔCが閾値T3以下であった場合(ステップS340;No)、制御部40は、ステップS320およびステップS330の動作を繰り返し行う。算出された差分ΔCが閾値T3以上である場合(ステップS340;Yes)、制御部40は、検出回数Nに1を加える(ステップS350)。このようにして、制御部40は、検出回数Nを計上する。
【0047】
検出回数Nが、閾値T4と異なる場合(ステップS360;No)、制御部40は、ステップS320からステップS350までの動作を繰り返し行う。検出回数Nが、閾値T4と同じ場合(ステップS360;Yes)、制御部40は、蓄積量が基準量に達したことを検知して、ステップS370へ進む。ステップS370の動作は、第1実施形態におけるステップS140と同様なので説明を割愛する。
【0048】
以上の制御部40の動作により、蓄積物検出装置10bは、あらかじめ定められた期間に測定される蓄積物Sの電気特性が変化する態様に応じて蓄積量が基準量に達したことを検知する。蓄積物検出装置10bは、蓄積物Sの剥離を検出するため、蓄積物Sの静電容量の絶対値が温度や湿度などの外的要因の影響で変化する場合でも、蓄積量が基準量に達したことを検知する。
【0049】
図15は、2つの電極における静電容量を測定した結果を示すグラフである。縦軸は測定された静電容量の値で、横軸は2つの電極間に付着して蓄積している油塵の厚さである。図15(a)、(b)、(c)は、それぞれ異なる店舗A、B、Cで採取した油塵を用いて測定した実験結果を示している。この実験では、2cm×10cmの極板を直交させ、2cm×2cmの領域が重なるように配置した。極板間は約1mm程度に固定して測定した。これらのグラフに示されているように、油塵の厚さが変化すると測定される静電容量が線形に変化する。すなわち、静電容量の値と油塵の厚さとの関係を調べることで、測定した静電容量の値から油塵の蓄積量が基準量に達したことを検知することができる。また、静電容量の値と油塵の厚さとの関係が不明であっても、静電容量の増減から油塵の厚さが増減したことが分かるため、油塵の落下の回数を測定することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな形態で実施可能である。
<変形例1>
上述した第1実施形態においては、蓄積部20は電極と絶縁体を組み合わせた箱状の形状としたが、電極間に物質を付着させて蓄積するものであれば、他の形状としてもよい。また、複数の蓄積部を組み合わせてひとつの蓄積部として動作させてもよい。蓄積部は、多様な特性を持つ物質を付着させて蓄積物Sを大きくし、高温環境に設置され長期間動作する。このため、発生する蓄積物Sの付着力、密度または水分率などの特性が異なる場合でも、物質を付着させて蓄積できることが望ましい。また、温度変化の影響を受けにくい形状とすることが望ましい。これらの点を考慮し、例えば、大きさの異なる箱状の蓄積部を組み合わせたものや、物質を取り込む上部と電気抵抗を測定する下部とで大きさを変えた蓄積部を用いるようにしてもよい。
【0051】
図16は、変形例1に係るセンサ部の外観図である。図16(a)に示すセンサ部12cは、電極の高さと電極間の距離を変えた3通りの箱状の蓄積部を組み合わせて構成している。蓄積部20c1,20c2,20c3は、対応する開口部21c1,21c2,21c3を有し、内側に図示せぬ2枚の電極を有する。例えば、蓄積量が少ない場合は、電極間の距離が短い蓄積部20c1を用いて測定する。また、蓄積物Sの粘度が高く、蓄積部20c1では物質が付着して大きくなった蓄積物Sが蓄積部の開口部に蓋をしてしまうような場合は、蓄積部20c2または蓄積部20c3を用いて測定する。
【0052】
図16(b)に示す蓄積部20dは、開口部21d1を底面22d1より広く形成したものである。蓄積物Sの入り口を広くし、蓄積物Sの抵抗値を測定する底面22d1側の電極31dと電極32dとの距離を短くすることで、蓄積物Sの粘度が高い場合も蓄積物Sを取り込む空間に蓋をされることなく、また、蓄積物Sが大きくなる速度が遅い場合も、電極と接する蓄積物Sの量を他の箇所より増やして抵抗値を測定しやすくする。
【0053】
<変形例2>
上述した第2実施形態においては、蓄積部20aは棒状の蓄積部20aと物質Mを支える電極32aにより物質Mを蓄積させたが、電極32aが物質Mを支える形状とせずに、付着して蓄積した物質Mが自重を支えきれなくなると剥がれて落下するようにしてもよい。この場合、第3実施形態と同様に、測定される抵抗値と前回測定された抵抗値との差分があらかじめ定められた閾値よりも大きな場合に、蓄積物検出装置10aは蓄積量が基準量に達したことを検知する。
【0054】
<変形例3>
蓄積部は、上述した第3実施形態においては、平行する2本の棒状の電極31b,32bを含んで構成されたが、他の形状の電極を含んで構成されてもよい。例えば、蓄積部は、櫛の形状をした電極や渦巻きの形状をした電極を含んで構成されてもよい。
【0055】
図17は、変形例3に係る蓄積部20e,20fの平面図である。図17(a)は、蓄積部20eの平面図である。蓄積部20eは、電極31e,32eおよび絶縁部22eを備えている。絶縁部22eは、絶縁性を有する板状の部材である。電極31e,32eは、互いに平行な複数の歯を有する櫛の形状をしている。電極31e,32eは、一方の電極の隣り合う歯と歯の間に他方の電極の歯が所定の距離を空けて並んだ状態で、絶縁部22eに固定されている。この場合、この歯と歯の間が電極の間である。電極31e,32eは、それぞれが上述した測定部30bと配線33を介して電気的に接続されている。電極31e,32eにおける静電容量は、両電極に挟まれた空間とその周囲の空間にある蓄積物Sの量によって変化する。図17(b)は、蓄積部20fの平面図である。蓄積部20fは、電極31f,32fおよび絶縁部22fを備えている。絶縁部22fは、絶縁性を有する板状の部材である。電極31f,32fは、外側から内側にかけて右回りに渦を巻いた形状をしている。電極31f,32fは、各々の渦の間に他方の渦が所定の距離を空けて並んだ状態で絶縁部22fに固定されている。この場合、内側の渦とそれに隣接する外側渦の間が電極の間である。電極31f,32fは、それぞれが測定部30bと配線33を介して電気的に接続されている。電極31f,32fにおける静電容量は、両電極に挟まれた空間とその周囲の空間に付着して大きくなった蓄積物Sの量によって変化する。
【0056】
図18は、蓄積部20eが気体流路に設置されている状態の一例を示す模式図である。図18(a)では、気体流路の下部(例えば床F)に設置されている蓄積部20eが示されている。蓄積部20eは、絶縁部22eを床F側に向けて設置されている。このため、電極31e,32eの位置は、床Fから絶縁部22eの厚さだけ離れた位置になる。図18の例では、蓄積物S1は、油のような流動性の高い性質を有する物質である。蓄積物S1は、床F上に絶縁部22eの厚さを超えて大きくなると、蓄積量が増えるにつれて電極31e,32eの表面を徐々に覆ってゆく。また、蓄積物S2は、例えば塵や油を含んだ、他の物体に付着する流動性の低い性質を有する物質である。蓄積物S2は、気体流路中を浮遊し、電極31e,32eに触れてこれらの表面に付着して蓄積された物質である。このように、蓄積物S1,S2が電極31e,32eに挟まれた空間とその周辺の空間とを占めることにより、測定される電極31e,32eにおける静電容量が変化する。なお、蓄積部20eの代わりに蓄積部20fが設置されてもよい。このように、蓄積物検出装置は、蓄積物の流動性の大きさに関わらず、その蓄積物の量を検出することができる。
【0057】
図18(b)では、蓄積部20eが気体流路を囲う側面(例えば側壁W)に設置されている状態を示している。この場合は、蓄積物S2が電極31e,32eに付着することで、電極31e,32eにおける静電容量が変化する。このように、蓄積物が物体に付着する性質を有するものであった場合は、蓄積物検出装置は、側壁における蓄積量を検出することができる。この場合、蓄積物検出装置は、蓄積物が付着しやすい姿勢にして設置されればよい。
【0058】
また、蓄積部は、平行に向かい合う平板の形状を有する電極を含んで構成されてもよい。図19は、蓄積部20gが気体流路に設置されている状態の一例を示す模式図である。蓄積部20gは、電極31g,32gおよび絶縁部21g,22gを備えている。電極31g,32gは、平板の形状をしており、それぞれ絶縁部21g,22gに固定されている。電極31g,32gは、それぞれ上述した測定部30bと配線33を介して電気的に接続されている。絶縁部21g,22gは、絶縁性を有する板状の部材である。絶縁部21g,22gは、電極31g,32gが所定の距離だけ間を空けて平行に向かい合う位置で固定されている。
【0059】
このように構成された蓄積部20gは、向かい合う電極の間の距離が十分に小さければ、毛細管現象によって電極の端部に触れた流動性の高い蓄積物を電極間に吸い込むことができる。蓄積部20gは、流動性の高い蓄積物S1が絶縁部22gおよび電極32gをあわせた高さHgを超えると、毛細管現象により、蓄積物S1を電極31g,32gの間の空間に吸い込む。このように蓄積物が吸い込まれると、蓄積部20gにおいて測定される静電容量の値が、単に蓄積物が付着して大きくなる場合に比べて短時間で変化するため、蓄積物検出装置は、蓄積量が基準量に達したことを検知しやすくなる。
【0060】
図20は、各種の形状の電極における静電容量を測定した実験の結果を示す図である。この実験は、櫛型(図17(a)に示された櫛の形状)、渦巻き型(図17(b)に示された渦巻きの形状)、平行板型(図19に示された平行に向かい合う平板の形状)の3種類の形状の電極を用いて行われた。図20において、「電極の形状」が「櫛型(長・密)」と表されているのは、長さ100mm×幅0.4mmの歯を80本ずつ2mmの間隔を空けて固定した櫛型の電極である。同様に、「櫛型(長・粗)」は、「櫛型(長・密)」の電極の歯の幅を1mm、本数を40本ずつとした櫛型の電極である。また、「櫛型(短・密)」は、「櫛型(長・密)」の歯の長さを50mmとした櫛型の電極である。「渦巻き型」は、幅0.4mmの2つの電極を2mmの間隔を空けて右回りに23巻きさせた渦巻き型の電極である。「平行板型」は、縦40mm×横40mmの平板を3mmの間隔を空けて平行に向かい合わせた電極である。この実験では、電極の表面全体に油(蓄積物)を刷毛で薄く塗った蓄積の小さい状態(蓄積小)と、電極の表面が蓄積した油(蓄積物)に5mm程度沈んだ蓄積の大きい状態(蓄積大)とで各電極における静電容量が測定された。(ただし、蓄積小は、平行板型を除いて測定された。)図20(a)には、測定された2通りの静電容量の値(単位はpF:ピコファラッド)と、これらの変化量(測定値の差分)とが表されている。図20(b)には、図20(a)の結果を表した棒グラフが表されている。
【0061】
図20おいて、歯の長さのみが「櫛型(短・密)」の2倍である「櫛型(長・密)」は、測定値も約2倍となっている。この結果から示されるように、蓄積物検出装置は、他の条件が同じであれば、向かい合う電極の面積がより大きい電極を用いることで、測定される静電容量の値がより大きくなり、蓄積量の変化を検出しやすくすることができる。また、「櫛型(短・密)」に比べて歯の長さが2倍で歯の本数が2分の1の「櫛形(長・粗)」は、測定値が「櫛型(短・密)」よりも小さい(蓄積小は約0.54倍、蓄積大は約0.67倍。)。つまり、向かい合う電極の面積はほぼ同じであるにも関わらず、測定値が大きく異なっている。これは、櫛型の電極の場合、電極の向かい合う面の間で発生する電界に対してその面の端部で発生する電界の影響が大きく、かつ歯の幅が短いほど端部同士の距離が近づいて発生する電界が強くなるためと思われる。よって、蓄積物検出装置は、他の条件が同じであれば、歯の幅がより短い櫛型の電極(換言すれば、単位面積あたりの歯の数がより多い電極)を用いることで、測定される静電容量の値がより大きくなり、蓄積量およびその変化を検出しやすくすることができる。なお、以上の「櫛型」の電極について記載した効果は、「渦巻き型」においても同様に奏する。
【0062】
<変形例4>
各電極は、上述した第3実施形態および変形例3においては、何にも覆われずむき出しの状態であったが、基板などに用いられる絶縁性を有する被膜で覆われた状態としてもよい。これにより、蓄積物検出装置は、電極間に浸入した水等の電気伝導体によりショートすることを防ぐことができる。
【0063】
図21は、被膜で覆われた電極における静電容量を測定した実験の結果を示す図である。この実験は、図20に示した「櫛型(短・密)」の電極と、表面を被膜で覆われた「櫛型(短・密)」の電極(「櫛型(短・密・被膜)」)を用いて行われた。「櫛型(短・密)」と「櫛型(短・密・被膜)」とでは、静電容量の変化量は、それぞれ67.1pFと68.2pFとほとんど変わらなかった。この結果により示されるように、蓄積物検出装置は、被膜に覆われた電極を用いることで、電極間が導電してショートすることを防止し、かつ被膜に覆われていない電極を用いた場合と同じ測定精度で蓄積量が基準量に達したことを検知することができる。
【0064】
<変形例5>
上述した第3実施形態においては、蓄積部20bに直流電圧を印加して静電容量を測定したが、蓄積部20bに交流電圧を印加して、蓄積部20bにおける容量リアクタンスを測定してもよい。具体的には、測定部30は、電極31b,32bの容量リアクタンスを測定する。この場合、蓄積物Sの付着による容量リアクタンスの絶対値の変化が測定されればよい。例えば、特定の周波数Fbを定めて、この周波数Fbの交流電圧を印加するときの蓄積部20bにおける容量リアクタンスを測定する。蓄積部20bのようなキャパシタによる容量リアクタンスXbは、静電容量Cbと数式(7)で表わされる。
【0065】
【数6】

【0066】
このように、周波数Fbにおける容量リアクタンスXbは静電容量Cbと反比例の関係となる。このため、容量リアクタンスXbは、付着した蓄積物Sにより蓄積部20bの静電容量が増加すると減少し、蓄積物Sが剥離して蓄積部20bの静電容量が大きく減少すると、これに合わせて大きく増加する。蓄積物検出装置10bは、この測定値の変動により、蓄積量が基準量に達したことを検知する。ここでは測定方法の一例を示したが、例えば測定したインピーダンスから抵抗成分を除くなど他の測定方法で容量リアクタンスを測定してもよい。
【0067】
<変形例6>
上述した各実施形態では、蓄積物Sの電気抵抗または電極の静電容量のどちらか一方の電気的な物理量を測定したが、両方を測定してもよい。この場合、例えば電気抵抗および静電容量を測定できる機能を有する測定部と気体流路に設置した蓄積部20および蓄積部20bとを配線により接続する。測定部は蓄積部20から蓄積物Sの電気抵抗を、蓄積部20bから電極の静電容量を測定する。これによって、蓄積物Sの特性または気体流路の外的環境の影響によっていずれか一方の物理量の測定が適切にできない場合でも、蓄積物検出装置は、残る一方の測定値に基づき蓄積量が基準量に達したことを検知する。
【0068】
<変形例7>
上述した第1実施形態では、測定した抵抗値が閾値に達すると蓄積量が基準量に達したことを検知したが、蓄積物Sの剥離を検出した回数によって検知してもよい。また、上述した第3実施形態では、蓄積物Sの剥離を検出した回数によって蓄積量が基準量に達したことを検知したが、測定した静電容量が閾値に達することで蓄積量が基準量に達したことを検知してもよい。これらは、蓄積物Sの特性または気体流路の外的環境の影響を考慮して、適切に検知できるほうを選択すればよい。
【0069】
<変形例8>
上述した第1実施形態では、制御部40は、時刻の情報を用いて電気抵抗を測定するタイミングを制御したが、温度の情報を加えて測定するタイミングを制御してもよい。例えば、蓄積物検出装置に温度を測定するセンサを備えさせて、制御部40は、測定された温度があらかじめ定められた値の範囲Rに収まっているときに電気抵抗を測定させるように測定部30を制御する。制御部40は、測定された温度が範囲Rに収まっていなければ、測定した温度が範囲Rに収まるまで一定の時間間隔で温度の測定を続ける。制御部40は、測定した温度が範囲Rに収まると、電気抵抗を測定させるように測定部30を制御する。このように制御することで、蓄積物検出装置は、高温のため電気抵抗が適切に測定できない場合に誤った蓄積量の検出をすることを防ぐことができる。
【0070】
<変形例9>
上述した実施形態では、蓄積物検出装置は、油や埃を含んだ空気が流れる気体流路に設置されたが、別の気体が流れる場所に設置されてもよい。例えば、蓄積物検出装置は、工場の煙突や煙突につながる排気流路などに設置され、硫黄酸化物、煤塵および有害物質などを含む排気ガスに含まれる物質を付着させて蓄積させることで蓄積量を検出してもよい。
【0071】
<変形例10>
蓄積物検出装置は、上述した実施形態では、蓄積物の電気特性を測定した結果から蓄積量が基準量に達したことを検知したが、その測定した結果だけを出力してもよい。この場合、出力された測定の結果に基づき、他の装置による処理または人の判断により蓄積量が基準量に達したことを検知すればよい。
【0072】
<変形例11>
蓄積物検出装置は、上述した実施形態では、制御部40が測定部30に抵抗値を測定させる時刻を時間の間隔を用いて設定したが、これ以外に、測定の頻度を用いたり、測定の時刻を直接用いたりしてもよい。時刻を直接設定する場合には、蓄積物Sが温度の影響を受けにくい状態で抵抗RTを測定させるため、蓄積部20の周辺の温度が概ね一定となる時間帯の時刻を設定するのが望ましい。
【0073】
<変形例12>
蓄積物検出装置は、表示部または音を出力する報知部を備えてもよい。例えば、蓄積物検出装置10は、図4に破線で示した表示部91および報知部92を備える。この場合、制御部40は、検出または検知した結果を示す情報を表示部91に供給し、供給した情報を表示させるように表示部91を制御する。また、制御部40は、検知した結果を示す情報を報知部92に供給し、音を出力させるように報知部92を制御する。
【符号の説明】
【0074】
10,10a,10b…蓄積物検出装置、11…筐体、12,12a,12c…センサ部、20,20a,20b,20c1,20c2,20c3,20d,20e,20f,20g…蓄積部、21,21c1,21d1…開口部、30,30b…測定部、31,31a,31b,31d,31e,31f,31g,32,32a,32b,32d,32e,32f,32g…電極、33…配線、40…制御部、50…記憶部、60…時計部、70…操作部、80…I/F、91…表示部、92…報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流れる気体流路内に配置され、前記気体に含まれる物質が付着して蓄積される蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている前記物質に対し、蓄積量に応じて変化する電気特性を測定する測定手段と
を具備する蓄積物検出装置。
【請求項2】
前記測定手段の測定結果と予め定められた閾値とを比較し、比較結果を反映した情報を出力する比較手段
を具備することを特徴とする請求項1記載の蓄積物検出装置。
【請求項3】
前記蓄積部は、一対の電極を備え、
前記測定手段は、前記一対の電極間に蓄積された前記物質の抵抗値を測定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蓄積物検出装置。
【請求項4】
前記蓄積部は、抵抗素子を有し、
前記測定手段は、前記抵抗素子と前記蓄積部に蓄積された前記物質との合成抵抗値を測定する
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の蓄積物検出装置。
【請求項5】
前記蓄積部は、2つの電極を備え、
前記測定手段は、前記2つの電極間の静電容量または容量リアクタンスを測定する
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の蓄積物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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