説明

蓄電デバイス用セパレータ及びその製造方法

【課題】 本発明は、耐熱性、機械的強度、寸法安定性を有した薄膜化したセパレータで、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡および自己放電がしにくく、しかも有機溶剤やイオン性液体存在下の高温環境下での長期使用後においても耐久性に優れるセパレータを提供する。
【解決手段】 本発明の蓄電デバイス用セパレータは、2層以上の繊維層を積層してなる蓄電デバイス用セパレータであって、該繊維層の少なくとも1層以上が合成繊維と合成樹脂系結着剤を含有する。また、前記合成樹脂系結着剤がカルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴムから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましく、前記繊維層が、2つ以上のヘッドを有する傾斜ワイヤー抄紙機を用い、抄紙ネット上で重ねて抄き合わせてなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用セパレータに関するものであり、特に、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ又はアルミニウム電解コンデンサ用などの蓄電デバイス用セパレータ(以下、「セパレータ」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機器、民生機器に関わらず電気・電子機器の需要増加及びハイブリッド自動車等の開発により、電子部品であるリチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサの需要が著しく増加している。これらの電気・電子機器は高容量化、高機能化が日進月歩で進行しており、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサにおいても高容量化、高機能化が要求されており、過酷な環境下での使用も増えている。
【0003】
リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池は、活物質とリチウム含有酸化物とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンで混合しアルミニウム製集電体上にシート化した正極と、リチウムイオンを吸蔵放出し得る炭素質材料とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンで混合し銅製集電体上にシート化した負極と、ポリエチレンやポリプロピレン等により成る多孔質電解質膜とを、正極、電解質膜、負極の順に捲回もしくは積層した電極体に駆動用電解液を含浸し、アルミニウムケースにより封止した構造のものである。
【0004】
電気二重層キャパシタは、活性炭と導電剤及びバインダーを混錬したものをアルミニウム製正極、負極各集電体の両面に貼り付け、セルロース等により成るセパレータを介して捲回もしくは積層した電極体に駆動用電解液を含浸し、アルミニウムケースと封止体により梱包して短絡しないように正極リードと負極リードを封止体に貫通させ外部に引き出した構造のものである。
【0005】
アルミニウム電解コンデンサは、エッチングした後、化成処理を施して誘電体皮膜を形成したアルミニウム製正極箔と、エッチングされたアルミニウム製負極箔とを、セルロース等より成るセパレータを介して捲回もしくは積層した電極体に駆動用電解液を含浸し、アルミニウムケースと封止体により梱包して短絡しないように正極リードと負極リードを封止体に貫通させ外部に引き出した構造のものである。
【0006】
従来、前記リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池のセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜が使用されており、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサのセパレータとしては、セルロースパルプから成る紙や、セルロース繊維から成る不織布が使用されている。
【0007】
ところで、先述のような電子部品は高容量化、高機能化の要求がますます大きくなっている。高容量化するためには、充放電時の自己発熱もしくは異常充電時などの異常発熱に耐え得るための耐熱性、機械的強度、寸法安定性をもったセパレータが求められている。一方、高機能化の一つとして急速充放電特性の向上、高出力特性の向上、高温雰囲気下での使用等が求められており、セパレータには薄膜化、均一性の向上、耐熱性が強く要求されている。しかしながら、従来のセパレータでは、耐熱性が不十分であるばかりか、薄膜化により貫通孔が存在しやすくまた機械的強度が低下し、その結果、電極間で内部短絡を生じたり、均一性が不十分でイオンの移動が局所的に集中する部分が発生しやすく、信頼性の低下等の問題があった。また上述のリチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサには駆動用電解液に有機溶剤やイオン性液体が使用されており、セルロース等のセパレータでは高温での長期耐久試験でかなり劣化してしまうという問題があった。
【0008】
このようなセパレータの要求に対して、例えば、ポリオレフィンを延伸して作製される比較的透気度の値が高い微多孔樹脂フィルム(延伸膜)に針やレーザーで貫通孔を設けたものをセパレータとして使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような微多孔樹脂フィルムは、それ単体で使用すると貫通孔があるが故に正極と負極とが短絡を起こしてしまう恐れがあった。また、シャットダウン温度以上のメルトダウン温度域において収縮しやすい性質を有しており、その結果、高温になった場合、電極間の短絡を起こしやすいという問題を有していた。
【0009】
また、駆動用電解液中での熱劣化が少ない化学繊維を含有するセパレータを用いることにより、耐熱性を高め、高温使用時の寿命を長くすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この文献には、セパレータ中の化学繊維の配合割合が10%程度で、残りはセルロース繊維等の繊維を使用することが可能であるとの記述がある。しかしながら、該セパレータは、有機溶剤やイオン性液体存在下の高温環境下では、セパレータの質量減少が起こることにより、強度、耐久性の劣化が起こりやすい。また、耐久性の高い化学繊維と、耐久性の低いセルロース繊維がランダムに抄造されているために、有機溶剤に対してセパレータの劣化が不均一に起こり、電流集中が起こりやすくなる。さらに、該セパレータの構造は単層構造であるがために、薄膜化した場合、内部短絡が発生しやすい。
【0010】
また、別の文献として、内部短絡を防止するために、円網抄紙機を使用して2層以上の層を1層に抄き合わせることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、従来のものは、すべての層が天然繊維で構成されているために、有機溶剤やイオン性液体存在下の高温環境下では、セパレータの質量減少により、強度、耐久性の劣化が起こり、製品特性を維持することができなくなるという問題があった。又、円網抄紙機で1層ずつ個別に抄造したものを張り合わせているために、層間に境界が生じ、イオンの移動を阻害する原因ともなりやすい。
【0011】
また、フィブリル化された天然繊維を湿式抄紙し、抄紙後、紙力増強剤を含浸塗布することにより薄膜化してセパレータを低抵抗化する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、セルロース等の天然繊維のみからなるセパレータでは高温での長期耐久試験で放電容量の低下や膜厚の減少を伴う劣化を生ずる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO01/67536号公報
【特許文献2】特開2002−367863号公報
【特許文献3】特許第2892412公報
【特許文献4】特開平8−273984公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、耐熱性、機械的強度、寸法安定性を有した薄膜化したセパレータで、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡および自己放電がしにくく、しかも有機溶剤やイオン性液体存在下の高温環境下での長期使用後においても耐久性に優れる蓄電デバイス用セパレータ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のセパレータは、2層以上の繊維層を積層してなるセパレータであって、該繊維層の少なくとも1層以上が、合成繊維と合成樹脂系結着剤を含有することを特徴とする。
また、前記合成樹脂系結着剤がカルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴムから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
また、前記合成樹脂系結着剤が熱処理で融着していることが好ましい。
また、前記合成繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリアリレートから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、前記合成繊維の繊維径が5μm以下、繊維長が10mm以下であることが好ましい。
また、前記繊維層が、2つ以上のヘッドを有する傾斜ワイヤー抄紙機を用い、抄紙ネット上で重ねて抄き合わせてなることが好ましい。
また、前記繊維層が、第1のフローボックス内の吃水線と抄紙ネットとの交差部近傍に第2のフローボックス下部が位置する構造を持つ複数層を同時に形成できる多槽傾斜型湿式抄紙機を使用し、抄紙ネット上で重ねて抄き合わせてなることが好ましい。
また、前記蓄電デバイスが、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、アルミニウム電解コンデンサのいずれかであることが好ましい。
また、本発明の蓄電デバイス用セパレータの製造方法は、噴霧塗布により前記合成樹脂系結着剤を乾燥状態の繊維層または湿紙状態の繊維層に塗布して得るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセパレータは、耐熱性、機械的強度、寸法安定性を有した薄膜化したセパレータで、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡防止も自己放電の抑制も優れており、しかも有機溶剤やイオン性液体存在下での高温長期使用後の耐久性に優れている。従って、本発明のセパレータは、蓄電デバイス用、特に、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサ用として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる多槽傾斜型湿式抄紙機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のセパレータは、2層以上の繊維層を積層してなるセパレータであって、かつ、該繊維層の少なくとも1層以上が合成繊維を含有してなり、合成樹脂系結着剤を含有することを特徴とする。
本発明は、抄紙後の乾燥状態のセパレータに合成樹脂系結着剤を塗布後、あるいは、湿紙状態のセパレータに合成樹脂系結着剤を塗布後、該結着剤を熱処理で融着させることにより繊維間の結合が強化されるため、突き刺し強度が向上し、さらに、融着した結着剤により繊維同士が固着されるため、膜厚方向(Z軸方向)の押し潰し強度が向上し、耐ショート性に優れたセパレータを提供することができる。
【0018】
また、繊維が結着剤樹脂により被覆されるため、有機溶剤やイオン性液体、更には高温条件に対する耐久性が高くなり、長期間高温雰囲気下で使用され続けても劣化しにくい高温長期使用時の耐久性に優れたセパレータを提供することができる。
【0019】
合成樹脂系結着剤としては、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)などから選択される少なくとも1種を用いることができるが、水溶液エマルジョンが市販されているスチレン−ブタジエンゴム(SBR)あるいは水溶性のカルボキシメチルセルロース(CMC)が、セパレータ中に有機溶剤が残留しないため特に好ましい。
【0020】
合成樹脂系結着剤は、繊維100質量部に対して5質量部から200質量部塗布することが好ましく、特に好ましくは、10質量部から150質量部である。5質量部未満では、本発明の効果が発現しにくく、200質量部超では合成樹脂系結着剤により空孔が埋まりセパレータがフィルム化してしまう。
結着剤を混合あるいは塗布する時に用いる溶媒として、非水溶媒または水溶液のいずれも使用できる。非水溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを使用できる。一方、水溶液には、分散剤、増粘剤などを加えて用いることができる。
【0021】
本発明に使用される合成繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリアリレートから選ばれた樹脂よりなるものが好ましく使用されるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、耐熱性が高く、駆動用電解液に用いる有機溶剤やイオン性液体に対して溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。該合成繊維を含有する繊維層を積層することによって、有機溶剤やイオン性液体に対する耐久性が高くなり、長期間高温雰囲気下で使用され続けても劣化しにくくなる。
【0022】
本発明において、前記合成繊維を含有する繊維層、およびその繊維層と積層される繊維層に用いられる他の繊維は、前記合成繊維の中から選択しても良く、また、前記以外の他の合成繊維あるいは天然パルプからなるセルロース繊維等のいずれも用いることができる。これらの合成繊維およびセルロース繊維等は、電解液の保持性を良くするため、また、均一な繊維層を形成するために叩解可能であることが好ましい。
【0023】
本発明において、合成繊維の繊維径は5μm以下、繊維長は10mm以下が好ましく、特に好ましくは繊維径が3μm以下、繊維長が3mm以下である。繊維径が5μmを超えた場合または繊維長が10mmを超えた場合は、薄膜化した際に貫通孔ができる可能性が高くなり、内部短絡の原因となりやすい。
本発明において、繊維層の細孔径は、バブルポイント法による平均孔径が0.1μm〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5.0μmの範囲である。平均孔径が0.1μmより小さいと、イオン伝導性が低下し、内部抵抗が高くなりやすい。また、セパレータの製造の際に水が抜けにくいため、製造しにくくなる。15μmを超えると、薄膜化した場合に内部短絡を生じやすくなる。尚、バブルポイント法による孔径の測定は、西華産業社製のポロメーターを使用すればよい。
【0024】
本発明のセパレータの厚さは、50μm以下であることが好ましい。セパレータの厚さが50μmを超えると、電気化学素子の薄型化になりにくく同時に、一定のセル体積に入れられる電極材の量が少なくなり、容量が小さくなってしまうばかりでなく、抵抗が高くなり好ましくない。
また、本発明のセパレータの密度は、0.20g/cm〜0.75g/cmであることが好ましい。0.20g/cm未満であると、セパレータの空隙部分が過多となり、短絡の発生や、耐自己放電性が悪化しやすいなどの不具合を生じやすい。一方、密度が0.75g/cmより大きいと、セパレータを構成する材料の詰まり方が過多となるために、イオン移動が阻害され抵抗が高くなりやすい。
【0025】
本発明のセパレータの空隙率は、30%〜90%の範囲にあることが、短絡を防止することと抵抗が高くなるのを抑えることを両立させるために好ましい。ここでいう空隙率は、坪量M(g/cm)、厚さT(μm)、密度D(g/cm)を用いて次式により求められる。
空隙率(%)=[1−(M/T)/D]×100
【0026】
以上説明したように、本発明のセパレータは、繊維層を2層以上積層した積層構造を有し、かつ、少なくとも1層が上記した耐熱性を有する合成繊維を含有する繊維層からなり、合成樹脂系結着剤を含有しているため、高温雰囲気下での有機溶剤やイオン性液体に劣化しにくく、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ及びアルミニウム電解コンデンサなどの蓄電デバイスに好適に使用することができる。なお、本発明のセパレータを用いて蓄電デバイスを作製する場合、正極、負極、電解液など電気化学素子を構成する材料は、従来周知のものなら如何なるものでも使用することができる。
【0027】
次に、本発明のセパレータの製造方法について説明するが、これのみに限定されるものではなく、他の方法でも本発明のセパレータを製造することは可能である。
【0028】
先ず、繊維径5μm以下、繊維長10mm以下に裁断もしくは叩解された1種類以上の合成繊維を、水に分散する。本発明に用いる繊維は、非常に微細なために離解工程では均一に分散しにくいため、パルパーやアジテータのような分散装置や、超音波分散装置を用いることによって、良好な分散が可能である。また、この分散工程で使用する水は、イオン性不純物をできるだけ少なくするために、イオン交換水を用いた方が好ましい。次に、上記と同一の合成繊維又は異種繊維を上記とは別のパルパーやアジテータのような分散装置で水に分散する。叩解は、一般的な叩解機であるボールミル、ビーター、ランペルミル、PFIミル、SDR(シングルディスクリファイナー)、DDR(ダブルディスクリファイナー)、高圧ホモジナイザー、ホモミクサー、あるいはその他のリファイナー等を使用して叩解することができる。
【0029】
上記で得られた繊維の分散体を、長網式、短網式、円網式、傾斜式などの湿式抄紙機を適用し、抄造する。連続したワイヤーメッシュ状の脱水パートで脱水する。湿式抄紙機の中で、2つのヘッドを有する傾斜ワイヤー抄紙機を用いると、2層以上の繊維層を重ね抄き合わせする場合、繊維層間の境界もできにくく、また、ピンホールのない均一なセパレータが得られる。重ね抄き合わせした後、多筒式やヤンキー式ドライヤー等の乾燥パートを通すことによって乾燥状態のセパレータを得ることができる。この抄紙後の乾紙状態のセパレータに目標強度に応じて希釈した合成樹脂系結着剤溶液を含浸塗布する。塗布方式としてはダイレクトロールコーター、ディップコーター、スプレーコーター、キッスロールコーター等の塗布方式で浸漬され、多筒式やヤンキー式ドライヤー等の乾燥パートを通すことによって乾燥させて、セパレータを製作する。
【0030】
なお、合成樹脂系結着剤溶液の含浸塗布は、セパレータが湿紙状態のワイアーパート上あるいはフェルト又はカンバス上、あるいは、濾水、通気性の良いキャリアー上で噴霧塗布することがより好ましい。乾燥状態のセパレータへの含浸塗布方式では、セパレータの紙断やシワが発生しやすい。従って、塗布方式としては噴霧塗布が好適である。
【0031】
特に、抄造方法として、第1のフローボックス内の吃水線と抄紙ネットとの交差部近傍に第2のフローボックス下部が位置する構造を持つ複数層を同時に形成できる多槽傾斜型湿式抄紙機を使用し、抄紙ネット上で繊維層を重ねて抄き合わせてなる方法が、繊維層どうしの繊維が積層間で絡み合い剥離しがたくなっているので更に好ましい。また、多槽傾斜型湿式抄紙機で得られたセパレータは、繊維層間の境界もできにくく、ピンホールのない均一なセパレータが得られる。
【0032】
このような多槽傾斜型湿式抄紙機としては、図1のような構成を有する。図1に示したように、抄紙ネット10は、複数のガイドローラーによって矢印α方向に走行される。ガイドローラー11からガイドローラー12の間の傾斜した抄紙ネット10を傾斜走行部13という。本発明においては、第1のフローボックス14内の吃水線WLと傾斜走行部13との交差部近傍Aに第2のフローボックス15の下部が位置する。該交差部近傍Aでは、第1のフローボックス14内の繊維を含む分散体16と第2のフローボックス15内の繊維を含む分散体17が、隔壁18を隔てて隣接している。交差部近傍Aにおける隔壁18と傾斜走行部13との間は、間隙を有し、抄紙ネット10の走行にともない第1のフローボックス14から流れ出された分散体16は、この間隙を通って第2のフローボックス15内の分散体17と混合されるものである。
【実施例1】
【0033】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Aを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Bを作製した。
上記分散体Aを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Bを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは30μmであった。
【実施例2】
【0034】
実施例1において、カルボキシメチルセルロース水溶液をSBR水溶液エマルジョンに変更した以外は同様にして本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.43g/cm、空隙率は75%、セパレータの厚さは32μmであった。
【実施例3】
【0035】
実施例1において、カルボキシメチルセルロース水溶液の乾燥後の噴霧塗布量を10質量部に変更した以外は同様にして本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは30μmであった。
【実施例4】
【0036】
実施例1において、カルボキシメチルセルロース水溶液の乾燥後の噴霧塗布量を60質量部に変更した以外は同様にして本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.52g/cm、空隙率は70%、セパレータの厚さは33μmであった。
【実施例5】
【0037】
実施例1において、カルボキシメチルセルロース水溶液の乾燥後の噴霧塗布量を150質量部に変更した以外は同様にして本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.55g/cm、空隙率は69%、セパレータの厚さは35μmであった。
【実施例6】
【0038】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Aを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Bを作製した。
【0039】
上記分散体Aを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Bを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥した後に、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布し、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは30μmであった。
【実施例7】
【0040】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維と繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Eを作製した。次に、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースをイオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Fを作製した。
【0041】
上記分散体Eを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Fを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.39g/cm、空隙率は74%、セパレータの厚さは30μmであった。
【実施例8】
【0042】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維と繊維径0.8μm、繊維長1.5mmにフィブリル化されたポリフェニレンサルファイドを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Gを作製した。次に、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースをイオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Hを作製した。
【0043】
上記分散体Gを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Hを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.44g/cm、空隙率は74%、セパレータの厚さは31μmであった。
【実施例9】
【0044】
繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された、全芳香族ポリエステル繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Iを作製した。次に、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースをイオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Jを作製した。
【0045】
上記分散体Iを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Jを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.42g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは29μmであった。
【実施例10】
【0046】
繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された、全芳香族ポリエステル繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Kを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Lを作製した。
【0047】
上記分散体Kを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Lを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは34μmであった。
【実施例11】
【0048】
繊維径0.5μm、繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Mを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Nを作製した。
【0049】
上記分散体Mを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Nを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.41g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは29μmであった。
【実施例12】
【0050】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Pを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Qを作製した。
【0051】
上記分散体Pを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Qを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.41g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは19μmであった。
【実施例13】
【0052】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Rを作製した。次に、繊維径0.6μm、繊維長1.5mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドをイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Sを作製した。
さらに、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースをイオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Tを作製した。
【0053】
上記分散体Rを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Sを抄造した。その後、該シート上に分散体Tを抄造した。得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、セパレータの厚さは35μmであった。
【実施例14】
【0054】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなる繊維と、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドからなる繊維と、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースからなる繊維を、各々25:60:15の質量比率でイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、分散体Uを作製した。
【0055】
上記分散体Uを、図1の多槽傾斜型湿式抄紙機における第1のフローボックス14と第2のフローボックス15の両者に供給し、抄紙ネット10を走行させ傾斜走行部13に各フローボックスから流し出した。このように、同一繊維組成の繊維層を順次積層させた湿体シートを抄造し、フェルト上で、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して厚さ20μm、密度は0.45g/cm、空隙率は70%のピンホールのないセパレータを得た。
【実施例15】
【0056】
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなる繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、分散体Vを作製した。繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドからなる繊維と、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースからなる繊維を、各々80:20の質量比率でイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、分散体Wを作製した。
【0057】
上記分散体Vを、図1における多槽傾斜型湿式抄紙機の第1のフローボックス14に供給し、上記分散体Wを第2のフローボックス15に供給した。次に抄紙ネット10を走行させ傾斜走行部13に各フローボックスから分散体を流し出した。このように、繊維種の異なる繊維層を順次積層させた湿体シートを抄造し、フェルト上で、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して厚さ20μm、密度は0.45g/cm、空隙率は69%のピンホールがなく、表裏で繊維種の異なるセパレータを得た。
【0058】
(比較例1)
繊維径2.5μm、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維をイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Aを作製した。次に、繊維径0.2μm、繊維長0.6mmにフィブリル化された全芳香族ポリアミドと、繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された溶剤紡糸セルロースを質量比で1対1の割合で混合し、イオン交換水に0.05質量%の濃度で上記とは別のパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体Bを作製した。
【0059】
上記分散体Aを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、湿紙シートを得た。さらに、該シート上に分散体Bを抄造した。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して比較用セパレータを得た。
得られた比較用セパレータの物性は、密度は0.40g/cm、空隙率は73%、厚さは30μmであった。
【0060】
(比較例2)
繊維径0.5μm、繊維長1mmにフィブリル化された合成繊維ではない溶剤紡糸セルロースをイオン交換水に0.05質量%の濃度でパルパー内に投入し30分間分散し、繊維の分散体c作製した。
上記分散体cを、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて抄造し、目付量6g/cmの湿紙シートを得た。その後、得られた湿体シートを手抄き装置から取り出し、上記乾燥繊維の合計質量100質量部に対し、乾燥後の塗布量が20質量部になるようにカルボキシメチルセルロース水溶液を噴霧塗布した後に、ヤンキードライヤーにて130℃で乾燥して比較用セパレータを得た。
得られた比較用セパレータの物性は、密度は0.41g/cm、空隙率は74%、厚さは32μmであった。
実施例1〜15及び比較例1〜2で得られたセパレータにおいて下記評価を行い、セパレータとしての特性を評価した。なお、それぞれのセパレータについて、膜厚、密度、空隙率の物性値を表1に示す
【0061】
【表1】

【0062】
<電気二重層キャパシタの組み立てと放電容量および電圧保持性の評価>
実施例1〜15及び比較例1〜2のセパレータについて、正極、負極の電極を用いて電気二重層キャパシタを組み立てて、各々100個ずつ捲回型セルを作製した。なお、捲回型セルの作製においては、電極として電気二重層キャパシタ用の活性炭電極(宝泉株式会社製)を用いた。また、電解液としてプロピレンカーボネートに、1mol/Lとなるようにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(キシダ化学株式会社製)を溶解したものを用いた。
作製された捲回型セルについて、初期放電容量、2000時間試験後の放電容量、4000時間試験後の放電容量についてLCRメーターで測定した。また、各々のセルについて、2000時間試験後に2.5Vにて充電した後に、電気回路を開放して24時間後の保持電圧を調べた。なお、試験条件は、80℃、2.5V印加で行った。
得られた結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
<セパレータの押し潰し強度比較>
実施例1〜15及び比較例1〜2のセパレータを170℃で1N/cmの圧力で押し潰した後の厚さを測定した。
得られた結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
表2、表3の結果から明らかなように、本発明のセパレータを用いた電気二重層キャパシタは、80℃、2.5Vによる4000時間試験後も8.5F以上の十分な放電容量を維持し、且つ2.26V以上の電圧を保持しており、押し潰し強度もほぼ初期値を保持しており、優れた性能を有することが確認された。これに対して、比較例1及び2のセパレータを用いた電気二重層キャパシタは、放電容量の低下が大きく、著しく劣るものであった。また、比較例1及び2のセパレータは、押し潰し試験において、著しく膜厚を減少させていた。
以上の結果から、本発明のセパレータは、薄膜で、有機溶剤やイオン性液体存在下での高温環境下での耐久性に、非常に優れていることが判った。従って、本発明のセパレータは、電気二重層キャパシタのような蓄電デバイスに好適に用いられ、電極間の短絡防止や自己放電の抑制に優れるものであった。
【符号の説明】
【0067】
10 抄紙ネット
11 ガイドローラー
12 ガイドローラー
13 傾斜走行部
14 第1のフローボックス
15 第2のフローボックス
16 分散体
17 分散体
18 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の繊維層を積層してなる蓄電デバイス用セパレータであって、該繊維層の少なくとも1層以上が合成繊維と合成樹脂系結着剤を含有することを特徴とする蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記合成樹脂系結着剤がカルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴムから選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記合成樹脂系結着剤が熱処理で融着していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
前記合成繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリアリレートから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項5】
前記合成繊維の繊維径が5μm以下、繊維長が10mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
前記繊維層が、2つ以上のヘッドを有する傾斜ワイヤー抄紙機を用い、抄紙ネット上で重ねて抄き合わせてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項7】
前記繊維層が、第1のフローボックス内の吃水線と抄紙ネットとの交差部近傍に第2のフローボックス下部が位置する構造を持つ複数層を同時に形成できる多槽傾斜型湿式抄紙機を使用し、抄紙ネット上で重ねて抄き合わせてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項8】
前記蓄電デバイスが、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、アルミニウム電解コンデンサのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項9】
噴霧塗布により合成樹脂系結着剤を乾燥状態の繊維層または湿紙状態の繊維層に塗布して請求項1乃至8に記載のいずれかの蓄電デバイス用セパレータを得ることを特徴とする蓄電デバイス用セパレータの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−219335(P2010−219335A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64888(P2009−64888)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】