説明

蓄電デバイス用電極、その製造方法及びその接続方法

【課題】従来のスポット溶接やボルト締めによる接合に比べて、接地面積を大きくし、接合箇所の抵抗値を低くして、蓄電デバイスの電圧を減少させることなく有効に供給することができるようにする。
【解決手段】Alからなる陽極電極の接続端子部10a上にZn層21又はZn合金層、Ni層22、Sn層23又はSn合金層がめっきで形成される。これにより、Sn層23又はSn合金層上でAlの異種金属からなるCu陰極電極とはんだ付けできるようになり、Al陽極電極とCu陰極電極との接合強度を向上することができる。また、従来のスポット溶接やボルト締めによる接合に比べて、接地面積が大きく、接合箇所の抵抗値が低くなるので、蓄電デバイスの接続抵抗の電圧降下を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ及び二次電池等の電気エネルギーを蓄えることが可能な蓄電デバイス用電極、その製造方法及びその接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタや二次電池の代替として期待されている。このリチウムイオンキャパシタは、負極イオン吸蔵という物理現象を利用することで蓄電効率が著しく高められたキャパシタ蓄電器である。現在、電気二重層キャパシタは、列車、建機等の大型機械のセルモータで発生した電気の蓄電に用いられているが、今後、小型化によって、自動車の燃料電池等の蓄電にも適用されることが期待されている。
【0003】
リチウムイオンキャパシタは、非対称電極構造を有する。これにより、電気二重層キャパシタと比較して電圧が高く、二次電池と比較して内部抵抗が低くて、短時間で充放電が行える、充放電による劣化が少なく製品寿命が長い等の長所を有する。しかしながら、リチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度が低いという欠点を有している。キャパシタには、捲回型キャパシタや積層型キャパシタ等があり、どれも陽極及び陰極の二つの電極を有している。
【0004】
リチウムイオンキャパシタが有する二つの電極は、それぞれ異種金属で構成されたものであり、例えば、陽極のリード電極にAl等、陰極のリード電極にCu等が使用される。大きな放電エネルギーを求められたときには並列に接続して使用し、高電圧を求められたときには直列に接続して使用される。
【0005】
従来の積層型のリチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ及び二次電池等に使用されるリード電極の接続方法としては、箔状のリード電極を用いて、超音波等によるスポット溶接で接合する方法(特許文献1)、リード電極に対して押圧状態で接触する回転体で接続する方法(特許文献2)、箔状のリード電極をボルト等で締め付ける方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−90907号公報
【特許文献2】特開2005−209735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のスポット溶接による電極の接続方法では、Al電極とAl電極との接続やCu電極とCu電極との接続(並列接続)のように、同種金属の電極同士の接合では接合強度が高いが、Al電極とCu電極との接続(直列接続)のように、異種金属の接合では接合強度が低く、接続信頼性が乏しかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の回転体による電極の接続方法やボルト締めによる電極の接続方法では、接触面積が小さく、その接触箇所の抵抗値が高くなるため、大きな電圧降下が発生していた。
【0009】
このような接続抵抗による電圧降下が発生すると、負荷となる電気機器等に供給される電圧は蓄電デバイスの電圧より減少してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、上述のような課題を解決するものであって、異種金属の電極との接合強度を向上することができ、従来のスポット溶接やボルト締めによる接合に比べて、接地面積を大きくし、接合箇所の抵抗値を低くして、蓄電デバイスの電圧を減少させることなく有効に供給することができる蓄電デバイス用電極、その製造方法及びその接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、蓄電デバイスのリード電極をはんだにより接続可能であれば、リード電極の全面で接続できるので、リード電極の接合強度が高くなること、及びリード電極全面で接続できると接続箇所の面積が広がり、接続箇所の抵抗値が下がることを見い出し本発明を完成させた。
【0012】
本発明に係る蓄電デバイス用電極は、Alからなる陽極電極上にZn層又はZn合金層、Ni層、Sn層又はSn合金層がめっきで形成されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る蓄電デバイス用電極では、Alからなる陽極電極上にZn層又はZn合金層、Ni層、Sn層又はSn合金層がめっきで形成される。これにより、Sn層又はSn合金層上でAlの異種金属からなる陰極電極とはんだ付けできるようになる。
【0014】
蓄電デバイスの陽極のリード電極(以下、「Al陽極電極」という)には主にAlが使用されているが、Alは一般のはんだでははんだ付けができない。Al用のはんだとしては、Sn-15質量%ZnやSn-30質量%Znなどが知られているが、これらのはんだは、Znの作用によってAlにはんだ付けするものであり、Al陽極電極同士の接続では問題が発生しない。しかしながら、これらのはんだで、Al陽極電極と陰極のCu電極(以下、「Cu陰極電極」という)とをはんだ付けすると、高温、高湿度下でSn-Znはんだ中のZnイオンがCu中に移動するカーネンダルボイドという現象が現れて、はんだ接合強度が低下してしまう。特に、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタや二次電池では、充放電が繰り返されるので、発熱しやすい。また、Sn-Znはんだは、酸化し易く電気導電性を低下させる。そのため、Al陽極電極とCu陰極電極とにロウ材としてSn-Znはんだを用いて直接接合することは好ましくない。
【0015】
また、Al陽極電極上に、Cu陰極電極とはんだ付け可能な金属をめっきで被覆することが考えられる。しかし、Cu陰極電極とはんだ付け性の良いSn又はSn合金めっきは、Snの標準電極電位が−0.138Vであるのに対して、Alの標準電極電位は−1.1662Vであり、AlとCuとの標準電極電位差が1.524Vもあるために、そのままでは、Al上にSnめっき又はSn合金めっきができない。
【0016】
本発明では、Al陽極電極上にZn層又はZn合金層を被覆することによって、Al陽極電極と密着性の良いZn又はZn合金の被膜が形成される。そして、その被膜上にSn層又ははんだ(Sn合金層)を形成すれば、Cu陰極電極とはんだ付け性の良いAl陽極電極が得られる。
【0017】
Al陽極電極上に被覆するZn層又はZn合金層の被膜は、めっき法により形成される。めっき法では、通常、Zn単体をめっきする場合が多いが、Zn合金のめっきの一例であるZn-6〜16%NiのZn-Ni合金めっきはZnと同じジンケート浴でめっき形成可能である。また、めっき法で形成可能な他のZn合金めっきには、Zn-FeめっきやZn-Alめっき等がある。
【0018】
めっき表面がZnめっきのままでは、後工程のSn層又はSn合金層のめっきの形成が難しいので、NiめっきをSn層又はSn合金層の下地としてZnめっき上に被覆すると良い。Znめっき上にNi層を設けることにより、Sn層又はSn合金層の密着性を向上させる。また、Zn層とSn層の間にあるNi層は、物理的なバリアとして作用する。つまり、Ni層は、Al陽極電極上に被覆しているZnがCu陰極電極へ移動して発生するカーネンダルボイド起因の接合強度の低下を防止する。
【0019】
本発明のZn層又はZn合金層、Sn層又はSn合金層は、電解めっきにより形成させても良いし、無電解めっきにより形成させても良い。このようなめっき法により、全ての工程がめっきで統一できるばかりでなく、膜厚精度の高い蓄電デバイス用電極が得られる。また、膜厚を薄く形成できるので、リードの折り曲げも良好である。因みに、本発明の蓄電デバイス用電極のSn層又はSn合金層をめっき法で形成したときは、Sn又はSn合金層が薄く、はんだ付けが難しいため、脂入りはんだ等を用いてはんだ付けすることが望ましい。Sn層又はSn合金層は、脂入りはんだ等ではんだ付けを容易に行う目的で被覆させている。
【0020】
また、本発明に係る蓄電デバイス用電極の製造方法は、Alからなる陽極電極の表面を有機溶剤で脱脂する脱脂工程と、この脱脂工程で脱脂された陽極電極の表面をエッチング液でエッチングするエッチング工程と、このエッチング工程でエッチングされた陽極電極の表面にジンケート液でZnめっきを形成するZnめっき工程と、このZnめっき工程で形成されたZnめっきの表面にNiめっき液でNiめっきを形成するNiめっき工程と、このNiめっき工程で形成されたNiめっきの表面にSnめっき液でSnめっきを形成するSnめっき工程とを有することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る蓄電デバイス用電極の接続方法は、Alからなる電極上にZn層又はZn合金層、Ni層、Sn層又はSn合金層がめっきで形成される陽極電極と、Cuからなる陰極電極とをSn又ははんだを用いてはんだ付け接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る蓄電デバイス用電極、その製造方法及びその接続方法によれば、Alからなる陽極電極とAlの異種金属からなる陰極電極とがはんだ付けできるので、陽極電極と陰極電極との接合強度を向上することができる。また、従来のスポット溶接やボルト締めによる接合に比べて、接地面積が大きく、接合箇所の抵抗値が低くなり、蓄電デバイスの接続抵抗の電圧降下を低減することができる。この結果、蓄電デバイスの電圧を減少させることなく有効に負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る蓄電デバイス100の構成例を示す斜視図である。
【図2】めっき層20の構成例を示す断面図である。
【図3】蓄電デバイス100の接続例を示す斜視図である。
【図4】接合サンプルの抵抗値の特性例を示す説明図である。
【図5】接合サンプルの電圧値の特性例を示す説明図である。
【図6】接合サンプルの温度の特性例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ及び二次電池等である本発明に係る蓄電デバイスについて説明する。
[蓄電デバイス100の構成例]
まずは、本発明に係る蓄電デバイス100の構成例について説明する。図1に示すように、蓄電デバイス100は、Alからなる陽極リード電極(以下、「Al陽極電極10」という)、Alの異種金属であるCuからなる陰極リード電極(以下、「Cu陰極電極30」という)及びセパレータ40で構成される。
【0025】
Al陽極電極10及びCu陰極電極30には、一端に延在した接続端子部10a,30aがそれぞれ設けられる。接続端子部10a,30aは、蓄電デバイス100を直列接続する場合には、接続端子部10aと接続端子部30aとが接続され、蓄電デバイス100を並列接続する場合には、接続端子部10a同士又は接続端子部30a同士が接続される。また、接続端子部10a,30aは、蓄電デバイス100を直列接続又は並列接続しないで、外部との接続端子となるものでもある。
【0026】
接続端子部10aにはめっき層20が形成される。めっき層20は、接続端子部10aと接続端子部30aとを容易にかつ確実に接続させるためのものである。
【0027】
[めっき層20の構成例]
図2に示すように、めっき層20は、Alからなる接続端子部10a上にZn層21、Ni層22、Sn層23がめっきで形成される。なお、Zn層21は、Zn合金層でも良いし、Sn層23はSn合金層でも良い。例えば、Zn合金層とは、Zn-Ni合金、Zn-Fe合金、Zn-Al合金等であり、Sn合金層とは、Sn-Bi合金、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金等である。
【0028】
Zn層21、Ni層22及びSn層23の厚みは、Al陽極電極10とCu陰極電極30とを接続させる信頼性に影響を与える。Zn層21の厚みが0.01μm以下では、Zn層21上に形成されるNi層22が形成しにくくなり、Zn層21の厚みが0.15μm以上ではAlの接続端子部10aとZn層21との密着性が悪くなるので、この部分で剥離することがある。Zn層21の厚みは、好ましくは、0.05〜0.1μmである。
【0029】
また、Zn層21をめっきするときは、Alの接続端子部10aとの密着性を高めるためにアルカリ浴が好ましく、例えば、ZnO、Zn、NaOH等を水で溶解したジンケート浴及び当該ジンケート浴にNaCN等のシアン化物を添加したシアン化物浴が好ましい。ジンケート浴及びシアン化物浴によるめっきは、接続端子部10aのAlの表面が酸化し易く1回ではあまり効果がないため、2回以上の処理が必要である。
【0030】
Ni層22は、当該Ni層22の厚みが薄すぎると、Zn層21とSn層23との間のバリア効果がなくなってしまい、逆に厚すぎると、はんだ付け時に当該Ni層22とCu陰極電極30とが反応してしまいCu3Sn及びCu6Sn5等の金属間化合物を形成する。Cu3Sn及びCu6Sn5等の金属間化合物は硬く脆いために電極には適さない。そのため、Ni層22の厚みは、1〜3μmが好ましく、より好ましくは、2〜3μmである。
【0031】
Sn層23は、当該Sn層23の厚みが薄すぎると、Ni層22のNiが酸化してCu陰極電極30とのはんだ付け性が悪くなってしまい、厚すぎると、Al陽極電極10の折り曲げ加工等で、当該Sn層23部分が破壊され易くなる。そのため、Sn層23の厚みは、5〜15μmが好ましい。
【0032】
[蓄電デバイス100の接続例]
次に、蓄電デバイス100の接続例について説明する。図3に示すように、蓄電デバイス100を直列接続する場合、接続端子部10aと接続端子部30aとをめっき層20及びはんだ50を介して接続させる。はんだ50は、接続端子部10aのAlとははんだ付けし難いが、Cuの接続端子部30a及びめっき層20とははんだ付けが容易である。因みに、はんだ50は、鉛入りはんだでも良いし、Sn-Ag-CuやSn-Znで構成される鉛フリーはんだでも良い。
【0033】
これにより、めっき層20を介してAl陽極電極10とCu陰極電極30とがはんだ付けできるので、Al陽極電極10とCu陰極電極30との接合強度を向上することができる。また、従来のスポット溶接やボルト締めによる接合に比べて、接続端子部10aと接続端子部30aとの接地面積が大きく、接合部(接続端子部10a及び接続端子部30aが接合している部分をいう)の抵抗値が低くなるので、蓄電デバイス100の接続抵抗の電圧降下を低減することができる。この結果、蓄電デバイス100の電圧を減少させることなく有効に負荷に供給することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、Cuからなる陰極電極について説明したが、これに限定されず、Alの異種金属の陰極電極に本発明が適用可能である。
【実施例1】
【0035】
次に、本発明に係る蓄電デバイス100のAl陽極電極10に形成されるめっき層20の製造方法について説明する。めっき層20は、以下の1〜5の手順に従って製造される。
【0036】
<1.脱脂工程>
長さ70mm、幅50mm、厚み0.2mmの大きさの接続端子部10aを、有機溶剤を用いて浸漬脱脂を行う。
【0037】
<2.エッチング工程>
脱脂された接続端子部10aを水洗、アルカリエッチング後、酸溶液(エッチング液)に浸漬して表面を荒らす。この工程によりAlからなる接続端子部10aとZn層21との密着が良好になる。
【0038】
<3.Znめっき工程>
エッチング処理した接続端子部10aを、ZnO、Zn、NaOH等を水で溶解したジンケート浴に浸漬して、Znめっき(Zn層21)を形成する。
Znめっきした接続端子部10aに付着したジンケート液を流すために水洗し、その後、接続端子部10aを硝酸に浸漬して、ジンケート(Zn等)を剥離する。
再度、ジンケート浴に接続端子部10aを浸漬して、Znめっきを形成し、水洗後、硝酸に浸漬して、ジンケート(Zn等)を剥離する。
なお、上述のZnめっきの代わりにZn-Ni合金めっきを形成する場合には、ジンケート浴にZnCl2、NiCl2等を添加したジンケート浴を使用する。
【0039】
<4.Niめっき工程>
Znめっきが形成された接続端子部10aを、NiSO4・6H2O、NaH2PO2等を水に溶かした無電解Niめっき浴に300秒程度浸漬してNiめっき(Ni層22)を形成し、水洗する。なお、Niめっきは、無電解めっきに限定されず、電解めっきであっても構わない。
【0040】
<5.Snめっき工程>
Niめっきが形成された接続端子部10aを、Na2SO3・3H2O、Sn、NaOH2等を水に溶かしたアルカリ性酸性Snめっき浴の中に20分程度浸漬してSnめっき(Sn層23)を形成し、水洗する。その後、乾燥することで、めっき層20が完成する。
【0041】
上述の1〜5の工程で製造されためっき層20を蛍光X線式膜厚計にて膜厚を測定した結果、Zn層21の厚みが0.05μmで、Ni層22の厚みが1.5μmで、Sn層23の厚みが7μmであった。
【実施例2】
【0042】
実施例1で形成しためっき層20を有するAl陽極電極10とCu陰極電極30とを脂入りはんだを用いてはんだ付けした。脂入りはんだは、RMA08(千住金属工業株式会社製)を使用し、はんだ鏝の鏝先の温度が300℃、はんだ付け時間が10秒の条件下ではんだ付けした。
【0043】
比較例1として、Al陽極電極とCu陰極電極とをSn-15質量%Znで構成される線はんだで直接はんだ付けしたものを形成した。因みに、このはんだ付けでは、フラックスを付けながら行った。
【0044】
比較例2として、Al陽極電極とCu陰極電極とを超音波によるスポット溶接で接続させたものを形成した。
【0045】
実施例1、比較例1及び2のAl陽極電極とCu陰極電極との接合強度の測定結果を表1に示す。因みに、この接合強度は、JIS H8630及びJIS C6481に準じて、密着強度試験器で測定した(試料数N=5)。また、試料を加速して酸化させた後の接合強度も測定した。その酸化加速条件は、雰囲気温度85℃、湿度85%の恒温槽に24時間試料を入れて、その試料に、1秒毎にON/OFFを繰り返す100Aの電流を流した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、酸化加速前の接合強度は、実施例1では5.9kg/cm、比較例1では5.3kg/cm、比較例2では2.9kg/cmであった。これにより、実施例1は、比較例1及び2よりも接合強度が向上していることがわかる。
【0048】
酸化加速後の接合強度は、実施例1では4.5kg/cm、比較例1では3.8kg/cm、比較例2では0.71kg/cmであった。これにより、実施例1は、酸化加速後であっても比較例1及び2よりも接合強度が向上していることがわかる。
【0049】
酸化加速前の接合強度と酸化加速後の接合強度の差は、実施例1では1.4kg/cm、比較例1では1.5kg/cm、比較例2では2.19kg/cmであった。これにより、実施例1は、酸化加速前の接合強度と酸化加速後の接合強度の差が比較例1及び2よりも小さく、接合の信頼性が向上していることがわかる。
【0050】
次に、実施例1、比較例1及び2を塩水噴霧の環境試験の結果(試験開始から120時間後及び600時間後のAl陽極電極とCu陰極電極との状態)を表2に示す。因みに、この環境試験は、JIS C0024に準じている。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示すように、試験開始から120時間後の実施例1は、孔食及び白粉が発生せず、600時間後の実施例1は、白粉が少量発生している。また、試験開始から120時間後の比較例1は、孔食が発生し、600時間後の比較例1は、白粉が大量に発生している。また、試験開始から120時間後の比較例2は、白粉が発生し、600時間後の比較例2は、白粉が大量に発生している。このような孔食が発生したり、白粉が大量に発生してしまうと、蓄電デバイス用電極の電気伝導性や強度が低下してしまう。
【0053】
このように、実施例1は、塩水噴霧の環境であっても、孔食の発生がなく、電気伝導性や強度に影響を及ぼさない程度の少量の白粉しか発生しない。つまり、実施例1は、電気伝導性が良好であり、蓄電デバイスとして信頼性があることがわかる。また、比較例1及び2は、塩水噴霧の環境では電気伝導性が乏しくなってしまい、蓄電デバイスとして信頼性が乏しいことがわかる。
【実施例3】
【0054】
実施例1、比較例1及び2のAl陽極電極とCu陰極電極とで接合サンプルを作製し、該作製した接合サンプルの抵抗値及び電圧値をマイクロオームメータにてケルビンクリップを用いて四端子法で測定した。その測定条件は、雰囲気温度85℃、湿度85%の恒温槽に実施例1、比較例1及び2の試料を入れて、その試料に、1秒毎にON/OFFを繰り返す100Aの電流を流した。
【0055】
図4は、縦軸が接合サンプルの抵抗値(μΩ)とし、横軸が100Aの電流のON/OFF繰り返し回数(×1000)としたときの接合サンプルの抵抗値の特性例を示す説明図である。図4に示すように、実施例1の接合サンプルの抵抗値は、菱形で示され、初期が400μΩ、ON/OFF24000回後が440μΩ、ON/OFF48000回後が450μΩ、ON/OFF75000回後が450μΩ、ON/OFF120000回後が470μΩであった。比較例1の接合サンプルの抵抗値は、四角で示され、初期が330μΩ、ON/OFF24000回後が360μΩ、ON/OFF48000回後が400μΩ、ON/OFF75000回後が500μΩ、ON/OFF120000回後が600μΩであった。比較例2の接合サンプルの抵抗値は、三角で示され、初期が575μΩ、ON/OFF24000回後が600μΩ、ON/OFF48000回後が600μΩ、ON/OFF75000回後が670μΩ、ON/OFF120000回後が750μΩであった。
【0056】
これにより、ON/OFF繰り返し回数120000回後の実施例1の抵抗値は、比較例1及び2の抵抗値に比べて6〜8割の抵抗値しかない。従って、実施例1では約60〜80%の電気ロスを低減できる。
【0057】
また、実施例1の接合サンプルの抵抗値は、初期からON/OFF120000回後まで70μΩ程度の変化しかなく、これに比べて、比較例1の接合サンプルの抵抗値は270μΩも変化していて、比較例2の接合サンプルの抵抗値は175μΩも変化している。つまり、実施例1は、比較例1及び2に比べて信頼性が向上している。
【0058】
図5は、縦軸が接合サンプルの電圧値(V)とし、横軸が100Aの電流のON/OFF繰り返し回数(×1000)としたときの接合サンプルの電圧値の特性例を示す説明図である。図5に示すように、実施例1の接合サンプルの電圧値は、菱形で示され、初期からON/OFF120000回後まで0.2V一定であった。比較例1の接合サンプルの電圧値は、四角で示され、初期が0.2V、ON/OFF24000回後が0.2V、ON/OFF48000回後が0.3V、ON/OFF75000回後が0.4V、ON/OFF120000回後が0.5Vであった。比較例2の接合サンプルの電圧値は、三角で示され、初期が0.7V、ON/OFF24000回後が0.7V、ON/OFF48000回後が0.8V、ON/OFF75000回後が0.8V、ON/OFF120000回後が0.8Vであった。
【0059】
これにより、実施例1は、ON/OFF繰り返し回数120000回後であっても、接合サンプルの電圧値が変化せず、比較例1及び2に比べて信頼性が向上している。
【実施例4】
【0060】
実施例1、比較例1及び2のAl陽極電極とCu陰極電極とで接合サンプルを作製し、該作製した接合サンプルの温度をKタイプの熱電対で測定した。測定条件は、実施例3で示した測定条件と同様に、雰囲気温度85℃、湿度85%の恒温槽に実施例1、比較例1及び2の試料を入れて、その試料に、1秒毎にON/OFFを繰り返す100Aの電流を流した。
【0061】
図6は、縦軸が接合サンプルの温度(℃)とし、横軸が100Aの電流のON/OFF繰り返し回数(×1000)としたときの接合サンプルの温度の特性例を示す説明図である。図6に示すように、実施例1の接合サンプルの温度は、菱形で示され、初期が85.55℃、ON/OFF24000回後が85.55℃、ON/OFF48000回後が85.55℃、ON/OFF75000回後が85.77℃、ON/OFF120000回後が85.77℃であった。比較例1の接合サンプルの温度は、四角で示され、初期が84.22℃、ON/OFF24000回後が84.28℃、ON/OFF48000回後が85.11℃、ON/OFF75000回後が87.9℃、ON/OFF120000回後が90.52℃であった。比較例2の接合サンプルの温度は、三角で示され、初期が96.3℃、ON/OFF24000回後が96.89℃、ON/OFF48000回後が96.06℃、ON/OFF75000回後が97.3℃、ON/OFF120000回後が97.3℃であった。これらの温度変化は、接合サンプルの抵抗値が変化し、ジュール熱が変化することに起因する。
【0062】
これにより、実施例1は、ON/OFF繰り返し回数120000回後であっても、接合サンプルの温度がほとんど変化せず(この理由は、図4で示した接合サンプルの抵抗値が低いことによる。)、比較例1及び2に比べて信頼性が向上している。
【0063】
このように、本発明に係る蓄電デバイス100は、Al陽極電極10上にZn層21、Ni層22、Sn層23がめっきで形成される。これにより、Sn層23でAlの異種金属であるCuからなるCu陰極電極30とはんだ付けできるようになる。この結果、Al陽極電極10とCu陰極電極30との接合強度を向上することができる。
【0064】
また、蓄電デバイス100は、従来のはんだ付けによる接合(比較例1)や超音波によるスポット溶接(比較例2)及びボルト締めによる接合に比べて、接続端子部10aと接続端子部30aとの接地面積が大きく、接合部の抵抗値が低くなるので、蓄電デバイス100の接続抵抗による電圧降下を低減することができる。この結果、蓄電デバイス100の電圧を減少させることなく有効に負荷に供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の蓄電デバイスは、箱形のものに限定されず、円筒型の電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ及び二次電池等の蓄電デバイスにも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10・・・Al陽極電極、10a,30a・・・接続端子部、20・・・めっき層、21・・・Zn層、22・・・Ni層、23・・・Sn層、30・・・Cu陰極電極、40・・・セパレータ、50・・・はんだ、100・・・蓄電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alからなる陽極電極上にZn層又はZn合金層、Ni層、Sn層又はSn合金層がめっきで形成されることを特徴とする蓄電デバイス用電極。
【請求項2】
前記陽極電極は、
Al上にZn層又はZn合金層が形成され、前記Zn層又はZn合金層上にNi層が形成され、前記Ni層上にSn層又はSn合金層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項3】
前記Zn層又はZn合金層は、
0.05〜0.1μmの厚みを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項4】
前記Ni層は、
1〜3μmの厚みを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項5】
前記Sn層又はSn合金層は、
5〜15μmの厚みを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項6】
Alからなる陽極電極の表面を有機溶剤で脱脂する脱脂工程と、
前記脱脂工程で脱脂された前記陽極電極の表面をエッチング液でエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程でエッチングされた前記陽極電極の表面にジンケート液でZnめっきを形成するZnめっき工程と、
前記Znめっき工程で形成されたZnめっきの表面にNiめっき液でNiめっきを形成するNiめっき工程と、
前記Niめっき工程で形成されたNiめっきの表面にSnめっき液でSnめっきを形成するSnめっき工程とを有することを特徴とする蓄電デバイス用電極の製造方法。
【請求項7】
Alからなる電極上にZn層又はZn合金層、Ni層、Sn層又はSn合金層がめっきで形成される陽極電極と、Cuからなる陰極電極とをSn又ははんだを用いてはんだ付け接続することを特徴とする蓄電デバイス用電極の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9714(P2012−9714A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145566(P2010−145566)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】