説明

蓄電デバイス

【課題】電極幅と、端子間距離と、抵抗率が異なり孔を有する集電体の抵抗比が制御され、電子抵抗の低い集電構造を得ることにより、高出力化の可能な蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】正極3または負極4の少なくとも一方では、集電体の長手方向に沿った第1辺に複数のリードが接続されている。複数のリードのうち、隣接して設けられた2つのリードの中心間の距離をLとし、集電体の幅方向の第2辺の長さをWとする。そして第1辺に平行な方向の集電体の体積抵抗率をRとし、第2辺に平行な方向の集電体の体積抵抗率をRとする。このとき、L/W≦0.5を満たすようにリードを配置し、かつ0.166≦R/R≦0.223を満たす集電体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池など、巻回型の電極構成を有する蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両用の電源や、住宅のエネルギーマネジメントシステム用電源などへ巻回型の電極構成を有する蓄電デバイスを利用することが検討されている。電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池など、このような蓄電デバイスは高容量、高出力、軽量といった特徴を有する。
【0003】
上述の用途では、デジタルビデオカメラやパソコン等の電子機器に比べ、サイズも容量も大きく、使用期間も長い。そのため高容量化、長寿命化が求められる。さらに車両用途では特に、充電・放電がともに数秒程度の短時間で且つ大電力で使用されることが多い。そのため、より高出力化が求められる。
【0004】
高出力化の技術アイテムの一つとして、集電抵抗の低減化がある。集電抵抗を低減させるために、複数の正極リードと複数の負極リードとをそれぞれ重なり合うことなく配置するとともに、正極リードと負極リードを反対方向に導出し、端子の本数を関係式で規制したリチウム二次電池が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方、集電体としてエキスパンドメタル(エキスパンデッドメタル、またはラスメタルともいう)を用いた非水電解質二次電池が開示されている(特許文献2)。このような集電体は一次電池でも用いられており、電極の裏と表から電解液が浸み込むことができるため、活物質の利用率の面で有利である。またエキスパンドメタルに形成された複数の開口に活物質を充填できるため高容量化の面でも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−182656号公報
【特許文献2】特開平10−50319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エキスパンドメタルやパンチングメタルに代表されるシート状多孔性集電体では、孔形状により電子伝導度に異方性を生じる。そのため、端子の配置設計によっては、集電体に起因する抵抗が大きくなる。
【0008】
本発明は、シート状多孔性集電体を用いた場合の電子抵抗を低減し、高出力化の可能な蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の蓄電デバイスは正極と、負極と、正極と負極の間に介在したセパレータと、正極とセパレータと負極に含浸した非水電解質とを有する。正極と負極の少なくとも一方は、シート状多孔性の集電体と、合剤層と、複数のリードとを有する。矩形状の集電体は第1辺と、この第1辺に直交し第1辺より短い第2辺を有する。合剤層は活物質を含み、集電体に保持されている。複数のリードは集電体の第1辺に接続されている。ここで、複数のリードのうち、隣接して設けられた2つのリードの中心間の距離をLとする。集電体の第2辺の長さをWとする。第1辺に平行な方向の集電体の体積抵抗率をRとし、第2辺に平行な方向の集電体の体積抵抗率をRとする。このとき、L/W≦0.5を満たし、かつ0.166≦R/R≦0.223を満たす。このように、リードの数を増やしつつ、集電体の体積抵抗率の異方性を従来にないほど高めることで集電体に係る抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シート状多孔性孔集電体の電子抵抗を低減させることで、高出力化が可能な電気二重層コンデンサ、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1による蓄電デバイスの断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1による蓄電デバイスの電極群の部分展開斜視図(b)同電極群の正極、負極の平面図
【図3】本発明の実施の形態1による蓄電デバイスの正極、負極の集電体であるエキスパンドメタルの斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における電子伝導測定用試料の平面図
【図5】本発明の実施の形態1における電子伝導測定用試料の特性図
【図6】(a)本発明の実施の形態2による蓄電デバイスの電極群の模式斜視図(b)同電極群の内周側の模式図(c)同電極群の外周側の模式図
【図7】本発明の実施の形態2における蓄電デバイスの電極群モデルにおける集電体抵抗と、集電体の幅に垂直な方向の体積抵抗率に対する幅に平行な方向の体積抵抗率の比の関係、および同電極群モデルにおける各種ファクターを比較して示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による蓄電デバイスの断面図、図2はこの蓄電デバイスの電極群の部分展開図と、正極、負極の平面図である。図3は本発明の実施の形態1による蓄電デバイスの正極、負極の集電体であるエキスパンドメタルの斜視図である。本実施の形態では蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池を一例として説明する。
【0013】
図1に示すように、このリチウムイオン二次電池は、電極群50と、蓋11、12と筒部13とを有する。電極群50は、正極3と負極4とセパレータ5で構成されている。具体的には、セパレータ5を介在させて正極3と負極4とを対向させ、これらを巻回して構成されている。蓋11、12は外周で筒部13と溶接されて、電極群50を収容するケースを構成している。なお図示しないが、電極群50には非水電解質が含浸している。
【0014】
図2に示すように正極3は正極集電体である集電体10Aと、集電体10Aに充填された合剤層32を有する。正極3の巻回方向である長尺方向に沿った一端には合剤層32が形成されず集電体10Aが露出した露出部31が設けられている。露出部31には複数の正極リード1が接続されている。図2(b)は複数の正極リード1のうち正極リード1A、1B、1C、1Dを示している。図1に示すように、複数の正極リード1はリード集電板21に接続されている。正極リード1やリード集電板21はアルミニウムを主成分とする金属で形成されている。
【0015】
一方、負極4は負極集電体である集電体10Bと、集電体10Bに充填された合剤層42を有する。負極4の巻回方向である長尺方向に沿った一端には合剤層42が形成されず集電体10Bが露出した露出部41が設けられている。露出部41には複数の負極リード2が接続されている。正極3と負極4は、露出部41が電極群50において露出部31の反対側になるように巻回されている。すなわち、露出部31と露出部41とは電極群50の巻回方向に垂直な両端に設けられている。これにより正極リード1と負極リード2は電極群50を中心にして上下反対の方向に導出されている。
【0016】
図2(b)は複数の負極リード2のうち負極リード2A、2B、2Cを示している。図1に示すように、複数の負極リード2はリード集電板22に接続されている。負極リード2やリード集電板22はアルミニウムを主成分とする金属で形成されている。これ以外に、銅またはニッケルで形成してもよい。
【0017】
集電体10A、10Bは図3に示すようにエキスパンドメタル10で構成されている。エキスパンドメタル10は菱形もしくは亀甲形の開口200を有する。1つの開口200の、長い方の対角線の長さを長目方向の中心間距離Lw、短い方の対角線の長さを短目方向の中心間距離Swと呼ぶ。このような構成のため、エキスパンドメタル10では縦横方向で体積抵抗率が異なる。なお体積抵抗率は、開口200で示す孔部分も含んだ見かけの断面積、見かけの長さを用いて算出した値である。
【0018】
本実施の形態において、エキスパンドメタル10には合金番号1N30のアルミニウム合金を用いている。なおJIS規格で規定された合金番号1N30のアルミニウム合金はアルミニウムを99.30%以上含み、それ以外の成分として硅素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、亜鉛を含む。しかしながら縦横方向における体積抵抗率の比が約1.5倍以上に大きくならなければ、その他のアルミニウム合金でもよい。好ましくは体積抵抗率の小さな純アルミニウム、高純アルミニウムが好ましい。また負極4の集電体10Bは、銅で形成してもよい。
【0019】
なお、体積抵抗率が縦横方向で異なる集電体10A、10Bとしては、シート状多孔性であればよく、エキスパンドメタル、パンチングメタル、網や織布や不織布などの繊維状メタルなどが使用できる。本実施の形態ではエキスパンドメタル10を用いるが、低抵抗という観点では、厚み方向に波うちがなく導電経路を短くできるパンチングメタルのほうが好ましい。なおエキスパンドメタルとは、金属板素材に切れ目を入れ、引き延ばすことにより菱形模様になった金網状の金属であり、パンチングメタルとは金属板をプレス加工して、丸穴、角穴などの小さな穴を規則的に形成した金属である。
【0020】
蓋11にはガスケット51を介して正極端子61が取り付けられている。リード集電板21は正極端子61とフランジ部61Aで電気的に接続されている。具体的には蓋11の電池内側から正極端子61をナット61Bにねじ込む際に蓋11とフランジ部61Aの間にガスケット51を介してリード集電板21を挟んでいる。このようにして正極端子61と正極3とが電気的に接続されている。
【0021】
同様に、蓋12にはガスケット52を介して負極端子62が取り付けられている。リード集電板22は負極端子62とフランジ部62Aで電気的に接続されている。具体的には蓋12の電池内側から負極端子62をナット62Bにねじ込む際に蓋12とフランジ部62Aの間にガスケット52を介してリード集電板22を挟んでいる。このようにして負極端子62と負極4とが電気的に接続されている。
【0022】
次に、正極3の合剤層32、負極4の合剤層42、非水電解質、セパレータ5等を構成する材料について説明する。これらの材料には、通常リチウムイオン二次電池に使用されるものが適用可能である。
【0023】
まず合剤層32の材料について説明する。前述のように、正極3は、集電体10Aと、集電体10Aの片面もしくは両面に担持され、正極活物質、導電剤および結着剤を含む合剤層32とを含む。
【0024】
正極活物質としては、酸化物、硫化物、ポリマーなどが挙げられる。酸化物として、例えば、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、例えばLiMnまたはLiMnOなどのリチウムマンガン複合酸化物、例えばLiNiOなどのリチウムニッケル複合酸化物、例えばLiCoOなどのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLiNi1−yCoなどのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLiMnCo1−yなどのリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLiMn2−yNiなどのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPOなどのオリビン構造を有するリチウムリン酸化合物などが挙げられる。なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などが挙げられる。
【0025】
電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0026】
活物質と導電剤を結着させるための結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0027】
活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は65重量%以上、90重量%以下、導電剤は1重量%以上、10重量%以下、結着剤は1重量%以上、10重量%以下の範囲にすることが好ましい。
【0028】
正極3は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒と混合して調製した正極ペースト(電極ペースト)を集電体10Aに塗布し、乾燥し、プレスを施すことにより作製される。
【0029】
次に合剤層42の材料について説明する。前述のように、負極4は集電体10Bと、集電体10Bの片面もしくは両面に担持され、負極活物質、導電剤および結着剤を含む合剤層42とを含む。
【0030】
負極活物質としては、リチウムを吸蔵放出する物質を使用することができる。その中でも、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、合金などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、例えばWOなどのタングステン酸化物、例えばSiOなどの酸化珪素、例えばLiTi12などのスピネル構造のチタン酸リチウムなどが挙げられる。特に、サイクル性能の点ではチタン酸リチウムが好ましい。また、チタン酸リチウムのリチウム吸蔵電位が約1.5Vであり、アルミニウムもしくはアルミニウム合金に対して電気化学的に安定な材料である。
【0031】
負極活物質のリチウム吸蔵電位は、リチウム金属の開回路電位に対して開回路電位で0.4V以上、3V以下の範囲であることが好ましい。これにより、集電体10Bのアルミニウム成分とリチウムとの合金化反応の進行および集電体10Bの微紛化を抑制できる。
【0032】
電子伝導性を高め、負極活物質と集電体10Bとの接触抵抗を抑えるための導電剤として、炭素材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等を挙げることができる。
【0033】
活物質と導電剤を結着させるための結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴムなどが挙げられる。
【0034】
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比については以下の範囲にすることが好ましい。すなわち、負極活物質は70重量%以上、90重量%以下、導電剤は2重量%以上、10重量%以下、結着剤は2重量%以上、10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤については、3重量%以上とすることにより上述した効果を充分に発揮することができ、10重量%以下とすることにより、高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上とすることにより合剤層42に充分な強度を付与することができ、10重量%以下とすることにより、合剤層42内部の絶縁部分を減少させることができる。
【0035】
負極4は、例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒と混合して調製した負極ペースト(電極ペースト)をアルミニウムまたはアルミニウム合金製の集電体10Bに塗布し、乾燥し、プレスを施すことにより作製される。
【0036】
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質(非水電解液)、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質、またはリチウム塩電解質と高分子材料を複合化した固体非水電解質が挙げられる。また、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性液体)を非水電解質として使用してもよい。
【0037】
非水電解液は、電解質を0.5〜2mol/Lの濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0038】
電解質としては、例えば、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiB[(OCO)などが挙げられる。使用する電解質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。
【0039】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)などの環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)やジメチルカーボネート(DMC)あるいはメチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネート、ジメトキシエタン(DME)やジエトエタン(DEE)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン(DOX)などの環状エーテル、γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)などを挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。
【0040】
ゲル状非水電解質や固体非水電解質に用いる高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0041】
また、常温溶融塩(イオン性液体)は、リチウムイオン、有機物カチオンおよび有機物アニオンから構成されることが好ましい。また、常温溶融塩は、100℃以下、好ましくは室温以下で液体状であることが望ましい。
【0042】
セパレータ5としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの合成樹脂製不織布、セルロースなどの不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを用いることができる。
【0043】
蓋11、12と筒部13で構成されたケースとしては、アルミニウムなど金属製のものを用いることができる。図1は円筒形のケースを示しているが、それ以外に角形でもよく、電極群50の外形に応じて選択すればよい。
【0044】
次に図2(b)を参照しながら正極リード1と正極3及び負極リード2と負極4の配置関係を説明する。前述のように、正極3には電流を取り出すための正極リード1A〜1Dが接続され、負極4には負極リード2A〜2Cが接続されている。正極リード1A〜1D、負極リード2A〜2Cは、集電体10A、10Bの露出部31、41にそれぞれ直接接続されている。正極リード1A、1Bの中心間距離Lc1、正極リード1B、1Cの中心間距離Lc2、正極リード1C、1Dの中心間距離Lc3、負極リード2A、2Bの中心間距離La1、負極リード2B、2Cの中心間距離La2はほぼ同じに設定されている。ただしこれらの端子間距離が異なっていてもよい。そして正極3と負極4は、各負極リード2が隣接する2つの正極リード1の間に位置するように組み合わされている。
【0045】
なお正極3の幅Wcは集電体10Aの幅と同じである。ここで集電体10Aは巻回方向に沿った第1辺と、この第1辺に直交し、第1辺より短い第2辺を有する。幅Wcとは第2辺の長さを意味する。同様に負極4の幅Waは集電体10Bの幅と同じである。ここで集電体10Bは巻回方向に沿った第1辺と、この第1辺に直交し、第1辺より短い第2辺を有する。幅Waとは第2辺の長さを意味する。
【0046】
本実施の形態では、正極3の幅Wcに対する正極リード1の中心間の間隔Lc(Lc1〜Lc3)の比Lc/Wcを0.5以下、かつ負極4の幅Waに対する負極リード2の中心間の間隔La(La1、La2)の比La/Waを0.5以下に設定している。
【0047】
前述のようにエキスパンドメタル10では縦横方向で体積抵抗率が異なる。すなわち集電体10Aの、第1辺に平行な方向の体積抵抗率RLcと第2辺に平行な方向の体積抵抗率RTcとは異なる。同様に集電体10Bの、第1辺に平行な方向の体積抵抗率RLaと第2辺に平行な方向の体積抵抗率RTaとは異なっている。本実施の形態では、RLc/RTcを0.166以上、0.223以下としている。またRLa/RTaを0.166以上、0.223以下としている。
【0048】
以上のように正極リード1の配置(間隔)と正極3の幅Wcとの関係、負極リード2の配置(間隔)と負極4の幅Waとの関係を規定する。かつ第1辺方向の体積抵抗率Rに対する第2辺方向の体積抵抗率Rの比が0.166以上、0.223以下である集電体を用いることで集電体に係る抵抗を低減することができる。これにより蓄電デバイスを高出力化することができる。このように、リードの数を増やしつつ、集電体の体積抵抗率の異方性を従来にないほど高めることで集電体に係る抵抗を低減することができる。
【0049】
集電体10A、10Bが同じエキスパンドメタル10で構成されている場合、合剤層32、42の寄与を除いた電子伝導性は図4に示す試料で評価できる。図4は本実施の形態における電子伝導測定用試料の平面図である。この試料では、長さLがLc2、幅Wが正極3と負極4の幅の平均値であるエキスパンドメタル10に1つの負極リード2Bと、正極リード1B、1Cの2分の1の幅(断面積)の正極リード101B、101Cが溶接されている。
【0050】
この試料において、正極リード101B、101Cの端部と負極リード2Bの端部との間で抵抗を測定すれば合剤層32、42の寄与を除いた電子伝導性評価することができる。そこで、以下の測定では図4に示す試料を評価した結果を示す。
【0051】
まずエキスパンドメタル10の試料を4種類作製した。(表1)に示すように、4種類の試料C−AからC−Dでは、幅Wに沿った方向の体積抵抗率Rと電極の巻回方向である長さLに沿った方向の体積抵抗率Rの組み合わせが異なる。
【0052】
なおこれらの試料は、厚み100μmの合金番号1N30のアルミニウム合金箔を線幅200μmで切り込みを入れて、引き伸ばすことで作製した。その際、図3に示す構造において、Lw/Swが(表1)の条件になるように引き伸ばす条件を変更した。エキスパンドメタル10では、Lw方向(長目方向)に沿った体積抵抗率が体積抵抗率Rで、Sw方向(短目方向)に沿った体積抵抗率が体積抵抗率Rである。すなわち、正極3、負極4において、集電体であるエキスパンドメタル10は、長目方向が幅方向に平行になるように用いられる。
【0053】
なお、パンチングメタルではなくエキスパンドメタルを選択した理由は、パンチングメタルより抵抗率が比較的高くなるエキスパンドメタルで、ΔVを低減できれば、パンチングメタルではさらに低抵抗化が可能であると推測したためである。
【0054】
【表1】

【0055】
次に、(表1)に示した各試料を用い、幅Wを75mmと一定とし、(表2)に示すようにL/Wが0.25から2になるようにリード中心間の距離Lを変化させて抵抗測定用試料用のエキスパンドメタル10を切り出した。切り出したエキスパンドメタル10に対し、厚み100μm、幅2.5mmの合金番号1N30のアルミニウム合金板を正極リード101B、101Cとして溶接し、厚み100μm、幅5mmの合金番号1N30のアルミニウム合金板を負極リード2Bとして溶接し、図4に示す抵抗測定用試料を作製した。
【0056】
【表2】

【0057】
これらの抵抗測定用試料の正極リード101B、101Cと負極リード2Bの間の1kHzにおけるインピーダンスを、YHP製4294Aインピーダンスアナライザを用いて測定した。それぞれの結果から、リードと溶接部の寄与する抵抗値をそれぞれの試料に応じて減じ、エキスパンドメタル10のみが寄与する抵抗を計算した。エキスパンドメタル10のみが寄与する抵抗のそれぞれに(表2)の電流量を乗じてΔVを算出した。その結果を図5に示す。図5は本実施の形態における電子伝導測定用試料の特性図である。横軸の位置が試料CA〜CDに相当し、記号が試料SA〜SEを表している。
【0058】
なお、車両用に使用される電池の正極、負極の単位面積当たりの最大電流量は、一般に15〜37mA/cmであることが知られている。また、電気二重層コンデンサにおいても通常40mA/cm以上が必要である。したがって、エキスパンドメタル10の面積と、露出部31、41を考慮して合剤層32、42が重なり合う面積を設定し(表2の合剤面積)、電流密度が40mA/cmになるよう、電流値を算出している。
【0059】
この最大電流において、エキスパンドメタル10の電子伝導の抵抗が寄与する電圧降下すなわちIRドロップ(ΔV)は、20mV以下であることが必要である。さらには10mV以下であることが好ましい。例えば正極活物質がLiCoO、負極活物質がLiTi12の二次電池の出力電圧は、約2.3Vであり、集電体が寄与するIRドロップを1%未満にしようとすると約20mV以下にする必要がある。さらに出力電圧の変化がなく安定した電圧を出力するためにIRドロップを10mV以下にすることが好ましい。この値が小さければ小さいほど、出力も大きく、電極の面内での反応ばらつきを低減できるため長寿命となる。したがって、図5でもまずΔVが20mV以下となる条件を選択すべきであり、さらに10mV以下となる条件が好ましい。
【0060】
L/Wが1のとき、R/Rの値によらず、ΔVは約20mVで一定となっている。これは、エキスパンドメタル10が正方形であるため、導電経路が縦横で等しくなるためと考えられる。L/Wが1を超えると、R/Rが小さくなるにしたがって、ΔVが大きくなり、L/Wが1未満になるとR/Rが小さくなるにしたがって、ΔVが小さくなっている。これは、L/Wを1未満とすることで、選択的に幅Wに平行な方向の抵抗率の寄与率が高まるためと考えられる。さらにR/Rを0.223以下にすればΔVが10mV以下となることがわかる。
【0061】
特に、L/Wが0.5以下の場合、R/Rを0.269から0.223へ20%程度しか変化させなかったにもかかわらず、ΔVは50%以下となる。このようにL/Wが0.5以下で、かつR/Rが0.223以下のとき、大きな効果が得られる。
【0062】
なお、R/Rを小さくするのには電極ペーストの充填性の観点から制限がある。R/Rを小さくするにはSwを小さくする必要がある。Swが小さくなると、粘度の高い電極ペーストをエキスパンドメタル10に充填しにくくなる。このような観点から例えばLwが3mmの場合、Swを0.4mm以上にする必要がある。すなわちエキスパンドメタル10のLw/Swは7.5以上となる。表1の各試料の作製に用いたアルミニウム合金箔をLw/Sw=7.5の条件でエキスパンドメタルに加工すると、R/Rは0.12となる。そのため、R/Rの値は、0.12以上とする必要がある。なおより好ましくは試料CAに示すようにR/Rの値は0.166以上であることが好ましい。
【0063】
なおR/Rが0.223となる体積抵抗率Rの値は(表1)の試料CCに相当するため、9.83μΩ・cmである。そしてエキスパンドメタル10のLw/Swは2.65である。またR/Rが0.166となる体積抵抗率Rの値は(表1)の試料CAに相当するため、6.81μΩ・cmである。そしてエキスパンドメタル10のLw/Swは3.70である。したがって幅W(第2辺)に平行な方向における体積抵抗率Rは6.81μΩ・cm以上、9.83μΩ・cm以下が好ましい。またエキスパンドメタル10のLw/Swは2.65以上、7.5以下となるが、3.70以下であることが好ましい。
【0064】
なお、以上の説明では、正極3の集電体10Aと負極4の集電体10Bが同一のエキスパンドメタル10で構成されている場合を例に説明したが、いずれか一方がエキスパンドメタル10で構成されているだけでもよい。この場合にも蓄電デバイスの低抵抗化に寄与できる。このように、集電体10Aと集電体10Bの少なくともいずれか一方のR/Rが0.166以上、0.223以下であり、リードの配置と集電体の幅が、L/W≦0.5を満たせばよい。
【0065】
(実施の形態2)
図6(a)は本発明の実施の形態2による蓄電デバイスの電極群の模式斜視図、図6(b)、(c)はそれぞれこの電極群の内周側、外周側の模式図である。本実施の形態では、実施の形態1の結果が他の構造の蓄電デバイスにも適用可能であることを説明する。一例として図6に示すように、電極群の上下に位置する集電体露出部と端子板を、レーザーにより接合させ、一巻回あたり3点の接合部20を設けたキャパシタの場合について説明する。
【0066】
電極群30の内周側ではL/Wが小さく、電極群30の外周側ではL/Wが大きい。電極群30では、それらが混在している。一例として、厚み400μmの正極と厚み400μmの負極を厚み50μmのポリプロピレン製不織布セパレータを介して、巻回し電極群30を作製した。この場合、第一ターンの直径2Rを17.9mmとし、11ターン巻回すると、第11ターンの直径は35.9mmとなった。電極群30では、第一ターン目のL/Wがほぼ0.25となり、第11ターン目のL/Wがほぼ0.5である。すなわち電極群30では0.25から0.5の間で変化している。
【0067】
このような電極群30に対し、接合部20の位置を各ターンで変更し、図4に相当する試料を正極、負極の全長に亘ってつなげた試料(電極群モデル)を作製して、集電体抵抗を測定した。その際、R/Rの異なるエキスパンドメタル集電体として用いた。集電体抵抗と集電体のR/Rとの関係を図7に示す。図7は本発明の実施の形態2における蓄電デバイスの電極群モデルにおける集電体抵抗と集電体のR/Rとの関係を示している。図7から明らかなように、R/Rを下げることで電極群30の集電体抵抗が低減されている。
【0068】
さらに、その低減の効果を、他のファクターとともに、R/Rが0.269の場合を1として図7に比較して示す。図7から明らかなように、体積抵抗率R、エキスパンドメタルのLw/Sw値の変化より、集電体抵抗の低減効果は大きい。
【0069】
なお以上の説明では、正極、負極、セパレータを円筒形に巻回した例で説明したが、本発明はこれに限定されない。角形に巻回してもよく、また巻回せずに正極、負極、セパレータを重ね合わせた構造に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、電気二重層コンデンサ、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどの巻回型の蓄電デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B,1C,1D,101B,101C 正極リード
2,2A,2B,2C 負極リード
3 正極
4 負極
10 エキスパンドメタル
10A,10B 集電体
11,12 蓋
13 筒部
20 接合部
21,22 リード集電板
30,50 電極群
31,41 露出部
32,42 合剤層
51,52 ガスケット
61 正極端子
61A,62A フランジ部
61B,62B ナット
62 負極端子
200 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極の間に介在したセパレータと、
前記正極と前記セパレータと前記負極に含浸した非水電解質と、を備え、
前記正極と前記負極の少なくとも一方は、
シート状多孔性で、かつ第1辺と、前記第1辺に直交し前記第1辺より短い第2辺を有する矩形状の集電体と、
前記集電体に保持され、活物質を含む合剤層と、
前記集電体の第1辺に接続された複数のリードと、を有し、
前記複数のリードのうち、隣接して設けられた2つのリードの中心間の距離をLとし、前記集電体の第2辺の長さをWとし、前記第1辺に平行な方向の前記集電体の体積抵抗率をRとし、前記第2辺に平行な方向の前記集電体の体積抵抗率をRとするとき、
L/W≦0.5を満たし、かつ
0.12≦R/R≦0.223を満たす蓄電デバイス。
【請求項2】
0.166≦R/R≦0.223を満たす請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記集電体の、前記第2辺に平行な方向の体積抵抗率Rが6.81μΩ・cm以上、9.83μΩ・cm以下である請求項2記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記集電体が、アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記負極の集電体がシート状多孔性の場合、前記負極の前記集電体が銅である請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記集電体が、エキスパンドメタルまたはパンチングメタルである請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記集電体がエキスパンドメタルの場合に、前記エキスパンドメタルの長目方向は前記集電体の前記第2辺に平行であり、前記エキスパンドメタルの短目方向の中心間距離Swに対する前記長目方向の中心間距離Lwの比Lw/Swが2.65以上、7.5以下である請求項6記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
前記正極がシート状多孔性で、第1辺と、前記第1辺に直交し前記第1辺より短い第2辺を有する矩形状の正極集電体と、前記正極集電体に保持され、活物質を含む正極合剤層と、前記正極集電体の第1辺に接続された複数の正極リードを有し、
前記複数の正極リードのうち、隣接して設けられた2つの正極リードの中心間の距離をLcとし、前記正極集電体の第2辺の長さをWcとし、前記第1辺に平行な方向の前記正極集電体の体積抵抗率をRLcとし、前記第2辺に平行な方向の前記正極集電体の体積抵抗率をRTcとするとき、
Lc/Wc≦0.5を満たし、かつ
0.12≦RLc/RTc≦0.223を満たし、かつ
前記負極がシート状多孔性で、第1辺と、前記第1辺に直交し前記第1辺より短い第2辺を有する矩形状の負極集電体と、前記負極集電体に保持され、活物質を含む負極合剤層と、前記負極集電体の第1辺に接続された複数の負極リードを有し、
前記複数の負極リードのうち、隣接して設けられた2つの負極リードの中心間の距離をLaとし、前記負極集電体の第2辺の長さをWaとし、前記第1辺に平行な方向の前記負極集電体の体積抵抗率をRLaとし、前記第2辺に平行な方向の前記負極集電体の体積抵抗率をRTaとするとき、
La/Wa≦0.5を満たし、かつ
0.12≦RLa/RTa≦0.223を満たす請求項1記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−233277(P2011−233277A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100586(P2010−100586)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】