説明

蓄電モジュール

【課題】 激しく上下に震動する上部旋回体等に取り付けても十分な信頼性を持つ蓄電モジュールが望まれている。
【解決手段】 xyz直交座標系を定義したとき、板状の複数の蓄電セルがz方向に積層されている。蓄電セルの間に、少なくとも1枚の伝熱板が配置されている。蓄電セルの積層構造の両端に一対の押さえ板が配置されている。押さえ板は、蓄電セルに、蓄電セルの積層方向の圧縮力を加える。第1の壁板及び第2の壁板が、積層体をy方向に挟む。伝熱板の位置が、第1の壁板及び第2の壁板に対して拘束されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを積層した蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能な二次電池やキャパシタ等の蓄電セルを用いた自動車や作業機械の開発が進められている(特許文献4)。自動車や作業機械に採用される蓄電セルとして、蓄電要素をフィルムで包み込んだ扁平状(板状)の蓄電セル(バッテリパック)が提案されている。正電極端子及び負電極端子が、蓄電セルの外周部から導出される。
【0003】
複数の蓄電セルを積み重ねて、正電極端子、及び負電極端子に設けられた貫通孔にタイロッドを通すことにより、複数の蓄電セルが電気的に接続された蓄電モジュールが得られる(特許文献1)。積層された蓄電セルで発生した熱を外部に放熱する種々の構成が提案されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開公報2007/0207349 A1
【特許文献2】特開平8−111244号公報
【特許文献3】特開2003−133188号公報
【特許文献4】特開2001−11889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業機械は、自動車に比べて、路面の悪い砂利道での走行が多く、作業中における周囲の堆積物や構造物等への衝突も多い。このため、作業機械に搭載される蓄電モジュールには、振動や衝撃に耐え得る高い剛性が求められる。さらに、掘削を行う作業機械の場合、掘削時の衝撃による振動も大きいため、蓄電モジュールに、特に高い剛性が求められる。従来の蓄電モジュールでは、十分な剛性を得ることが困難であった。また、十分な冷却効率を達成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
xyz直交座標系を定義したとき、
z方向に積層された板状の複数の蓄電セル、
前記蓄電セルの間に配置された少なくとも1枚の伝熱板、及び
前記蓄電セルの積層構造の両端に配置され、前記蓄電セルに、該蓄電セルの積層方向の圧縮力を加える一対の押さえ板
を含む積層体と、
前記積層体をy方向に挟む第1の壁板及び第2の壁板と
を有し、
前記伝熱板の位置が、前記第1の壁板及び前記第2の壁板に対して拘束されている蓄電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一対の押さえ板、第1の壁板、及び第2の壁板が、高剛性の構造を構成する。このため、蓄電モジュールの剛性を高めることができる。また、伝熱板、第1の壁板及び第2の壁板を通して、蓄電セルを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1−1】図1A及び図1Bは、実施例1による蓄電モジュールの断面図である。
【図1−2】図1C及び図1Dは、実施例1による蓄電モジュールの断面図である。
【図2】図2A及び図2Bは、実施例1による蓄電モジュールの冷媒流路をしめす概略図である。
【図3】図3A及び図3Bは、実施例2による蓄電モジュールの断面図である。
【図4】図4は、実施例3による蓄電モジュールの断面図である。
【図5】図5Aは、実施例4による蓄電モジュールの断面図であり、図5Bは、実施例5による蓄電モジュールの断面図であり、図5Cは、実施例6による蓄電モジュールの断面図である。
【図6】図6A及び図6Bは、実施例7による蓄電モジュールの部分断面図である。
【図7】図7A及び図7Bは、実施例8による蓄電モジュールの断面図である。
【図8】図8A〜図8Cは、実施例9による蓄電モジュールの部分断面図である。
【図9】図9は、実施例10による蓄電モジュールの断面図である。
【図10】図10は、実施例11による蓄電モジュールの断面図である。
【図11】図11Aは、実施例12による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル及び支持枠の平面図であり、図11Bは、図11Aの一点鎖線11B−11Bにおける断面図であり、図11Cは、図11Aの一点鎖線11C−11Cにおける断面図である。
【図12】図12は、実施例13によるハイブリッド型ショベルの概略平面図である。
【図13】図13は、実施例13によるハイブリッド型ショベルの概略側面図である。
【図14】図14は、実施例13によるハイブリッド型ショベルのブロック図である。
【図15】図15は、実施例13によるハイブリッド型ショベルの蓄電回路の等価回路図である。
【図16】図16は、実施例14による電動ショベルの概略平面図である。
【図17】図17は、実施例14による電動ショベルのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、本願発明の実施例について説明する。
【0010】
[実施例1]
図1Aに、実施例1による蓄電モジュールの断面図を示す。理解を容易にするために、xyz直交座標系を定義する。
【0011】
板状の複数の蓄電セル20と、伝熱板25とが、その厚さ方向(z方向)に交互に積層されている。両端には、蓄電セル20が配置される。最も外側の蓄電セル20の各々に、押さえ板31が密着している。複数のタイロッド33が、一方の押さえ板31から他方の押さえ板31まで貫通し、蓄電セル20と伝熱板25とに、積層方向(z方向)の圧縮力を加えている。
【0012】
蓄電セル20の各々は、二次電池または電気二重層キャパシタ等の扁平状の蓄電要素を、一対のラミネートフィルムで挟み込んで封止したものである。蓄電セル20は、その外周部に、ラミネートフィルム同士を融着した領域(融着部)を含む。また、蓄電セル20は、一対の電極端子21を含む。電極端子21は、蓄電セル20の相互に対向する外周部から、外部に導出されている。電極端子21の一方は正電極であり、他方は負電極である。相互に隣り合う蓄電セル20の電極端子21を接続することにより、複数の蓄電セル20が直列接続されている。
【0013】
伝熱板25には、例えばアルミニウムが用いられ、タイロッド33及び押さえ板31には、例えばステンレス鋼が用いられる。蓄電セル20、伝熱板25、押さえ板31、及び
タイロッド33を含む構造物を、積層体30と呼ぶこととする。x方向に関して積層体30の両側に、すなわち積層体30をx方向に挟むように、一対の壁板13、14が配置されている。壁板13及び14の各々は、ボルトで押さえ板31に固定されている。
【0014】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。図1Bの一点鎖線1A−1Aにおける断面図が、図1Aに相当する。蓄電セル20及び伝熱板25の平面形状は、ほぼ長方形である。相互に対向する辺(図1Bにおいて、上辺及び下辺)から、電極端子21が導出されている。伝熱板25は、平面視において、蓄電セル20の縁よりも外側まで張り出している。
【0015】
y方向に関して積層体30の両側に、すなわち積層体30をy方向に挟むように、一対の壁板11、12が配置されている。壁板11、12は、伝熱板25の端面に接触している。これにより、伝熱板25が、壁板11、12に熱的に結合する。壁板11及び12の各々は、壁板13及び14に、ボルトで固定されている。壁板11及び12の内部に、冷媒を流すための流路17が形成されている。
【0016】
図1Cに、図1Bの一点鎖線1C−1Cにおける断面図を示す。相互に隣り合う蓄電セル20から導出された電極端子21が、伝熱板25の縁よりも外側を通って、隣の蓄電セル20の電極端子21に接続されている。
【0017】
図1Dに、図1Bの一点鎖線1D−1Dにおける断面図を示す。伝熱板25が、その端面において、壁板11及び12に接触している。壁板11及び12の各々は、押さえ板31にボルトで固定されている。
【0018】
図1A及び図1Dに示した蓄電セル20の厚さには個体差がある。このため、一対の押さえ板31の間隔は、製品によってばらつく。このばらつきは、壁板11〜14が、押さえ板31の端面に接触する構造とし、かつ壁板11〜14に形成されているボルト用の穴を、z方向に長い長穴にすることによって吸収することができる。
【0019】
図2Aに、壁板11に形成された冷媒流路17の形状を示す。冷媒流路17は、導入路17A、複数の主経路17B、及び排出路17Cを含む。導入路17A及び排出路17Cの各々は、z方向に平行な1つの端面からx方向にそって壁板11の内部に延びる。主経路17Bの各々は、導入路17Aからz方向に延在し、排出路17Cまで至る。導入路17A、主経路17B、及び排出路17Cは、例えば壁板11の内部に配置され、表面に平行な方向に延在する細長い穴で構成される。導入路17A及び排出路17Cは、yz面に平行な端面からドリルで穴開け加工することにより形成される。主経路17Bは、xy面に平行な端面からドリルで穴開け加工した後、開口部を埋込プラグ17Dで埋め込むことにより形成される。なお、壁板11に冷媒が通る配管を密着させてもよい。
【0020】
図2Bに、冷媒流路17の他の例を示す。図2Aに示した例では、導入路17Aから排出路17Cに至る主経路17Bが複数本配置されていた。図2Bに示した例では、主経路17Bが、幅の広い1つの面状の流路で構成される。この壁板11は、1枚の金属板に、冷媒流路17に対応する凹部を形成した後、凹部を他の金属板で塞ぎ、2枚の金属板の外周を溶接することにより形成される。
【0021】
実施例1に示した蓄電モジュールにおいては、タイロッド33及び押さえ板31により、蓄電セル20及び伝熱板25の積層構造が維持される。押さえ板31、及び壁板11〜14が、直方体状の平行六面体構造をなし、平行六面体構造の隣り合う壁面同士は、ボルトで固定されている。このため、高い剛性を確保することができ、伝熱板25の位置を、壁板11及び12に対して拘束することができる。蓄電セル20から発生した熱が、伝熱
板25を経由して壁板11、12に伝わる。このため、蓄電セル20を効率的に冷却することができる。押さえ板31により蓄電セル20及び伝熱板25に圧縮力を加えているため、蓄電セル20と伝熱板25との密着状態を高めることができる。これにより、蓄電セル20と伝熱板25との間の熱伝達効率を高めることができる。
【0022】
蓄電セル20及び伝熱板25の積層構造を維持するための押さえ板31が、平行六面体構造の壁面を兼ねている。平行六面体構造の壁板11、12が、蓄電セル20を冷却するための吸熱板を兼ねている。このように、押さえ板31及び壁板11、12に複数の機能を持たせたため、部品点数の削減が図られる。
【0023】
実施例1では、蓄電セル20と伝熱板25とを交互に積層したが、伝熱板25の枚数を削減してもよい。例えば、2枚の蓄電セル20に対して1枚の伝熱板25を配置してもよい。また、積層された蓄電セル20のほぼ中央に、少なくとも1枚の伝熱板25を配置してもよい。
【0024】
ショベルは、ゴムタイヤで走行する自動車とは異なり、金属のクローラにより走行する。また、上部旋回体が下部走行体に、軸受けを介して支持されている。軸受けは、相対運動する金属部品を含み、ガタが皆無であるとはいえない。このため、走行時の下部走行体の振動が、上部旋回体に増幅して伝達される場合がある。従って、上部旋回体に搭載される蓄電モジュールには、共振を防止するために、高い固有振動数が要求される。
【0025】
実施例1では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14を取り除いた構造としてもよい。
【0026】
実施例1では、蓄電セル20に電気二重層キャパシタ等を用いたが、リチウムイオンキャパシタを用いてもよい。リチウムイオンキャパシタは、電気的特性を維持するために、圧縮力を印加しておく必要はない。この場合には、圧縮力の印加は、蓄電セル20から伝熱板25への熱伝達効率を高めるという効果を有する。蓄電セルを機械的に支持するために必要な圧縮力、及び熱伝達効率を高めるために必要な圧縮力は、電気二重層キャパシタの電気的特性を維持するために必要な圧縮力よりも小さい。従って、蓄電セル20にリチウムインキャパシタを用いる場合には、電気二重層キャパシタを用いる場合に比べて、圧縮力を小さくしてもよい。
【0027】
[実施例2]
図3A及び図3Bに実施例2による蓄電モジュールの断面図を示す。図3Bは、図3Aの一点鎖線3B−3Bにおける断面図であり、図3Aは、図3Bの一点鎖線3A−3Aにおける断面図である。以下、実施例1による蓄電モジュールとの相違点について説明する。
【0028】
実施例1では、壁板11及び壁板12は、その外周部近傍において、図1Bに示した壁板13、14、及び図1Dに示した押さえ板31に固定されている。壁板11、12と、伝熱板25とが接触する位置においては、壁板11、12の剛性により、壁板11、12が伝熱板25に押し付けられる。
【0029】
実施例2においては、壁板11から壁板12まで、複数のタイロッド40が貫通している。タイロッド40は、蓄電セル20及び伝熱板25と、空間的に干渉しない位置に取り付けられる。タイロッド40により、壁板11及び壁板12に、両者の間隔を狭める向きの力が加えられる。タイロッド40が貫通する穴は、壁板11、12が、押さえ板31及び壁板13、14に固定されている位置よりも内側に配置されている。このため、壁板1
1、12を、伝熱板25に、より大きな力で押し付けることができる。これにより、伝熱板25から壁板11、12への熱伝達率を高めることができる。
【0030】
図3A及び図3Bでは、複数のタイロッド40を取り付けた例を示したが、1本のタイロッド40を取り付けてもよい。
【0031】
実施例2では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、実施例1と同様に、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14を取り除いた構造としてもよい。
【0032】
[実施例3]
図4に、実施例3による蓄電モジュールの断面図を示す。以下、実施例1による蓄電モジュールとの相違点について説明する。
【0033】
実施例3においては、蓄電セル20の積層構造のほぼ中央の2枚の蓄電セル20の間に、伝熱板に代えて、中間板43が挿入されている。中間板43には、鉄またはステンレス鋼が用いられ、中間板43は、伝熱板25よりも高い剛性を有する。
【0034】
中間板43は、その端面において壁板11、12に接触し、ボルトによって壁板11、12に固定されている。タイロッド33は、中間板43に形成された貫通孔を通過する。蓄電モジュールに衝撃が加わったとき、中間板43は、タイロッド33の、x方向及びy方向への変位を禁止する。
【0035】
タイロッド33は、その両端で押さえ板31によって支持された梁構造と考えることができる。タイロッド33を、そのほぼ中央において中間板43で支持することは、梁の長さが約半分になったことと等価である。このため、蓄電モジュールのx方向及びy方向に関する振動の固有振動数を高くすることができる。また、中間板43は、それに接する蓄電セル20のz方向への変位を禁止する。このため、蓄電モジュールのz方向に関する振動の固有振動数を高めることができる。これにより、蓄電モジュールの耐衝撃性が高まる。
【0036】
[実施例4]
図5Aに、実施例4による蓄電モジュールの断面図を示す。実施例4による蓄電モジュールでは、図1Bに示した実施例1による蓄電モジュールと同一構造の3個の蓄電モジュールがy方向に配列している。相互に隣り合う積層体30の間の壁板は、両側の蓄電モジュールで共有される。すなわち、一方の蓄電モジュールの壁板12が、隣の蓄電モジュールの壁板11を兼ねる。各積層体30の伝熱板25は、当該積層体30をy方向に挟む2枚の壁板11、12に接触している。3個の積層体30をx方向に挟む壁板13、14の各々は、連続した1枚の板部材で構成される。
【0037】
蓄電セル20に、内部で発生したガスを排出するためのガス抜き弁27が設けられる場合がある。ガス抜き弁27は、一般的に、蓄電セル20の厚さに比べて大きいため、蓄電セル20のz軸にほぼ垂直な端面に取り付けることは困難である。蓄電セル20の電極端子21が導出されている縁の近傍は、電極取り出しのためのリード線等が配置されるため、xy面に対して傾斜している。ガス抜き弁27は、この傾斜した部分に取り付けられる場合が多い。
【0038】
組み立て時には、y方向に並べられた3個の蓄電モジュールにy方向の圧縮力を加えることにより、各積層体30の伝熱板25を両側の壁板に接触させる。この状態で、壁板13と14とを、ボルトで壁板11、12、及び積層体30の押さえ板31(図1D)に固
定する。
【0039】
相互に隣り合う積層体30A〜30Cの間の壁板が、両者で共有されるため、部品点数の削減を図ることができる。図5Aでは3個の積層体30を組み込んだが、2個の積層体30を組み込んでもよいし、4個以上の積層体30を組み込んでもよい。
【0040】
蓄電セル20内で発生したガスは、蓄電セル20内の空間の上方に蓄積されるため、ガス抜き弁27が鉛直上方に配置される姿勢を維持することが好ましい。実施例4による蓄電モジュールは、x方向が鉛直方向に平行になる姿勢(yz面が水平になる姿勢)で作業機械に装着することが好ましい。実施例4による蓄電モジュールは、水平方向に広がっている装着スペースを持つ機器や作業機械への装着に適している。
【0041】
[実施例5]
図5Bに、実施例5による蓄電モジュールの断面図を示す。実施例5による蓄電モジュールは、実施例1による蓄電モジュールと同一構造の3個の積層体30を含む。
【0042】
3個の積層体30は、各々の積層方向がz方向に平行になる姿勢で、x方向に配列している。壁板11、12が、3つの積層体30をy方向に挟む。壁板13、14が、3つの積層体30をx方向に挟む。相互に隣り合う積層体30の間に、隔壁15が配置されている。壁板13、14及び隔壁15は、ボルトによって壁板11、12に固定されている。また、積層体30の押さえ板31(図1D)は、実施例1の場合と同様に、ボルトによって壁板11、12に固定されている。さらに、押さえ板31と隔壁15も、ボルトによって相互に固定されている。積層体30の各々の伝熱板25は、壁板11、12に接触している。壁板11、12内に、冷媒流路17が形成されている。
【0043】
押さえ板31、壁板11〜14が、平行六面体構造を構成する。このため、高い剛性を確保することができる。また、隔壁15が、さらに剛性を高める役割を果たす。
【0044】
実施例5においては、伝熱板25は、壁板11、12に接触するため、壁板11、12を固定する際に、x方向の圧縮力を加えておく必要はない。このため、実施例5による蓄電モジュールは、実施例4による蓄電モジュールに比べて、組み立て及びメンテナンスが容易である。
【0045】
ガス抜き弁27の配置を考慮すると、実施例5による蓄電モジュールも実施例4の場合と同様に、x方向が鉛直方向に平行になる姿勢(yz面が水平になる姿勢)で作業機械に装着することが好ましい。実施例5による蓄電モジュールは、厚さ方向がほぼ水平方向を向く平たい装着スペースを持つ機器や作業機械への装着に適している。
【0046】
[実施例6]
図5Cに、実施例6による蓄電モジュールの断面図を示す。実施例6による蓄電モジュールでは、図1Bに示した実施例1による蓄電モジュールと同一構造の3個の蓄電モジュールがy方向に配列している。相互に隣り合う蓄電モジュールは、壁板11、12を共有しておらず、個別に壁板が設けられている。このため、隣り合う積層体30の間に、2枚の壁板11、12が配置される。
【0047】
実施例6では、積層体30の各々に、壁板11、12を取り付けた後、壁板11、12に壁板13、14を固定すればよい。このため、壁板13、14を固定する際に、蓄電モジュールにy方向の圧縮力を加えておく必要はない。実施例6による蓄電モジュールは、図5Aに示した実施例4の蓄電モジュールに比べて、部品点数は増加するが、組み立て及びメンテナンスは容易である。
【0048】
ガス抜き弁27の配置を考慮すると、実施例6による蓄電モジュールも実施例4の場合と同様に、x方向が鉛直方向に平行になる姿勢(yz面が水平になる姿勢)で作業機械に装着することが好ましい。実施例6による蓄電モジュールは、水平方向に広がっている装着スペースを持つ機器や作業機械への装着に適している。
【0049】
[実施例7]
図6Aに、実施例7による蓄電モジュールの部分断面図を示す。以下、図1A〜図1Dに示した実施例1による蓄電モジュールとの相違点について説明する。
【0050】
実施例1では、図1Dに示したように、伝熱板25が壁板11、12に接触することにより、両者を熱的に結合させた。実施例7においては、伝熱板25が壁板11、12に固着するように、接触個所において両者が熱伝導性接着剤45で接着されている。伝熱板25と壁板11、12との間に微小な隙間が形成されている場合には、この隙間が接着剤で埋め込まれる。このため、伝熱板25と壁板11、12との間の熱伝達率を高めることができる。このように、伝熱板25が壁板11、12に摺接しないように(伝熱板25が壁板11、12に対して接触した状態で動かないように)することで、接触箇所における熱抵抗を小さくすることができる。これにより、伝熱板25及び蓄電セル20の冷却効率を向上させ、蓄電セル20の温度の著しい上昇を抑制することができる。
【0051】
図6Bに示すように、壁板11、12の各々の内側の表面に溝46を形成してもよい。溝46内に、伝熱板25の縁が挿入されるとともに、熱伝導性接着剤45が充填される。
【0052】
実施例7では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、実施例1と同様に、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14(図1A、図1B)を取り除いた構造としてもよい。
【0053】
[実施例8]
図7A及び図7Bに、実施例8による蓄電モジュールの断面図を示す。図7Bは、図7Aの一点鎖線7B−7Bにおける断面図であり、図7Aは、図7Bの一点鎖線7A−7Aにおける断面図である。以下、図3A及び図3Bに示した実施例2による蓄電モジュールとの相違点について説明する。
【0054】
実施例1と同様に、押さえ板31が蓄電セル20に積層方向の圧縮力を加え、伝熱板25の位置が、壁板11、12に対して拘束されている。壁板11、12の内側の表面に、z方向に延在する3本の凹部50が形成されている。凹部50の各々は、深さ方向の寸法よりも幅方向の寸法の方が大きい。凹部50内に、熱伝導性を有する弾性部材51が装填されている。弾性部材51には、例えば伝熱ゴムシートが用いられる。伝熱板25の縁が、凹部50と交差するか、または凹部50と部分的に重なる。
【0055】
弾性部材51に外力が加わらない状態では、弾性部材51の一部が凹部50の開口面から突出している。例えば、弾性部材51として、凹部50の深さよりも厚い伝熱ゴムシートが用いられる。
【0056】
図7Aに示したように、凹部50が形成されていない領域では、伝熱板25が壁板11、12の内側の表面に接する。図7A及び図7Bに示したように、伝熱板25の縁が凹部50と交差する領域、及び伝熱板25の縁が凹部50と重なる領域では、伝熱板25が弾性部材51を押しつぶしている。
【0057】
伝熱板25と壁板11、12とが、弾性部材51を介して熱的に結合する。このため、
安定した熱的結合を確保することができる。このように、伝熱板25が壁板11、12に摺接しないようにすることで、接触箇所における熱抵抗を小さくすることができる。これにより、伝熱板25及び蓄電セル20の冷却効率を向上させ、蓄電セル20の著しい温度上昇を抑制することができる。
【0058】
弾性部材51のうち、凹部50の開口面から突出している部分がつぶし代になる。弾性部材51は、このつぶし代を越えて押しつぶされることはない。弾性部材51の寸法(厚さ)と、凹部50の深さとを調整することにより、つぶし代を所望の許容範囲内に納めることができる。このため、クリープひずみによる弾性部材51の経年劣化を抑制することができる。
【0059】
実施例8では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、実施例2と同様に、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14(図7A)を取り除いた構造としてもよい。
【0060】
[実施例9]
図8Aに、実施例9による蓄電モジュールの部分断面図を示す。以下、図1A〜図1Dに示した実施例1による蓄電モジュールとの相違点について説明する。
【0061】
実施例9では、伝熱板25の壁板11、12に接触する端部が、yz面に平行な断面においてほぼ直角に折り曲げられている。このため、伝熱板25と壁板11、12との接触面積が大きくなる。これにより、両者の間の熱伝達率を高めることができる。
【0062】
図8Bに示すように、折り曲げ部分にある程度の曲率を設けてもよい。また、図8Cに示すように、伝熱板25の端部の断面をT字状にしてもよい。
【0063】
[実施例10]
図9に、実施例10による蓄電モジュールの断面図を示す。実施例10では、図1Bに示した実施例1の冷媒流路17に代えて、壁板11、12の外側の表面に放熱効率を高めるための凹凸55が形成されている。凹凸55の凹部が、例えば格子模様を構成している。他の構造は、実施例1による蓄電モジュールの構造と同一である。冷媒流路17に代えて放熱用の凹凸55を取り付けても、蓄電セル20で発生した熱を効率よく放熱することができる。
【0064】
実施例10では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、実施例1と同様に、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14(図1A、図1B)を取り除いた構造としてもよい。
【0065】
[実施例11]
図10に、実施例11による蓄電モジュールの断面図を示す。以下の説明では、図7A及び図7Bに示した実施例8との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0066】
実施例11においては、蓄電セル20と伝熱板25との積層構造に圧縮力を印加するために、タイロッド33(図7A、図7B)が用いられていた。実施例11では、タイロッドが用いられておらず、ウェッジにより圧縮力が印加される。
【0067】
図10に示したように、押さえ板31の、x軸に平行な端面と、外側の表面とを接続する部分が面取りされ、斜面11Aが形成されている。壁板11、12に、斜面11Aに平行な斜面31Aが形成されている。締付具56を構成するボルトが、一方の壁板12の外
側の表面から、壁板12、押さえ板31、他方の壁板11内をy軸方向に貫通して、壁板11の外側の表面まで達している。締付具56により、壁板11と12とに、y軸方向の圧縮力が印加される。
【0068】
この圧縮力により、伝熱ゴムシート51が弾性変形し、伝熱板25が、伝熱ゴムシート51を介して壁板11、12に押し付けられる。これにより、伝熱板25から壁板11、12に、効率的に熱を伝達することが可能になる。
【0069】
さらに、壁板11と12とが近づくことにより、斜面11Aと斜面31Aとが接触し、一対の押さえ板31に、両者が近づく向きの力が印加される。これにより、蓄電セル20と伝熱板25との積層構造に、z軸方向の圧縮力が印加される。
【0070】
実施例11では、締付具56が、伝熱板25を壁板11、12に押し付けるy軸方向の圧縮力と、積層構造に印加するz軸方向の圧縮力とを印加することができる。z軸方向の十分な圧縮力を印加するために、伝熱ゴムシート51が弾性変形した状態で、押さえ板31のy軸に垂直な端面と、壁板11、12の内側の表面との間に隙間が確保されるように、押さえ板31のy軸方向の寸法を設定しておくことが好ましい。
【0071】
実施例11では、平行六面体構造による高剛性の蓄電モジュールの例を示したが、実施例1と同様に、作業機械に求められる剛性、若しくは固有振動数を満足することができる場合には、壁板13及び14(図7A)を取り除いた構造としてもよい。
【0072】
[実施例12]
図11Aに、実施例12による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル及び支持枠の平面図を示す。蓄電セル20及び電極21の構成は、実施例1のものと同一である。蓄電セル20の相互に反対側の縁から、一対の電極21が引き出されている。平面視において、蓄電セル20を取り囲むように、支持枠60が配置されている。支持枠60には、例えば絶縁性の樹脂が用いられる。電極21は、支持枠60の外周側の縁よりも外側まで張り出している。
【0073】
図11Bに、図11Aの一点鎖線11B−11Bにおける断面図を示す。蓄電セル20は、その外周部に、表裏のラミネートフィルム同士が溶着された薄い部分20Aを有する。支持枠60の内周側の側面は、2段の階段状形状を有する。薄い部分20Aが、両面粘着テープ等により、支持枠60の内周の踏み面61に固定されている。支持枠60は、蓄電セル20よりも薄い。このため、支持枠60と共に蓄電セル20を厚さ方向に積層したとき、支持枠60が、蓄電セル20への圧縮力の印加を妨げることはない。
【0074】
図11Cに、図11Aの一点鎖線11C−11Cにおける断面図を示す。電極21が、蓄電セル20の薄い部分20Aの縁から外部に引き出されている。図11Aに示すように、平面視において、支持枠60のうち電極21と重なる領域においては、踏み面61が支持枠の外周まで延在している。この踏み面61上を経由して、電極21が支持枠60の外周よりも外側まで引き出されている。
【0075】
実施例12では、蓄電セル20を厚さ方向に積み重ねる際に、支持枠60の外周側の側面が、積層方向に直交する面内に関する位置合わせの基準面となる。このため、位置合わせを容易に行うことができる。また、蓄電セル20を単体で取り扱う際に、支持枠60が蓄電セル20を保護する。このため、蓄電セル20の損傷を防止または軽減することができる。
【0076】
[実施例13]
実施例13では、実施例1〜実施例12のいずれかの蓄電モジュールの少なくとも1つが搭載されるショベルが例示される。
【0077】
図12は、実施例13による作業機械としてのハイブリッド型ショベルの概略平面図である。
【0078】
上部旋回体70に、旋回軸受け73を介して、下部走行体(走行装置)71が取り付けられている。上部旋回体70に、エンジン74、メインポンプ75、電動モータ76、油タンク77、冷却ファン78、座席79、蓄電モジュール80、及び電動発電機83が搭載されている。エンジン74は、燃料の燃焼により動力を発生する。エンジン74、メインポンプ75、及び電動発電機83が、トルク伝達機構81を介して相互にトルクの送受を行う。メインポンプ75は、ブーム82等の油圧シリンダに圧油を供給する。
【0079】
電動発電機83は、エンジン74の動力によって駆動され、発電を行う(発電運転)。発電された電力は、蓄電モジュール80に供給され、蓄電モジュール80が充電される。また、電動発電機83は、蓄電モジュール80からの電力によって駆動され、エンジン74をアシストするための動力を発生する(アシスト運転)。油タンク77は、油圧回路の油を貯蔵する。冷却ファン78は、油圧回路の油温の上昇を抑制する。操作者は、座席79に着座して、ハイブリッド型ショベルを操作する。
【0080】
図13に、実施例13によるハイブリッド型ショベルの側面図を示す。下部走行体71に、旋回軸受け73を介して上部旋回体70が搭載されている。上部旋回体70は、電動モータ76(図12)からの駆動力により、下部走行体71に対して、時計回り、または反時計周りに旋回する。上部旋回体70に、ブーム82が取り付けられている。ブーム82は、油圧駆動されるブームシリンダ107により、上部旋回体70に対して上下方向に揺動する。ブーム82の先端に、アーム85が取り付けられている。アーム85は、油圧駆動されるアームシリンダ108により、ブーム82に対して前後方向に揺動する。アーム85の先端にバケット86が取り付けられている。バケット86は、油圧駆動されるバケットシリンダ109により、アーム85に対して上下方向に揺動する。
【0081】
蓄電モジュール80が、蓄電モジュール用マウント90及びダンパ(防振装置)91を介して、上部旋回体70に搭載されている。蓄電モジュール80には、上記実施例1〜12による蓄電モジュールが用いられる。蓄電モジュール80から供給される電力によって、旋回モータ76(図12)が駆動される。また、旋回モータ76は、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって回生電力を発生する。発生した回生電力によって、蓄電モジュール80が充電される。
【0082】
図14に、実施例13によるハイブリッド型ショベルのブロック図を示す。図14において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、電気系統を細い実線で表し、パイロットラインを破線で表す。
【0083】
エンジン74の駆動軸がトルク伝達機構81の入力軸に連結されている。エンジン74には、電気以外の燃料によって駆動力を発生するエンジン、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。エンジン74は、作業機械の運転中は、常時駆動されている。
【0084】
電動発電機83の駆動軸が、トルク伝達機構81の他の入力軸に連結されている。電動発電機83は、電動(アシスト)運転と、発電運転との双方の運転動作を行うことができる。電動発電機83には、例えば磁石がロータ内部に埋め込まれた内部磁石埋込型(IPM)モータが用いられる。
【0085】
トルク伝達機構81は、2つの入力軸と1つの出力軸とを有する。この出力軸には、メインポンプ75の駆動軸が連結されている。
【0086】
エンジン74に加わる負荷が大きい場合には、電動発電機83がアシスト運転を行い、電動発電機83の駆動力がトルク伝達機構81を介してメインポンプ75に伝達される。これにより、エンジン74に加わる負荷が軽減される。一方、エンジン74に加わる負荷が小さい場合には、エンジン74の駆動力がトルク伝達機構81を介して電動発電機83に伝達されることにより、電動発電機83が発電運転される。電動発電機83のアシスト運転と発電運転との切り替えは、電動発電機83に接続されたインバータ118により行われる。インバータ118は、制御装置130により制御される。
【0087】
制御装置130は、中央処理装置(CPU)130A及び内部メモリ130Bを含む。CPU130Aは、内部メモリ130Bに格納されている駆動制御用プログラムを実行する。制御装置130は、表示装置135に、各種装置の劣化状態等を表示することにより、運転者の注意を喚起する。
【0088】
メインポンプ75は、高圧油圧ライン116を介して、コントロールバルブ117に油圧を供給する。コントロールバルブ117は、運転者からの指令により、油圧モータ101A、101B、ブームシリンダ107、アームシリンダ108、及びバケットシリンダ109に油圧を分配する。油圧モータ101A及び101Bは、それぞれ図13に示した下部走行体71に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0089】
電動発電機83の電気系統の入出力端子が、インバータ118を介して蓄電回路190に接続されている。インバータ118は、制御装置130からの指令に基づき、電動発電機83の運転制御を行う。蓄電回路190には、さらに、他のインバータ120を介して旋回モータ76が接続されている。蓄電回路190及びインバータ120は、制御装置130により制御される。
【0090】
電動発電機83がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路190から電動発電機83に供給される。電動発電機83が発電運転されている期間は、電動発電機83によって発電された電力が、蓄電回路190に供給される。
【0091】
旋回モータ76は、インバータ120からのパルス幅変調(PWM)制御信号により交流駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を行うことができる。旋回モータ76には、例えばIPMモータが用いられる。IPMモータは、回生時に大きな誘導起電力を発生する。
【0092】
旋回モータ76の力行動作中は、旋回モータ76が、減速機124を介して、上部旋回体70を旋回させる。この際、減速機124は、回転速度を遅くする。これにより、旋回モータ76で発生した回転力が増大する。また、回生運転時には、上部旋回体70の回転運動が、減速機124を介して旋回モータ76に伝達されることにより、旋回モータ76が回生電力を発生する。この際、減速機124は、力行運転の時とは逆に、回転速度を速める。これにより、旋回モータ76の回転数を上昇させることができる。
【0093】
レゾルバ122が、旋回モータ76の回転軸の回転方向の位置を検出する。検出結果は、制御装置130に入力される。旋回モータ76の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。
【0094】
メカニカルブレーキ123が、旋回モータ76の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ123の制動状態と解除状態とは、制御装置130
からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0095】
パイロットポンプ115が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン125を介して操作装置126に供給される。操作装置126は、レバーやペダルを含み、運転者によって操作される。操作装置126は、パイロットライン125から供給される1次側の油圧を、運転者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン127を介してコントロールバルブ117に伝達されると共に、他の油圧ライン128を介して圧力センサ129に伝達される。
【0096】
圧力センサ129で検出された圧力の検出結果が、制御装置130に入力される。これにより、制御装置130は、下部走行体71、旋回モータ76、ブーム82、アーム85、及びバケット86の操作の状況を検知することができる。特に、実施例13によるハイブリッド型ショベルでは、旋回モータ76が旋回軸受け73を駆動する。このため、旋回モータ76を制御するためのレバーの操作量を高精度に検出することが望まれる。制御装置130は、圧力センサ129を介して、このレバーの操作量を高精度に検出することができる。
【0097】
さらに、制御装置130は、下部走行体71、旋回モータ76、ブーム82、アーム85、及びバケット86のいずれも運転されておらず、蓄電回路190への電力の供給及び蓄電回路190からの電力の強制的な取り出しのいずれも行われていない状態(非運転状態)を検出することができる。
【0098】
図15に、蓄電回路190の等価回路図を示す。蓄電回路190は、蓄電モジュール80、コンバータ200、及びDCバスライン210を含む。コンバータ200の一対の電源接続端子203A、203Bに蓄電モジュール80が接続されており、一対の出力端子204A、204BにDCバスライン210が接続されている。一方の電源接続端子203B、及び一方の出力端子204Bは接地されている。蓄電モジュール80には、上記実施例1〜実施例10による蓄電モジュールが用いられる。
【0099】
DCバスライン210は、インバータ118、120を介して、電動発電機83及び旋回モータ76に接続されている。DCバスライン210に発生している電圧が、電圧計211により測定され、測定結果が制御装置130に入力される。
【0100】
昇圧用の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)202Aのコレクタと、降圧用のIGBT202Bのエミッタとが相互に接続された直列回路が、出力端子204Aと204Bとの間に接続されている。昇圧用IGBT202Aのエミッタが接地され、降圧用IGBT202Bのコレクタが、高圧側の出力端子204Aに接続されている。昇圧用IGBT202Aと降圧用IGBT202Bの相互接続点が、リアクトル201を介して、高圧側の電源接続端子203Aに接続されている。
【0101】
昇圧用IGBT202A及び降圧用IGBT202Bに、それぞれダイオード202a、202bが、エミッタからコレクタに向かう向きが順方向になる向きで並列接続されている。出力端子204Aと204Bとの間に、平滑用のコンデンサ205が挿入されている。
【0102】
電源接続端子203Aと203Bとの間に接続された電圧計206が、蓄電モジュール80の端子間電圧を測定する。リアクトル201に直列に挿入された電流計207が、蓄電モジュール80の充放電電流を測定する。電圧及び電流の測定結果は、制御装置130に入力される。
【0103】
温度検出器136が、蓄電モジュール80の温度を検出する。検出された温度データは、制御装置130に入力される。温度検出器136は、例えば蓄電モジュール80を構成する複数の蓄電セルから選択された4個の蓄電セルに対応して準備された4個の温度計を含む。制御装置130は、例えば、4個の温度計で取得された4個の温度データの平均を算出し、平均値を蓄電モジュール80の温度とする。なお、キャパシタの過熱状態を判定する際には、4個の温度データが示す温度のうち最も高い温度を、蓄電モジュールの温度として採用してもよい。逆に、蓄電モジュールの温度が低下し過ぎた状態の判定には、4個の温度データが示す温度のうち最も低い温度を、蓄電モジュールの温度として採用してもよい。
【0104】
制御装置130が、昇圧用IGBT202A及び降圧用IGBT202Bのゲート電極に、制御用のパルス幅変調(PWM)電圧を印加する。
【0105】
以下、昇圧動作(放電動作)について説明する。昇圧用IGBT202Aのゲート電極にPWM電圧を印加する。昇圧用IGBT202Aのオフ時に、リアクトル201に、高圧側の電源接続端子203Aから昇圧用IGBT202Aのコレクタに向かって電流を流す向きの誘導起電力が発生する。この起電力が、ダイオード202bを介してDCバスライン210に印加される。これにより、DCバスライン210が昇圧される。
【0106】
次に、降圧動作(充電動作)について説明する。降圧用IGBT202Bのゲート電極に、PWM電圧を印加する。降圧用IGBT202Bのオフ時に、リアクトル201に、降圧用IGBT202Bのエミッタから高圧側の電源接続端子203Aに向かって電流を流す向きの誘導起電力が発生する。この誘導起電力により、蓄電モジュール80が充電される。
【0107】
蓄電モジュール80に、上記実施例1〜10による蓄電モジュールが用いられているため、振動や衝撃による蓄電モジュール80の破壊が抑制される。特に、旋回軸受け73(図12、図13)のガタに起因して上部旋回体70が上下に震動する際に、ダンパ91(図13)で吸収しきれない振動による蓄電モジュール80の破壊を抑制することができる。さらに、蓄電セルからの効率的な放熱を実現することができる。
【0108】
[実施例14]
実施例14では、実施例1〜実施例12のいずれかの蓄電モジュールの少なくとも1つが搭載されるショベルが例示される。
【0109】
図16及び図17は、それぞれ実施例14による作業機械としての電動ショベルの概略平面図、及びブロック図である。以下の説明では、図12、図14に示した実施例13との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0110】
実施例14による電動ショベルでは、エンジン74(図12、図14)が搭載されていない。蓄電モジュール80を充電するための電圧コンバータ88及び外部電源接続プラグ87が準備されている。外部電源から、外部電源接続プラグ87及び電圧コンバータ88を介して、蓄電モジュール80を充電することができる。電動発電機83は、発電機として動作せず、蓄電モジュール80(蓄電回路190)から供給される電力により、電動機としてのみ動作する。
【0111】
電圧コンバータ88は、外部電源の電圧を蓄電モジュール80の電圧に適合させるための電圧変換を行う。
【0112】
実施例1〜10による蓄電モジュールは、ハイブリッド型ショベルのみならず、電動シ
ョベルにも適用することが可能である。
【0113】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0114】
上記実施例に基づいて、さらに、以下の付記を開示する。
【0115】
(付記1)
xyz直交座標系を定義したとき、
各々が、
z方向に積層された板状の複数の蓄電セル、
前記蓄電セルの積層構造の両端に配置された一対の押さえ板、
前記一対の押さえ板を連結し、前記蓄電セルの積層構造にz方向の圧縮力を加える第1のタイロッド、及び
前記蓄電セルの間に挟まれた少なくとも1枚の伝熱板
を含み、x方向に配列する複数の積層体と、
複数の前記積層体をy方向に挟み、前記積層体の押さえ板に固定された第1の壁板及び第2の壁板と、
複数の前記積層体をx方向に挟み、前記第1の壁板及び前記第2の壁板に固定された第3の壁板及び第4の壁板と
を有し、
x方向に関して一方の端に配置された前記積層体の前記押さえ板が、前記第3の壁板に固定され、他方の端に配置された前記積層体の前記押さえ板が、前記第4の壁板に固定されており、
前記伝熱板が、前記第1の壁板及び前記第2の壁板に熱的に結合している作業機械用蓄電モジュール。
【0116】
(付記2)
さらに、x方向に隣り合う前記積層体の間に配置された隔壁を有し、
前記隔壁は、前記第1の壁板、前記第2の壁板、及び該隔壁の両側の前記積層体の前記押さえ板に固定されている付記1に記載の作業機械用蓄電モジュール。
【0117】
(付記3)
付記1または2に記載の作業機械用蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールから供給される電力で駆動されるとともに、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって回生電力を発生し、前記蓄電モジュールを充電するモータを有するショベル。
【0118】
(付記4)
さらに、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と
を有し、前記モータは、前記上部旋回体を旋回させる付記3に記載のショベル。
【0119】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0120】
11、12、13、14 壁板
15 隔壁
17 冷媒流路
20 蓄電セル
20A 薄い部分
21 電極
25 伝熱板
27 ガス抜き弁
30 積層体
31 押さえ板
33 タイロッド(第1のタイロッド)
40 タイロッド(第2のタイロッド)
43 中間板
45 熱伝導性接着剤
46 溝
50 溝
51 伝熱ゴムシート
55 凹凸
56 締付具
60 支持枠
61 踏み面
70 上部旋回体
71 下部走行体(基体)
73 旋回軸受け
74 エンジン
75 メインポンプ
76 旋回モータ
77 油タンク
78 冷却ファン
79 座席
80 蓄電モジュール
81 トルク伝達機構
82 ブーム
83 電動発電機
85 アーム
86 バケット
87 外部電源接続プラグ
88 電圧コンバータ
90 蓄電モジュールマウント
91 ダンパー(防振装置)
101A、101B 油圧モータ
107 ブームシリンダ
108 アームシリンダ
109 バケットシリンダ
114 メインポンプ
115 パイロットポンプ
116 高圧油圧ライン
117 コントロールバルブ
118 インバータ
119 キャパシタ
120 インバータ
122 レゾルバ
123 メカニカルブレーキ
124 減速機
125 パイロットライン
126 操作装置
127、128 油圧ライン
129 圧力センサ
130 制御装置
135 表示装置
136 温度検出器
200 コンバータ
201 リアクトル
202A 昇圧用IGBT
202B 降圧用IGBT
202a、202b ダイオード
203A、203B 電源接続端子
204A、204B 出力端子
205 平滑用コンデンサ
206 電圧計
207 電流計
211 電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
xyz直交座標系を定義したとき、
z方向に積層された板状の複数の蓄電セル、
前記蓄電セルの間に配置された少なくとも1枚の伝熱板、及び
前記蓄電セルの積層構造の両端に配置され、前記蓄電セルに、該蓄電セルの積層方向の圧縮力を加える一対の押さえ板
を含む積層体と、
前記積層体をy方向に挟む第1の壁板及び第2の壁板と
を有し、
前記伝熱板の位置が、前記第1の壁板及び前記第2の壁板に対して拘束されている蓄電モジュール。
【請求項2】
さらに、前記第1の壁板及び前記第2の壁板を冷却するための冷媒流路を有する請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記冷媒流路は、z方向に延在し、かつ相互に平行に配置された複数の流路部分を含む請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記冷媒流路は、前記第1の壁板及び前記第2の壁板の各々の内部に配置されており、前記冷媒流路の両端は、前記第1の壁板及び前記第2の壁板の各々の、1つの端面に開口している請求項2または3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記蓄電セルは、一対の電極端子を有し、前記蓄電セルの電極端子は、前記伝熱板の縁よりも外側を通って、隣の蓄電セルの電極端子に接続されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
さらに、前記蓄電セル及び前記伝熱板が密閉空間に配設される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−38439(P2013−38439A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216621(P2012−216621)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2011−545077(P2011−545077)の分割
【原出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】