説明

蓄電池充放電管理システム

【課題】蓄電池充放電管理システムにおいて、充放電に関する各要素に対する動作監視処理の負荷を軽減することである。
【解決手段】蓄電池充放電管理システム10は、複数の蓄電池21を含む組電池22等を複数並列に接続配置した蓄電池集合体20と、複数の組電池22等のそれぞれに設けられ、蓄電池21の動作状態データを取得する動作状態データ取得部60と、動作状態データに基づくデータを所定の送信先に送信する送信処理部66とを含む複数の組電池管理ユニット52等を備える。組電池管理ユニット52等は、生の動作状態データに、取得が正常に行われたか否かを示すフラグビットを付して、送信用生データを生成する送信用データ生成部64を含む。また、生の動作状態データを加工した加工済みデータを生成する加工済みデータ生成部62を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池充放電管理システムに係り、特に蓄電池の動作状態等を監視する蓄電池充放電管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
供給電力の変動と負荷の電力消費の変動に合わせて、全体として効率的な電力管理を行うことが望まれる。蓄電装置はこのような電力需給の変動を平均化するために用いることができる。蓄電装置としては、リチウムイオン電池のような2次電池を用いることができる。
【0003】
特許文献1には、リチウムイオン電池の管理装置として、リチウムイオン電池の充放電電流の測定値、温度の測定値、商用電源の給電の情報に基づいて、リチウムイオン電池の充放電の状態を判断し、リチウムイオン電池の残存容量を算出することが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−140094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置を用いることで、電力需給の変動を平均化することが可能であるが、リチウムイオン電池等の2次電池は、単位となる蓄電池の端子間電圧が1Vから4V程度で、その充放電電流容量も小さい。そこで、蓄電池を複数個用いる組電池が用いられるが、電力需給の規模によっては、その組電池を多数組み合わせて蓄電池集合体として用いることが必要になる。これに伴って、電力供給源である電源部と蓄電池集合体との間の電力変換、蓄電池集合体と電力を消費する負荷部との間の電力変換を行う電力変換器も複数用いられることがある。
【0006】
このように、複数の蓄電池を含む蓄電池集合体、電力変換器の規模が大きくなると、これらの動作が正常に行われているか否かの監視も重要となる。監視する要素が増大するにつれ、それらの動作が正常か異常かを判断する処理の負荷が重くなる。
【0007】
本発明の目的は、充放電に関する各要素に対する動作監視処理の負荷を軽減できる蓄電池充放電管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電池充放電管理システムは、複数の蓄電池を組み合わせて接続した組電池を複数並列に接続配置して構成され、充放電制御装置の充放電指示に従って充放電される蓄電池集合体と、複数の組電池のそれぞれに設けられ、組電池を構成する複数の蓄電池の動作状態データを取得する動作状態データ取得部と、動作状態データに基づくデータを所定の送信先に送信する送信処理部とを含む複数の組電池管理ユニットと、を備え、組電池管理ユニットは、生の動作状態データに、取得が正常に行われたか否かを示すフラグビットを付して、送信用生データを生成する送信用データ生成部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充放電に関する各要素に対する動作監視処理の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施の形態における蓄電池充放電管理システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における動作状態監視の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る実施の形態における送信用生データと送信用加工済みデータのパケット構造を示す図である。
【図4】図3の詳細図で、フラグビットが設けられる様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、送信用生データと送信用加工済みデータが送信される様子を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、電力変換器管理装置の要求に応じて、送信用加工済みデータが送信されることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。以下では、蓄電池としてリチウムイオン電池を説明するが、これ以外の2次電池であってもよい。例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等であってもよい。蓄電池集合体とするのは、負荷部の必要電力に対応するための電圧と電流とを得るためであるので、蓄電池集合体を構成する組電池の数、組電池を構成する蓄電池の数等は、蓄電池充放電管理システムの仕様に応じ適宜なものとできる。
【0012】
また、以下で、電源部の供給電力として、外部商用電力と太陽光発電電力とを説明するが、これ以外の電力源、例えば風力発電電力等であってもよい。また、例えば、電力源として、外部商用電力のみを用いるものとしてもよい。
【0013】
また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、蓄電池充放電管理システム10の構成を示す図である。蓄電池充放電管理システム10は、マスタコントローラ30と、電力変換器管理装置32と、電力変換器34と、電力変換器34に接続される組電池系列群40と、組電池メイン管理ユニット70を含んで構成される。
【0015】
組電池系列群40は、組電池とスイッチ部と組電池管理ユニットとを1つの系列として、20の系列が並列に接続されて構成される。もっとも系列数は、20以外であっても構わない。図1では、20の系列のうち、2つの系列が示されている。すなわち、組電池22,24と、スイッチ部42,44と、組電池管理ユニット52,54が示されている。各組電池22,24は、14の蓄電池21が直列に接続されて構成される。もっとも、直列接続数は14以外であっても構わない。
【0016】
図1において太い実線は電力線で、細い実線は信号線である。蓄電池集合体20への充電電力の供給は、電源部12から行われ、蓄電池集合体20からの放電電力は負荷部18にて消費される。蓄電池充放電管理システム10は、電源部12と負荷部18の電力需給の変動に応じて充放電制御を行う機能を有する。ここでは特に、充放電に関する要素である電力変換器34、組電池22,24、スイッチ部42,44、組電池管理ユニット52,54についての動作が正常か異常かの監視を効率的に行う機能を有する。
【0017】
電源部12は、蓄電池集合体20に対し充電電力を供給する充電電力供給源である。電源部12は、外部商用電源14と、太陽光発電システム16を含む。外部商用電源14は、単相または三相の交流電力源であり、外部の電力会社から供給される。太陽光発電システム16は、太陽光エネルギを直流電力に変換する光電変換モジュールで構成される。
【0018】
負荷部18は、蓄電池集合体20からの放電電力を消費して動作する装置等である。場合によっては、電源部12からの電力を負荷部18の電力仕様に変換して、直接的に負荷部18に供給するものとしてもよい。負荷部18の内容は、工場の装置、一般照明、一般空調、厨房器具、サーバやPC等の事務機器、工場内空調等である。
【0019】
マスタコントローラ30は、電源部12からの電力供給計画を取得し、また負荷部18からの負荷稼働計画を取得し、これらに基づいて、電力変換器管理装置32に対し、充放電指令を送信する充放電制御装置である。電力変換器管理装置32に送信される充放電制御指令は、例えば「(XX)kWで(YY)秒間充電すること」等のように、充放電条件が電力量と時間とで示される。これは例示であって、この他に、充電上限電圧を指定して「電圧が(ZZ)Vになるまで(XX)kW充電すること」としてもよく、放電下限電圧を指定して「(ZZ)Vまで放電すること」としてもよく、SOCを指定して充放電を指令するものとしてもよい。ここで、SOCとは、電力時間積を最大に貯蔵した状態におけるSOC(充電度)を100とし、それを基準にして電力時間積の各貯蔵状態でのSOC(充電度)を百分率で表したものである。
【0020】
電力変換器管理装置32は、マスタコントローラ30から充放電制御指令を受け、電力変換器34の動作を管理する機能を有する。図1では1つの電力変換器管理装置32が示されているが、蓄電池集合体20の規模が大きい場合には、電力変換器管理装置32を複数設けるものとしてもよい。
【0021】
電力変換器管理装置32は、マスタコントローラ30からの充放電制御指令に従って、電力変換器34の動作を制御し、電源部12の電力を蓄電池集合体20に一旦蓄電させ、また、蓄電した電力を負荷部18に放電させる充放電管理を行う機能を有する。この際に、組電池系列群40を構成する各組電池のSOCを参照する。そのために、組電池系列群40を構成する20個の組電池管理ユニットのそれぞれに対し、後述する送信用加工済みデータの送信を要求し、要求に従って送信された送信用加工済みデータを利用する。送信用加工済みデータには、SOCの他、組電池、スイッチ部、組電池管理ユニットの動作状態データの平均値、最大値、最小値等が含まれる。
【0022】
この他に、電力変換器管理装置32が、電力変換器34の不具合を示す情報をマスタコントローラ30に知らせる機能を有するものとしてもよい。例えば、電力変換器34に不具合がある場合や、マスタコントローラ30からの充放電の禁止指令、または待機指令が出力されている場合には、不具合のある電力変換器34の動作を待機状態にさせて、電力変換器34の不具合を示す情報をマスタコントローラ30に知らせるものとしてよい。
【0023】
電力変換器34は、外部商用電源14の交流電力と蓄電池21の直流電力との間の交直電力変換を行うAC/DCインバータ、あるいは太陽光発電システム16の電圧と蓄電池21の電圧との間の電圧変換、あるいは蓄電池21の電圧と負荷部18の電圧との間の電圧変換を行うDC/DCコンバータである。具体的には、実際に行われる変換の内容に応じて、変換装置の種類が選択される。
【0024】
組電池系列群40は、蓄電池21を14個直列に接続した組電池を20個並列に組み合わせた蓄電池集合体20を組電池毎に系列化したものである。1つの組電池系列は、1つの組電池と、1つのスイッチ部と、1つの組電池管理ユニットで構成される。図1では、20の組電池系列を代表して2つの組電池系列が示されている。例えば、組電池22とスイッチ部42と組電池管理ユニット52とが1つの組電池系列であり、同様に、組電池24とスイッチ部44と組電池管理ユニット54が1つの組電池系列である。なお、図1では電力変換器が複数の組電池系列に対応する構成となっているが、場合によっては、組電池系列の数を1つとする構成としてもよい。
【0025】
蓄電池集合体20は、組電池系列群40を構成する蓄電池21の集合体である。蓄電池21は、単位セルと呼ばれる端子間電圧が数Vのリチウムイオン単位蓄電池を24個並列に接続したものを、直列に13組接続して構成される。したがって、蓄電池集合体20は、1つの蓄電池集合体−20個の組電池−1個の組電池当り14個の蓄電池−1個の蓄電池当たり312個の単位蓄電池の階層構造を有する。
【0026】
このように、組電池系列群40を構成する各系列は、1つの組電池と1つのスイッチ部と1つの組電池管理ユニットで構成される。その内容は各系列で同じであるので、以下では、組電池22、スイッチ部42、組電池管理ユニット52で構成される系列に代表させて、その構成要素の内容を説明する。
【0027】
組電池22は、単位蓄電池を複数組み合わせた蓄電池21を、14個直列に接続したものである。それぞれの蓄電池21の端子間電圧は、図示されていない電圧検出器によって検出される。また、それぞれの蓄電池21の温度は、図示されていない温度検出器によって検出される。また、組電池22の電流は、図示されていない電流検出器によって検出される。これらの電圧、温度、電流は、組電池22の動作状態データとして、組電池管理ユニット52に伝送される。
【0028】
スイッチ部42は、電力変換器34と組電池22との間に設けられ、電力変換器34と組電池22との間を接続または遮断するスイッチを含んで構成される。スイッチ部42の動作は、組電池管理ユニット52によって制御され、その動作状態は、組電池管理ユニット52が把握している。
【0029】
組電池管理ユニット52は、組電池22の動作状態データを取得し、それに基づいて組電池22に不具合があるときは、組電池22を電力変換器34から切り離す処理を行う。具体的には、スイッチ部42に含まれるスイッチを遮断する処理を行う。この機能の他に、組電池管理ユニット52は、系列を構成する組電池22の動作状態データ、スイッチ部42の動作状態データ、および組電池管理ユニット自身の動作状態データを、予め定めた所定の送信先に送信する機能を有する。かかる組電池管理ユニット52は、適当な性能のコンピュータで構成できる。具体的には、適当な処理速度と適当な記憶容量を有する組込型のマイクロプロセッサで構成される。適当な処理速度、適当な記憶容量とは、例えば、組電池メイン管理ユニット70の処理速度よりも低速で、小規模の記憶容量とすることができる。
【0030】
組電池管理ユニット52は、動作データの取得と送信に関し、特に、図1に拡大して示す機能を有する。すなわち、動作状態データ取得部60の機能を有する。この機能は、組電池管理ユニット52自身の動作状態データも含み、組電池22の動作状態データ、スイッチ部42の動作状態データ、および、この系列が接続される電力変換器34の動作状態データを取得することを内容とする。また、加工済みデータ生成部62の機能を有する。この機能は、取得したままの生の動作状態データに基づいて、予め定めたデータ加工処理手順に従って処理を行った加工済みデータを生成することを内容とする。データ加工処理手順としては、組電池22の端子間電圧からSOCを算出する手順、これらのデータについての平均値、最大値、最小値、標準偏差等の統計処理を行う手順、前回の動作状態データとの間の変化量算出処理を行う手順等が含まれる。
【0031】
さらに、組電池管理ユニット52は、送信用データ生成部64の機能を有する。この機能は、取得した生の動作状態データ、加工した加工済みデータのそれぞれについて、動作状態データの取得が正常に行われたか否かを示すフラグビットを付して、送信用データを生成することを内容とする。フラグビットとしては、組電池管理ユニット52が、組電池22から、あるいは、スイッチ部42から、あるいは電力変換器34から、正常に動作状態データを受信して取得したときを正常として「1」とし、受信がされないときを異常として「0」とするものとできる。
【0032】
このように、フラグビットを付すのは、動作状態データの内容が正常か異常かに基づくのでなく、動作データの受信が正常に行われたか否かに基づくので、処理の負荷が軽い。また、異常状態であることを示すのに、1ビットデータで済み、例えば、異常状態の時に動作状態データを全部0に置き換え、または全部1に置き換える処理を行うことに比べ、格段に処理の負荷が軽い。また、これらの処理に要する記憶容量も少なくて済む。
【0033】
さらに、組電池管理ユニット52は、送信処理部66の機能を有する。この機能は、生データにフラグビットを付した送信用生データと、加工済みデータにフラグビットを付した送信用加工済みデータのそれぞれを、所定の送信先に送信することを内容とする。送信用生データは、組電池メイン管理ユニット70に送信される。送信用加工済みデータは、電力変換器管理装置32の要求があって初めて、その要求に応じ電力変換器管理装置32に送信される。そして、電力変換器管理装置32に送信されたのと同じ内容のデータが、組電池メイン管理ユニット70に送信される。換言すれば、電力変換器管理装置32に送信されないデータは、組電池メイン管理ユニット70にも送信されない。
【0034】
上記各機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、動作状態監視プログラムを実行することで実現できる。上記機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0035】
組電池メイン管理ユニット70は、組電池系列群40を構成する20個の組電池管理ユニットからの送信用データを受信する受信処理部72の機能を有する。この機能は、各組電池管理ユニットから送信された送信用データについて、フラグビットを利用し、正常取得データと異常取得データに対応する処理を行って記憶することを内容とする。また、ここでは特に、異常時処理部74の機能を有する。この機能は、送信用データの内容に基づいて電力変換器管理装置32が異常であるとされるときに、例えば、組電池系列群40を構成する各組電池の充放電を停止し待機させる処理を行うことを内容とする。
【0036】
送信用データの内容に基づいて電力変換器管理装置32が異常であると判断するのは、2つの方法のいずれかに基づいて行うことができる。1つは、送信用生データに含まれる電力変換器34に関するフラグビットが異常を示す場合である。もう1つは、少なくとも2以上の組電池管理ユニットに渡って、送信用加工済みデータが送信されていないときである。
【0037】
上記のように、組電池メイン管理ユニット70に送信用加工済みデータが送信されるのは、電力変換器管理装置32に送信用加工済みデータが送信されたときである。組電池メイン管理ユニット70に、少なくとも2以上の組電池管理ユニットに渡って、送信用加工済みデータが送信されていないときは、電力変換器管理装置32に、少なくとも2以上の組電池管理ユニットに渡って、送信用加工済みデータが送信されていないことになる。1つの組電池管理ユニットから電力変換器管理装置32に送信用加工済みデータが送信されないときは、その組電池管理ユニット自身に異常があるとも考えることができるが、2以上の組電池管理ユニットに渡って、送信用加工済みデータが送信されていないときは、むしろ電力変換器管理装置32に異常が生じている可能性が高いからである。
【0038】
組電池メイン管理ユニット70の上記の各機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、動作状態監視プログラムを実行することで実現できる。上記機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0039】
上記構成の作用、特に組電池管理ユニット52,54の各機能、組電池メイン管理ユニット70の各機能について、図2から図6を用いて詳細に説明する。複数の組電池管理ユニットの各機能は同じ内容であるので、以下では、組電池管理ユニット52に代表させて、その機能等を説明する。図2は、動作状態監視の手順を示すフローチャートである。各手順は、動作状態監視プログラムの各処理手順にそれぞれ対応する。図3から図6は、各手順の内容を説明する図である。
【0040】
動作状態監視の手順の最初は、動作状態データの取得である(S10)。この工程は、組電池管理ユニット52の動作状態データ取得部60の機能によって実行される。具体的には、組電池22について、組電池22を構成する各蓄電池21の端子間電圧、温度、組電池22の電流等が取得される。また、スイッチ部42について、スイッチのオンオフ状態データ等が取得される。また組電池管理ユニット52自身についてのデータ取得、スイッチに対する指令等の動作状態データが取得される。また、電力変換器34の充放電指令とその実行状態等の動作状態データが取得される。
【0041】
次に、加工済みデータの生成が行われる(S12)。この工程は、組電池管理ユニット52の加工済みデータ生成部62の機能によって実行される。具体的には、組電池22を構成する各蓄電池21の端子間電圧から組電池22の端子間電圧を算出し、予め求めてある端子間電圧とSOCの関係を用いて、組電池22のSOCを算出する。あるいは、電池電流を検出し、検出された電池電流の積算に基づいて組電池の残容量を演算してSOCを算出してもよい。その他、各動作状態データについての平均値等が算出される。これらが加工済みデータとされる。
【0042】
次に、送信用データが生成される(S14,S16)。この工程は、組電池管理ユニット52の送信用データ生成部64の機能によって実行される。送信用データとは、S10において取得された生データである動作状態データについては、その生データに、さらに、その取得が正常か異常かを示すフラグビットを付したデータである。この生データにフラグビットを付したものが送信用生データである。この工程がS14で、生成された送信用生データがP1である。
【0043】
一方、S12において生成された加工済みデータについての送信用データは、その加工済みデータに、さらに、その取得が正常か異常かを示すフラグビットを付したデータである。この加工済みデータにフラグビットを付したものが送信用加工済みデータである。この工程がS16で、生成された送信用加工用データがP2,P3である。P2とP3は同じ内容であるが、後述する送信処理S18,S20で異なる送信先に送信される。
【0044】
図3、図4に、送信用生データと、送信用加工済みデータのパケットフォーマットを示す。図3は、パケットフォーマットの概略図で、図4は、パケットフォーマットにおけるフラグビットを示す詳細図である。いずれの図においても、(a)が送信用生データP1、(b)が送信用加工済みデータP2,P3である。
【0045】
図3に示されるように、送信用データのパケットフォーマットは、ヘッダの部分と、系列データの部分に分けられる。系列データとは、組電池22、スイッチ部42、組電池管理ユニット52、電力変換器34の系列に関する動作状態データまたは加工済みデータのことである。
【0046】
図4(a)に示されるように、フラグビットは、組電池22を構成する14個の蓄電池21のそれぞれの動作状態データの部分について1つずつ、スイッチ部42の動作状態データの部分について1つ、組電池管理ユニット52の動作状態データの部分について1つ、電力変換器34の動作状態データの部分について1つ、それぞれ付される。フラグビットは、これらの動作状態データの取得が正常のときに「1」が、正常でない異常のときに「0」が付される。
【0047】
加工済みデータについては、図4(b)に示されるように、フラグビットは、組電池22の加工済みデータの部分について1つ、スイッチ部42の加工済みデータの部分について1つ、組電池管理ユニット52の加工済みデータの部分について1つそれぞれ付される。このように、組電池22の加工済みデータに対するフラグビットは、14個の蓄電池21の各動作状態データに基づいて加工されたデータに対し1つ付される。ここでは、電力変換器34についての加工済みデータはないものとされる。
【0048】
再び図2に戻り、送信用生データP1と送信用加工済みデータP2,P3が生成されると、次に、これらがそれぞれ所定の送信先に送信される(S18,S20)。この工程は、組電池管理ユニット52の送信処理部66の機能によって実行される。送信用生データP1と送信用加工済みデータP2,P3の送信が行われる様子を図5に示す。ここに示されるように、送信用生データP1と送信用加工済みデータP3は、組電池系列群40を構成する20個の組電池管理ユニットから、それぞれ組電池メイン管理ユニット70に送信される。20個の組電池管理ユニットを区別して、図5では#01から#20が各系列に付されている。送信用加工済みデータP2は、#01から#20で示される組電池管理ユニットから、それぞれ電力変換器管理装置32に送信される。電力変換器管理装置32から各組電池管理ユニットに送信されるQ1は、その系列に関する電力変換器の状態情報、電力変換器管理装置32の状態情報を含むデータであるが、それと共に、組電池管理ユニットに対しP2の送信を要求するコマンドでもある。
【0049】
このように、送信用生データP1は、S18において、組電池メイン管理ユニット70を送信先として送信が行われる。送信タイミングは、あらかじめ設定することができる。組電池メイン管理ユニット70は、20個の組電池管理ユニットからそれぞれ送信用生データを受信するので、送信タイミングとして、各組電池管理ユニットごとに1秒から数秒の間で設定された間隔とすることができる。例えば、2秒間隔とすると、組電池管理ユニット52は、2秒間隔で、送信用生データを組電池メイン管理ユニット70に送信する。
【0050】
S20は、送信用加工済みデータP2の送信の工程を示す。ここでは、電力変換器管理装置32のQ1に応じて、P2の送信が行われる。Q1は、P2の送信を要求するコマンドで、電力変換器管理装置32から、#01から#20で示される組電池管理ユニットにそれぞれ順次送信される。#01から#20で示される組電池管理ユニットは、送信されたQ1を受け取ったときに、それぞれの系列の加工済みデータP2を電力変換器管理装置32に送信する。このように、P2の送信タイミングは、電力変換器管理装置32のQ1の発信タイミングで決まる。電力変換器管理装置32は、マスタコントローラ30からの充放電指令を受け取ったタイミング、充放電指令を実行中の適当なタイミングで、Q1を送信することができる。
【0051】
図6は、電力変換器管理装置32から、♯01から#20の組電池管理ユニットに対しQ1を送信するタイミングと、各組電池管理ユニットから電力変換器管理装置32にP2を送信するタイミングを示すタイムチャートである。縦軸方向が経過時間である。このように、各組電池管理ユニットごとにQ1とP2が組となって送受信が行われる。1つの組電池管理ユニットに対するQ1とP2の送受信と、次の組電池管理ユニットに対するQ1とP2の送受信の間の間隔は予め定めたt1である。このように、時間間隔t1で、電力変換器管理装置32と#01から#20の組電池管理ユニットの間でQ1とP2の送受信が順次行われ、組電池系列群40の全体としては、時間t2で、Q1とP2の送受信処理が終了する。t1としては、例えば100ms以内、t2としては、20個の組電池管理ユニットを対象とする場合その20倍の約2sとすることができる。
【0052】
再び図2に戻り、S20において、Q1に応じたP2の送信処理が全体として終了すると、次に、P3の送信が#01から#20の組電池管理ユニットから組電池メイン管理ユニット70に対し行われる。このP3は、電力変換器管理装置32に送信されたP2と同じ内容である。正常状態であれば、20個のP2が電力変換器管理装置32に送信される。仮に、ある組電池管理ユニットからその系列に関するP2が電力変換器管理装置32に送信されなければ、その送信されなかったP2は組電池メイン管理ユニット70にも送信されない。
【0053】
図2のS22,S24,S26,S28は、組電池メイン管理ユニット70の異常時処理部74の機能によって実行される工程である。ここでは、電力変換器管理装置32の動作状態について正常か異常かが判断され、異常のときは、異常時処理が実行される。
【0054】
S22は、S18において組電池メイン管理ユニット70に送信された送信用生データP1を利用するものである。ここでは、送信用生データに含まれる電力変換器34に関するフラグビットが正常のときに、S26において、電力変換器管理装置32の動作状態が正常とされる。これに対し、送信用生データに含まれる電力変換器34に関するフラグビットが異常とされると、S28において、電力変換器管理装置32の動作状態が異常とされ、異常時処理が行われる。異常時処理としては、組電池22,24が過充電、過放電にならないように、組電池系列群40を構成する組電池22,24の充放電を停止し待機させることとできる。
【0055】
S24は、S20において組電池メイン管理ユニット70に送信された送信用加工済みデータP2を利用するものである。ここでは、送信用加工済みデータが送信されていないのが多くても1つの組電池管理ユニットに関する場合に、S26において、電力変換器管理装置32の動作状態が正常とされる。一方、少なくとも2以上の組電池管理ユニットに渡って、送信用加工済みデータが送信されていないときには、S28において、電力変換器管理装置32の動作状態が異常とされ、異常時処理が行われる。
【0056】
このように、動作状態データの取得が正常に行われたか否かに関するフラグビットを付すことで、充放電に関する各要素に対する動作監視処理の負荷を軽減できる。すなわち、以上説明した本発明の実施の形態によれば、蓄電池充放電管理システム10は、組電池を構成する複数の蓄電池の生の動作状態データの取得が正常に行われたか否かを示すフラグビットを付して送信用生データを生成し、その送信用生データを所定の送信先に送信する。フラグビットは、データ取得が正常に行われたか否かについての通信の状態を監視するので、動作状態のデータの内容の正常か異常かの監視よりも処理負荷が軽い。また、送信用生データを受信した方も、フラグビットに従ってデータの蓄積処理等を迅速に行うことができ、処理負荷が軽い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る蓄電池充放電管理システムは、蓄電池集合体が設けられる施設の充放電管理に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 蓄電池充放電管理システム、12 電源部、14 外部商用電源、16 太陽光発電システム、18 負荷部、20 蓄電池集合体、21 蓄電池、22,24 組電池、30 マスタコントローラ、32 電力変換器管理装置、34 電力変換器、40 組電池系列群、42,44 スイッチ部、52,54 組電池管理ユニット、60 動作状態データ取得部、62 加工済みデータ生成部、64 送信用データ生成部、66 送信処理部、70 組電池メイン管理ユニット、72 受信処理部、74 異常時処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池を組み合わせて接続した組電池を複数並列に接続配置して構成され、充放電制御装置の充放電指示に従って充放電される蓄電池集合体と、
前記複数の組電池のそれぞれに設けられ、前記組電池を構成する前記複数の蓄電池の動作状態データを取得する動作状態データ取得部と、前記動作状態データに基づくデータを所定の送信先に送信する送信処理部とを含む複数の組電池管理ユニットと、
を備え、
前記組電池管理ユニットは、生の前記動作状態データに、前記取得が正常に行われたか否かを示すフラグビットを付して、送信用生データを生成する送信用データ生成部を含む蓄電池充放電管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池充放電管理システムにおいて、
前記複数の組電池のそれぞれに接続される電力変換器に対し、前記充放電制御装置の前記充放電指示に従って前記充放電を制御する電力変換器管理装置を備え、
前記組電池管理ユニットの前記動作状態データ取得部は、
前記組電池を構成する前記複数の蓄電池の前記動作状態データと共に、前記組電池に対応する前記電力変換器の動作状態データを取得する蓄電池充放電管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電池充放電管理システムにおいて、
前記組電池管理ユニットは、
前記組電池を構成する前記複数の蓄電池の前記動作状態データについて、予め定めたデータ加工処理手順に従って加工し、前記組電池に関する加工済みデータを生成する加工済みデータ生成部を含み、
前記送信用データ生成部は、
前記加工済みデータについて、元々の前記動作状態データの取得が正常に行われたか否かを示す前記フラグビットを付して、前記送信用生データとは別に、送信用加工済みデータを生成する蓄電池充放電管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電池充放電管理システムにおいて、
前記複数の組電池管理ユニットからの前記送信を受信する受信処理部を含み前記複数の組電池のそれぞれの動作状態を監視する組電池メイン管理ユニットを備え、
前記組電池管理ユニットの前記送信処理部は、
前記電力変換器管理装置の要求に応じ、前記電力変換器管理装置に対し前記送信用加工済みデータを送信し、前記送信されたのと同じ内容のデータを前記組電池メイン管理ユニットに送信する蓄電池充放電管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電池充放電管理システムにおいて、
前記組電池メイン管理ユニットは、
前記送信用生データに含まれる前記電力変換器に関する前記フラグビットが異常を示す場合、または、少なくとも2以上の前記組電池管理ユニットに渡って、前記送信用加工済みデータが送信されていないときに、前記電力変換器管理装置の動作異常に対する処理を行う異常時処理部を有する蓄電池充放電管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114856(P2013−114856A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259058(P2011−259058)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】