説明

蓄電池制御システム

【課題】蓄電池の長寿命化を図る蓄電池制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】蓄電池20a〜20dの各々の電圧値を点検・リフレッシュ充電用インバータ24が計測可能なように、蓄電池20a〜20dの各1つを順次、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続すると共に、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続していない蓄電池は双方向インバータ22に対して直列に接続するように4路スイッチ26a〜26eを制御する。点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続した蓄電池の電圧値を計測し、計測した電圧値が第1の閾値未満の場合に、分電盤14から供給された交流を蓄電池20a〜20dのうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換し、当該変換によって得た直流で点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続した蓄電池を充電するように点検・リフレッシュ充電用インバータ24を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物が備える蓄電池制御システムにかかり、特に、蓄電池の長寿命化を図る蓄電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、系統電力又は自家発電した電力を蓄える複数個の蓄電池からなる蓄電池設備備を制御する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、電力系統に連系され、電力系統に並列に接続した複数個の蓄電池からなる蓄電池設備を備えた自家発電設備の蓄電池設備及び蓄電池設備の運転方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−99527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、充電状態蓄電池の各蓄電池ごとの充電量を監視しており、満充電状態もしくは最も充電量の大きな状態にある蓄電池を選択して放電に充当するものであるが、各蓄電池について、同じような充電及び放電のサイクルを反復するものに過ぎず、複数個の蓄電池のうち、充電能力が低下した特定の蓄電池に対する維持管理が考慮されておらず、充電能力が低下した蓄電池の長寿命化を図ることができない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、建物が備える蓄電池制御システムにかかり、特に、蓄電池の長寿命化を図る蓄電池制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、複数個が直列に接続され、該複数個のうちのいずれか1つが前記直列の接続から除外された場合でも、他の複数個が直列に接続されることで所定の電圧で放電可能な複数個の蓄電池と、系統電力から供給された交流を複数の電力供給先に分配する分電盤に接続され、前記分電盤から供給された交流を前記複数個が直列に接続された蓄電池の充電に適した電圧の直流に変換すると共に、前記複数個の蓄電池の放電によって供給された直流を前記分電盤から前記複数の電力供給先に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換する第1のインバータと、前記分電盤に接続され、前記分電盤から供給された交流を、前記複数個の蓄電池のうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換する第2のインバータと、前記複数個が直列に接続された蓄電池の蓄電池と蓄電池との間、並びに前記複数個が直列に接続された蓄電池の始端及び終端に各々設けられ、前記複数個が直列に接続された蓄電池のいずれか1つを前記直列の接続から除外して前記第2のインバータに接続する複数の切替手段と、前記第2のインバータに接続された蓄電池の電圧値を計測する電圧計測手段と、前記複数個の蓄電池の各々の電圧値を前記電圧計測手段が計測可能なように、前記複数個の蓄電池の各1つを順次、前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池は前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御すると共に、前記第2のインバータに接続した蓄電池の電圧値を計測するように前記電圧計測手段を制御し、該計測した電圧値が第1の閾値未満の場合に、前記分電盤から供給された交流を前記複数個の蓄電池のうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換し、該変換によって得た直流で前記第2のインバータに接続した蓄電池を充電するように前記第2のインバータを制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、複数個の蓄電池は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等の充放電が可能な二次電池であって、複数個が直列に接続されることで、少なくとも100V以上の電圧の直流を放電可能である。
【0009】
第1のインバータは、系統電力から供給される交流を直流に変換すると共に、蓄電池から得た直流を交流に変換することが可能な、いわゆる双方向インバータである。
【0010】
第2のインバータは、複数個の蓄電池のいずれか1つに接続可能で、系統電力から供給された交流を複数個の蓄電池のいずれか1つを充電するための直流に変換することができる。
【0011】
複数の切替手段は、複数個の蓄電池のいずれか1つを第2のインバータに接続し、他の蓄電池は第1のインバータに直列に接続することができる4路スイッチである。
【0012】
電圧計測手段は、第2のインバータに接続された蓄電池の電圧値を計測可能な電圧計等の装置であり、第2のインバータと一体に構成されていてもよい。
【0013】
制御手段は、第2のインバータ及び複数の切替手段を制御し、複数個の蓄電池のいずれか1つを順次第2のインバータに接続させ、電圧計測手段に第2のインバータに接続された蓄電池の電圧値を計測させ、計測した電圧値が第1の閾値未満の場合は、第2のインバータに接続された蓄電池を略満充電まで充電する、いわゆるリフレッシュ充電を行うように第2のインバータを制御する。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、各蓄電池の電圧値を計測することによって、充電が不十分な蓄電池又は充電能力が低下しているおそれがある蓄電池を早期に特定でき、特定した蓄電池に対してリフレッシュ充電を行うので、蓄電池の長寿命化を図ることが可能となる。
【0015】
なお、請求項2に記載の発明のように、前記制御手段は、前記複数個の蓄電池の各1つを順次、前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続した蓄電池の電圧値を計測する制御を、予め定められたスケジュールに従って定期的に実行するようにしてもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、定期的な維持管理により、蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つを前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池を前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御し、前記いずれか1つの蓄電池の電圧値の計測をするように前記電圧計測手段を制御し又は前記いずれか1つの蓄電池の充電をするように前記第2のインバータを制御すると共に、前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池の放電によって供給された直流を前記分電盤から前記複数の電力供給先に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換して前記分電盤に供給するように前記第1のインバータを制御するようにしてもよい。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第2のインバータが1つの蓄電池の電圧値を計測するか、当該蓄電池のリフレッシュ充電をしているときと同時に、他の複数個の蓄電池の電力を、分電盤を介して、複数の電力供給先に供給することが可能となる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つを前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池を前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御し、前記いずれか1つの蓄電池の電圧値の計測をするように前記電圧計測手段を制御し又は前記いずれか1つの蓄電池の充電をするように前記第2のインバータを制御すると共に、分電盤から供給された交流を前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池の充電に適した電圧の直流に変換し、該変換によって得た直流で前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池を充電するように前記第1のインバータを制御するようにしてもよい。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、第2のインバータが1つの蓄電池の電圧値を計測するか、当該蓄電池のリフレッシュ充電をしているときと同時に、他の複数個の蓄電池を第1のインバータから供給される直流で充電することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明のように、前記制御手段は、前記電圧計測手段が計測した前記複数個の蓄電池の各々の電圧値に基づいて、前記複数個の蓄電池に残存している電力及び前記複数個の蓄電池の充電に要する電力を算出し、該算出した前記複数個の蓄電池に残存している電力及び前記複数個の蓄電池の充電に要する電力を報知する報知手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、蓄電池の残存電力及び蓄電池の充電に要する電力を知ることができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明のように、前記報知手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つが前記第2のインバータに接続されている場合は、その旨を報知可能であってもよい。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、蓄電池のいずれか1つが点検中、又はリフレッシュ充電中であることを知ることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明のように、前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つが前記第2のインバータに接続された場合に、前記複数個の蓄電池のいずれか1つと前記第2のインバータとの電気的な接続が確保されているか否かを判定し、判定結果を前記報知手段によって報知してもよい。これによって、蓄電池の点検又はリフレッシュ充電に用いる回路が正常であることを通知することができる。
【0026】
また、請求項8に記載の発明のように、前記制御手段は、前記第2のインバータから供給される直流で充電された蓄電池の電圧が第2の閾値未満の場合であり、かつ前記第2のインバータから供給される直流による充電を所定回行った後の蓄電池の電圧が前記第2の閾値未満の場合に、該充電された蓄電池が劣化していると判定し、判定結果を前記報知手段によって報知してもよい。これによって、充電能力が低下した蓄電池を特定することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明のように、外部の保守管理者と通信可能な通信手段をさらに備え、前記制御手段は、蓄電池が劣化していると判定した場合に、その旨を前記通信手段によって前記保守管理者に送信するようにしてもよい。これによって、劣化した蓄電池の交換等の措置が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、蓄電池の長寿命化を図る蓄電池制御システムを提供することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る蓄電池制御システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る制御装置による点検・リフレッシュ充電用インバータの制御に係るフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る蓄電池制御システムの第1の変形例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る蓄電池制御システムの第2の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電池制御システム100の一例を示す概略図である。なお、図1中の実線は電力線を示し、点線は情報線を示すものとする。
【0031】
図1では、電力会社から供給される系統電力10が、電圧計12及び分電盤14を介して、家電機器及び住設機器等である一般負荷16並びに本実施の形態に係る蓄電池制御システム100に供給されるようになっている。
【0032】
系統電力10からは、一例として、100Vで50Hzの交流が供給されているものとする。
【0033】
本実施の形態に係る蓄電池制御システム100は、分電盤14に接続され、分電盤14から供給された交流を、直列に配置された複数個の蓄電池20a〜20dの充電に適した電圧の直流に変換すると共に、充電済みの複数個の蓄電池20a〜20dの放電によって供給された直流を分電盤14から一般負荷16に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換する双方向インバータ22を備えている。
【0034】
本実施の形態では、直列に配置された複数個の蓄電池20a〜20dの充電に適した電圧は、直列に配置された複数個の蓄電池が示す電圧値によって異なるが、例えば、満充電状態の蓄電池を全部直列にした場合の電圧値が153Vであれば、その電圧値又はその電圧値に近い直流電流を供給することによって、直列に接続された全蓄電池の充電を行うようにする。
【0035】
また、複数個の蓄電池のうち、1個が点検等によって他の電池との直列の接続から除外されている場合は、その除外された蓄電池の満充電での電圧値を、満充電状態の蓄電池を全部直列にした場合の電圧値から減算して得た電圧値又はその電圧値に近い直流電流を供給することによって、直列に接続された全蓄電池の充電を行うようにする。
【0036】
一例として、満充電状態の蓄電池を全部直列にした場合の電圧値が153Vであって、満充電状態の蓄電池1個の電圧値が12Vであれば、複数個の蓄電池のうち、1個が点検等によって他の電池との直列の接続から除外されている場合に残りの複数個の蓄電池を充電するのに適した電圧は141V又は141V近傍となる。
【0037】
また、本実施の形態に係る蓄電池制御システム100は、分電盤14に接続され、分電盤14から供給される交流を、複数個の蓄電池20a〜20dのうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換すると共に、複数個の蓄電池20a〜20dの各々の電圧値を計測可能な点検・リフレッシュ充電用インバータ24を備えている。
【0038】
複数個の蓄電池20a〜20dのうちの1つの充電に適した電圧は、満充電状態の蓄電池1個の電圧値によって異なる。一例として、満充電状態の蓄電池1個の電圧値が12Vの場合は、複数個の蓄電池20a〜20dのうちの1つの充電に適した電圧は、12V又は12V近傍となる。
【0039】
なお、本実施の形態では、点検・リフレッシュ充電用インバータ24が、各蓄電池の電圧を計測可能な電圧計を備えているが、点検・リフレッシュ充電用インバータ24とは別に、各蓄電池の電圧を計測する手段を備えていてもよい。
【0040】
本実施の形態に係る蓄電池制御システム100における複数個の蓄電池20a〜20dは、双方向インバータ22に対して複数個が直列に接続されるようになっており、複数個のうちのいずれか1つが直列の接続から除外された場合でも、他の複数個の蓄電池を直列に接続することで所定の電圧で放電可能なように構成されている。
【0041】
例えば、満充電状態の蓄電池1個の電圧値が直流12Vの場合で、かつ所定の電圧が直流141V以上の場合、本実施の形態に係る蓄電池制御システム100の複数個の蓄電池20a〜20dの全てが満充電状態で直列に接続されたときの電圧は直流153V以上であることを要する。
【0042】
なお、1個の電圧が直流12Vの蓄電池を直列に接続して直流151Vとするには、当該蓄電池を13個必要とするが、本実施の形態では、説明を簡略化するために、複数個の蓄電池20a〜20dと記すことにする。
【0043】
また、本実施の形態の蓄電池20a〜20dは、個々がコンテナに格納されたモジュールとなっていて、容易に交換が可能なようになっていてもよい。
【0044】
本実施の形態において使用可能な蓄電池としては、鉛蓄電池、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等が考えられるが、この他にも充放電が可能な二次電池であれば、使用可能である。
【0045】
また、本実施の形態に係る蓄電池制御システム100は、複数個が直列に接続された蓄電池20a〜20dの蓄電池と蓄電池との間、並びに複数個が直列に接続された蓄電池の始端及び終端に各々設けられ、複数個が直列に接続された蓄電池20a〜20dのいずれか1つを直列の接続から除外して点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続する複数の4路スイッチ26a〜26eを備えている。
【0046】
さらに本実施の形態に係る蓄電池制御システム100は、複数個の蓄電池20a〜20dの各々の電圧値を点検・リフレッシュ充電用インバータ24が計測可能なように、複数個の蓄電池20a〜20dのいずれか1つを順次、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続し、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続していない蓄電池は双方向インバータ22に対して直列に接続するように4路スイッチ26a〜26eを制御する制御装置28を備えている。
【0047】
制御装置28は、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続した蓄電池の電圧値が所定の第1の閾値未満の場合に、分電盤から供給された交流を複数個の蓄電池のうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換し、当該変換によって得た直流で点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続した蓄電池を充電するように点検・リフレッシュ充電用インバータ24を制御する。
【0048】
この点検・リフレッシュ充電用インバータ24による1つの蓄電池に対する充電は、他の蓄電池に比して充電能力が低下した蓄電池に対して個別に行って、当該電池に略満充電の電力が蓄えられるようにするものであり、以後、「リフレッシュ充電」と呼称する。
【0049】
また、制御装置28は、分電盤14から供給された交流を複数個が直列に接続された蓄電池20a〜20dの充電に適した電圧の直流に変換し、当該直流で複数個の蓄電池20a〜20dを充電し、充電済みの複数個の蓄電池20a〜20dの放電によって供給された直流を分電盤14から一般負荷16に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換して分電盤14に供給するように前記双方向インバータを制御する。
【0050】
本実施の形態に係る蓄電池制御システム100は、電気料金が比較的低廉な夜間に複数個の蓄電池20a〜20dを、双方向インバータ22が分電盤14から供給された交流を変換して得た直流で充電するようにしてもよい。
【0051】
また、昼間では、複数個の蓄電池20a〜20dに蓄えられた電力を双方向インバータ22が分電盤14から一般負荷16等に供給される交流と周波数及び電圧が同一の交流に変換して、分電盤14に供給するようにしてもよい。
【0052】
夜間に比して電力料金が割高な昼間に、複数個の蓄電池20a〜20dに蓄えられた電力を併用することで、昼間及び夜間を通じた電気料金を割安とすることができると共に、何らかの災害で系統電力10からの電力の供給が滞った場合にも、非常用電源として複数個の蓄電池20a〜20dの電力を活用できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る蓄電池制御システム100では、前述のように、複数個のうちのいずれか1つが直列の接続から除外された場合でも、他の複数個の蓄電池を直列に接続することで所定の電圧で放電可能なように構成されている。
【0054】
このため、複数個のうちのいずれか1つが点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続されて、電圧値のチェック若しくはリフレッシュ充電が行われている間も、他の複数個の蓄電池に蓄えられた電力を交流に変換して分電盤14に供給する、又は分電盤14から供給された交流を直流に変換して、他の複数個の蓄電池を充電するように双方向インバータ22を制御することができる。
【0055】
次に、本実施の形態の蓄電池制御システムにおける制御装置28による点検・リフレッシュ充電用インバータ24の制御について説明する。
【0056】
図2は、本実施の形態に係る制御装置28による点検・リフレッシュ充電用インバータ24の制御に係るフローチャートである。なお、本実施の形態では、各蓄電池には1〜N(Nは整数)の、各電池を識別するIDが付与されているものとする。また、図2の制御が実行されるに先立って、蓄電池20a〜20dは双方向インバータ22から供給された直流によって充電された後であるとする。
【0057】
まず、ステップ200において、蓄電池のIDをカウントするIDカウンタを1にセットする。また、制御装置28は、4路スイッチを制御して、一番目の蓄電池を双方向インバータ22に対する直列の接続から切り離し、点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続するようにして、一番目の蓄電池の電圧値の計測が可能なようにする。
【0058】
ステップ202では、一番目の蓄電池の電圧値を点検・リフレッシュ充電用インバータ24が計測し、計測された電圧値が第1の閾値以上か否かを判定する。
【0059】
また、第1の閾値は、1個の蓄電池の満充電での電圧値によるが、例えば、1個の蓄電池の満充電での電圧値が12Vの場合であれば、11V程度を第1の閾値とすることが考えられる。
【0060】
ステップ202において、一番目の蓄電池の電圧値が第1の閾値以上であった場合、ステップ204ではIDカウンタを1インクリメントする。また、制御手段28は、一番目の蓄電池と点検・リフレッシュ充電用インバータ24との接続を解除し、一番目の電池が他の電池と共に直列で双方向インバータ22に接続されるように4路スイッチを制御する。
【0061】
ステップ206では、ステップ204で1インクリメントされた後のIDをIDの最大値であるNと比較し、1インクリメントされた後のIDがNを上回る場合は、全部の蓄電池の電圧値を計測し終えたと判定する。
【0062】
一方で、1インクリメントされた後のIDがN以下の場合は、計測されていない蓄電池が存在すると判定し、手順をステップ202の前に戻し、次の蓄電池の電圧値を計測するようにする。
【0063】
ステップ202で、計測対象の蓄電池の電圧値が第1の閾値未満であった場合は、ステップ208においてリフレッシュ充電の回数をカウントするリフレッシュ充電カウンタを1にセットする。
【0064】
続くステップ210では、リフレッシュ充電を行う。リフレッシュ充電を行う電圧及び時間は、蓄電池の種類、容量及び起電力によって異なる。
【0065】
ステップ210のリフレッシュ充電は、充電の対象となる蓄電池の種類、容量及び起電力に応じた電圧及び時間で行ってもよいが、充電の対象となる蓄電池の電圧値を点検・リフレッシュ充電用インバータ28に随時計測させ、当該計測された電圧値が所定の値以上となったとき又は電圧値が所定の値以上とならなくても一定時間以上充電したときに、リフレッシュ充電を完了させてもよい。
【0066】
ステップ212では、リフレッシュ充電カウンタを1インクリメントし、ステップ214では、リフレッシュ充電後の蓄電池の電圧値が第2の閾値以上か否かを判定する。ここで、第2の閾値は、前述の第1の閾値と同一でもよく、例えば、1個の蓄電池の満充電での電圧値が12Vの場合であれば、11V程度を第2の閾値とすることが考えられる。
【0067】
ステップ214で計測された電圧値が、第2の閾値以上であれば、手順は、ステップ204の前に移行し、次の蓄電池の電圧値が計測される。
【0068】
一方で、ステップ214で、リフレッシュ充電後の蓄電池の電圧値が第2の閾値未満の場合は、ステップ216において、リフレッシュ充電の回数がチェックされる。ステップ216では、1インクリメントされたmが、許容されるリフレッシュ充電の回数を規定したM(Mは整数)を超えているか否かを判定する。
【0069】
ステップ216において、mがMを超えていると判定された場合は、ステップ218で、その蓄電池は劣化していると判定される。
【0070】
ステップ216において、mがM以下であると判定された場合は、手順がステップ210の前に移行し、再びリフレッシュ充電が行われる。
【0071】
なお、Mの値は、対象となる電池の種類、又はリフレッシュ充電に充当できる時間若しくはコスト等によって異なるが、一例として、2〜3とすることが考えられる。
【0072】
以上説明した図4の処理は、例えば、週1回又は月1回というように、予め定められたスケジュールに従って定期的に実行するようにしてもよく、このような定期的な維持管理により、蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【0073】
図3は、本実施の形態に係る蓄電池制御システム100の第1の変形例を示す概略図である。図3に示したように、点検・リフレッシュ充電用インバータ24が計測した蓄電池の電圧値、どの蓄電池の電圧値を計測しているか、どの蓄電池をリフレッシュ充電中か、その蓄電池に対するリフレッシュ充電の回数及びその蓄電池が劣化しているか否かの判定結果を表示可能な通知装置30が設けられている。
【0074】
通知装置30は、一般負荷16への給電管理及び制御を行うHEMS(Home Energy Management System)が有する表示装置と入力手段とを兼ねたタッチパネル等であってもよい。
【0075】
蓄電池の一部が劣化していることを通知されたユーザは、蓄電池からの電力供給を一時停止する、又は劣化した蓄電池の交換を業者に依頼する等の措置をとることができる。
【0076】
第1の変形例では、制御装置28は、点検・リフレッシュ充電用インバータ24が計測した各々の蓄電池の電圧値に基づいて、蓄電池に残存している電力及び蓄電池の充電に要する電力を算出し、算出した蓄電池に残存している電力及び蓄電池の充電に要する電力を通知装置30で表示するようにしてもよい。
【0077】
また、第1の変形例では、蓄電池のいずれか1つが点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続されている場合は、その旨を通知装置30で表示するようにしてもよい。
【0078】
また、第1の変形例では、蓄電池のいずれか1つが点検・リフレッシュ充電用インバータ24に接続された場合に、蓄電池のいずれか1つと点検・リフレッシュ充電用インバータ24との電気的な接続が確保されているか否かを判定し、判定結果を通知装置30で表示するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態の制御装置28にHEMSを用いてもよい。制御装置28にHEMSを用いた場合は、制御装置28と、通知装置30は、HEMSとして一体で構成される。また、点検・リフレッシュ充電用インバータ24ではなく、HEMSによって各蓄電池の電圧を計測してもよい。
【0080】
図4は、通知装置30から外部監視装置32に、蓄電池が劣化した等の情報を通知する第2の変形例を示す概略図である。第2の変形例に係る蓄電池制御システムは、ネットワーク等を介して外部監視装置32と通信可能な手段を備えていて、蓄電池が劣化した等の情報を外部監視装置32に通知することができる。
【0081】
外部監視装置32に表示された情報に基づいて、保守担当者又は保安業者等が、蓄電池を交換する等の措置をとることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 系統電力
12 電圧計
14 分電盤
16 一般負荷
20a、20b、20c、20d 蓄電池
22 双方向インバータ
24 点検・リフレッシュ充電用インバータ
26a、26b、26c、26d、26e 4路スイッチ
28 制御装置
30 通知装置
32 外部監視装置
100 蓄電池制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個が直列に接続され、該複数個のうちのいずれか1つが前記直列の接続から除外された場合でも、他の複数個が直列に接続されることで所定の電圧で放電可能な複数個の蓄電池と、
系統電力から供給された交流を複数の電力供給先に分配する分電盤に接続され、前記分電盤から供給された交流を前記複数個が直列に接続された蓄電池の充電に適した電圧の直流に変換すると共に、前記複数個の蓄電池の放電によって供給された直流を前記分電盤から前記複数の電力供給先に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換する第1のインバータと、
前記分電盤に接続され、前記分電盤から供給された交流を、前記複数個の蓄電池のうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換する第2のインバータと、
前記複数個が直列に接続された蓄電池の蓄電池と蓄電池との間、並びに前記複数個が直列に接続された蓄電池の始端及び終端に各々設けられ、前記複数個が直列に接続された蓄電池のいずれか1つを前記直列の接続から除外して前記第2のインバータに接続する複数の切替手段と、
前記第2のインバータに接続された蓄電池の電圧値を計測する電圧計測手段と、
前記複数個の蓄電池の各々の電圧値を前記電圧計測手段が計測可能なように、前記複数個の蓄電池の各1つを順次、前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池は前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御すると共に、前記第2のインバータに接続した蓄電池の電圧値を計測するように前記電圧計測手段を制御し、該計測した電圧値が第1の閾値未満の場合に、前記分電盤から供給された交流を前記複数個の蓄電池のうちの1つの充電に適した電圧の直流に変換し、該変換によって得た直流で前記第2のインバータに接続した蓄電池を充電するように前記第2のインバータを制御する制御手段と、
を備えた蓄電池制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数個の蓄電池の各1つを順次、前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続した蓄電池の電圧値を計測する制御を、予め定められたスケジュールに従って定期的に実行する請求項1に記載の蓄電池制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つを前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池を前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御し、前記いずれか1つの蓄電池の電圧値の計測をするように前記電圧計測手段を制御し又は前記いずれか1つの蓄電池の充電をするように前記第2のインバータを制御すると共に、前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池の放電によって供給された直流を前記分電盤から前記複数の電力供給先に供給される交流と同じ電圧及び周波数の交流に変換して前記分電盤に供給するように前記第1のインバータを制御する請求項1又は2に記載の蓄電池制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つを前記第2のインバータに接続し、前記第2のインバータに接続していない蓄電池を前記第1のインバータに対して直列に接続するように前記複数の切替手段を制御し、前記いずれか1つの蓄電池の電圧値の計測をするように前記電圧計測手段を制御し又は前記いずれか1つの蓄電池の充電をするように前記第2のインバータを制御すると共に、分電盤から供給された交流を前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池の充電に適した電圧の直流に変換し、該変換によって得た直流で前記第1のインバータに対して直列に接続された複数個の蓄電池を充電するように前記第1のインバータを制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電圧計測手段が計測した前記複数個の蓄電池の各々の電圧値に基づいて、前記複数個の蓄電池に残存している電力及び前記複数個の蓄電池の充電に要する電力を算出し、
該算出した前記複数個の蓄電池に残存している電力及び前記複数個の蓄電池の充電に要する電力を報知する報知手段をさらに備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項6】
前記報知手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つが前記第2のインバータに接続されている場合は、その旨を報知可能な請求項5に記載の蓄電池制御システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記複数個の蓄電池のいずれか1つが前記第2のインバータに接続された場合に、前記複数個の蓄電池のいずれか1つと前記第2のインバータとの電気的な接続が確保されているか否かを判定し、判定結果を前記報知手段によって報知する請求項6に記載の蓄電池制御システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2のインバータから供給される直流で充電された蓄電池の電圧が第2の閾値未満の場合であり、かつ前記第2のインバータから供給される直流による充電を所定回行った後の蓄電池の電圧が前記第2の閾値未満の場合に、該充電された蓄電池が劣化していると判定し、判定結果を前記報知手段によって報知する請求項5〜7のいずれか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項9】
外部の保守管理者と通信可能な通信手段をさらに備え、
前記制御手段は、蓄電池が劣化していると判定した場合に、その旨を前記通信手段によって前記保守管理者に送信する請求項8に記載の蓄電池制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110814(P2013−110814A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252572(P2011−252572)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】