説明

蓄電池装置

【課題】蓄電池ブロックを直列接続してなる蓄電池装置において、出力スイッチ素子での電力損失を低減し、出力スイッチ素子の発熱を抑える。
【解決手段】 直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備え、前記ツェナーダイオードに印加される順方向電圧をもとに前記スイッチの遮断を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池装置に係り、特に多数の蓄電池を直接続した蓄電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電池を多数直列接続した蓄電池ブロックを直列接続した蓄電池装置が示されている。この装置では、複数の蓄電池ブロックを直列接続し、最端部に配置される蓄電池ブロックの出力端子と直列に出力スイッチ素子(第2のスイッチ)を接続し、このスイッチ素子をオン、オフすることによって蓄電池の充放電制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−81390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術によれば、前記第2のスイッチとして、高電圧、かつ大出力の出力スイッチ素子を使用する必要がある。例えば、出力スイッチ素子としてパワーMOSFETを用いる場合、パワーMOSFETのオン抵抗は、電圧定格の約2〜3乗に比例して大きくなる。このため、高電圧の用途にパワーMOSFETを使用する場合、この出力スイッチ素子での電力損失が増加する。
【0005】
また、高電圧素子を使用することによる電力損失(発熱)を低減するため、出力スイッチ素子を並列接続する場合は、回路規模が増加する。さらに、回路の発熱は蓄電池セルの温度を上昇させて蓄電池ブロックの寿命低下にもつながる。
【0006】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、出力スイッチ素子での電力損失を低減し、出力スイッチ素子の発熱を抑えることのできる蓄電池装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0008】
直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備え、前記ツェナーダイオードに印加される順方向電圧をもとに前記スイッチの遮断を報知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上の構成を備えるため、蓄電池ブロックを直列接続してなる蓄電池装置において、出力スイッチ素子での電力損失を低減し、出力スイッチ素子の発熱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる蓄電池装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる蓄電池装置を説明する図である。図1において、1,2,3,4,11,12,13,14は蓄電池(セル)、5,15は制御回路、6,7,16,17は出力スイッチ素子、D1,D2,D3,D5,D6,D7はツェナダイオード、D4,D8はダイオード、R1,R2,R3,R4,R5,R6は抵抗、9,19は(電圧検出回路兼)保護回路、PH1,PH2,PH3,PH4はフォトカプラ、10は負荷である。なお、前記蓄電池を充電する場合には、前記負荷の位置に充電装置を接続する。
【0013】
また、図1において、電池ブロックB1は蓄電池1,2,3,4、制御回路5、出力スイッチ素子6,7を用いて構成され、電池ブロックB2は蓄電池11,12,13,14、制御回路15、出力スイッチ素子16,17を用いて構成され、電池ブロックB1の保護回路9はツェナダイオードD1,D2,D3、ダイオードD4、抵抗R1を用いて構成され、電池ブロックB2の保護回路19はツェナダイオードD5,D6,D7、ダイオードD8、抵抗R4を用いて構成され、FET−SW1は出力スイッチ素子6,7を用いて構成され、FET−SW2は出力スイッチ素子16,17を用いて構成される。
【0014】
以下、図1に示した蓄電池装置の動作について説明する。
【0015】
図1において、制御回路5は、各蓄電池(セル)1,2,3,4の電圧を監視し、各セルの電圧がその上限、または下限を超えた(逸脱した)場合、FETスイッチで構成した出力スイッチ素子6(放電用スイッチ)、または出力スイッチ素子7(充電用スイッチ)をオフにする。
【0016】
同様に、制御回路15は、各蓄電池(セル)11,12,13,14の電圧を監視し、各セルの電圧が、その上限、または下限を超えた場合、FETスイッチで構成した出力スイッチ素子16、または出力スイッチ素子17をオフする働きをしている。
【0017】
電池ブロックB1内のスイッチ素子6(放電用スイッチ)がオフとなった場合、電池ブロックB1に流れていた電流は保護回路9に流れる。この結果、保護回路9に接続されているフォトカプラPH1の発光ダイオードに電流が流れ、発光ダイオードは発光し、その信号はフォトカプラの受光素子側に伝達される。
【0018】
同様に、電池ブロックB2内のスイッチ素子16(放電用スイッチ)がオフとなった場合、電池ブロックB2に流れていた電流は保護回路19へ流れる。この結果、保護回路19に接続されているフォトカプラPH2の発光ダイオードに電流が流れ、発光ダイオードは発光し、その信号はフォトカプラの受光素子側に伝達される。
【0019】
以上の動作により、電池ブロックB1,B2内の出力スイッチ素子のオンオフ状態を、フォトカプラを介して上位システム等へ伝達することができる。上位システムでは、上記フォトカプラPH1,PH2からの信号を利用することにより、負荷に流れる電流、電圧等を制御し、システム全体の安全性、信頼性を保つことができる。
【0020】
また、蓄電池1,2,3,4を充電する際に、各畜電池(セル)の電圧を合計した電圧が、保護回路内のツェナダイオードD1,D2,D3で設定された電圧を超えた場合、ツェナダイオードD1,D2,D3がオンする。この結果、ツェナダイオードD1に接続されたフォトカプラPH3から過電圧検出信号が出力される。よって、上記保護回路内のツェナダイオードD1,D2,D3とフォトカプラPH3を利用することにより、蓄電池11,12,13,14に予め定められた電圧より高い電圧(過電圧)がかかった場合に、上記フォトカプラPH3を介して上位システム等へ通知することができ、システム全体の安全性、信頼性を保つことができる。
【0021】
同様に、図1に示した回路では、蓄電池11,12,13,14を充電する際に、各畜電池のセル電圧を合計した電圧が、保護回路内のツェナダイオードD5,D6,D7で設定された電圧を超えた場合、ツェナダイオードD5,D6,D7がオンする。この結果、ツェナダイオードD5に接続されたフォトカプラPH4から信号が出力される。よって、上記保護回路内のツェナダイオードD5,D6,D7とフォトカプラPH4を利用することにより、蓄電池11,12,13,14に予め定められた電圧より高い電圧(過電圧)がかかった場合に、上位システムの通知することができ、システム全体の安全性、信頼性を保つことができる。
【0022】
本実施形態によれば、各電池ブロックに用いる出力スイッチとしてのMOSFETの耐圧をそれぞれ電池ブロック内での蓄電池(セル)の直列接続数に対応した電圧に設定できる。このため、比較的低耐圧なパワーMOSFETを利用することができ、発生する損失を低減し発熱を抑えることができる。
【0023】
図1に示した例では、電池ブロックを2段直列接続する場合について説明したが、さらに電池ブロックの段数を増加させた場合でも、基本的な動作、及び得られる効果は同様である
以上説明したように、複数の蓄電池(セル)と出力スイッチとしての低耐圧のパワーMOSFETを用いて電池ブロックを形成し、この電池ブロックを直列接続することで1つの蓄電池装置を構成する。
【0024】
この装置では、1つの電池ブロックの出力スイッチ素子がオフした際、この電池ブロックに逆バイアス電圧が印加されるが、この逆バイアス電圧の印加を防止するため、ツェナーダイオードで構成された保護回路を設ける。
【0025】
この保護回路に接続された第1の絶縁信号伝達手段(フォトカップラPH1、PH2)は、上記出力スイッチ素子がオフして上記保護回路に電流が流れた際に、第1の絶縁信号伝達手段の出力側へ上記出力スイッチ素子がオフしたことを通知する信号を伝達する。
【0026】
また、上記保護回路には、電池ブロックを充電する際に過大電圧が発生した場合に信号を伝達する第2の絶縁信号伝達手段に接続され、上記過大電圧が電池ブロックに印加されたことを上記第2の絶縁信号伝達手段(フォトカップラPH3,PH4)介して出力する。
【0027】
このため、本実施形態の蓄電池装置では、電池ブロックを複数個直列接続した際に、1つの蓄電池ブロック内の出力スイッチ素子がオフした場合でも、この状態を上位システム等へ瞬時に伝達でき、システム全体の安全性、信頼性を確保することができる。
【0028】
また、同様に、1つの電池ブロックに過大電圧がかかった場合でも、この状態を上位システム等へ瞬時に伝達でき、システム全体の安全性、信頼性を確保することができる。
【0029】
これにより、低耐圧のパワーMOSFETを用いて、蓄電池ブロックを複数段直列接続、して、高耐圧の蓄電装置を形成することができ、従来の高耐圧パワーMOSFETを用いて構成した蓄電装置に比して、出力スイッチ素子での損失を低減し、発熱を抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1,2,3,4,11,12,13,14・・・蓄電池、
5,15・・・制御回路、
6,7,16,17・・・出力スイッチ素子、
8,18・・・電池ブロック、
D1,D2,D3,D5,D6,D7・・・ツェナダイオード、
D4,D8・・・ダイオード、
R1,R2,R3,R4,R5,R6・・・抵抗、
9,19・・・保護回路、
PH1,PH2,PH3,PH4・・・フォトカプラ、
10・・・負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、
直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備え、
前記ツェナーダイオードに印加される順方向電圧をもとに前記スイッチの遮断を報知することを特徴とする蓄電池装置。
【請求項2】
直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、
直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備え、
前記ツェナーダイオードに印加される逆方向電圧をもとに前記蓄電池の過充電を報知することを特徴とする蓄電池装置。
【請求項3】
直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備えた蓄電池装置を複数段直列接続し、
各段のツェナーダイオードに印加される順方向電圧をもとに前記何れか電池ブロックのスイッチの遮断を報知することを特徴とする蓄電池装置
【請求項4】
直列接続された複数の蓄電池、および前記各蓄電池の端子間電圧を取り込み、各蓄電池の端子間電圧が上限値を超えた場合、あるいは下限値に達した場合、前記直列接続された蓄電池を外部出力端子に接続する電路を開閉するスイッチを遮断する制御回路を備えた電池ブロックと、直列接続した複数のツェナーダイオードを有し、前記電池ブロックの出力電圧を前記スイッチを介して取り込む保護回路とを備えた蓄電池装置を複数段直列接続し、
各段のツェナーダイオードに印加される逆方向電圧をもとに前記何れかの蓄電池ブロックの過充電を報知することを特徴とする蓄電池装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−51852(P2013−51852A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189388(P2011−189388)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【出願人】(593074824)株式会社エルテル (12)
【Fターム(参考)】