説明

蓄電装置の搭載構造

【課題】 蓄電装置に作用する外力に応じて、蓄電装置を車両本体に固定したままの状態としたり、蓄電装置を車両本体から外したりする。
【解決手段】 車両に搭載され、車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置(1)と、車両本体と締結されるとともに、車両本体から離れた位置で蓄電装置と締結されるブラケット(70)と、を有する。蓄電装置およびブラケットの少なくとも一方は、突起部(72)を有する。突起部は、車両本体から離れた位置から車両本体に向かって突出しており、突起部の先端は、車両本体から離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対する蓄電装置の搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組電池を車両に搭載することにより、組電池から出力されるエネルギを用いて車両を走行させるものがある。組電池を車両に搭載させるための構造としては、各種の構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253933号公報
【特許文献2】特開2007−030560号公報
【特許文献3】特開2007−203912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組電池を車両に搭載した構造では、車両の衝突などによって組電池に荷重が加わったときに、組電池が車両から不用意に外れないようにしておく必要がある。一方、組電池に過大な荷重が加わったときには、組電池を保護するために、組電池を車両から外したほうが好ましいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明である蓄電装置の搭載構造は、車両に搭載され、車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置と、車両本体と締結されるとともに、車両本体から離れた位置で蓄電装置と締結されるブラケットと、を有する。蓄電装置およびブラケットの少なくとも一方は、突起部を有する。突起部は、車両本体から離れた位置から車両本体に向かって突出しており、突起部の先端は、車両本体から離れている。
【0006】
本発明によれば、蓄電装置が所定方向の外力を受けたときに、ブラケットなどの変形によって突起部を車両本体に突き当てることができる。突起部を車両本体に突き当てることにより、蓄電装置に作用する外力を吸収することができる。また、突起部が車両本体に突き当たっている状態において、蓄電装置に更なる外力が加わっているときには、ブラケットおよび蓄電装置の締結部分に荷重を集中させて、ブラケットおよび蓄電装置の締結を解除させることができる。これにより、蓄電装置をブラケット(車両本体)から外すことができ、蓄電装置に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0007】
車両本体には、フロアパネルや、フロアパネルから上方に突出するクロスメンバが含まれる。ブラケットは、クロスメンバと締結するとともに、フロアパネルから離れた位置で蓄電装置と締結することができる。ここで、突起部は、フロアパネルに沿った方向でクロスメンバと隣り合う位置に配置することができる。
【0008】
蓄電装置は、車両のラゲッジルームに配置することができる。この場合において、クロスメンバよりも車両の前方に、突起部を配置することができる。また、ブラケットおよび蓄電装置の締結位置は、クロスメンバよりも車両の前方とすることができる。このような構成では、車両の前方に向かう外力が蓄電装置に加わったときに、突起部を用いて外力を吸収したり、過度の外力が作用したときには、蓄電装置を車両本体から外したりすることができる。
【0009】
蓄電装置には、ブラケットおよび車両本体の締結位置とは異なる位置において、車両本体と締結される脚部を設けることができる。これにより、ブラケットおよび脚部を用いて、蓄電装置を車両本体に搭載することができる。脚部には、外力に応じた変形によって車両本体との締結を解除する変形部を設けることができる。これにより、蓄電装置を車両本体から外す必要があるときには、変形部を変形させることにより、蓄電装置(脚部)および車両本体の締結を解除することができる。
【0010】
本発明では、蓄電装置およびブラケットの少なくとも一方に突起部を設けているが、この構成に代えて、車両本体に突起部材を設けることができる。突起部材は、車両本体から蓄電装置およびブラケットの側に突出しており、突起部材の先端は、蓄電装置およびブラケットから離れている。
【0011】
この構成であっても、本発明と同様の効果を得ることができる。すなわち、蓄電装置に外力が加わったときには、ブラケットの変形によって、蓄電装置やブラケットを突起部材に突き当てることにより、外力を吸収することができる。また、蓄電装置やブラケットが突起部材に突き当たっている状態において、蓄電装置に更なる外力が加わったときには、蓄電装置およびブラケットの締結を解除して、蓄電装置をブラケット(車両本体)から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電池パックが搭載された車両の外観図である。
【図2】電池パックの分解図である。
【図3】電池パックの内部構造と、車両に対する電池パックの搭載構造を示す側面図である。
【図4】車両に対する電池パックの搭載構造を示す斜視図である。
【図5】電池パックに第1の荷重が作用したときの側面図である。
【図6】電池パックに第2の荷重が作用したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1における車両について、図1を用いて説明する。図1において、矢印FRで示す方向は、車両100が前進する方向であり、矢印UPで示す方向は、車両の上方向である。本実施例の車両100は、電池パック(蓄電装置に相当する)1を有しており、電池パック1は、車両100を走行させるためのエネルギを出力する。
【0015】
車両100としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両100を走行させるための動力源として、電池パック1に加えて、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車両である。電気自動車は、車両100の動力源として、電池パック1だけを備えた車両である。
【0016】
電池パック1は、モータ・ジェネレータと接続されており、モータ・ジェネレータは、電池パック1から供給された電気エネルギを運動エネルギに変換する。モータ・ジェネレータによって生成された運動エネルギは、車輪に伝達され、車両100を走行させることができる。
【0017】
電池パック1およびモータ・ジェネレータの間の電流経路には、インバータや昇圧回路を配置することができる。インバータは、電池パック1からの直流電力を交流電力に変換するため、モータ・ジェネレータとして、交流モータを用いることができる。昇圧回路は、電池パック1の出力電圧を昇圧することができる。
【0018】
車両100が減速したり、停止したりするとき、モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータ・ジェネレータによって生成された電気エネルギは、回生電力として、電池パック1に蓄えることができる。
【0019】
本実施例において、電池パック1は、車両100のラゲッジルームLRに配置されている。言い換えれば、電池パック1は、車両100に搭載されたリアシートよりも、車両100の後方に配置されている。ラゲッジルームLRに対して電池パック1を配置する位置は、適宜設定することができる。ラゲッジルームLRは、乗員が乗車するスペースとつながっていてもよいし、このスペースと仕切られていてもよい。
【0020】
次に、電池パック1の構造について、図2を用いて説明する。図2は、電池パック1の分解斜視図である。図2において、矢印LHは、車両100の前進方向を向いたときの左側の方向を示している。また、矢印LHの方向と逆の方向を、矢印RHとしている。
【0021】
電池パック1は、電池スタック10と、電池スタック10を収容するパックケース20とを有する。電池スタック10は、一方向に並んで配置された複数の電池モジュール11を有する。複数の電池モジュール11は、車両100の横方向(矢印LH又は矢印RHの方向)において並んでおり、電気的に直列に接続されている。電池スタック10を構成する電池モジュール11の数は、電池パック1の要求出力などを考慮して、適宜設定することができる。
【0022】
複数の電池モジュール11に対しては、複数の電池モジュール11の配列方向に作用する拘束力を与えることができる。拘束力を与える構造としては、例えば、一対のエンドプレートおよび拘束バンドで構成することができる。一対のエンドプレートは、電池モジュール11の配列方向において、電池スタック10を挟む位置に配置される。拘束バンドは、電池モジュール11の配列方向に延びており、拘束バンドの両端は、一対のエンドプレートに固定される。これにより、一対のエンドプレートが電池スタック10を狭持することになり、電池モジュール11に対して拘束力を与えることができる。
【0023】
電池モジュール11は、電気的に直列に接続された複数の発電要素(図示せず)を有しており、複数の発電要素は、電池モジュール11の外装を構成するモジュールケースに収容されている。モジュールケースの内部は、各発電要素を収容するために仕切られており、各発電要素を収容するスペースには、電解液が充填されている。モジュールケースは、例えば、樹脂で形成することができる。
【0024】
発電要素は、充放電を行う要素であり、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されるセパレータとを有する。正極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有する。負極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。セパレータおよび活物質層には、電解液がしみ込んでいる。
【0025】
発電要素の構成部材としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池で用いられる部材を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。なお、本実施例では、複数の電池モジュール11を一方向に並べているが、これに限るものではない。例えば、1つの発電要素を収容した単電池を用意しておき、複数の単電池を一方向に並べることもできる。
【0026】
電池モジュール11は、正極端子(電極端子ともいう)11aおよび負極端子(電極端子ともいう)11bを有する。電極端子11a,11bは、電池モジュール11のうち、車両100の前方側および後方側を向く2つの側面にそれぞれ設けられている。本実施例では、電池モジュール11における2つの側面に、正極端子11aおよび負極端子11bをそれぞれ配置しているが、電極端子11a,11bを配置する位置は適宜設定することができる。例えば、電池モジュール11の上面に電極端子11a,11bを配置することができる。
【0027】
複数の電池モジュール11は、2つのバスバーモジュール30によって電気的に直列に接続されている。一方のバスバーモジュール30は、電池スタック10に対して車両100の前方側に配置されており、他方のバスバーモジュール30は、電池スタック10に対して車両100の後方側に配置されている。
【0028】
バスバーモジュール30は、複数のバスバー(図示せず)と、複数のバスバーを保持するホルダとを有する。バスバーモジュール30のホルダは、樹脂などの絶縁材料で形成されており、バスバーは、導電性材料で形成されている。バスバーは、隣り合って配置された2つの電池モジュール11のうち、一方の電池モジュール11の正極端子11aと、他方の電池モジュール11の負極端子11bとに接続される。これにより、複数の電池モジュール11が電気的に直列に接続される。
【0029】
パックケース20は、アッパーケース21およびロアーケース22を有する。アッパーケース21は、電池スタック10の上面と対向する領域21aと、電池スタック10のうち、電極端子11a,11bが設けられた面と対向する領域21bとを有する。ロアーケース22は、電池スタック10の底面と対向している。アッパーケース21は、フランジ21cを有しており、フランジ21cは、ロアーケース22に対して固定される。
【0030】
図3に示すように、電池スタック10(電池モジュール11)の上面およびアッパーケース21の領域21aの間には、スペースS1が形成されている。スペースS1は、電池モジュール11の温度調節に用いられる熱交換媒体が移動するスペースである。熱交換媒体としては、例えば、空気や、空気とは異なる成分の気体を用いることができる。
【0031】
また、図3に示すように、電池スタック10(電池モジュール11)の底面およびロアーケース22の間には、スペースS2が形成されている。スペースS2は、電池モジュール11の温度調節に用いられる熱交換媒体が移動するスペースである。スペースS1,S2のうち、一方のスペースは、電池モジュール11に熱交換媒体を供給する通路(供給通路)として用いることができ、他方のスペースは、電池モジュール11からの熱交換媒体を排出する通路(排出通路)として用いることができる。
【0032】
隣り合って配置される2つの電池モジュール11の間には、スペースが形成されており、このスペースには、供給通路(スペースS1又はS2)から導かれた熱交換媒体が進入する。ここで、2つの電池モジュール11における互いに向かい合う側面に突起を形成しておけば、2つの電池モジュール11の間にスペースを形成することができる。2つの電池モジュール11の間に形成されたスペースに進入した熱交換媒体は、排出通路(スペースS2又はS1)に向かって移動する。このとき、熱交換媒体は、電池モジュール11との間で熱交換を行うことによって、電池モジュール11の温度を調節することができる。
【0033】
電池モジュール11が発熱しているときには、冷却用の熱交換媒体(冷やされた熱交換媒体)を用いることにより、電池モジュール11の温度上昇を抑制することができる。また、電池モジュール11が過度に冷えているときには、加温用の熱交換媒体(温められた熱交換媒体)を用いることにより、電池モジュール11の温度低下を抑制することができる。
【0034】
図2に示すように、ロアーケース22は、一対の支持部22aを有する。支持部22aは、ロアーケース22の一部を曲げ加工することによって形成されており、電池スタック10の側に突出している。支持部22aは、車両100の横方向(矢印LH又は矢印RHの方向)に延びている。ロアーケース22のうち、支持部22aを除く領域は、平坦な面で構成されている。なお、支持部22aを除く領域には、凹凸が含まれていてもよい。
【0035】
支持部22aの上面は、電池モジュール11の底面と接触している。支持部22aおよび電池モジュール11は、図3に示す締結位置P1,P2において互いに固定される。締結位置P1,P2は、複数設けられており、複数の締結位置P1,P2は、支持部22aの長手方向に沿って配置されている。
【0036】
支持部22aおよび電池モジュール11の締結構造としては、例えば、以下に説明する構造がある。電池モジュール11の底面にネジ溝を形成するとともに、支持部22aの上面に開口部を形成する。そして、支持部22aの開口部を介して、電池モジュール11のネジ溝にボルトを挿入する。これにより、電池モジュール11がロアーケース22(支持部22a)に固定される。
【0037】
電池スタック10を構成する各電池モジュール11を支持部22aに固定することができる。また、上述したように、電池スタック10に拘束力を与えた構造では、特定の電池モジュール11だけを支持部22aに固定することもできる。
【0038】
ロアーケース22の底面には、一対のリインフォース(脚部に相当する)40が固定されている。リインフォース40は、ロアーケース22の強度を確保するために用いられており、支持部22aが延びる方向と直交する方向(矢印FRの方向)に延びている。リインフォース40およびロアーケース22は、例えば、溶接によって固定することができる。リインフォース40のうち、車両100の後方側に位置する端部は、傾斜面41を有している。傾斜面41には、切り欠き部(変形部に相当する)41aが形成されている。
【0039】
リインフォース40の傾斜面41は、フロアパネル50に設けられた台座60に固定される。図3に示すように、台座60は、電池スタック10よりも車両の後方に配置されている。傾斜面41は、台座60の斜面に沿っており、傾斜面41および台座60は、締結位置P3において、互いに固定される。傾斜面41の切り欠き部41aと、台座60に形成された開口部とに、ボルトを通すことにより、傾斜面41および台座60を固定することができる。
【0040】
図3および図4に示すように、ロアーケース22の底面には、ブラケット70が固定される。ロアーケース22およびブラケット70は、締結位置P4において、互いに固定される。図4に示すように、ロアーケース22およびブラケット70は、開口部を有しており、これらの開口部にボルトを挿入することにより、ロアーケース22およびブラケット70を固定することができる。
【0041】
ブラケット70は、締結位置P5において、クロスメンバ80に固定されている。クロスメンバ80は、台座60よりも車両100の前方に配置されている。図4に示すように、ブラケット70およびクロスメンバ80は、締結位置P5において、開口部を有しており、これらの開口部にボルトを挿入することにより、ブラケット70およびクロスメンバ80を固定することができる。クロスメンバ80は、車両100の横方向に延びており、フロアパネル50に固定されている。
【0042】
ブラケット70は、クロスメンバ80に沿う方向に延びており、長手方向の両端において、脚部71を有する。脚部71は、フロアパネル50に固定される。また、ブラケット70は、フロアパネル50に向かって突出する突起部72を有する。突起部72は、図3に示すように、クロスメンバ80よりも車両100の前方に位置しているとともに、距離Dの分だけフロアパネル50から離れている。突起部72およびクロスメンバ80は、フロアパネル50に沿った方向において並んでいる。
【0043】
本実施例では、ブラケット70に2つの突起部72を設けているが、突起部72の数は、適宜設定することができる。また、突起部72は、図4に示すように、フロアパネル50に向かって延びる領域72aと、フロアパネル50に沿った領域72bとを有しているが、これに限るものではない。突起部72は、フロアパネル50に向かって突出していればよく、突起部72の形状は、適宜設定することができる。
【0044】
次に、電池パック1に荷重が加わった場合について、図5および図6を用いて説明する。図5および図6は、電池パック1に対して、車両100の前方に作用する荷重が加わったときの図である。車両100の前方に作用する荷重は、例えば、車両100の前進中に車両100の前部が衝突したときや、車両100の後部に対して他の車両が衝突してきたときに発生する。
【0045】
図5において、電池パック1に対して第1の荷重F1が加わると、電池パック1は、車両100の前方に変位する。これに伴ってブラケット70やロアーケース22が変形し、ブラケット70の突起部72は、フロアパネル50に近づく方向に変位する。電池パック1の変位量によっては、突起部72の先端(領域72b)がフロアパネル50と接触する。ブラケット70は、締結位置P5において、クロスメンバ80に固定されているため、電池パック1が車両100の前方に変位することに応じて、ブラケット70の突起部72は、フロアパネル50に近づく方向に変位しやすくなる。
【0046】
突起部72がフロアパネル50に突き当たることにより、第1の荷重F1を吸収することができる。ここで、電池パック1が第1の荷重F1を受けたとき、ロアーケース22の支持部22aが図5に示すように変形することにより、第1の荷重F1を吸収することもできる。本実施例では、突起部72およびフロアパネル50の接触によって、第1の荷重F1を主に吸収することができ、電池パック1を車両100に搭載したままの状態に維持することができる。
【0047】
図6において、電池パック1に対して第2の荷重F2が加わると、電池パック1は、車両100の前方に変位する。第2の荷重F2は、図5で説明した第1の荷重F1よりも大きな荷重である。第2の荷重F2が電池パック1に加わったときには、図5で説明したように、ブラケット70の突起部72がフロアパネル50に突き当たる。第2の荷重F2は、突起部72およびフロアパネル50の接触によっては吸収することができない荷重である。このため、突起部72がフロアパネル50に突き当たった後も、電池パック1は、第2の荷重F2を受けて、車両100の前方に向かって変位する。
【0048】
リインフォース40の傾斜面41には、切り欠き部41a(図2参照)が形成されているため、電池パック1が車両100の前方に向かって変位すると、切り欠き部41aが変形することにより、傾斜面41および台座60の締結が解除される。傾斜面41および台座60が締結されているとき、傾斜面41の切り欠き部41aには、ボルトが挿入されている。ここで、電池パック1(特に、リインフォース40)が車両100の前方に向かって変位すると、切り欠き部41aが変形することによってボルトから外れる。
【0049】
切り欠き部41aは、リインフォース40の端部まで延びており、変形しやすくなっている。切り欠き部41aが変形すれば、ボルトは、切り欠き部41aに沿って移動して、切り欠き部41aから外れやすくなる。ボルトが切り欠き部41aから外れることにより、傾斜面41および台座60の締結が解除される。
【0050】
一方、ブラケット70の突起部72がフロアパネル50に接触した後も、電池パック1が車両100の前方に変位するときには、ロアーケース22およびブラケット70の締結部分(締結位置P4)に対して荷重が集中する。締結位置P4に荷重を集中させることにより、図6に示すように、ロアーケース22およびブラケット70の締結を解除することができる。リインフォース40の傾斜面41が台座60から外れるとともに、ロアーケース22がブラケット70から外れることにより、電池パック1は、車両100(フロアパネル50、台座60およびクロスメンバ80)から外れる。
【0051】
本実施例によれば、電池パック1に第1の荷重F1が加わったときには、ブラケット70の突起部72を用いて、第1の荷重F1を吸収することができ、電池パック1が車両から容易に外れてしまうのを阻止することができる。
【0052】
また、第1の荷重F1よりも大きな第2の荷重F2が電池パック1に加わったときには、電池パック1を車両100から外すことにより、電池パック1を保護することができる。電池パック1が車両100に固定されたままの状態において、電池パック1に過大な荷重が加わると、電池スタック10などが変形してしまうおそれがある。そこで、本実施例では、電池パック1を車両100から外すことにより、電池スタック10などに過度の負荷がかかるのを抑制することができる。
【0053】
本実施例では、ブラケット70に突起部72を設けているが、これに限るものではない。例えば、本実施例の構成において、ブラケット70の突起部72を省略し、ブラケット70と対向するフロアパネル50の領域に、ブラケット70に向かって突出する突起部材を設けることができる。この突起部材は、本実施例で説明した突起部72と同様の機能を有する。このような構成であっても、本実施例と同様の効果を得ることができる。すなわち、電池パック1が車両100の前方に向かって変位するとき、ブラケット70がフロアパネル50の突起部材と接触することにより、荷重を吸収することができる。
【0054】
一方、ブラケット70に突起部72を設けるのではなく、ロアーケース22に対して、突起部72と同様の機能を有する突起部を設けることができる。この場合には、突起部は、ロアーケース22からフロアパネル50に向かって突出することになる。この場合にも、本実施例と同様の効果を得ることができる。なお、ブラケット70に突起部72を設けるとともに、ロアーケース22に突起部を設けることもできる。
【0055】
本実施例では、1つのブラケット70を用いているが、これに限るものではない。例えば、本実施例で説明したブラケット70を複数の部材に分割することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1:電池パック(蓄電装置) 10:電池スタック
11:電池モジュール 20:パックケース
21:アッパーケース 22:ロアーケース
22a:支持部 30:バスバーモジュール
40:リインフォース(脚部) 50:フロアパネル
60:台座 70:ブラケット
71:脚部 72:突起部
80:クロスメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置と、
車両本体と締結されるとともに、車両本体から離れた位置で前記蓄電装置と締結されるブラケットと、を有し、
前記蓄電装置および前記ブラケットの少なくとも一方は、車両本体から離れた位置から車両本体に向かって突出し、先端が車両本体から離れた突起部を有することを特徴とする蓄電装置の搭載構造。
【請求項2】
前記蓄電装置が外力を受けたとき、前記突起部は、前記ブラケットの変形によって車両本体に接触することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項3】
前記蓄電装置および前記ブラケットの締結は、前記突起部が車両本体に接触している状態で受けた更なる外力によって解除されることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項4】
車両本体は、フロアパネルと、フロアパネルから上方に突出するクロスメンバとを有しており、
前記ブラケットは、前記クロスメンバと締結されるとともに、前記フロアパネルから離れた位置で前記蓄電装置と締結されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項5】
前記突起部は、前記フロアパネルに沿った方向で前記クロスメンバと隣り合う位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項6】
前記蓄電装置は、車両のラゲッジルームに配置されており、
前記突起部は、前記クロスメンバよりも車両の前方に位置していることを特徴とする請求項4又は5に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項7】
前記ブラケットおよび前記蓄電装置の締結位置は、前記クロスメンバよりも車両の前方に位置していることを特徴とする請求項6に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項8】
前記蓄電装置は、前記ブラケットおよび車両本体の締結位置とは異なる位置において、車両本体と締結される脚部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項9】
前記脚部は、外力に応じた変形によって車両本体との締結を解除する変形部を有することを特徴とする請求項8に記載の蓄電装置の搭載構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32066(P2013−32066A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168394(P2011−168394)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】