説明

蓄電装置の車載構造

【課題】蓄電装置と車両本体との固定状態を適切に維持しつつ、大きな荷重が加わった際に車両本体から蓄電装置を離脱できるようにする。
【解決手段】本発明の蓄電装置の車載構造は、蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有する。車両締結部は、第1締結孔および第2締結孔と、蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結の解除を許容する締結解除部と、を含む。第2締結孔は、第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置するとともに、固定部は、第2締結孔から第1締結孔に向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の車載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
組電池を車両に搭載することにより、組電池から出力されるエネルギを用いて車両を走行させるものがある。組電池を車両に搭載させるための構造としては、各種の構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−230329号公報
【特許文献2】特開2009−150523号公報
【特許文献3】特開2003−327155号公報
【特許文献4】特開2007−253933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組電池を車両に搭載した構造では、組電池を車両に締結する際、例えば、車両との接地面積を増やし、路面状況の悪い路を走行する車両の組電池に加わる荷重や振動による車両への力を分散することで、組電池と車両の締結を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、振動や衝撃などによって組電池に荷重が加わったときに、組電池が車両から不用意に外れないように締結する必要がある一方で、組電池に過大な荷重が加わったときには、組電池を保護するために、組電池を車両から離脱させたほうが好ましい場合がある。
【0006】
例えば、接地面積を増やして組電池を車両に締結する場合、複数の締結ボルトで組電池と車両とを締結することが考えられるが、複数の締結ボルトで組電池と車両とを締結する場合、過大な荷重が加わったときに組電池が車両から離脱し難い課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明である蓄電装置の車載構造は、蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有する。車両締結部は、第1締結孔および第2締結孔と、蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結の解除を許容する締結解除部と、を含んで構成される。そして、第2締結孔が第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置するとともに、固定部が第2締結孔から第1締結孔に向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されている。
【0008】
本願第1の発明によれば、ブラケットの車両締結部が、第1締結孔及び第2締結孔を介して車両本体に締結されるため、蓄電装置に加わる荷重や振動に対する車両本体への締結を向上させることができるとともに、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動を許容する締結解除部によって第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結を解除できるので、蓄電装置が固定されるブラケットを車両本体から外すことができ、蓄電装置に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0009】
特に、固定部が第2締結孔から第1締結孔に向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されているので、第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔に、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に応じた荷重が伝わり易くなり、第2締結孔を介した車両本体との締結が解除し易くなる。すなわち、第2締結孔から第1締結孔に向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成することで、車両前後方向に加わる力に対する強度を増加させることができ、第1締結孔よりも車両左右方向外側に位置する第2締結孔は、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に応じた荷重を受けて車両本体との締結が解除され易くなる。
【0010】
固定部は、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に対し、蓄電装置から第2締結孔までの間で降伏点を超えないように、第2締結孔が形成される車両前後方向の第1幅よりも第1締結孔が形成される車両前後方向の第2幅を大きく形成することができる。
【0011】
第2締結孔を、第1締結孔に対して車両左右方向外側であって車両前後方向に相違した位置に配置し、第1締結孔および第2締結孔を、車両左右方向に対して車両前後方向に傾斜するように配置することができる。
【0012】
固定部は、蓄電装置から車両左右方向に略平行に延びる第1端部と、第1端部に対して車両前後方向に傾斜する第2端部と、を含んで構成することができ、第1締結孔および第2締結孔は、第2端部の傾斜に沿って形成するように構成できる。
【0013】
締結解除部は、第1締結孔および第2締結孔それぞれから車両後方に向かって延びる移動許容部として構成することができ、移動許容部は、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第1締結孔および第2締結孔それぞれに挿通される締結ボルトの軸により変形し、第1締結孔および第2締結孔から締結ボルトを離脱させて車両締結部の車両本体に対する移動を許容するように構成されている。
【0014】
第1締結孔および第2締結孔それぞれに締結ボルトが挿通されて車両本体と第2締結部とを締結する。締結解除部は、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って締結ボルトの軸により第1締結孔および第2締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部であり、第1締結孔および第2締結孔それぞれが破断することによって第1締結孔および第2締結孔から締結ボルトを離脱させて車両締結部の車両本体に対する移動を許容するように構成されている。
【0015】
本願第2の発明である蓄電装置の車載構造は、蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有する。車両締結部は、第1締結孔および第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔と、蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、第2締結孔から固定部の車両左右方向端部に開口するスリットと、を含む。衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って締結ボルトの軸により押し広げられる変形によって破断する第1締結孔に対し、スリットの開口が、締結ボルトの軸により押し広げられる第2締結孔の変形に伴って広がるように変形する。
【0016】
本願第2の発明によれば、第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔にスリットが設けられ、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って破断する第1締結孔に対し、スリットの開口が締結ボルトの軸により押し広げられる第2締結孔の変形に伴って広がるように変形するので、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に応じた荷重によって第2締結孔に挿通される締結ボルトの軸が外れやすくなり、第2締結孔を介した車両本体との締結が解除し易くなる。
【0017】
このため、ブラケットの車両締結部を、第1締結孔及び第2締結孔を介して車両本体に締結することで、蓄電装置に加わる荷重や振動に対する車両本体への締結を向上させつつ、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結を解除できるので、蓄電装置が固定されるブラケットを車両本体から外すことができ、蓄電装置に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0018】
本願第2の発明において車両締結部は、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って締結ボルトの軸により第1締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部を含むことができる。
【0019】
本願第3の発明である蓄電装置の車載構造は、蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有する。車両締結部は、第1締結孔および第1締結孔よりも蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔と、蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第2締結孔に挿通される締結ボルトの軸により第2締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部と、第1締結孔から第2締結孔に突出するスリットと、を含む。
【0020】
本願第3の発明によれば、各締結ボルトの軸により押し広げられる第1締結孔の変形に伴ってスリットが変形し、第1締結孔から第2締結孔に突出するスリットが変形するにつれて第1締結孔に加わる荷重がスリットを介して第2締結孔にも伝達され、第2締結孔が応力集中部を介して破断し易くなり、第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結が解除し易くなる。
【0021】
このため、ブラケットの車両締結部を、第1締結孔及び第2締結孔を介して車両本体に締結することで、蓄電装置に加わる荷重や振動に対する車両本体への締結を向上させつつ、衝撃を受けた際の蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結を解除できるので、蓄電装置が固定されるブラケットを車両本体から外すことができ、蓄電装置に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0022】
本願第3の発明においてスリットは、第1締結孔と第2締結孔を連通するように形成することができる。この場合、各締結ボルトの軸により押し広げられる第1締結孔及び第2締結孔の変形に伴ってスリットが変形し、第1締結孔および第2締結孔全体が変形するので、第1締結孔に加わる荷重がスリットを介して第2締結孔により伝達され易くなり、第2締結孔が応力集中部を介して破断し易くなるので、第1締結孔および第2締結孔を介した車両本体との締結が解除し易くなる。
【0023】
本願第2、第3の発明において第1締結孔と第2締結孔は、蓄電装置に対して車両左右方向に並んで配置するように構成することができる。
【0024】
上記本願の第1から第3の発明の蓄電装置には、ブラケットおよび車両本体の締結位置とは異なる位置において、車両本体と締結される脚部を設けることができる。これにより、ブラケットおよび脚部を用いて、蓄電装置を車両本体に搭載することができる。脚部には、蓄電装置が受ける衝撃によって変形して車両本体との締結を解除する変形部を設けることができる。蓄電装置が衝撃を受けた際の車両締結部の移動に際して変形部を変形させることにより、蓄電装置と車両本体の締結を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の電池パックが搭載された車両の外観図である。
【図2】実施例1の電池パックの分解図である。
【図3】実施例1の電池パックの車載構造を示す斜視図である。
【図4】実施例1の電池パックの車載構造を示す側面図である。
【図5】実施例1のブラケットと車両本体との締結構造を説明するための図である。
【図6】実施例1の電池パックの車載構造を示す図であり、(a)は電池パックの車載構造を示す平面図であり、(b)は、車両後方から荷重が作用したときのブラケットと車両本体との締結が解除された状態の平面図である。
【図7】実施例1のブラケットと車両本体との締結構造の変形例を示す図である。
【図8】実施例2のブラケットと車両本体との締結構造を示す図である。
【図9】実施例2のブラケットと車両本体との締結構造の第1変形例を示す図である。
【図10】実施例2のブラケットと車両本体との締結構造の第2変形例を示す図である。
【図11】実施例3の電池パックの車載構造を示す斜視図である。
【図12】実施例3の締結ユニットを示す斜視図である。
【図13】実施例3の電池パックの車載構造を示す図であり、(a)は電池パックの車載構造を示す平面図であり、(b)は、車両後方から荷重が作用したときのブラケットと車両本体との締結が解除された状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】
(実施例1)
本発明の実施例1における車両について、図1を用いて説明する。図1において、矢印FRで示す方向は、車両100が前進する方向であり、矢印UPで示す方向は、車両の上方向である。本実施例の車両100は、電池パック(蓄電装置に相当する)1を有しており、電池パック1は、車両100を走行させるためのエネルギを出力する。
【0028】
車両100としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両100を走行させるための動力源として、電池パック1に加えて、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車両である。電気自動車は、車両100の動力源として、電池パック1だけを備えた車両である。
【0029】
電池パック1は、モータ・ジェネレータと接続されており、モータ・ジェネレータは、電池パック1から供給された電気エネルギを運動エネルギに変換する。モータ・ジェネレータによって生成された運動エネルギは、車輪に伝達され、車両100を走行させることができる。
【0030】
電池パック1およびモータ・ジェネレータの間の電流経路には、インバータや昇圧回路を配置することができる。インバータは、電池パック1からの直流電力を交流電力に変換するため、モータ・ジェネレータとして、交流モータを用いることができる。昇圧回路は、電池パック1の出力電圧を昇圧することができる。
【0031】
車両100が減速したり、停止したりするとき、モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータ・ジェネレータによって生成された電気エネルギは、回生電力として、電池パック1に蓄えることができる。
【0032】
本実施例において、電池パック1は、車両100のラゲッジルームLRに配置されている。言い換えれば、電池パック1は、車両100に搭載されたリアシートよりも、車両100の後方に配置されている。ラゲッジルームLRに対して電池パック1を配置する位置は、適宜設定することができる。ラゲッジルームLRは、乗員が乗車するスペースとつながっていてもよいし、このスペースと仕切られていてもよい。
【0033】
次に、電池パック1の構造について、図2を用いて説明する。図2は、電池パック1の分解斜視図である。図2において、矢印LHは、車両100の前進方向を向いたときの左側の方向を示している。また、矢印LHの方向と逆の方向を、矢印RHとしている。
【0034】
電池パック1は、電池スタック10と、電池スタック10を収容するパックケース20とを有する。電池スタック10は、一方向に並んで配置された複数の電池モジュール11を有する。複数の電池モジュール11は、車両100の左右(横)方向(矢印LH又は矢印RHの方向)において並んでおり、電気的に直列に接続されている。電池スタック10を構成する電池モジュール11の数は、電池パック1の要求出力などを考慮して、適宜設定することができる。
【0035】
複数の電池モジュール11に対しては、複数の電池モジュール11の配列方向に作用する拘束力を与えることができる。拘束力を与える構造としては、例えば、一対のエンドプレートおよび拘束バンドで構成することができる。一対のエンドプレートは、電池モジュール11の配列方向において、電池スタック10を挟む位置に配置される。拘束バンドは、電池モジュール11の配列方向に延びており、拘束バンドの両端は、一対のエンドプレートに固定される。これにより、一対のエンドプレートが電池スタック10を狭持することになり、電池モジュール11に対して拘束力を与えることができる。
【0036】
電池モジュール11は、電気的に直列に接続された複数の発電要素(図示せず)を有しており、複数の発電要素は、電池モジュール11の外装を構成するモジュールケースに収容されている。モジュールケースの内部は、各発電要素を収容するために仕切られており、各発電要素を収容するスペースには、電解液が充填されている。モジュールケースは、例えば、樹脂で形成することができる。
【0037】
発電要素は、充放電を行う要素であり、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されるセパレータとを有する。正極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有する。負極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。セパレータおよび活物質層には、電解液がしみ込んでいる。
【0038】
発電要素の構成部材としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池で用いられる部材を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。なお、本実施例では、複数の電池モジュール11を一方向に並べているが、これに限るものではない。例えば、1つの発電要素を収容した単電池を用意しておき、複数の単電池を一方向に並べることもできる。
【0039】
電池モジュール11は、正極端子(電極端子ともいう)11aおよび負極端子(電極端子ともいう)11bを有する。電極端子11a,11bは、電池モジュール11のうち、車両100の前方側および後方側を向く2つの側面にそれぞれ設けられている。本実施例では、電池モジュール11における2つの側面に、正極端子11aおよび負極端子11bをそれぞれ配置しているが、電極端子11a,11bを配置する位置は適宜設定することができる。例えば、電池モジュール11の上面に電極端子11a,11bを配置することができる。
【0040】
複数の電池モジュール11は、2つのバスバーモジュール30によって電気的に直列に接続されている。一方のバスバーモジュール30は、電池スタック10に対して車両100の前方側に配置されており、他方のバスバーモジュール30は、電池スタック10に対して車両100の後方側に配置されている。
【0041】
バスバーモジュール30は、複数のバスバー(図示せず)と、複数のバスバーを保持するホルダとを有する。バスバーモジュール30のホルダは、樹脂などの絶縁材料で形成されており、バスバーは、導電性材料で形成されている。バスバーは、隣り合って配置された2つの電池モジュール11のうち、一方の電池モジュール11の正極端子11aと、他方の電池モジュール11の負極端子11bとに接続される。これにより、複数の電池モジュール11が電気的に直列に接続される。
【0042】
パックケース20は、アッパーケース21およびロアーケース22を有する。アッパーケース21は、電池スタック10の上面と対向する領域21aと、電池スタック10のうち、電極端子11a,11bが設けられた面と対向する領域21bとを有する。ロアーケース22は、電池スタック10の底面と対向している。アッパーケース21は、フランジ21cを有しており、フランジ21cは、ロアーケース22に対して固定される。
【0043】
図2に示すように、ロアーケース22は、一対の支持部22aを有する。支持部22aは、ロアーケース22の一部を曲げ加工することによって形成されており、電池スタック10の側に突出している。支持部22aは、車両100の左右方向に延びている。ロアーケース22のうち、支持部22aを除く領域は、平坦な面で構成されている。なお、支持部22aを除く領域には、凹凸が含まれていてもよい。
【0044】
支持部22aの上面は、電池モジュール11の底面と接触している。支持部22aおよび電池モジュール11は、所定の締結位置において互いに固定される。締結位置は、複数設けることができ、支持部22aの長手方向に沿って配置することができる。
【0045】
支持部22aおよび電池モジュール11の締結構造としては、例えば、以下に説明する構造がある。電池モジュール11の底面にネジ溝を形成するとともに、支持部22aの上面に開口部を形成する。そして、支持部22aの開口部を介して、電池モジュール11のネジ溝にボルトを挿入する。これにより、電池モジュール11がロアーケース22(支持部22a)に固定される。
【0046】
電池スタック10を構成する各電池モジュール11を支持部22aに固定することができる。また、上述したように、電池スタック10に拘束力を与えた構造では、特定の電池モジュール11だけを支持部22aに固定することもできる。
【0047】
ロアーケース22の底面には、一対のリインフォース(脚部に相当する)40が固定されている。リインフォース40は、ロアーケース22の強度を確保するために用いられており、支持部22aが延びる方向と直交する方向(矢印FRの方向)に延びている。リインフォース40およびロアーケース22は、例えば、溶接によって固定することができる。リインフォース40のうち、車両100の後方側に位置する端部は、傾斜面41を有している。傾斜面41には、スリット41b(変形部に相当する)を有する締結孔41aが形成されている。
【0048】
図3および図4に示すように、リインフォース40の傾斜面41は、フロアパネル50に設けられた台座60に固定される。図4に示すように、台座60は、電池スタック10よりも車両の後方に配置されている。傾斜面41は、台座60の斜面に沿っており、傾斜面41および台座60は、締結位置P3において、互いに固定される。傾斜面41の締結孔41aと、台座60に形成された開口部とに、ボルトを通すことにより、傾斜面41および台座60を固定することができる。
【0049】
ロアーケース22の底面には、ブラケット70が固定される。ロアーケース22およびブラケット70は、締結位置P4において互いに固定される。図3に示すように、ロアーケース22およびブラケット70は、開口部及び締結孔を有しており、これらの開口部及び締結孔にボルトを挿入することにより、ロアーケース22およびブラケット70を固定することができる。
【0050】
ブラケット70は、フロアパネル50に固定されている。車両100の横方向に延びており、フロアパネル50に固定されるクロスメンバ80が、台座60よりも車両100の前方に配置されている。図4に示すように、ブラケット70が車両100の前方に位置し、クロスメンバ80は、車両100の前後方向においてブラケット70と台座60との間に配置される。クロスメンバ80の上面は、ロアーケースの下面が接触し、電池パック1がクロスメンバ80の上面に設置されている。クロスメンバ80と電池パック1は、締結されていない。
【0051】
ブラケット70は、クロスメンバ80に沿う方向に延びており、図3に示すように、車両100の前方に位置する電池パック1のアッパーケース21のフランジ21cが固定される支持部71と、支持部71のクロスメンバ80に沿う長手方向両端に形成される車両締結部72と、を有する。車両締結部72は、フロアパネル50に固定される。なお、ロアーケース22と支持部71とは、ボルトによる締結固定以外にも例えば、溶接等で互いを固定することもできる。
【0052】
支持部71と車両締結部72との間は段差73が形成されており、支持部71とフロアパネル50とが車両上下方向に所定距離離間している。電池パック1の下面にクロスメンバ80が配置されており、電池パック1の下面がクロスメンバ80の上面に設置される際の、フロアパネル50とアッパーケース21のフランジ21cとの距離に対応する段差73が、支持部71と車両締結部72との間に形成されている。
【0053】
本実施例の電池パック1は、一対のリインフォース40を介して車両後方側がフロアパネル50に固定され、ブラケット70を介して車両前方側がフロアパネル50に固定されて、電池パック1全体が車両(フロアパネル50)に固定されている。
【0054】
ブラケット70をフロアパネル50に固定する車両締結部72は、2つの締結孔72a、72b(第1締結孔、第2締結孔に相当する)と、2つの締結孔72a、72bが形成される固定部72cと、を含んで構成される。固定部72cは、フロアパネル50に接地し、締結孔72a、72bとフロアパネル50に形成された開口部とに、それぞれボルトを通すことにより、車両締結部72(ブラケット70)およびフロアパネル50が固定される。
【0055】
固定部72cには、締結孔72a、72bそれぞれから車両100の後方に向かって延びるスリットS(締結解除部に相当する)が形成されている。スリットSは、締結孔72a、72bに挿通されるボルトの軸径よりも小さい幅を有し、締結孔72a、72bと連通しているとともに、固定部72cの車両後方側の端部72eまで延びている。
【0056】
ここで、図5を参照して、本実施例の車両締結部72について詳細に説明する。上述したように本実施例の電池パック1は、ブラケット70に固定されるとともに、電池パック1に対して車両100の左右方向に配置されるブラケット70の車両締結部72を、フロアパネル50に締結固定することで、車両100に搭載される。
【0057】
本実施例の車両締結部72では、フロアパネル50に接地する固定部72cに、所定の間隔で離間する2つの締結孔72a、72bを形成し、フロアパネル50との接地面積を増やし、例えば、路面状況の悪い路を走行する電池パック1に加わる荷重や振動によるフロアパネル50の入力を分散することで、電池パック1と車両100の締結を向上させている。
【0058】
さらに、所定の間隔で離間する2つの締結孔72a、72bを介してフロアパネル50との接地面積を増やした状態で、ブラケット70を介した電池パック1の車両100への固定を行いつつ、電池パック1に過大な荷重が加わったとき、電池パック1を保護するために、電池パック1をフロアパネル50(車両100)から離脱させ易いように、車両締結部72を構成している。
【0059】
図5に示すように、固定部72cに、車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する車両前方向への移動に伴う荷重が加わると、車両左右方向の電池パック1側に位置する締結孔72aよりも外側に位置するボルトが挿通された締結孔72bに大きなモーメントが加わるので、端部72gから締結孔72bまで間の固定部72cが降伏点を超えてしまい、車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重が締結孔72bに伝わり難くなる。
【0060】
例えば、車両前後方向における固定部72の電池パック1側の端部72gの幅が、締結孔72bの大きさに対応する端部72fと同じ幅である場合、支点Q1,Q2から締結孔72bまでの距離が長いと、固定部72の車両前後方向における断面積が、締結孔72aよりも外側に位置する締結孔72bに加わるモーメントに対して降伏点に対する許容範囲よりも小さくなり、固定部72cにおける締結孔72a,72b間で塑性変形が生じ、締結孔72bに車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重が伝わり難くなる。
【0061】
車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重が締結孔72bに伝わり難くなると、破断又は変形によりボルトの軸が締結孔72bから外れ難くなり、過大な荷重が加わったときに電池パック1が車両100から離脱し難くなってしまう。
【0062】
したがって、締結孔72aよりも外側に位置する締結孔72bに加わるモーメントを小さくするために、締結孔72bを電池パック1側に近づけるように2つの締結孔72a、72bを配置することが考えられるが、この場合、締結孔72a,72b間の距離が短くなってしまい、フロアパネル50との接地面積を増やした状態で、ブラケット70を介した電池パック1の車両100への固定を行うことができない。
【0063】
そこで、本実施例では固定部72cを、締結孔72aよりも外側に位置する締結孔72bから締結孔72aに向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成する。例えば、図5に示すように、固定部72cは、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に対し、電池パック1側の端部72gから締結孔72bまでの間で降伏点を超えないように、締結孔72bが形成される車両前後方向の幅d1よりも締結孔72aが形成される車両前後方向の幅d2が大きくなるように形成される。
【0064】
図5の例において、支点Q1から支点Q2までの車両前後方向の距離よりも大きい距離で離間する支点Q3を、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に応じて決定し、電池パック1側の端部72gから締結孔72bまでの間で降伏点を超えない固定部72cを形成することができる。
【0065】
このように固定部72cを、締結孔72aよりも外側に位置する締結孔72bから締結孔72aに向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成することで、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に対して固定部72を補強し、車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重を締結孔72bに伝わり易くしている。
【0066】
図5に示すように、例えば、固定部72cを、電池パック1から車両左右方向に略平行に延びる端部72dと、この端部72dに対して車両前後方向に傾斜する端部72eと、を含んだ台形状に構成することができ、所定距離離間する2つの締結孔72aおよび締結孔72bを端部72eの傾斜に沿って形成することができる。所定距離離間する2つの締結孔72aおよび締結孔72bが、車両左右方向に対して車両前後方向に傾斜して配置され、かつ車両前後方向に位置が相違して車両左右方向に並んで配置されるので、2つの締結孔72a、72bを有する固定部72cの車両左右方向における長さを短くすることができ、フロアパネル50への設置スペースを効率化することができる。なお、図5の例では、車両後方側の端部72eが車両前後方向に傾斜している一例を示しているが、例えば、車両前方側の端部72cが車両前後方向に傾斜するように、固定部72cを構成してもよい。
【0067】
なお、図5の例では、固定部72cの電池パック1側の端部72gを、電池パック1に加わる荷重に対応する支点として示している。図2、図3に示すように、電池パック1と固定部72cとの間には、支持部71及び段差73が設けられているが、支持部71及び段差73が電池パック1に加わる荷重に対して十分な強度を有する場合、支持部71及び段差73を介して固定部72cに加わる荷重がそのまま端部72gに加わるので、支点Q1及び支点Q3は、図5に例示するように衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に応じて決定することができ、電池パック1側の端部72gから締結孔72bまでの間で降伏点を超えない固定部72cを形成することができる。
【0068】
図6(a)は、電池パックの車載構造を示す平面図である。図6(a)に示すように、電池パック1の車両前方側は、ブラケット70の支持部71と締結位置4で締結されており、支持部71の長手方向両端の車両締結部72が、車両左右方向に配置されている。車両締結部72は、締結孔72a、72bそれぞれに対応する各締結位置でフロアパネル50に締結されている。電池パック1の車両後方側は、一対のリインフォース40の傾斜面41を介してフロアパネル50に固定されている。図6(a)、(b)において、黒丸(●)は締結孔に挿通されるボルトの軸を表している。
【0069】
図6(b)は、車両後方側から荷重F1(衝撃)が作用したときのブラケット70とフロアパネル50との締結が解除された状態の平面図である。車両100の前方に作用する荷重は、例えば、車両100の前進中に車両100の前部が衝突したときや、車両100の後部に対して他の車両が衝突してきたときに発生する。
【0070】
本実施例では、電池パック1が衝撃を受けた際、ブラケット70とフロアパネル50との締結を解除して電池パック1をブラケット70とともに車両前方に移動することを許容する車載構造である。
【0071】
スリットSは、電池パック1が衝撃を受けた際に電池パック1が車両前方に移動することに伴って締結孔72a,72bそれぞれに挿通されるボルトの軸より変形し、ボルトの軸がスリットSに沿って移動して締結孔72a,72bから離脱し、車両締結部72の車両前方への移動が許容される。
【0072】
一方、リインフォース40の傾斜面41には、締結孔41aと連通するスリット41bが形成されているので、電池パック1の車両前方に向かう移動に伴って締結孔41aに挿通されているボルトの軸によりスリット41aが変形し、傾斜面41および台座60の締結が解除される。
【0073】
本実施例の電池パック1の車載構造は、ブラケット70を介して電池パック1がフロアパネル50(車両本体)に締結される構造であり、ブラケット70の車両締結部72が、締結孔72a及び締結孔72bを介してフロアパネル50に締結されるため、ブラケット70に対するフロアパネル50の接地面積を増加させて、電池パック1に加わる荷重や振動に対するフロアパネル50との締結を向上させることができるとともに、ブラケット70(車両締結部72)の移動を伴う衝撃を電池パック1が受けた際に、スリットSによって締結孔72aおよび締結孔72bを介したフロアパネル50との締結が解除されるので、電池パック1が締結されるブラケット70をフロアパネル50から外すことができ、電池パック1に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0074】
このように電池パック1に大きな衝撃が加わったとき、電池パック1を車両100から外すことにより、電池パック1を保護することができる。つまり、電池パック1が車両100に固定されたままの状態で電池パック1に過大な衝撃が加わると、電池スタック10などが変形してしまうおそれがあるので、電池パック1を車両100から外すことにより、電池スタック10などに過度の負荷がかかるのを抑制し、電池パック1を保護することができる。
【0075】
特に、本実施例では、固定部72cが締結孔72bから締結孔72aに向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されているので、締結孔72aよりも電池パック1に対して車両左右方向外側に位置する締結孔72bに、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に応じた荷重が伝わり易くなり、締結孔72bを介したフロアパネル50との締結が解除し易くなる。言い換えれば、締結孔72bから締結孔72aに向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成することで、車両前後方向に加わる力に対する固定部72cの強度を増加させることができ、締結孔72aよりも車両左右方向外側に位置する締結孔72bは、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に応じた荷重を受けてフロアパネル50との締結が解除され易くなる。
【0076】
図7は、本実施例の車両締結部72の変形例を示す図である。図7に示すように、変形例の車両締結部72は、スリットSの代わりに、締結孔72a,72bそれぞれに対応する固定部72cの車両後方側の端部72eに、切り欠き部74(応力集中部に相当する)が形成されている。切り欠き部74は、衝撃を受けた際にブラケット70が車両前方に移動することに伴ってボルトの軸によって締結孔72a,72bが押し広げられる変形に対する応力集中部として機能する。
【0077】
図7(a)に示すフロアパネル50との締結状態から、電池パック1が衝撃を受けた際にブラケット70が車両前方に移動すると、図7(b)に示すように、車両前方に移動する固定部72cに対し、ボルトの軸によって締結孔72a,72bが車両後方に向かって押し広げられ、締結孔72a,72bから車両後方側に形成された切り欠き部74に、ボルトの軸によって押し広げられる締結孔72a,72bの変形応力が集中し、締結孔72a,72bと切り欠き部74と間が破断して、締結孔72a,72bそれぞれに挿通されているボルトが固定部72cから外れる。なお、切り欠き部74は、締結孔72a,72bの内周側に形成してもよい。
【0078】
このように本実施例の変形例では、固定部72cが締結孔72bから締結孔72aに向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されているので、締結孔72aよりも電池パック1に対して車両左右方向外側に位置する締結孔72bに、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に応じた荷重が伝わり易く、締結孔72a,72bと切り欠き部74と間が破断して、締結孔72a,72bそれぞれに挿通されているボルトが固定部72cから外れ、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に応じた荷重を受けてフロアパネル50との締結が解除され易くなる。
【0079】
(実施例2)
図8から図10は、実施例2のブラケット70とフロアパネル50との締結構造を示す図であり、上述した実施例1の車両締結部72の変形例である。なお、実施例1と同様の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0080】
図8は、本実施例の車両締結部72を示す図であり、締結孔72aに対応する固定部72cの端部72eに切り欠き部74が形成され、締結孔72bには、締結孔72bから固定部72cの車両左右端部72fに開口するスリットS1が形成されている。なお、実施例1同様に、切り欠き部74は、締結孔72aの内周側に形成してもよく、以下の図9、図10に示す各変形例についても同様である。
【0081】
本実施例は、上記実施例1と異なり、固定部72cは、車両前後方向における固定部72の電池パック1側の端部72gの幅が、端部72fと同じ幅に形成され(図5参照)、締結孔72a,72bが、車両左右方向に並んで配置されている。本実施例では、車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重が締結孔72bに伝わり難い場合でも、締結孔72bを介したフロアパネル50との締結を解除し易くする締結構造である。
【0082】
図8(a)に示すフロアパネル50との締結状態から、電池パック1に荷重が加わった際にブラケット70が車両前方に移動すると、図8(b)に示すように、車両前方に移動する固定部72cに対し、ボルトの軸によって締結孔72a,72bが車両後方に向かって押し広げられる。締結孔72aは、ボルトの軸によって押し広げられて切り欠き部74に変形応力が集中し(図8(c))、締結孔72aと切り欠き部74と間が破断して、締結孔72aに挿通されていたボルトの軸は、脚部72から外れる(図8(d))。一方、締結孔72bは、ボルトの軸によって押し広げられると、スリットS1の開口が大きくなるように(開くように)変形し(図8(c))、締結孔72bに挿通されていたボルトの軸は、固定部72から車両後方に向かって外れる(図8(d))。このとき、締結孔72bに挿通されていたボルトの軸が先に外れ、その後締結孔72aの破断により、締結孔72aに挿通されていたボルトの軸が脚部72から外れる。
【0083】
このように本実施例では、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴ってボルトの軸により押し広げられる変形によって破断する締結孔72aに対し、スリットS1の開口が、ボルトの軸により押し広げられる締結孔72bの変形に伴って広がるように変形する。このため、車両100が衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴う荷重が締結孔72bに伝わり難い場合でも、締結孔72bに挿通されるボルトの軸が外れやすくなり、締結孔72bを介したフロアパネル50との締結が解除し易くなる。
【0084】
図9は、本実施例の車両締結部72の第1変形例を示す図であり、図9(a)に示すように、所定の間隔離間して車両左右方向に並んで配置される締結孔72a,72b間にスリットS2が形成され、締結孔72a,72bがスリットS2を介して連通している。また、車両左右方向において電池パック1(締結孔72a)よりも遠い側に位置する締結孔72bに対応する固定部72cには、切り欠き部74が形成されている。切り欠き部74は、固定部72cの車両左右方向における端部72fに設けられている。
【0085】
図9(a)に示すフロアパネル50との締結状態から、電池パック1に荷重が加わった際にブラケット70が車両前方に移動すると、図9(b)に示すように、車両前方に移動する固定部72cに対し、ボルトの軸によって締結孔72a,72bが車両後方に向かって押し広げられる。各ボルトに軸によって押し広げられる締結孔72a,72bとともに、スリットS2が車両後方側に向かって変形しつづけ(図9(c))、締結孔72a,72b及びスリットS2全体の変形応力が切り欠き部74に集中し、締結孔72bと切り欠き部74と間が破断して、締結孔72a,72bそれぞれに挿通されているボルトが、破断した締結孔72bから外れる(図9(d))。
【0086】
本実施例の第1変形例では、締結孔72aと締結孔72bを連通するスリットS2が形成されているので、ボルトの軸により押し広げられる締結孔72a及び締結孔72bの変形に伴ってスリットS2が変形しつつ、締結孔72aおよび締結孔72b全体が変形するので、締結孔72aに加わる荷重がスリットS2を介して締結孔72bにより伝達され易くなり、締結孔72bに対応して形成された応力集中部を介して締結孔72bが破断し易くなる。このため、締結孔72aおよび締結孔72bを介したフロアパネル50と車両締結部72との締結が解除し易くなる。
【0087】
図10は、本実施例の車両締結部72の第2変形例を示す図であり、図10(a)に示すように、所定の間隔離間して車両左右方向に並んで配置される締結孔72aから締結孔72bに突出するスリットS3が形成されている。図9の第1変形例とは異なり、図10に示す第2変形例では、スリットS3によって締結孔72a,72bが連通していない。また、第2変形例同様に、締結孔72bに対応する固定部72cの端部72fに、切り欠き部74が形成されている。
【0088】
図10(a)に示すフロアパネル50との締結状態から、電池パック1に荷重が加わった際にブラケット70が車両前方に移動すると、図10(b)に示すように、車両前方に移動する固定部72cに対し、ボルトの軸によって締結孔72a,72bが車両後方に向かって押し広げられる。各ボルトに軸によって押し広げられる締結孔72a,72bとともにスリットS3が変形し、ボルトの軸によって押し広げられる締結孔72bの変形応力が切り欠き部74に集中して締結孔72bと切り欠き部74と間が破断し(図10(c))、次いで締結孔72a,72bとが連通するようにスリットS3と締結孔72bとの間が破断し、締結孔72a,72bそれぞれに挿通されているボルトが、破断した締結孔72a,72bから外れる(図10(d))。
【0089】
本実施例の第2変形例では、第1変形例同様に、各ボルトの軸により押し広げられる締結孔72aの変形に伴ってスリットS3が変形し、締結孔72aから締結孔72bに突出するスリットS3が変形するにつれて締結孔72aに加わる荷重がスリットS3を介して締結孔72bにも伝達され、締結孔72bが切り欠き部74を介して破断し易くなる。このため、締結孔72aおよび締結孔72bを介したフロアパネル50と車両締結部72との締結が解除し易くなる。
【0090】
このように本実施例では、電池パック1に加わる衝撃に伴うブラケット70の車両前方への移動に対し、時間が進むにつれて締結孔72a,72bそれぞれにおける荷重が集中する位置が変化し、時間差で変形及び破断することにより、固定部72cから締結孔72a,72bに挿通されている各ボルトが外れる。このため、ブラケット70の車両締結部72を、締結孔72a及び締結孔72bを介してフロアパネル50に締結することで、電池パック1に加わる荷重や振動に対するフロアパネル50への締結を向上させつつ、衝撃を受けた際の電池パック1のフロアパネル50に対する移動に伴って締結孔72aおよび締結孔72bを介した締結を解除できるので、電池パック1に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0091】
(実施例3)
図11から図13は、実施例3を示す図である。本実施例は、ブラケット70がフロアパネル50に溶接等で固定され、電池パック1がブラケット70の支持部71に締結される電池パック1の車載構造である。
【0092】
図11に示すように、ブラケット70の支持部71の締結位置P4には、2つの締結孔71a,71bが形成されている。締結孔71a、71bとパックケース20のフランジ21cに形成された開口部とに、それぞれボルトを通すことにより、フロアパネル50に溶接固定されたブラケット70および電池パック1を締結することができる。
【0093】
締結孔71a,71bには、締結孔71a,71bそれぞれから車両前方に向かって延びるスリットSが形成されている。スリットSは、締結孔71a,71bに挿通されるボルトの軸径よりも小さい幅を有し、締結孔71a,71bと連通しているとともに、支持部71の車両前方端部まで延びている。
【0094】
図12は、締結孔71a,71bに挿通されるボルトが取り付けられるナットNを含む締結ユニット90の一例を示す図である。図12(a)に示すように、締結ユニット90は、締結位置P4の支持部71の底面に溶接等で固定される。締結ユニット90は、ナットN1,N2を収容する2つのナット収容部91が形成されており、プレス加工により1つの板部材から成形することができる。2つのナット収容部91は、連結部92を介して連結しており、2つのナット収容部92それぞれの端部には、支持部71の底面と溶接される固定部93が形成されている。連結部92及び固定部93が支持部71の底面に溶接固定され、締結ユニット90がブラケット70に固定される。ナット収容部91の車両前方の壁部91aは、ナット収容部91の底面91bから延び、車両上方向に折り曲げられたナット係止部として形成されている。
【0095】
図12(b)は、図12(a)に示した締結ユニット90の変形例であり、平面状の板部材にナットN1,N2を締結孔71a,71bに対応する間隔で溶接等で固定するとともに、ナットN1,N2の間の連結部92の車両前後方向の端部に、切り欠き部94を形成している。連結部92が支持部71の底面に溶接固定され、締結ユニット90がブラケット70に固定される。
【0096】
図13(a)は、本実施例の電池パック1の搭載構造を示す平面図である。図13(a)に示すように、電池パック1の車両前方側は、ブラケット70の支持部71と締結位置4で締結されており、支持部71の長手方向両端の脚部72が、フロアパネル50に溶接等により固定されている。電池パック1の車両後方側は、一対のリインフォース40の傾斜面41を介してフロアパネル50に固定されている。図13(a)、(b)において、黒丸(●)は締結孔に挿通されるボルトの軸を表している。その他の詳細な構成は、上記実施例1と同様である。
【0097】
図13(b)は、車両後方側から荷重F1(衝撃)が作用したときのブラケット70と電池パック1との締結が解除された状態の平面図である。本実施例では、電池パック1が衝撃を受けた際、ブラケット70と電池パック1との締結を解除して電池パック1をブラケット70から車両前方に移動することを許容する。
【0098】
スリットSは、電池パック1が衝撃を受けた際に電池パック1が車両前方に移動することに伴って締結孔71a,71bそれぞれに挿通されるボルトの軸より変形し、ボルトの軸がスリットSに沿って移動して締結孔71a,71bから離脱し、電池パック1の車両前方への移動が許容される。このとき、図12(a)の例では、締結ユニット90の車両前方側の壁部91aそれぞれが、ナットN1,N2によって変形し、ナットN1,N2が締結ユニット90から外れる。また、図12(b)の例では、ナットN1,N2の間の連結部92に形成されている切り欠き部94に、電池パック1の車両前方への移動に伴う荷重(ボルトの軸がスリットSに沿って移動して締結孔71a,71bから離脱する際に連結部92に加わる車両前方へ向かう荷重)が集中し、連結部92の両側が切り欠き部94から破断してナットN1,N2が締結ユニット90から外れる。
【0099】
一方、リインフォース40の傾斜面41には、締結孔41aと連通するスリット41bが形成されているので、電池パック1の車両前方に向かう移動に伴って締結孔41aに挿通されているボルトの軸によりスリット41aが変形し、傾斜面41および台座60の締結が解除される。
【0100】
本実施例では、電池パック1の車両に対する締結をフロアパネル50に溶接固定されるブラケット70を通じて行うことにより、加わる荷重や振動に対する電池パック1とフロアパネル50との締結を向上させることができるとともに、電池パック1が衝撃を受けた際に、スリットSによって締結孔71aおよび締結孔71bを介した電池パック1とブラケット70との締結が解除されるので、ブラケット70から電池パック1を外すことができ、電池パック1に過度の負荷が加わるのを抑制することができる。
【0101】
特に、本実施例では、締結解除部がブラケット70の電池パック1との締結個所に形成されているので、上記実施例1に比べて、ブラケット70の車両締結部72の設置スペースの効率化を図ることができる。
【0102】
なお、本実施例では、1つのブラケット70を用いているが、これに限るものではない。例えば、ブラケット70を複数の部材に分割することもでき、図4の例において、ブラケット70の支持部71を2つに分割し、車両右側の電池パック1の締結位置P4で当該電池パック1と締結する支持部71及び段差73を介して連結する車両締結部72を含む第1ブラケットと、車両左側の電池パック1の締結位置P4で当該電池パック1と締結する支持部71及び段差73を介して連結する車両締結部72を含む第2ブラケットとで構成することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:電池パック(蓄電装置) 10:電池スタック
11:電池モジュール 20:パックケース
21:アッパーケース 22:ロアーケース
22a:支持部 30:バスバーモジュール
40:リインフォース(脚部) 50:フロアパネル
60:台座 70:ブラケット
71:支持部 72:車両締結部
72a,72b:締結孔 73:段差
74:切り欠き部(応力集中部) 80:クロスメンバ
S:スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有し、
前記車両締結部は、第1締結孔および第2締結孔と、前記蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、前記第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って前記第1締結孔および前記第2締結孔を介した車両本体との締結の解除を許容する締結解除部と、を含み、
前記第2締結孔は、前記第1締結孔よりも前記蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置するとともに、前記固定部は、前記第2締結孔から第1締結孔に向かって車両前後方向の幅が大きくなるように形成されていることを特徴とする蓄電装置の車載構造。
【請求項2】
前記固定部は、衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って車両前後方向に加わるせん断力に対し、前記蓄電装置から前記第2締結孔までの間で降伏点を超えないように、前記第2締結孔が形成される車両前後方向の第1幅よりも前記第1締結孔が形成される車両前後方向の第2幅が大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項3】
前記第2締結孔は、前記第1締結孔に対し、車両左右方向外側であって車両前後方向に相違した位置に配置され、前記第1締結孔および第2締結孔は、車両左右方向に対して車両前後方向に傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項4】
前記固定部は、前記蓄電装置から車両左右方向に略平行に延びる第1端部と、前記第1端部に対して車両前後方向に傾斜する第2端部と、を含んで構成され、前記第1締結孔および第2締結孔は、前記第2端部の傾斜に沿って形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項5】
前記締結解除部は、前記第1締結孔および前記第2締結孔それぞれから車両後方に向かって延びる移動許容部であり、
前記移動許容部は、衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って前記第1締結孔および前記第2締結孔それぞれに挿通される締結ボルトの軸により変形し、前記第1締結孔および前記第2締結孔から前記締結ボルトを離脱させて前記車両締結部の車両本体に対する移動を許容することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項6】
前記第1締結孔および前記第2締結孔それぞれに締結ボルトが挿通されて車両本体と前記車両締結部とが締結されており、
前記締結解除部は、衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って前記締結ボルトの軸により前記第1締結孔および前記第2締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部であり、
前記第1締結孔および前記第2締結孔それぞれが破断することによって前記第1締結孔および前記第2締結孔から前記締結ボルトを離脱させて前記車両締結部の車両本体に対する移動を許容することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項7】
蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有し、
前記車両締結部は、
第1締結孔および前記第1締結孔よりも前記蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔と、
前記蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、前記第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、
前記第2締結孔から前記固定部の車両左右方向の端部に開口するスリットと、を含み、
衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って締結ボルトの軸により押し広げられる変形によって破断する前記第1締結孔に対し、前記スリットの開口は、締結ボルトの軸により押し広げられる前記第2締結孔の変形に伴って広がるように変形することを特徴とする蓄電装置の車載構造。
【請求項8】
前記車両締結部は、衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って前記締結ボルトの軸により前記第1締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部を含むことを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項9】
蓄電装置に固定されるとともに車両本体に締結される車両締結部を含むブラケットを有し、
前記車両締結部は、
第1締結孔および前記第1締結孔よりも前記蓄電装置に対して車両左右方向外側に位置する第2締結孔と、
前記蓄電装置に対して車両左右方向に配置され、前記第1締結孔および第2締結孔が形成される固定部と、
衝撃を受けた際の前記蓄電装置の車両本体に対する移動に伴って前記第2締結孔に挿通される締結ボルトの軸により前記第2締結孔が押し広げられる変形に対する応力集中部と、
前記第1締結孔から第2締結孔に向かって突出するスリットと、を含むことを特徴とする蓄電装置の車載構造。
【請求項10】
前記第1締結孔と第2締結孔は、前記スリットによって連通していることを特徴とする請求項9に記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項11】
前記第1締結孔と第2締結孔は、前記蓄電装置に対して車両左右方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の蓄電装置の車載構造。
【請求項12】
前記蓄電装置は、前記ブラケットおよび車両本体の締結位置とは異なる位置において、車両本体と締結される脚部を有し、
前記脚部は、前記蓄電装置が受ける衝撃によって変形して車両本体との締結を解除する変形部を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の蓄電装置の車載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−112123(P2013−112123A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259293(P2011−259293)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】