説明

蓄電装置用負極、及び蓄電装置

【課題】充放電容量が大きく、且つ充放電による電池特性の劣化が少ない蓄電装置用負極を提供する。
【解決手段】複数の突起を有する負極活物質と、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有する蓄電装置用負極である。梁は集電体の曲げ方向に対して垂直方向に設けられている。第1の突起と第2の突起において、互いの軸が揃っている。また、突起の側面を覆って、または突起の側面及び梁の上面を覆ってグラフェンが設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用負極、及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池などの、蓄電装置の開発が行われている。
【0003】
複数のピラー形状の突起が設けられた正極及び負極を用いることで大容量化を図った蓄電装置において、充放電による正極及び負極の体積膨張により、正極及び負極の間に設けられるセパレータにかかる圧力を低減するため、正極及び負極のそれぞれ突起の先端に絶縁体を設けている(特許文献1乃至3参照)。
【0004】
シリコンチップ上に集積されたリチウム電池の電極として、n型シリコンウェハ上に作製されたサブミクロン直径のシリコンピラーが検討されている(特許文献4参照)。ピラーを形成するために反応性イオンエッチングを用いており、さらにフォトリソグラフィーを用いてもよいと記載されている。
【0005】
また蓄電装置用の電極は、集電体上に形成され、集電体に接して活物質が設けられる。負極活物質としては、例えば炭素またはシリコンなど、キャリアとなるイオン(以下、キャリアイオンと示す。)の吸蔵及び放出が可能な材料が用いられる。例えば、シリコンまたはリンがドープされたシリコンは、炭素に比べ、約4倍のキャリアとなるイオンを吸蔵することが可能であるため、理論容量が大きく、蓄電装置の大容量化という点において優れている。
【0006】
しかしながら、キャリアイオンの吸蔵量が増えると、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸蔵放出に伴う体積の変化が大きく、集電体及びシリコンの密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしまうという問題がある。そこで、集電体上に、シリコンからなる層を形成し、該シリコンからなる層上にグラファイトからなる層を設けることで、シリコンからなる層の膨張収縮による電池特性の劣化を低減している(特許文献5参照)。
【0007】
また、シリコンは炭素と比較して電気伝導性が低いため、シリコン粒子の表面をグラファイトで被覆し、当該シリコン粒子を含む活物質層を集電体上に形成することで、活物質層の抵抗率を低減した負極を作製している。
【0008】
一方、近年、半導体装置において、導電性を有する電子部材としてグラフェンを用いることが検討されている。グラフェンとは、sp結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。
【0009】
グラフェンは化学的に安定であり、且つ電気特性が良好であるため、トランジスタのチャネル領域、ビア、配線等、半導体装置への応用に期待されている。また、リチウムイオンバッテリ用の電極材料の導電性を高めるために、粒子状の活物質にグラファイト又はグラフェンを被覆している(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−219030号公報
【特許文献2】特開2010−239122号公報
【特許文献3】特開2010−219392号公報
【特許文献4】特開2010−135332号公報
【特許文献5】特開2001−283834号公報
【特許文献6】特開2011−29184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、蓄電装置の電極にピラー構造体を採用すると、強度を保つことが課題となる。キャリアイオンの充放電により強度を保持できなくなることがある。また強度が低下すると、ピラー構造体が集電体から滑落する。また円柱状の蓄電装置において、電極は丸められることとなるが、丸められた電極にピラー構造体を採用することは難しい。
【0012】
また、集電体上に設けられたシリコンからなる層をグラファイトからなる層で覆う場合、グラファイトからなる層の厚さがサブミクロンからミクロンと厚くなってしまい、電解質及びシリコンからなる層の間でのキャリアイオンの移動量が低減してしまう。一方、グラファイトで被覆されたシリコン粒子を含む活物質層は、活物質層に含まれるシリコン含有量が低減してしまう。これらの結果、シリコン及びキャリアイオンの反応量が低下してしまい、充放電容量の低下の原因となると共に、蓄電装置の急速充放電が困難である。
【0013】
また、粒子状の活物質をグラフェンで被覆しても、度重なる充放電により生じる体積の膨張及びそれに伴う粒子状の活物質の微粉化を抑制することは困難である。
【0014】
そこで、本発明の一態様は、充放電容量が大きく、急速充放電が可能であり、且つ充放電による電池特性の劣化が少ない蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、複数の突起を有する負極活物質構造体を有し、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極である。梁により、複数の突起の強度を補強することができる。複数の突起が、集電体等からの滑落を防止できる。負極活物質構造体は、負極活物質を有するものである。
【0016】
本発明の一態様は、複数の突起を有する負極活物質構造体と、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁と、突起の側面を覆うグラフェンとを有することを特徴とする蓄電装置用負極である。なお、グラフェンは突起の側面及び上面を覆ってもよい。またグラフェンは突起の側面から梁の上面にわたって覆ってもよい。
【0017】
グラフェンは、単層のグラフェン及び多層グラフェンを含む。また、グラフェンには酸素が含まれる場合がある。酸素が含まれる場合、全体の2atm%以上11atm%以下、好ましくは3atm%以上10atm%以下の割合で酸素を含む。
【0018】
複数の突起は、リチウムイオンの吸蔵放出を繰り返すと折れてしまう場合があるが、グラフェンで覆うことにより、複数の突起が折れることを防止できる。
【0019】
複数の突起が折れてしまっても、グラフェンで覆うことにより、折れてしまった突起と、折れていない突起との導電性を維持することができる。
【0020】
本発明の一態様は、複数の突起を有する負極活物質構造体と、複数の突起に共通して設けられた共通部と、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極である。共通部は負極活物質材料と同じ材料を有する。その場合、共通部は負極活物質として機能する。また本発明の一態様として、共通部が集電体としての機能を有してもよい。このような共通部により、少なくとも複数の突起がばらばらにならないように保持することができる。
【0021】
本発明の一態様は、複数の突起を有する負極活物質構造体と、複数の突起に共通して設けられた集電体と、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極である。集電体は負極活物質材料とは別の材料を有する。
【0022】
共通部や集電体に対して、複数の突起は垂直に設けられている。そのため、複数の突起を高密度に設けることができ、隙間を維持することができる。このような複数の突起の配置によって、リチウムイオンの吸蔵により膨張しても、複数の突起が接触することを抑制できる。また複数の突起の長さを調整することによって、リチウムイオンを吸蔵、放出するための表面積を広げることができる。
【0023】
本発明の一態様において、円柱状の蓄電装置に配置する場合、梁は、集電体の丸める方向(曲げる方向)に対して垂直方向に設けられている。梁により集電体を曲げやすくし、また集電体が曲がった状態でも複数の突起が剥離することを防止できる。
【0024】
本発明の一態様において、複数の突起は、シリコンを有する。複数の突起は、リンまたはボロン等の導電性を付与する不純物が添加されたシリコンで形成されてもよい。シリコンとして、単結晶シリコン、多結晶シリコン、又は非晶質シリコンを用いることができる。負極活物質構造体が有する複数の突起は、リチウムイオンを吸蔵、放出した後は、非晶質シリコンとなっていることが多い。そのため、はじめから複数の突起を非晶質シリコンで形成し、共通部は単結晶シリコン又は多結晶シリコンで形成してもよい。非晶質シリコンは、単結晶シリコンや多結晶シリコンのような結晶性を有するシリコンと比較すると、リチウムイオンの吸蔵、放出による体積変化が小さく、好ましいことがある。
【0025】
本発明の一態様において、複数の突起のうち、少なくとも第1の突起と第2の突起を構成する軸は揃っている。軸が揃うとは、面方位が揃うこと、又は結晶方位が揃うことをさす。軸の揃った第1の突起と第2の突起を形成するため、エッチング工程を用いることができる。すなわち、任意の方向にランダムに伸長したウィスカー状の構造体とは異なる。
【0026】
本発明の一態様は、シリコン基板上にマスクを形成した後、シリコン基板の一部をエッチングして、複数の突起を形成し、複数の突起のうち第1の突起と第2の突起を上方で架橋する梁を形成する。複数の突起を形成した後、突起の間に有機材料を形成して、それらの表面を平坦にし、梁を形成する。
【0027】
このような複数の突起を有する負極活物質構造体を蓄電装置の負極に用いた場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による負極活物質の強度変化に起因する崩壊や剥離を抑制できる。
【0028】
また複数の突起は並進対称性を有し、負極において均一性高く形成されているため、正極及び負極においての局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が正極及び負極の間で均質に生じる。これらのため、当該負極を蓄電装置に用いた場合、高速な充放電が可能となる。また反応が均一であれば、強度変化も均一となり、負極活物質の崩壊や剥離を抑制できる。
【0029】
また負極が有する梁により、複数の突起を有する負極活物質構造体を補強することができ、滑落を防止することができる。また梁により、負極を曲げやすくし、曲がった状態でも複数の突起が剥離することを防止できる。
【0030】
また、蓄電装置において、活物質表面が電解質と接触することにより、電解質及び活物質が反応し、活物質の表面に被膜が形成される。当該被膜はSEI(Solid Electrolyte Interface)と呼ばれ、活物質と電解質の反応を和らげ、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該被膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解質間のキャリアイオン伝導性の低下、電解質の消耗などの問題がある。そこで、本発明の一態様にあるように、負極活物質をグラフェンで被覆することで、当該被膜の膜厚の増加を抑制することができ、その結果、キャリアイオン伝導性の低下、電解質の消耗を抑制することができる。
【0031】
本発明の一態様にあるように、シリコンを用いて負極活物質を形成すると、シリコンは炭素と比較すると電気伝導性が低く、また充放電による非晶質化によりさらに電気伝導性が低下するため抵抗率が高くなる。
【0032】
また本発明の一形態にあるようにシリコンを有する負極活物質をグラフェンで覆うと、炭素はシリコンと比較して電気伝導性が高いため、グラフェンがキャリアイオンの通過する場となり、電子の移動を十分早くすることができる。またグラフェンは薄いシート状で存在することができるため、負極活物質の邪魔になることがない。すなわちグラフェンで覆っても負極活物質を多くすることが可能である。これらの結果、キャリアイオンの導電性を高めることができ、キャリアイオンが負極活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた蓄電装置において、急速充放電が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様により、充放電容量が高く、且つ充放電による負極活物質の劣化が少ない蓄電装置用負極、及び蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】負極およびその作製方法を説明する図である。
【図2】負極およびその作製方法を説明する図である。
【図3】負極およびその作製方法を説明する図である。
【図4】負極およびその作製方法を説明する図である。
【図5】負極の形状を説明する図である。
【図6】突起の形状を説明する図である。
【図7】集電体を有する負極を説明する図である。
【図8】グラフェンに覆われた負極を説明する図である。
【図9】正極を説明する図である。
【図10】正極を説明する図である。
【図11】グラフェンに覆われた負極を説明する図である。
【図12】負極活物質構造体の突起の配置を説明する上面図である。
【図13】蓄電装置を説明する図である。
【図14】負極の形状を説明する図である。
【図15】蓄電装置を備えた電気機器を説明する図である。
【図16】蓄電装置を備えた電気機器を説明する図である。
【図17】負極を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極の構造及びその作製方法について、図1乃至図4等を用いて説明する。図1乃至図4において、(A)は斜視図であり、(B)はA−Bでの断面図である。
【0037】
図1(A)のように、負極活物質は複数の突起101を有する。負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵することができる材料を用いることができる。たとえば、シリコンが挙げられる。当該負極活物質の形状を、負極活物質構造体を用いて説明する。つまり負極活物質構造体は複数の突起101を有している。また複数の突起101は共通部102で保持されている。つまり、負極活物質構造体は、共通部102も有することができる。共通部102が複数の突起101と同じ材料を有する場合、共通部102は負極活物質として機能することができる。たとえば、共通部102と複数の突起101とがともにシリコンを有することができる。また共通部102は複数の突起101とは異なる材料を有してもよい。この場合、共通部102は集電体として機能し、複数の突起101が負極活物質として機能する。たとえば、複数の突起101にはシリコンを用い、共通部102には導電性があり、リチウムイオンを吸蔵しない材料を用いる。このような共通部102の材料は、例えば、チタン、アルミニウム、又は銅が挙げられる。このような複数の突起を有する負極活物質構造体を、負極は有する。
【0038】
図1(A)(B)に示す構造体を得るために、エッチング工程を用いて複数の突起101を形成する。例えば、単結晶シリコン基板(面方位(100))に対してエッチングを施す。エッチング方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法を適宜用いることができる。なお、深堀りエッチング法であるボッシュ法を用いることで、高さの高い突起を形成することができる。例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)装置を用い、エッチングガスとして塩素、臭化水素、及び酸素を用いて、n型のシリコン基板をエッチングすることで、共通部102及び複数の突起101を有するように形成することができる。なお、シリコンを有する共通部102を得るためには、上記エッチング工程によるエッチング深さを調整すればよい。エッチングガスの流量比は適宜調整すればよいが、エッチングガスの流量比の一例として、塩素、臭化水素、及び酸素それぞれの流量比を50:75:15とすることができる。
【0039】
また異方性エッチングを行うと、複数の突起101の側面は共通部102に対して垂直となる。一方、等方性エッチングを行うと、図14に示すように、複数の突起101の側面を後退させることができる。当該側面は湾曲形状を有する。その結果、負極活物質の表面積を増やすことができる。
【0040】
単結晶シリコン基板を用いる場合、面方位は(111)や(110)を用いてもよい。単結晶シリコン基板にかえて多結晶シリコン基板を用いる。このようなシリコン基板として、リンが添加されたn型シリコン基板、ボロンが添加されたp型シリコン基板を用いてもよい。
【0041】
エッチング工程において、複数の突起101を形成するためのマスクを用いる。マスクは酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムの一以上の無機材料を用いることができる。また、マスクはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、及びポリアミドの一以上の有機材料を用いることができる。また、無機材料と有機材料を積層することで、深くエッチングすることができる。無機材料や有機材料を用いたマスクは除去することなく、複数の突起101の上部に設けておいてもよい。
【0042】
本実施の形態に示すように、マスクを用いてシリコン基板をエッチングすることで、軸が揃っている複数の突起101を形成することができる。さらには、形状が略一致している複数の突起101を形成することができる。
【0043】
図2(A)、(B)に示すように、複数の突起101の間を充填するように有機材料103を設ける。有機材料103には、レジスト、ポリイミド、アクリルなどを用いることができ、塗布法、液滴吐出法等を用いて形成することができる。このようにして、有機材料103の上面と、複数の突起101の上面とを揃える。
【0044】
図3(A)、(B)に示すように、複数の突起101の上方に梁104を複数形成する。複数の梁104のいずれか一は、複数の突起101のうち少なくとも、2本の突起、つまり第1の突起と第2の突起との上方を架橋する。第1の突起と第2の突起とは隣接する必要はない。梁を設けることにより、複数の突起101の強度を高め、また負極を曲げやすくし、曲がった状態でも複数の突起が剥離することを防止できるため、好ましい形態である。
【0045】
図3(A)、(B)に示す梁を得るために、複数の突起101の間に有機材料103が充填された状態で、梁104となる構造体を形成する。梁となる構造体には、絶縁物又は導電物を用いることができる。当該構造体に対してエッチングを行うと、梁104を得ることができる。梁104は、複数の突起101と重なるように配置される。有機材料103があることで、梁104となる構造体を形成することができ、梁104となるようにエッチングを施すことができる。そのため、梁104の下方には複数の突起101に加えて、有機材料103も配置されている。
【0046】
梁104が絶縁物で構成されるとき、無機材料又は有機材料を用いることができる。無機材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムの一以上を用いる。有機材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、及びポリアミドの一以上の有機材料を用いる。または、絶縁物は、上記無機材料及び有機材料を積層して形成される。梁104の厚さは100nm以上10μm以下が好ましい。梁104が導電物で構成されるとき、チタン、アルミニウム、銅、シリコン等を用いることができる。導電物で構成されると、導電助剤としての機能を持たせることができる。またシリコンのように、キャリアイオンを吸蔵できる材料であってもよい。
【0047】
図4(A)、(B)に示すように、有機材料103を除去する。すると、複数の突起101と、複数の突起101の上方に設けられた梁104とを有する構造をえることができる。すなわち、負極は、複数の突起101を有する負極活物質構造体と、梁を有する構造体とを有する。当該負極を有する蓄電装置を得ることができる。
【0048】
図4(A)、(B)に示すように、複数の突起101は共通部102によって保持されてもよい。
【0049】
図5に示すように、共通部102などを丸めて、円柱状の蓄電装置に配置する場合、梁104は当該丸める方向(曲げる方向)と垂直な方向に配置するとよい。曲げによる複数の突起101の剥離等を防止することができる。また曲げやすい構造を提供することができる。
【0050】
図1乃至図4で示したが、複数の突起101はその形状からみて複数の柱状部、複数の針状部、複数の棒状部、又は複数の凸部と表記することができる。
【0051】
図1乃至図4で示したが、複数の突起101の形状は四角柱に限定されない。図6(A)に示すように円柱状221であってもよく、複数の円柱状部の上方に梁を設けることができる。また図6(B)に示すように壁状223であってもよく、複数の壁状部の上方に梁を設けることができる。また図6(C)に示すように円柱状の中心部が空洞となった形状224であってもよく、複数の円柱状の中心部が空洞となった形状の上方に梁を設けることができる。いずれの形状であっても、負極活物質として機能させることができる。
【0052】
このような負極活物質として機能する複数の突起101などの上面は、梁104が形成されるため、平坦であると好ましい。一方、梁104との密着性を高めるため、複数の突起101などの上面に凹凸をもたせてもよい。
【0053】
なお、負極活物質とは、キャリアであるイオン(以下、キャリアイオンと示す。)を電気化学的に吸蔵及び放出することができる物質を指す。キャリアイオンにリチウムイオンを用いることができる。これをリチウムイオン二次電池という。リチウムイオンの代わりに用いることが可能なキャリアイオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオン等がある。負極活物質としては、上述したシリコンの他に、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム等のいずれか一を用いることができる。なお、充放電理論容量が高いため、シリコンを用いることが好ましく、蓄電装置の小型化につながる。またシリコンにリン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたものを用いてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンは、導電性が高くなるため、負極の導電率を高めることができる。
【0054】
負極活物質を有する活物質層は、負極活物質の他に、導電助剤、バインダー等のいずれか一以上を有する。
【0055】
図12には、上面からみた複数の突起101の配置について示す。
【0056】
図12(A)は、複数の突起101が配置された状態である。上面からみたX軸方向に等間隔に配置され、Y軸方向にも等間隔に配置されている。間隔は、リチウムイオンを吸蔵して膨張した状態を想定して決めることができる。上記X軸方向及びY軸方向に等しく膨張した場合を考えると、X軸方向及びY軸方向に等間隔に配置されることとなる。例えば、Y軸方向よりX軸方向に膨張するのであれば、X軸方向の間隔を広くし、X軸方向よりY軸方向に膨張するのであれば、Y軸方向の間隔を広くすればよい。図12(A)の破線の領域150でみると、1つの突起が占める割合は、25%以上60%以下が好ましい。すなわち、領域150の突起が存在しない空隙の割合は、40%以上75%以下となる。突起の割合を25%以上とすると、当該負極における充放電の理論容量を約1000mAh/g以上とすることができる。一方、空隙の割合を40%以上とすることで、隣り合う突起が膨張しても接触しない。この結果、高い充放電容量を達成するとともに、充放電による負極の劣化を低減することができる。
【0057】
図12(B)は、図12(A)を方向aに移動したときの上面図である。複数の突起101の配置は等間隔であるため、図12(A)及び図12(B)において、複数の突起101の配置に変化はない。つまり、複数の突起101の配置は並進対称性を有するといえる。なお、ここでは、図12(A)に対して、方向aに移動したが、方向b、方向cにそれぞれ移動しても、図12(B)と同様の配置となる。
【0058】
また、図12(C)は、複数の突起101において、上面形状が四角状のもの101(a)と、円状のもの101(b)とが交互に配置された状態である。このように複数の突起101の形状は、異なっていてもよい。
【0059】
図12(D)は、図12(C)を方向bに移動したときの上面図である。上面形状が四角状の突起101(a)の配置は等間隔であり、上面形状が円状の突起101(b)の配置も等間隔であるため、図12(C)及び図12(D)において、複数の突起101の配置に変化はない。つまり、複数の突起101(a)、101(b)の配置は並進対称性を有するといえる。
【0060】
このような複数の突起101の配置は、充放電を繰り返しても維持される。また充放電を繰り返し、複数の突起101が崩壊又は滑落しても、複数の突起101の根本の配置は、維持されている。
【0061】
複数の突起101を並進対称性を有するように配置することで、複数の突起における電子伝導性のばらつきを低減することができる。このため、負極をはじめ、正極においても、局所的な反応が低減され、キャリアイオン及び活物質の反応が均質に生じ、拡散過電圧(濃度過電圧)を防ぐと共に、蓄電装置の信頼性を高めることができる。
【0062】
複数の突起101は単結晶構造、多結晶構造又は非晶質構造とすることができる。また共通部102も単結晶構造、多結晶構造又は非晶質構造とすることができる。例えば、共通部102を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起101を非晶質構造としてもよい。または、複数の突起101において、その一部を単結晶構造または多結晶構造とし、その他を非晶質構造とすることができる。なお、単結晶構造または多結晶構造となる複数の突起101の一部は少なくとも共通部102と接する領域を含む。
【0063】
なお、共通部102と、複数の突起101とが異なる材料で形成された場合の境界を、共通部102と複数の突起101との境界とする。同一材料で形成される場合であっても、上記境界を用いる。
【0064】
また、複数の突起101の長手方向は、揃っている。複数の突起の長手方向とは、長軸方向、つまり複数の突起の頂点(または上面の中心)を通る直線の方向をさす。また揃っているとは、長手方向において、頂点(または上面の中心)を通る直線でなす角度が10度以下、好ましくは5度以下で揃うことをさす。さらに好ましくは、結晶方位などが概略一致するとよい。充放電による膨張の傾向が揃うためである。
【0065】
さらに好ましくは、複数の突起101のそれぞれの形状が略同一である。形状が概略同一とは、長手方向と垂直方向に切断した輪切り断面形状や長手方向に切断した断面形状などがほぼ重なることを指す。ただし、充放電により、形状の同一性は維持できないことがある。このような構造とすることで、負極活物質の体積を制御することが可能である。
【0066】
複数の突起101について、長手方向の断面形状における幅は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。また、複数の突起101の高さは、突起の幅の5倍以上100倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下であり、代表的には0.5μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下である。
【0067】
複数の突起101の幅を、0.1μm以上とすることで、また、充放電容量を高めることが可能であり、1μm以下とすることで、充放電において突起が膨張しても、崩壊することを防ぐことができる。また、複数の突起101の高さを、0.5μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、100μm以下とすることで、充放電において突起が膨張しても、崩壊することを防ぐことができる。
【0068】
なお、複数の突起101における「高さ」とは、長手方向の断面形状において、複数の突起101の頂点(または上面の中心)を通る軸に沿う方向の該頂点と底点との間隔、つまり該頂点と共通部102との境界との間隔をいう。
【0069】
また、負極活物質として機能できる複数の突起101が設けられているため、板状の負極活物質に比べて表面積が広い。また、複数の突起101の軸が揃っており、さらに共通部102に対して垂直方向に突出しているため、突起の密度を高めることが可能であり、表面積を増加させることができる。
【0070】
また、複数の突起101はそれぞれ、一定の間隔を空けて設けられる。複数の突起101の間隔は、複数の突起101の幅の1.29倍以上2倍以下とすることが好ましい。この結果、当該負極を用いた蓄電装置の充電により複数の突起101の体積が膨張しても、複数の突起101同士が接触せず、複数の突起101の崩壊を防ぐことができると共に、蓄電装置の充放電容量の低下を防ぐことができる。
【0071】
また、複数の突起101は並進対称性を有し、負極において均一性高く形成されているため、正極及び負極においての局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が正極及び負極の間で均質に生じる。これらのため、複数の突起101を蓄電装置に搭載した場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による活物質の崩壊及び剥離を抑制でき、サイクル特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる。さらには、複数の突起101の形状を略一致させることで、局所的な充放電を低減すると共に、活物質の体積を制御することが可能である。また、突起の高さが揃っていると、電池の作製工程時において局所的な荷重を防ぐことが可能であり、歩留まりを高めることができる。これらのため、電池の仕様を制御しやすい。
【0072】
図17には梁104の変形例を示す。複数の突起101のうち少なくとも第1乃至第4の突起の上方を架橋するように格子状に梁104が設けられている。複数の突起101の強度を高めることができる。
【0073】
このように充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極を提供することができる。
【0074】
(実施の形態2)
本実施の形態では、充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極の構造及びその作製方法について、図8を用いて説明する。本実施の形態で説明する負極は、実施の形態1と比較して、グラフェンを設ける構成で異なる。
【0075】
図8(A)で示される構成において、複数の突起101を覆うグラフェン120は、複数の突起101の上方と梁104との間に設けられている。負極活物質構造体の少なくとも側面にグラフェン120を有する。
【0076】
図8(B)で示される構成において、複数の突起101を覆うグラフェン120は、梁104の上方にも設けられている。
【0077】
図8(C)で示される構成において、グラフェン120は、複数の突起101の側面に設けられ、梁104の上面や側面には設けられていない。
【0078】
グラフェン120は、少なくとも突起の側面を覆っている。好ましくは、グラフェン120は突起の側面及び上面を覆うか、突起の側面から梁104の上面にわたって覆っている。
【0079】
グラフェン120は、導電助剤として機能する。また、グラフェン120は、キャリアイオンを吸蔵する機能を有するため、活物質として機能する場合もある。
【0080】
グラフェン120は、単層グラフェンまたは多層グラフェンを含む。グラフェン120は、長さが数μmのシート状である。
【0081】
単層グラフェンは、sp結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいい、極めて厚さが薄い。また、炭素で構成される六員環が平面方向に広がっており、一部に、七員環、八員環、九員環、十員環等の、六員環の一部の炭素結合が切断された多員環が形成される。
【0082】
なお、多員環は、炭素及び酸素で構成される場合がある。または、多員環の炭素に酸素が結合する場合がある。グラフェンに酸素を含む場合、六員環の一部の炭素結合が切断され、結合が切断された炭素に酸素が結合し、多員環が形成される。このため、当該炭素及び酸素の結合の内部には、イオンの移動が可能な通路として機能する間隙を有する。すなわち、グラフェンに含まれる酸素の割合が多いほど、イオンの移動が可能な通路である間隙の割合が増加する。
【0083】
なお、グラフェン120に酸素が含まれる場合、酸素の割合は全体の2atm%以上11atm%以下、好ましくは3atm%以上10atm%以下である。酸素の割合が低い程、グラフェンの導電性を高めることができる。また、酸素の割合を高める程、グラフェンにおいてイオンの通路となる間隙をより多く形成することができる。
【0084】
グラフェン120が多層グラフェンの場合、複数の単層グラフェンで構成され、代表的には、単層グラフェンが2層以上100層以下で構成されるため、極めて厚さが薄い。単層グラフェンが酸素を有することで、グラフェンの層間距離は0.34nmより大きく、0.5nm以下、好ましくは0.38nm以上0.42nm以下、更に好ましくは0.39nm以上0.41nm以下となる。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、グラフェン120の方が層間距離が長いため、単層グラフェンの表面と平行な方向におけるイオンの移動が容易となる。また、酸素を含み、多員環が構成される単層グラフェンまたは多層グラフェンで構成され、所々に間隙を有する。このため、グラフェン120が多層グラフェンの場合、単層グラフェンの表面と平行な方向、即ち単層グラフェン同士の隙間と共に、グラフェンの表面に対する垂直方向、即ち単層グラフェンそれぞれに設けられる間隙の間をイオンが移動することが可能である。
【0085】
グラフェン120の形成方法としては、複数の突起101上にニッケル、鉄、金、銅またはそれらを含む合金を核として形成した後、メタンまたはアセチレン等の炭化水素を含む雰囲気で核からグラフェンを成長させる気相法がある。また、酸化グラフェンを含む分散液を用いて、複数の突起101の表面に酸化グラフェン設けた後、酸化グラフェンを還元し、グラフェンとする液相法がある。
【0086】
酸化グラフェンを含む分散液は、酸化グラフェンを溶媒に分散させる方法、溶媒中でグラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して、酸化グラフェンを含む分散液を形成する方法等がある。ここでは、グラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して形成した酸化グラフェンを含む分散液を用いて、複数の突起101上にグラフェン120を形成する方法について、説明する。
【0087】
本実施の形態では、Hummers法と呼ばれる酸化法を用いて酸化グラフェンを形成する。Hummers法は、単結晶グラファイト粉末に過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む混合液を形成する。酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、カルボキシル基等のカルボニル基、ヒドロキシル基等の官能基を有する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長い。次に、酸化グラファイトを含む混合液に超音波振動を加えることで、層間距離の長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離することができると共に、酸化グラフェンを含む分散液を形成することができる。なお、Hummers法以外の酸化グラフェンの形成方法を適宜用いることができる。
【0088】
なお、酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボキシル基等のカルボニル基、ヒドロキシル基等を有する。なお、カルボニル基を有する酸化グラフェンは極性を有する液体中において水素が電離するため、酸化グラフェンはイオン化し、酸化グラフェン同士が分散しやすい。このため、極性を有する液体においては、均一に酸化グラフェンが分散すると共に、後の工程において、均一な割合で表面に酸化グラフェンを設けることができる。
【0089】
またカルボキシル基を有する酸化グラフェンは、ある大きさのグラフェンシートの端の一部がカルボキシル基(−COOH)で終端されているため、水等の水溶液中では、カルボキシル基から水素イオンが離脱し、酸化グラフェン自体は負に帯電する。そのため、陽極に引き寄せられ、付着することができる。
【0090】
複数の突起101上に酸化グラフェンを設ける方法としては、塗布法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、電気泳動法等がある。また、これらの方法を複数組み合わせてもよい。なお、電気泳動法を用いると、イオン化した酸化グラフェンを電気的に活物質まで移動させることができるため、複数の突起が共通部と接する領域にまで酸化グラフェンを設けることが可能である。このため、複数の突起の高さが高い場合でも、共通部及び複数の突起の表面に均一に酸化グラフェンを設けることができる。
【0091】
複数の突起101上に設けられた酸化グラフェンを還元する方法としては、真空中あるいは不活性ガス(窒素あるいは希ガス等)中等の雰囲気で、150℃以上、好ましくは200℃以上の温度、複数の突起101が耐えうる温度以下で加熱する方法がある。加熱する温度が高い程、また、加熱する時間が長いほど、酸化グラフェンが還元されやすく、純度の高い(すなわち、炭素以外の元素の濃度の低い)グラフェンが得られる。または、還元性溶液に浸し、酸化グラフェンを還元する方法がある。
【0092】
なお、Hummers法では、グラファイトを硫酸で処理するため、酸化グラファイトは、スルホン基等も結合しているが、この分解(脱離)は、300℃前後で開始する。したがって、加熱により酸化グラフェンを還元する方法において、酸化グラフェンの還元は300℃以上で行うことが好ましい。
【0093】
上記還元処理において、隣接するグラフェン同士が結合し、より巨大な網目状あるはシート状となる。また、当該還元処理において、酸素の脱離により、グラフェン内には間隙が形成される。更には、グラフェン同士が基体の表面に対して、平行に重なり合う。この結果、グラフェンの層間及びグラフェン内の間隙においてイオンの移動が可能なグラフェンが形成される。
【0094】
また、複数の突起101の間には隙間が設けられており、さらに、複数の突起101をグラフェンが覆うため、充電により負極活物質が膨張しても、突起同士の接触を低減することが可能であると共に、突起が剥離してもグラフェンにより、突起の崩落を防ぐことができる。または崩落しても、グラフェンにより突起が分断されずにすむ。そしてグラフェンが導電性を有するため、崩落した突起がキャリアイオンを吸蔵放出すれば、負極として使用できる。
【0095】
また、蓄電装置において、活物質表面が電解質と接触することにより、電解質及び活物質が反応し、活物質の表面に被膜が形成される。当該被膜はSEIと呼ばれ、活物質と電解質の反応を和らげ、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該被膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解質間のキャリアイオン伝導性の低下、電解質の消耗などの問題がある。
【0096】
複数の突起101をグラフェン120で被覆することで、当該被膜の膜厚の増加を抑制することが可能であり、キャリアイオン伝導性の低下、電解質の消耗を抑制することができる。
【0097】
また、グラフェンは導電性が高いため、シリコンをグラフェンで被覆することで、グラフェンにおいて電子の移動を十分早くすることができる。また、グラフェンは厚さの薄いシート状であるため、複数の突起101をグラフェンで覆うことで、活物質層に含まれる活物質量をより多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトより容易となる。これらの結果、キャリアイオンの伝導性を高めることができ、活物質であるシリコン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンが活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた蓄電装置において、急速充放電が可能である。
【0098】
なお、複数の突起101とグラフェン120の間に、突起を覆うような酸化シリコン層を有してもよい。複数の突起101上に酸化シリコン層を設けることで、蓄電装置の充電時に酸化シリコン中にキャリアであるイオンが挿入される。この結果、LiSiO、NaSiO、KSiO等のアルカリ金属シリケート、CaSiO、ScSiO、BaSiO等のアルカリ土類金属シリケート、BeSiO、MgSiO等のシリケート化合物が形成される。これらのシリケート化合物は、キャリアイオンの移動パスとして機能する。また、酸化シリコン層を有することで、複数の突起101の膨張を抑制することができる。これらのため、充放電容量を維持しつつ、複数の突起101の崩壊を抑えることができる。なお、充電の後、放電しても、酸化シリコン層において形成されたシリケート化合物から、キャリアイオンとなる金属イオンは全て放出されず、一部残存するため、酸化シリコン層は、酸化シリコン及びシリケート化合物の混合層となる。
【0099】
また、当該酸化シリコン層の厚さを2nm以上10nm以下とすることが好ましい。酸化シリコン層の厚さを2nm以上とすることで、充放電による複数の突起101の膨張を緩和することができる。また、酸化シリコン層の厚さ10nm以下であると、キャリアとなるイオンの移動が容易であり、充放電容量の低下を妨げることができる。酸化シリコン層を複数の突起101上に設けることで、充放電における複数の突起101の膨張及び収縮を緩和し、複数の突起101の崩壊を抑制することができる。
【0100】
このように充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極を提供することができる。
【0101】
(実施の形態3)
本実施の形態では、充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極の構造及びその作製方法について、図7を用いて説明する。本実施の形態で説明する負極は、実施の形態1と比較して、集電体を有する構成で異なり、さらにグラフェンを設けた構成も説明する。
【0102】
図7(A)は負極活物質構造体を有する負極の断面図である。負極は、集電体130上に複数の突起101を有する負極活物質構造体と、梁104とを有する。負極活物質構造体は、複数の突起101の下側に共通部102を有する。すなわち、図7(A)において、負極は、集電体130と、複数の突起101及び共通部102を有する負極活物質構造体と、梁104とを有する。
【0103】
図7(B)は集電体130上の複数の突起101及び梁104を示す断面図である。複数の突起101の下側には共通部102がなく、集電体130に複数の突起101を設ける。すなわち、図7(B)において、負極は、集電体130と、複数の突起101を有する負極活物質構造体と、梁104とを有する。
【0104】
集電体130は、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、アルミニウム、銅、チタン等に代表される金属、及びこれらの合金など、導電性の高い材料を用いることができる。なお、集電体130として、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることが好ましい。また、集電体130として、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
【0105】
集電体130は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
【0106】
図7(A)(B)の構成に対して、実施の形態2のようにグラフェンを設けるとよい。例えば、図7(B)の構成に対してグラフェンを設けた構成を図11に示す。図11において、負極は、集電体130と、複数の突起101を有する負極活物質構造体と、梁104と、グラフェン120とを有する。
【0107】
図11(A)は、集電体130上に複数の突起101を設け、複数の突起101を覆うグラフェン120を設けた構成である。グラフェン120は複数の突起101の間において、集電体130の表面を覆う。梁104は、グラフェン120を介して、複数の突起101上に設けられている。複数の突起101が集電体130から剥離することを抑制できる。
【0108】
図11(B)は、集電体130上に複数の突起101を設け、複数の突起101上に梁104を設け、複数の突起101の側面から梁104の上面にわたってグラフェン120が設けられている。グラフェン120は複数の突起101の間において、集電体130の表面を覆う。複数の突起101が集電体130から剥離することを抑制できる。
【0109】
図11(C)は、集電体130上に複数の突起101を設け、複数の突起101上に梁104を設け、複数の突起101の少なくとも側面をグラフェン120が覆う。グラフェン120は複数の突起101の間において、集電体130の表面を覆う。複数の突起101が集電体130から剥離することを抑制できる。
【0110】
グラフェン120は集電体130の一部と接するため、グラフェン120において電子が流れやすくなり、キャリアイオン及びシリコンの反応性を高めることができる。
【0111】
また、集電体130としてシリサイドを形成する金属材料を用いる場合、集電体130において、複数の突起101と接する側にシリサイド層が形成される場合がある。例えば、集電体130にシリサイドを形成する金属材料を用いると、チタンシリサイド、ジルコニウムシリサイド、ハフニウムシリサイド、バナジウムシリサイド、ニオブシリサイド、タンタルシリサイド、クロムシリサイド、モリブデンシリサイド、コバルシリサイド、ニッケルシリサイド等がシリサイド層として形成される。
【0112】
本実施の形態に示す負極は、集電体130を支持体としている。このため、集電体130が箔状、網状等の可撓性を有する場合、可撓性を有する負極を作製することができる。
【0113】
このような負極は、集電体130上に、負極活物質として機能するシリコン層を形成する。次に、シリコン層に対して実施の形態1と同様に、マスクを用いてエッチングし、複数の突起101を形成することができる。
【0114】
シリコン層は、CVD法、スパッタリング法、蒸着法等を適宜用いて形成することができる。シリコン層としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または非晶質シリコンを用いることができる。なお、シリコン層は、リンが添加されたn型シリコン層、ボロンが添加されたp型シリコン層としてもよい。
【0115】
このように充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極を提供することができる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では、蓄電装置の正極構造及び作製方法について説明する。
【0117】
図9(A)は正極311の断面図である。正極311は、正極集電体307上に正極活物質層309が形成される。
【0118】
正極集電体307は、白金、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス等の導電性の高い材料を用いることができる。また、正極集電体307は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0119】
正極活物質層309は、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn、V、Cr、MnO等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0120】
または、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物(一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を用いることができる。一般式LiMPOの代表例としては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0121】
または、一般式Li(2−j)MSiO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiOの代表例としては、Li(2−j)FeSiO、Li(2−j)NiSiO、Li(2−j)CoSiO、Li(2−j)MnSiO、Li(2−j)FeNiSiO、Li(2−j)FeCoSiO、Li(2−j)FeMnSiO、Li(2−j)NiCoSiO、Li(2−j)NiMnSiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FeNiCoSiO、Li(2−j)FeNiMnSiO、Li(2−j)NiCoMnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0122】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、正極活物質層309として、上記リチウム化合物及びリチウム含有複合酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0123】
図9(B)は、正極活物質層309として、キャリアイオンの吸蔵放出が可能な粒子状の正極活物質321と、当該正極活物質321の複数を覆いつつ、当該正極活物質321が内部に詰められたグラフェン323で構成される正極活物質層309の平面図である。複数の正極活物質321の表面を異なるグラフェン323が覆う。また、一部において、正極活物質321が露出していてもよい。なお、グラフェン323は、実施の形態1に示すグラフェン120を適宜用いることができる。
【0124】
正極活物質321の粒径は、20nm以上100nm以下が好ましい。なお、正極活物質321内を電子が移動するため、正極活物質321の粒径はより小さい方が好ましい。
【0125】
また、正極活物質321の表面にグラファイト層が被覆されていなくとも十分な特性が得られるが、グラファイト層が被覆されている正極活物質とグラフェンを共に用いると、キャリアが正極活物質間をホッピングし、電流が流れるためより好ましい。
【0126】
図9(C)は、図9(B)の正極活物質層309の一部における断面図である。正極活物質321、及び該正極活物質321を覆うグラフェン323を有する。グラフェン323は断面図においては線状で観察される。同一のグラフェンまたは複数のグラフェンにより、複数の正極活物質を内包する。即ち、同一のグラフェンまたは複数のグラフェンの間に、複数の正極活物質が内在する。なお、グラフェンは袋状になっており、該内部において、複数の正極活物質を内包する場合がある。また、グラフェンに覆われず、一部の正極活物質が露出している場合がある。
【0127】
正極活物質層309の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正極活物質層309の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0128】
なお、正極活物質層309には、グラフェンの体積の0.1倍以上10倍以下のアセチレンブラック粒子や1次元の拡がりを有するカーボン粒子(カーボンナノファイバー等)のバインダーを有してもよい。
【0129】
なお、正極活物質においては、キャリアとなるイオンの吸蔵により体積が膨張するものがある。このため、充放電により、正極活物質層が脆くなり、正極活物質層の一部が崩落してしまい、この結果蓄電装置の信頼性が低下する。しかしながら、正極活物質が充放電により体積膨張しても、当該周囲をグラフェンが覆うため、グラフェンは正極活物質の分散や正極活物質層の崩落を妨げることが可能である。即ち、グラフェンは、充放電にともない正極活物質の体積が増減しても、正極活物質同士の結合を維持する機能を有する。
【0130】
また、グラフェン323は、複数の正極活物質と接しており、導電助剤としても機能する。また、キャリアイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質321を保持する機能を有する。このため、正極活物質層にバインダーを混合する必要が無く、正極活物質層当たりの正極活物質量を増加させることが可能であり、蓄電装置の充放電容量を高めることができる。
【0131】
次に、正極活物質層309の作製方法について説明する。
【0132】
粒子状の正極活物質及び酸化グラフェンを含むスラリーを形成する。次に、正極集電体上に、当該スラリーを塗布した後、実施の形態2に示すグラフェンの作製方法と同様に、還元雰囲気での加熱により還元処理を行って、正極活物質を焼成すると共に、酸化グラフェンに含まれる酸素を脱離させ、グラフェンに間隙を形成する。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て還元されず、一部の酸素はグラフェンに残存する。以上の工程により、正極集電体307上に正極活物質層309を形成することができる。この結果、正極活物質層の導電性が高まる。
【0133】
酸化グラフェンは酸素を含むため、極性溶媒中では負に帯電する。この結果、酸化グラフェンは互いに分散する。このため、スラリーに含まれる正極活物質が凝集しにくくなり、焼成による正極活物質の粒径の増大を低減することができる。このため、正極活物質内の電子の移動が容易となり、正極活物質層の導電性を高めることができる。
【0134】
なお、図10に示すように、正極311の表面にスペーサ331を設けてもよい。図10(A)はスペーサを有する正極の斜視図であり、図10(A)の線A−Bの断面図を図10(B)に示す。
【0135】
図10(A)(B)に示すように、正極311は、正極集電体307上に正極活物質層309が設けられる。また、正極活物質層309上にスペーサ331が設けられる。
【0136】
スペーサ331は、絶縁性を有し、且つ電解質と反応しない材料を用いて形成することが可能であり、代表的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミド、の有機材料、ガラスペースト、ガラスフリット、ガラスリボン等の低融点ガラスを用いることができる。スペーサ331を正極311上に設けることで、後に形成する蓄電装置において、セパレータが不要である。この結果、蓄電装置の部品数を削減することが可能であり、コストを削減できる。
【0137】
スペーサ331は、平面形状を格子状、円または多角形の閉ループ状等の、一部の正極活物質層309を露出させる形状とすることが好ましい。この結果、正極及び負極の接触を防ぐと共に、正極及び負極の間のキャリアイオンの移動を促すことができる。
【0138】
スペーサ331の厚さは、1μm以上5μm以下、好ましくは2μm以上3μm以下とすることが好ましい。この結果、従来の蓄電装置のように、正極及び負極の間に厚さ数十μmのセパレータを設けた場合と比較して、正極及び負極の間隔を狭めることが可能であり、正極及び負極の間のキャリアイオンの移動距離を短くできる。このため、蓄電装置内に含まれるキャリアイオンを充放電に有効活用できる。
【0139】
スペーサ331は、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて形成することができる。
【0140】
(実施の形態5)
本実施の形態では、蓄電装置の構造及び作製方法について説明する。
【0141】
本実施の形態の蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池の一形態について図13を用いて説明する。ここでは、リチウムイオン二次電池の断面構造について、以下に説明する。
【0142】
図13は、リチウムイオン二次電池の断面図である。
【0143】
リチウムイオン二次電池400は、負極集電体401及び負極活物質構造体を有する負極活物質層403で構成される負極405と、正極集電体407及び正極活物質層409で構成される正極411と、負極405及び正極411で挟持されるセパレータ413とで構成される。なお、セパレータ413中には電解質415が含まれる。また、負極集電体401は外部端子417と接続し、正極集電体407は外部端子419と接続する。外部端子419の端部はガスケット421に埋没されている。即ち、外部端子417、419は、ガスケット421によって絶縁化されている。
【0144】
負極405は、実施の形態1、実施の形態2、又は実施の形態3で示した負極の構造を用いて形成すればよい。
【0145】
正極集電体407及び正極活物質層409はそれぞれ、本実施の形態に示す正極集電体307及び正極活物質層309を適宜用いることができる。
【0146】
セパレータ413は、絶縁性の多孔体を用いる。セパレータ413の代表例としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン等がある。
【0147】
なお、正極411として、図10に示すように、正極活物質層上にスペーサを有する正極を用いる場合は、セパレータ413を設けなくともよい。
【0148】
電解質415の溶質は、キャリアイオンであるリチウムイオンを有する。電解質の溶質の代表例としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSON等のリチウム塩がある。
【0149】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、電解質415の溶質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0150】
また、電解質415の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解質415の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解質415の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まる。また、リチウムイオン二次電池400の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解質415の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0151】
また、電解質415として、LiPO等の固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いると、セパレータを用いなくともすむ。
【0152】
外部端子417、419は、ステンレス鋼板、アルミニウム板などの金属部材を適宜用いることができる。
【0153】
なお、本実施の形態では、リチウムイオン二次電池400として、ボタン型リチウムイオン二次電池を示したが、封止型リチウムイオン二次電池、円筒型リチウムイオン二次電池、角型リチウムイオン二次電池等様々な形状のリチウムイオン二次電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0154】
次に、本実施の形態に示すリチウムイオン二次電池400の作製方法について説明する。
【0155】
実施の形態1及び本実施の形態に示す作製方法により、適宜、負極405及び正極411を作製する。
【0156】
次に、負極405、セパレータ413、及び正極411を電解質415に含浸させる。次に、外部端子417に、負極405、セパレータ413、ガスケット421、正極411、及び外部端子419の順に積層し、「コインかしめ機」で外部端子417及び外部端子419をかしめてコイン型のリチウムイオン二次電池を作製することができる。
【0157】
なお、外部端子417及び負極405の間、または外部端子419及び正極411の間に、スペーサ、及びワッシャを入れて、外部端子417及び負極405の接続、並びに外部端子419及び正極411の接続をより高めてもよい。
【0158】
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
【0159】
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0160】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
【0161】
図15に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図15において、表示装置5000は、本発明の一態様に係る蓄電装置5004を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置5000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体5001、表示部5002、スピーカー部5003、蓄電装置5004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置5004は、筐体5001の内部に設けられている。表示装置5000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5004を無停電電源として用いることで、表示装置5000の利用が可能となる。
【0162】
表示部5002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0163】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0164】
図15において、据え付け型の照明装置5100は、本発明の一態様に係る蓄電装置5103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置5100は、筐体5101、光源5102、蓄電装置5103等を有する。図15では、蓄電装置5103が、筐体5101及び光源5102が据え付けられた天井5104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5103は、筐体5101の内部に設けられていても良い。照明装置5100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5103を無停電電源として用いることで、照明装置5100の利用が可能となる。
【0165】
なお、図15では天井5104に設けられた据え付け型の照明装置5100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井5104以外、例えば側壁5105、床5106、窓5107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0166】
また、光源5102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0167】
図15において、室内機5200及び室外機5204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置5203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機5200は、筐体5201、送風口5202、蓄電装置5203等を有する。図15では、蓄電装置5203が、室内機5200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5203は室外機5204に設けられていても良い。或いは、室内機5200と室外機5204の両方に、蓄電装置5203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機5200と室外機5204の両方に蓄電装置5203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0168】
なお、図15では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0169】
図15において、電気冷凍冷蔵庫5300は、本発明の一態様に係る蓄電装置5304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫5300は、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303、蓄電装置5304等を有する。図15では、蓄電装置5304が、筐体5301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫5300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫5300の利用が可能となる。
【0170】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0171】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫5300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置5304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置5304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0172】
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、図16を用いて説明する。
【0173】
図16(A)及び図16(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図16(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0174】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0175】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0176】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0177】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0178】
また、図16(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0179】
図16(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図16(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示しており、バッテリー9635は、上記実施の形態で説明した蓄電装置を有している。
【0180】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0181】
また、この他にも図16(A)及び図16(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0182】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633を筐体9630の一面または二面に設けることで、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0183】
また、図16(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図16(C)にブロック図を示し説明する。図16(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図16(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0184】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0185】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0186】
また、上記実施の形態で説明した蓄電装置を具備していれば、図16に示した電気機器に特に限定されないことは言うまでもない。
【0187】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0188】
101 複数の突起
102 共通部
103 有機材料
104 梁
120 グラフェン
130 集電体
307 正極集電体
309 正極活物質層
311 正極
321 正極活物質
331 スペーサ
323 グラフェン
400 リチウムイオン二次電池
401 負極集電体
403 負極活物質層
405 負極
407 正極集電体
409 正極活物質層
411 正極
413 セパレータ
415 電解質
417 外部端子
419 外部端子
421 ガスケット
5000 表示装置
5001 筐体
5002 表示部
5003 スピーカー部
5004 蓄電装置
5100 照明装置
5101 筐体
5102 光源
5103 蓄電装置
5104 天井
5105 側壁
5106 床
5107 窓
5200 室内機
5201 筐体
5202 送風口
5203 蓄電装置
5204 室外機
5300 電気冷凍冷蔵庫
5301 筐体
5302 冷蔵室用扉
5303 冷凍室用扉
5304 蓄電装置
9630 筐体
9631 表示部
9034 切り替えスイッチ
9035 電源スイッチ
9036 切り替えスイッチ
9033 留め具
9038 操作スイッチ
9632a 領域
9632b 領域
9638 操作キー
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項2】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁と、
前記突起の側面を覆うグラフェンとを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項3】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁と、
前記突起の側面及び上面を覆うグラフェンとを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項4】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁と、
前記突起の側面から前記梁の上面にわたって覆うグラフェンとを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項5】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起が設けられた共通部と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項6】
複数の突起を有する負極活物質構造体と、
前記複数の突起が設けられた集電体と、
前記複数の突起のうち第1の突起と第2の突起とを上方で架橋する梁とを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項7】
請求項6において、
前記梁は、前記集電体の曲げる方向に対して垂直方向に設けられたことを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記第1の突起と前記第2の突起において、互いの軸が揃っていることを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、前記複数の突起は、シリコンを有することを特徴とする蓄電装置用負極。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載された負極を有する蓄電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−80699(P2013−80699A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205202(P2012−205202)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】