説明

蓄電装置

【課題】キャパシタセルの厚さ変化を許容しながら、キャパシタセルの振動を抑制できる蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、正電極および負電極並びにこれらの間に介在するセパレータを有し、互いの正電極および負電極が接合された複数のキャパシタセル4A,4Bと、複数のキャパシタセル4A,4Bと交互に積層された複数の放熱板5と、複数のキャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5を積層方向に押圧する押圧部8と、積層方向に沿って連続して形成され複数の放熱板5に当接する当接面部92A,95を有した振動抑制部材91とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種装置の駆動源としてエンジンおよび発電電動機が搭載されたハイブリッド型車両やハイブリッド型建設機械の開発が盛んである。これらハイブリッド型車両およびハイブリッド型建設機械において、発電電動機よって発電された電力を蓄える装置として、キャパシタ等の蓄電装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載の蓄電装置は、交互に積層された複数のキャパシタセルおよび放熱板を枠体内に収容し、これらキャパシタセルおよび放熱板をばねで積層方向に押圧することにより、キャパシタセルおよび放熱板を積層した状態で保持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−85168号公報
【特許文献2】特開2002−289458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャパシタセルは、充放電中の発熱に伴う熱膨張や経年劣化により、厚さが変化する。このため、キャパシタセルの厚さ変化に対応できるように放熱板の積層方向の変位を許容する必要がある。
一方、各キャパシタセルは、例えば、特許文献1に記載のかしめ端子を用いた圧着等の方法により、互いの電極同士が接合されている。このため、放熱板の積層方向の変位を許容すると、車両や建設機械の稼動時にキャパシタセルが積層方向に変位してキャパシタセルが振動し、電極同士の接合部に負荷がかかってしまう。電極同士の接合部に負荷がかかることを防ぐためには、各キャパシタセルの振動を抑制する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の蓄電装置では、キャパシタセルおよび放熱板の積層状態をばねの付勢力のみで維持しているため、蓄電装置が、例えば、建設機械のように大きな衝撃が加わるものに搭載されている場合、蓄電装置に衝撃が伝わることでキャパシタセルや放熱板が積層方向に容易に振動してしまう。このため、キャパシタセルやキャパシタセル同士の電極同士の接合部が、振動により破損してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、キャパシタセルの厚さ変化を許容しながら、キャパシタセルの振動を抑制できる蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る蓄電装置は、正電極および負電極並びにこれらの間に介在するセパレータを有し、互いの正電極および負電極が接合された複数のキャパシタセルと、前記複数のキャパシタセルと交互に積層された複数の放熱板と、前記複数のキャパシタセルおよび複数の放熱板を積層方向に押圧する押圧部と、前記積層方向に沿って連続して形成され前記複数の放熱板に当接する当接面部を有した振動抑制部材とを備えていることを特徴とする
【0009】
第2発明に係る蓄電装置では、前記振動抑制部材は、前記複数のキャパシタセルおよび放熱板を収容する筐体に固定されていることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る蓄電装置では、前記押圧部は、前記複数の放熱板を前記積層方向に貫通する通しボルトを備えていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る蓄電装置では、前記押圧部は、前記複数のキャパシタセルおよび放熱板を前記積層方向に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る蓄電装置では、前記振動抑制部材は、少なくとも前記当接面部が弾性部材で構成されるとともに、前記複数の放熱板に挿通されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、振動抑制部材が、積層方向に沿って連続して形成された当接面部で各放熱板に当接するため、当接面部での摩擦力により放熱板の振動を抑制することがきる。また、キャパシタセルの厚さ変化に伴って放熱板を定常的に変位させる必要がある場合は、当接面部に沿って放熱板を積層方向に変位させることができる。従って、放熱板に挟まれて当該放熱板との摩擦力により保持されているキャパシタセルの厚さ変化を許容しながら、キャパシタセルの振動を抑制すことができる。
【0014】
第2発明によれば、キャパシタセルおよび放熱板を収容するケースに振動抑制部材が固定されているため、放熱板が振動抑制部材を介して筐体に支持されることになる。これにより、放熱板がより強固に支持されるため、放熱板間に保持されたキャパシタセルの振動を確実に抑制することができる。
【0015】
第3発明によれば、押圧部は、複数の放熱板を積層方向に貫通する通しボルトを備えているので、放熱板が積層方向と直交する任意の方向に移動することを通しボルトにより規制することができる。このため、蓄電装置に大きな衝撃や振動が加わった場合に、通しボルトを積層方向以外の方向へのキャパシタセルの変位を抑制する補助手段として機能させることができる。
【0016】
第4発明によれば、押圧部は、複数のキャパシタセルおよび放熱板を積層方向に付勢する付勢部材を備えているため、キャパシタセルの厚さが変化した場合でも、放熱板の位置をキャパシタセルの厚さの変化に追従させることができ、キャパシタセルおよび放熱板が積層方向に押圧された状態を維持することができる。
【0017】
第5発明によれば、少なくとも当接面部が弾性部材で構成された振動抑制部材が放熱板に挿通されているため、積層方向および積層方向に直交する方向の放熱板のすべりを抑制することができるとともに、放熱板の振動を弾性部材により吸収することができる。従って、キャパシタセルの振動を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置の側面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】蓄電装置のキャパシタモジュールの平面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】図3のV−V断面図。
【図6】図3のVI矢視図。
【図7】蓄電装置のキャパシタセル、放熱板、および周辺部材の分解斜視図。
【図8】図3の部分拡大図。
【図9】図8のIX−IX断面の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、蓄電装置1は、天板21とともに蓄電装置1の筐体2を構成する有底角状のケース22と、ブラケット23を介して天板21の下面に固定されたキャパシタモジュール3とを備え、キャパシタモジュール3が冷却油に浸された状態で筐体2内に収容されている。
【0020】
筐体2は、図2に示すように、ケース22内部に水冷式の熱交換器24を備えている。この熱交換器24は、ケース22の長手方向に沿った側面部27の内面271に設けられている。このため、この側面部27には、上部側に熱交換器24の冷却水の流入口25が設けられ、下部側に冷却水の流出口26が設けられている。この熱交換器24により、筐体2内の冷却油の熱交換が行われて冷却油が冷却され、キャパシタモジュール3が冷却される。
【0021】
次に、キャパシタモジュール3の構成について説明する。なお、図3以降の図では、天板21を下にした状態でキャパシタモジュール3を示している。
図3から図6に示すように、キャパシタモジュール3は、2種類の複数のキャパシタセル4A,4B(図4参照)と、これらキャパシタセル4A,4Bと交互に積層された複数の放熱板5と、各キャパシタセル4A,4Bの充電時の電圧を均等化するための複数のバランス回路が形成されたバランス基板6と、各バランス基板6を放熱板5に固定するための基板固定部7と、複数のキャパシタセル4A,4Bおよび複数の放熱板5を積層方向に押圧する押圧部8と、各放熱板5に当接してキャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5の振動を抑制する振動抑制部9と、キャパシタセル4A,4Bと筐体2の外部あるいは内部に設けられた図示しないターミナルボックスとを接続するバスバー10A,10Bとを備えている
【0022】
図7に示すように、各キャパシタセル4A,4Bは、正電極41A,41Bと、負電極42A,42Bと、図示しないセパレータとを備え、各電極41A,41B,42A,42Bおよびセパレータが電解液に浸された状態で絶縁性の外装体に収容されている。正電極41A,41Bおよび負電極42A,42Bは、異なる金属で構成されている。具体的に、正電極41A,41Bはアルミニウムで構成され、負電極42A,42Bは銅で構成されている。これら正電極41A,41Bおよび負電極42A,42Bは、それぞれキャパシタセル4A,4Bにおける共通の端縁に並んで設けられ、当該端縁から正電極41A,41Bがキャパシタセル4A,4Bの面外方向の一方側に折曲し、負電極42A,42Bが他方側に折曲している。
【0023】
ここで、キャパシタセル4Aの正電極41Aとキャパシタセル4Bの負電極42B、並びにキャパシタセル4Bの正電極41Bとキャパシタセル4Aの負電極42Aとは、それぞれ互いに対向する位置に設けられている。また、互いに対向する正電極41Aと負電極42B、並びに正電極41Bと負電極42Aとは、それぞれ対向する電極側に折曲している。このようなキャパシタセル4A,4Bを、放熱板5を間に挟んで交互に配置することにより、導線を別途設けることなく正電極41A,41Bと負電極42A,42Bとを接続することができ、キャパシタセル4A,4Bを直列に接続することができる。その際、各電極41A,41B,42A,42Bは、アルミニウム製の正電極41A,41Bが露出するように、銅製の負電極42A,42Bに重ねられた状態で、異種金属接合手段としてのレーザーにより互いにレーザー溶接される。なお、銅製の負電極42A,42Bが露出した状態で、負電極42A,42Bを正電極41A,41Bにレーザー溶接することも可能である。
【0024】
バランス基板6は、平編銅線等の可撓性を有する2つの電極61,62を備えている。一方の電極61は、バランス基板6の長手方向に沿ってバランス基板6から延出している。他方の電極62は、バランス基板6の長手方向に垂直にバランス基板6から延出し、キャパシタセル4A,4Bの積層方向に折り曲げられている。これら電極61,62は、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bに接続されている。このバランス基板6は、各キャパシタセル4A,4Bに対して設けられ、充電時には、特定のキャパシタセル4A,4Bが過充電されることを防止して、各キャパシタセル4A,4Bの電圧を均等化する。すなわち、充電時は各キャパシタセル4A,4Bの容量抵抗がばらついて特定のキャパシタセル4A,4Bが過充電されてしまうため、一定電圧に達したキャパシタセル4A,4Bをバランス基板6によりバイパスすることで、特定のキャパシタセル4A,4Bが過充電されることを防止する。
【0025】
基板固定部7は、バランス基板6を収容するための基板収容部71と、放熱板5に係止される突起72が設けられた係止部73と、それぞれキャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bに対応する位置に形成された溝部75,76とを備えている。基板収容部71には、バランス基板6を保持するためのスリット74が設けられており、スリット74に嵌め込まれて基板収容部71内に収容されたバランス基板6は、エポキシ樹脂系接着剤等のモールド剤により、基板固定部7に固定される。溝部75,76では、冷却油が流れ込んでキャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bを冷却したり、各電極41A,41B,42A,42Bのレーザー溶接時のレーザー光が散乱したりできるようになっている。この基板固定部7は、バランス基板6が基板収容部71に収容された状態で、係止部73により放熱板5の一辺に係止され、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bを負電極42A,42B側から支持する。また、基板固定部7を介してのキャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bとの短絡や、放熱板5とバランス基板6およびその電極61,62との短絡を防止するため、基板固定部7は樹脂で形成されている。
【0026】
放熱板5は、アルミニウム製の板状部材で構成されている。この放熱板5は、当該放熱板5の両側端に設けられた切欠部51と、押圧部8の後述する通しボルト83を挿通するために放熱板5の略中心点に対して点対象となる位置に設けられた複数の(本実施形態では4つの)貫通孔52と、基板固定部7を係止するために係止部73に設けられた突起72の形状に対応する複数の貫通孔53とを備えている。この放熱板5において、図5に示すように、バランス基板6が固定された基板固定部7は、係止部73の突起72が貫通孔53に嵌まり込むことで放熱板5に係止されており、これによりバランス基板6が、基板固定部7を介して放熱板5と一体化されている。
【0027】
ここで、キャパシタセル4A,4Bは、前述のように放熱板5を間に挟んで交互に配置されているため、図8および図9に示すように、キャパシタセル4A,4Bの正電極41A,41Bおよび負電極42A,42Bは、基板固定部7上で互いに重なった状態で、バランス基板6を挟んだ一方側および他方側に互い違いに配置されている。また、バランス基板6が一体化された放熱板5を交互に表裏を反転して配置することにより、キャパシタセル4A,4Bを挟んで隣接する放熱板5同士で、バランス基板6からの電極61の延出方向を反転させている。この際、隣接する放熱板5同士で、バランス基板6に対する電極62の折り曲げ方向を反対にすることで、バランス基板6からの電極62の延出方向を一致させている。このような構成により、バランス基板6の電極61をキャパシタセル4Aの正電極41Aとキャパシタセル4Bの負電極42Bとの間に配置し、バランス基板6の電極62をキャパシタセル4Bの正電極41Bとキャパシタセル4Aの負電極42Aとの間に配置している。このようにして、バランス基板6の各電極61,62は、キャパシタセル4A,4Bの正電極41A,41Bと負電極42A,42Bとに直接的に接続され、それぞれレーザ溶接で一括して接合される。
【0028】
このため、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5は、各電極41A,41B,42A,42Bの接合部を基準として位置決めがされる。すなわち、図7において、放熱板5は、バランス基板6から長手方向に沿って延出する電極61がキャパシタセル4Bの負電極42Bの接合部に位置するように位置決めされる。さらに、キャパシタセル4Aは、正電極41Aの接合部が負電極42Bの接合部に位置するように位置決めされ、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5が所定の位置で積層される。この際、キャパシタセル4A,4Bは、放熱板5の両側端を貫通する通しボルト83間に配置される。
【0029】
図3から図6に示すように、押圧部8は、積層方向の両側に設けられた押え板81,82と、表面が電気絶縁処理され、押え板81,82や各放熱板5を貫通する通しボルト83と、付勢方向がキャパシタセル4A,4Bの積層方向と一致するように押え板81とブラケット23との間に設けられたばね84とを備えている。この押圧部8では、通しボルト83が押え板82の図示しない貫通孔、放熱板5の各貫通孔52、押え板81の貫通孔、ばね84、およびブラケット23の貫通孔に挿通された状態で、ナット85を通しボルト83に螺合することにより、ブラケット23をばね84側に締め付けている。すなわち、押圧部8は、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5を積層方向に押圧した状態で、放熱板5を積層方向に変位可能に保持している。
【0030】
図4および図5に示す振動抑制部9は、それぞれ放熱板5の積層方向に沿って連続して形成された第1振動抑制部材(振動抑制部材)91および第2振動抑制部材92を備えている。
図5に示す第1振動抑制部材91は放熱板5を挟んで2つ設けられ、各第1振動抑制部材91が各放熱板5の切欠部51に挿通されて放熱板5に当接している。この振動抑制部材91は、ボルト穴を有する支持部93が溶接された断面コ字状の本体94と、ゴムや樹脂等の弾性部材で構成され本体94の表面を覆う当接面部95とを備え、全ての放熱板5にわたって切欠部51に挿通された状態で、支持部93を介して天板21にボルト固定されている。つまり、第1振動抑制部材91は、放熱板5の切欠部51に挿通された水平方向の一辺と、放熱板5に両側端に当接する鉛直方向の一辺とにより、積層方向に直交する異なる二方向から放熱板5を保持している。
図5に示す第2振動抑制部材92は、ゴムや樹脂等の弾性部材で板状に形成されている。この第2振動抑制部材92は、天板21と放熱板5との間に放熱板5の積層方向にわたって設けられ、放熱板5側の表面部分で構成される当接面部92Aが各放熱板5に当接している。
【0031】
このような振動抑制部9によれば、蓄電装置1の外部からの衝撃や振動が放熱板5に伝わった場合でも、衝撃や振動を第2振動抑制部材92により吸収することができるので、放熱板5間に挟まれて放熱板5との摩擦力により保持されているキャパシタセル4A,4Bの振動を抑制することができる。また、第1振動抑制部材91の当接面部95および第2振動抑制部材92の当接面部92Aが、キャパシタセル4A,4Bの積層方向に沿って連続して形成されているため、キャパシタセル4A,4Bの厚さが変化した場合に、放熱板5の位置をキャパシタセル4A,4Bの厚さの変化に追従させることができる。
【0032】
バスバー10A,10Bは、熱収縮チューブでの被覆等により表面の電気絶縁処理が施されているとともに、ゴムや樹脂等の電気絶縁性部材11〜13(図3および図6参照)により天板21およびブラケット23に固定されている。ここで、押え板81,82にそれぞれ取り付けられた端子台14A,14Bには、それぞれ固定電極15A,15Bがねじ止めされており、この固定電極15A,15Bにバスバー10A,10Bの一端側が接続されている。また、固定電極15A,15Bは、積層方向の両側に位置するキャパシタセル4A,4Bの正電極41Bまたは負電極42Aに、別体のアルミニウム電極16または銅電極17(ともに図3参照)を介して接続されている。すなわち、キャパシタセル4Aの負電極42Aはアルミニウム電極16に接続され、アルミニウム電極16は固定電極15Aに接続され、固定電極15Aはバスバー10Aの一端に接続されている。また、キャパシタセル4Bの正電極41Bは銅電極17に接続され、銅電極17は固定電極15Bに接続され、固定電極15Bはバスバー10Bの一端に接続されている。
【0033】
バスバー10A,10Bの他端側は、筐体2の外部に延出して、図示しないターミナルボックスに接続される。そして、このターミナルボックス内のターミナルに、発電電動機やインバータ等の外部機器が接続される。さらに、バスバー10Aの一部は、第2振動抑制部材92に設けられたスリット92Bに挟み込まれて、当該第2振動抑制部材92に保持されている。
【0034】
以上のような構成を有する蓄電装置1において、キャパシタセル4A,4Bの正電極41A,41Bおよび負電極42A,42Bは、図9に示すように、基板固定部7上でアルミニウム製の正電極41A,41Bを外側にして互いに重ねられている。そして、正電極41A,41Bと負電極42A,42Bとの間には、バランス基板6の電極61,62が介在し、これら正電極41A,41Bおよび負電極42A,42B並びに電極61,62が、レーザー溶接により互いに接合されている。
【0035】
ここで、バランス基板6の電極61,62が可撓性を有するため、バランス基板6は、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bに対して積層方向に変位可能な状態で、各電極41A,41B,42A,42Bに接続されている。このため、蓄電装置1に外部からの衝撃や振動が伝わった場合でも、これらの衝撃や振動が放熱板5からバランス基板6を介して各電極41A,41B,42A,42Bに伝わるのを防止することができる。従って、各電極41A,41B,42A,42Bの接合部に作用する負荷を抑制することができる。
【0036】
また、基板固定部7は、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bと積層方向において離間しており、各電極41A,41B,42A,42Bと基板固定部7との間には、積層方向に隙間が設けられている。この隙間は、キャパシタセル4A,4Bが劣化して厚みが薄くなった場合でも、各電極41A,41B,42A,42Bと基板固定部7とが接触せず、かつ振動時に接触しない程度の寸法が確保されている。このため、蓄電装置1に衝撃や振動が伝わることで、放熱板5が積層方向に変位した場合でも、基板固定部7が各電極41A,41B,42A,42Bに接触することを防止することができるので、衝撃や振動が放熱板5から基板固定部7を介して各電極41A,41B,42A,42Bに伝わるのを防止することができる。さらに、放熱板5に伝わった衝撃や振動を第2振動抑制部材92により吸収することができるので、振動が放熱板5から各電極41A,41B,42A,42Bに伝わることを振動抑制部9によっても防止することができる。従って、各電極41A,41B,42A,42Bの接合部に作用する負荷を抑制することができる。
【0037】
また、キャパシタセル4A,4Bの厚さは、経年変化により薄くなるが、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5は、ばね84の弾性力により積層方向に付勢されているため、放熱板5の位置をキャパシタセル4A,4Bの厚さの変化に追従させることができ、放熱板5をキャパシタセル4A,4Bに押圧し続けることができる。このため、キャパシタセル4A,4Bの厚さが変化した場合でも、放熱板5との間の摩擦力によりキャパシタセル4A,4Bを確実に保持することができる。
【0038】
一方、キャパシタセル4A,4Bは、正電極41A,41B、負電極42A,42B、およびこれらの接合部が、ケース22の底面部28(図2参照)側に位置するように配置されている。キャパシタセル4A,4Bの正電極41A,41Bはアルミニウム製であるため、銅製の負電極42A,42Bと比べて発熱量が大きい。また、各電極41A,41B,42A,42Bの接合部は、電気抵抗が大きいため、キャパシタセル4A,4Bの中でも特に充放電時の発熱量が大きく、温度が上昇しやすい。
【0039】
ここで、図2に示すように、熱交換器24は、筐体2におけるキャパシタセル4A,4Bの積層方向軸の周囲の内面、本実施形態ではキャパシタセル4A,4Bの積層方向に平行な側面部27の内面271に設けられている。また、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bは、ケース22の底面部28の内面281に面しており、この内面281と各電極41A,41B,42A,42Bとは、所定距離離間している。このため、筐体2内の冷却油は、熱交換器24での熱交換により冷却されて比重が大きくなると、図2に矢印A,Bで示すように、冷却油が熱交換器24から底面部28側に流れ落ちて底面部28に沿って移動し、積層方向と直交する面内で各キャパシタセル4A,4B周りを循環する自然対流が発生する。この際、冷却されて温度が低下した冷却油が、先ずキャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bやその接合部を冷却するため、これらの部位の冷却を効果的に行うことができる。また、アルミニウム製の正電極41A,41Bは、負電極42A,42Bに対して、より底面部28側に配置され、負電極42A,42Bよりも冷却油に露出している。このため、冷却油が正電極41A,41Bの表面を流れることができ、負電極42A,42Bに比べて温度が上がりやすい正電極41A,41Bを十分に冷却することができる。また、基板固定部7の溝部75,76には冷却油が流れ込むため、この冷却油によりキャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bやバランス基板6の電極61,62をより効果的に冷却することができる。
【0040】
さらに、筐体2内に設けられた熱交換器24により冷却油を自然対流させるため、筐体2内に配管を引き回す必要がなく、蓄電装置1の構造を簡略化することができる。特に、蓄電装置1を含む各機器の配置スペースが少ない建設機械では、筐体2の内部あるいは外部にポンプ等による強制循環装置を設けることが困難なため、このような構成が有用となる。
【0041】
以上の蓄電装置1によれば、振動抑制部9が、積層方向に沿って連続して形成された当接面部92A,95で各放熱板5に当接するため、当接面部92A,95での摩擦力により放熱板5の振動を抑制することがきる。また、キャパシタセル4A,4Bの厚さ変化に伴って放熱板5を定常的に変位させる必要がある場合は、当接面部92A,95に沿って放熱板5を積層方向に変位させることができる。従って、キャパシタセル4A,4Bの厚さ変化を許容しながら、キャパシタセル4A,4Bの振動を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bや、バランス基板6の各電極61,62を、前記実施形態で用いた以外の材料で構成してもよい。
【0043】
前記実施形態では、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bおよびこれらの接合部が、ケース22の底面部28側に位置するように配置されていたが、電極41A,41B,42A,42Bおよび接合部の位置としてはこれに限られない。例えば、電極41A,41B,42A,42Bおよび接合部をケース22の側面部に面する位置に配置してもよい。
【0044】
前記実施形態では、アルミニウム製の正電極41A,41Bを銅製の負電極42A,42Bよりも冷却油に露出させていたが、この負電極42A,42Bが正電極41A,41Bよりも冷却油に露出するように配置してもよい。
また、前記実施形態では、キャパシタセル4A,4Bの各電極41A,41B,42A,42Bをレーザー溶接により接合していたが、他の方法で各電極41A,41B,42A,42Bを接合してもよい。
【0045】
前記実施形態では、放熱板5の切欠部51と振動抑制部9の第1振動抑制部材91とは、それぞれ2つ設けられていたが、切欠部51および第1振動抑制部材91の数はこれに限られず、それぞれ2つ以上設けてもよい。また、切欠部51のかわりに貫通孔を設け、この貫通孔に第1振動抑制部材91を挿通してもよい。
【0046】
前記実施形態では、第1振動抑制部材91は本体94および本体94の表面を覆う当接面部95を備えていたが、本体94そのものを弾性部材で構成して第1振動抑制部材91としてもよい。また、通しボルト83の周りを弾性部材で覆うことにより、この弾性部材および通しボルト83で第1振動抑制部材91を構成してもよい。さらに、第1振動抑制部材91の形状は、断面コ字状に限られず、例えば、第1振動抑制部材91を断面L字状や板状に形成してもよい。
【0047】
前記実施形態では、放熱板5の貫通孔52および押圧部8の通しボルト83は、それぞれ4つ設けられていたが、貫通孔52および通しボルト83の数は、これに限られない。要するに、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5を積層方向に押圧できればよく、貫通孔52および通しボルト83を、例えば、放熱板5の略中心点に対して点対象となる位置に2つ設けたり、4つ以上設けたりしてもよい。
【0048】
前記実施形態では、キャパシタセル4A,4Bおよび放熱板5を積層方向に付勢する付勢部材としてばね84が設けられていたが、付勢部材としてはこれに限られず、例えば、油圧または空圧で駆動されるベローズやシリンダ等を付勢部材として用いてもよい。
【0049】
前記実施形態では、熱交換器24は、ケース22の長手方向に沿った側面部27に設けられていたが、熱交換器24の位置としてはこれに限られず、例えば、熱交換器24を筐体2の天板21の内面に設けてもよい。熱交換器24を天板21に設けた場合には、熱交換器24で冷却された冷却油がキャパシタモジュール3の両側を通って底面部28側に流れ落ちる。このため、筐体2内における冷却油の温度分布をキャパシタモジュール3の左右で均等にすることができ、キャパシタセル4A,4Bおよび各電極41A,41B,42A,42Bを均等に冷却することができる。
さらに、前記実施形態では、熱交換器24は水冷式であったが、他の冷却方式のものであってもよい。
【0050】
前記実施形態では、筐体2内に冷却油が充満し、キャパシタモジュール3が冷却油に浸された状態で筐体2内に収容されていたが、キャパシタモジュール3を短絡させない冷却媒体であれば、冷却油以外のものをキャパシタモジュール3の冷却媒体として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、駆動源としてエンジンおよび発電電動機が搭載されたハイブリッド型の建設機械に利用できる他、電力のみで駆動する電気駆動型の建設機械や、建設機械以外の機械および車両にも利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…蓄電装置、2…筐体、4A,4B…キャパシタセル、5…放熱板、8…押圧部、9…振動抑制部、41A,41B…正電極、42A,42B…負電極、83…通しボルト、84…ばね(付勢部材)、91…第1振動抑制部材(振動抑制部材)、92A,95…当接面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極および負電極並びにこれらの間に介在するセパレータを有し、互いの正電極および負電極が接合された複数のキャパシタセルと、
前記複数のキャパシタセルと交互に積層された複数の放熱板と、
前記複数のキャパシタセルおよび複数の放熱板を積層方向に押圧する押圧部と、
前記積層方向に沿って連続して形成され前記複数の放熱板に当接する当接面部を有した振動抑制部材とを備えている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記振動抑制部材は、前記複数のキャパシタセルおよび放熱板を収容する筐体に固定されている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電装置において、
前記押圧部は、前記複数の放熱板を前記積層方向に貫通する通しボルトを備えている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電装置において、
前記押圧部は、前記複数のキャパシタセルおよび放熱板を前記積層方向に付勢する付勢部材を備えている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の蓄電装置において、
前記振動抑制部材は、少なくとも前記当接面部が弾性部材で構成されるとともに、前記複数の放熱板に挿通されている
ことを特徴とする蓄電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−186340(P2012−186340A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48878(P2011−48878)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)