説明

蓋付きケース

【課題】薄板状の荷物が蓋体とケース本体との間に挟まって損傷することを防ぐことが可能な蓋付きケースを提供する。
【解決手段】本発明の蓋付きケース10では、ケース本体11の底壁13と側壁14と間が複数のケース内突部20にて連絡されてケース本体11の強度アップが図られている。また、蓋体30には環状溝31に加えて内側溝35が形成されているので蓋体30の強度アップも図られている。そして、これら強度アップにより蓋体30及びケース本体11の変形が抑えられ、蓋体30とケース本体11との間の隙間の広がりも抑えられる。これにより、蓋体30とケース本体11との間にシートWが挟まって損傷することが防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面が開放した樹脂製のケース本体と、そのケース本体の上面開口を閉塞可能な樹脂製の蓋体とからなる蓋付きケースに関し、特にシート、フィルム等の薄板状の荷物を複数重ねて収容し、搬送するための蓋付きケースに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の蓋付きケースは、ケース本体の側壁の上端部から側方に上部環状フランジが張り出され、その上部環状フランジの上面に蓋体の外縁部を載置して蓋体をケース本体に組み付ける構造になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案公報2534050(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来の蓋付きケースでは、例えば、複数のシートを重ねて収容し、車両にて搬送した場合、車両の加減速時に、シートの束がケース本体の側壁を内側から押してケース本体を変形させることがあった。その結果、蓋体とケース本体との間の隙間が広がり、車両の加減速時に上側に反り上がったシートが蓋体とケース本体との間に挟まって損傷する事態が生じ得た。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、薄板状の荷物が蓋体とケース本体との間に挟まって損傷することを防ぐことが可能な蓋付きケースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る蓋付きケースは、上面が開放した樹脂製のケース本体と、ケース本体の上面開口を閉塞可能な樹脂製の蓋体とからなり、ケース本体の側壁の上端部から側方に上部環状フランジが張り出されると共に、蓋体の外縁部に、その蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させて上部環状フランジを受容可能な環状溝が形成された蓋付きケースにおいて、ケース本体内の底面の縁部全体に間隔をあけて配置され、ケース本体の底壁と側壁との間を連絡する複数のケース内突部が設けられ、ケース内突部の上面壁は、ケース本体の側壁より内側で、上部環状フランジと面一かつ平行になって延びた上段帯状壁と、上段帯状壁より下側で、ケース本体の側壁から上段帯状壁側に張り出した下段帯状壁と、上段帯状壁と下段帯状壁との間を連絡する段差壁とを備えてなり、ケース内突部の側壁の一部は、ケース本体の側壁を内側にオフセットした位置に配置されて隣り合ったケース内突部同士の間で面一になったオフセット壁とされ、蓋体の外縁寄り位置には、蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させて上段帯状部を受容可能な内側溝が形成されたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の蓋付きケースにおいて、隣り合ったケース内突部同士の間に上方から挿入されて、水平方向に移動不能に係合する複数のアタッチメントが備えられ、アタッチメントには、オフセット壁を内側にオフセットした位置に配置されて、隣り合ったアタッチメント同士の間で面一になった追加オフセット壁が備えられたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の蓋付きケースにおいて、ケース本体の下面から突出し、ケース本体を平坦な床面上に載置した際に床面に当接する複数の下面突部と、水平方向で下面突部の間に挟まれかつケース本体の側方に開放し、突片状の搬送ツールを側方から挿入可能なツール挿入空間と、蓋体の上面から突出し、蓋体の上にケース本体を載置した際に、そのケース本体を水平方向で位置決めすると共に、ツール挿入空間の側部開放口を閉塞しない位置に配置された位置決突部とを設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の蓋付きケースにおいて、蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなり、蓋体の横方向の中央部に配置されて、蓋体の縦方向の全体に亘って延びた縦長補強溝と、蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなり、蓋体の縦方向の中央部に配置されて、蓋体の横方向の全体に亘って延びた横長補強溝とを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の蓋付きケースにおいて、蓋体の外縁部に複数のクリップ係合部を設けると共に、それら複数のクリップ係合部に蓋体の側方から装着されて係合する複数の蓋固定クリップを設け、それら蓋固定クリップには、上部環状フランジの下面に重なって係合するフランジ係合片が備えられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1の構成によれば、ケース本体の底壁と側壁と間が複数のケース内突部により連絡されてケース本体の強度が増す。また、蓋体には環状溝に加えて内側溝が形成されているので蓋体の強度も増す。そして、これら強度の増加により蓋体及びケース本体の変形が抑えられ、それらの間の隙間の広がりも抑えられる。これにより、ケース本体内に複数の薄板状の荷物を重ねて収容した場合に、蓋体とケース本体との間に薄板状の荷物が挟まって損傷することを防ぐことができる。また、本発明の構成では、各ケース内突部のオフセット壁が薄板状の荷物の縁部に宛がわれて、それら荷物をケース本体内で位置決めすることができる。
【0011】
[請求項2の発明]
請求項2の構成では、隣り合ったケース内突部同士の間にアタッチメントを装着することで、アタッチメントの追加オフセット壁がケース内突部のオフセット壁より内側にオフセットした位置に配置される。これにより、比較的小さいサイズの薄板状の荷物を複数重ねて収容した際に、追加オフセット壁によりそれら比較的小さいサイズの薄板状の荷物を位置決めすることができる。
【0012】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、ケース本体を平坦な床面上に載置すると、ケース本体の下面から突出した複数の下面突部が床面に当接し、それら下面突部に挟まれたツール挿入空間がケース本体の側方に開放した状態になる。これにより、ツール挿入空間に突片状の搬送ツールを側方から挿入してケース本体を床面から上方に持ち上げることができる。また、蓋付きケースを複数積み上げた場合には、蓋体の位置決突部がその蓋体の上のケース本体を水平方向で位置決めする。そして、その位置決突部は、ツール挿入空間の側部開放口を閉塞しない位置に配置されているので、蓋付きケースを複数積み上げた状態でも、ケース本体の下面のツール挿入空間に突片状の搬送ツールを側方から挿入してケース本体を下側の蓋体から上方に持ち上げることができる。
【0013】
[請求項4の発明]
請求項4の構成のように、蓋体を補強するための縦長補強溝及び横長補強溝が、蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなるので、蓋体に補強用のリブを設けた場合に比べて、荷物に当接した際の応力が緩和され、荷物の損傷を防ぐことができる。
【0014】
[請求項5の発明]
請求項5の構成によれば、蓋体をケース本体に組み付け、蓋固定クリップを蓋体のクリップ係合部に装着すると、蓋固定クリップに備えたフランジ係合片がケース本体の上部環状フランジの下面に重ねられて係合し、蓋体の外縁部が上部環状フランジに固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の蓋付きケース10は、上面が開放しかつ平面形状が四角形のケース本体11と、そのケース本体11の上面開口12を閉塞可能な蓋体30とからなり、ケース本体11には複数のアタッチメント40が着脱可能に備えられ、蓋体30には複数の蓋固定クリップ50が着脱可能に備えられている。なお、これらケース本体11、蓋体30、アタッチメント40及び蓋固定クリップ50は、全て合成樹脂で構成されている。
【0016】
ケース本体11には、その側壁14の上端部から側方に張り出した上部環状フランジ15と、側壁14の下端部から側方に張り出した下部環状フランジ16とが備えられている。そして、上部環状フランジ15と下部環状フランジ16との間に、側壁14の外面から突出した複数の縦リブ17が差し渡されている。
【0017】
図2に示すように、ケース本体11の下面18には格子形の下面リブ19が形成され、その下面リブ19の下端部が、ケース本体11の下面18より下方に突出している。詳細には、下面リブ19は、ケース本体11の下面18のうち短手方向の中央で長手方向の略全領域に形成された第1下面リブ19Bと、短手方向の両側部で長手方向の中央と両端部とに形成された複数の第2下面リブ19Aとからなる。
【0018】
本実施形態では、これら複数の第2下面リブ19Aが、本発明に係る「下面突部」に相当し、本発明に係るツール挿入空間R1が、両側を第2下面リブ19A,19Aに挟まれかつ奥側を第1下面リブ19Bによって塞がれた状態でケース本体11の下面18の4箇所に形成されている。
【0019】
図1に示すように、ケース本体11内には、底面の縁部全体に複数のケース内突部20が間隔をあけて設けられている。ケース内突部20は、全体が略直方体状をなし、上面に段差部を備えている。具体的には、ケース内突部20の上面壁21は、ケース本体11の側壁14より内側で、上部環状フランジ15と面一かつ平行になって延びた上段帯状壁22と、上段帯状壁22より下側で、ケース本体11の側壁14から上段帯状壁22側に張り出した下段帯状壁23と、上段帯状壁22と下段帯状壁23との間を連絡する段差壁24とを備えてなる。そして、全てのケース内突部20の上段帯状壁22が、ケース本体11の上面開口12より小さい環状ラインL(図4参照)に沿って間欠的に並んでいる。
【0020】
なお、ケース内突部20は、ケース本体11における4つのコーナー部を避けて配置されている。
【0021】
ケース内突部20の側壁25は、上面壁21の縁部から垂下し、ケース本体11の底壁13及び側壁14と一体になっている。また、そのケース内突部20の側壁25の一部は、ケース本体11の側壁14を内側にオフセットした位置に配置されたオフセット壁26になっており、各ケース内突部20のオフセット壁26は、ケース本体11の底壁13における縦横の各辺で隣り合ったケース内突部20,20同士の間で面一になっている。さらに、ケース内突部20の側壁25のうちケース本体11の底壁13における縦横の各辺で隣り合ったケース内突部20,20同士の対向面には、縦溝27が形成されている。
【0022】
図1に示すように、ケース本体11の底面には、そのケース本体11の内側面から所定距離だけ内側にオフセットした位置に段差部が備えられ、その段差部より外側が若干低い陥没部13Aになり、段差部より内側が若干高い荷物載置部13Cになっている。また、陥没部13Aの底面には、ケース本体11の内側面と直交して延びた複数の底面突条13Bが形成されている。荷物載置部13Cは、全体が長方形になっており、その長短の各辺は、ケース内突部20のオフセット壁26より内側に位置している。また、ケース本体11の各コーナー部で隣り合った1対のケース内突部20,20と、荷物載置部13Cのコーナー部との間には、荷物載置部13Cと面一のコーナー支持部13Dが設けられている。コーナー支持部13Dは、全体として長方形の1角部を斜めにカットして斜辺とした五角形の平面形状になっている。そして、コーナー支持部13Dのうち斜辺を間に挟んで隣り合った各辺が、前記コーナー部で隣り合った1対のケース内突部20,20のオフセット壁26,26と一体になりかつ、それらオフセット壁26,26の側縁部同士の間にコーナー支持部13Dの斜辺が差し渡され、さらに、その斜辺と反対側の角部が荷物載置部13Cのコーナー部と一体になっている。また、コーナー支持部13Dのうち上記した各辺から内側に離れた位置には、矩形の陥没部13Eが形成されている。
【0023】
図3(A)に示すように、アタッチメント40は、上面が開放しかつ平面異形の筐体構造をなし、図5に示すように、底壁13の縦横の各辺で隣り合ったケース内突部20,20同士の間に上方から装着可能になっている。具体的には、図4に示すように、アタッチメント40は、隣り合ったケース内突部20,20の間隔と略同一の幅の幅狭部42と、その幅狭部42より幅広になった幅広部43とを一体に備えている。また、幅狭部42の両側面には係合突条41,41が備えられ、幅狭部42をケース内突部20,20の間に嵌合すると、アタッチメント40の係合突条41が縦溝27に係合し、アタッチメント40が水平方向に移動不能に固定される。この状態で、幅広部43における幅方向の両端部が、ケース内突部20のオフセット壁26の内側に重ねられた状態になる。
【0024】
また、アタッチメント40は、ケース本体11の側壁14側の端部からケース内突部20,20の上段帯状壁22,22に挟まれた部分の中間部までがケース内突部20の下段帯状壁23と同じ高さになっており、それ以外がケース内突部20の上段帯状壁22と同じ高さになっている。さらに、図3(B)に示すように、アタッチメント40の下面には、底面突条13Bとの干渉を避けるための溝44,44が形成されている。
【0025】
また、幅広部43のうち幅狭部42から最も離れた部分は、本発明に係る追加オフセット壁45になっている。その追加オフセット壁45は、図5に示すように、アタッチメント40をケース内突部20,20の間に装着した状態で、ケース内突部20のオフセット壁26から内側にオフセットした位置に配置されると共に、隣り合ったアタッチメント40,40同士の間で面一になる。
【0026】
蓋体30は、図1及び図2に全体が示されており、略均一の厚さの樹脂壁で構成され、その樹脂壁を部分的に溝形に屈曲させて補強した構造になっている。具体的には、図2に示すように、蓋体30の外縁部には、樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させて環状溝31が形成されている。そして、蓋体30をケース本体11に組み付けたときに、環状溝31の奥面に上部環状フランジ15が重ね合わされる(図10及び図13参照)。また、蓋体30の長手方向の中央部には、環状溝31と同様に蓋体30の樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなる1対の横長補強溝32,32が形成されて、蓋体30の短手方向の全体に亘って平行に延びている。さらに、蓋体30の短手方向の中央部には、環状溝31と同様に蓋体30の樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなる1対の縦長補強溝33,33が形成されて、蓋体30の長手方向の全体に亘って平行に延びている。
【0027】
図11、図12及び図14に示すように、蓋体30の上面のうち環状溝31及び横長補強溝32及び縦長補強溝33に底壁上には、位置決突部34が上方に向けて突出形成されている。位置決突部34は、環状溝31等の底壁をそれら底壁より幅狭の下面開放の溝形に屈曲させてなる。また、図7に示すように、横長補強溝32及び縦長補強溝33の底壁上の位置決突部34は、横長補強溝32及び縦長補強溝33の底壁全体に亘って形成されている。これに対し、環状溝31の底壁上の位置決突部34は、その環状溝31の底壁のうち蓋体30の短辺に沿った部分全体と、長辺に沿った部分の両端部と中央部とに形成されている。即ち、位置決突部34は、蓋体30の上にケース本体11を載置した場合に、そのケース本体11に備えたツール挿入空間R1(図2及び図12参照)の側部開放口を避けた位置に配置されている。また、蓋体30の上にケース本体11を載置した際に、そのケース本体11の下面リブ19と蓋体30の位置決突部34と水平方向で対向して、蓋体30とケース本体11とが水平方向で位置決めされるようになっている。
【0028】
図2に示すように、蓋体30の外縁寄り位置には、内側溝35が形成されている。内側溝35は、蓋体30の樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなる。また、内側溝35のうち環状溝31側の溝側壁は環状溝31と平行になって直線状に延びる一方、その反対側の溝側壁は、長手方向に沿って凹凸を繰り返し、環状溝31から比較的離れた離間部35Aと、環状溝31に比較的接近した接近部35Bとが交互に並べられた構造になっている。そして、ケース本体11にアタッチメント40を取り付けた状態で、蓋体30をケース本体11に取り付けると、ケース内突部20の上段帯状壁22とアタッチメント40の上端部とが環状溝31の奥面に重ねられる。このとき、ケース内突部20のオフセット壁26が内側溝35の接近部35Bに水平方向で隣接配置され、アタッチメント40の追加オフセット壁45が内側溝35の離間部35Aに水平方向で隣接配置される。
【0029】
図1に示すように、蓋体30の外縁部には、複数のクリップ係合部60が形成され、それらクリップ係合部60に蓋固定クリップ50が装着可能になっている。蓋固定クリップ50は、図8に示すように、水平方向に延びた係止突片51とフランジ係合片52とを上下に対向配置して備え、それら係止突片51とフランジ係合片52の基端部の間を連絡壁53で繋げた構造になっている。
【0030】
係止突片51は、フランジ係合片52の上方に配置されてフランジ係合片52より長くなっている。また、係止突片51の長手方向における中間部から先端寄り位置には、その両側縁に沿ってスリット56S,56Sが形成されている。そして、それらスリット56S,56Sにおける一端部が、フランジ係合片52の長手の中間部で側方に開放されて、係止突片51の両側縁部が片持ち梁状の可撓アーム56,56になっている。また、それら可撓アーム56,56の自由端には、側方に向けて係止突起57が突出形成されている。さらに、係止突片51の基端寄り位置には、上方に向けて指掛け突起55が突出形成されている。一方、フランジ係合片52は、平板状の突片の先端部を斜め下方に屈曲させた形状になっている。
【0031】
図8に示すように、蓋体30のうちクリップ係合部60を形成した部分では、位置決突部34が切除されて両側を位置決突部34,34に挟まれた谷部34Tが形成されている。その谷部34Tに配置されて両側の位置決突部34,34の間に差し渡された上方規制板61がクリップ係合部60の一部を構成している。そして、上方規制板61と蓋体30の上面との間の隙間に蓋固定クリップ50の係止突片51が挿入される。また、上記谷部34Tの下方には、蓋体30のうち環状溝31の側壁を貫通するようにスリット69が形成され、そこにフランジ係合片52が挿入される。
【0032】
蓋体30には、上記谷部34Tの延長上に突片受容室62が設けられている。突片受容室62は、蓋体30の上面から突出した壁部によって三方を囲まれ、上方規制板61の下方の隙間と連通している。また、突片受容室62の内側面には、図9に示すように、1対の抜止突起63,63が突出形成されている。そして、上方規制板61の下方の隙間を通過した係止突片51の先端部が突片受容室62内に収まり、その過程で可撓アーム56,56の弾性変形を乗り越えて係止突起57,57が抜止突起63,63に係止する。このとき、フランジ係合片52は、図10に示すように、上部環状フランジ15の下面に重ねられて係合し、これにより、蓋体30が上部環状フランジ15に固定される。
【0033】
なお、図9に示すように、係止突起57と抜止突起63の互いの係止面は、係止突片51の挿入方向に対して傾斜している。これにより、例えば、指掛け突起55に指を掛けて蓋固定クリップ50を強く引けば、それら係止突起57と抜止突起63の係止面の傾斜をガイドにして可撓アーム56,56が撓み、蓋固定クリップ50をクリップ係合部60から離脱させることができる。
【0034】
本実施形態の蓋付きケース10の構成に関する説明は以上である。次に、上記した蓋付きケース10の作用効果について説明する。図6に示すように、例えば、均一な四角形にカットされた複数の樹脂製のシートWの束をケース本体11に収容すると、各ケース内突部20のオフセット壁26がシートWの束の側面に宛がわれて、シートWの束がケース本体11内で位置決めされる。このとき、シートWの各角部の近傍がコーナー支持部13D(図1参照)によって下方から支持され、シートWの側縁部が陥没部13A(図1参照)の底面から浮いた状態になる。また、シートWの角部は、ケース本体11のコーナー部を挟んで隣り合ったケース内突部20,20の間に収まりかつ陥没部13Aの底面から浮いた状態になって変形が防がれる。
【0035】
ところで、比較的小さいサイズにカットされたシートWをケース本体11に収容する場合には、図5に示すように、ケース本体11のケース内突部20,20の間にそれぞれアタッチメント40を装着すればよい。すると、それらアタッチメント40の追加オフセット壁45がケース内突部20のオフセット壁26より内側に位置し、比較的小さいサイズのシートWの束もケース本体11内で位置決めすることができる。また、各アタッチメント40の追加オフセット壁45は、ケース本体11の底面における陥没部13Aと荷物載置部13Cとの間の段差部より外側に位置し、シートWの外縁部は、陥没部13Aの底面とアタッチメント40の下面との間の隙間から上方に浮いた状態になる。これにより、シートWの外縁部が、陥没部13Aの底面とアタッチメント40の下面との間の隙間に挟まることが防がれる。また、シートWの各角部寄り位置は、コーナー支持部13Dによって下方から支持され、シートWの角部は、コーナー部を挟んで隣り合ったアタッチメント40,40の間に収まりかつ、図4に示すようにコーナー支持部13Dに形成された陥没部13Eの上方に位置してその陥没部13Eの底面から浮いた状態になって変形が防がれる。
【0036】
ケース本体11にシートWの束を収容したら、それらシートWに汚れや傷がつかないようにするために、ケース本体11の上面に蓋体30を載置する(図7参照)。そして、蓋体30がケース本体11から外れないようにするために、蓋固定クリップ50を蓋体30のクリップ係合部60に装着する。すると、蓋固定クリップ50のフランジ係合片52が上部環状フランジ15の下面に重ねられて、蓋体30の外縁部が上部環状フランジ15に固定される(図10参照)。そして、このようにシートWを収容しかつ蓋体30を取り付けた状態の蓋付きケース10を、図12に示すように複数積み上げて搬送すればよい。
【0037】
ここで、蓋付きケース10の積み上げ及び積み下ろし作業は、例えば、ロボット(図示せず)を用いて行うことができる。具体的には、本実施形態の蓋付きケース10では、ケース本体11を床面上に載置したか、蓋体30の上に載置したかに拘わらず、ケース本体11の下方のツール挿入空間R1(図2及び図12参照)が、側方に開放した状態になる。そこで、それらツール挿入空間R1に挿入可能な突片状の搬送ツールTをロボットに取り付ければよい。その一例として、例えば、ロボットのアームの先端に互いに接離する1対の可動壁を有したハンドを取り付け、それら可動壁の互いの対向面に図2に示した突片状の搬送ツールTを1対ずつ平行に配置して固定する。そして、1対の可動壁を互いに離してそれらの間に蓋付きケース10を配置してから、1対の可動壁を互いに接近させて各搬送ツールTをケース本体11のツール挿入空間R1に挿入すればよい。これにより、蓋付きケース10を下方から搬送ツールTにて支持して持ち上げることができ、積み上げ及び積み下ろし作業を、ロボットを用いて行うことが可能になる。
【0038】
なお、ケース本体11のうち搬送ツールTが挿入されるツール挿入空間R1の上方にはケース内突部20が形成されているので、搬送時のケース本体11の変形も防がれる。
【0039】
さて、蓋付きケース10を車両で搬送した場合、車両の加減速時に、ケース本体11内でシートWの束が側壁14を押圧する場合が生じる。しかしながら、本実施形態の蓋付きケース10では、ケース本体11の底壁13と側壁14との間が複数のケース内突部20にて連絡されてケース本体11の強度アップが図られている。また、蓋体30には環状溝31に加えて内側溝35が形成されているので蓋体30の強度アップも図られている。そして、これら強度アップにより蓋体30及びケース本体11の変形が抑えられ、蓋体30とケース本体11との間の隙間の広がりも抑えられる。これにより、蓋体30とケース本体11との間にシートWが挟まって損傷することが防がれる。
【0040】
また、アタッチメント40を装着した場合には、アタッチメント40が蓋体30の内側溝35におけるに離間部35Aに収まり、内側溝35の内側面とアタッチメント40との間の隙間は、シートWの縁部に沿った方向で間欠的になる。これにより、シートWが万が一ばらけて上方に反り上がっても、上記隙間にシートWが入り込むことが確実に防がれる。
【0041】
さらに、本実施形態では、蓋体30を補強するための縦長補強溝33及び横長補強溝32が、蓋体30を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させた構造になっているので、蓋体30に例えば補強用のリブを設けた場合に比べて、荷物に当接した際の応力が緩和され、荷物の損傷を防ぐことができる。
【0042】
[第は2実施形態]
本実施形態の蓋付きケース10Vは、図15に示されており、本実施形態のケース本体11Vには、ケース内突部20の側面に縦溝27(図1参照)が設けられておらず、前記アタッチメント40が装着不能になっている点と、アタッチメント40が装着不能なことに対応して蓋体30Vの内側溝35Vが、ケース内突部20の上段帯状壁22との対向部分にのみ形成されている点とが異なる。
【0043】
この構成によれば、蓋体30Vをケース本体11Vに組み付けた状態で、蓋体30Vにおける内側溝35Vの内側面とケース内突部20との間の隙間が間欠的になるので、シートWが万が一ばらけて上方に反り上がっても、上記隙間にシートWが入り込むことが確実に防がれる。
【0044】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蓋付きケースの分解斜視図
【図2】蓋付きケースを下方から見た状態の斜視図
【図3】アタッチメントの斜視図
【図4】ケース本体にアタッチメントを装着した状態の一部拡大斜視図
【図5】ケース本体にアタッチメントを装着した状態の斜視図
【図6】ケース本体にシートの束を収容した状態の斜視図
【図7】ケース本体に蓋体を取り付けた状態の斜視図
【図8】蓋固定クリップ及びクリップ係合部の斜視図
【図9】蓋固定クリップ及びクリップ係合部の平面図
【図10】蓋固定クリップ及びクリップ係合部の側断面図
【図11】シートの束を収容した蓋付きケースの斜視図
【図12】シートの束を収容しかつ積み上げられた状態の蓋付きケースの斜視図
【図13】シートの束を収容した蓋付きケースの破断斜視図
【図14】シートの束を収容した蓋付きケースの破断斜視図
【図15】第2実施形態に係る蓋付きケースの分解斜視図
【符号の説明】
【0046】
10,10V 蓋付きケース
11,11V ケース本体
12 上面開口
13 底壁
14 側壁
15 上部環状フランジ
19A 第2下面リブ(下面突部)
20 ケース内突部
21 上面壁
22 上段帯状壁
23 下段帯状壁
24 段差壁
25 側壁
26 オフセット壁
30,30V 蓋体
31 環状溝
32 横長補強溝
33 縦長補強溝
34 位置決突部
35,35V 内側溝
40 アタッチメント
45 追加オフセット壁
50 蓋固定クリップ
60 クリップ係合部
R1 ツール挿入空間
T 搬送ツール
W シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放した樹脂製のケース本体と、前記ケース本体の上面開口を閉塞可能な樹脂製の蓋体とからなり、前記ケース本体の側壁の上端部から側方に上部環状フランジが張り出されると共に、前記蓋体の外縁部に、その蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させて前記上部環状フランジを受容可能な環状溝が形成された蓋付きケースにおいて、
前記ケース本体内の底面の縁部全体に間隔をあけて配置され、前記ケース本体の底壁と側壁との間を連絡する複数のケース内突部が設けられ、
前記ケース内突部の上面壁は、前記ケース本体の側壁より内側で、前記上部環状フランジと面一かつ平行になって延びた上段帯状壁と、前記上段帯状壁より下側で、前記ケース本体の側壁から前記上段帯状壁側に張り出した下段帯状壁と、前記上段帯状壁と前記下段帯状壁との間を連絡する段差壁とを備えてなり、
前記ケース内突部の側壁の一部は、前記ケース本体の側壁を内側にオフセットした位置に配置されて隣り合った前記ケース内突部同士の間で面一になったオフセット壁とされ、
前記蓋体の外縁寄り位置には、前記蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させて前記上段帯状部を受容可能な内側溝が形成されたことを特徴とする蓋付きケース。
【請求項2】
隣り合った前記ケース内突部同士の間に上方から挿入されて、水平方向に移動不能に係合する複数のアタッチメントが備えられ、
前記アタッチメントには、前記オフセット壁を内側にオフセットした位置に配置されて、隣り合った前記アタッチメント同士の間で面一になった追加オフセット壁が備えられたことを特徴とする請求項1に記載の蓋付きケース。
【請求項3】
前記ケース本体の下面から突出し、前記ケース本体を平坦な床面上に載置した際に前記床面に当接する複数の下面突部と、
水平方向で前記下面突部の間に挟まれかつ前記ケース本体の側方に開放し、突片状の搬送ツールを側方から挿入可能なツール挿入空間と、
前記蓋体の上面から突出し、前記蓋体の上に前記ケース本体を載置した際に、そのケース本体を水平方向で位置決めすると共に、前記ツール挿入空間の側部開放口を閉塞しない位置に配置された位置決突部とを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋付きケース。
【請求項4】
前記蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなり、前記蓋体の横方向の中央部に配置されて、前記蓋体の縦方向の全体に亘って延びた縦長補強溝と、
前記蓋体を構成する樹脂壁を下面開放の溝形に屈曲させてなり、前記蓋体の縦方向の中央部に配置されて、前記蓋体の横方向の全体に亘って延びた横長補強溝とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の蓋付きケース。
【請求項5】
前記蓋体の外縁部に複数のクリップ係合部を設けると共に、それら複数のクリップ係合部に前記蓋体の側方から装着されて係合する複数の蓋固定クリップを設け、それら蓋固定クリップには、前記上部環状フランジの下面に重なって係合するフランジ係合片が備えられたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の蓋付きケース。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−280059(P2008−280059A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124723(P2007−124723)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】