説明

蓋付き容器

【課題】収納物が減少したとしても、また、容体が上方に向かって拡開する形状であっても、開蓋時にヒンジ止めされている蓋に生ずるモーメントにより容体が転倒しやすくなることがなく、以て、収納物がこぼれ出るおそれがない蓋付き容器を提供することを課題とする。
【解決手段】容体1と、容体1にヒンジ部材5を介して連結される蓋体2とから成り、蓋体2は、ヒンジ部材5に開蓋時において下方向にスライド可能に支持される。ヒンジ部材5は中間部が屈曲伸展自在であって、その一端部が容体1側に固定され、他端部側は蓋体2に対する係止部11とされて蓋体2をスライド可能に支持する。ヒンジ部材5の一端部は、容体1の上縁部に嵌め付けられる上縁枠4に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓋付き容器に関するものであり、より詳細には、容体に対してヒンジ連結された蓋を有していて、その蓋が、容体が転倒しにくくなるようにスライド可能である蓋付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、テーマパーク、公園、映画館等において販売されるポップコーンの容器としては、上方に向かって拡開する容体と、該容体にヒンジ止めされた蓋とから成るプラスチック容器が用いられることが少なくない。この種容器は、ポップコーンに限らず、種々の食品や飲料、あるいは、他の様々な物品の収納用に用いられている。また、その素材もプラスチックに限られる訳ではなく、金属、木、竹、紙その他種々のものが用いられている。
【0003】
この種容器の場合、中身をより取り出しやすくするためには、蓋を開けた際、蓋が大きく、より垂直に近い状態にまで起立させて開くことが望ましく、更に蓋がその自重で閉じないようにするためには、蓋を垂直状態から少し外方向に傾いた状態にすることが必要となる。そのため、収納量の多寡に関わらず、容体の重量に対する蓋の重量比率がかなり低い場合にはさほど問題にはならないが、蓋に何らかの付加的要素を付加した場合のように、蓋の重量比率が高くなった場合には、ヒンジ止めされている蓋に生ずるモーメントにより容体が転倒しやすくなり、中身がこぼれやすくなる。殊に、容体が上方に向かって拡開する形状の容器の場合にその傾向は高いものとなり、より不安定な状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−307054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の蓋付き容器の場合は、収納物が取り出しに伴って減少するに従い、ヒンジ止めされている蓋に生ずるモーメントにより容体が転倒しやすくなり、収納物がこぼれ出やすくなり、殊に、容体が上方に向かって拡開する容器の場合にその傾向が高く、より不安定な状態となっていた。
【0006】
本発明は、かかる従来の蓋付き容器における問題を解消するためになされたもので、収納物が減少したとしても、また、容体が上方に向かって拡開する形状であっても、開蓋時にヒンジ止めされている蓋の重量モーメントにより容体が転倒しやすくなることがなく、以て、収納物がこぼれ出るおそれがない蓋付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、容体と、前記容体にヒンジ部材を介して連結される蓋体とから成り、前記蓋体は、前記ヒンジ部材に開蓋時において下方向にスライド可能に支持されていることを特徴とする蓋付き容器である。
【0008】
一実施形態においては、前記ヒンジ部材は中間部が屈曲伸展自在であって、その一端部が前記容体側に固定され、他端部側は前記蓋体に対する係止部とされて、前記蓋体をスライド可能に支持する。また、前記ヒンジ部材の一端部は、前記容体の上縁部に嵌め付けられる上縁枠に固定される。
【0009】
また、一実施形態においては、前記蓋体の裏面に一対の係止レールが形成され、前記係止部はその両側部が前記係止レールに摺動可能に係わり合うことにより、前記蓋体をスライド可能に支持する。そして、前記一対の係止レール間に適宜間隔置きに凹陥部が形成されると共に、前記係止部の中央部に、前記凹陥部に係合する弾性ツメが設けられる。
【0010】
更に一実施形態においては、前記蓋体の裏面に、閉蓋時に前記上縁枠の内側面に密着する嵌合枠が形成され、また、前記蓋体の上面に、前記容体の横倒し状態での使用時に前記容体を安定保持するための支持脚を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る蓋付き容器は、容体と、前記容体にヒンジ部材を介して連結される蓋体とから成り、前記蓋体は、前記ヒンジ部材に開蓋時において下方向にスライド可能に支持されるため、収納物が減少したとしても、また、容体が上方に向かって拡開する形状であったとしても、蓋体を下方にずらし動かすことにより重心を下方に移動させることができるので、蓋体の開蓋時に生ずるモーメントにより、容体が容易に転倒することがなく、転倒して収納物がこぼれ出るおそれがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蓋付き容器の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に係る蓋付き容器の一実施形態の開蓋時の斜視図である。
【図3】本発明に係る蓋付き容器の一実施形態の開蓋後に蓋体をスライドさせた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る蓋付き容器の一実施形態の使用形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る蓋付き容器は、容体1と、容体1に被着される蓋体2とから成り、通例、容体1と蓋体2は、共にプラスチック製とされる。容体1は、図示したような円筒(円錐)状のものに限られる訳ではなく、四角形、六角形等の角筒(角錐)状、その他任意の形状となし得る。容体1には、必要に応じ、適宜肩掛け用の吊下げ紐3が取り付けられる。
【0014】
図示した実施形態においては、蓋体2は、ヒンジ部材5を介し、容体1の上縁部に嵌め付けられる上縁枠4に連結されるようになっている。ヒンジ部材5は中間部が屈曲伸展自在であって、その一端部が上縁枠4に固定される。このように上縁枠4を配することなく、ヒンジ部材5の一端部を直接容体1の上縁部に固定することとしてもよい。
【0015】
蓋体2の裏面には、閉蓋時における容体1の密閉性を確保するために、上縁枠4の内側面に密着する嵌合枠7が形成される。また、蓋体2の外周部に、開蓋操作を容易にするための摘み8が1又は複数突設される。更に好ましい実施形態においては、蓋体2の上面に、容体1の横倒し状態での使用を許容することを考慮し、その際に容体1を安定状態に保持するように作用する、1又は複数の支持脚9を設ける。この支持脚9は、容器の装飾的要素ともなり得るものである。
【0016】
上述したように、ヒンジ部材5は中間部が屈曲伸展自在であって、その一端部が上縁枠4に固定されるが、他端部側は係止部11とされて、蓋体2をスライド可能に支持する。即ち、蓋体2の裏側に一対の係止レール12が形成され、係止部11の両側部が係止レール12に摺動可能に係り合うようにされる。例えば、係止レール12は、図示した例のように内方向に開口する溝を備えたものとされ、係止部11は、その溝内を摺動する薄板状にされる。なお、係止レール12の上端部は、係止部11の抜けを防止するために閉塞される。
【0017】
好ましい実施形態においては、蓋体2の裏側の係止レール12間に、適宜間隔置きに凹陥部13が設けられると共に、係止部11の中央部に、蓋体2の側に若干付勢状態にされる弾性ツメ14が形成され、弾性ツメ14の先端がいずれかの凹陥部13に係着するようにされる。
【0018】
なお、上記凹陥部13と弾性ツメ14の構成に代え、係止レール12の内側の係止部11当接部に凹陥部を設けると共に、係止部11の側の当該凹陥部当接部に、その凹陥部に係着する弾性ツメを設ける構成を採用することもできる。
【0019】
上記構成において、容体1内への収納物の収納は、蓋体2を開けて、あるいは、蓋体2を上縁枠4ごと容体1から外して行い、収納物の取り出しは、蓋体2を開けて行うことは、従来の蓋付き容器の場合と変わるところはない。そして、蓋体2を開ける場合には、蓋体2が収納物の取り出しに邪魔にならない位置、即ち、図2に示すような、垂直状態から少し外方向に傾いた位置にまで開くことも、従来の場合と同じである。
【0020】
このように、開蓋時に蓋体2が垂直状態から少し外方向に傾いた状態となるために、収納物が少なくなるに従って、蓋体2に生ずるモーメントが増して容器が傾倒しやすくなる。そこで本発明では、蓋体2を開けた際に、蓋体2を下方にずらし動かすことで容器の重心位置を下げることができるようにし、以て、容器の直立安定性を確保できるようにしているのである。
【0021】
即ち、本発明に係る容器における蓋体2は、その係止レール12にヒンジ部材5の係止部11が摺動可能に係合することによりヒンジ部材5に支持されているだけなので、蓋体2を開けて図2に示すように起立させた後下方に引くことにより、蓋体2を、その係止部11と係止レール12との係合関係を維持させつつ、下方にスライド移動させることができる(図3参照)。その際、弾性ツメ14が端部の凹陥部13に係合しているが、その係合力は強くないために容易に外れるので、それにより蓋体2のスライド移動が阻害されることはない。
【0022】
このように蓋体2を下位に位置させれば、その分容器全体の重心が下がるために、安定した起立状態を保持することが可能となる。そして、蓋体2を閉めるときは、蓋体2を図3に示す状態から引き上げて図2に示す状態に戻し、上縁枠4に被せるように回動させればよい。
【0023】
本発明においては、収納物の残量が少なくなった場合に、容器を倒した状態で使用することも想定している。即ち、図4に示すように、蓋体2を下方にスライドさせた状態で、蓋体2側を下にして容体を倒して使用する方法である。この使用方法の場合、蓋体2に設けた支持脚9が、容器の揺動防止機能を果たすので、容体1は安定状態に保持される。
【0024】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1 容体
2 蓋体
3 吊下げ紐
4 上縁枠
5 ヒンジ部材
7 嵌合枠
8 摘み
9 支持脚
11 係止部
12 係止レール
13 凹陥部
14 弾性ツメ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容体と、前記容体にヒンジ部材を介して連結される蓋体とから成り、前記蓋体は、前記ヒンジ部材に開蓋時において下方向にスライド可能に支持されていることを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は中間部が屈曲伸展自在であって、その一端部が前記容体側に固定され、他端部側は前記蓋体に対する係止部とされて、前記蓋体をスライド可能に支持する、請求項1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記ヒンジ部材の一端部は、前記容体の上縁部に嵌め付けられる上縁枠に固定されている、請求項2に記載の蓋付き容器。
【請求項4】
前記蓋体の裏面に一対の係止レールが形成され、前記係止部はその両側部が前記係止レールに摺動可能に係わり合うことにより、前記蓋体をスライド可能に支持する、請求項2に記載の蓋付き容器。
【請求項5】
前記一対の係止レール間に適宜間隔置きに凹陥部が形成されると共に、前記係止部の中央部に、前記凹陥部に係合する弾性ツメが設けられる、請求項2に記載の蓋付き容器。
【請求項6】
前記蓋体の裏面に、閉蓋時に前記上縁枠の内側面に密着する嵌合枠が形成される、請求項2乃至5のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項7】
前記蓋体の上面に、前記容体の横倒し状態での使用時に前記容体を安定保持するための支持脚を備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の蓋付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−148789(P2012−148789A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7574(P2011−7574)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(592188977)株式会社オリエンタルランド (12)
【Fターム(参考)】