説明

蓋付き容器

【課題】結露によって内面に付着した液体の保持力及び保持量の高い蓋体を備える蓋付き容器を提供する。
【解決手段】蓋体40は、塗布液を収容する収容部及び収容部から塗布液を導出する吸液性の塗布部を有する容器本体に装着されることにより塗布部を覆うものである。蓋体40の内面には、結露によって付着した液体の垂れ落ちを抑制するための抑制部50が形成され、抑制部50は、互いに平行に配置された複数の板状部51,52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に設けられた吸液性の塗布部を覆うように装着される蓋体を備えた蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布液を収容する収容部及びその収容部から塗布液を導出するスポンジやフェルト等の吸液性の塗布部を有する容器本体と、塗布部を覆うように容器本体に装着可能な蓋体と、を備える蓋付き容器が知られている。
【0003】
この種の蓋付き容器では、容器本体に蓋体が装着された状態において、塗布部から発生する蒸気の影響などによって蓋体の内面が結露することがある。結露によって蓋体の内面に付着した液体は、容器本体から蓋体が取り外された際に垂れ落ちることがあり、手や衣服などを汚してしまう要因となっていた。そこで、このような垂れ落ちを抑制するために、蓋体の内面に凹凸を形成した構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−7146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、蓋体の内面に凹凸を形成しただけでは、結露によって蓋体の内面に付着した液体の保持力及び保持量が十分でないため、結露によって生じる液体の量が多くなると、垂れ落ちを十分に抑制することができない。
【0006】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、結露によって内面に付着した液体の保持力及び保持量の高い蓋体を備える蓋付き容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の蓋付き容器は、塗布液を収容する収容部と、収容部から塗布液を導出する吸液性の塗布部と、を有する容器本体と、容器本体に装着されることにより塗布部を覆う蓋体と、を備える。そして、蓋体の内面には、結露により付着した液体の垂れ落ちを抑制するための抑制部が形成され、抑制部は、互いに平行に配置された複数の板状部を備える。
【0008】
このような蓋付き容器によれば、結露により蓋体の内面に付着した液体が、複数の板状部の間に形成される隙間において、隣り合う板状部の互いに対向する面で両側から挟まれる形で保持される。したがって、液体の保持力及び保持量を高めることが可能となり、液体の垂れ落ちを効果的に抑制することができる。
【0009】
ここで、抑制部は、互いに平行に配置された複数の第1の板状部と、互いに平行に配置された複数の第2の板状部とを備え、第1の板状部と、第2の板状部と、が交差するように配置された構成にしてもよい。このようにすれば、複数の板状部が同一方向にのみ形成された構造と比較して、液体の保持力を一層高めることができる。
【0010】
また、抑制部は、互いに平行に配置された板状部の間に形成される隙間の幅が、1〜3mmであることが好ましい。このようにすれば、必要な保持力が得られる範囲で保持量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】蓋付き容器の斜視図である。
【図2】(A)は蓋付き容器の正面図、(B)は側面図である。
【図3】容器本体の斜視図である。
【図4】(A)は容器本体の正面図、(B)は側面図である。
【図5】(A)は蓋付き容器の正面断面図、(B)は側面断面図である。
【図6】(A)は蓋体の上面図、(B)は一部が断面を示す正面図、(C)は一部が断面を示す側面図、(D)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態の蓋付き容器1の斜視図である。また、図2(A),(B)は、蓋付き容器1の正面図及び側面図である。
【0013】
この蓋付き容器1は、塗布液(本実施形態では毛髪着色料)を収容する容器としての機能と、収容された塗布液を毛髪へ塗布する塗布具としての機能と、を有するものであり、容器本体10と、容器本体10に対して着脱可能な蓋体40と、を備える。
【0014】
図3は、蓋体40を取り外した状態の容器本体10の斜視図である。また、図4(A),(B)は、容器本体10の正面図及び側面図である。一方、図5(A),(B)は、容器本体10に蓋体40が装着された状態の蓋付き容器1の正面断面図及び側面断面図(つまり、図2(A),(B)に対応する断面図)である。
【0015】
容器本体10は、塗布液を収容する収容部20と、収容部20に収容された塗布液を外部へ導出するとともに毛髪に塗布するための塗布具30と、を備える(図3等参照)。
収容部20は、概略楕円形状の底板及びその外周部から上方へ延びる概略楕円形状の筒状の側板によって形成される収容空間内に、塗布液を含浸した吸液性の吸液体(中綿)21が収容された樹脂(例えばポリプロピレン)製の部分である(図5(A),(B)等参照)。
【0016】
塗布具30は、収容部20の上方を封止する位置に設けられ、複数(この例では5本)の櫛歯31と、櫛歯31同士の間に位置するように櫛歯31と交互に設けられた複数(この例では4本)の塗布部32と、を備える(図4(A)等参照)。
【0017】
櫛歯31は、樹脂(例えばポリプロピレン)製の板状の突出部であり、互いに平行となる向きで一列に配置されている(図3等参照)。
塗布部32は、吸液性の材料によって形成された棒状の突出部(芯)であり、下部を吸液体21内に陥没侵入させた状態で組み付けられており、収容部20に収容された塗布液を上部から導出する(図5(A)等参照)。また、塗布部32は、櫛歯31の高さよりも低く形成されており、使用者の指などが直接に触れにくいように構成されている(図4(A)等参照)。
【0018】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、蓋体40が装着される側を容器本体10の上部としているが、容器本体10の保管状態においては、使用時において塗布液が塗布部32からスムーズに導出されやすくするように、蓋体40が下を向くように載置される。
【0019】
一方、図6(A)は蓋体40の上面図、図6(B)は一部(左半分)が断面を示す蓋体40の正面図、図6(C)は一部(左半分)が断面を示す蓋体40の側面図、図6(D)は蓋体40の下面図である。
【0020】
蓋体40は、容器本体10に装着されることにより塗布具30を覆うように構成されている(図5(A),(B)等参照)。塗布液には揮発性アルコール製剤が含まれており、容器本体10に蓋体40が装着された状態において、塗布部32から発生する蒸気の影響などによって蓋体40の内面が結露することがある。そして、前述のとおり、結露によって蓋体40の内面に付着した液体が、容器本体10から蓋体40が取り外された際に垂れ落ちると、手や衣服などを汚してしまう要因となってしまう。そこで、蓋体40の内面のうち、櫛歯31及び塗布部32の先端部と対向する面である概略楕円形状の天井面41には、結露によって付着した液体の垂れ落ちを抑制するための抑制部50が形成されている(図6(B)〜(D)等参照)。
【0021】
抑制部50は、長手方向(図6(D)でいう横方向)へ延びるように互いに平行に配置された複数(この例では2列)の長手板状部51と、長手方向と直交する方向(図6(D)でいう縦方向)へ延びるように互いに平行に配置された複数(この例では8列)の短手板状部52と、を備える。長手板状部51と短手板状部52とは、互いに交差(直交)するように配置されており、これにより、蓋体40の天井面41には複数のセル(小部屋)53が形成されている。ここで、長手板状部51同士の間や短手板状部52同士の間に形成される隙間の幅は、狭くするほど液体の保持力が向上し、広くするほど液体の保持量が向上する傾向があり、1〜3mm(より好ましくは1.5〜2mm)であれば、必要な保持力が得られる範囲で保持量を高めることができる。
【0022】
長手板状部51は、櫛歯31の先端に接触しない一定の高さに形成されている。一方、短手板状部52は、蓋体40の内側面42に近づくにつれて高さが高くなる(中央部に近づくにつれて高さが低くなる)湾曲形状に形成されている(図6(C)等参照)。これは、短手板状部52の高さを、櫛歯31の先端に接触しない範囲で、できるだけ高くするためである(図5(B)等参照)。さらに、短手板状部52は、長手方向の位置を櫛歯31とずらして形成されている(図5(A)等参照)。長手板状部51及び短手板状部52は、高さが3〜20mm(より好ましくは4.5〜10mm)、厚みが0.5〜5mm(より好ましくは0.8〜2mm)であれば、必要な保持量を得られやすくすることができる。
【0023】
ところで、蓋体40は、一部品で構成された樹脂(例えばポリプロピレン)製の成型品であり、上面43の中央位置がゲート44となっている(図6(A)等参照)。すなわち、一般に樹脂成型品には、成型時に金型へ樹脂を流し込むゲートが存在し、このゲート部分で成型物とランナーとが切り離される。切り離された部分にはその跡(突起)が残ることから、蓋体40においては、側面に比べて目立ちにくい上面にゲート44が配置されている。ただし、この種の金型は、樹脂が流入する圧力がゲート部分に最も強く加わることから、ゲート部分を細かく複雑な形状にすると、金型が破損しやすくなってしまうという問題がある。そこで、本実施形態の蓋体40では、ゲート44部分(平面視で中心部)に位置するセル53を囲む4つの辺(2列の長手板状部51及びセル53を挟む中央2列の短手板状部52によって形成される四角形の各辺)に、隣り合うセル53と連通する切欠き54が形成されている(図6(D)等参照)。このため、蓋体40を成型する金型において、ゲート44部分のセル53を形成するための四角柱状の突起が、隣接するセル53を形成するための突起と連結した形状となり、突起が孤立して形成される場合と比較して、金型を破損しにくくすることができる。
【0024】
また、蓋体40の内部空間は、開放部側(下部)と比較して、天井面41側(上部)が狭く形成されており、その段差部(肩部)には、結露によって蓋体40の内面に付着した液体をトラップするための複数のリブ45が形成されている。
【0025】
一方、容器本体10において蓋体40の開放部側の内面と対向する側面には、周方向に突条11が形成されている(図3等参照)。容器本体10に蓋体40が装着された状態においては、突条11が蓋体40の内面に当接することで、蓋体40のたわみが抑制されるとともに、結露によって蓋体40の内面に付着した液体の漏れが抑制される(図5(A),(B)等参照)。
【0026】
また、容器本体10のゲート12は、容器本体10の側面における突条11よりも下部の位置であって、蓋体40が装着されることにより蓋体40に覆われる位置(目立ちにくい位置)に形成されている。ゲート12の部分には成型物とランナーとが切り離された跡が残るが、突条11の方が高く形成されるため、蓋体40の着脱などに影響しないようにすることができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の蓋付き容器1によれば、結露により蓋体40の内面に付着した液体が、複数の板状部(長手板状部51及び短手板状部52)の間に形成される隙間において、隣り合う板状部の互いに対向する面で両側から挟まれる形で保持される。したがって、液体の保持力及び保持量を高めることが可能となり、液体の垂れ落ちを抑制することができる。
【0028】
しかも、抑制部50は、長手板状部51と短手板状部52とが交差するように配置されるため、複数の板状部が同一方向にのみ形成された構造と比較して、液体の保持力を一層高めることができる。
【0029】
一方、蓋体40は、ゲート44部分に位置するセル53を囲む4つの辺に切欠き54が形成されているため、蓋体40を成型するための金型を破損しにくくしつつ、ゲート44部分に位置するセル53自体を大きく形成する構成と比較して、液体の保持力を高めることができる。特に、天井面41が概略楕円形状(縦方向及び横方向で長さが異なる形状)であるため、円形状(縦方向及び横方向で長さが等しい形状)の場合と比較して、内側面42の一部にゲート44と近接する部分が存在するが、液体の保持力及び保持量が高いため、液体の垂れ落ちを抑制することができる。
【0030】
また、長手板状部51及び短手板状部52は、櫛歯31の先端に接触しない範囲でできるだけ高く形成されているため、結露により蓋体40の内面に付着した液体が櫛歯31へ流れることを防ぎつつ、液体の保持量を高めることができる。しかも、蓋体40内の段差部(肩部)にも複数のリブ45が形成されているため、結露によって蓋体40の内面に付着した液体の垂れ落ちを一層抑制することができる。
【0031】
加えて、蓋体40が一部品で構成されているため、複数部品を組み合わせて構成する場合と比較して、成型を容易にすることができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、塗布液として毛髪着色料を例示したが、これ以外の塗布液であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…蓋付き容器、10…容器本体、11…突条、12…ゲート、20…収容部、30…塗布具、31…櫛歯、32…塗布部、40…蓋体、41…天井面、42…内側面、43…上面、44…ゲート、45…リブ、50…抑制部、51…長手板状部、52…短手板状部、53…セル、54…切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する収容部と、前記収容部から前記塗布液を導出する吸液性の塗布部と、を有する容器本体と、
前記容器本体に装着されることにより前記塗布部を覆う蓋体と、
を備える蓋付き容器であって、
前記蓋体の内面には、結露により付着した液体の垂れ落ちを抑制するための抑制部が形成され、
前記抑制部は、互いに平行に配置された複数の板状部を備える
ことを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋付き容器であって、
前記抑制部は、互いに平行に配置された複数の第1の板状部と、互いに平行に配置された複数の第2の板状部と、を備え、
前記第1の板状部と、前記第2の板状部と、が交差するように配置される
ことを特徴とする蓋付き容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓋付き容器であって、
前記抑制部は、互いに平行に配置された板状部の間に形成される隙間の幅が、1〜3mmである
ことを特徴とする蓋付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35579(P2013−35579A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174268(P2011−174268)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】