説明

蓋体、容器内部の減圧構造及びスプレー容器

【課題】加圧ガスが充填されたスプレー容器の首部に着脱自在に構成された蓋体において、蓋体に内圧調整弁を設けて容器内圧を自動で調整できる機構を設ける。
【解決手段】天面(41)に開口部(42)を有し、容器の首部外周に螺合するキャップ(4)に、中央にバルブ(6)が組み込まれたマウンテンカップ(5)を取り付けて蓋体(3)を構成し、前記キャップ(4)の筒壁(43)内周面に形成されたねじ山(44)と内天面(45)との間に設けられた筒壁(43)内面から内方へ突出した突部(46)にマウンテンカップ(5)の周縁を嵌合させ、前記内天面(45)とマウンテンカップ(5)の上面部(51)との間にマウンテンカップ(5)を下方へ押圧する弾性体(8)を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウンテンカップを備えた蓋体とこれを用いた容器内部の減圧構造に関し、特に容器内部に原液とプロペラントガス(加圧ガス)を充填しておき、バルブを開くことにより内圧で原液を噴出させる加圧容器に装着される蓋体及び再充填可能なスプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の用途で利用されているスプレー容器として、近時の省資源化、廃棄物の削減化といった環境保全の要請から、内容液を使い切ったときは内容液を再充填して繰り返し使用できるものが利用されつつある。
【0003】
図6は繰り返し使用可能な従来のスプレー容器の一例を示し、これは、底部にエア注入バルブ100aを備えた缶100の首部100bに、外周にねじ山101aが形成された円筒状の口金101を一体に固着し、この口金101の上面に、中央にバルブ102aを組み込んだマウンテンカッ102の周縁を当接させて載せ、その上からキャップ103を装着し、キャップ103の筒壁内面に形成されたねじ山103aを口金101のネジ山101aに螺合して口金101の上面とキャップ103の天面間でマウンテンカップ102を挟んで固定し、キャップ103の脱着操作により内容液の充填を行えるようにしたものである(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、図7に示されるように、中央にバルブ104aが組み付けられたマウンテンカップ104の周縁を下方へ屈曲させて筒状に形成するとともにその筒壁外面にねじ山104bを設け、このマウンテンカップ104の筒壁内面を缶105の首部105aの外周に嵌合し、前記筒壁外周のねじ山104bにキャップ106を螺合し締め付けることによりマウンテンカップ104を缶105の首部105aに固定する構造の蓋体が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−156984号公報
【特許文献2】特開2001−294285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図6に示されたスプレー容器は、缶100の内容液を使い切ったときは、キャップ103の螺合を緩めてキャップ103を解離することにより、缶100内の加圧ガスが口金101とマウンテンカップ102及びキャップ103内面との間の隙間から外部に放出されて残圧処理がなされ、そのままキャップ103とマウンテンカップ102を缶100の首部100bから取り外して内溶液を再充填することが可能である。また、図7に示された構造の蓋体も、キャップ106の螺合による締め付けを緩めれば、マウンテンカップ104と缶105の嵌合が緩んで隙間ができ、その隙間から缶105内の加圧ガスを外部に放出させて残圧処理がなされる。
【0007】
このように、缶の首部にキャップを着脱自在に設けた従来のスプレー容器は、何れもキャップを解離することで缶内の圧力が調整されるように構成されており、換言すればキャップの締め付けを緩める操作を行わなければ缶内の圧力を調整することができないものであった。
そのため、例えばスプレー容器を高温の環境下に置いたり周囲温度が上昇したりして缶内の圧力が異常に高くなると、キャップを緩めない限り缶の内圧を調整できないため、缶内の高圧となった加圧ガスによって缶の首部に固定されたマウンテンカップとキャップを吹き飛ばしてしまうことがあった。
スプレー容器は、高い内圧に対する耐圧性と気密性を必要とするため、その大多数が剛性の高い缶で形成されているが、成形のし易さや加工コストの観点から合成樹脂製の容器の導入も検討されつつある。缶に代えて合成樹脂製の容器を用いた場合、加圧ガスが充填された容器の内圧が異常に高くなって容器を変形させたりキャップを吹き飛ばしたりする事故が生じないように、自動で内圧を調整する機構を具備していることが望まれる。
【0008】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、加圧ガスが充填されたスプレー容器の首部に着脱自在に構成された蓋体において、蓋体に内圧調整弁を設けて容器内圧を自動で調整できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明の蓋体は、天面に開口部を有し、容器の首部外周に螺合するキャップに、中央にバルブが組み込まれたマウンテンカップが取り付けられてなる蓋体であって、前記キャップの筒壁内周面に形成されたねじ山と内天面との間に設けられた筒壁内面から内方へ突出した突部にマウンテンカップの周縁が嵌合し、前記内天面とマウンテンカップの上面部との間にマウンテンカップを下方へ押圧する弾性体が設けられた構成を有することを特徴とする。
【0010】
前記構成の蓋体は、首部外周に形成されたねじ山に、ガス放出のための縦溝を設けた容器に装着して使用することができる。また、蓋体のキャップの筒壁内周面に形成されたねじ山に縦溝を設ければ、首部外周のねじ山に縦溝が設けられていない容器にも装着し使用することができる。
【0011】
これによれば、前記構成の蓋体を加圧ガスが充填された容器の首部に装着することにより、蓋体が容器内圧の調整弁として機能し、容器内部の減圧構造を構成する。
すなわち、蓋体を容器の首部外周に螺合することで容器内部は密閉されるが、容器内部の圧力が高まったときに、弾性体の押圧力に抗してマウンテンカップが上方へ変位し、これに伴いマウンテンカップの周縁と容器の首部上端及びキャップ筒壁内面との間に隙間ができ、この隙間と容器の首部外周のねじ山又はキャップ内周面のねじ山に形成された縦溝とを通して容器内部のガスが外部に放出され、キャップを緩めなくても容器内部が減圧する。容器内部が所定の圧力まで減圧したならば、弾性体により押されてマウンテンカップが下方へ変位し、再び容器内部は密閉状態となる。
【0012】
前記構成の蓋体は、首部外周に形成されたねじ山に縦溝が設けられてなる合成樹脂製のボトル容器とともに加圧ガスが充填されるスプレー容器を構成することができる。ボトル容器の底部にはエア注入バルブを設けてもよい。蓋体は、缶製の容器に取り付けてもよい。
キャップとマウンテンカップの間に装填される弾性体は、弾性ゴムや合成樹脂、鋼製のバネなど適宜な材料からなる弾性部材を用いることができ、その弾性は容器の内圧が上昇し、所定の圧力に達したときに厚み方向に潰れる縮退動作をなすように設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態のスプレー容器の外観図である。
【図2】図1の容器の蓋体と構成部材とボトル容器の首部を展開して示す要部断面図である。
【図3】ボトル容器の首部に蓋体を装着した状態の図1の容器の頂部を半面を断面で示した拡大図である。
【図4】容器内圧が高まって減圧処理がなされる状態の図1の容器の頂部を半面を断面で示した拡大図である。
【図5】本発明の他の実施形態のスプレー容器の要部を破断して示した外観図である。
【図6】従来のスプレー容器の断面図である。
【図7】従来のスプレー容器に装着される蓋体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態の一例を図面を参照して説明する。
図1〜図4は本発明の蓋体及びスプレー容器の一実施形態を示しており、この容器1は、合成樹脂製のボトル容器2の首部21に、キャップ4の下部にバルブ6を組み込んだマウンテンカップ5を取り付けてなる蓋体3を装着して構成されている。
【0015】
ボトル容器2は、EVA樹脂系接着剤でポリエチレン樹脂層を接着してなる三層PE樹脂をブロー成形して形成され、その周面に複数の凹リブ22を並設して剛性を高めた構造としてある。また、ボトル容器2の首部21の外周面には、キャップ4が螺合するねじ山23が形成されているとともに、このねじ山23内にガス放出のための縦溝24を周方向に沿って所定間隔で複数設けてある(図2参照)。
【0016】
蓋体3は、キャップ4の下部に、バルブ6を組み込んだマウンテンカップ5を嵌合するとともに、キャップ4とマウンテンカップ5の間に弾性体8を装填し、この弾性体8でマウンテンカップ5が常時下方へ弾圧付勢された状態に保持されるように構成してある。
【0017】
より詳しくは、図2に示されるように、キャップ4は、天面41にバルブ6のステム61が挿通する開口部42を有して前記首部21の外周に装着する円筒状をなし、その筒壁43の内周面に首部21外周面のねじ山23に螺合するねじ山44を設けるとともに、当該最上端のねじ山44と内天面45との間の筒壁43の内面に、内方へ突出した突部46を周方向に沿って所定間隔を開けて複数設けて形成してある。また、筒壁43内周のねじ山44内にはガス放出のための縦溝47を周方向に沿って所定間隔で複数設けてある。
マウンテンカップ5は、その中央にバルブ6が組み込まれてなり、その周縁下面にはリング状のガスケット7を嵌め込んである。なお、バルブ6のステム61の上部にはノズル62とノズルパイプ63が装着され、下部には液体吸い上げ用のチューブ64が接続される(図1参照)。
弾性体8は、適宜な弾性を有する合成樹脂からなる弾性部材であり、キャップ4の内天面45の下方に装着可能な大きさでリング状に形成してある。
【0018】
蓋体2は、キャップ4の内天面45の下側に弾性体8を装着した状態で、キャップ4の下側にマウンテンカップ5を押し込み、マウンテンカップ5の周縁に当接する突部46を弾性変形させて当該カップ周縁が突部46の上方へ乗り越えることで、突部46の上部にマウンテンカップ5の周縁が嵌合し、この状態でマウンテンカップ5の周縁上面部51に内天面45の下側に装填された弾性体8が圧接し、マウンテンカップ5はその周縁を突部46に係合させつつ下方へ押圧された状態に保持されてキャップ4の下部に組み付けられる。
【0019】
このように構成された本形態のスプレー容器1は、液体とともに加圧ガスが充填されたボトル容器2の首部21にキャップ4を螺合して蓋体3を装着すれば、図3に示されるように、弾性体8によりマウンテンカップ5が下方へ押圧されているので、マウンテンカップ5の下側に嵌め込んだガスケット7が首部21の上端に圧密に接合して首部21の開口を密閉し、スプレー容器1内部の気密性を保持することができる。
【0020】
スプレー容器1を高温環境下に置くなどして容器内部の圧力が上昇し、内圧が所定の大きさにまで達すると、図4に示されるように、マウンテンカップ5を介して内圧を受ける弾性体8が縮退方向に弾性変形して薄肉に潰れ、これに伴いマウンテンカップ5が上方へ変位する。
すると、ガスケット7と首部21の上端との間に隙間ができ、この隙間からキャップ4又は首部21のねじ山44、23に設けた縦溝47、34を通して容器内部のガスが外部に放出され、これにより容器内部が減圧する。容器内部が所定の圧力まで減圧したならば、弾性体8が伸長方向に弾性変形し、元の厚みに復元してマウンテンカップ5を下方へ押圧し、再びガスケット7が首部21の上端に密着して容器1内部を密閉状態に保持する。
このように、ボトル容器2の首部21に装着した蓋体3が、容器内圧の調整弁として機能するため、キャップ4を緩めなくても容器内部を所定の圧力に保つことができ、容器の内圧が異常に高くなったときに、ボトル容器1が変形したり蓋体3を吹き飛ばしたりするなどの事故の発生を防止することが可能となる。
【0021】
図5は本発明のスプレー容器の他の実施形態を示しており、これは、前記蓋体3が装着されるボトル容器2の下半部に、有底円筒状のカバー体9を装着して容器1の自立性を高めるとともに、当該カバー体9の底部91とボトル容器2の底部23の接合部にエア注入バルブ10を一体に設けた、このエア注入バルブ10から加圧ガスを容器1の内部に注入できるように構成したものである。
【0022】
なお、図示した形態は一例であり、本発明の蓋体及びスプレー容器の構成はこれらに限定されるものではない。
上記形態では、ブロー成形により形成されるボトル容器2を示したが、インジェクション成形など他の成形方法や成形手段により形成される合成樹脂製の容器及びその蓋体に適用が可能である。また、合成樹脂製の容器に限らず、缶製の容器に蓋体3を装着しても、上記と同様の効果を得ることができる。また、弾性体8はリング状に形成したが、突部46の上面に嵌合したマウンテンカップ5を下方へ押圧可能であれば、弾性体8を複数の部材で構成し、これを前記突部46上に周方向に沿って離間配置するなど、その形状や装着位置は問わない。
【符号の説明】
【0023】
1 スプレー容器、2 ボトル容器、21 首部、22 凹リブ、23 ねじ山、3 蓋体、4 キャップ、41 天面、42 開口部、43 筒壁、44 ねじ山、45 内天面、46 突部、47 縦溝、5 マウンテンカップ、51 周縁上部、6 バルブ、61 ステム、7 ガスケット、8 弾性体、9 カバー体、10 エア注入バルブ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面(41)に開口部(42)を有し、容器の首部外周に螺合するキャップ(4)に、中央にバルブ(6)が組み込まれたマウンテンカップ(5)が取り付けられてなる蓋体(3)であって、
前記キャップ(4)の筒壁(43)内周面に形成されたねじ山(44)と内天面(45)との間に設けられた筒壁(43)内面から内方へ突出した突部(46)にマウンテンカップ(5)の周縁が嵌合し、前記内天面(45)とマウンテンカップ(5)の上面部(51)との間にマウンテンカップ(5)を下方へ押圧する弾性体(8)が設けられた構成を有することを特徴とする蓋体。
【請求項2】
キャップ(4)の筒壁(43)内周面に形成されたねじ山(44)には縦溝(47)が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
首部(21)外周に形成されたねじ山(23)に縦溝(24)が設けられてなる容器(2)の前記首部(21)に請求項1又は2に記載の蓋体(3)を螺合して容器(2)を密閉し、容器(2)内部の圧力が高まったときに、弾性体(8)の押圧力に抗してマウンテンカップ(5)が上方へ変位することにより生じるマウンテンカップ(5)の周縁と首部(21)上端との隙間から前記縦溝(24)を通して容器(2)内部のガスが外部に放出されるように構成された容器内部の減圧構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の蓋体(3)と、首部(21)外周に形成されたねじ山(23)に縦溝(24)が設けられてなる合成樹脂製のボトル容器(2)からなるスプレー容器。
【請求項5】
ボトル容器(2)の底部(23)にエア注入バルブ(10)が設けられてなる請求項4に記載のスプレー容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−222019(P2010−222019A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69517(P2009−69517)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】