説明

蓋体

【課題】容器を開封することなく、当該容器内に収容されている液体の酸化還元電位を容易に確認することができ、サイズもコンパクトな蓋体を提供する。
【解決手段】蓋体100は、液体Rを収容する容器50の開口部51を着脱可能に閉塞する部材であり、容器50内の液体Rと接触可能に配置された一対の電極11,12と、容器50内の液体Rを電極11,12に接触させたとき電極11,12間に発生する電位差に基づいて酸化還元電位を算出する機能などを有する制御回路13と、制御回路13による算出結果を表示する表示手段である発光体14,15と、を備えている。電極11は白金電極、電極12は塩化銀電極である。電極11,12間の電位差に基づいて算出された酸化還元電位が予め設定された基準電位より高電圧であれば、緑色LEDの発光体15が点灯し、基準電位より低電圧であれば赤色LEDの発光体14が点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強酸性水などの液体を収容する容器の開口部を閉塞するために使用される蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水に塩化ナトリウムなどの電解質を加えて電気分解することによって生成される強酸性水(酸化還元電位が比較的高い水)や強アルカリ性水(酸化還元電位が比較的低い水)が様々な分野で利用されている。しかしながら、液体の酸化還元電位は不安定であり、温度あるいはその他の外的要因により経時的に変動し易いので、例えば、強酸性水生成装置で生成された強酸性水を、その酸化還元電位を安定に保ったまま長時間保存することは困難である。
【0003】
そこで、収容された液体の酸化還元電位を一定に維持することができるようにした酸化還元電位保持容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−67458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の酸化還元電位保持容器を用いて液体を保管すれば、ある程度の期間内は当該液体の酸化還元電位を一定値に維持することができると推測されるが、保管中の液体を実際に使用するとき、その酸化還元電位が生成時の状態に維持されているか否かを確認するためには、その都度、当該容器を開封して液体を取り出し、酸化還元電位計を用いて計測しなければならない。このため、保管中の液体の酸化還元電位を定期的に確認することが困難である。また、当該容器を開封したときは、収容中の液体が空気に触れるので、それによる液体の酸化還元電位の変化も無視できない。
【0006】
また、酸化還元電位保持容器に収容されている液体が、何らかの外的要因(例えば、著しい気温変化など)によって変質し、酸化還元電位が大きく変動するようなことがあっても、それが判明するのは、当該容器を開封して液体を取り出し、酸化還元電位計を用いて計測したときになるので、液体を必要としたときに当該液体の酸化還元電位が必要値を満たさず、使用できない事態が生じることがある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、容器を開封することなく、当該容器内に収容されている液体の酸化還元電位を容易に確認することができ、サイズもコンパクトな蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓋体は、液体を収容する容器の開口部を閉塞する蓋体であって、前記容器内の液体と接触可能に配置された一対の電極と、前記容器内の液体を前記電極に接触させたとき前記電極間に発生する電位差に基づいて酸化還元電位を算出する演算手段と、前記演算手段による算出結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、液体を収容した容器の開口部を本発明の蓋体で閉塞している状態であっても、当該容器を傾斜若しくは倒立させ、容器内の液体を、蓋体に配置された一対の電極に接触させると前記電極間に電位差が発生し、この電位差に基づいて演算手段が算出した前記液体の酸化還元電位が表示手段に表示されるので、容器を開封することなく、当該容器内に収容されている液体の酸化還元電位を容易に確認することができる。また、従来の酸化還元電位計で使用されているKCl溶液などを使用しないので、蓋体のサイズをコンパクトにすることができる。
【0010】
ここで、一対の前記電極の一方を白金電極とし、他方を塩化銀電極とすることが望ましい。このような構成とすれば、容器内に収容されている液体が強酸性水である場合、白金電極と塩化銀電極との間に生じる起電力に基づいて、当該強酸性水の酸化還元電位を正確に検出することができ、耐久性も良好である。なお、一対の前記電極は、白金電極及び塩化銀電極に限定しないので、強酸性水と接触したときに電位差(起電力)を生じる異種金属であれば、その他の電極を使用することもできる。
【0011】
また、前記演算手段で算出された酸化還元電位を予め設定された基準電圧と比較して、その大小関係に対応した情報を前記表示手段に表示するようにすることができる。
【0012】
このような構成とすれば、容器に収容されている液体の酸化還元電位が所定値を満たしているか否かを容易に判断することができるので、利便性が向上する。
【0013】
この場合、前記表示手段として、前記大小関係に対応した色を発光する単数若しくは複数の発光体を設けることができる。
【0014】
このような構成とすれば、容器に収容されている液体の酸化還元電位が所定値を満たしているか否かを発光体の色で識別することができるので、視認性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、容器を開封することなく、当該容器内に収容されている液体の酸化還元電位を容易に確認することができ、サイズもコンパクトな蓋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態である蓋体が容器の開口部に装着された状態を示す断面図である。
【図2】図1に示す蓋体の上面図である。
【図3】図1に示す蓋体の機能ブロック図である。
【図4】図1に示す蓋体の使用状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態である蓋体を示す上面図である。
【図6】本発明の第3実施形態である蓋体を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図4に基づいて、本発明の第1実施形態である蓋体100について説明する。図1,図2に示すように、蓋体100は、液体R(強酸性水)を収容する容器50の開口部51を着脱可能に閉塞する部材であり、容器50内の液体Rと接触可能に配置された一対の電極11,12と、容器50内の液体Rを電極11,12に接触させたとき電極11,12間に発生する電位差に基づいて酸化還元電位を算出する機能などを有する制御回路13と、制御回路13による演算結果を表示する表示手段である発光体14,15と、を備えている。一方の電極11は白金電極であり、他方の電極12は塩化銀電極であるが、これに限定するものではない。
【0018】
蓋体100は、絶縁性を有する合成樹脂で形成されたハウジング101の下側に、容器50の円筒状の開口部51の外周に形成された雄ネジ部52に螺合可能な凹状の雌ネジ部102が形成され、雌ネジ部102の天井面103に一対の電極11,12が配置されている。制御回路13はハウジング101内に収納され、ハウジング101の上面104に発光体14,15が配置されている。電極11,12と、制御回路13と、発光体14,15と、は所定の電気配線によって接続されている。発光体14は赤色LEDであり、発光体15は緑色LEDである。
【0019】
図3に示すように、ハウジング101内の制御回路13は、演算手段(1ビットマイコン)16と、基準電位発生部17と、コンパレータ18と、を備えている。電極11,12間に発生する電位差が演算手段16に入力されると、この電位差に基づいて演算手段16が酸化還元電位を算出し、この酸化還元電位と、基準電位発生部17で別途発生させた基準電圧とをコンパレータ18が比較し、酸化還元電位が、予め設定された基準電位より高電圧であれば緑色LEDの発光体15が点灯し、基準電位より低電圧であれば赤色LEDの発光体14が点灯する機能が設けられている。
【0020】
ここで、図1,図2を参照しながら、蓋体100の使い方について説明する。図1に示すように、通常、蓋体100は、液体R(強酸性水)が収容された容器50の開口部51の閉塞器具として使用されているが、必要に応じて、蓋体100を緩めて開口部51から取り外せば、液体Rを開口部51から注ぎ出すことができる。
【0021】
容器50内の液体Rの酸化還元電位を知りたい場合、図4に示すように、蓋体100が装着された容器50をそのままの状態で倒立させ(若しくは傾斜させ)、内部の液体Rを蓋体100の電極11,12に接触させる。これにより、制御回路13の電源がONされ、電極11,12間で発生した電位差に基づいて演算手段16が酸化還元電位差を算出し、この酸化還元電位と、基準電位発生部17で発生させた基準電圧と、の差をコンパレータ18が比較し、その結果が、予め設定された基準電位(例えば、1000mV)より高電圧であれば、緑色LEDの発光体15が点灯し、基準電位より低電圧であれば赤色LEDの発光体14が点灯する。
【0022】
この場合、測定値を安定させるために、蓋体100が装着された容器50を倒立させ、一定時間(例えば、10秒間程度)保持した後、正立状態に戻すことによって発光体14,15が点灯する機能が設けられている。また、このような測定手順は蓋体100の外面に表示されている。
【0023】
このように、液体Rを収容した容器50の開口部51が蓋体100で閉塞されている状態であっても、当該容器50を倒立させ(若しくは傾斜させ)、容器50内の液体Rを、蓋体100に配置された一対の電極11,12に接触させると、電極11,12間に発生する電位差に基づいて制御回路13が算出した結果が表示手段である発光体14,15に表示されるので、容器50を開封することなく、当該容器50内に収容されている液体Rの酸化還元電位を知ることができる。
【0024】
ここで、一方の電極11を白金電極とし、他方の電極12を塩化銀電極としているので、容器50内に収容された液体R(強酸性水)を電極11,12に接触させたとき、白金電極と塩化銀電極との間に生じる起電力に基づいて、正確に酸化還元電位を算出することができ、耐久性も良好である。また、従来の酸化還元電位計で使用されているKCl溶液などを使用しないので、蓋体100のサイズをコンパクトにすることができる。なお、一対の電極11,12は、白金電極及び塩化銀電極に限定しないので、強酸性水と接触したときに電位差(起電力)を生じる異種金属であれば、その他の電極を使用することもできる。
【0025】
また、演算手段16で算出された酸化還元電位を予め設定された基準電圧と比較して、その大小関係に対応して、発光体14または発光体15が点灯する構成となっているため、容器50内に収容されている液体Rの酸化還元電位が所定値を満たしているか否かを容易に判断することができ、利便性に優れている。
【0026】
さらに、電極11,12間の電位差に基づいて演算手段16が算出した酸化還元電位と基準電位との大小関係をコンパレータ18が判断して、それに対応した色を発光する複数の発光体14,15が設けられているので、容器50内の液体Rの酸化還元電位が所定値を満たしているか否かを発光体14,15の色で識別することができ、視認性も良好である。
【0027】
次に、図5に基づいて、本発明の第2実施形態である蓋体200について説明する。図5に示す蓋体200においては、ハウジング201の上面204に発光色の異なる3個の発光体21,22,23が配置され、ハウジング201内には図1に示す制御回路13と同様の機能を有する制御回路(図示せず)が設けられている。発光体21は赤色LEDであり、発光体22は黄色LEDであり、発光体23は緑色LEDである。
【0028】
蓋体200は、図1に示す蓋体100と同様に容器50に装着して使用することができ、図4に示すような操作を行うと、容器内の液体の酸化還元電位に応じて発光体21,22,23が点灯する。具体的には、酸化還元電位が高いときは「緑色の発光体21」が点灯し、酸化還元電位が低くなるにつれて、「緑色の発光体21と黄色の発光体22」、「黄色の発光体22」、「黄色の発光体22と赤色の発光体21」、「赤色の発光体21」の順番で点灯する。従って、発光体21,22,23のいずれが点灯しているかによって酸化還元電位の変化を視認することができる。
【0029】
なお、蓋体200において、発光体21,22,23を同色とし、酸化還元電圧に応じて点灯する個数が変化するように構成することもできる。また、発光体として、1個で複数の色光を発光する機能を有するLEDを使用し、酸化還元電圧に応じた色を発光させる構成とすることもできる。
【0030】
次に、図6に基づいて、本発明の第3実施形態である蓋体300について説明する。図6に示す蓋体300においては、ハウジング301の上面304に酸化還元電位を数値で示す表示部30が設けられている。即ち、図3に示す電極11,12間の電位差に基づいて演算手段16によって換算された酸化還元電位の具体的数値が表示部30に表示されるようになっている。従って、容器内に収容された液体(図示せず)の酸化還元電位を正確に知ることができる。
【0031】
なお、前述した蓋体100,200,300は本発明の実施形態の一部を示すものであり、本発明の蓋体はこれらの蓋体100,200,300に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の蓋体は、電気分解によって生成された強酸性水などを保管する容器の開口部の閉塞手段として、様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11,12 電極
13 制御回路
14,15,21,22,23 発光体
16 演算手段
17 基準電位発生部
18 コンパイラ
50 容器
51 開口部
52 雄ネジ部
100,200,300 蓋体
101,201,301 ハウジング
102 雌ネジ部
103 天井面
104,204,304 上面
R 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な容器の開口部を閉塞する蓋体であって、前記容器内に収容された液体と接触可能に配置された一対の電極と、前記容器内の液体を前記電極に接触させたとき前記電極間に発生する電位差に基づいて前記液体の酸化還元電位を算出する演算手段と、前記演算手段による算出結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
一対の前記電極の一方を白金電極とし、他方を塩化銀電極とした請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
前記演算手段で算出された酸化還元電位を予め設定された基準電圧と比較して、その大小関係に対応した情報を前記表示手段に表示する請求項1または2記載の蓋体。
【請求項4】
前記表示手段として、前記大小関係に対応した色を発光する単数若しくは複数の発光体を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の蓋体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−112398(P2013−112398A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262196(P2011−262196)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(399102839)博多港管理株式会社 (16)
【出願人】(398018777)株式会社弁天 (15)
【Fターム(参考)】