説明

蓋材

【課題】周縁部の手触りが良好な蓋材を提供する。
【解決手段】蓋材3の外周縁を含む帯状の周縁領域10には、エンボス加工が施されている。また、蓋材3の周縁部の一部には、カップ容器2からの剥離時に把持するための開封タブ4が設けられている。更に、蓋材3の周縁部のうち、開封タブ4と対向する部分には、剥離タブ5と、剥離タブ5に接続される一部の領域を区画するように蓋材3の上層に形成されたハーフカット6と、剥離タブ5を他の部分から区画するように蓋材3の下層に形成されたハーフカット8とを設けることによって、蓋材3の表層の一部のみを剥離可能にした部分剥離部9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ容器の開口部を封止するための蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
開口部をシート状の蓋材で封止したカップ容器は、即席麺、即席スープ、菓子などの食品等を包装する容器として広く用いられている。このようなカップ容器の開口部を封止するための蓋材の多くは、樹脂層や金属箔を含む積層シートにより形成されている。また、蓋材の形状には、その用途目的に応じて細やかな工夫がなされており、蓋材に切込みやハーフカット線を形成すること等により、様々な機能を付与することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73562号公報
【特許文献2】特開2010−89805号公報
【特許文献3】特開2010−100338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した積層シートからなる蓋材には、強度や機能において優れている反面、手触りがあまり良くないという問題があった。食品等の包装作業を行う作業者や消費者が蓋材の周縁に触れた際には、手指に蓋材が食い込むような違和感を覚え、時には痛みを感じる場合もあった。このような状況に鑑みると、蓋材周縁に対する接触角度や接触速度等の諸条件によっては、手指等を蓋材によって切傷する可能性も否定できなかった。
【0005】
それ故に、本発明は、周縁部の手触りが良好な蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カップ容器の開口部を封止するための蓋材に関するものであり、蓋材の外周縁を含む帯状の周縁領域にエンボス加工が施される点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓋材の外周縁を含む帯状の領域に形成されたエンボスによって、外周縁の円滑さが意図的に低減されているので、蓋材が手指に食い込むような感覚を与えず、手触りに優れた蓋材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る蓋材を用いた包装容器の斜視図
【図2】図1に示した蓋材の平面図
【図3】図2に示したIII−IIIラインから見た図
【図4】第1の変形例に係る蓋材を示す図
【図5】第2の変形例に係る蓋材を示す図
【図6】カット性評価試験の試験方法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る蓋材を用いた包装容器の斜視図である。
【0010】
包装容器1は、即席麺を包装するために用いられるものであり、カップ容器2と、カップ容器2の開口部を封止する蓋材3とから構成されている。蓋材3の周縁部の一部には、カップ容器2からの剥離時に把持するための開封タブ4が設けられている。本実施形態に係る蓋材3は、インスタント食品や菓子、乳製品等の種々の包装容器に利用できる。特に、本実施形態に係る蓋材3は、例えば即席焼きそばのような、一旦カップ容器2内に熱湯を入れて湯戻し調理を行う等の作業が必要となる内容物の包装用途に好適である。即席焼きそばのように、カップ容器2内に注いだ湯を排出する必要がある場合、蓋材3の一部に部分剥離部9が設けられる。部分剥離部9は、図1に示すように、蓋材3の周縁部のうち、開封タブ4と対向する部分に位置する剥離タブ5と、剥離タブ5に接続される一部の領域を区画するように蓋材3の上層に形成されたハーフカット6と、剥離タブ5を他の部分から区画するように蓋材3の下層に形成されたハーフカット8とを設け、蓋材3の表層の一部のみを剥離可能にすることによって形成されている。部分剥離部9の下層には、円形の複数のハーフカット7が形成されている。これらのハーフカット7が設けられていることにより、部分剥離部9を剥離したときに湯切り用の複数の丸孔が現出する。
【0011】
蓋材3は、紙、樹脂フィルム、金属箔のいずれか単体または積層体よりなるシート材を打ち抜き加工することによって形成され、カップ容器2の開口部に対応する外形を有する。紙としては、例えば、坪量50g/m2〜150g/m2のアート紙を好適に利用できる。金属箔としては、アルミニウム箔を例示することができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、2軸延伸ポリエチレン(OPE)フィルム等を好適に利用できるが、これらに制限されない。積層体の層構成としては、例えば、PET/紙/PE/Al/シーラント、紙/PE/Al/シーラント、PET/紙/PE/OPE/Al/シーラント、紙/PET/PE/PET/Al/シーラント、PET/紙/PET/シーラント、紙/PET/シーラントなどを挙げることができる。積層体には、各層を接着するための接着剤層や、剥離層、絵柄等を印刷するためのインク層等が含まれ得る。また、蓋材3にガスバリア性が求められる場合には、金属箔か、樹脂フィルムに酸化アルミニウム(アルミナ)や酸化ケイ素(シリカ)等の無機蒸着膜を設けた透明蒸着フィルムが層構成に含まれる。尚、蓋材3を構成するシート材の総厚みは、50μm〜1mmの範囲とするのが好ましい。
【0012】
図2は、図1に示した蓋材の平面図であり、図3は、図2に示したIII−IIIラインから見た図である。
【0013】
蓋材3は、外周縁を含む帯状の周縁領域10(図2においてハッチング(斜線)を付した部分)にエンボス加工が施されている点に特徴を有する。図3の例では、蓋材3の厚み方向に波打つようにエンボス加工されている。
【0014】
図4は、第1の変形例に係る蓋材を示す図であり、図5は、第2の変形例に係る蓋材を示す図である。
【0015】
また、図3の例のように、周縁領域10を波状に加工することに代えて、図4に示すように、蓋材3の外面となる側に向けて突出する凸部を複数形成する、いわゆる「浮き上げ」加工を施したり、図5に示すように、蓋材3の内面となる側に向けて凹む凹部を複数形成する、いわゆる「浮き下げ」加工を施したりしても良い。
【0016】
尚、エンボスの形状は、図3〜5で示した例に限定されるわけではなく、種々の形状を採用することができる。
【0017】
ここで、周縁領域10へのエンボス加工は、エンボス加工された周縁領域10の厚みtが0.2mm以上となり、エンボス加工によって形成される凸部または凹部のピッチpが0.2mm以上となり、周縁領域10の幅が0.5mm以上となるように行われる。このような寸法となるようにエンボス加工を行うことによって、蓋材3の外周縁部分をざらつかせて意図的に円滑さを低減している。この結果、蓋材3の外周縁部分に触れたときに、蓋材3が手指に食い込むような感覚を与えることがなく、手触りに優れた蓋材3を実現できる。
【0018】
蓋材3は、材料となるシート材にエンボス加工を施した後に、抜き型を用いて所望の形状に打ち抜くことによって製造できる。ただし、エンボス加工したシート材を複数枚重ねたものに対して一度に打ち抜き加工を行う、いわゆる「ブッシュ抜き加工」では、シート材の重ね合わせによってエンボスが潰れてしまう可能性がある。そこで、エンボス加工を施したシート材から枚葉で一枚ずつ打ち抜きを行う「トムソン抜き加工」や、ロータリー状の金型を用いて長尺状のシート材から連続的に打ち抜きを行う「ロータリーカット加工」等の、シート材を重ねずに打ち抜く製造方法を採用することが好ましい。
【0019】
本発明の蓋材の外形は特に制限されず、カップ容器の開口部の形に応じて適宜選択することができる。本発明の蓋材の外形としては、上述の略円形のほか、略楕円形、四角形等の多角形などを例示することができる。また、蓋材の大きさも特に制限されず、カップ容器の開口部の大きさに応じて、開口部と蓋材とのシール性や外観を考慮して適宜選択することができる。
【0020】
また、本実施形態では、蓋材の一部に液体排出用の部分剥離部が設けられているが、部分剥離部のない蓋材にも同様に本発明を適用して、外周縁部分にエンボス加工を設けても良い。
【0021】
更に、本実施形態のように蓋材の一部に液体排出用の部分剥離部を設ける場合、部分剥離部の下層に形成する孔の形状・大きさ・数は特に限定されず、内容物や用途に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0022】
以下の実施例1、2及び比較例1〜4に係る蓋材を、包装時の外面となる側から順に、ポリエチレンテレフタレート(12μm)/紙(秤量104.7g/m2)/剥離ニス/ポリエチレン(20μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム(9μm)/押し出しシーラント(20μm)の層構成を有するシート材を用いて作製した。このシート材の総厚みは、170〜180μmであった。蓋材の形状は、図2に示したものとし、略円形部分の直径を180mmとした。
【0023】
(実施例1)
実施例1に係る蓋材には、周縁領域に波状のエンボス加工(図3)を施した。エンボス加工された周縁領域(図2のハッチングを付した領域)の厚みを0.5mmとし、エンボス加工によって形成される凸部のピッチを0.5mmとし、周縁領域の幅を0.5mmとした。
【0024】
(実施例2)
実施例2に係る蓋材には、周縁領域に浮き上げ状のエンボス加工(図4)を施した。エンボス加工された周縁領域(図2のハッチングを付した領域)の厚みを0.5mmとし、エンボス加工によって形成される凸部のピッチを0.5mmとし、周縁領域の幅を0.5mmとした。
【0025】
(比較例1)
比較例1に係る蓋材には、周縁領域に波状のエンボス加工(図3)を施した。エンボス加工された周縁領域(図2のハッチングを付した領域)の厚みを0.1mmとし、エンボス加工によって形成される凸部のピッチを0.5mmとし、周縁領域の幅を0.5mmとした。
【0026】
(比較例2)
比較例2に係る蓋材には、周縁領域に波状のエンボス加工(図3)を施した。エンボス加工された周縁領域(図2のハッチングを付した領域)の厚みを0.2mmとし、エンボス加工によって形成される凸部のピッチを0.1mmとし、周縁領域の幅を0.5mmとした。
【0027】
(比較例3)
比較例3に係る蓋材には、周縁領域に波状のエンボス加工(図3)を施した。エンボス加工された周縁領域(図2のハッチングを付した領域)の厚みを0.5mmとし、エンボス加工によって形成される凸部のピッチを0.5mmとし、周縁領域の幅を0.1mmとした。
【0028】
(比較例4)
比較例4に係る蓋材として、周縁領域にエンボス加工を施していないものを作製した。
【0029】
(試験方法)
蓋材の周縁部の手触りを評価するため、実施例1、2及び比較例1〜4に係る蓋材について、市販の腸詰ソーセージを用いたカット性試験を行なった。試験方法を、図6を参照しつつ説明する。
【0030】
図6は、カット性評価試験の試験方法を示す概略図である。
【0031】
まず、実施例1、2及び比較例1〜4に係る蓋材を、幅30mmの帯状に切断したサンプルを作製した。作製したサンプルを、チャックからの最大露出高さが3mmとなるように、チャックで挟んで固定した。そして、腸詰ソーセージを、チャックから2mmの距離を保ちつつ、300mm/minの速さで、図中矢印で示す方向に走査した。走査後の腸詰ソーセージを肉眼観察し、切傷の有無を確認した。試験は各実施例及び各比較例について10回ずつ行なった。腸詰ソーセージに切傷が発生した回数を表1に示す。
【表1】

【0032】
表1の結果に示すように、実施例1及び2のエンボス仕様の蓋材では、腸詰ソーセージに切傷が発生しなかったのに対し、比較例1〜4の蓋材では切傷が発生した。これらの試験結果より、実施例1及び2の仕様で周縁領域にエンボス加工を施した蓋材であれば、手指が蓋材の周縁部に触れた際の蓋材の周縁に触れた際の手触りがソフトであり、手触りが良好であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の蓋材は、カップ容器の開口部を封止するための蓋体として広範に利用でき、特に、即席麺、菓子等の食品を包装するカップ容器の蓋体として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 包装容器
2 カップ容器
3 蓋材
10 周縁領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ容器の開口部を封止するための蓋材において、
前記蓋材の外周縁を含む帯状の周縁領域にエンボス加工が施されていることを特徴とする、蓋材。
【請求項2】
エンボス加工された前記周縁領域の厚みが0.2mm以上であり、
エンボス加工によって形成される凸部または凹部のピッチが0.2mm以上であり、
前記周縁領域の幅が0.5mm以上である、請求項1に記載の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82464(P2013−82464A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222437(P2011−222437)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】