説明

蓋開閉機構及び収納装置

【課題】蓋を開閉するときに狭い空間でも行えるようにして省スペース化に優れた開閉機構を構成簡易に実現する。
【解決手段】蓋2を箱状基体1の開口部を塞ぐ閉位置と前記開口部を開放する開位置とに切り換える開閉機構である。工夫点は、基体1に第一軸支部9aにより枢支した基端側を支点として、先端側を基体前方へ回動可能にし、かつ蓋2に第二軸支部9bにより回動可能に連結しているアーム3を有し、蓋2がアーム3の回動に連動して開方向又は閉方向に回動されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋(これには扉、カバー、遮蔽板などを含む)を基体側開口部を塞ぐ閉位置と開位置とに切り換える蓋開閉機構及び収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車室内に設けられる収納装置には、配置部付近のパネル形状や他の部材や物品などとの関係から蓋の開閉軌跡に制約を受けることが多く、蓋を基体にできるだけ接近しながら回動したり、蓋の基体からの張出量をできるだけ抑えて回動することが要求される。その対策例には本出願人が先に開発した特許文献1や2などがある。
【0003】
図9は特許文献1の機構であり、同(a)は蓋の閉位置、同(b)は蓋の開位置を示している。符号2は基体、符号3は蓋(扉)である。蓋3は、支持用アーム32、及び該アーム32に設けられたギア部32a、並びにギア部32aの円弧略中心に設けられた不図示の摺動部を有している。基体2は、互いに略平行に設けられたギア部32aと噛み合う第1ラック部11、及び前記摺動部と噛み合うガイド溝13などを有している。以上の機構において、蓋3の開閉は、第1ラック部11に対するギア部32aの噛み合い、(第2ラック部12に対する不図示の歯車の噛み合い、)ガイド溝13に対する前記摺動部との噛み合いを伴う動きにより蓋3の回動及び移動運動を伴った軌跡となる。また、この機構では、基体2に対し摺動可能に組み付けられると共に蓋3に連結されているスライダー4と、スライダー4を付勢している付勢手段5と、蓋3を閉位置で係止する係脱機構部とを有し、蓋3が付勢手段5の付勢力に抗して開から閉位置に切り換えられて係脱機構部によりその閉位置に係止される。
【0004】
図10は特許文献2の機構であり、同(a)は蓋の閉位置、同(b)は蓋の開位置を示している。符号S又はSaは基体(本体)、符号M又はMaは蓋(リッド)である。この機構では、第一枢支部Aをもって蓋Mに組み付けられると共に、第二枢支部Bをもって固定体Sに組み付けられたベースアーム1と、蓋Mに第三枢支部Cをもって組み付けられると共に、固定体Sに設けたカム部4に案内される摺動部2bを有した制御アーム2と、第四枢支部Dをもって固定体Sに回動可能に付設された支持体3とを備えている。制御アーム2は支持体3に対して移動可能に組み付けられている。カム部4は、第一部分4a、第一部分4aに続く第二部分4eを有し、制御アーム2の摺動部2bがカム部4の第二部分4eにあるとき、第三枢支部Cと第四枢支部Dの距離を変えながら、蓋Mが第一枢支部Aを中心として回動される。要は、蓋Mの開閉を、所定往動位置までは四節リンクによる動作で移動させ、所定往動位置に至った後は一軸を中心とした回転運動をさせる。また、この機構では、ベースアーム1に第二枢支部Bを中心とした回動力を付与する第一付勢手段5と、蓋3を閉位置で係止する不図示の係脱機構部(ボタンで操作される被掛合部及び掛合部からなる)などを有し、蓋3が第一付勢手段5の付勢力に抗して開から閉位置に切り換えられて係脱機構部によりその閉位置に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−138567号公報
【特許文献2】特開2009−154568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した各機構では、蓋を位置固定された枢支部を中心として回動する構成に比べ、蓋を基体にできるだけ接近しながら回動可能となり、蓋の基体からの張出量を抑えることができる。しかしながら、各機構では、例えば、特許文献1の場合だとラック部及びギア部の噛み合いを必須としている関係で加工精度などが要求され製作費を低減し難く、特許文献2の場合だとベースアームと共に制御アームを配置するスペース及び、制御アームの動きをコントロールするカム部を設けるために大きなスペースが基体側に必要となり、そのような点から採用不可能となることもある。
【0007】
本発明は以上の背景から開発されたものである。その目的は、蓋開閉機構及び収納装置として、簡易構成、及び基体側に必要となるスペースを抑えながら、蓋開閉軌跡に対する設計自由度を拡大でき、開閉操作性も良好にし易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、蓋を箱状基体の開口部を塞ぐ閉位置と前記開口部を開放する開位置とに切り換える蓋開閉機構において、前記基体に第一軸支部により枢支した基端側を支点として、先端側を前記基体前方へ回動可能にし、かつ前記蓋に第二軸支部により回動可能に連結しているアームを有し、前記蓋が前記アームの回動に連動して開方向又は閉方向に回動されることを特徴としている。
【0009】
以上の本発明は、請求項2から9のごとく具体化されることがより好ましい。即ち、
(1)前記基体に設けられたガイド部に摺動可能に配設されていると共に、先端側を前記蓋に第三軸支部を介して回動可能に連結している制御部材と有し、前記蓋の開閉過程において、前記第二軸支部が前記第一軸支部を中心としたアームの回動により基体前方へ移行し、前記第一軸支部と前記第二軸支部及び前記第三軸支部が相対的にほぼ一直線上に並ぶのを境にして、前記蓋が開方向又は閉方向に反転切り換えられる構成である(請求項2)。なお、『前記蓋を開方向又は閉方向に反転切り換えられる』とは、蓋が図7のごとく第一軸支部9a(12c)と前記第二軸支部9b(26a)及び前記第三軸支部42(24a)が相対的にほぼ一直線上に並んだ状態から、図6のごとく閉方向へ切り換えられたり、図8のごとく開方向へ切り換えられるという意味である。
(2)前記制御部材は、前記蓋が閉位置や開位置にあるとき前記基体前方への突出量を減じており、かつ、閉位置から開方向又は開位置から閉方向へ回動されて前記第一軸支部と前記第二軸支部及び前記第三軸支部が相対的にほぼ一直線上に並んだとき前記基体前方への突出量を最大となる構成である(請求項3)。
(3)前記制御部材が前記基体前方への突出量を増大する過程で付勢力を蓄え、かつ、前記基体前方への突出量を減じる過程でその付勢力により前記制御部材を移動可能にする付勢手段を有している構成である(請求項4)。
【0010】
(4)前記制御部材の摺動を制動する制動手段を有した構成である(請求項5)。
(5)前記第一軸支部付近に設けられ、前記アームが回動されて先端側を前記基体前方へ移行する過程で付勢力を蓄積する付勢手段を有している構成である(請求項6)。
(6)前記アームの回動を制動する制動手段を有した構成である(請求項7)。
(7)前記アームは前記蓋の閉位置で前記基体の両側部のうち少なくとも一方側部に配置されていると共に、前記制御部材は前記基体の上下面の一方に配置されている構成である(請求項8)。
(8)請求項9は以上の開閉機構の用途例を特定したものである。すなわち、箱状基体が起立ないしは斜めに立ち上がったパネル部に対して埋設状態に設けられて開口部を略水平ないしは斜めに配置している収納装置において、前記開口部を開閉する蓋を有し、前記蓋を請求項1から8の何れかに記載の蓋の開閉機構により切り換えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、基体に第一軸支部により枢支した基端側を支点として、先端側を基体前方へ回動可能にし、かつ蓋に第二軸支部により回動可能に連結しているアームを有しており、アームが基体側第一軸支部を中心として、先端側を基体前方へ回動しながら蓋が回動されるため基体に対するアームの干渉を解消し易くなる。また、 蓋が図7のごとく第一軸支部を支点として回動されるアームに対し、第二軸支部を介して連結されて基体の前方向に移行された状態で図8のごとくその第二軸支部を支点として開位置に切換可能となる。このため、本発明の機構では、図6(a)に一点鎖線で示したごとく蓋が位置固定された枢支部を中心として回動される従来構成に比べ、蓋の開位置において、第二軸支部がアームの回動により基体前方へ移行するのに比例して図8のごとく基体に対する高さを低く抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明では、まず、アーム及び制御部材が特許文献1や2のごとく直接連結されたり並列に配置しなくてもよいため、形態のごとくアーム及び制御部材を基体の異なる箇所に配置できその点から設計自由度を拡大できる。また、本発明の機構では、蓋が図7のごとく第一軸支部と第二軸支部及び第三軸支部が相対的にほぼ一直線上に並んだ状態(以下、蓋の切換途中位置という)から図6のごとく閉方向へ切り換えられたり図8のごとく開方向へ切り換えられるため、形態のような制御部材を付勢する付勢手段を付設すると、蓋の途中切換状態から閉位置と開位置とに付勢力で切換可能となり、上記各特許文献のごとく蓋を閉位置に係止する係脱機構も不要となる。
【0013】
請求項3の発明は、制御部材の作動特徴を明らかにしたものであり、制御部材が図6と図8のごとく蓋の閉位置や開位置で基体前方への突出量を減じ、図7のごとく前記した蓋の切換途中位置で基体前方への突出量を最大となる。この点は、例えば、形態のような蓋の反転方式として、蓋の切換途中位置から閉位置と開位置とに付勢力で切換可能する場合に好適となる。
【0014】
請求項4の発明では、蓋が形態のごとく開位置又は閉位置から切換途中位置まで付勢手段の付勢力に抗して(付勢力を蓄積すること)回動操作され、切換途中位置から閉位置と開位置とに付勢手段の付勢力により回動可能にすることができ、それにより使い勝手を向上できる。
【0015】
請求項5の発明では、制御部材が制動手段によりゆっくり摺動されるため、制御部材を介して蓋の開閉速度も緩和でき、それにより高級感を付与できる。
【0016】
請求項6の発明では、アームが蓋の開位置で付勢手段により付勢されているため、特に蓋の開位置においてアームの不用意な揺動を防止し、それにより蓋も安定状態に保たれるようにする。
【0017】
請求項7の発明では、アームが制動手段によりゆっくり回動されるため、アームを介した蓋の開閉速度も緩和でき、それにより高級感を付与できる。
【0018】
請求項8の発明では、アームが基体の両側部のうち少なくとも一方側部に配置され、制御部材が基体の上下面の一方に配置されているため、例えば、特許文献1や2に比べて基体が偏平箱状でも採用容易となる。
【0019】
請求項9の発明は、基体が起立ないしは斜めに立ち上がったパネル部に対して埋設状態に設けられて開口部を略水平ないしは斜めに配置している収納装置として上記請求項1から8の利点を具備できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】形態の収納装置及び蓋開閉機構を蓋の閉位置で示す背面側から見た概略斜視図である。
【図2】上記収納装置及び蓋開閉機構の部材構成を示す概略分解図である。
【図3】(a)と(b)は上記収納装置を蓋の閉位置で示す上面図と側面図である。
【図4】(a)と(b)は上記収納装置を蓋の切換途中位置で示す上面図と側面図である。
【図5】(a)と(b)は上記収納装置を蓋の開位置で示す上面図と側面図である。
【図6】(a)〜(c)は上記収納装置の蓋開閉機構を蓋の閉位置で示す図3のA−A線断面図、図3のB−B線断面図、原理作動図である。
【図7】(a)〜(c)は上記収納装置の蓋開閉機構を蓋の切換途中位置で示す図4のA1−A1線断面図、図4のB1−B1線断面図、原理作動図である。
【図8】(a)〜(c)は上記収納装置の蓋開閉機構を蓋の開位置で示す図5のA2−A2線断面図、図5のB2−B2線断面図、原理作動図である。
【図9】(a)と(b)は特許文献1の要部を説明するための説明図である。
【図10】(a)と(b)は特許文献2の要部を説明するための説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明形態の蓋開閉機構及び収納装置を図面を参照し説明する。この説明では、収納装置、蓋開閉機構及びその作動の順に詳述する。なお、図3〜図4において、各(a)は(b)のZ方向から見た上面図である。
【0022】
(収納装置)形態例の収納装置は、箱状基体1が正面又は前側に開口部を有し、該開口部が蓋2により開閉される。配置特徴は、車室内のセンターコンソールないしはインストルメントパネル(例えば車幅略中間位置に設けられた凹所)に埋設状態に装備されるものである。但し、設置個所としては、例えばアームレストなどの一部に組み込むことも可能である。また、箱状基体1は、蓋2に対応した開口部及び後述するアーム3及び制御部材4などの配置箇所を有しておればよく、内部及び外観的には使用目的に応じて種々変形される。基体1の開口部は、蓋2の回動により開閉されるという要件を備えていればよい。蓋2は、基体1の開口部に対し閉位置と開位置とに回動により切り換えられるものが対象となる。そして、蓋開閉機構は、基体1の開口部に対し蓋2を閉位置と開位置とに回動にて切り換えるものであり、アーム3、制御部材4、付勢部材5、コイルばね7などから構成されている。材質としては、基体1、蓋2、アーム3、制御部材4が共に樹脂成形品であるが、樹脂以外でも差し支えない。
【0023】
まず、基体1及び蓋2の細部構成を明らかにする。基体1は、図1及び図2のごとく内部が上面10、底面11、両側面12、背面13とで区画され、手前側に開口部を持つ容器状をなしている。上面10には、開口部を区画している上縁に突出された立壁14と、内面の左右中間に連結された筒形ガイド部15とが設けられている。ガイド部15は、制御部材4の摺動を案内する箇所で、開口部より前方へ所定長さ突出されると共に、立壁14より後側が上部を欠如して断面コ状の溝部15aとなっている。溝部15a付近には、上面10に起立された両側壁10a、各側壁10aの上端面に突出された取付部10b、溝部15aの後側に起立された後壁10d、立壁14の手前に起立された規制片10eが設けられている。両側の取付部10bには、後述するダンパー8Aが取り付けられる。符号C2は後壁10dの内端面に貼着される緩衝用クッションである。
【0024】
両側面12には、上下面10,11より前方へ突出した前突出壁12aと、前突出壁12aとの間にアーム用配置空間17を区画している支持部16と、各支持部16より後側に配置されたダンパー用取付部18とが設けられている。このうち、前突出壁12aにはアーム3の動きを良好にする複数のリブ12bが突設されている。支持部16は、上横壁16a、上区画壁16b、下後縦壁16c、下横壁16d、前縦壁16e、上横壁16a及び前縦壁16eに一体化して前突出壁12aと対向している対向壁16g(図1を参照)で構成され、各前突出壁12aとの間に前後方向に開口された配置空間17を形成している。取付部18にはダンパー8が取り付けられる。なお、このダンパー8及び上記したダンパー8Aは、周知のロータリー式ダンパーからなり、基体8a及び作動油などの抵抗を受けながら回動する出力軸並びに該出力軸に装着された回転ギア8bを有している。そして、ダンパー8は取付部18にねじ9cにより装着される。上記したダンパー8Aは各取付部10bにねじ9dにより装着される。
【0025】
一方、蓋2は、図1や図2のごとく基体1の開口部及び立壁14並びに両側の支持部16を前方から覆う大きさの略矩形板材からなり、意匠面20の下側にあって浅い溝で区画された操作用の掴み部21と、裏面の上側にあって左右の中間部24及び両側部25を除いて一段厚くした厚肉部23とを形成している。中間部24は、ガイド部15の前方筒部及びガイド部15内に沿って摺動される制御部材4の連結片部41を逃がす凹状であり、図6(a)のごとく凹状の対向内端面に軸穴24aを形成している。両側部25には、前記した基体側の配置空間17に差し込まれる連結片部26が設けられている。各連結片部26は、ねじ9bを介しアームの軸孔37に連結可能にする取付孔26aを有している。符号C1は両側部25の下側に貼着される緩衝用クッションである。
【0026】
(蓋開閉機構)以上の蓋2は、本発明の蓋開閉機構により基体1の開口部を塞ぐ閉位置と前記開口部を開放する開位置とに切り換える。この蓋開閉機構は、基体1に第一軸支部であるねじ9aにより枢支した基端側を支点として、先端側を基体前方へ回動可能にし、かつ蓋2に第二軸支部であるねじ9bにより回動可能に連結しているアーム3と、基体側のガイド部15に摺動可能に配設されていると共に、先端側の連結片部41を蓋2に第三軸支部である軸部42を介して回動可能に連結している制御部材4とを備えている。そして、作動特徴は、蓋2の開閉過程において、第二軸支部であるねじ9bが第一軸支部であるねじ9a(軸孔34)を中心としたアーム3の回動により基体前方へ移行し、第一軸支部であるねじ9a(軸孔34)と第二軸支部であるねじ9b(軸孔37,26a)及び第三軸支部である軸部42(軸穴24a)が相対的にほぼ一直線上に並ぶのを境にして、蓋2を開方向又は閉方向に反転切り換えられるようにすることにある。以下、この細部構成を明らかにする。
【0027】
まず、アーム3は、左右対称形である右側アーム3Aと左側アーム3Bとからなり、下側の基端部30及び基端部30から起立した連結片部31並びに基端部30から後下側に円弧状に延びたガイド部32を有している。基端部30は、下側の筒状軸孔34と、上側の複数のばね係止部35とを形成している。連結片部31は軸孔37を先端側に形成している。ガイド部32は外周に連続した歯部38を形成している。
【0028】
以上のアーム3は、配置空間17に配置された後、ねじ9aがカラー6及び軸孔34を介して前突出壁12aの対応部に係止されることにより基体1に対し所定角だけ回動可能に枢支されて、連結片部31が図3のごとく上区画壁16bに当接した起立状態(蓋の閉位置)と、図4及び図5のごとく第一軸支部であるねじ9aを支点として回動され、先端側を基体前方へ移行した傾動状態(蓋の切換途中位置及び開位置)とに切換可能となる。
【0029】
この例では、ガイド部32の歯部38が上記したダンパー8の回転ギア8bに噛み合っている。このため、アーム3はダンパー8の制動作用を受けてゆっくりと回動されながら、起立状態と傾動状態とに切り換えられることになる。また、蓋2は、アーム3A,3Bの各連結片部31に対して、第二軸支部であるねじ9bが軸孔37から軸孔26aに係合された状態で、ねじ9bを支点として回動可能に連結支持される。
【0030】
なお、前記したカラー6は、頭部6a及び筒部6bからなり、ねじ9aを通す軸孔6cを中心に有している。頭部6aは、軸孔34を形成している筒状部に支持されるトーションばね5を抜け止めする。トーションばね5は、図6(b)のごとく巻線部の一端5aが基端部30のばね係止部35に係止され、他端5bが下後縦壁16cに設けられた切欠部に掛け止め係止されている。この作動は、アーム3が前述した起立状態から付勢力に抗して傾動状態に切り換えられることでアーム3の遊びを吸収してがたつきを防いだり、傾動状態から起立状態に良好に切り換えられるようにする。
【0031】
これに対し、制御部材4は、ガイド部15の筒部及び溝部15aに嵌合される細長い平板部40、及び平板部40の前端面に斜め上側に突出された対の腕部41からなる。各腕部41は、上記した蓋側の軸穴24aに嵌合される軸部42を同軸線上に有している。平板部40には、後側凹所43と前側凹所44とが略中間の仕切部45を挟んで設けられていると共に、凹所43,凹所44を区画している上面及び両側面に設けられたリブ47a,47bbを有している(図2,図5を参照)。凹所43には片側の内側面に連続した歯部48が設けられている。凹所44には仕切壁45に立設されたばね用支持軸49が前方に突出されている。リブ47a,47bは、前後方向に延びて制御部材4を摺動し易くする。
【0032】
以上の制御部材4は、例えば、平板部40をガイド部15の筒部内に挿入することによりガイド部15に摺動可能に配置されると共に、付勢手段であるコイルばね7により後方つまり基体前方への突出量を減じる方向に付勢されている。コイルばね7は、後端側が支持軸49に支持され、前端側が規制片10eに当接した状態に配置されており、制御部材4が基体前方への突出量を増大する方向に摺動される過程で付勢力を蓄え、その蓄えられた付勢力により制御部材4を後方へ摺動可能にする。
【0033】
また、制御部材4は、軸部42が蓋の軸穴24aに回動可能に連結されており、蓋2が閉位置や開位置にあるとき基体前方への突出量を最小限に減じている。制御部材4は、蓋2が閉位置から開方向又は開位置から閉方向へ回動、つまり上記した切換途中位置になる過程で、コイルばね7に付勢力を蓄えながら基体前方への突出量を最大となるよう摺動される。この機構では、その制御部材4の摺動により第一軸支部であるねじ9aと、第二軸支部であるねじ9bと、第三軸支部である軸部24aとが相対的にほぼ一直線上に並び、蓋2がその一直線上に並ぶのを境にして開方向又は閉方向に反転切り換えられる。また、この機構では、歯部48が上記したダンパー8Aの回転ギア8bに噛み合っていて、制御部材4がダンパー8Aの制動作用を受けてゆっくりと摺動される。
【0034】
(作動)次に、以上の蓋開閉機構により蓋を開閉するときの主な作動について説明する。
(1)図1と図3及び図6は蓋2が基体開口部を塞いだ閉位置での状態を示している。この状態では、制御部材4がコイルばね7の付勢力によりクッションC2に当接してガイド部後方への摺動を規制された態様であり、アーム3が上区画壁16bに当接して後方への回動を規制された起立態様となっている。蓋2は、図6(c)の原理図に示されるごとく、第三軸支部を構成している軸部42(及び軸穴24a)が第一軸支部を構成しているねじ9a(及び軸孔34)と第二軸支部を構成しているねじ9b(及び軸孔37,26a)とを結ぶ直線に対して前方に位置しており、かつコイルばね7により後方へ摺動付勢されている制御部材4により不用意にがたつかないよう保持されている。このため、この機構では、上記特許文献1や2のごとく蓋を閉位置に係止したり保持する係脱機構が不要となり簡素化できる。
【0035】
(2)図4及び図7は蓋2が上記した切換途中位置での状態を示している。つまり、蓋2は掴み部21を摘んで上記切換途中位置である開方向へ回動操作される。この回動過程では、蓋2がねじ9bを支点として開方向へ回動されるのに伴って、まず、アーム3がねじ9aを支点として基体前方つまり上区画壁16bから離れる方向にトーションばね5の付勢力に抗して回動ないしは傾動され、同時に制御部材4がコイルばね7の付勢力に抗して(付勢力を蓄積すること)前方へ摺動される。この結果、蓋2は、図7(c)の原理図に示されるごとく、第三軸支部を構成している軸部42(及び軸穴24a)が第一軸支部を構成しているねじ9a(及び軸孔34)と第二軸支部を構成しているねじ9b(及び軸孔37,26a)とほぼ一直線上に並ぶ同図の切換途中位置となる。そして、蓋2は、その切換途中位置から開方向又は閉方向に若干量だけ回動操作すると、以降は制御部材4がコイルばね7に蓄えられた付勢力により後方へ動かされて、開位置又は閉位置に自動的に切り換えられる。
【0036】
(3)蓋2は、閉位置に切り換えられると、アーム3及び制御部材4が上記した態様となって閉位置に安定保持される。一方、図5と図8は蓋2が基体開口部を全開した開位置に切り換えられた状態を示している。この状態では、アーム3が前記した基体前方つまり上区画壁16bから離れる方向に回動ないしは傾動された態様を保ち、制御部材4がコイルばね7の付勢力によりクッションC2に当接してガイド部後方への摺動を規制された態様となっている。このため、蓋2は、図8(c)の原理図に示されるごとく、第三軸支部を構成している軸部42(及び軸穴24a)が第一軸支部を構成しているねじ9a(及び軸孔34)と第二軸支部を構成しているねじ9b(及び軸孔37,26a)とを結ぶ直線に対して後方に位置しており、かつコイルばね7により後方へ摺動付勢されている制御部材4により不用意にがたつかないよう安定保持されている。また、以上の蓋開閉機構では、図6(a)に一点鎖線で示したごとく蓋が位置固定された枢支部を中心として回動される従来構成に比べ、蓋2の開位置において、第二軸支部9b(26a)がアーム3の回動により基体前方へ移行することから図8のごとく基体1に対する蓋2の高さを低く抑えることができる。この例では、蓋2が開位置において、立壁14の高さ相当分だけ基体1に接近配置される。
【0037】
(4)蓋2を再び開位置から閉位置に切り換える場合は、掴み部21を摘んで上記切換途中位置である開方向へ回動操作すると、蓋2がねじ9bを支点として閉方向へ回動されて上記した切換途中位置に達する。以降は、蓋2がその切換途中位置から閉方向に若干量だけ回動操作されると、制御部材4がコイルばね7に蓄えられた付勢力により後方へ動かされて、閉位置に自動的に切り換えられることになる。勿論、以上の蓋開閉機構では、制御部材4の動きを制動するダンパー8Aを有しているため、又、アーム3の動きを制動するダンパー8を有しているため、制御部材4及びダンパー8Aを介して、或いはアーム3及びダンパー8を介して蓋2の開閉速度を緩和して蓋切換作動として高級感を付与できる。
【0038】
なお、本発明は、請求項1で特定した構成を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。例えば、蓋が上方向に回動されて開位置に切り換えられる構成に代え、基体及び蓋を天地逆に配置して蓋が下方向に回動されて開位置に切り換えられる構成でもよい。また、制動手段はダンパーに代えて摩擦タイプでもよい。第一、第二、第三軸支部としては、ねじや軸部以外にシャフトや凸部、更には他の枢支部構成でも差し支えない。
【符号の説明】
【0039】
1…基体(15はガイド部、15aは溝部、16は支持部、17は配置空間)
2…蓋(20は意匠面、21は操作部、26は連結片部、26は取付孔)
3…アーム(30は基部、32はガイド部、38は歯部、35はばね係止部)
4…制御部材(40は平板部、41は連結片部、43と44は凹所、48は歯部)
5…トーションばね(付勢手段)
6…カラー(6aは頭部、6bは筒部、6cは軸孔)
7…コイルばね(付勢手段)
8,8A…ダンパー(制動手段、8aは本体、8bはギア)
9aと9b…ねじ(第一と第二軸支部)
9cと9d…ねじ
12…側面(12aは前突出壁)
41…連結片部(34は軸孔)
42…軸部(第三軸支部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を箱状基体の開口部を塞ぐ閉位置と前記開口部を開放する開位置とに切り換える蓋開閉機構において、
前記基体に第一軸支部により枢支した基端側を支点として、先端側を前記基体前方へ回動可能にし、かつ前記蓋に第二軸支部により回動可能に連結しているアームを有し、
前記蓋が前記アームの回動に連動して開方向又は閉方向に回動されることを特徴とする蓋の開閉機構。
【請求項2】
前記基体に設けられたガイド部に摺動可能に配設されていると共に、先端側を前記蓋に第三軸支部を介して回動可能に連結している制御部材を有し、前記蓋の開閉過程において、前記第二軸支部が前記第一軸支部を中心とした前記アームの回動により前記蓋を前記基体前方へ移行し、前記第一軸支部と前記第二軸支部及び前記第三軸支部が相対的にほぼ一直線上に並ぶのを境にして、前記蓋が開方向又は閉方向に反転切り換えられることを特徴とする請求項1に記載の蓋の開閉機構。
【請求項3】
前記制御部材は、前記蓋が閉位置及び開位置にあるとき前記基体前方への突出量を減じており、かつ、閉位置から開方向又は開位置から閉方向へ回動されて前記第一軸支部と前記第二軸支部及び前記第三軸支部が相対的にほぼ一直線上に並んだとき前記ケース基体前方への突出量を最大となることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋の開閉機構。
【請求項4】
前記制御部材が前記基体前方への突出量を増大する過程で付勢力を蓄え、かつ、前記基体前方への突出量を減じる過程でその付勢力により前記制御部材を移動可能にする付勢手段を有していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の蓋の開閉機構。
【請求項5】
前記制御部材の摺動を制動する制動手段を有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の蓋の開閉機構。
【請求項6】
前記第一軸支部付近に設けられ、前記アームが回動されて先端側を前記基体前方へ移行する過程で付勢力を蓄積する付勢手段を有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の蓋の開閉機構。
【請求項7】
前記アームの回動を制動する制動手段を有していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の蓋の開閉機構。
【請求項8】
前記アームは前記蓋の閉位置で前記基体の両側部のうち少なくとも一方側部に配置されていると共に、前記制動部材は前記基体の上下面の一方に配置されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の蓋の開閉機構。
【請求項9】
箱状基体が起立ないしは斜めに立ち上がったパネル部に対して埋設状態に設けられて開口部を略水平ないしは斜めに配置している収納装置において、前記開口部を開閉する蓋を有し、前記蓋を請求項1から8の何れかに記載の蓋の開閉機構により切り換えることを特徴とする収納装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate