説明

蓮根掘取装置

【課題】蓮根掘取装置を、蓮田の内部の水を高圧ポンプに取水するように構成した蓮根掘取装置において、蓮田内の水であっても高圧ポンプ等が詰まることの無いようにし、蓮根を掘り取るための水を安定して供給して良好な作業性を得るとともに、蓮田内を容易に移動すべく構成する。
【解決手段】蓮田内の表面水層上を浮上した状態で移動可能とするフロート8上に載置し、泥水濾過装置10を介して取水した水を、高圧ポンプ22により吐出する構成の蓮根掘取装置1において、前記フロート8を後端のみを開口した平面視略U字型とし、前記フロート8の下方及び後方に、前記高圧ポンプ22からの圧力水を吐出するジェット推進装置55を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓮根を栽培する蓮田内において、移動しながら蓮根の掘り取り作業を行う蓮根掘取装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓮根掘取装置に関する公知技術においては、特許文献1の如く、蓮田内で移動する走行装置に、エアコンプレッサーを設けて、該エアコンプレッサーが吐出する圧搾空気をホースから供給して、蓮根の掘り取りを行うように構成していた。また、取水装置を設け、ある程度の水をも圧力を掛けて吐出して、圧搾空気と共に圧力水を吐出することも可能としていたのである。
また、特許文献2に記載の技術においては、着座用シートに座って蓮根等の収穫作業をする技術が開示されている。
【0003】
蓮田は、図10に図示する如く、硬い土壌である耕盤Dが最下部に存在し、その上に泥土層Fが10〜20センチ幅構成され、その上に泥と水が混合した状態の泥水層Gが40〜50センチ幅だけ存在し、その上には、泥が沈殿してある程度澄んだ状態の表面水層Wが10センチ程度構成されているのである。
蓮根Rは、上記の中で10〜20センチ幅の泥土層Fに、水平方向に這うように成育されているのである。この蓮根Rを掘り取る際には、通常は掘り取り器具として、圧搾空気の吐出ノズルや、圧力水の吐出ノズルからの、圧力空気や圧力水の吐出による、泥土の掻上げにより、蓮根Rを泥土層Fに保持しておく保持力を無くして、浮き上がらせるという作業により収穫するのである。
【0004】
掘り取り収穫作業は、正月を迎える冬期に行われるのが通常であり、非常に低温の厳寒の時期に行われるのである。また、蓮田の深さが全体として深いので、図9のように作業者Mは、胸までの防水作業衣を着た状態で、胸近くまで蓮田に沈んだ状態で作業を行うこととなり、非常に厳しい条件での作業となるのである。
【0005】
従来、蓮根掘取装置を用いない場合は、作業者Mが足先で泥土層F内を探って、蓮根Rが存在する部分を足先で掻いて、蓮根Rを浮き上がらせるという作業を行っていたのである。
本発明においては、この足先での掘り取り作業を、圧力水を吐出することによる、泥土層Fの流動化により、蓮根Rが保持力を失って浮き上がってくるようにして収穫する装置を提供せんとするものである。
【0006】
また、従来の蓮根掘取装置を用いた場合には、図8に示すような状態で作業をしていたのである。
蓮田Tの横を通る農道Qにトラック等に載せた状態の、エンジン・ポンプセット装置120を配置し、該農道Qの側方を流れる灌漑水通路Nから取水口Lを介して水をエンジン・ポンプセット装置120により汲み上げて、これを延長ホース121を介して、蓮根掘取装置101に供給していたのである。
この蓮根掘取装置101には、ホース114を介して圧力水吐出ノズル119が設けられている。そして、図9にも示すように、該圧力水吐出ノズル119を作業者Mが操作することにより、泥土層Fに圧力水を吐出して、泥土層F内の蓮根Rの保持力を無くして、浮かせるという掘り取り作業をしていたのである。
【0007】
しかし、この従来の蓮根掘取装置101の場合には、次のような不具合が存在していたのである。
即ち、蓮田Tにおいては、例えば特許文献3に示されているような肥料散布装置が用いられ一反当たり120kgという大量の蓮根Rを育てるための肥料が投入されており、この蓮田T内において、該大量の肥料が溶け込んでおり、泥水層Gも表面水層Wも泥土層Fも、この大量の肥料を含有した状態となっているのである。
この状態で圧力水吐出ノズル119により、蓮田Tの内部を掻き回すこととなるので、該蓮田Tの内部の水が流動することにより排水口Xから出ると、富栄養化した状態の排水が大量に排水路に流れ、湖水や河川を富栄養化するという環境問題が発生するのである。
【0008】
特に、図8の蓮根掘取装置101の場合には、蓮田T内の表面水層Wからポンプへ取水するのではなくて、農道Qの側部の灌漑水通路Nから取水しているので、この清浄水を蓮田Tの内部に吐出すると、この灌漑水通路Nから取水しただけの量の水が、蓮田Tから排水口Xを経て、排水路から湖水や河川に流れ出るという不具合が発生していたのである。
この不具合を解消するためには、蓮田Tの内部の肥料を大量に含んだ表面水層Wの層の水を、圧力水吐出ノズル119からの吐出水とすることにより解消出来るのである。
しかし、蓮田Tには、蓮根Rの葉っぱの部分が枯れた状態で浮いており、またその他の多数の浮遊物が存在し、また、蓮田T内の泥水にも泥以外にも枯葉などの夾雑物が存在しているため、蓮田Tの内部の表面水層Wを取水すると、エンジン・ポンプセット装置120のポンプ等がすぐに詰まってしまうという不具合が発生するのである。すなわち、このようにポンプ等が詰まってしまうと、蓮根Rを掘り取るための水が安定して供給されず、蓮根Rの掘り取り作業性が低下するのである。
【0009】
また、図8の蓮根掘取装置101は、蓮田Tの外に配置されるエンジン・ポンプセット装置120と延長ホース121を介して接続されるため、前記圧力水吐出ノズル119を操作する作業者に対する追従性が低く、作業者の負担も大きくなり、作業性の面で不具合があった。
【特許文献1】特開平11−103633号公報
【特許文献2】特開2001−286212号公報
【特許文献3】特開2004−57082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような、蓮田T内の水を、エンジン・ポンプセット装置を用いて吸入し、蓮根Rを掘り取るための圧力水として吐水するものである。そして、このエンジン・ポンプセット装置を、蓮田T内で容易に移動できるようにし、この移動手段として、掘りとるための吐水を推進手段として利用できるように構成し、自走して作業者の負担を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、蓮田内の表面水層上を浮上した状態で移動可能とするフロート上に、エンジン・ポンプセット装置を載置し、前記フロートの後部に泥水濾過装置を配置し、該泥水濾過装置から吸水パイプを介して取水し、高圧ポンプにより高圧とした圧力水を、圧力水吐出ノズルから吐出するようにした蓮根掘取装置において、前記エンジン・ポンプセット装置の左右両側下方にフロートを配置し、該左右のフロートの間に前記泥水濾過装置を配置したものである。
【0013】
請求項2においては、請求項1記載の蓮根掘取装置において、前記フロートを後端のみを開口した平面視略U字型としたものである。
【0014】
請求項3においては、請求項1記載の蓮根掘取装置において、前記フロートの下方及び後方に、前記高圧ポンプからの圧力水を吐出するジェット推進装置を配置したものである。
【0015】
請求項4においては、請求項3記載の蓮根掘取装置において、前記高圧ポンプからの圧力水は、掘り取り時は前記圧力水吐出ノズルへ供給し、推進時には、前記ジェット推進装置に供給すべくポンプの吐出口に切換手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、簡単な構成で、蓮田T内を移動できる蓮根掘取装置を実現することができる。また、蓮根掘取装置をフロートによって、蓮田T上を浮上させた状態で移動できるので、掘り取り作業をしながら、作業スピードに合わせて蓮根掘取装置を移動させることができる。また、ホイル式やクローラ式の走行装置を設けて、蓮田T内で自走させるよう構成した場合に比べて、部品点数が抑えられ、製造コストが低減される。また、左右のフロートの間に前記泥水濾過装置を配置したので、ゴミ等を吸い込み難くすることができる。
【0018】
請求項2においては、フロートの容量が増して浮力が大きくなる。よって、作業者がフロートの上に乗ることも可能となる。また、左右両側にフロートが位置するので安定して支えることができる。
【0019】
請求項3においては、フロートを自走させる推進装置として、フロートに搭載されたポンプを動力源とするジェット推進装置を用いることで、推進用のエンジンが不要となるので、構成が簡単となり、製造コストが低減される。
【0020】
請求項4においては、高圧ポンプの圧力水を、掘り取り作業用と、推進用に利用することができ、ひとつの部品を多機能に利用することができ、そして、切換手段により容易に切り換えることができて、作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の蓮根掘取装置1による掘り取り状態を示す図、図2は本発明の蓮根掘取装置1の全体側面図、図3は同じく本発明の蓮根掘取装置1の後面図、図4は同じく本発明の蓮根掘取装置1の平面図、図5は高圧ポンプ22の給水回路を示すブロック図、図6は泥水濾過装置10の構成を示す図、図7は同じく別実施形態を示す図、図8は従来の蓮根掘取装置101による掘り取り状態を示す図、図9は蓮田Tにおける掘り取り作業を示す図、図10は蓮田Tの状況を示す断面図である。
【0022】
図1〜図4において、本発明の蓮根掘取装置の構成について説明する。
蓮田Tにおいて、蓮根掘取装置1は、表面水層Wの部分において浮上させて、蓮田T内を容易に移動可能としているのである。
そして、蓮根掘取装置1には、表面水層Wの部分において浮上する浮力を得るためのフロート8が設けられている。該フロート8は平面視略U字型に構成され、後中央部から後方に開口し、該開口部分の内側に後述する泥水濾過装置10を配置している。こうして泥水濾過装置10を安定支持するとともに、吸水時にフロートにより前左右3方から浮遊するゴミ等が吸い込まれないようにしている。また、前左右方向から障害物等が泥水濾過装置10に当たることも防止している。なお、フロートの後端は左右連結することも可能であるが、水中に潜ると推進の抵抗となるので開放した構成としている。フロート8の前後中央部から前方は左右のフロート部分を連結するものであり、この連結部上にエンジン・ポンプセット装置20を配置している。フロート8前端は斜め前上方に突出し、前進時に前端が潜り込まないようにしている。
前記フロート8の上に、機体フレーム9を載置している。該機体フレーム9の上に、図6等の如く、防振装置6・6・・・を介装して、該防振装置6の上に、エンジン・ポンプセット装置20のセットフレーム7を載置している。
そして、前記フロート8の下に、ジェットノズル42・42を配設している。ジェットノズル42より、高圧ポンプ22で得られた加圧水をジェット水として噴出することにより、フロート8を前進させる。
【0023】
機体フレーム9は、機体左右方向を長手方向として前後に略平行に配置される横フレーム9a・9aと、これら横フレーム9a・9aの左右両端部において各フレーム9a・9a間に機体前後方向に架設される縦フレーム9b・9bとを有している。そして、横フレーム9a・9a上に前記防振装置6・6・・・がそれぞれ配置固定され、これら防振装置6・6・・・上に正面視L字状の取付フレーム28・28を介して前記セットフレーム7が載置固定される。このような構成の機体フレーム9の下方において、前記フロート8が固定される。
【0024】
また、セットフレーム7は、パイプ状の部材が四角状に折曲げ形成され左右両側部を構成する側部フレーム7a・7aと、これら左右の側部フレーム7a・7aの下辺部にて架設され前記エンジン・ポンプセット装置20を載置する載置板7bと、側部フレーム7a・7aの上部において前部及び後部に架設される横フレーム7c・7cとを有しており、略直方体状の外形を構成している。
【0025】
このような構成において、機体フレーム9上に配設される防振装置6・6・・・を介してセットフレーム7が載置固定され、該セットフレーム7の載置板7b上に前記エンジン・ポンプセット装置20が載置される。つまり、該エンジン・ポンプセット装置20を構成するエンジン21と高圧ポンプ22の振動が、そのまま機体フレーム9やフロート8に伝達されることの無いように、セットフレーム7と機体フレーム9との間に防振装置6を介装しているのである。
【0026】
また、機体フレーム9の後側には、軸受けトレイ31が後方に向けて延設されており、該軸受けトレイ31の下方に、泥水濾過装置10が配置されている。
前述の如く、エンジン・ポンプセット装置20は、エンジン21と高圧ポンプ22を一体的に構成している。そして、エンジン21により高圧ポンプ22を駆動すると共に、エンジン21には発電機30が付設されており、該発電機30により発電した電力で駆動される駆動モータ11が設けられている。該駆動モータ11は減速機12を介してフレキシブル駆動軸13に動力を伝達し、該フレキシブル駆動軸13が、泥水濾過装置10の目詰まり防止体3を回転する動力として、前記軸受けトレイ31に上下方向に軸支される入力カウンター軸18に動力伝達すべく構成している。
前記駆動モータ11と減速機12をセットとしたものが、セットフレーム7の上部に固定されている。なお、セットフレーム7には、前記発電機30により発電される電力を蓄えるバッテリ(図示略)を、前記載置板7bに載置すること等により搭載することもできる。
【0027】
高圧ポンプ22からは、泥水濾過装置10に向けて吸水パイプ17が延設されている。また、同じく高圧ポンプ22からは、圧力水吐出ホース14とジェットパイプ41が延設されている。該圧力水吐出ホース14は圧力水吐出ノズル19に向けて延設され、該ジェットパイプ41はジェットノズル42に向けて延設されている。そして、高圧ポンプ22の吐出口23には、圧力水吐出ノズル19への吐出と、ジェットノズル42への吐出を切り替える切換弁43が配設される。つまり、高圧ポンプ22により、泥水濾過装置10及び吸水パイプ17を介して蓮田T内の水を取水し、この取水した水を圧力水吐出ホース14を介して圧力水吐出ノズル19、または、ジェットパイプ41を介してジェットノズル42より吐出する構成としている。
【0028】
このような構成により、作業者Mは、図1に示すような状態で蓮根Rの掘り取り作業を行うのである。すなわち、蓮田T上に浮上した状態の蓮根掘取装置1を移動させながら、蓮田T内から泥水濾過装置10及び吸水パイプ17を介して取水される水を利用して、圧力水吐出ホース14の先端部に設けられる圧力水吐出ノズル19を操作しながら蓮根Rの掘り取り作業を行う。また、掘り取り作業を行わない時には、ジェットパイプ41の先端部に設けられるジェットノズル42より圧力水を噴出し、蓮根掘取装置1を推進させることも可能である。
【0029】
図6において、泥水濾過装置10の機構を説明する。
前述したように、圧力水吐出ノズル19からは、掘り取り作業を行うための圧力水が吐出されるのであるが、この吐出される水が泥土層Fの部分を崩して、泥水を巻き上げるので、泥土層Fの上方においては、表面水層Wは澄んだ水ではなくて、表面水層Wと泥水層Gとが混ざって泥水の層となる。前記泥水濾過装置10は、このような蓮田Tの中の水を取水する際に濾過するためのものである。すなわち、本発明に係る蓮根掘取装置1においては、この泥が混ざった状態の水を高圧ポンプ22により取水する構成としているが、この泥水には泥以外にも枯葉などの夾雑物が存在しているため、泥を含めこのような夾雑物も泥水濾過装置10において濾過する必要があるのである。
【0030】
泥水濾過装置10は、外周に多数の孔部2a・2a・・・を有する椀状孔開き濾過鉄板2により構成した椀状の外周体を構成している。そして、該椀状孔開き濾過鉄板2の上方開口部は、円板状の上面板4により閉じられており、該椀状孔開き濾過鉄板2の内部においては、内部から詰まり部分を外に放擲すべく、目詰まり防止体3が椀状孔開き濾過鉄板2の内周部分に沿うようにして設けられている。
【0031】
目詰まり防止体3は、回転するブラシ3aにより構成されており、該ブラシ3aが放射状に複数ヶ所(4箇所又は6箇所又は8箇所)一定間隔を置いて配置されている。ここで、目詰まり防止体3を構成する各ブラシ3aは、泥水濾過装置10を介して取水される水の邪魔になったり取水量が低下したりすることのないように配置される。
【0032】
また、泥水濾過装置10においては、前記吸水パイプ17に対して連通接続される筒軸24が、前記軸受けトレイ31に上下方向に軸支され固定され、平面視で略円形状となる泥水濾過装置10の略中心部に(同一軸心となるように)配置されている。つまり、筒軸24は、泥水濾過装置10において中心軸となる。そして、この筒軸24の下部において外周に開けた複数の孔24aから、椀状孔開き濾過鉄板2内に入った濾過後の水を吸水すべく構成している。該筒軸24と椀状孔開き濾過鉄板2とは、それぞれの底面を介してボルトやピン等の固定具35により固定されている。
【0033】
前記目詰まり防止体3は、泥水濾過装置10の上面を構成する回転上面板4に固設されており、該回転上面板4には前記した入力カウンター軸18からチェーン25を掛けて駆動されるスプロケット5が設けられている。つまり、入力カウンター軸18は、前記軸受けトレイ31の下方に突出しており、この突出部分にスプロケット18aが固設され、該スプロケット18aと前記スプロケット5とにチェーン25が巻回されている。
【0034】
前記スプロケット5は、上面板4の下方において筒軸24に対して回転可能に外嵌される回転筒32に上面板4を介してボルトやピン等の固定具33により固定されている。また、この回転筒32の周囲においては、有底筒状となる目詰まり防止体3がボルトやピン等の固定具34により回転筒32に固設されている。この有底筒状となる目詰まり防止体3の外周側面を構成するようにして前記ブラシ3aが設けられ、このブラシ3aがその先端部を椀状孔開き濾過鉄板2の孔部2a・2a・・・に内周側から接触する状態で配置される。
【0035】
つまり、固定状態の筒軸24に対してスプロケット5が回転自在に外嵌され、該スプロケット5と前記回転筒32との間に上面板4が介装され、目詰まり防止体3が上面板4及び回転筒32に固設されることにより、スプロケット5と上面板4と目詰まり防止体3とが一体的に構成されている。そして、これら一体的なスプロケット5と上面板4と目詰まり防止体3とが、前記筒軸24の周囲にて該筒軸24を中心として低回転で駆動されるのである。
【0036】
このような構成において、駆動モータ11からの動力が、減速機12及びフレキシブル駆動軸13を介して入力カウンター軸18に伝達され、スプロケット18aが回転される。このスプロケット18aの回転が、チェーン25を介してスプロケット5を回転させ、該スプロケット5とともに上面板4及び目詰まり防止体3が筒軸24の周囲を回転する。これにより、目詰まり防止体3のブラシ3aが、椀状孔開き濾過鉄板2の孔部2a・2a・・・上を内周部分に沿って回転する。
【0037】
このように、蓮根掘取装置1において泥水濾過装置10を構成することにより、蓮田T内の水を蓮根Rの掘り取り作業に利用する際に、取水する水の中の泥や夾雑物が原因で高圧ポンプ22等が詰まることが無くなり、蓮根Rを掘り取るための水を安定して供給することができ、良好な作業性を得ることができる。
【0038】
また、泥水濾過装置10の目詰まり防止体3を回転するブラシ3aにより構成することにより、簡単な構造で、泥水濾過装置10の椀状孔開き濾過鉄板2の目詰まりを防止することができ、泥水濾過装置10の濾過性能を向上することができる。
【0039】
また、泥水濾過装置10は、次のような構成とすることもできる。図7において、泥水濾過装置10の別実施形態について説明する。なお、図6を用いて説明した泥水濾過装置10の前記実施形態と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本構成の泥水濾過装置10においては、ブラシ3aにより構成される目詰まり防止体3を固定した状態とし、椀状孔開き濾過鉄板2を回転する構成としている。すなわち、目詰まり防止体3は、固定された状態の筒軸24にボルトやピン等の固定具36によって外嵌固定される固定筒37を介して該筒軸24に固定される。そして、スプロケット5は、上面板4の下方において筒軸24に対して回転可能に外嵌される回転筒38に上面板4を介してボルトやピン等の固定具39により固定されている。
【0041】
また、上面板4の外縁部には、下方に向けて折曲げ形成される支持部4aが形成されており、この支持部4aに、椀状孔開き濾過鉄板2の上端部が内接した状態でボルトやピン等の固定具40によって固着される。なお、上面板4と椀状孔開き濾過鉄板2との固着部における構成や固着方法は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、椀状孔開き濾過鉄板2の上端部を上面板4の支持部4aに外接させたり、椀状孔開き濾過鉄板2の上方を内側に折曲げ形成して椀状孔開き濾過鉄板2側に支持部を形成したりしてもよく、また、固着方法として溶接を用いることもできる。
【0042】
つまり、固定状態の筒軸24に対してスプロケット5が回転自在に設けられ、該スプロケット5と前記回転筒38との間に上面板4が介装され、該上面板4に対して椀状孔開き濾過鉄板2が固着されることにより、スプロケット5と上面板4と椀状孔開き濾過鉄板2とが一体的に構成されている。そして、これら一体的なスプロケット5と上面板4と椀状孔開き濾過鉄板2とが、前記筒軸24の周囲にて該筒軸24を中心として低回転で駆動されるのである。
【0043】
このような構成において、駆動モータ11からの動力が、減速機12及びフレキシブル駆動軸13を介して入力カウンター軸18に伝達され、スプロケット18aが回転される。このスプロケット18aの回転が、チェーン25を介してスプロケット5を回転させ、該スプロケット5とともに上面板4及び椀状孔開き濾過鉄板2が筒軸24の周囲を回転する。これにより、椀状孔開き濾過鉄板2が、目詰まり防止体3のブラシ3aの外周部分に沿って回転する。つまり、椀状孔開き濾過鉄板2が回転することによって、その孔部2a・2a・・・に対してブラシ3aが作用する。
【0044】
このような構成によっても、簡単な構造で、泥水濾過装置10の椀状孔開き濾過鉄板2の目詰まりを防止することができ、泥水濾過装置10の濾過性能を向上することができる。
【0045】
図1〜図5において、フロート8及びジェット推進装置55について説明する。
図4に示すように、フロート8は、左右に配置される左フロート8Lと右フロート8Rが前部で接続されて、平面視略U字型となっている。このように、左右のフロート8L・8Rを後部で接続してU字型とすることで、フロートの浮力が大きくなり、作業者はフロート上に乗ることも出来る。
【0046】
ジェット推進装置55は、圧力水を噴出するジェットノズル42・42と、高圧ポンプ22と、高圧ポンプ22とジェットノズル42・42間に介装されるジェットパイプ41・41と、高圧ポンプ22の吐出口23の配置される切換弁43によって構成される。
【0047】
ジェットノズル42・42は、高圧ポンプ22の吐出口23から左右に延設されたジェットパイプ41の先端に、回動可能に取り付けられており、左フロート8L・右フロート8Rの下方にそれぞれ配設される。つまり、泥水濾過装置10の両側から後方に圧力水が吐出されるように構成している。このように構成することで、圧力水吐出の反作用で機体を前方へ推進させることができ、この圧力水で椀状孔開き濾過鉄板2の外周に吹きつけることにより、椀状孔開き濾過鉄板2の外周に付着したゴミ等を吹き飛ばすことが可能となり、清掃の手間を省くことができる。また、前記ジェットノズル42・42を、鉛直線の回りに回転させることにより、ジェット水の噴出方向を変えて、推進方向を変更可能としている。
【0048】
ジェットパイプ41は、高圧ポンプ22の上部に設けられた吐出口23より、フロート8下部まで延設されており、セットフレーム7や機体フレーム9等の間をくぐり抜けるよう配設されている。
【0049】
前記高圧ポンプ22の吐出口23には一体的に切換弁43が配置され、該切換弁43は、図5に示すように、圧力水吐出ホース14への吐出と、ジェットパイプ41・41への吐出とを切り替えるようにしている。切換弁43には操作レバー48が設けられ、該操作レバー48は図示しない弁体と連結され、該操作レバー48を回動することで圧力水吐出ホース14とジェットパイプ41・41への吐出を切り換えられるようにしている。
【0050】
すなわち、作業者Mは、蓮根の掘り取り作業をする際には、操作レバー48を回動操作して、圧力水を圧力水吐出ホース14へ導き、圧力水吐出ノズル19から吐出する。掘り取り作業をやめて移動する際には、圧力水をジェットパイプ41・41へ導き、ジェットノズル42から圧力水を吐出させ、この圧力水の吐出による推進力により蓮根掘取装置1を自走させることができる。このように、フロート8を自走させる推進装置として、フロート8に搭載された高圧ポンプ22を動力源とするジェット推進装置55を用いた場合には、推進用のエンジンや動力伝達機構や走行機構等が不要となるので、構成が簡単となり、製造コストが低減される。
【0051】
なお、本実施例においては、ジェットノズル42・42を左右二箇所設ける構成としたが、ジェットノズル42は必ずしも二つである必要はなく、一つ、もしくは三つ設けるよう構成してもよい。また、本実施例においては、左フロート8L・右フロート8Rの下方にジェットノズル42・42を配置しているが、ジェットノズルの配置場所は上記場所に限定されるものではなく、フロート8の後方に配置してもよい。
また、本実施例おいては、手動で操作する切換弁43を用いているが、限定されるものではなく、切換弁43を電磁バルブで構成して、該切換弁の操作スイッチを圧力水吐出ノズル19のグリップ部に設けるように構成することも可能であり、この場合掘取作業中に本機を移動させたい場合等では操作が容易にでき、いちいち本機側に移動して操作する必要がなく作業性を向上できる。
さらに、本実施例においては、高圧ポンプ22の吐出口23に一箇所切換弁43を設けて、圧力水吐出ノズル19とジェットノズル42の切換を行う構成としたが、圧力水吐出ノズル19とジェットノズル42それぞれにコックを設ける構成とすることもできる。
【0052】
以上の如く、フロート8により蓮田T上を容易に移動可能な機体フレーム9上にエンジン・ポンプセット装置20を載置し、取水する水を濾過する泥水濾過装置10を機体フレーム9よりも下方の蓮田T内に配置し、蓮根Rを掘り取るための水を、蓮田T内から泥水濾過装置10及び吸水パイプ17を介して取水するとともに高圧ポンプ22により加圧し、圧力水吐出ノズル19から吐出する構成としたので、蓮田T内の水を、蓮根Rの掘り取り作業に使用することにより、別の位置に配置したエンジン・ポンプセット装置20から長い圧力水ホースにより送水して、蓮根Rの掘り取りをする必要がなくなったのである。故に、作業労力が軽減するとともに作業性が向上するのである。
【0053】
また、図1に示す如く、蓮根Rを掘り取るための水は、蓮田T内から取水して、圧力水吐出ノズル19により蓮田T内に吐出することにより、富栄養化した蓮田T内の用水を外部に流出させない構造としたので、蓮根Rを掘り取るための圧力水を外部から取水して注入することが無くなり、蓮田Tの内部に溜まっている富栄養水を、排水口Xから蓮田Tの外へ押し出すことが無くなるので、該蓮田Tからの排水が流れ込む河川や湖水を富栄養化するという環境問題を発生することが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の蓮根掘取装置1による掘り取り状態を示す図。
【図2】本発明の蓮根掘取装置1の全体側面図。
【図3】同じく本発明の蓮根掘取装置1の後面図。
【図4】同じく本発明の蓮根掘取装置1の平面図。
【図5】高圧ポンプ22の給水回路を示すブロック図。
【図6】泥水濾過装置10の構成を示す図。
【図7】同じく別実施形態を示す図。
【図8】従来の蓮根掘取装置101による掘り取り状態を示す図。
【図9】蓮田Tにおける掘り取り作業を示す図。
【図10】蓮田Tの状況を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 蓮根掘取装置
8 フロート
9 機体フレーム
10 泥水濾過装置
17 吸水パイプ
19 圧力水吐出ノズル
20 エンジン・ポンプセット装置
21 エンジン
22 高圧ポンプ
43 切換弁
55 ジェット推進装置
R 蓮根
T 蓮田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓮田内の表面水層上を浮上した状態で移動可能とするフロート上に、エンジン・ポンプセット装置を載置し、前記フロートの後部に泥水濾過装置を配置し、該泥水濾過装置から吸水パイプを介して取水し、高圧ポンプにより高圧とした圧力水を、圧力水吐出ノズルから吐出するようにした蓮根掘取装置において、前記エンジン・ポンプセット装置の左右両側下方にフロートを配置し、該左右のフロートの間に前記泥水濾過装置を配置したことを特徴とする蓮根掘取装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓮根掘取装置において、前記フロートを後端のみを開口した平面視略U字型としたことを特徴とする蓮根掘取装置。
【請求項3】
請求項1記載の蓮根掘取装置において、前記フロートの下方及び後方に、前記高圧ポンプからの圧力水を吐出するジェット推進装置を配置したことを特徴とする蓮根掘取装置。
【請求項4】
請求項3記載の蓮根掘取装置において、前記高圧ポンプからの圧力水は、掘り取り時は前記圧力水吐出ノズルへ供給し、推進時には、前記ジェット推進装置に供給すべくポンプの吐出口に切換手段を設けたことを特徴とする蓮根掘取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−223154(P2006−223154A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39539(P2005−39539)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】