説明

薄ゲージの定圧縮率弾性繊維からなる高強度布

100%から200%伸び率の間で比較的平らなモジュラス曲線を有する弾性繊維が開示される。本繊維は、非常に快適な感触を有する衣類にすることができる。好ましい弾性繊維は、熱可塑性ポリウレタンポリマーから作られ、紡糸口金から出るポリマーの溶融速度より少しだけ高いスピードで繊維が糸巻に巻き取られる固有の溶融紡糸プロセスによって作られる。本発明の弾性繊維から衣料用の衣類が作られ、そのような衣類は非常に良好な快適さを着用者に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薄ゲージの定圧縮率弾性繊維から作られる高強度布に関する。定圧縮率弾性繊維で作られる衣類は、着用者にとって非常に快適な感触を有する。これらの衣類は、弾性繊維で作られる高強度布に起因して穿孔に対する抵抗性も有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、世界中の変りゆくライフスタイルにより、断熱という基本機能を超えて進化した布の機能の広がりがますます求められるようになってきた。1つのそのような追求されている機能が、布の強度および品位を犠牲にしない、より薄いゲージの布である。このより薄いゲージの布によって、収納体積を小さくし、「かさ高さ」感を減らし、下着の場合に外衣を通しての外部可視性をなくすことができる。
【0003】
合成弾性繊維(SEF)は、普通は弾性を得るためにソフトセグメントとハードセグメントとを有するポリマーから作られる。ハードセグメントとソフトセグメントとを有するポリマーは、通常はポリ(エーテル−アミド)、例えばPebax(登録商標)、またはコポリエステル、例えばHytrel(登録商標)、または熱可塑性ポリウレタン、例えばEstane(登録商標)である。しかし、非常に高い伸び率のSEFは、通常はハードおよびソフトセグメント化ポリマー、例えば乾式紡糸ポリウレタン(Lycra(登録商標))または溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン(Estane(登録商標))を利用している。これらのSEFは、破断時伸び率は低いものから非常に高いものまで変化するが、すべて一般的に、伸び率(応力)の増加とともに指数関数的に増加するモジュラス(歪み)を有すると記述することができる。
【0004】
溶融紡糸TPU繊維は、溶融紡糸プロセスにおいて溶媒が用いられない点で、乾式紡糸ポリウレタン系繊維に対していくつかの利点を提供する。一方、乾式紡糸プロセスにおいては、ポリマーは溶媒に溶解され紡糸される。溶媒は、次に繊維から部分的に蒸発する。乾式紡糸繊維から溶媒のすべてを完全に除去するのは非常に難しい。乾式紡糸繊維から溶媒を除去するのを容易にするために、それらは通常は小さいサイズにされ、一緒に束ねられてマルチフィラメント(リボン状)繊維を作り出す。これは、所定のデニールについて、溶融紡糸繊維と比較して物理的サイズをより大きくする。これらの物理的特性は布のバルクを増加させ、マルチフィラメント束の性質は快適さを低下させる。
【0005】
溶融紡糸TPU繊維は、TPUポリマーを溶融紡糸することによって作られる。TPUポリマーは、3つの成分、すなわち、(a)通常はヒドロキシル基でエンドキャップされたポリエーテルまたはポリエステルである、ヒドロキシル末端中間体、(b)ポリイソシアネート、例えばジイソシアネート、および(c)短鎖ヒドロキシル末端連鎖延長剤の反応から作られる。ヒドロキシル末端中間体はTPUポリマーのソフトセグメントを形成し、ポリイソシアネートおよび連鎖延長剤はTPUポリマーのハードセグメントを形成する。ソフトセグメントとハードセグメントとを組み合わせるとTPUポリマーは弾性特性を得る。TPUポリマーは、しばしば、増強された特性を得るために、ポリイソシアネートでエンドキャップされたプレポリマーを用いることによって軽く架橋もされる。架橋用材料は、繊維の溶融紡糸時に溶融されたTPUポリマーに加えられる。
【0006】
ゼロから250%の伸び率の間で比較的一定の圧縮率を有するTPU弾性繊維を有すること、およびそのようなTPU繊維を含む定圧縮率衣類および/または布を作ることは望ましい。これらの定圧縮率布が薄ゲージであること、および高い穿孔抵抗性を有することも望ましい。そのような布から作られた衣類は、より高い快適さおよび信頼性を着用者に提供するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
少なくとも400%の限界伸び率を有し、100%から200%伸び率の間の負荷および除荷サイクル時に比較的平らな、かつ/または、一定のモジュラスを有する薄ゲージ、定圧縮率、高強度繊維を提供することが本発明の目的である。この平らな、かつ/または、一定のモジュラスは、負荷サイクルにおいて100%伸び率で1デニールあたり0.023グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.023グラム重未満、200%伸び率で1デニールあたり0.053グラム重未満の応力によって証明され、除荷サイクルにおいて200%伸び率で1デニールあたり0.027グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.018グラム重未満、100%伸び率で1デニールあたり0.015グラム重未満の応力によって同じく証明される。
【0008】
例となる繊維は、熱可塑性ポリウレタンポリマー、好ましくはポリエステルポリウレタンポリマーを溶融紡糸することによって作られる。繊維は、溶融紡糸プロセス時に、好ましくは5から20重量パーセントの架橋剤をポリマー溶融物に加えることによって、軽度に架橋される。
【0009】
繊維を製造するプロセスは、紡糸口金を通してポリマー溶融物を通過させることによって繊維が形成される溶融紡糸プロセスを含む。紡糸口金から出る繊維の速度と繊維がボビンに巻き取られる速度は比較的近い。すなわち、繊維は、繊維が紡糸口金から出るスピードより50%、好ましくは20%、より好ましくは10%より大きくないスピードでボビンに巻き取られるべきである。
【0010】
薄ゲージ、定圧縮率繊維を有する布を製造することが本発明の別の目的である。例となる実施態様において、布は、弾性繊維を硬質繊維、例えばナイロンおよび/またはポリエステル繊維と組み合わせる(例えば編むかまたは織る)ことによって作られる。この新規の繊維で作られた布も、高い破裂強度を有する。
【0011】
本弾性繊維から衣料用の衣類、例えば下着が作られる。そのような衣類は、非常に良好な快適さを着用者に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、70デニールマルチフィラメントの市販の乾式紡糸ポリウレタン繊維の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、70デニールの本発明の溶融紡糸定圧縮率熱可塑性ポリウレタン繊維の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、X軸をデニールとし、これに対してY軸を繊維幅の自乗(平方ミクロン)として示すグラフである。本発明の繊維が市販乾式紡糸繊維と比較されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の繊維は、熱可塑性エラストマーから作られる。好ましい熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタンポリマー(TPU)である。本発明は、TPUを用いて記載されるが、これは一実施態様でしかなく、当業者によって他の熱可塑性エラストマーが用いられ得ると理解されるべきである。
【0014】
本発明において用いられるTPUポリマーのタイプは、TPUポリマーが適当な分子量を有する限り、当分野および文献において公知であるいずれの従来のTPUポリマーであってもよい。TPUポリマーは、一般に、ポリイソシアネートを1つ以上の連鎖延長剤とともに中間体、例えばヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネート、またはそれらの混合物と反応させることによって調製される。これらのすべては当業者に周知である。
【0015】
ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、一般に、約500から約10,000、望ましくは約700から約5,000、好ましくは約700から約4,000の数平均分子量(M)を有し、一般に1.3未満、好ましくは0.8未満の酸価を有する直鎖ポリエステルである。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量と関連付けられる。ポリマーは、(1)1つ以上のグリコールと1つ以上のジカルボン酸または酸無水物とのエステル化反応によって、あるいは(2)エステル交換反応、すなわち1つ以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応によって製造される。末端ヒドロキシル基が優勢である直鎖を得るためには、一般に、酸に対して1モル超のグリコールのモル比が好ましい。適当なポリエステル中間体は、さまざまなラクトン、例えば通常はε−カプロラクトンと二官能性開始剤、例えばジエチレングリコールとから作られるポリカプロラクトンも含む。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはそれらの組み合わせであってよい。単独で用いられても混合物中で用いられてもよい適当なジカルボン酸は、一般に、合計4から15個の炭素原子を有し、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、および類似物を含む。上記のジカルボン酸の無水物、例えば無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、または類似物も用いられてよい。アジピン酸が好ましい酸である。反応して望ましいポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族、芳香族、またはそれらの組み合わせであってよく、合計2から12個の炭素原子を有し、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、および類似物を含み、1,4−ブタンジオールが好ましいグリコールである。
【0016】
ヒドロキシル末端ポリエーテル中間体は、2から6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、通常はエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはその混合物を含むエーテルと反応させた、合計2から15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオール、好ましくはアルキルジオールまたはグリコールから誘導されるポリエーテルポリオールである。例えば、ヒドロキシル官能ポリエーテルは、最初にプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、続いてエチレンオキシドと次の反応をさせることによって製造することができる。エチレンオキシドから得られる一級ヒドロキシル基は、二級ヒドロキシル基より反応性が高く、従って好ましい。有用な市販のポリエーテルポリオールは、エチレングリコールと反応させたエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応させたプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフランと反応させた水を含むポリ(テトラメチルグリコール)(PTMEG)を含む。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)が好ましいポリエーテル中間体である。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドのポリアミド付加体をさらに含み、例えばエチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加体、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加体、および同様なポリアミド型のポリエーテルポリオールを含んでよい。本発明においてコポリエーテルも利用してよい。通常のコポリエーテルは、THFとエチレンオキシド、またはTHFとプロピレンオキシドとの反応生成物を含む。これらは、BASFからブロックコポリマーであるPoly THF B、およびランダムコポリマーであるポリTHF Rとして入手可能である。さまざまなポリエーテル中間体は、一般に、末端官能基のアッセイによって決定される数平均分子量(M)を有し、Mは、約700より大きな、例えば約700から約10,000、望ましくは約1000から約5000、好ましくは約1000から約2500の平均分子量である。特定の望ましいポリエーテル中間体は、2つ以上の異なる分子量のポリエーテルのブレンド、例えばMが2000のPTMEGとMが1000のPTMEGのブレンドである。
【0017】
本発明の最も好ましい実施態様は、アジピン酸を、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの50/50のブレンドと反応させて作られるポリエステル中間体を用いる。
【0018】
本発明のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートを、ヒドロキシル末端ポリカーボネートと連鎖延長剤とのブレンドと反応させることによって調製される。ヒドロキシル末端ポリカーボネートは、グリコールをカーボネートと反応させることによって調製することができる。
【0019】
米国特許第4,131,731号が開示する、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびそれらの調製法は、参照により本明細書によって組み込まれる。そのようなポリカーボネートは直鎖であり、末端ヒドロキシル基を有し、基本的に他の末端基は含まれない。必須の反応体は、グリコールおよびカーボネートである。適当なグリコールは、4から40個、好ましくは4から12個の炭素原子を含む脂環式および脂肪族ジオールから、ならびに、分子あたり2から20個のアルコキシ基を含み、各アルコキシ基は2から4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレングリコールから選ばれる。本発明において用いるのに適しているジオールは、4から12個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール、および脂環式ジオール、例えば1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−エンドメチレン−2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、およびポリアルキレングリコールを含む。上記反応において用いられるジオールは、最終製品において望まれる特性に応じて単一ジオールであってもジオールの混合物であってもよい。
【0020】
末端がヒドロキシルであるポリカーボネート中間体は、一般に、当分野においておよび文献において公知のものである。適当なカーボネートは、次の一般式を有する5から7員環から構成される炭酸アルキレンから選ばれる。
【0021】
【化1】

ここで、Rは、2から6個の直鎖炭素原子を含む飽和2価ラジカルである。本発明において用いるのに適しているカーボネートは、炭酸エチレン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、炭酸1,2−プロピレン、炭酸1,2−ブチレン、炭酸2,3−ブチレン、炭酸1,2−エチレン、炭酸1,3−ペンチレン、炭酸1,4−ペンチレン、炭酸2,3−ペンチレン、および炭酸2,4−ペンチレンを含む。
【0022】
炭酸ジアルキル、脂環式カーボネート、および炭酸ジアリールも本発明において適している。炭酸ジアルキルは、各アルキル基中に2から5個の炭素原子を含んでよく、その特定の例は、炭酸ジエチルおよび炭酸ジプロピルである。脂環式カーボネート、特に二脂環式カーボネートは、各環構造中に4から7個の炭素原子を含んでよく、1つまたは2つのそのような構造があってもよい。一方の基が脂環式のとき、他方はアルキルまたはアリールのどちらでもよい。これに対して、一方の基がアリールなら、他方はアルキルまたは脂環式であってよい。各アリール基中に6から20個の炭素原子を含んでよい炭酸ジアリールの好ましい例は、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル、および炭酸ジナフチルである。
【0023】
反応は、エステル交換触媒の存在下または非存在下で100℃から300℃の温度および0.1から300mmHgの範囲の圧力において蒸留によって低沸点グリコールを除去しながら10:1から1:10、しかし好ましくは3:1から1:3のモル範囲でグリコールをカーボネート、好ましくは炭酸アルキレンと反応させることによって行われる。
【0024】
より詳しくは、ヒドロキシル末端ポリカーボネートは2段階で調製される。第1段階において、グリコールを炭酸アルキレンと反応させて低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートを生成させる。低沸点グリコールは、10から30mmHg、好ましくは50から200mmHgの減圧下で100℃から300℃、好ましくは150℃から250℃における蒸留によって除去される。副生物のグリコールを反応混合物から分離するために分留塔が用いられる。副生物のグリコールは塔頂部から取り出され、未反応炭酸アルキレンおよびグリコール反応体は還流として反応器に戻される。不活性ガスまたは不活性溶媒の流れを用いて、副生物のグリコールが生成される場合に副生物のグリコールの除去を促進してよい。得られた副生物のグリコールの量が、ヒドロキシル末端ポリカーボネートの重合度が2から10の範囲であることを示したとき、圧力が0.1から10mmHgに徐々に低くされ、未反応グリコールおよび炭酸アルキレンが除去される。これは、第2の反応段階の始まりを表し、第2の反応段階においては、100℃から300℃、好ましくは150℃から250℃および0.1から10mmHgの圧力において、グリコールが生成されると同時に、グリコールを蒸留して除くことによって、所望の分子量のヒドロキシル末端ポリカーボネートに達するまで低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートを縮合させる。ヒドロキシル末端ポリカーボネートの分子量(M)は、約500から約10,000まで異なってよいが、好ましい実施態様においては、500から2500の範囲である。
【0025】
本発明のTPUポリマーを作る第2の必要な成分は、ポリイソシアネートである。
【0026】
本発明のポリイソシアネートは、一般に、式R(NCO)を有し、ここで、nは一般に2から4であり、組成物が熱可塑性樹脂であるので2が非常に好ましい。従って、3または4個の官能基を有するポリイソシアネートは、それらが架橋を引き起こすので、非常に少量、例えばすべてのポリイソシアネートの合計重量を基準として重量で5%未満、望ましくは2%未満の量で利用される。Rは、一般に合計2から約20個の炭素原子を有する芳香族、脂環式、および脂肪族、またはそれらの組み合わせであってよい。適当な芳香族ジイソシアネートの例は、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、H12 MDI、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、およびジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4′−ジイソシアネート(TODI)を含む。適当な脂肪族ジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4,4−テトラメチルヘキサン(TMDI)、1,10−デカンジイソシアネート、およびtrans−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)を含む。非常に好ましいジイソシアネートは、約3重量%未満のオルト−パラ(2,4)異性体を含むMDIである。
【0027】
本発明のTPUポリマーを作る第3の必要な成分は、連鎖延長剤である。適当な連鎖延長剤は、約2から約10個の炭素原子を有する低級脂肪族または短鎖グリコールであり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキシルジメチロールのcis−trans異性体、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,5−ペンタンジオールを含む。芳香族グリコールも連鎖延長剤として用いてよく、高熱利用のための好ましい選択肢である。ベンゼングリコール(HQEE)およびキシレネングリコールは、本発明のTPUを作るのに用いられる適当な連鎖延長剤である。キシレネングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンと1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンとの混合物である。ベンゼングリコールは、好ましい芳香族連鎖延長剤であり、詳しくは、ハイドロキノン、すなわち1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;レゾルシノール、すなわち1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;カテコール、すなわち1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;およびそれらの組み合わせを含む。好ましい連鎖延長剤は、1,4−ブタンジオールである。
【0028】
上記の3つの必要な成分(ヒドロキシル末端中間体、ポリイソシアネート、および連鎖延長剤)を、好ましくは触媒の存在下で反応させる。
【0029】
一般に、ジイソシアネートをヒドロキシル末端中間体または連鎖延長剤と反応させるために、任意の従来の触媒も利用してよく、当分野および文献において同じことが周知である。適当な触媒の例は、ビスマスまたはスズのさまざまなアルキルエーテルまたはアルキルチオールエーテルを含み、ここで、アルキル部分は1から約20個の炭素原子を有し、特定の例は、ビスマスオクトエート、ビスマスラウレート、および類似物を含む。好ましい触媒は、さまざまなスズ触媒、例えば第一スズオクトエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、および類似物を含む。そのような触媒の量は、一般に少なく、例えばポリウレタン形成モノマーの合計重量を基準として約20から約200パーツパーミリオンである。
【0030】
本発明のTPUポリマーは、当分野および文献において周知の従来の重合法のいずれによって作られてもよい。
【0031】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは「ワンショット」プロセスによって作られる。このプロセスにおいては、加熱されている押し出し機にすべての成分が一緒に同時に、または実質的に同時に加えられ、反応してポリウレタンを生成する。ヒドロキシル末端中間体とジオール連鎖延長剤との合計当量に対するジイソシアネートの当量比は、一般に、約0.95から約1.10、望ましくは約0.97から約1.03、好ましくは約0.97から約1.00である。生成するTPUのショアA硬度は、完成した物品の最も望ましい特性を達成するために65Aから95A、好ましくは約75Aから約85Aであるべきである。ウレタン触媒を利用する反応温度は、一般に、約175℃から約245℃、好ましくは約180℃から約220℃である。熱可塑性ポリウレタンの分子量(Mw)は、一般に、GPCによりポリスチレン標準と比較して測定して、約100,000から約800,000、望ましくは約150,000から約400,000、好ましくは約150,000から約350,000である。
【0032】
本熱可塑性ポリウレタンは、プレポリマープロセスを利用して調製してもよい。プレポリマー経路においては、ヒドロキシル末端中間体を一般に過剰当量の1つ以上のポリイソシアネートと反応させて、溶液中に遊離のまたは未反応のポリイソシアネートを含むプレポリマー溶液を形成させる。反応は、一般に、適当なウレタン触媒の存在下で約80℃から約220℃、好ましくは約150℃から約200℃の温度で行われる。続いて、上述の選択型の連鎖延長剤が、イソシアネート末端基に、および任意の遊離または未反応のジイソシアネート化合物に概ね等しい当量で加えられる。ヒドロキシル末端中間体と連鎖延長剤との合計当量に対するジイソシアネート全体の全体的な当量比は、従って、約0.95から約1.10、望ましくは約0.98から約1.05、好ましくは約0.99から約1.03である。連鎖延長剤に対するヒドロキシル末端中間体の当量比は、65Aから95A、好ましくは75Aから85Aのショア硬度をもたらすように調整される。鎖延長反応温度は、一般に、約180℃から約250℃であり、約200℃から約240℃が好ましい。通常は、プレポリマー経路は、任意の従来の装置中で行ってもよく、押し出し機が好ましい。従って、押し出し機の第1の部分の中でヒドロキシル末端中間体を過剰当量のジイソシアネートと反応させてプレポリマー溶液を生成させ、続いて、下流の部分で連鎖延長剤を加え、プレポリマー溶液と反応させる。任意の従来の押し出し機を利用してもよく、直径に対する長さの比が少なくとも20、好ましくは少なくとも25であるバリアスクリューを備えた押し出し機が利用される。
【0033】
適当な量の有用な添加剤を利用してよく、有用な添加剤は、不透明化顔料、着色剤、鉱物充填剤、安定剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、加工助剤、および必要に応じた他の添加剤を含み得る。有用な不透明化顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタネートイエロー(titanate yellow)を含み、有用な彩色顔料は、カーボンブラック、黄色酸化物、褐色酸化物、粗および焼けたシエナ土またはアンバー、酸化クロムグリーン、カドミウム顔料、クロム顔料、および他の混合金属酸化物および有機顔料を含む。有用な充填剤は、珪藻土(スーパーフロス)粘土、シリカ、タルク、雲母、珪灰石、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムを含む。望むなら、有用な安定剤、例えば酸化防止剤を用いてよく、有用な安定剤は、フェノール系酸化防止剤を含み得、有用な光安定剤は、有機リン酸エステル、および有機スズチオラート(メルカプチド)を含む。有用な潤滑剤は、金属ステアリン酸塩、パラフィン油、およびアミドワックスを含む。有用な紫外線吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンを含む。
【0034】
特性に影響を及ぼすことなく硬度を低下させるために可塑剤添加剤も有利に利用することができる。
【0035】
溶融紡糸プロセス時に、上記TPUポリマーは、架橋剤で軽度に架橋されてよい。架橋剤は、ヒドロキシル末端中間体のプレポリマーであり、ヒドロキシル末端中間体のプレポリマーは、ポリイソシアネートと反応したポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、またはそれらの混合物である。ポリエステルまたはポリエーテルが架橋剤を作る好ましいヒドロキシル末端中間体であり、ポリエステルTPUと組み合わせて用いられるときポリエーテルが最も好ましい。プレポリマーである架橋剤は、約1.0個より大きな、好ましくは約1.0から約3.0個、より好ましくは約1.8から約2.2個のイソシアネート官能基を有する。ヒドロキシル末端中間体の両末端がイソシアネートでキャップされ、従って2.0個のイソシアネート官能基を有するなら特に好ましい。
【0036】
架橋剤を作るために用いられるポリイソシアネートは、TPUポリマーの作製において上で記載されたものと同じである。ジイソシアネート、例えばMDIが好ましいジイソシアネートである。
【0037】
架橋剤は、約1,000から約10,000ダルトン、好ましくは約1,200から約4,000ダルトン、より好ましくは約1,500から約2,800ダルトンの数平均分子量(M)を有する。Mが約1500を超える架橋剤で、より良好に設定された特性が得られる。
【0038】
TPUポリマーと共に用いられる架橋剤の重量パーセントは、約2.0%から約20%、好ましくは約8.0%から約15%、より好ましくは約10%から約13%である。用いられる架橋剤の百分率は、TPUポリマーと架橋剤の合計重量を基準とする重量パーセントである。
【0039】
本発明のTPU繊維を作る好ましい溶融紡糸プロセスは、予め形成されたTPUポリマーを押し出し機に供給してTPUポリマーを融解させることを含み、架橋剤は、TPU溶融物が押し出し機から出る段階に近い下流で、またはTPU溶融物が押し出し機を出た後に連続的に添加される。架橋剤は、溶融物が押し出し機から出る前に押し出し機に加えられても溶融物が押し出し機を出た後に押し出し機に加えられてもよい。架橋剤は、溶融物が押し出し機から出た後に加えられるなら、TPUポリマー溶融物への架橋剤の適切な混合を確実にするために、静的または動的ミキサーを用いてTPU溶融物と混合される必要がある。押し出し機から出た後に、溶融TPUポリマーと架橋剤とはマニホールドに流入する。マニホールドは溶融物の流れを別々の流れに分割し、それぞれの流れは複数の紡糸口金に供給される。通常、マニホールドから流れるそれぞれの別々の流れのために溶融物ポンプがあり、各溶融物ポンプがいくつかの紡糸口金に供給する。紡糸口金は小さな孔を有し、溶融物は押し込まれて小さな孔を通り、モノフィラメント繊維の形で紡糸口金から出る。紡糸口金にある孔のサイズは、繊維の所望のサイズ(デニール)に依存する。
【0040】
TPUポリマー溶融物は、紡糸集積アセンブリを通って通過し、用いられる紡糸集積アセンブリを繊維として出てよい。用いられる好ましい紡糸集積アセンブリは、アセンブリを通るTPUポリマーのプラグ流をもたらすものである。最も好ましい紡糸集積アセンブリは、本明細書にその全体が組み込まれるPCT特許出願WO2007/076380号に記載されているものである。
【0041】
繊維は、紡糸口金から出ると、糸巻に巻き取られる前に冷却される。繊維は第1のゴデットの上を通過し、仕上げ油が塗布され、繊維は第2のゴデットに進む。本発明の繊維を作るプロセスの重要な様相は、繊維が糸巻に巻き取られる相対スピードである。相対スピードとは、巻き取りスピードとの関係における紡糸口金から出る溶融物のスピード(溶融物速度)を意味する。正常な従来技術のTPU溶融紡糸プロセスにおいて、繊維は、溶融物速度のスピードの4〜6倍のスピードで巻き取られる。これは、繊維を引っ張るかまたは延伸する。本発明の固有の繊維の場合、この大きな引張りは好ましくない。本プロセスを稼動するために、繊維は、少なくとも溶融物速度と等しいスピードで巻き取られなければならない。本発明の繊維の場合、溶融物速度より早いが50%より大きくない、好ましくは20%より大きくない、より好ましくは10%より大きくないスピードで繊維を巻き取る必要があり、5%より大きくないとき優れた結果が得られる。溶融物速度と同じである巻き取りスピードが理想的であろうと考えられるが、本プロセスを稼動するためにはわずかに高めた巻き取りスピードを有することが必要である。例えば、1分あたり300メートルのスピードで紡糸口金から出る繊維は、1分あたり300から315メートルの間のスピードで巻き取られると最も好ましいであろう。
【0042】
本発明の繊維は、さまざまなデニールで作ることができる。デニールは、繊維サイズを指定する当分野における用語である。デニールは、グラムで表した9000メートルの繊維長さの重量である。本発明の繊維は、通常は20から600デニール、好ましくは40から400、より好ましくは70から360デニールの範囲のサイズで作られる。
【0043】
本発明のプロセスによって繊維が作られるとき、冷却後または冷却中に、および糸巻に巻き取られる直前に、粘着防止添加剤(例えば仕上げ油(その例はシリコーンオイルである))が通常は繊維の表面に加えられる。
【0044】
本溶融紡糸プロセスの重要な様相は、TPUポリマー溶融物と架橋剤との混合である。一様な繊維特性を達成し、繊維破断が起こることなく長い稼動時間を達成するために適当な一様な混合が重要である。TPU溶融物と架橋剤との混合は、プラグ流れ、すなわち先入れ先出しを達成する方法であるべきである。適当な混合は、動的ミキサーまたは静的ミキサーで達成することができる。静的ミキサーの方が清掃し難く、従って動的ミキサーの方が好ましい。供給スクリューおよび混合ピンを有する動的ミキサーが好ましいミキサーである。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,709,147号は、そのようなミキサーを記載し、回転することができる混合ピンを有する。混合ピンは、定位置にあってよく、例えばミキサーの胴体部に取り付けられ、供給スクリューの中心線の方へ伸びてよい。混合供給スクリューは、ネジによって押し出し機スクリューの末端に取り付けてよく、ミキサーのハウジングは押し出し機にボルト留めしてよい。動的ミキサーの供給スクリューは、ポリマー溶融物を漸進的に動かし、後方混合がほとんどなく、溶融物のプラグ流れを達成する設計にするべきである。混合スクリューのL/Dは、3を超える値から30未満まで、好ましくは約7から約20まで、より好ましくは約10から約12までであるべきである。
【0045】
TPUポリマー溶融物が架橋剤と混合される混合ゾーンにおける温度は、約200℃から約240℃、好ましくは約210℃から約225℃である。ポリマーを劣化させないで反応させるためにこれらの温度が必要である。
【0046】
形成されるTPUは、溶融紡糸プロセス時に架橋剤と反応させて約200,000から約800,000、好ましくは約250,000から約500,000、より好ましくは約300,000から約450.000の最終繊維形のTPUの分子量(Mw)が得られる。
【0047】
紡糸温度(紡糸口金中のポリマー溶融物の温度)は、ポリマーの融点より高く、好ましくはポリマーの融点の約10℃から約20℃上の温度であるべきである。用いることができる紡糸温度が高いほど、紡糸はより良好になる。しかし、紡糸温度が高すぎるとポリマーは分解し得る。従って、TPUポリマーの融点の約10℃から約20℃上の温度が、ポリマーの分解のない良好な紡糸の兼ね合いを達成するために最適である。紡糸温度が低すぎると、紡糸口金中でポリマーが固化し、繊維破断を引き起こし得る。
【0048】
本発明の固有の繊維は、100%から200%伸び率の間の負荷および除荷サイクルにおいて比較的平らな、かつ/または、一定のモジュラスを有する。この平らなモジュラスは、データがすべて360デニール繊維から集められた場合、負荷サイクルにおいて100%伸び率で1デニールあたり0.023グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.036グラム重未満、200%伸び率で1デニールあたり0.053グラム重未満の応力によって証明され、除荷サイクルにおいて200%伸び率で1デニールあたり0.027グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.018グラム重未満、および100%伸び率で1デニールあたり0.015グラム重未満の応力によって同じく証明される。
【0049】
この平らなモジュラスは、データがすべて70デニール繊維から集められた場合、負荷サイクルにおいて100%伸び率で1デニールあたり0.158グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.207グラム重未満、200%伸び率で1デニールあたり0.265グラム重未満の応力によっても証明され、除荷サイクルにおいて200%伸び率で1デニールあたり0.021グラム重未満、150%伸び率で1デニールあたり0.012グラム重未満、および100%伸び率で1デニールあたり0.008グラム重未満の応力によって同じく証明される。
【0050】
上記のモジュラス値を得るために使用される標準の試験手順は、DuPontによって弾性ヤーン用に開発されたものである。この試験は、繊維を一連の5つのサイクルに付す。各サイクルにおいて、繊維は300%伸び率まで延伸され、一定の伸長速度を用いて緩和(元のゲージ長さと300%伸び率との間で)される。第5サイクルの後でひずみ%(% set)が測定される。次に、第6サイクルを通して繊維試料が採取され、破断するまで延伸される。装置は、1デニールあたりグラム重の単位で各伸長率における負荷、破断前最高負荷、および破断負荷、ならびに破断伸び率および最大負荷における伸び率を記録する。この試験は、普通は室温(23℃±2℃、および50%±5%の湿度)において行われる。
【0051】
本発明の繊維は、少なくとも400%、好ましくは約450から500%の破断時伸び率を有する。本繊維は、丸い形状を有するモノフィラメントである。図2を参照すると、70デニールモノフィラメント繊維が断面形状において実質的に丸いことが分かる。図1は、より大きな断面幅を有する70デニールモノフィラメント乾式紡糸繊維を示している。
【0052】
図3は、乾式紡糸繊維を本発明の溶融紡糸繊維と比較するグラフを示している。このグラフは、デニール(X軸)と、これに対する繊維幅の自乗(平方ミクロン)とをプロットしている。このグラフは、本発明の溶融紡糸繊維がグラフ上で一定の勾配を有するのに対し、乾式紡糸繊維の方は指数関数的に増加する勾配を有することを示している。この結果は、本発明の繊維を用いて、より薄い、従って着用者にとってより快適である布を作ることができるということである。
【0053】
本発明の繊維の別の重要な特徴は、それが乾式紡糸繊維と比較して向上した布の破裂強度を示すことである。
【0054】
この特徴は、直径1インチの球を用いるASTM D751に従ってBall Burst Puncture Strength Testを実行することによって示すことができる。この試験は、孔を形成するべく布を押して通る指をシミュレーションする。本発明の繊維が乾式紡糸ポリウレタン繊維と比較して約50から75%の破裂強度の向上を示すことは非常に驚くべきことであった。この向上した破裂強度は、繊維の引張り強度がほとんど同じであるにもかかわらず存在する。
【0055】
本発明の繊維は、より高い熱容量も有する。平らなモジュラス曲線、より高い熱容量、およびより薄いゲージの組み合わせは、衣類の着用者に快適と感じさせる、本発明の繊維で作られた布を生み出した。
【0056】
本発明の繊維を用いて作られる布は、編むかまたは織ることによって作ってよい。多くの場合、他の繊維をTPU繊維とともに用いて布を作ることが好ましい。硬質繊維を本発明の弾性繊維とともに用いることが特に好ましい。硬質繊維、例えばナイロンおよび/またはポリエステルが好ましい。硬質繊維は、100%弾性繊維布より布の鉤裂き抵抗を向上させる。好ましい布は、交互する繊維を用いて編まれたもの、例えば140デニールTPUの糸と交互する140デニールTPU/70デニールナイロンの糸を用いて編まれたもの(1−1布と呼ばれる)、または140デニールTPU/70デニールナイロンの糸とそれに続く140デニールTPUの2本の糸とを用いて編まれたもの(1−2布と呼ばれる)である。
【0057】
本発明の布で衣類を作ることができる。布の最も好ましい使用は、本繊維によって提供される快適さに起因して、下着またはぴったりフィットする衣類を作ることにある。下着、例えばブラジャーおよびTシャツ、ならびにランニング、スキー、サイクリング、または他のスポーツなどの活動のために用いられるスポーツ衣類は、これらの繊維の特性の利点を享受することができる。身体と接して着用される衣類は、繊維が体温に達するとモジュラスがさらに低くなるので、これらの繊維の平らなモジュラスの利点を享受する。ぴったりに感じられる衣服は、繊維が体温に達した約30秒から5分後に快適さが増す。本発明の布および繊維からいずれの衣服も作ることができることが当業者によって理解される。例となる実施態様は、織られた布から作られるブラジャーの肩吊り紐、および編まれた布から作られるブラジャーのベルトであり、織られた布と編まれた布との両方が本発明の溶融紡糸TPU繊維を含む。本布が弾性であるため、ブラジャーの吊り紐は調節可能な締め具を必要としないであろう。
【0058】
以下の実施例を参照することによって本発明の理解が深まる。
【実施例】
【0059】
実施例中で用いられるTPUポリマーは、ポリエステルヒドロキシル末端中間体(ポリオール)を1,4−ブタンジオール連鎖延長剤およびMDIと反応させることによって作られた。ポリエステルポリオールは、アジピン酸を、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの50/50混合物と反応させることによって作られた。ポリオールは、2500のMを有していた。TPUは、ワンショットプロセスによって作られた。紡糸プロセス時にTPUに加えられた架橋剤は、Mが1000のPTMEGをMDIと反応させてイソシアネートでエンドキャップされたポリエーテルを作り出すことによって作られたポリエーテルプレポリマーであった。架橋剤は、TPUと架橋剤との合計重量の10重量%のレベルで用いられた。実施例において用いられる40、70、140および360デニールの繊維を作るために、繊維が溶融紡糸された。
【実施例1】
【0060】
この実施例は、既存の従来技術の溶融紡糸TPU繊維(40デニール)および市販乾式紡糸繊維(70デニール)と比較して、本発明の繊維(70デニール)の相対的に平らなモジュラス曲線を示すために提示される。
【0061】
用いた試験手順は、弾性特性を試験するための上述した試験手順であった。Instron Model 5564張力計をMerlin Softwareとともに用いた。試験条件は、23℃±2℃および湿度50%±5%においてとした。試験試料の繊維長さは50.0mmとした。4つの試料が試験され、結果は試験された4つの試料の平均値である。結果は、表Iに示されている。
【0062】
【表1】

上記のデータのすべては、試験された4つの試料についての平均値である。
【0063】
上記のデータから、本発明の溶融紡糸繊維は、第5試験サイクル時に比較的平らなモジュラス曲線を有することが分かる。第1サイクルは、繊維中の応力を解放するので、通常無視される。
【実施例2】
【0064】
この実施例は、市販の乾式紡糸繊維と比較した本発明の溶融紡糸繊維の幅を示すために提示される。幅は、SEMによって決定された。結果は、表IIに示されている。
【0065】
【表2】

分かるように、乾式紡糸繊維の方がはるかに高い幅を有し、デニールが増加するほど差が大きくなる。
【実施例3】
【0066】
本実施例は、市販乾式紡糸ポリウレタン繊維と比較した本発明の溶融紡糸TPU繊維の向上した破裂強度を示すために提示されている。70デニール繊維が用いられてそれぞれのタイプの繊維からシグネルジャージー編み布が調製された。この布の破裂穿孔強度がASTM D751に従って試験された。結果は、表IIIに示されている。結果は、試験された5つの試料の平均である。
【0067】
【表3】

本発明の溶融紡糸繊維は乾式紡糸繊維より高い引張強さを有しなかったにもかかわらず、溶融紡糸繊維の破裂強度がより高かったことは非常に驚くべきことであった。
【0068】
特許法令に従って、最良のモードおよび好ましい実施態様を示してきたが、本発明の範囲はそれらに限定されず、むしろ添付の請求項の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも400%の限界伸び率を有し、100%から200%伸び率の間の負荷および除荷サイクルにおいて比較的平らなモジュラスを有する薄ゲージ、定圧縮率、高破裂強度の弾性繊維。
【請求項2】
40デニールモノフィラメント繊維が100ミクロン未満の幅を有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
70のデニールを有する前記繊維が布にされ、該布がASTM D751に従って穿孔強度について試験されると、該布は6ポンドより大きな破断時負荷を有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維は、熱可塑性ポリウレタン繊維である、請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
前記繊維は、ポリエステル熱可塑性ポリウレタンである、請求項4に記載の繊維。
【請求項6】
前記繊維は、ポリエーテル架橋剤で架橋されている、請求項5に記載の繊維。
【請求項7】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンは、200,000から700,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項5に記載の繊維。
【請求項8】
前記架橋剤は、前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンと前記架橋剤との合計重量の5から20重量パーセントである、請求項6に記載の繊維。
【請求項9】
前記架橋剤は、前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンと前記架橋剤との合計重量の8から12重量パーセントである、請求項8に記載の繊維。
【請求項10】
少なくとも2つの異なる繊維を含む布であって、該繊維の少なくとも1つは熱可塑性ポリウレタン繊維であり、該繊維の少なくとも1つは硬質繊維であり、該熱可塑性ポリウレタン繊維は、100から200パーセント伸び率の間で比較的平らな応力−歪み曲線を有する布。
【請求項11】
前記布は、硬質繊維の1本の糸あたり熱可塑性ポリウレタン繊維の2本の糸から構成されている、請求項10に記載の布。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタン繊維は、20から600のデニールを有する、請求項10に記載の布。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリウレタン繊維は、70から360のデニールを有する、請求項12に記載の布。
【請求項14】
前記硬質繊維は、ナイロンおよびポリエステルからなる群から選ばれる、請求項10に記載の布。
【請求項15】
前記硬質繊維は約70のデニールを有し、前記熱可塑性ポリウレタン繊維は約140のデニールを有する、請求項14に記載の布。
【請求項16】
請求項10に記載の布を含む衣料用の物品。
【請求項17】
前記物品は、下着である、請求項16に記載の衣料品。
【請求項18】
前記物品は、ブラジャーである、請求項17に記載の衣料品。
【請求項19】
100%から200%伸び率の間の負荷および除荷サイクルにおいて比較的平らなモジュラスを有する弾性繊維を製造するためのプロセスであって、
(a)紡糸口金を通して熱可塑性エラストマーポリマーを溶融紡糸するステップ、および
(b)該紡糸口金から出る前記ポリマー溶融物速度の50%より大きくない巻き取りスピードで前記弾性繊維を糸巻に巻き取るステップ
を含むプロセス。
【請求項20】
前記巻き取りスピードが、前記紡糸口金から出る前記ポリマー溶融物速度の20%より大きくない、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記巻き取りスピードが、前記紡糸口金から出る前記ポリマー溶融物速度の10%より大きくない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記熱可塑性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタンである、請求項19に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−531533(P2012−531533A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517718(P2012−517718)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039773
【国際公開番号】WO2010/151633
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】