説明

薄切片作製装置

【課題】搬送ベルトを簡便、確実かつ短時間で交換でき、薄切片を作製する効率を高められる薄切片作製装置を提供する。
【解決手段】基台に配設され包埋ブロックを薄切するカッター3と、前記カッター3で薄切された薄切片を搬送する搬送手段5とを備えた薄切片作製装置1であって、前記搬送手段5は、環状をなし前記薄切片を載置して周回する搬送ベルト11と、前記搬送ベルト11を巻き回す複数のローラ12と、これらのローラ12の両端部を軸支する一対のフレーム13とを有し、前記搬送手段5は、前記基台に対して着脱可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や実験動物等から取り出した生体試料を包埋した包埋ブロックを切削して薄切片を作製する薄切片作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製した後に、染色処理を行い、生体試料を観察する方法が知られている。このような包埋ブロックから作製される薄切片は、細胞レベルの観察を可能とするため、3〜5μm程度の厚さで均一に、かつ、包埋されている生体試料を損傷しないように切削する必要がある。このため、従来このような包埋ブロックから薄切片を作製する作業は、鋭利な状態に保たれた薄刃のカッターを使用して、熟練な作業者による手作業に委ねられてきた。一方、例えば、前臨床試験においては、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する。このため、作業者は膨大な枚数の薄切片を作製する必要があるため、近年、薄切片を作製する一連の工程の自動化が望まれている。
【0003】
このような薄切片の作製を自動化する薄切片作製装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、包埋ブロックを支持する試料台と、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製するカッターと、前記試料台及びカッターを送り方向に相対移動させる送り機構(送り手段)と、作製した薄切片を次工程に向け搬送する搬送手段と、を備えたものが知られている。また、このような試料台、カッター、送り手段、及び、搬送手段は、装置内の基台に配設される。
また、搬送手段は、少なくとも一部がカッターに接近して配設され該カッターに薄切された薄切片を載置する環形帯状の無端ベルト(搬送ベルト)と、この搬送ベルトを巻き回す複数のローラと、これらのローラの両端を回転可能に軸支する一対のフレームと、を備えている。
【0004】
このような搬送ベルトには、載置する薄切片に折れ曲がりや破損が生じないように、表面に凹凸の無い、継ぎ目の無いものが使用される。そして、薄切片を作製する際、搬送ベルトは、各ローラ間において無限循環走行される。
搬送ベルトは、連続して使用するうちに、汚れたり、破損したりすることがあるが、このような状態で使用を続けると薄切片の搬送に影響する場合がある。すなわち、搬送ベルトに載置された薄切片が汚れたり、折れ曲がったりすることがある。従って、搬送ベルトは、必要に応じて取り外され清掃されるか、又は、新品に交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような薄切片作製装置は、一般に、筐体の内部に種々の部材を収容した構成を有している。また、装置内に配置された基台は、部材の密集した複雑な構成を有しており、搬送手段の各ローラ及びフレームについても、この基台に直接組み付けられている。従って、このような装置内において、搬送ベルトを交換する作業は、非常に煩雑となり、手間がかかっていた。
【0007】
すなわち、搬送ベルトを交換するにあたり、まず基台から一対のフレームのうち少なくとも一方を取り外し、ローラの一端を露出させた状態として、搬送ベルトを取り外した後、新しい搬送ベルトを装着する。しかしながら、装置内においてこのような作業を行うスペースを確保することは非常に難しく、作業者に無理な姿勢を強いることとなって、負荷がかかっていた。
また、このように負荷のかかる作業であることから、搬送ベルトを確実に装着できないことがあり、この場合、搬送ベルトが弛んだり破損したりして、載置した薄切片の位置がずれたり折れ曲がったりする等、搬送に影響することがあった。
【0008】
また、搬送手段を前述のように分解し、搬送ベルトを交換しているうちは装置を運転できないので、作業が完了するまでの間、薄切片の作製を中断することとなるが、前述のように作業が煩雑であるために交換に多くの時間を費やし、薄切片を作製する効率がその分低下していた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、搬送ベルトを簡便、確実かつ短時間で交換でき、薄切片を作製する効率を高められる薄切片作製装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、基台に配設され包埋ブロックを薄切するカッターと、前記カッターで薄切された薄切片を搬送する搬送手段とを備えた薄切片作製装置であって、前記搬送手段は、環状をなし前記薄切片を載置して周回する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを巻き回す複数のローラと、これらのローラの両端部を軸支する一対のフレームとを有し、前記搬送手段は、前記基台に対して着脱可能とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る薄切片作製装置によれば、搬送手段が、基台に対して着脱可能とされているので、搬送ベルトを交換する際、作業者が基台の配置された装置内で作業を行う必要はなく、搬送手段を基台から取り外して、作業スペースが充分に確保された装置外において作業を行うことができる。従って、搬送ベルトの交換が簡便に行え、作業者の負荷が大幅に低減されるとともに、作業が確実かつ短時間で行える。
また、予め搬送手段を複数用意しておき、前述のように基台から搬送手段を取り外した際、代わりに、新しい搬送ベルトを装着した別の搬送手段をこの基台に取り付けることもできる。これによれば、古い搬送ベルトを交換している間であっても薄切片作製装置の運転を中断する必要がなくなり、薄切片を作製する効率が高められる。
【0012】
また、本発明に係る薄切片作製装置において、前記搬送手段は、前記ローラを回転駆動させる駆動部を有していることとしてもよい。
【0013】
本発明に係る薄切片作製装置によれば、搬送手段が、ローラを回転駆動させる駆動部を有しているので、搬送手段を基台に装着する際に、ローラと駆動部との相対的な位置関係を調整する手間がない。詳しくは、例えば、ローラと駆動部とに夫々歯車が設けられ、これらの歯車同士が噛合されて駆動部がローラを回転駆動させるような構成であったとする。この場合、駆動部が基台に配設され、ローラが搬送手段に配設された構成だとすると、搬送手段を基台から取り外す際に、前記歯車同士の噛合を解除する必要が生じる。従って、搬送手段を基台に装着する際には、前記歯車同士を確実に噛合させるように、互いの相対位置を調整する手間が生じることとなる。これに対し、本発明によれば、搬送ベルトを交換するにあたって、前記歯車同士の噛合を解除する必要がないことから、前述の調整を行う手間が生じない。よって、搬送ベルトの交換作業がより簡便になるとともに、ローラと駆動部との相対的な位置精度が確保される。
【0014】
また、本発明に係る薄切片作製装置において、前記搬送手段は、前記搬送ベルトの張力の低下を検出する検出手段を有していることとしてもよい。
【0015】
本発明に係る薄切片作製装置によれば、搬送手段が、搬送ベルトの張力の低下を検出する検出手段を有しているので、搬送ベルトの張力が低下した際に、装置を迅速に停止させることができる。すなわち、搬送ベルトの張力が低下した状態のままこの搬送ベルトを走行させると、搬送される薄切片が、弛んだ搬送ベルトの形状に応じて折れ曲がったり破損したりして、安定した搬送が行えないことが考えられる。そこで、本発明では、検出手段を設けて、前述の張力の低下を早期に検出できるようにしている。これにより、薄切片の破損等による包埋ブロックの無駄を抑制でき、また、弛んだ搬送ベルトが他の部材等に引っ掛かり破損させてしまうようなことが防止される。
【0016】
また、本発明に係る薄切片作製装置において、複数の前記ローラのうち、前記カッターに接近して配設される方向切替ローラが、前記搬送手段に設けられたカム機構により該カッターに対して進退可能とされていることとしてもよい。
【0017】
本発明に係る薄切片作製装置によれば、カッターに接近して配設される方向切替ローラが、カム機構により該カッターに対して進退可能とされているので、方向切替ローラに巻き回されている搬送ベルトの部分が、カッターに対し精度よく位置決めされる。従って、カッターに薄切された薄切片が、前記搬送ベルトの部分に確実に受け渡され載置されることとなり、薄切片の搬送が安定して行える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る薄切片作製装置によれば、搬送ベルトを簡便に交換でき、作業者の負荷が低減し、作業が確実かつ短時間で行え、作業性が大幅に向上する。また、搬送ベルトを交換する作業の間、装置の運転を中断する必要がないことから、薄切片を作製する効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の基台上部を示す概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の基台に装着された搬送手段を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る薄切片作製装置のカッター、搬送手段(図5におけるIII−III矢視)、及び、液槽の配置を説明する側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の搬送手段を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の搬送手段を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の搬送手段を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の薄切片作製装置1は、生体試料が包埋された包埋ブロックBから厚さ3〜5μm程度の極薄の薄切片B1を作製し、薄切片B1に含まれる生体試料を検査、観察する過程において、自動的に、包埋ブロックBから薄切片B1を薄切し、次工程に搬送する装置である。生体試料は、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野などで適時選択されるものである。また、包埋ブロックBは、上記のような生体試料を包埋剤によって包埋、すなわち周囲を覆い固めたものである。ここで、包埋剤は、上記のように液状化と冷却固化が容易に可能とされるとともに、エタノールに浸漬することで溶解する材質であり、樹脂やパラフィンなどである。また、包埋ブロックBは、基本的に略長方形の切削面B2を有した直方体状に成形されており、本実施形態においても、直方体状に形成されているものとして説明するが、必ずしもこのような形状に限られるものではない。以下、薄切片作製装置1の構成について説明する。
【0021】
薄切片作製装置1は、図示しない略直方体状の筐体を有しており、この筐体の内部(装置内)に種々の部材を収容し構成されている。
図1、図2に示すように、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBが載置されたカセットCを固定し支持する試料台2と、包埋ブロックBを薄切するカッター3と、カッター3に対し試料台2を該カッター3の切れ刃3aに交差する向きに移動させる送り手段4と、カッター3の切れ刃3aによって包埋ブロックBから薄切された薄切片B1を搬送する搬送手段5と、搬送手段5で搬送された薄切片B1を受け取って水伸展させる液槽6と、を有している。また、試料台2、カッター3、送り手段4、搬送手段5、及び、液槽6は、装置内に配置された基台7上に配設されている。
【0022】
送り手段4は、試料台2を送り方向Sに往復移動させる。また、送り手段4は、試料台2を包埋ブロックBの厚さ方向、つまり装置の鉛直方向に向けて進退させる。詳しくは、送り手段4は、試料台2をカッター3へ向けて送り方向Sに一往復移動させる度に、該試料台2を厚さ方向へ向けて一定量(すなわち薄切片B1の厚さ分)だけ上昇させることが可能に構成されている。このような構成により、試料台2の包埋ブロックBにおける切削面B2から、均一な厚さの薄切片B1が連続して作製されるようになっている。
【0023】
また、図1の平面視において、搬送手段5がカッター3側から液槽6側に向けて薄切片B1を搬送する搬送方向Rは、切れ刃3aに直交するように設定されている。また、送り方向Sは、切れ刃3aに対し引き角θを形成し設定されている。図示の例では、前記引き角θが60°〜80°程度に設定されている。尚、引き角θを90°に設定し、送り方向Sと切れ刃3aとを直交させても構わない。
【0024】
また、図3に示すように、カッター3は、カッター固定部8に固定されている。カッター固定部8は、切れ刃3aを搬送方向Rの上流側かつ下方へ向けて配置するようにしてカッター3を所定の角度で傾斜させ支持する固定台9と、この固定台9の上方に設けられ、固定台9との間でカッター3を挟み込み固定する刃押さえ10とを有している。
【0025】
刃押さえ10の下面における搬送方向Rの上流側部分には、カッター3を収容する凹部10aが形成されている。刃押さえ10は、凹部10aにカッター3を収容した状態でその下面を固定台9の上面に密着させるようにして、該固定台9との間でカッター3を挟み込むようになっている。また、図示しないが、カッター固定部8の固定台9の両端部は基台7に固定されている。
【0026】
また、刃押さえ10の上面には、凹状をなし、水等の液体を貯留可能な液体貯留部10bが形成されている。本実施形態においては、液体貯留部10bには、不図示の給排手段から水が供給・排出されるようになっており、薄切片B1の作製・搬送時には、該液体貯留部10bに水が貯留される。
【0027】
また、図3乃至図6に示すように、搬送手段5は、継ぎ目の無い無端帯状又は環形帯状をなし、少なくともその一部が切れ刃3aに接近して配設されるとともにカッター3により薄切された薄切片B1を載置して周回する搬送ベルト11を有している。また、搬送手段5は、搬送ベルト11を巻き回す略円柱状又は略円筒状の複数のローラ12と、略台形板状をなし、これらのローラ12の両端部を夫々回転可能に軸支する一対のフレーム13とを有している。
【0028】
搬送ベルト11は、水のしみ込みやすい親水性の線材からなり、網目状に形成されている。また、図3の側面視において、搬送ベルト11は、複数のローラ12により巻き回されて、全体として略U字状又は略W字状をなし、これらのローラ12間を無限循環走行するようになっている。
【0029】
複数のローラ12は、夫々の軸を切れ刃3aと平行に延ばし配設されている。ローラ12は、搬送方向Rの上流側の端部に配置された方向切替ローラ12aと、この方向切替ローラ12aに対し鉛直方向の位置が略同一に設定され搬送方向Rの下流側の端部に配置された後部ローラ12bと、を有している。後部ローラ12bは、液槽6の水W中に沈められて、該後部ローラ12bの巻き回す搬送ベルト11の部分を水Wに浸潤させるようになっている。また、ローラ12は、方向切替ローラ12aよりも搬送方向Rの下流側かつ上方に配置された中間ローラ12cと、この中間ローラ12cに対し鉛直方向の位置が略同一に設定されるとともに該中間ローラ12cよりも搬送方向Rの下流側に配置された中間ローラ12dと、を有している。
【0030】
また、ローラ12は、中間ローラ12cの下方に配置されるとともに方向切替ローラ12aよりも搬送方向Rの下流側かつ上方に配置された中間ローラ12eと、中間ローラ12dの下方に配置されるとともに後部ローラ12bよりも搬送方向Rの上流側かつ上方に配置された中間ローラ12fと、を有している。また、中間ローラ12eと中間ローラ12fとの間には、該中間ローラ12eから搬送方向Rの下流側へ向かってテンションローラ12g、中間ローラ12h、及び、駆動ローラ12jがこの順に配設されている。
【0031】
駆動ローラ12jは、平面視で搬送方向Rに直交する幅方向(以下「幅方向」と省略する)の外側へ向けてフレーム13を貫通する小径のシャフト18を有している。また、図4に示すように、シャフト18の先端には、歯車19が配設されている。また、図6に示すように、ローラ12のうち、後部ローラ12b、中間ローラ12c、12d、12e、12f、12h、テンションローラ12g、及び、駆動ローラ12jは、その前記幅方向の中央部分が両端部分よりも僅かに縮径して形成されている。
【0032】
方向切替ローラ12aは、図3に示すように、他のローラ12よりも小径に形成されている。方向切替ローラ12aは、カッター3に接近して配設されているとともに、液槽6から搬送方向Rの上流側へ向けて送られた搬送ベルト11の前記上流側における端部の部分を、斜め上方に折り返すようになっている。詳しくは、方向切替ローラ12aは、搬送ベルト11のうち、中間ローラ12eから方向切替ローラ12aに向けて送られた前記上流側の部分を中間ローラ12cへ向けて反転させ、折り返すようになっている。
また、方向切替ローラ12aは、少なくともその一部が刃押さえ10の液体貯留部10b内に配置されている。また、方向切替ローラ12aは、その両端部を調整ガイド14に回転可能に軸支されている。
【0033】
図3、図4に示すように、調整ガイド14は、略矩形板状をなし、中間ローラ12cとカッター3との間に配置され、その前記幅方向の両端部が一対のフレーム13に夫々支持されている。また、調整ガイド14の前記幅方向の両端部において、搬送方向Rの上流側かつ下方を向く先端には、一対の軸支部14aがフレーム13から突出して形成されており、これらの軸支部14aが方向切替ローラ12aを回転可能に軸支している。また、調整ガイド14における搬送方向Rの下流側かつ上方を向く部分には、前記幅方向に延びる溝14bが形成されている。溝14bには、前記幅方向の両端部がフレーム13に夫々回転可能に軸支された偏心シャフト15が係合され、溝14bと偏心シャフト15とからなるカム機構16が形成されている。
【0034】
偏心シャフト15の両端部には、調整ネジ穴15aが夫々形成されている。そして、調整ネジ穴15aを用いて該偏心シャフト15を軸周りに回転させると、その係合する溝14bとともに調整ガイド14が、フレーム13に対して移動するようになっている。詳しくは、偏心シャフト15の前述の回転によって、調整ガイド14が、中間ローラ12c側からカッター3の切れ刃3a側へ向けて進退可能とされている。このように、搬送手段5に設けられたカム機構16により、方向切替ローラ12aが切れ刃3aに対し進退移動し、位置決め調整可能とされている。
【0035】
また、調整ガイド14の搬送方向Rの上流側を向く表面において、前記幅方向の中央部分は、搬送ベルト11の表面を平滑に形成し、方向切替ローラ12a側から中間ローラ12c側へ向けて案内するガイド面14cとされている。
【0036】
また、搬送手段5は、駆動ローラ12jを回転駆動させるモータからなる駆動部17を有している。駆動部17は、フレーム13に固定されており、図4に示すように、そのシャフト17aが前記幅方向の外側へ向けて該フレーム13を貫通し、シャフト17aの先端には、歯車17bが配設されている。歯車17bは、駆動ローラ12jの歯車19に噛合されている。
【0037】
また、図3に示すように、テンションローラ12gは、その両端部をテンションブロック20に回転可能に軸支されている。テンションブロック20は、前記幅方向に延びる略角棒状をなし、その両端部には、上方に向けて突出する一対の突起部20aと、搬送方向Rの下流側へ向けて延びる一対の突起部20bとを夫々有している。詳しくは、テンションブロック20の両端部において、前記幅方向に直交する断面は略L字状をなし、その長辺部分が前記突起部20aとされ、短辺部分が前記突起部20bとされ、突起部20bの先端にテンションローラ12gが軸支されている。また、前記長辺部分と前記短辺部分とが交差する中央部分には、前記幅方向に延び、その両端部をフレーム13に夫々回転可能に軸支されたシャフト21が固定されている。
【0038】
また、図4に示すように、テンションブロック20の一対の突起部20aのうち、前記幅方向の一方側(前記幅方向のうち歯車17b、19が配設されている側)の突起部20aには、近接スイッチ22が配設されている。また、近接スイッチ22の搬送方向Rの下流側には、該近接スイッチ22との間に隙間を設けて、マグネット23がフレーム13に固定されている。このように、搬送手段5は、近接スイッチ22とマグネット23とからなる検出手段24を有している。
【0039】
また、テンションブロック20の一対の突起部20aのうち、前記幅方向の他方側の突起部20aには、搬送方向Rに沿って延びる引張コイルバネ25の上流側の端部が連結されている。また、引張コイルバネ25の搬送方向Rの下流側の端部は、フレーム13に連結されている。
【0040】
このような構成により、テンションブロック20は、シャフト21の軸周りに回転可能とされているとともに、前記他方側の突起部20aが引張コイルバネ25の付勢力により搬送方向Rの上流側から下流側に向けて引っ張られるのに伴って、突起部20bがテンションローラ12gを下方に向けて付勢するようになっている。図3に示すように、テンションローラ12gの下面には搬送ベルト11が巻き回されており、前述のようにしてテンションローラ12gが付勢されることで、搬送ベルト11を下方へ向けて押し下げるとともに、搬送ベルト11の張力が高められるようになっている。このような構成により、搬送ベルト11の張力が一定以上に確保される。
【0041】
また、搬送ベルト11が長期の使用により延びたり破損したりした場合には、テンションローラ12gが前述の付勢力により所定の範囲を超えて下方へ向けて押し下げられることとなる。この場合、検出手段24の近接スイッチ22がマグネット23へ向けて接近することから、搬送ベルト11の張力の低下が検出されるようになっている。
【0042】
また、図3において、フレーム13の下端部には、略矩形板状の受け台26が配設されている。受け台26は、中間ローラ12e、12f、12h、テンションローラ12g、及び、駆動ローラ12jの下方を覆うように形成され、その前記幅方向の両端部がフレーム13に夫々固定されている。このような構成により、後部ローラ12bに巻き回された搬送ベルト11の部分が水Wにより浸潤した状態で搬送方向Rの下流側から上流側へ走行していく際に、水Wが基台7へ垂れるようなことが防止される。また、受け台26の下面には、前記幅方向に延びる溝26aが複数形成されている。図示の例では、溝26aが搬送方向Rに離間して2つ形成されている。また、これらの溝26aは、互いの溝深さが異なるように設定されている。
【0043】
また、フレーム13の下端部には、前記幅方向に延びる矩形板状の取付部27が複数配設されている。取付部27は、受け台26の下面側に設けられている。図示の例では、取付部27は搬送方向Rに離間して2つ設けられており、上流側の取付部27は中間ローラ12eの下方に配置され、下流側の取付部27は駆動ローラ12jの下方に配置されている。これらの取付部27の両端部には、鉛直方向に貫通して取付孔が夫々形成され、これらの取付孔にボルト28が挿通されるようになっている。
【0044】
搬送手段5は、受け台26の溝26a、取付部27、及び、ボルト28を用いて、基台7に対して着脱可能とされている。詳しくは、図示しないが、基台7には、溝26aに係合する突条と、取付部27を載置する台部と、ボルト28が螺合するネジ穴とが夫々複数形成されている。そして、搬送手段5を基台7に装着する際には、前記突条を溝26aに係合させると、搬送手段5の基台7に対する搬送方向Rに沿った位置が決まる。また、この際、前記台部に取付部27が載置されて、搬送手段5の基台7に対する鉛直方向に沿った位置が決まる。この状態で、ボルト28を前記ネジ穴に螺合することで、搬送手段5が基台7に対して確実に固定される。
また、図示しないが、搬送手段5の駆動部17及び近接スイッチ22は、コネクタを介し、装置に配設された制御部と夫々電気的に接続されている。
【0045】
次に、搬送手段5の搬送ベルト11を交換する手順について説明する。
まず、前記コネクタを外し搬送手段5と装置との電気的な接続を切り、ボルト28を前記ネジ穴から取り外す。
次いで、搬送手段5を上方へ持ち上げ、基台7から取り外すとともに、この搬送手段5を、作業スペースの確保された薄切片作製装置1の装置外へ移送する。
【0046】
次いで、搬送手段5から、引張コイルバネ25を取り外す。
そして、一対のフレーム13のうち、前記他方側のフレーム13を搬送手段5から取り外す。このようにしてローラ12の前記他方側の端部を露出させた後、ローラ12から搬送ベルト11を取り外す。
次いで、前述とは逆の手順でこの搬送手段5に新しい搬送ベルト11を取り付けた後、搬送手段5を基台7に装着する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る薄切片作製装置1によれば、搬送手段5が、基台7に対して着脱可能とされているので、搬送ベルト11を交換する際、作業者が基台7の配置された装置内で作業を行う必要はなく、搬送手段5を基台7から取り外して、作業スペースが充分に確保された装置外において作業を行うことができる。
【0048】
すなわち、従来では、作業者が部材の密集した装置内において、基台7からまずフレーム13を取り外し、端部を露出させたローラ12から搬送ベルト11を取り外した後、前述とは逆の手順で新しい搬送ベルト11を装着するような作業を行なっていた。しかしながら、このような装置内の狭いスペースにおける作業では、作業者が無理な姿勢を強いられて、作業の正確性を欠くことがあった。これに対し、本実施形態の薄切片作製装置1によれば、搬送ベルト11の交換が簡便に行えるので、作業者の負荷が大幅に低減されるとともに、交換作業が確実かつ短時間で行える。
【0049】
また、予め搬送手段5を複数用意しておき、前述のように基台7から搬送手段5を取り外した際、代わりに、新しい搬送ベルト11を装着した別の搬送手段5をこの基台7に取り付けることもできる。これによれば、古い搬送ベルト11を交換している間であっても薄切片作製装置1の運転を中断する必要がなくなり、薄切片B1を作製する効率が高められる。
【0050】
また、搬送手段5が、駆動ローラ12jを回転駆動させる駆動部17を有しているので、搬送手段5を基台7に装着する際に、駆動ローラ12jの歯車19と駆動部17の歯車17bとの相対的な位置関係を調整する手間がない。詳しくは、例えば、駆動部17が基台7に配設され、駆動ローラ12jが搬送手段5に配設された構成だとすると、搬送手段5を基台7から取り外す際には、歯車19、17b同士の噛合を解除する必要が生じる。このような構成の場合、搬送手段5を基台7に装着する際には、歯車19、17b同士を確実に噛合させるように、互いの相対位置を調整する手間が生じることとなる。
【0051】
これに対し、本実施形態によれば、搬送ベルト11を交換するにあたって、歯車19、17b同士の噛合を解除する必要がないことから、前述の調整を行う手間が生じない。よって、搬送ベルト11の交換作業がより簡便になるとともに、駆動ローラ12jの歯車19と駆動部17の歯車17bとの相対的な位置精度が確保される。
【0052】
また、搬送手段5が、搬送ベルト11の張力の低下を検出する検出手段24を有しているので、搬送ベルト11の張力が低下した際に、装置を迅速に停止させることができる。すなわち、搬送ベルト11の張力が低下した状態のままこの搬送ベルト11を走行させると、搬送される薄切片B1が、弛んだ搬送ベルト11の形状に応じて折れ曲がったり破損したりして、安定した搬送が行えないことが考えられる。
【0053】
そこで、本実施形態では、検出手段24を設けて、前述の張力の低下を早期に検出できるようにしている。これにより、薄切片B1の破損等による包埋ブロックBの無駄を抑制でき、また、弛んだ搬送ベルト11が他の部材等に引っ掛かり破損させてしまうようなことが防止される。
【0054】
また、方向切替ローラ12aが、カム機構16によりカッター3に対して進退可能とされ、詳しくはカッター3の切れ刃3aに対して進退可能とされているので、方向切替ローラ12aに巻き回されている搬送ベルト11の部分が、カッター3の切れ刃3aに対して精度よく位置決めされる。従って、切れ刃3aに薄切された薄切片B1が、搬送ベルト11の前記部分に確実に受け渡され載置されることとなり、薄切片B1の搬送が安定して行える。
【0055】
また、方向切替ローラ12aは、少なくともその一部が刃押さえ10の液体貯留部10b内に配置されているので、方向切替ローラ12aに巻き回された搬送ベルト11の部分が液体貯留部10bに貯留された水に浸されて湿潤な状態とされ、薄切片B1が前記部分により確実に載置される。
【0056】
また、搬送ベルト11が、テンションローラ12gに前述のように付勢されて、張力が充分に確保されているので、薄切片B1の搬送が安定して確実に行われる。
また、ローラ12のうち、後部ローラ12b、中間ローラ12c、12d、12e、12f、12h、テンションローラ12g、及び、駆動ローラ12jは、その前記幅方向の中央部分が両端部分よりも僅かに縮径して形成されているので、これらのローラ12に巻き回された搬送ベルト11の前記幅方向に沿った位置が安定する。つまり、搬送ベルト11が前記幅方向の中央部分に維持されて、ローラ12に対し前記幅方向のうちいずれかの端部側に移動してしまうようなことが防止される。
【0057】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、駆動部17が搬送手段5に配設され、該搬送手段5とともに基台7に対して着脱される構成として説明したが、これに限定されるものではなく、駆動部17は基台7に配設されていても構わない。
【0058】
また、検出手段24が、近接スイッチ22とマグネット23とからなるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、検出手段24は、搬送ベルト11の張力の低下を検出できればよく、それ以外のリミットスイッチやリニアスケール等を用いて構成されていてもよい。
また、検出手段24が設けられていなくとも構わない。
【0059】
また、方向切替ローラ12aが、搬送手段5に設けられたカム機構16によりカッター3の切れ刃3aに対して進退可能とされていることとしたが、カッター3の上面部分に向けて進退可能とされていても構わない。
また、方向切替ローラ12aは、カム機構16以外のネジ調整機構等によりカッター3に向けて進退可能とされていてもよい。
また、方向切替ローラ12aが、カッター3に対して進退可能とされていなくとも構わない。
【0060】
また、搬送ベルト11は、無端帯状又は環形帯状に形成されていることとしたが、環状をなしていればよく、これに限定されるものではない。すなわち、搬送ベルト11は、例えば、無端紐状に形成された複数の環状体を前記幅方向に互いに間隔を開け配設することによって構成されていてもよい。
【0061】
また、駆動部17の歯車17bと駆動ローラ12jの歯車19とが噛合されていることとしたが、駆動部17と駆動ローラ12jとが前述の噛合以外の手法により係合されていても構わない。
また、駆動部17が、ローラ12のうち駆動ローラ12jを回転駆動することとしたが、駆動ローラ12j以外のローラ12を回転駆動することとしても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1 薄切片作製装置
3 カッター
5 搬送手段
7 基台
11 搬送ベルト
12 ローラ
12a 方向切替ローラ
13 フレーム
16 カム機構
17 駆動部
24 検出手段
B 包埋ブロック
B1 薄切片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に配設され包埋ブロックを薄切するカッターと、前記カッターで薄切された薄切片を搬送する搬送手段とを備えた薄切片作製装置であって、
前記搬送手段は、環状をなし前記薄切片を載置して周回する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを巻き回す複数のローラと、これらのローラの両端部を軸支する一対のフレームとを有し、
前記搬送手段は、前記基台に対して着脱可能とされていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片作製装置であって、
前記搬送手段は、前記ローラを回転駆動させる駆動部を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄切片作製装置であって、
前記搬送手段は、前記搬送ベルトの張力の低下を検出する検出手段を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の薄切片作製装置であって、
複数の前記ローラのうち、前記カッターに接近して配設される方向切替ローラが、前記搬送手段に設けられたカム機構により該カッターに対して進退可能とされていることを特徴とする薄切片作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261779(P2010−261779A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112110(P2009−112110)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】