説明

薄型基板搬送治具

【課題】 位置決めピンの折れ曲がりを防ぎ、薄型基板の固定や作業の中断を防止することのできる薄型基板搬送治具を提供する。
【解決手段】 位置決め板1と、位置決め板1の表面に着脱自在に積層されて電子部品実装用のフレキシブル配線板を着脱自在に粘着保持するキャリア板20とを備え、位置決め板1の表面に、キャリア板20のフレキシブル配線板に干渉する複数の位置決めピン4を立設し、キャリア板20に、各位置決めピン4に貫通される貫通孔24を穿孔する。複数の位置決めピン4を、位置決め板1の表面に植設されてキャリア板20の貫通孔24内に嵌合される拡径部5と、拡径部5の表面から伸びて貫通孔24の内部から外部表面方向に突出する先端側の縮径部6とから段付きに構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装用のフレキシブル配線板等を位置決めして保持する薄型基板搬送治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やDVD等には、加工性や屈曲性に優れ、薄型化、軽量化、小型化を図ることのできるフレキシブル配線板(FPC)が使用されているが、このフレキシブル配線板は、剛性が低く、反り易く、撓み易いので、そのままでは各種の電子部品を実装ラインで実装することが困難である。
【0003】
そこで、従来においては、剛性の板体にフレキシブル配線板を複数の位置決めピンを介して固定し、このフレキシブル配線板を固定した状態で電子部品を実装する技術(特許文献1参照)が提案されているが、この技術とは別に図6に示すように、位置決め板1とキャリア板20とを有する薄型基板搬送治具が提案されている。
【0004】
この種の薄型基板搬送治具は、図6に示すように、位置決め板1と、この位置決め板1に積層されてフレキシブル配線板を保持する搬送用のキャリア板20とを備え、位置決め板1には、キャリア板20の表面に保持されるフレキシブル配線板の位置決め孔に挿通する複数の位置決めピン4Aが立設されており、キャリア板20には、各位置決めピン4Aに貫通される貫通孔24が穿孔されている。
【特許文献1】特開平1‐198094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の薄型基板搬送治具は以上のように構成され、フレキシブル配線板に対する電子部品の実装を容易にするという優れた効果を奏するが、本発明者等は、係る効果に満足せず、薄型基板搬送治具に様々な改良を施して付加価値を付け、技術の飛躍的進歩を刺激することを欲している。具体的には、位置決めピン4Aの折れ曲がりを未然に防ぎ、フレキシブル配線板の固定や作業の中断を防止したいという要望がある。
【0006】
この点について説明すると、薄型基板搬送治具の位置決め板1には、φ1mm以下の位置決めピン4Aが立設されているが、細く長い位置決めピン4Aが単に立設されるに止まると、使用時や輸送時に位置決めピン4Aの先端部がキャリア板20との接触により折れ曲がり、フレキシブル配線板の固定や作業に支障を来たすおそれが考えられる。この問題は、近年、フレキシブル配線板の実装エリアが拡大し、位置決めピン4Aが益々小型化、縮径化している以上、軽々しく扱うことはできない。
【0007】
係る問題を解消する方法としては、位置決めピン4Aを短くしたり、太くする方法が考えられるが、位置決めピン4Aを短くすると、反りやすいフレキシブル配線板の位置決め孔に位置決めピン4Aが挿通しないおそれがあり、反りやすいフレキシブル配線板の固定が困難になるという問題が新たに生じることとなる。さらに、位置決めピン4Aを太くすると、フレキシブル配線板の位置決め孔を拡大しなければならず、フレキシブル配線板の実装エリアの拡大に対処できないおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、位置決めピンの折れ曲がりを防ぎ、薄型基板の固定や作業の中断を防止することのできる薄型基板搬送治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、位置決め体と、この位置決め体に積み重ねられて電子部品実装用の薄型基板を着脱自在に粘着保持するキャリア板とを備え、位置決め体に、キャリア板の薄型基板に干渉する位置決めピンを立設(立て設ける)し、キャリア板に、位置決めピンに貫通される貫通孔を設けたものであって、
位置決めピンを、位置決め体に設けられてキャリア板の貫通孔内に嵌め合わされる拡幅部と、この拡幅部から伸びて貫通孔の内部から外部に突出し、キャリア板に粘着保持される薄型基板に干渉する縮幅部とから構成したことを特徴としている。
【0010】
なお、キャリア板に形成されて薄型基板の肉厚以上の深さを有する座ぐり領域と、この座ぐり領域の近傍に設けられ、薄型基板の肉厚部に対向してその厚さを吸収する厚さ吸収穴(厚さ吸収領域)とを含むことができる。
また、キャリア板に形成されて薄型基板の肉厚以上の深さを有する座ぐり領域と、この座ぐり領域に粘着されて薄型基板を着脱自在に粘着保持する粘着層と、この粘着層の近傍に設けられ、薄型基板の肉厚部に対向してその厚さを吸収する厚さ吸収穴(厚さ吸収領域)とを含むことができる。
【0011】
また、キャリア板の表面に形成されて薄型基板の肉厚以上の深さを有する座ぐり領域と、この座ぐり領域に粘着されて薄型基板を着脱自在に粘着保持する粘着層と、この粘着層の近傍に設けられ、薄型基板の肉厚部に対向してその厚さを吸収する厚さ吸収穴(厚さ吸収領域)とを含み、キャリア板の表面と粘着層に粘着保持された薄型基板の表面高さとを略揃えるようにすることができる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における薄型基板には、少なくとも単数複数のフレキシブル配線板やプリント配線板等が含まれる。また、全ての位置決めピンを拡幅部と縮幅部とから構成しても良いし、一部の位置決めピンを拡幅部と縮幅部とから構成しても良い。この位置決めピンは、円柱形でも良いし、角柱形等でも良く、又薄型基板の周囲に接触して位置決めするものでも良いし、薄型基板に穿孔された位置決め孔に挿入されて位置決めするものでも良い。
【0013】
本発明によれば、位置決め体にキャリア板を重ねる際、位置決め体から起立した位置決めピンの拡幅部がキャリア板の貫通孔に干渉しながら嵌め合わされるが、位置決めピンの拡幅部よりも細い縮幅部は、キャリア板の貫通孔に接触することなく、キャリア板から突出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置決めピンの折れ曲がりを防ぎ、薄型基板の固定や作業の中断を防止することができるという効果がある。また、位置決めピン全体を短くする必要がないので、例え薄型基板が反りやすくても、薄型基板の固定が困難になるのを抑制することができる。さらに、位置決めピンの全部分を太くするものではないので、薄型基板の実装エリアの拡大等にも対処することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における薄型基板搬送治具は、図1ないし図5に示すように、剛性を有する位置決め板1と、この位置決め板1の表面に着脱自在に積層されて複数のフレキシブル配線板10を保持する搬送用のキャリア板20とを備え、位置決め板1には、キャリア板20に保持されるフレキシブル配線板10に干渉する複数の位置決めピン4を立設するとともに、キャリア板20には、各位置決めピン4に貫通される丸い貫通孔24を穿孔し、複数の位置決めピン4を拡径部5と縮径部6とから径の異なる段付きに構成するようにしている。
【0016】
位置決め板1は、図2や図3に示すように、例えば加工性に優れる軽量のアルミニウム等の材料を使用して平面矩形の平板に形成され、四隅部のうち一隅部2が斜めに切り欠かれており、この切り欠かれた一隅部2がキャリア板20の位置合わせ用の目印として機能する。
【0017】
位置決め板1の表面四隅部のうち三隅部には、キャリア板20用の位置合わせピン3がそれぞれ垂直に圧入して植設されるとともに、位置決め板1の表面の大部分には、複数の位置決めピン4が所定のパターンで植設されており、この複数の位置決めピン4がフレキシブル配線板10の位置決め孔12に挿入されて位置決めするよう機能する。
【0018】
複数の位置決めピン4は、図5に示すように、位置決め板1の表面に起立状態で圧入して植設され、キャリア板20の貫通孔24内に嵌合して潜在する円板形の拡径部5と、この拡径部5の表面から垂直上方に伸びて貫通孔24の内部から外部に突出し、フレキシブル配線板10の位置決め孔12に挿入される円柱形の縮径部6とからキャリア板20の厚さ以上の長さを有する断面略凸字形に構成される。
【0019】
位置決めピン4は、例えばSUS等の材料を使用して貫通孔24内に埋没する拡径部5がφ1.5mm、先端の丸まった縮径部6がφ1.0mm以下に形成され、拡径部5やキャリア板20の貫通孔24よりも縮径部6が細く形成される。
【0020】
フレキシブル配線板10は、図1に示すように、例えばポリエステルやポリイミド等の絶縁性フィルム上に所定の導電パターンがプリントされることにより形成され、その端部には肉厚のコネクタ部11や補強板が形成されており、薄型基板搬送治具のキャリア板20に粘着保持された状態でクリームハンダが塗布され、その後、各種の電子部品が実装される。このフレキシブル配線板10の周縁部分の一部には、位置決めピン4に挿通される位置決め孔12が所定の間隔をおいて複数穿孔される。
【0021】
キャリア板20は、図1、図2、図4に示すように、例えばアルミニウムやガラスエポキシ等の材料を使用して位置決め板1と略同じ大きさを有する平面矩形の薄板に形成され、四隅部のうち一隅部21が斜めに切り欠かれており、この切り欠かれた一隅部21が位置決め板1の一隅部2に揃えられて目印として機能する。このキャリア板20の四隅部のうち三隅部には、位置決め板1の位置合わせピン3に貫通される位置合わせ孔22がそれぞれ穿孔され、キャリア板20の大部分には、複数の座ぐり領域23、貫通孔24、粘着層25、及び平面矩形の厚さ吸収穴26が配設される。
【0022】
複数の座ぐり領域23は、例えばキャリア板20の表面の大部分に2×2のパターンに形成され、各座ぐり領域23がフレキシブル配線板10の大きさ以上の大きさに形成されるとともに、フレキシブル配線板10の肉厚以上の深さで凹み形成される。また、複数の貫通孔24は、例えばφ1.7mm程度の大きさで各座ぐり領域23の内外に穿孔される。
【0023】
各粘着層25は、例えばエポキシ樹脂、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等を使用して弱粘着性の薄いシートに成形され、座ぐり領域23に粘着されてフレキシブル配線板10を着脱自在に粘着し、フレキシブル配線板10の表面とキャリア板20の表面とを略揃えてフレキシブル配線板10に対するクリームハンダの塗布作業を円滑化するよう機能する。さらに、各厚さ吸収穴26は、座ぐり領域23や粘着層25の近傍に穿孔され、フレキシブル配線板10の肉厚のコネクタ部11や補強板に対向してその厚さを吸収し、フレキシブル配線板10に対するクリームハンダの塗布作業を円滑化する。
【0024】
上記において、薄型基板搬送治具のキャリア板20にフレキシブル配線板10を固定する場合には、先ず、位置決め板1の表面上にキャリア板20を位置合わせピン3を介して積層し、キャリア板20の表面から複数の位置決めピン4の縮径部6を露出させ(図1参照)、キャリア板20の粘着層25にフレキシブル配線板10を位置決めピン4の縮径部6を介して位置決め固定するとともに、厚さ吸収穴26にフレキシブル配線板10のコネクタ部11や補強板を配置してその厚さを吸収させれば、キャリア板20にフレキシブル配線板10を適切に固定することができる。
【0025】
上記キャリア板20を積層する際、位置決めピン4は、根元側の拡径部5がキャリア板20の貫通孔24に接触しながら嵌入するが、縮径部6がキャリア板20の貫通孔24内面に接触することなくそのまま露出し、縮径部6が屈曲することなくフレキシブル配線板10に適切に干渉する。
【0026】
上記構成によれば、従来の細い位置決めピン4Aを拡径部5と縮径部6とを備えた形状に構成するので、位置決め板1にキャリア板20を積層する際、位置決めピン4の細い先端側の縮径部6とキャリア板20の太い貫通孔24とが相互に干渉し合うことがない。したがって、使用時や輸送時に位置決めピン4の先端部がキャリア板20との接触で折れ曲がり、フレキシブル配線板10の固定や作業に支障を来たすおそれが全くない。また、位置決めピン4全体を短縮するものではないから、反りやすいフレキシブル配線板10の固定作業が困難になるのを防ぐことができる。
【0027】
また、位置決めピン4の拡径部5ではなく、縮径部6がフレキシブル配線板10の位置決め孔12に挿入されるので、フレキシブル配線板10の実装エリアの拡大にも容易に対処することができる。また、位置決めピン4をテーパ形ではなく、段付きに構成するので、位置決め板1にキャリア板20を積層する際、キャリア板20を完全に積層することができ、フレキシブル配線板10の固定作業に支障を来たすのを防ぐことが可能になる。
【0028】
また、位置決めピン4の先端側の縮径部6は、従来よりも短く、折れにくく、曲がりにくいので、強度や剛性を高めることが可能になる。さらに、フレキシブル配線板10の表面とキャリア板20の表面とが同じ高さで揃い、これらの間に凹凸が生じないので、フレキシブル配線板10にクリームハンダを円滑、かつ均一に塗布することが可能になる。
【0029】
なお、上記実施形態の位置決め板1とキャリア板20とは、必要に応じ、長方形、正方形、多角形、円形等に形成することができる。また、位置決め板1の表面四隅部に、キャリア板20用の位置合わせピン3をそれぞれ垂直に圧入して植設しても良い。また、上記実施形態では位置決め板1に位置決めピン4を圧入して植設したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、位置決め板1に位置決めピン4を螺子締めして起立させても良い。また、座ぐり領域23や厚さ吸収穴26は、適宜増減変更することができる。さらに、厚さ吸収穴26は、凹んでいれば、貫通口でも良いし、そうでなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態における位置決め板とキャリア板とを模式的に示す分解斜視説明図である。
【図3】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態における位置決め板を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態におけるキャリア板を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態における位置決めピンを模式的に示す断面説明図である。
【図6】薄型基板搬送治具を模式的に示す要部断面説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 位置決め板(位置決め体)
4 位置決めピン
4A 位置決めピン
5 拡径部(拡幅部)
6 縮径部(縮幅部)
10 フレキシブル配線板(薄型基板)
11 コネクタ部
12 位置決め孔
20 キャリア板
23 座ぐり領域
24 貫通孔
25 粘着層
26 厚さ吸収穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め体と、この位置決め体に積み重ねられて電子部品実装用の薄型基板を着脱自在に粘着保持するキャリア板とを備え、位置決め体に、キャリア板の薄型基板に干渉する位置決めピンを立設し、キャリア板に、位置決めピンに貫通される貫通孔を設けた薄型基板搬送治具であって、
位置決めピンを、位置決め体に設けられてキャリア板の貫通孔内に嵌め合わされる拡幅部と、この拡幅部から伸びて貫通孔の内部から外部に突出し、キャリア板に粘着保持される薄型基板に干渉する縮幅部とから構成したことを特徴とする薄型基板搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−294570(P2007−294570A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119026(P2006−119026)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】