説明

薄型基板搬送治具

【課題】 加工の時間と手間を低減し、コスト削減を図ることのできる薄型基板搬送治具を提供する。
【解決手段】 剛性を有する位置決め板1と、位置決め板1の表面に着脱自在に積層されて電子部品実装用のフレキシブル配線板20を保持するキャリア板10とを備え、位置決め板1の表面に位置決め体群30を立設し、キャリア板10に、フレキシブル配線板20の形状に対応する複数の保持領域40を形成するとともに、各保持領域40の両端部周縁に、位置決め体群30の位置決め体に貫通される複数の貫通孔43をそれぞれ穿孔する。そして、各位置決め体を、キャリア板10を貫通して保持領域40に保持されたフレキシブル配線板20の両端部におけるコネクタ部周縁周面に面接触する位置決め片32とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装用のフレキシブル配線板等を位置決めして保持する薄型基板搬送治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やDVD等には、加工性や屈曲性に優れ、薄型化、軽量化、小型化を図ることのできるフレキシブル配線板が使用されているが、このフレキシブル配線板は、剛性が低く、反りやすく、撓み易いという特徴を有しているので、そのままでは各種の電子部品を実装ラインで実装することが困難である。そこで、従来においては、複数のフレキシブル配線板を着脱自在に位置決め保持して搬送や電子部品の実装を容易にするキャリア板が使用されている。
【0003】
係るキャリア板10には様々なタイプがある(特許文献1参照)が、例えば剛性を有するキャリア板10の表面に、フレキシブル配線板20の形状に対応する複数の保持穴50がエンドミル等により深く掘り込まれ、各保持穴50の底面に粘着層が粘着されており、この保持穴50の粘着層上にフレキシブル配線板20が着脱自在に嵌入して位置決め保持されるタイプが知られている(図3参照)。
【特許文献1】特開平1‐198094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるキャリア板10は、以上のように構成され、表面にフレキシブル配線板20の形状に完全に対応する複数の保持穴50がエンドミル等により広く深く掘り込まれるので、フレキシブル配線板20の仕様の変更の度に保持穴50を一々深く掘り込まねばならず、保持穴50の加工に時間と手間がかかり、コスト削減を期待することができないという問題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、加工の時間と手間を低減し、コスト削減を図ることのできる薄型基板搬送治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、位置決め板に、薄型基板を保持するキャリア板を着脱自在に積み重ねたものであって、
位置決め板に設けられる位置決め体と、キャリア板に形成されて薄型基板の形状に対応する保持領域とを含み、位置決め体を、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板に干渉する位置決めピンと、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板の少なくとも一部に面接触する位置決め片のうち、少なくとも位置決め片としたことを特徴としている。
【0007】
なお、薄型基板の少なくとも一部を、薄型基板の端部に形成された肉厚部とし、この肉厚部を複数の位置決め片により固定するようにすることができる。
また、薄型基板の少なくとも一部の形状に対応する保持領域の対応部を凹み形成し、薄型基板の少なくとも一部を、薄型基板の端部に形成されたコネクタ部とし、このコネクタ部を複数の位置決め片により固定するようにすることができる。
また、位置決め片を平面略L字形あるいは平面略U字形に形成することができる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における薄型基板には、少なくとも単数複数のフレキシブル配線板、高密度フレキシブル配線板、プリント配線板等が含まれる。この薄型基板は、屈曲、蛇行、湾曲の有無を特に問うものではなく、周縁部に複数の位置決め孔が穿孔されていても良いし、そうでなくても良い。薄型基板の肉厚部は、例えばコネクタ部及び又は各種形状の補強板等からなり、薄型基板の一端部に形成されていても良いし、両端部に形成されていても良い。
【0009】
保持領域は、単数複数を特に問うものではなく、粘着層を設けても良いし、設けなくても良い。さらに、位置決め体は、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板の全周縁に面接触する位置決め片でも良いが、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板の一部に面接触する位置決め片であるのが好ましい。
【0010】
本発明によれば、キャリア板に薄型基板を保持したい場合には、位置決め板にキャリア板を積み重ねて貫通孔から位置決め体である位置決め片を突出させ、キャリア板の保持領域に薄型基板をセットしてその少なくとも一部と位置決め片とを面接触させれば、キャリア板に薄型基板を位置決めして保持したり、挟んだりして固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工の時間と手間を低減し、コスト削減を図ることができるという効果がある。
また、薄型基板の肉厚部に位置決め片を単に面接触させるのではなく、薄型基板の肉厚部を複数の位置決め片により固定するようにすれば、薄型基板の位置ずれをさらに有効に抑制防止することができる。また、薄型基板の肉薄部ではなく、肉厚部を複数の位置決め片により固定するようにすれば、作業が容易になる。
【0012】
また、位置決め片を平面略L字形あるいは平面略U字形に形成すれば、薄型基板の少なくとも一部に位置決め片を複数の方向から面接触させ、包囲することができるので、薄型基板のずれる範囲が減少する。さらに、位置決め片の曲がった内角部に薄型基板の肉厚部の角や隅を接触させれば、位置決め精度の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における薄型基板搬送治具は、図1や図2に示すように、剛性を有する位置決め板1と、この位置決め板1の表面に着脱自在に積層されて電子部品実装用のフレキシブル配線板20を保持するキャリア板10とを備え、位置決め板1の表面に位置決め体群30を立設し、キャリア板10に、フレキシブル配線板20に対応する複数の保持領域40を形成するとともに、各保持領域40の両端部周縁に、位置決め体群30の位置決め体である位置決め片32に貫通される複数の貫通孔43をそれぞれ穿孔するようにしている。
【0014】
位置決め板1とキャリア板10とは、図1に示すように、それぞれ所定の材料を使用して略同じ大きさの平面矩形に形成され、位置決め板1の表面四隅部には、円柱形の位置合わせピン2がそれぞれ立設されるとともに、キャリア板10の四隅部には、位置合わせピン2に貫通される位置合わせ孔11がそれぞれ丸く穿孔されており、これら位置合わせピン2と位置合わせ孔11との嵌合により、位置決め板1上にキャリア板10が高精度に位置決めされる。
【0015】
位置決め板1は、例えば加工性に優れる軽量のアルミニウム等を使用して平坦な板に形成される。また、キャリア板10は、例えば耐熱性等に優れる単数複数のアルミニウムやガラスエポキシ等の材料を使用して基本的には平坦な薄板に形成され、所定の箇所に搬送されたり、図示しないハンダリフロー装置にセットされる。
【0016】
フレキシブル配線板20は、図1に示すように、例えば可撓性のポリエスエルやポリイミド等の材料を使用して平面略L字形に屈曲成形された薄い絶縁フィルムを備え、この絶縁フィルムの表面には所定の導体パターンがプリントされており、両端部には、平面矩形を呈した肉厚のコネクタ部21と補強板とがそれぞれ幅広に配設される。このようなフレキシブル配線板20は、キャリア板10の保持領域40に着脱自在に保持され、この保持状態で搬送されたり、クリームハンダの塗布後に図示しない各種の電子部品が実装される。
【0017】
位置決め体群30は、同図に示すように、位置決め板1の表面に立設され、複数の保持領域40の数に応じて複数の位置決め体グループ31に分割されており、各位置決め体グループ31が各保持領域40の両端部にそれぞれ位置する複数の位置決め片32により形成される。各位置決め片32は、図1や図2に示すように、例えば強度やクリーン性に優れるSUSや合成樹脂等の材料を使用して1mm以下の厚さを有する平面略L字形に屈曲形成され、位置決め板1上にキャリア板10が積層された際、キャリア板10を貫通して突出する(図2参照)。
【0018】
複数の保持領域40は、図1に示すように、キャリア板10の表面に所定の間隔をおいてパターン形成され、各保持領域40がフレキシブル配線板20の形状に対応するよう平面略L字形に形成される。各保持領域40は、その両端部にフレキシブル配線板20のコネクタ部21に対応する平面矩形の厚さ吸収穴41がそれぞれ凹み形成され、この厚さ吸収穴41がコネクタ部21に嵌合してその厚さを吸収するよう機能する。各保持領域40には、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等からなる耐熱性の粘着層42が選択的に粘着され、この粘着層42上にフレキシブル配線板20が粘着される。
【0019】
複数の貫通孔43は、各保持領域40の両端部、換言すれば、厚さ吸収穴41の周縁部における三隅部あるいは四隅部にそれぞれ位置決め片32に対応するよう穿孔され、下方から位置決め片32に貫通されてそのコネクタ部21の周縁部周面に対する面接触や挟持を許容するよう機能する(図2参照)。
【0020】
上記において、キャリア板10上にフレキシブル配線板20を位置決め保持したい場合には、位置決め板1上にキャリア板10を高精度に積層して複数の貫通孔43から位置決め片32をそれぞれ突出させ、キャリア板10の保持領域40にフレキシブル配線板20を粘着してその一対のコネクタ部21の周面を複数の位置決め片32の平坦な立面にそれぞれ面接触状態で固定し、各厚さ吸収穴41にコネクタ部21を嵌入すれば、キャリア板10にフレキシブル配線板20を適切に位置決め保持することができる。
【0021】
上記構成によれば、保持領域40に厚さ吸収穴41をコネクタ部21の肉厚以上の深さで穿孔するだけで良く、フレキシブル配線板20の全形状に対応する保持領域40をエンドミル等により一々広く深く掘り込む必要性が全くないので、保持領域40の加工に時間と手間がかかることがない。したがって、作業性を著しく向上させ、大幅なコスト削減を図ることができる。
【0022】
また、コネクタ部21に丸い位置決めピンを単に線接触させたり、点接触させるのではなく、広い面積の位置決め片32を沿わせて面接触させるので、フレキシブル配線板20の位置ずれを防止することができ、これによりフレキシブル配線板20に対する電子部品の実装不良を有効に解消することができる。
【0023】
また、フレキシブル配線板20を位置決めピンにより位置決めする場合には、フレキシブル配線板20に位置決めピン用の位置決め孔が複数穿孔されている必要があるが、本実施形態によれば、例えフレキシブル配線板20に位置決め孔が穿孔されていなくても、確実に位置決め固定することが可能になる。
【0024】
この点に関し、近年のフレキシブル配線板20は、電極ピッチが狭ピッチ化したり、電極数が増加しているので、位置決め孔を複数穿孔することが困難である。本実施形態によれば、位置決め孔の有無にかかわらず、電極ピッチが狭ピッチ化したり、電極数の多いフレキシブル配線板20をも確実に位置決め固定することが可能になる。
【0025】
また、コネクタ部21の四隅部、又は三隅部を複数の位置決め片32により複数の方向から挟持させるので、コネクタ部21がXY方向にがたつくのを確実に防ぐことができる。さらに、位置決め片32の内角部にコネクタ部21の角部(隅部)を接触させることができるので、位置決め精度の向上が大いに期待できる。
【0026】
なお、上記実施形態では位置決め体を位置決め片32のみとしたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、位置決め体を、キャリア板10を貫通して保持領域40に保持されたフレキシブル配線板20の周縁部に干渉する複数の位置決めピンと位置決め片32の両方としても良い。
【0027】
また、位置決め体を位置決め板1に螺着したり、植設しても良く、さらには圧入しても良い。また、各位置決め片32を必要に応じ、面接触による固定(圧接や挟持等を含む)が期待できる平面略I字形、略J字形、略U字形、略V字形等に形成しても良い。さらに、支障を来たさないのであれば、保持領域40の両端部以外の残部を少々凹み形成して粘着層42を粘着したり、粘着層42の大きさを変更したり、あるいは粘着層42を粘着せずに省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る薄型基板搬送治具の実施形態におけるフレキシブル配線板のコネクタ部と複数の位置決め片とを模式的に示す要部斜視図である。
【図3】従来のキャリア板を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 位置決め板
10 キャリア板
20 フレキシブル配線板(薄型基板)
21 コネクタ部(肉厚部)
30 位置決め体群
32 位置決め片(位置決め体)
40 保持領域
41 厚さ吸収穴
42 粘着層
43 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め板に、薄型基板を保持するキャリア板を着脱自在に積み重ねた薄型基板搬送治具であって、
位置決め板に設けられる位置決め体と、キャリア板に形成されて薄型基板の形状に対応する保持領域とを含み、位置決め体を、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板に干渉する位置決めピンと、キャリア板を貫通して保持領域に保持された薄型基板の少なくとも一部に面接触する位置決め片のうち、少なくとも位置決め片としたことを特徴とする薄型基板搬送治具。
【請求項2】
薄型基板の少なくとも一部を、薄型基板の端部に形成された肉厚部とし、この肉厚部を複数の位置決め片により固定するようにした請求項1記載の薄型基板搬送治具。
【請求項3】
位置決め片を平面略L字形あるいは平面略U字形に形成した請求項1又は2記載の薄型基板搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−294571(P2007−294571A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119027(P2006−119027)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】