説明

薄型水性貼付剤

【課題】皮膚に水分保護効果を持続させ、使用性に優れた薄型水性貼付剤の提供。
【解決手段】支持体上に粘着剤層が積層された貼付剤であって、その支持体が軟質部と硬質部を共有するプラスチックから構成される繊維に、軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を厚さ7〜70μmの範囲で熱融着させた繊維フィルムから成る薄型水性貼付剤。該粘着剤層としては、水、保湿剤、ポリアクリル酸及び/またはその塩類、セルロース誘導体、難溶性金属塩、及びpH調整剤を構成成分とし、pHが4から6に調整されたものであることが好ましい。該支持体としては、ポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーから選ばれる軟質部と硬質部を共有するプラスチックから構成される繊維に、ポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーから選ばれる軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルムから成るものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に水分保護効果を持続させ、使用性に優れた薄型水性貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパップ剤は、不織布などの支持体に、水溶性高分子を主体とした膏体を塗り広げたものである。膏体は700〜1500g/m2と厚いことにより、皮膚への粘着性に優れ、また初期の膏体含水量も高く、皮膚に良好な保水効果を与えるものである。
しかしながら、従来のパップ剤は、粘着力を発揮させるために一定の厚みを必要とし、関節などの動作の多い部分に貼付すると、追従できないか、或いは衣服との擦れにより剥がれが生じる場合がある。また、長時間貼付すると、保水能力を失ってしまう問題がある。これらの問題点の解決のため、また、物性の経時的安定性、製造適正の改良の意味からも、パップ剤の薄型化が望まれている。
【0003】
本発明者らは、従来公知のパップ剤製造技術を用い、薄型水性貼付剤の試作を試みたが、それらは以下のような欠点を有していた。
即ち、従来のパップ剤は、支持体として通気性が高い不織布、織布などを用いているが、薄型化した場合、貼付中、体温によりパップ剤中の水分が蒸発し、皮膚が十分な水分で覆われなくなる。
また、同時に水分の蒸発は、膏体の乾燥を惹起し、パップ剤の皮膚に対する粘着力を低下させると共に、一方では皮膚接着部の膏体の固化により皮膚への付着を過度に高めることになり、剥離時に痛感を与え、ひいては皮膚に軽度の損傷を与える場合がある。
【0004】
支持体として、通気性の低いフィルム、若しくは、それに接着剤、熱融着法にて、不織布を貼り合わせたものは、柔軟性、均一性が劣ること、パップ剤の膏体との親和性が十分でなく、貼付中、貼付部位の動きへの追従性が低いため剥がれが生じ、そして、剥離時、フィルム破れが生じたり、皮膚に膏体残りが生じるなどの問題点がある。
特に、従来のパップ剤は、支持体の構成と膏体成分の構成及びそれらの組み合わせに注意が向けられていない。例えば、従来のパップ剤は、膏体の塗布量を多くすることで(700〜1500g/m2)、適切な粘着力を持たせたものではあるが、それらは、薄型水性貼付剤に十分に適した設計に基づき作製されたものではなく、それらを、単純に、薄型化(塗布量150〜500g/m2)しても、製造し易さ、品質、皮膚貼付性とそれらの経時的安定性、また、製造コストの面で実用化しうるものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は皮膚に水分保護効果を持続させ、使用性に優れた薄型水性貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、支持体の構成と支持体に適した膏体成分の構成について鋭意研究を行った結果、天然繊維と軟質性プラスチック繊維を絡ませた複合繊維に、軟質性プラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルム(フィルム層を有する繊維)で構成される支持体、あるいは、軟質部と硬質部を共有するプラスチックから形成される繊維に、軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルムで構成される支持体に、水、保湿剤、ポリアクリル酸及び/またはその塩類、セルロース誘導体、難溶性多価金属塩、pH調製剤を、適切な割合にて混合し、pHを4〜6に調製した膏体を150〜500g/m2の塗工量で塗り広げることにより、上記問題点を解決する薄型水性貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、支持体上に粘着剤層(膏体)が積層された貼付剤であって、該支持体が天然繊維と軟質プラスチック繊維を絡ませた複合繊維に軟質プラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルム、あるいは、軟質部と硬質部を共有するプラスチックから形成される繊維に、軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルムから成ることを特徴とする薄型水性貼付剤に関する。
更に具体的には、上記粘着剤層(膏体)が、水、保湿剤、ポリアクリル酸及び/またはその塩類から成る粘着付与剤、セルロース誘導体から成る粘着力調整剤、難溶性金属塩から成る架橋剤及びpH調整剤を必須構成成分とする薄型水性貼付剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】吉草酸ベタメタゾンのラット皮膚透過量を示す図である。
【図2】アシクロビルのラット皮膚透過量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る支持体に用いられる天然繊維と軟質プラスチック繊維を絡ませた複合繊維は、天然繊維と軟質プラスチック繊維を1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、特に好ましくは3:7〜7:3の比率にて、機械的に目付重量が5〜50g/m2、好ましくは7〜40g/m2、特に好ましくは10〜30g/m2の範囲で絡み合わせて形成される。
本発明に係る支持体はこの複合繊維に軟質プラスチック樹脂をフィルム状に厚さ3〜35μm、好ましくは5〜30μm、特に好ましくは8〜25μmの範囲で熱融着させることにより得られる。この際、単一でなく複合繊維を用いること、繊維の比率を適切に調整することにより、熱融着時、複合繊維の軟質プラスチック繊維部が軟質プラスチックフィルムに強く融着した状態になると共に、十分量の天然繊維が、フィルムに融着せず表面に露出し、その結果、膏体との親和性が極めて高くなる。
【0010】
本明細書で用いられる天然繊維には天然物由来の半合成または再生繊維を含み、レーヨン、綿などが挙げられる。
軟質プラスチック繊維としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンメチルメタクリレート、塩化ビニルなどが挙げられ、特にポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
軟質プラスチック樹脂としてはポリエチレン、エチレンメチルメタクリレート、ポリプロピレンなどが挙げられ、特にポリエチレン、エチレンメチルメタクリレートが好ましい。
複合繊維の構成のうち、天然繊維の比率が90w/w%を越える(軟質プラスチック繊維の比率が10%未満となる)と、複合繊維とフィルム部の融着が十分でなく、また、軟質プラスチック繊維の比率が90w/w%を越える(天然繊維の比率が10w/w%未満となる)と露出される繊維量が十分とならず膏体との親和性が低下し、特に剥離時、皮膚への膏体残りを生じる等の問題が発生する。
【0011】
天然繊維と軟質プラスチック繊維の配合比に拘わらず、複合繊維の目付重量が5g/m2未満では、膏体との親和性が低下し、50g/m2を越えると、複合繊維が多すぎて、膏体が繊維に埋め込まれ粘着力が低下し、また、薄型化した貼付剤が得られない。
熱融着される軟質プラスチック樹脂のフィルムの厚さが3μm未満では、複合繊維との融着が不十分であり、それを用いた貼付剤は、剥離時に支持体の破れが生じ易くなる。35μmを越える場合、それを用いた貼付剤は、薄型化しておらず、特に、貼付部位の動作に対し追従性が低く、剥がれ易くなる。
また、本発明に係る他の支持体として、軟質部と硬質部を共有するプラスチックから形成された繊維に、軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルムを用いることができる。
【0012】
軟質部と硬質部を共有するプラスチックから形成される繊維は、機械的に目付重量が10〜80g/m2、好ましくは15〜70g/m2、特に好ましくは20〜60g/m2の範囲で絡み合わせて形成される。
本発明に係る他の支持体は、この繊維に、硬質部と軟質部を共有するプラスチック樹脂をフィルム状に厚さ7〜70μm、好ましくは10〜60μm、特に好ましくは15〜45μmの範囲で熱融着させることにより得られる。このとき、融着機械の設定が重要であるが、さらに、単一ではなく、繊維部とプラスチック樹脂ともに、軟質部と硬質部を共有するプラスチックを用いること、目付重量、厚みなどを適正化することによって、薄型水性貼付剤にとって有用な支持体が得られる。つまり、熱融着時、繊維とフィルムに含まれる軟質部同士が強く融着するが、同時に、繊維とフィルムに、硬質部が存在することにより、繊維がフィルム内に過度に取り込まれることを妨ぎ、十分量の繊維が表面に露出し、膏体との親和性が高まることになる。
【0013】
繊維及びフィルムを構成する軟質部と硬質部を共有するプラスチックとしては、高分子の弾性体が望ましく、特に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーが好ましい。
軟質部と硬質部を共有するプラスチックから形成される繊維の目付重量が10g/m2未満では、支持体と膏体との親和性が低下し、特に、貼付剤の剥離時に、皮膚への膏体残りが生じる。また、80g/m2を越えると、繊維が多すぎて、膏体が繊維に埋め込まれ粘着力が低下し、充分な粘着力を有する薄型化した貼付剤が得られない。
熱融着される硬質部と軟質部を共有するプラスチックのフィルムの厚さが7μm未満では、繊維との融着が弱く、それを用いた貼付剤は、剥離時に支持体の破れが生じ易くなる。また、70μmを越える場合、支持体の柔軟性に欠け、それを用いた貼付剤は、貼付部位の動作に対し追従性が低く剥がれが生じ易くなる。
【0014】
本発明に係る粘着剤層の成分、即ち膏体成分は、水、保湿剤、ポリアクリル酸及び/またはその塩類、セルロース誘導体、難溶性多価金属塩、及びpH調製剤を必須構成成分とするものであり、これらを均一混合し、本発明に係る支持体に150〜500g/m2の重量で塗布することにより、膏体との親和性が十分な薄型水性貼付剤を作製することができる。
本発明は、支持体の構成、並びに、その支持体に適した膏体構成成分について鋭意研究した結果、得られたものであり、膏体成分、及び、その配合比が下記の範囲外になると、得られる膏体の物性が極端になり、粘着力及び保形性(強度)が悪化し、更には、本発明に係る支持体との親和性が不十分なものになる。
【0015】
以下に膏体構成成分について説明する。
粘着剤層の成分である水は、ポリアクリル酸及び/またはその塩類、セルロース誘導体を溶解するための媒体になり、かつ、皮膚に潤いを与える成分である。その配合量は20〜70w/w%、好ましくは、25〜60w/w%、特に好ましくは、30〜50w/w%である。配合量が20w/w%未満であるとポリアクリル酸誘導体及びセルロース誘導体が十分に溶解されず不均一となり、膏体の粘着力、保形性が不十分となり、また、皮膚への保水性が減じることになる。配合量が70w/w%を越えると、膏体の保形性が軟弱となり好ましくない。
保湿剤は、皮膚への保湿効果を高めることと、膏体の保形性を調整する働きがある。保湿剤としてグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、D-ソルビトール、ポリエチレングリコール400などが挙げられ、特にグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。その配合量は20〜60w/w%、好ましくは、25〜55w/w%、特に好ましくは、30〜50w/w%である。配合量が20w/w%未満であると、膏体の保形性が不十分となり、また、皮膚への保湿性が減じることになる。一方、配合量が60w/w%を越えると、他の配合剤、特に水の配合量が不足し、膏体の粘着力、保形性(強度)が不十分となり好ましくない。
【0016】
ポリアクリル酸及び/またはその塩類は、粘着付与剤として、水に溶解する際の増粘機能と架橋体形成により、膏体の粘着力を高める働きがある。ポリアクリル酸及びその塩類としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物などが挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は3〜25w/w%、好ましくは、5〜20w/w%、特に好ましくは、7〜15w/w%である。配合量が3w/w%未満であると、膏体の粘着力が低下し、配合量が25w/w%を越えると、水に不溶部分が生じ、膏体は不均一となり粘着力が一定に保てなくなる。
セルロース誘導体は、粘着調整剤として、水に溶解する際の増粘機能により、膏体の保形性を調整する働きがある。セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどが挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、特にカルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。その配合量は1〜20w/w%、好ましくは、2〜15w/w%、特に好ましくは、3〜10w/w%である。配合量が1w/w%未満であると、粘性が低く膏体の保形性が維持できない。また配合量が20w/w%を越えると、水に不溶部分が生じ、膏体は不均一となり、保形性を一定に保てなくなる。
【0017】
難溶性多価金属塩は、架橋剤として、ポリアクリル酸誘導体の架橋体を形成させ、膏体の保形性を維持する働きがある。難溶性多価金属塩としてはジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、合成ヒドロタルサイトなどが挙げられ、特にジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、合成ヒドロタルサイトが好ましい。その配合量は0.01〜5w/w%、好ましくは、0.015〜3.5w/w%、特に好ましくは、0.03〜2w/w%である。配合量が0.01w/w%未満であると、架橋体形成が不十分であり、膏体の保形性が悪化する。配合量が5w/w%を越えると架橋体形成が多くなり、粘着性が悪化する。
pH調整剤は、膏体のpHを調節するためのものである。pH調整剤として酒石酸、乳酸、リンゴ酸などが挙げられる。本発明の貼付剤は、長期間、皮膚に貼付することを意図するものであり、皮膚が、強酸、若しくは、強塩基物質により過度の損傷を受ける恐れがあるため、膏体を適切なpHに維持する必要があり、その際の好ましいpHの範囲は4〜6である。したがって、膏体pHを変動させるポリアクリル酸などの物質の配合量に応じ、pH調整剤を0.1〜5w/w%、好ましくは、0.25〜3.5w/w%、特に好ましくは、0.5〜2w/w%の範囲で配合させ適宜調整する必要がある。
【0018】
本発明に係る支持体に塗布、積層される膏体重量は150〜500g/m2、好ましくは200〜450g/m2、特に好ましくは250〜400g/m2の範囲である。
かくして作製される本発明の貼付剤は、適用部位に応じて、適当な形状、サイズに切断して用いればよい。
上記の膏体には、治療効果のある薬物を配合してもよい。薬物は、膏体成分に安定に配合できるものであれば、特に限定されず、例えば、消炎鎮痛剤、コルチコステロイド剤(トリアムシノロンや吉草酸ベタメタゾンなど)、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、抗高血剤、麻酔剤、抗真菌剤、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、ホルモン類、筋弛緩剤、局所刺激剤、抗ウイルス剤(アシクロビルなど)などが挙げられる。
本発明の貼付剤は、水分を含むので、膏体自身、もしくは、治療効果のある薬物を配合した場合、該薬物を安定化させるために、安定化剤、防腐剤等を添加してもよい。
本発明の貼付剤は創傷部位をカバー(保護)するために用いることもできる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
表1に掲げた実施例1に記載した膏体成分に基づき、以下の手順に従い貼付剤を作製した。
グリセリン(39w/w%)にポリアクリル酸ナトリウム(4w/w%)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(4.5w/w%)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5w/w%)、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート(0.06w/w%)を加え分散した(分散液1)。精製水(42.44w/w%)に酒石酸(1.5w/w%)とポリアクリル酸(5w/w%)を加え溶解し、この液を撹拌しながら、これに分散液1を徐々に加え、均一な塊になるまで撹拌を行い膏体とした。
この膏体を表1に掲げた実施例1に記載した支持体成分から成る支持体に、膏体重量が300g/m2になるように塗布し、粘着面をポリエステルフィルムで覆い、20cm×20cm の正方形状に打ち抜き、貼付剤とし、これを包装袋に入れ密封し室温で保存した。
【0021】
実施例2〜4及び比較例1〜4
実施例2〜4及び比較例1〜4の貼付剤を、表1及び表2の記載の組成に基づいて、実施例1と同様の手順に従い作製した。
【表1】

【表2】

【0022】
実施例5
実施例1の製品の軟膏成分に、薬剤として吉草酸ベタメタゾン(0.1w/w%)を配合した貼付剤を作成した。
【0023】
実施例6
実施例1の製品の軟膏成分に、薬剤としてアシクロビル(5w/w%)を配合した貼付剤を作成した。
【0024】
比較例5
薬剤として、吉草酸ベタメタゾン(0.12w/w%)を配合した軟膏剤(市販品)。
【0025】
比較例6
薬剤として、アシクロビル(5w/w%)を配合した軟膏剤(市販品)。
【0026】
試験例1
実施例1〜4及び比較例1〜4の製品を7.5cm×10cmに切断し試験剤とした。健常成人男性3名に、試験剤を、1日1枚、8時間貼付し、貼付中と剥離時の状況を観察した。試験結果を表3に示した。
この試験結果より、比較例の製品では、貼付中の試験剤の剥がれが多く、また、剥離時、支持体の破れ、膏体と支持体間の分離が生じ、もしくは、支持体内の繊維とフィルム間が分離し、腕に膏体、試験剤が付着し残るなどして、いずれも本発明の貼付剤として不適であった。
一方、実施例の製品は、貼付中の試験剤の剥がれ、また、剥離時、腕への膏体、試験剤の付着残りが少なく、いずれも本発明の貼付剤として十分な機能を持つことが明らかになった。
【0027】
【表3】

【0028】
試験例2
試験例2−1
[試験方法]
乾癬を発症している患者の病変部位に対し、左右対称に2箇所、トリアムシロノン(0.1w/w%)含有軟膏(市販品)を、1日2回、2週間塗布した。そのうち、1箇所は、塗布した軟膏の上から、実施例4の製品を貼付し被覆し、軟膏を塗布する毎に貼付し直した。また、別の箇所は、実施例4の製品の貼付を行わず比較対照とした。
治療開始から4週の間、経時的に病変部位を観察し、下記の判定基準に従い評価を行った。
【0029】
[判定基準]
【表4】

【表5】

【表6】

【0030】
評点の計算方法の例
評点9=(判定基準1にて重中度3点+判定基準2にて中度2点+判定基準3にて重度4点)
【表7】

【0031】
試験例2−2
クロベタゾール(0.05w/w%)含有軟膏(市販品)を用いた他は、試験例2−1と同様にして実施した。
【表8】

【0032】
試験例2−3
[試験方法]
乾癬を発症している患者の病変部位に対し、左右対称に2箇所に区分し、そのうち1箇所に対し、実施例4の製品のみを1日2回、2週間塗布した。また、別の箇所は、軟膏も実施例4の製品も用いずに比較対照とした。
【表9】

【0033】
試験例2−1及び2−2から、疾患部位に、薬効成分を含有する軟膏を皮膚に塗布した上に、実施例4の製品を貼付することにより、治療効果が高まり、その効果も持続した。また、試験例2−3より、実施例4の製品は、他の軟膏を使用することなく、単体使用においても治療効果が見られた。
したがって、本発明の貼付剤は、薬効成分を含有する基剤の効力をさらに高め、また、薄型貼付剤としてもつ機能によって、貼付剤単体の使用によっても、有用な効果を持つことが示唆された。
【0034】
試験例3
ラットの腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルに装着し、実施例5の製品を直径15mmの円形(吉草酸ベタメタゾン53μg含有)に打ち抜いた試験剤を拡散セルのラット皮膚上部に貼付した。また、比較例5の軟膏を44mg(吉草酸ベタメタゾン53μg含有)を拡散セルのラット皮膚上部に塗布し、その半数に対しては、塗布した軟膏上面をポリエステルフィルムで覆った。レセプター側には30%イソプロピルアルコール-リン酸緩衝液を用い、一定時間毎にレセプター液を採取し、HPLCを用いて、採取液中の吉草酸ベタメタゾン濃度を測定し、ラット皮膚を通過する薬物量を求めた。試験結果を図1に示した。
この試験結果より、実施例5の製品は、市販の軟膏剤である比較例5より高い薬物透過量を示しており、かつ、ポリエステルフィルムを支持体とし被覆されている該軟膏剤と同等以上の持続性が認められた。
このことにより、本発明の貼付剤は、治療効果のある薬物(コルチコステロイド剤)の配合においても有益であることが示唆された。
【0035】
試験例4
ラットの腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルに装着し、実施例6の製品を直径15mmの円形(アシクロビル2.6mg含有)に打ち抜いた試験剤を拡散セルのラット皮膚上部に貼付した。また、比較例6の軟膏を52mg(アシクロビル2.6mg)を拡散セルのラット皮膚上部に塗布した。レセプター側にはリン酸緩衝液を用い、一定時間毎にレセプター液を採取し、HPLCを用いて、採取液中のアシクロビル濃度を測定し、ラット皮膚を通過する薬物量を求めた。試験結果を図2に示した。
この試験結果より、実施例6の製品は、市販の軟膏剤である比較例6より高い薬物透過量を示しており、同等以上の持続性が認められた。
このことにより、本発明の貼付剤は、治療効果のある薬物(抗ウィルス剤)の配合においても有益であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の薄型水性貼付剤は、支持体に天然繊維と軟質プラスチック繊維を絡ませた複合繊維に軟質プラスチック樹脂をフィルム状に熱融着させた繊維フィルム、あるいは、支持体に軟質部と硬質部を共有するプラスチックから構成される繊維に軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルム、を用い、水、保湿剤、ポリアクリル酸誘導体(粘着力増強剤)、セルロース誘導体(粘着調整剤)、難溶性多価金属塩、及びpH調整剤を必須構成成分とする粘着剤を膏体に用いることにより、塗布量150〜500g/m2で薄く積層することができ、従来のパップ剤と比較して、以下のような効果を発揮する。
(1)十分な粘着力があり、貼付部位の動きに対する追従性が良好で、支持体からの水分蒸発が抑えられていることから、皮膚への保水作用を長期間保つことができる。また、薬効成分を配合した場合、若しくは、薬効成分または薬効成分を分散、溶解した基剤を皮膚に塗り広げた上に貼付すると、長期保水作用により、治療効果を高め持続させる。
(2)膏体中の水分が減じることなく保存され、また、粘着力、保形性が良好に維持されるので、品質を長期間安定に保つことができる。
(3)膏体量が低減され、薄型化が施されていることにより、製造適正が向上し、また、製造、保管、流通コスト等の削減が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に粘着剤層が積層された貼付剤であって、該支持体が、軟質部と硬質部を共有するプラスチックから構成される繊維に、軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を厚さ7〜70μmの範囲で熱融着させた繊維フィルムから成る薄型水性貼付剤。
【請求項2】
水、保湿剤、ポリアクリル酸及び/またはその塩類、セルロース誘導体、難溶性金属塩、及びpH調整剤を構成成分とし、pHが4から6に調整された粘着剤層である請求項1に記載の薄型水性貼付剤。
【請求項3】
支持体上に積層された粘着剤層の重量が150から500g/m2である請求項1又は2項に記載の薄型水性貼付剤。
【請求項4】
支持体が、ポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーから選ばれる軟質部と硬質部を共有するプラスチックから構成される繊維に、ポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーから選ばれる軟質部と硬質部を共有するプラスチック樹脂を熱融着させた繊維フィルムから成る請求項1から3項のいずれかに記載の薄型水性貼付剤。
【請求項5】
支持体が、軟質部と硬質部を共有するポリエステルエラストマーから構成される繊維に、軟質部と硬質部を共有するポリエステルエラストマー樹脂を熱融着させた繊維フィルムから成る請求項1から4項のいずれかに記載の薄型水性貼付剤。
【請求項6】
粘着剤層が、水(25−60w/w%)、グリセリン、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる保湿剤(25−55w/w%)、ポリアクリル酸及び/またはその塩類(5-20w/w%)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースから選ばれるセルロース誘導体(2-15w/w%)、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム及び合成ヒドロタルサイトから選ばれる難溶性金属塩(0.015-3.5w/w%)、及びpH調整剤(0.25-3.5w/w%)を構成成分とする請求項1から5のいずれかに記載の薄型水性貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13470(P2010−13470A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204427(P2009−204427)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【分割の表示】特願2005−504693(P2005−504693)の分割
【原出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】