説明

薄層を堆積させる方法、およびこのように得られた製品

【課題】良好な薄膜処理方法およびその製品の提供。
【解決手段】本発明の主題の一つは、基材の第1の側上に堆積された少なくとも1層の薄い連続的な膜の処理のための方法であって、薄膜を連続に保ちながら、そしてこの薄膜を溶融するステップ無しで該薄膜の結晶化度を高めるように、この少なくとも1つの薄膜が少なくとも300℃に昇温され、該第1の側とは反対側上の温度が150℃以下ように保ちたれることを特徴とする、方法。
発明の別の主題は、この方法によって得ることができる材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い無機膜の分野、特にガラス基材上に堆積されたものに関する。
本発明は、さらに特に、この薄膜を少なくとも部分的に結晶化させるための方法、およびこの方法を使用して得られたある製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特別な特性、すなわち、光学特性、例えば、所与の波長範囲を有する放射線の反射または吸収特性;特別な電気伝導特性;またはクリーニングの容易さに関連した、または、材料が自己クリーニング性である可能性と関連した他の特性を得た材料を与えるように、基材上、特に平面またはわずかにカーブしたガラスでできたものに、多くの薄膜が堆積される。
【0003】
これらの薄膜は、酸化物または窒化物等の無機化合物、または他の金属に、通常基づいている。それらの厚さは、一般的に数ナノメートル〜数100ナノメートルで変化し、それ故に、これらは「薄い」といわれる。
【0004】
例を示すと、インジウムスズ混合酸化物(ITOと呼ばれる)に基づく、インジウム亜鉛混合酸化物(IZOと呼ばれる)に基づく、ガリウムドープもしくはアルミニウムドープ酸化亜鉛に基づく、ニオブドープ酸化チタンに基づく、スズ酸カドミウムまたは亜鉛、またはフッ素ドープおよび/もしくはアンチモンドープ酸化スズに基づく薄膜を挙げることができる。これらの種々の膜は、透明であるが、それにもかかわらず、導電性または半導電性、膜である特別な特徴を有し、そしてこれらの2つの特性が必要な多くのシステム:液晶ディスプレイ(LCD)、ソーラーまたは光起電性センサー、エレクトロクロミックまたはエレクトロルミネセント装置等において用いられる。
電気伝導特性および赤外線を反射するための特性を有し、それ故にソーラー制御のグレージング、特に(入ってくるソーラーエネルギーの量を低下させる目的で)ソーラー保護のグレージングまたは(建物または乗り物の外側に散逸するエネルギーの量を低下させる目的で)低反射率のグレージングにおけるそれらの用途を有する、金属銀または金属モリブデンまたはニオブに基づく薄膜をまた挙げることができる。
【0005】
自己クリーニングである特別な特徴を有し、有機化合物が紫外線の作用下で分解され、そして鉱物性汚染(塵)が流水の動きを通して除去されることを容易とする、酸化チタンに基づく薄膜をまた、挙げることができる。
【0006】
挙げられた種々の膜は、少なくとも部分的に結晶化された状態にある場合、改善される膜の特性のいくつかである共通の特徴を有する。一般的に、目的は、これらの層の結晶化度(重量または結晶化された材料の体積による比)および結晶粒のサイズ(またはX線回折法によって測定されたコヒーレント回折領域のサイズ)を最大化すること、またはある場合には、特別な結晶学上の型を促進することである。
【0007】
酸化チタンの場合、アナターゼ型で結晶化された酸化チタンが、アモルファス酸化チタンまたはルチルまたはブルカイト型で結晶化された酸化チタンより、有機化合物の分解に関して、遙かにより効果的であることが知られている。
【0008】
高い結晶化度、したがってアモルファス銀の低残留含有量を有する銀膜が、主にアモルファス銀膜より、より低い反射率およびより低い抵抗率を有することがまた、知られている。これらの膜の電気伝導度および低反射率特性は、このように改善される。
【0009】
同様に、前記の透明な導電性膜、特に、ドープ酸化亜鉛またはスズドープインジウム酸化物膜に基づくものは、それらの結晶化度が高ければ高い程、より高い電気伝導度を有する。
【0010】
工業規模において、特にガラス基材上での薄膜の堆積のために一般的に用いられる方法は、マグネトロンスパッタリングと呼ばれる磁気増強スパッタリング法である。この方法において、プラズマは、堆積される化学元素を含むターゲット近傍の高真空内に作り出される。ターゲットを攻撃するプラズマの活性種は、基材上に堆積されるこの元素を剥がし、このように所望の薄膜を生成させる。薄膜がターゲットから剥がされた元素と、プラズマ中に含まれるガスとの間の化学反応から生じる材料から成る場合、この方法は、”反応性”といわれる。このように、金属チタンターゲットおよび酸素系プラズマガスを用いる反応性マグネトロンスパッタリング法によって、酸化チタン膜を堆積させることが知られている。この方法の大きな利点は、種々のターゲットの下に基材を連続して流すことによって、同じライン上で、非常に複雑な多層コーティングを堆積させる可能性にあり、これは、一般的に1つのかつ同じ装置で実行される。
【0011】
工業規模でマグネトロンスパッタリング法を実施する場合、特に(一般的に経済的な理由から望ましいが)基材の流れる速度が高い場合、基材は、周囲温度にとどまり、または中程度の温度(80℃未満)に昇温される。しかし、含まれる低温は、一般的に充分な結晶成長を可能にしないので、利点のように見えるものは、この膜の場合、欠点を構成する。非常に高い融点を有する材料でできた薄い厚さの膜および/または薄膜の場合、最も特にそうである。したがって、この方法によって得られた膜は、主に、または完全にさえ、アモルファスまたは(結晶粒の平均サイズが数ナノメートル未満である)ナノ結晶化されており、そして熱処理が、所望の結晶化度または所望の粒径を得るために必要であることが証明された。
【0012】
可能な熱処理は、マグネトロンラインを離れたときに、堆積の間または堆積後のいずれかに基材を再加熱することにある。最も一般的に、少なくとも200℃または300℃の温度が必要である。基材の温度が、薄膜を構成する材料の融点に近い程、結晶化はさらによく、そして粒径はより大きい。
【0013】
しかし、工業的マグネトロンラインでは、(堆積の間に)基材の加熱を行うことが難しいことが証明されており、特に、本来必ずしも放射性でない真空中で熱の移動は、制御が困難であり、そして幅で数メートルの寸法の大きな基材の場合、非常に費用がかかる。薄い厚さのガラス基材の場合は、多くの場合、このタイプの処理において、破損の非常に高いリスクがある。
【0014】
例えば、炉またはオーブン中に基材を置くこと、または赤外線ランプ等の従来のヒーターからの赤外線に基材を曝すことによって、堆積後に被覆された基材を加熱することはまた、これらの種々の方法が区別無く基材および薄膜を加熱するのに貢献するので、欠点を有する。基材の全幅にわたって同じ温度を確かにすることは不可能であるので、150℃超の温度に基材を加熱することは、大きな基材(幅で数メートルのもの)の場合には破損を起こす傾向がある。基材の切断、または別の基材の上に1つの基材を積み重ねることによって一般的に生じさせる貯蔵を想定できる前に、基材が完全に冷却されるまで待つことが必要であるので。基材を加熱することはまた、全工程を減速させる。非常に制御された冷却はまた、ガラス内での応力の発生、したがって、破損の可能性を防ぐために必要である。そうした非常に制御された冷却は、非常に高価であるので、アニーリング処理は、それによってインラインでの破損の数を増加させるガラス内の熱応力を除去するために、一般的に充分に制御されている。アニーリング処理はまた、ガラスを切断するのをさらに困難にする欠点を有し、割れ目は直線的に伝播する傾向がより低い。
【0015】
ガラスは、(一般的に600℃超、または700℃超までもに数分間)その柔軟温度より上に再加熱されるので、グレージングが曲げられ、そして/または強化される場合に基材の加熱が起こる。したがって、強化または曲げ処理は、薄膜の結晶化が得られる、所望の結果を可能にする。しかし、膜の結晶化を改善する目的のみのために、全てのグレージングをそうした処理にさらすことは高価となるであろう。さらに、強化されたグレージングは、もはや切断できず、そしある薄膜多層コーティングは、ガラスの強化の間、高温を受けることに耐えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1つの目的は、多くの薄膜の結晶化特性を改善するが、しかし上記の欠点を有さない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明の1つの主題は、基材の第1の側上に堆積された少なくとも1つの薄い連続膜の処理のための方法であって、薄膜を連続に保ちながら薄膜の結晶化度を高め、そしてこの薄膜を溶融するステップがないように。この少なくとも1つの薄膜上のそれぞれの点が少なくとも300℃に昇温され、一方、この第1の側とは反対側の基材上のあらゆる点が150℃以下の温度に保たれることを特徴とする、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「薄い連続的な膜」の用語は、本発明の範囲の中で全基材を、または多層コーティングの場合には、全ての下にある膜実質的に覆う膜を意味すると理解される。薄膜(したがってその好都合な特性)の連続的な特徴が、本発明による処理によって保たれることは重要である。
【0019】
「膜上の点」の用語は、所与の瞬間に処理を受ける膜の範囲を意味すると理解される。本発明により、膜のすべて(したがってそれぞれの点)は、少なくとも300℃の温度に昇温されるが、しかし、膜上のそれぞれの点は、必ずしも同時に処理されない。膜は、その全部の中で同じ瞬間に処理でき、膜上のそれぞれの点は、同時に少なくとも300℃の温度に昇温され。あるいは、膜上の種々の点または一式の点を、少なくとも300℃の温度に連続して上げられるように、この膜は処理でき、この第2の方法は、多くの場合、工業規模で連続的に実施される場合に用いられる。
【0020】
本発明による方法は、固相中に残り、膜中に既に存在する核のまわりでの結晶成長の物理化学的なメカニズムによって、薄膜の結晶化を促進するのに充分なエネルギーを提供する。一方では、この方法は、薄膜を溶解させるために、薄膜を極度に高温に昇温することを必要とするであろうので、そして他方では、この方法は、膜の厚さおよび/または屈折率、したがってそれらの特性を変更する傾向があるであろうので、本発明による方法は、溶融材料からの冷却による結晶化メカニズムを含まない。これは、特にそれらの光学外観を変更して、眼で検出可能な不均等性を生成する。
【0021】
本発明による方法は、基材全てを著しく加熱することなく、薄膜(または多層コーティングの場合、薄膜(複数))のみを加熱する利点を有する。従って、ガラスを切断または貯蔵する前に、基材を制御された遅い冷却に曝すことはもはや必要ではない。この方法はまた既存の連続的な生産ライン上に、さらに特にマグネトロンラインの真空蒸着チャンバーの出口と、積み重ねられるガラスの貯蔵のための装置との間に位置するスペースに加熱装置を組み込むことを可能にする。これは、実際の真空蒸着チャンバー内において本発明による処理を実行する、ある場合においてまた可能である。
【0022】
マグネトロンラインを組み込んだ工業的実施において、この方法は、基材がラインを通り、したがってX方向で直線の動作を受けるという意味では、一般的に連続的である。したがって、薄膜上の各点は、好ましくは、加熱手段が固定され、そしてX方向に垂直なY方向に沿ったラインを形成する一式の点が同時に処理されるか、または加熱手段がY方向に沿って移動でき、そしてそれぞれの点が連続して処理されるかのいずれかの1つによって処理される。本発明による方法は、水平または垂直のいずれかで置かれた基材上で行われることができる。この方法はまた、薄膜をその両側上に提供した基材上で行うことができ、片側上または両側上の少なくとも1つの膜が本発明によって処理される。基材の両側上に堆積された薄膜が本発明によって処理される場合、特に、処理される膜の性質が同一であるかまたは相違するかによって、両側上の該薄膜を同時にまたは連続して、同一のまたは異なる技術によって処理することが可能である。本発明による処理が、基材の両側上で同時に行われる場合は、したがって本発明の範囲内である。
【0023】
膜内の温度は、熱伝導メカニズムによって、必ずしも膜に最も近い基材区画の加熱、したがって基材の厚さにおける急な熱勾配とはならないので、基材を加熱することなく膜を加熱することは物理的に可能ではない。そうした急な熱勾配は、時々熱ショックと呼ばれ、平面ガラス業界において一般的に用いられているソーダ石灰シリカガラスの場合に、破損を生じることが体系的に知られている。異なる温度に曝されるガラスの種々の領域間の熱膨張の相違から生じるこれらの破損は、ソーダ石灰シリカガラスの場合は、ソーダ石灰シリカガラスの膨張係数がかなり高いので、さらに容易に起こる。大きな基材の場合に、高温均一性を確かにすることはさらに難しいので、これらの破壊はまた、(幅で少なくとも1m、または2または3mまでもの寸法の)大きな基材の場合には、さらに容易に起こる。
【0024】
しかし、発明者らは、基材の限定された領域での穏やかに制御された加熱のみを含む熱処理が、これまで避けられないとみなされてきたこの破損の問題を回避することを示した。したがって、処理された薄膜を有する側とは反対側の基材の温度が150℃超にならないために本発明が実施される場合、これは必要である。この特徴は、本明細書中の他の部分によって詳細に記載されるであろうように、薄膜を加熱し、そして基材を加熱しないために特に適合された加熱方法を選択することによって、および用いられる加熱方法により加熱時間または加熱強度および/または他のパラメーターを制御することによって得られる。
【0025】
本発明により使用できるすべての加熱方法に共通の1つの特徴は、単位面積当りで非常に高い出力を生成できるという事実であるが、しかし、多くの因子(その中に薄膜の性質および厚さがある)に依存するため、絶対的に定量化できないものである。この単位面積当りの高い出力は、膜中で所望の温度を、極度に急速に(一般的に、1秒以下の時間において)達成することを可能にし、そしてその結果、生成された熱が、したがって基材中に拡散する時間を有さないことに対応して処理期間を制限することを可能にする。薄膜上にそれぞれの点は、一般的に1秒以下、または0.5秒以下までもの時間の間、本発明による処理(すなわち、300℃以上の温度に昇温されること)にさらされる。対照的に、通常使用される赤外ランプは、これらの単位面積当りの高レベルの出力が達成されることを可能にしないので、処理時間は、所望の温度に到達させるために、より長い必要があり(多くの場合、数秒)、そして照射波長が、薄膜のみによって吸収され、基材によって吸収されないように適合されている場合でさえ、基材は、次に熱拡散によって、必ずしも高温に昇温されない。
【0026】
最も大きい基材(例えば、長さ6m、幅3mの寸法)の場合、破損数を最小化するために、薄膜が堆積される側とは反対側の基材上の任意の点における全ての処理にわたって100℃以下の温度、特に50℃以下の温度が、好ましくは維持される。
【0027】
本発明の別の利点は、この方法が、薄膜または薄膜多層コーティングに同等の焼き戻し操作を受けさせるという事実にある。ガラスが焼き戻された場合、ある薄膜多層コーティングは、改質されたそれらの光学特性(色座標、光透過またはエネルギー透過)を有することが明らかになった。したがって本発明による方法は、ガラスが焼き戻された場合と同等の光学特性を実質的に有する未強化ガラス(したがって、強化ガラスに特有な応力プロファイルをガラスの中に有していないもの、これはガラスを切断可能にするであろう)を得ることを可能にする。
【0028】
本発明による方法を使用して得られた結晶化度は、好ましくは、少なくとも20%または50%、特に70%そして90%までもである。材料の質量に対する結晶化された材料の質量と定義される結晶化度は、リートベルド法を使用してX線解析によって決定できる。核または種からの結晶粒成長による結晶化メカニズムのおかげで、結晶化度の上昇は、一般的に結晶化された粒子のサイズにおける増加、またはX線回折によって測定されたコヒーレント回折領域の増加を伴う。
【0029】
ガラス、特にソーダ石灰シリカガラスでできた基材は、好ましくは、透明である。基材はまた、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチル等のプラスチックでできていることができる。有利には、基材は、1m以上または2mおよび3mまでもの少なくとも1つの寸法を有する。基材の厚さは、一般的に0.5mm〜19mmであり、4mm、または2mmさえ以下の厚さを有する、より薄い基材の場合、本発明による方法は、特に好都合である。
【0030】
薄膜、好ましくは膜は、この膜の結晶化度が高まる場合、少なくとも1つの改善された特性を有する。上記の理由、および特性と結晶化度との相関により、薄膜は、好ましくは、銀、モリブデン、ニオブ、酸化チタン、インジウム亜鉛またはインジウムスズの混合酸化物、アルミニウムドープもしくはガリウムドープ酸化亜鉛、窒化チタン、窒化アルミニウムまたは窒化ジルコニウム、ニオブドープ酸化チタン、スズ酸カドミウムおよび/またはスズ酸スズ、フッ素ドープおよび/またはアンチモンドープ酸化スズから選択された金属、酸化物、窒化物または混合物に基づく。薄膜は、好ましくは、そうした金属、酸化物、窒化物または酸化物の混合物からなる。薄膜の厚さは、好ましくは、2〜500nmである。
【0031】
上記薄膜の大部分は、UV−可視光線(吸収は可視範囲で50%未満である)に対して全体的に透明である特別な特徴を有する。それらの吸収スペクトルは、基材(特に後者がガラスできている場合)の吸収スペクトルと少し異なるので、膜を特異的に加熱し、そして基材を加熱しないことは特に困難である。ケイ素膜等の他の膜は、可視および近赤外において高い吸収を有し、それによって、たとえば、アモルファスシリコンを多結晶シリコンに転化させる場合、これらの膜を選択的に加熱することを容易にする。
【0032】
本発明によって処理された薄膜は、基材上に堆積された薄膜のみであることができる。薄膜はまた、一般的に酸化物、窒化物または金属から選択された薄膜を含む薄膜多層コーティングに含まれることができる。薄膜はまた、薄膜多層コーティングであることができる。処理された薄膜が、薄膜多層コーティング中にある場合、本発明による方法は、多層コーティングの1層または2層以上の薄膜の結晶化特性を改善できる。
【0033】
薄膜が、銀または銀系の膜である場合、特に薄膜の酸化を防止するように、銀または銀系の膜は、薄膜多層コーティング中に含まれることが好ましい。ソーラー制御または低反射率グレージングの場合、銀系薄膜は、一般的に2つの酸化物系薄膜または窒化物系誘電体薄膜の間に配置される。銀の湿潤および核生成を促進することを目的として、銀膜の下に、非常に薄い膜(例えば、酸化亜鉛ZnOの膜)を配置すること、および次の膜が酸化雰囲気中で堆積される場合、または熱処理が多層コーティングへの酸素の移動を生じる場合に、銀膜を保護することを目的として銀膜の上に、非常に薄い第2の膜(例えばチタンでできた犠牲膜)を配置することはまた可能である。多層コーティングはまた幾つかの銀膜を含むことができ、これらの膜のそれぞれは、一般的に本発明による方法の実施によって影響される。多層コーティングが、酸化亜鉛膜を含む場合、銀膜の処理はまた、一般的に酸化亜鉛の結晶化度の上昇を伴う。
【0034】
薄膜が透明な導電性膜、例えばガリウムドープおよび/またはアルミニウムドープ酸化亜鉛に基づくものである場合、この膜は、アルカリ金属の移動に対するバリアーを形成する少なくとも1つの下層、および/または酸化バリアーとして機能する少なくとも1つの上層を含む多層コーティング中に含まれることができる。このタイプの多層コーティングは、例えば、国際公開第2007/018951号パンフレット中に記載されており、参照により、本願中に取り込む。しかし、アニーリングまたは焼き戻し処理と比較して、加熱の急速さが、アルカリ金属または酸素をほとんど移動させないので、本発明による処理は、有利なことにこのタイプの下層または上層無しで済ますことを可能にする。導電性膜が電極として機能する場合、したがって(例えば、光起電性またはOLED用途の場合)他の機能成膜と直接電気的に接触することが好ましい場合、これはさらに好都合である:焼き戻しまたはアニーリング処理の場合、酸化保護を提供する上層は、この処理の間必要であり、そして次に除去されることが好ましい。本発明による方法のおかげで、この上層無しで済ますことが可能である。
【0035】
酸化チタンに基づく膜は、好ましくは、(任意選択的にドープされた)酸化チタンでできた膜である。この膜の全表面は、好ましくは、酸化チタンが充分にその自己クリーニング機能を果たせるように、外側と接触している。これらの膜の結晶化をさらに改善するために、酸化チタンに基づく膜の下に、酸化チタン、特にアナターゼ型の結晶成長を促進する効果を有する下層を提供することができる。これは、特に国際公開第02/40417号パンフレットに記載されたZrOの下層、またはほかに例えば、国際公開第2005/040058号パンフレットに記載されたアナターゼ型の酸化チタンのヘテロエピタキシャル成長を促進する下層、特にBaTiOまたはSrTiO膜であることができる(上記文献を参照により本明細書中に取り込む)。
【0036】
本発明による処理前に、薄膜は任意のタイプの方法、特に、マグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、真空蒸着法またはゾルゲル法等の主にアモルファスまたはナノ結晶化された膜を生成させる方法によって得ることができる。しかし、薄膜は、好ましくは、例えば、ゾルゲル法によって得られた「湿った」膜とは対照的に、水性溶媒または有機溶媒を含まない「乾燥した」膜である。薄膜は、好ましくは、スパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングによって得られる。ゾルゲル法によって得られた膜の場合、溶液(ゾル)中の前駆体は、基材上に堆積され、得られた膜は、次に乾燥され、そしてあらゆる微量の溶媒を除去するように乾燥され、そしてアニールされる。この場合は、加熱によって提供されたエネルギーは、次に膜の結晶化特性に影響せずに、主に溶媒を除去するために機能し、また基材を加熱しない程充分な短時間でこの特性を改善することはさらに困難である。
【0037】
より簡単にするために、膜は、好ましくは、大気中および/または大気圧下で加熱される。しかし、ある加熱方法は、真空と適合し、そして、それは、例えば、続く堆積の前に、実際の真空蒸着チャンバー内で膜を加熱するのに好都合であることができる。
【0038】
単位面積当りの非常に高い出力の生成を可能にする種々の加熱手段は、本発明による方法を実施するために使用できる。加熱手段の出力または加熱時間等の加熱パラメーターは、加熱法の性質、膜厚または膜の性質、処理される基材のサイズおよび厚さ等の種々のパラメーターによって当業者により場合ごとに適合される。
【0039】
薄膜が電気伝導性の場合(例えば、銀膜の場合)、薄膜は、誘導加熱によって加熱できる。
【0040】
金属部分の誘導加熱は、(スチールの補強、シリコンの帯域精製等の)バルク導電性部部品中で、急速にかつ制御された様式で高温を達成するための周知の方法である。主な用途は、農業食品分野(容器の加熱、金属ベルト上の平らな製品の調理、エクストルージョンクッキング)および金属製造(溶錬、形成前の再加熱、バルク熱処理、表面熱処理、コーティングの処理、溶着、ろう付け)の分野に関する。
【0041】
コイル(ソレノイドまたは巻きとも呼ばれる)を通って流れる交流は、同じ周波数で振動する磁界をそれの中に発生させる。導電性部材がコイル(またはソレノイド)の内側に配置される場合、磁界によって誘導された電流が発生し、そして、ジュール効果によってその部分を加熱する。
【0042】
電流が、加熱される部分の表面上に現れる。電流が流れる膜の第1近似厚を与える表皮深さと呼ばれる特徴的なパラメーターが、規定できる。電流の表皮深さは、加熱された金属の性質により、そして電流の周波数が上昇した場合に、減少する。
【0043】
導電性膜によって被覆された絶縁基材を加熱する場合、誘導子の影響を材料の表面部分に集中させるように、高周波分極を使用することが好ましい。周波数は、好ましくは、500kHz〜5MHz、特に1MHz〜3MHzである。特に、平面の処理のために適合された誘導子が、好ましくは用いられる。
【0044】
20nm未満、または10nm未満までもの厚さを有する場合、誘導加熱は、好ましくない。そうした特に薄膜では、非常に高い周波数が必要であり、そして、膜の体積が非常に小さいので、処理の効率は損なわれる。
【0045】
薄膜が赤外線の少なくとも一部を吸収する場合、薄膜は該膜によって吸収される赤外線のその部分中にある波長を有する放射線を使用して加熱できる。基材への熱の供給を最小限にするために、選択される放射線の波長は、好ましくは、基材によって吸収される赤外線のその部分中にない。上記の理由から、放射線は、単位面積当りの高い出力によって特徴付けられることが好ましい。この理由で、薄膜は、好ましくは、レーザー発光赤外線を使用して加熱される。単位面積当りで高レベルの出力が達成される焦点調整装置と関連した赤外ランプに基づく系を、また使用できる。
【0046】
酸化チタンに基づく膜の場合、5〜15μmの波長を有するレーザー光線、例えば10.6μmの波長を有するCOレーザー光線を用いることができる。銀系の膜の場合、0.5〜5μmの波長を有するレーザー光線を用いることが好ましい。特に、酸化鉄の重量含有量が0.1%以下である透明なガラスの場合である基材がこの波長範囲を吸収しない場合、波長で約1μmの、連続またはパルスモードのネオジムドープYAG(イットリウムアルミニウムガーネット、YAI15)レーザー光線が、特に好適であることが証明されている。
【0047】
紫外域でのエキシマレーザー光線の使用はまた、そうした光線を吸収する膜のために可能である。
【0048】
実施をより簡単にするために、本発明の範囲内で用いられるレーザーは、レーザー光線が、光ファイバーに注入でき、そして次に焦点調整ヘッドを介して、処理される表面近傍に送達されることを意味するファイバー誘導レーザーであることができる。増幅媒体それ自身が光ファイバーであるという意味では、このレーザーはまたファイバーレーザーであることができる。
【0049】
レーザーは、(典型的には、1mm〜数100mmの一部分程度の)小さな範囲のみを照射できるので、全表面を処理するために、基材の平面中でレーザービームを動かすシステム、または基材の全幅を同時に照射する線(その線の下に基材がある)としてのレーザービームを生成するシステムを提供することが必要である。
【0050】
薄膜はまた、熱スプレー技術、特にプラズマスプレー技術によって加熱できる。
【0051】
プラズマは、「プラズマガス」と呼ばれるものを高いDCまたはAC電界(例えば電気アーク)等の励起に曝すことによって、一般的に得られるイオン化されたガスである。この励起の活動の下で、電子がそのガスの原子から離され、そして、このように作り出された電荷は、反対に帯電した電極に向かって移動する。これらの電荷は、次に衝突によってガスの他の原子を励起させ、雪崩効果によって、同種またはマイクロフィラメント状の放電またはアークを作り出す。プラズマは、(ガスがこのように完全にイオン化されており、そしてプラズマ温度は、10℃程度である)「ホット」プラズマまたは(ガスがほとんど完全にイオン化されており、そしてプラズマ温度は、例えば電気アークの場合、10℃程度である)「熱」プラズマであることができる。プラズマは、多くの活性種、すなわち、イオン、電子またはフリーラジカルを含む物質と相互作用することができる種を含む。プラズマトーチの場合、ガスは、電気アーク中に注入され、そして生成される熱プラズマは、処理される基材上へ吹き付けられる。プラズマトーチは、プラズマに粉末形態で前駆体を加えることによって、種々の基材上に薄膜を堆積させるために一般的に用いられる。
【0052】
本発明の範囲内で、プラズマトーチは、好ましくは、被覆された基材が走る方向に垂直に位置する自動動作システムと組み合わされて、そして基材の上を連続的に前後に動くトーチによって全表面が処理されることを可能にする。
【0053】
注入されたガスは、好ましくは、有利には5〜50%、特に15〜30%の水素体積含有量を有する窒素、空気またはアルゴンである。
【0054】
薄膜はまた、少なくとも1つの火炎の作用に薄膜を曝すことによって加熱できる。
【0055】
この火炎処理は、好ましくは、基材の範囲内で走る方向に対して垂直に位置する火炎処理リグの上で行われる。火炎処理装置の長さは、好ましくは、被覆される基材の幅に少なくとも等しく、それによって容易にランの上で、つまり、配置システムを必要とすることなく、処理を行うことを容易にする。使用されるガスは、空気、酸素またはそれらの混合物から特に選択された酸化剤ガスの混合物、および天然ガス、プロパン、ブタン、もしくはアセチレンまでも、もしくは水素、またはそれらの混合物から特に選択された燃焼ガスである。一方では酸素はより高い温度が達成されることを可能にし、したがって処理を短くし、そして基材が加熱されることを防ぐので、そして、他方では、酸素は、窒素酸化物NOの生成を防ぐので、酸素は、酸化剤ガスとして、特に天然ガス(メタン)またはプロパンとの組み合わせにおいて好ましい。薄膜で所望の温度を達成するために、被覆された基材は、可視炎、特に火炎の最も熱い領域中、処理される領域の周りに伸びる可視炎の一部分の中に一般的に配置される。
【0056】
火炎処理は、ポリマー表面の濡れ特性を改善し、そして表面が塗料で被覆されることを容易にするように、ポリマー表面を処理するために広く用いられる技術である。火炎処理が置かれる使用においては、原理は、表面を高温に昇温することなく、処理される表面を燃焼によって生成されるラジカルの作用に曝すことである。米国特許出願公開第2006/128563号明細書は、それらの親水性の特性を改善するように、酸化チタン膜の表面を活性化させるために、この技術の使用を記載する。ポリマー基材上で行われるものにかなり類似する記載された処理は、可視炎または可視炎の先端よりわずかに下(数cm下)に、基材を通すことにある。しかし、可視炎の先端の温度が不充分であるため、酸化チタンの表面上にヒドロキシル基を作ることを目的とするこのタイプの処理は、約200℃の温度に薄い酸化チタン膜を昇温するため、および酸化チタンの結晶化度を高めるために、好適ではない。
【0057】
薄膜はまた、1ミリメーター〜30センチメートルの範囲波長、すなわち、1〜300GHzの範囲の周波数を有する)マイクロ波の範囲における放射線を使用して加熱できる。
【0058】
薄膜はまた、熱い固体または熱い液体と接触させることによって加熱できる。これは、例えば、加熱される薄膜で被覆された基材が走る基材と接触した回転可能な加熱されたロールであることができる。このロールは円筒型であるか、または多数の面を含むことができ、従ってロールと基材との接触面積を増加させることを可能にする。好ましくは、ロール形態である熱い固体は、すべての表面の不規則性または基材の変形に沿うことができるように、好ましくは、柔軟な材料でできている。この固体は、好ましくは、基材の表面への良好な熱移動を得るように、高い熱伝導度を有する。固体は、好ましくは、少なくとも500℃、または600℃および700℃までもの温度に昇温される。
【0059】
機械的置換装置を基材の上で使用する場合、誘導加熱および火炎加熱方法は、好ましい。赤外線または誘導加熱方法は、それ自体マグネトロンラインの真空蒸着装置内で用いることができる。大量のガスを消費しないことが所望の場合、これらはまた、好都合である。
【0060】
薄膜が酸化チタンに基づく(または酸化チタンからなる)場合、本発明の1つの好ましい態様は、この薄膜が、アナターゼ型の酸化チタンを含むように、300〜800℃、好ましくは、400〜600℃の温度にこの薄膜を昇温することにある。上記のように、そうした結晶化は、酸化チタンの光触媒活性が大幅に高まることを可能にする。
この膜は、好ましくは、
400℃以上の温度にある熱い固体と接触させることによって;
プラズマトーチを使用して加熱することによって;
10μm程度の波長を有するCOレーザー光線を使用することによって;および
少なくとも1つの火炎の作用に、この薄膜を曝すことによって、
の技術の1つで加熱される。
【0061】
アルカリ金属イオン(例えばソーダ石灰シリカタイプのガラス)を含有する基材が高温に昇温される場合、このイオンは、酸化チタン膜の中に拡散する傾向を有し、それによってその光触媒特性を非常に大幅に低下させ、または除去さえするので、本発明による方法は、酸化チタンの場合には、特に好都合である。この理由で、アルカリ金属の移動を防止するように、欧州特許出願公開第0850204号明細書中の教示ような、薄い酸化チタン膜と基材との間にバリアー層を介在させること、または膜の少なくとも最も外面が汚染されないように、欧州特許出願公開第0966409号明細書中の教示のような酸化チタン膜の厚さを高めることは、一般的な方法である。本発明による方法の場合には、基材は実際に加熱されず、したがってアルカリ金属の移動は、実質的には0である。したがって、本発明による方法は、(例えば、10ナノメートル程度の厚さを有する)薄いが、とは言っても非常に高い光触媒活性を有する酸化チタン膜を用いて直接被覆されたソーダ石灰シリカガラスでできた基材を得ることを可能にする。
【0062】
薄膜が銀に基づく(または銀からなる)場合、該薄膜は、好ましくは、300〜600℃、好ましくは、350〜550℃の温度に昇温される。好ましい技術は、レーザー発光赤外線、誘導加熱、プラズマ加熱または火炎加熱を使用するレーザー加熱である。
【0063】
銀系膜の場合、特に、赤外におけるレーザー発光または誘導加熱を使用するあまりにも長い加熱または過度に強度の加熱は、基材の温度を上げる結果となるだけでなく、また膜の連続性を破壊することができ、従って、最初の連続的な膜から、単離した銀の小塊を含む不連続的な膜を作りだし、直接観察によってまたは強い照明の下でのヘイズを生成することが観察されてきた。この態様は、明らかに望ましくなく、そして本発明の範囲内に含まれない。
【0064】
本発明の別の主題は、該少なくとも1つの薄膜が、磁気増強(マグネトロン)スパッタリングによってこの基材上に堆積されること、およびこの少なくとも1つの薄膜が、本発明による熱処理に曝されることを特徴とする、基材および少なくとも1つの薄膜を含む材料を得るための方法である。
【0065】
本発明のまた別の主題は、本発明による方法によって得ることができる材料である。
【0066】
これは、焼き戻し、曲げもしくはアニーリング熱処理のみによって、または堆積の間に全基材に影響する処理によって得ることができた一定の結晶体を有する薄膜を含む材料が得られることを可能にするからである。したがって、本発明によって得られた材料は、異なる構造によって、特に、これらの材料が、それらの厚さにおいて、強化ガラスの応力プロファイルの特徴を有さず、そして/またはこれらの材料が、基材からまたは外から入る元素(アルカリ金属、酸素、等)の同じ拡散を生じないという事実によって、従来技術の公知の材料と区別される。
【0067】
そうした材料は、例えば、(nmで表された)厚さeを有する少なくとも1つの銀膜を含む薄膜多層コーティングを用いて被覆された未強化ガラスでできた基材からなる。多層コーティングは、式:
×e−120<25×e
を満たす、シート抵抗(Ωで表わされる)Rによって特徴付けられる。
【0068】
薄い導電性膜のシート抵抗は、R×e=ρ×e+Aで表わされたFuchs−Sondheimerの法則に従ってその厚さに依存する。式中、ρは、薄いフィルムを形成する材料の固有抵抗率を意味し、そしてAは界面における電気担体の正反射および拡散反射に相当する。本発明は、ρが25以下であるように固有抵抗率ρを改善し、そしてAが120、好ましくは110および105までも以下であるように、担体の反射を改善することを可能にする。
【0069】
本発明による方法は、このように、これまで、焼き戻し処理を使用してのみ得ることができた、非常に低い抵抗を有する膜を得ることを可能にする。しかし、ガラスが未強化であるので、ガラスはその厚さにおいて、強化ガラスの応力プロファイルの特徴(ガラスのコア中で伸長応力、および2つの表面での圧縮応力の存在)を有さず、したがって切断できる。
【0070】
このタイプの多層コーティングは、好ましくは、本明細書中、または国際公開第2007/110552号パンフレット、国際公開第2007/101964号パンフレット、国際公開第2007/101963号パンフレット、国際公開第2007/054656号パンフレット、国際公開第2007/054655号パンフレット、国際公開第2007/042688号パンフレット、国際公開第2007/042687号パンフレット、国際公開第2005/110939号パンフレット、国際公開第2005/051858号パンフレット、国際公開第2005/019126号パンフレット、国際公開第04/043871号パンフレット、国際公開第00/24686号パンフレット、国際公開第00/29347号パンフレット、欧州特許第0995724号明細書、欧州特許第0995725号明細書、国際公開第99/45415号パンフレット、欧州特許第922681号明細書、欧州特許第894774号明細書、欧州特許第877006号明細書、欧州特許第745569号明細書、欧州特許第718250号明細書に記載されており、参照により本明細書中に取り込む。
【0071】
本発明による材料はまた、本発明による方法によって得ることができるアナターゼ型で少なくとも部分的に結晶化された酸化チタンを含む(および特に酸化チタンから成る)少なくとも1つの薄膜によって被覆されたソーダ石灰シリカタイプのガラスでできた基材からなる。この材料は、熱い基材上にマグネトロンスパッタリングによって堆積された酸化チタン膜、および/または酸化チタン膜(もしくは任意の下層)が基材に由来する酸化ナトリウムをより含まない炉内でアニールされた酸化チタン膜によって被覆された基材と区別される。これは、この方法が実質的な基材の加熱を含まないので、ナトリウムイオンが酸化チタン系膜中への非常に低い拡散傾向を示すからである。好ましくは、酸化チタン系膜は、基材上に、中間層無しで直接堆積される。酸化チタン系膜はまた、アルカリ金属イオンに対して拡散バリアーとして機能する特性を有さないが、望ましい特性(例えば光学特性)を有する中間層の上に堆積させることができる。好ましくは、ガラス基材は、未強化である。
【0072】
本発明による材料はまた、インジウム亜鉛またはインジウムスズ混合酸化物またはアルミニウムドープもしくはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく、ニオブドープ酸化チタンに基づく、スズ酸カドミウムおよび/もしくはスズ酸亜鉛に基づく、またはフッ素ドープおよび/もしくはアンチモンドープ酸化スズに基づく少なくとも1つの薄い透明な導電性膜で被覆された基材からなる。
【0073】
特に、これまで公知の技術によって得ることができなかった、ある特に好都合な材料は、アルミニウムドープまたはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく少なくとも1つの膜で被覆された未強化ガラスでできた基材からなる。この材料は、アルミニウムドープまたはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく膜が、10nm以下のRMS粗さおよび15Ω以下のシート抵抗を有することに特徴がある。RMS粗さは、1平方μmの寸法の試料上で行われるAFM(原子間力顕微鏡)測定から計算される。好ましくは、RMS粗さは、9nm、または8nmおよび6nmまでもまたは5nmを好ましくは超えない。
【0074】
そうした低い抵抗の(かなり厚い厚み、時々500nm以上を有する)、且つとは言ってもそうした低い粗さを有するそうした膜は、焼き戻し処理によってのみこれまで得ることができた。対照的に、そうした低い抵抗率を有する膜は、加熱された基材上で行われるマグネトロンスパッタリング堆積によって、未強化ガラスの上で得ることができたが、しかしこの場合は、得られる粗さはずっと大きかった。
【0075】
記載してきた種々の材料の膜は、もちろん、単独で、またはそこにまた記載された他の特徴と組み合わせてのいずれかで、明細書中に記載された特徴のいずれか1つを有することができる。
【0076】
本発明による得られた基材は、単一の、複数のまたはラミネート加工されたグレージングにおいて、鏡においてまたはガラス壁被覆において、使用できる。ガス層によって分離された少なくとも2つのガラスシートを含む複数のグレージングの場合、薄膜が該ガス層と接触する側上に配置されることが好ましい。この基材はまた光起電性グレージング中またはソーラーパネル中において使用できる、本発明により処理された薄膜は、例えば、黄銅鉱(特にCISタイプの、すなわちCuInSe)に基づくまたはアモルファスおよび/または多結晶シリコンに基づく、またはほかにCdTeに基づく多層コーティング中におけるZnO:AlまたはZnO:Gaに基づく上部電極である。薄膜はまた、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオード)またはFED(フィールドエミッションディスプレイ)タイプのディスプレイスクリーンに使用でき、本発明により処理された薄膜は、例えば、ITOの電気伝導性膜である。薄膜はまた、エレクトロクロミックグレージングにおいて使用でき、本発明により処理された薄膜は、例えば、仏国特許出願公開第2833107号明細書中に教示の上部の透明な電気伝導性膜である。
【実施例】
【0077】
本発明は、以下の限定されない態様例によって具体的に説明されるであろう。
【0078】
例1
フロート法によって得られ、そして次にそのサイズが幅3m×長さ6mになるように切断されたソーダ石灰シリカガラス基材を、マグネトロンスパッタリング法による公知の様式で、厚さ10nmの薄い酸化チタン膜で被覆した。第1の例において、20nm厚のシリカ膜を、基材と酸化チタン膜(試料A)との間に介在させた。第2の例では、酸化チタン膜を、基材(試料B)上に直接に堆積させた。
【0079】
装置は、
TiO膜上に焦点を合わせた10.6ミクロンの波長におけるCOレーザー光線、(その点の幅は、約0.3〜0.5mmであり;そしてシステム基材の走る方向に垂直な方向において(約3〜5メートル/秒で)レーザーを急速に動かすためのシステムを、マグネトロンラインの出口と貯蔵装置との間に挿入した。)
を含む。
【0080】
処理の間のガラス基材の温度は、薄膜コーティングを有する側と反対側の基材上で高温測定によって測定して、50℃を超えなかった。
【0081】
下の表1は、処理前および処理後の膜の光触媒の活性を示す。
【0082】
光触媒活性は、紫外線の存在下で、メチレンブルーの分解速度の測定に相当する。An水性メチレンブルー溶液を密閉されたセル中で被覆された基材(セルの底を形成する基材)と接触して配置した。紫外線に30分間暴露した後で、メチレンブルー濃度を光線透過率測定によって決定した。(Kbによって示され、そしてg.l−1−1で表された)光触媒活性の値は、単位曝露時間当たりメチレンブルー濃度における低下に相当する。
【0083】
表1
【表1】

【0084】
本発明による処理後の光触媒活性における実質的な上昇は、酸化チタン膜の結晶化度における改善を具体的に示す。基材と酸化チタン膜との間に、下層を介在させたか否かによる、得られた値の類似性は、基材の少ない量での加熱が酸化チタン膜の中へのアルカリ金属イオンの大幅な拡散を生じさせなかったという事実の証拠となる。したがって、本発明による処理は、アルカリ金属イオンの拡散バリアー下層を不必要にする。
【0085】
例2
フロート法によって得られ、そして次にそのサイズが、幅3m×長さ6mになるように、切断されたソーダ石灰シリカガラス基材をマグネトロンスパッタリング法による公知の様式により、銀膜を含む薄膜多層コーティングで被覆した、該銀膜は、ガラス低反射率特性を与えた。
【0086】
この多層コーティングは、(基材から外面への)以下の順で、以下の酸化物、金属性または窒化膜を含み、幾何学的厚さは括弧内に示されている:
ガラス/SnO(20nm)/ZnO(15nm)/Ag(8.5nm)/Ni−Cr/ZnO(15nm)/Si(25nm)。
【0087】
装置は、
(銀膜上に焦点を合わせた1.09μmの波長を有する連続またはパルスモードでの、ネオジムドープYAG(イットリウムアルミニウムガーネット、YAl15)レーザー発光放射線、その点の幅は、約0.3〜0.5mmであり;そしてシステム基材の走る方向に垂直な方向において(約3〜5メートル/秒で)レーザーを急速に動かすためのシステムを、マグネトロンラインの出口と貯蔵装置との間に挿入した、)
を含む。
【0088】
処理の間のガラス基材の温度は、薄膜コーティングを有する側と基材の反対側上で高温測定によって測定して、50℃を超えなかった。
【0089】
下の表2は、処理後の以下の特性における変化を示す:
標準illuminant D65を参照とし、そして「CIE1964」参照オブザーバーとして、厚さ4mmのガラスシートおよび厚さ16mmのガス層(90%アルゴンと10%空気との混合物)を有する二重グレージングユニットの実験スペクトルから計算したilluminant D65下での光線透過率、(透過はTLによって示され、そして%で表されている);
によって示され、そしてΩで表されたシート抵抗;および
εによって示され、そして%で表された5〜50μmのスペクトルの範囲の反射スペクトルからEN12898基準により計算された283Kの温度で垂直放射率。
【0090】
より良好な結晶化された銀膜は、より高い電気伝導度およびより良好な放射率特性の両者を有するので、膜の電気伝導度および低反射性能を具体的に示す後者2つの特性(シート抵抗および放射率)は、銀膜の結晶の結晶化度およびサイズを反映する。
【0091】
表2
【表2】

【0092】
シート抵抗および垂直放射率に関する処理による変化は、約10%である。これらの結果は、赤外レーザーを使用した多層コーティングの処理(および特に銀膜の処理)は、より高い結晶化度およびより大きい結晶サイズを特徴とする銀膜の結晶化を改善する結果となったことを示す。得られたグレージングの光線透過率における大幅な変化があることはまた注目される。
【0093】
例3
この例では、例2の基材と同一の被覆された基材、したがって銀膜を含む多層コーティングで被覆された基材を使用した。
【0094】
加熱方法は、平面の処理に特に好適な誘導子を使用して行った誘導加熱であった。周波数は2MHzであり、約数kW出力を変化させることができた。
【0095】
数秒のみしか続かない処理の間のガラス基材の温度は、150℃を超えなかった。
【0096】
表3は、例2の場合に記載された特性における変化を示す。
【0097】
表3
【表3】

【0098】
赤外レーザー処理によって引き起こされたものに全く遜色ないシート抵抗および放射率における変化は、再度、銀幕の結晶化度の上昇の証拠となった。
【0099】
例4
この例では、例1の基材と同一の被覆された基材、したがって酸化チタン膜を含む多層コーティングで被覆された基材を使用した。
【0100】
用いられた加熱方法は、1秒間、700℃に加熱された平面との接触を含んだ。(膜と反対側上の)ガラスの温度は、処理の間150℃を超えなかった。
【0101】
下の表4は、処理の前後の光触媒活性を示す。
【0102】
表4
【表4】

【0103】
得られた値は、例1で得られたものと類似する。
【0104】
例5
この例の内容では、例2および3に依ったものと同一の基材を、プラズマトーチを使用して加熱した。プラズマガスは、4:1の比率のアルゴン/水素または窒素/水素混合物であった。
【0105】
25〜40kWの出力を有するプラズマトーチを、基材の走る方向と垂直な方向に(約1〜4メートル/秒で)急速に動かす装置の上に取り付けた。プラズマトーチによって影響される区画の幅は、約3〜10mmであった。
【0106】
処理の間のガラス基材の温度は、90℃を超えなかった。
【0107】
下の表5は、光線透過率、シート抵抗および垂直放射率に関する加熱による変化を示す。
【0108】
表5
【表5】

【0109】
下の表6は、銀膜が15nmの厚さを有した多層コーティングでの同じ特性の詳細を示す。
【0110】
表6
【表6】

【0111】
例2および3の場合のように、加熱は、改善された特性、銀膜のより良好な結晶化の印となった。
【0112】
例6
この例では、例1および4の基材と同一の被覆された基材、したがって酸化チタン膜を含む多層コーティングで被覆された基材を使用した。
【0113】
プラズマ処理装置は、例5の場合で記載したのと同じであった。処理の間にガラス基材の温度は、90℃を超えなかった。
【0114】
下の表7は、処理前後の酸化チタン膜の光触媒活性。
【0115】
表7
【表7】

【0116】
例7
この例の内容では、例2、3および5において処理したものと同じ被覆された基材が火炎加熱を受けた。燃料は、プロパンであり、酸化剤は、空気であった。酸素はまた得られた結果を良好にできた。
【0117】
マグネトロン堆積チャンバー内での堆積後に被覆された基材を、基材の幅以上の幅の静止した火炎処理リグの下において一定速度で移動させ、基材はリグの下を2〜10メートル/分で移動した。処理される膜を火炎の熱いテスト領域中においた。
【0118】
しかし、処理中のガラス基材の温度100℃を超えなかった。
【0119】
下の表8はまた、銀膜の結晶化における好ましい変化を示す。
【0120】
表8
【表8】

【0121】
例8
この例では、例1、4および6の基材と同一の被覆された基材、したがって酸化チタン膜を含む多層コーティングで被覆された基材を使用した。
【0122】
処理は、例7(火炎処理)の場合に受けたのと類似の処理であった。(膜と反対側上の)ガラス温度は、150℃を超えなかった。
【0123】
下の表は、処理前後の光触媒活性値を示す。
【0124】
表9
【表9】

【0125】
例9
厚さ500nmの混合インジウムスズ酸化物(ITO)の膜を、ガラス基材上にマグネトロンスパッタリングよって公知の様式で堆積させた。
【0126】
そのシート抵抗は、まさに主に膜のアモルファス特性を表わす20Ωであった。
【0127】
処理は、例7(火炎処理)の場合に受けたのと類似した、(膜と反対側上の)ガラスの温度は、150℃を超えなかった。
【0128】
処理後に、膜のシート抵抗は、その結晶化度におけるかなりの上昇を表わす4Ωであった。
【0129】
例10
厚さ200nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛に基づくA透明な導電性膜を、マグネトロンスパッタリング法によってガラス基材上に、堆積させた。
【0130】
処理は、例5(プラズマトーチを使用する)の処理と類似した。
【0131】
下の表10は、処理前後のシート抵抗、光吸収、電子移動度および電子密度値(電子移動度および電子密度は、ホール効果によって測定した。)を示す。
【0132】
表10
【表10】

【0133】
したがって、本発明による方法は、膜の結晶化の改善のおかげで、電子伝導度特性を大幅に改善することができる。膜の結晶化度は、粒界の減少によって、電子移動度だけでなく、また結晶欠陥の減少によって、キャリアー密度も高めることができる。処理後の抵抗値は、このように2〜3分の1となる。
【0134】
1平方ミクロンの寸法の試料で行ったAFM測定から計算した処理後の膜のRMS粗さは3nmであった。
【0135】
処理を、ドープされるZnO膜に加えて、保護下層および保護上層を含む多層コーティング上で行った場合、改善は、より低かった(約35%)。
【0136】
例11
厚さ180nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛に基づく透明な導電性膜を、マグネトロンスパッタリング法を使用してガラス基材上に堆積させた。
【0137】
受けた処理は、例7(火炎処理)の処理と類似した。
下の表11は、処理の前後のシート抵抗値および光線透過率値を示す。
【0138】
表11
【表11】

【0139】
1平方ミクロンの寸法の試料で行ったAFM測定から計算した処理後の膜のRMS粗さは3nmであった。
【0140】
厚さ750nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛膜上で、同じタイプの処理を行った。シート抵抗は、3〜5nmのRMS粗さで、26Ω(処理前)〜9.7Ω(処理後)であった。
【0141】
例12
アルミニウムドープ酸化亜鉛(厚さ190nm)に基づく透明な導電性膜を、マグネトロンスパッタリング法によって、ガラス基材上に堆積させた。
【0142】
受けた処理は、例1(CO2レーザー処理)の処理に類似した。
【0143】
下の表12は、処理前後のシート抵抗および光線透過率値を示す。
【0144】
表12
【表12】

【0145】
1平方ミクロンの寸法の試料で行ったAFM測定から計算した処理後の膜のRMS粗さは3nmであった。
【0146】
例13(比較例)
例2、3、5および7で既に記載した銀幕を含むが、その銀膜の厚さが9nmであった多層コーティングで被覆した基材を、堆積後に、一連の赤外線放射ランプの下に移動し、そして、膜および基材の両方を差別無く加熱した。
【0147】
ランプの出力は、約150kW/mであり、そして放出された放射線の波長は、1〜3μmであった。
【0148】
下の表13は、ランプを使用した加熱が、銀膜の結晶化を著しく改善したことを示す。
【0149】
しかし、多層コーティングを有する側と反対側の基材上の温度は、処理の間に300℃を超え、処理されたガラスシートの大部分を破壊した。
【0150】
表13
【表13】

【0151】
例14(比較例)
この例では、例1の基材と同一の被覆された基材、したがってTiO膜を含む多層コーティングで被覆された基材を使用した。
【0152】
処理を、堆積後に一連の赤外線を放射するランプの下で基材を動かすこと、および膜および基材の両方への差別無い加熱によって行った。
【0153】
ランプの出力は約150kW/mであり、そして放出された放射線の波長は、1〜3μmであった。放射線のごく一部のみが、基材および膜によって吸収された。
【0154】
下の表14は、ランプを使用した加熱が、TiO膜の光触媒活性を改善することを示す。
【0155】
表14
【表14】

【0156】
しかし、2〜3分の加熱時間で、多層コーティングを有する側と反対側の基材上の温度は、処理の間300℃を超え、処理したガラスシートの大部分を破壊した。
【0157】
さらに、基材の実質的な加熱は、ナトリウムを、膜中に拡散させて、(例Bの場合)下層が用いられなかった場合、光触媒活性を大幅に低下させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の第1の側上に堆積された少なくとも1つの薄い連続的な膜の処理のための方法であって、薄膜を連続的に保ちながら、そして該薄膜を溶融するステップなしで、該薄膜の結晶化度を高めるように、該少なくとも1つの薄膜上のそれぞれの点が少なくとも300℃の温度まで昇温され、一方、第1の側とは反対側の該基材上のあらゆる点において、150℃以下の温度を保つことを特徴とする、方法。
【請求項2】
該基材が、ガラス、特にソーダ石灰シリカガラスでできている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
100℃以下の温度、特に50℃以下の温度が、該薄膜が堆積されている側とは反対側の該基材上のあらゆる点において維持されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該薄膜上のそれぞれの点が、300℃以上の温度に、1秒以下、または0.5秒以下までもの時間の間昇温される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該得られた結晶化度が、少なくとも20%、特に少なくとも50%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該基材が、1m以上または、2mまでもの寸法を少なくとも1つ有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該薄膜が、銀、モリブデン、ニオブ、酸化チタン、インジウム亜鉛またはインジウムスズ混合酸化物、アルミニウムドープもしくはガリウムドープ酸化亜鉛、チタン、アルミニウムまたはジルコニウム窒化物、ニオブドープ酸化チタン、スズ酸カドミウムおよび/またはスズ酸亜鉛、フッ素ドープおよび/もしくはアンチモンドープ酸化スズから選択される金属、酸化物、窒化物または酸化物の混合物に基づく、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理前の該薄膜が、いずれの水性溶媒または有機溶媒を含まず、そして特にスパッタリングによって得られる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該薄膜が、電気伝導性であり、そして誘導加熱によって加熱される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該薄膜が、赤外線の少なくとも一部を吸収し、そして該膜によって吸収された該赤外線の該一部内にある波長を有する放射線を使用して加熱される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該薄膜が、熱スプレー技術によって、特にプラズマスプレー技術によって加熱される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の火炎の動きに該薄膜を曝すことによって、該薄膜が加熱される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
熱い固体と該薄膜とを接触させることによって、該薄膜が加熱される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該薄膜が酸化チタンに基づく場合、該酸化チタンが主にアナターゼ型であるように、該薄膜が300℃〜800℃の温度に昇温される、請求項1〜8および10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該薄膜が銀に基づく場合、該薄膜が300℃〜600℃、好ましくは350℃〜550℃の温度に昇温される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該少なくとも1つの薄膜が、磁気増強(マグネトロン)スパッタリングによって該基材上に堆積され、そして該少なくとも1つの薄膜が、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法に曝されることを特徴とする、基材および少なくとも1つの薄膜を含む材料を得るための方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法によって、得ることができる材料。
【請求項18】
多層コーティングが、式:
×e−120<25×e
を満たす(Ωで表された)シート抵抗Rを有することを特徴とする、(nmで表された)厚さを有する少なくとも1つの銀膜を含む薄膜多層コーティングで被覆された未強化ガラスでできた基材である材料、特に請求項17に記載の材料。
【請求項19】
アナターゼ型で少なくとも部分的に結晶化された酸化チタンを含む少なくとも1つの薄膜で被覆されたソーダ石灰シリカタイプのガラスでできた基材である、請求項17に記載の材料。
【請求項20】
インジウム亜鉛、もしくはインジウムスズ混合酸化物に基づく、またはアルミニウムドープもしくはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく、少なくとも1つの薄い透明な導電性膜で被覆された基材である、請求項17に記載の材料。
【請求項21】
アルミニウムドープまたはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく少なくとも1つの膜で被覆された未強化ガラスでできた基材である、材料、特に請求項1〜20のいずれか一項に記載の材料であって、アルミニウムドープまたはガリウムドープ酸化亜鉛に基づく該膜が、10nm以下のRMS粗さおよび15Ω以下のシート抵抗を有することを特徴とする、材料。
【請求項22】
単一の、複数のまたはラミネート加工されたグレージング中、鏡中、ガラス壁被覆中、光起電性グレージング中またはソーラーパネル中、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオード)またはFED(フィールドエミッションディスプレイ)タイプのディスプレイスクリーン中、またはエレクトロクロミックグレージング中での請求項1〜21のいずれか一項に材料の使用。

【公開番号】特開2013−76170(P2013−76170A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−5679(P2013−5679)
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2009−544438(P2009−544438)の分割
【原出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】