説明

薄板の残留応力測定方法

【課題】母材の薄板を剪断したとき、母材から分割して形成された剪断後の薄板で、剪断された端面部に生じた残留応力とその分布を高精度に測定することができる薄板の残留応力測定方法を提供する。
【解決手段】母材珪素鋼板20を挟み込み、打ち抜き加工で剪断し、母材珪素鋼板20から分割された鋼板成形品21に生じた残留応力を測定する珪素鋼板の残留応力測定方法において、鋼板成形品21の剪断端面部23の向きと位置とを揃え、隣り合う鋼板成形品21同士を重ね合わせて、所定数を満たす複数の鋼板成形品21を積層した珪素鋼板積層体10を形成すること、珪素鋼板積層体10のうち、複数の剪断端面部23が配置された珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11Aに、X線応力測定法で必要な計測範囲Mを設定し、X線応力測定装置50により剪断端面部23に生じた残留応力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、打ち抜き加工により鋼製薄板等を剪断したときに、剪断された端面部に生じた残留応力を、X線応力測定装置で測定する薄板の残留応力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータに構成されるロータやステータの鉄心は、打ち抜き加工により、母材の鋼製薄板を1枚ずつ板押えとダイスで挟み込み、パンチで打ち抜いて成形された剪断後の鋼製薄板を複数積層した積層鋼板で形成されている。剪断後の鋼製薄板に生じた残留応力は、部分的に透磁率が下がり必要な磁束密度を得られずモータの性能に大きく影響を及ぼすため、打ち抜き加工後に、残留応力が鋼製薄板にどの程度生じているのかを、剪断後の鋼製薄板を測定して把握したい場合がある。このような鋼製薄板等の試料で応力を測定する方法は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1は、X線回折法により、測定対象である試料の回折面に入射X線を照射し、その回折X線を取り込んで回折角を検出して、異なる方向の歪みを予め算出しておき、歪みと応力との関係式から応力を算出することで、試料における配向性や弾性異方性の有無に拘わらず、応力を求めることができるとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−250688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような、X線応力測定装置を用いた従来の応力測定方法には、以下の問題があった。試料は、原子が規則正しく配列された結晶格子を有する多数の結晶粒からなり、結晶格子面の間隔が拡がりあるいは縮んで変化すると、その結晶粒の部分で引張応力や圧縮応力の内部応力が発生する。X線応力測定装置は、一般にこの結晶格子面の間隔の変化(歪みの変化)を測定して応力を求める。結晶粒の大きさは、試料の材質によって異なるため、X線応力測定装置による応力測定では、計測範囲において、結晶粒が、少なくとも数百から五千個ぐらい存在していないと、X線応力測定装置は、その性能上、結晶格子面の間隔の変化を、安定した測定精度で捉えることができない。
【0005】
ところで、前述した自動車向けのモータでは、小型で高出力化が要求されるため、鉄損等のエネルギロスを少なくする手段の一つとして、鉄心(積層鋼板)に、例えば、電磁鋼板の一種である珪素鋼板が用いられている。用いる珪素鋼板は、例えば、1枚当たりの厚みが0.3mm程度と非常に薄く、結晶粒も比較的大きな材料である。打ち抜き加工後、ある程度の大きさのスポット径の計測範囲内で、剪断された珪素鋼板の打ち抜き端面部に生じた残留応力をX線応力測定装置で測定しようとする場合、珪素鋼板の厚みが0.3mm程度しかないと、X線応力測定装置による計測範囲をある程度大きく設定しても、計測範囲で応力測定に必要とする結晶粒の数量が、この厚み0.3mm程度の打ち抜き端面部から確保できない。そのため、珪素鋼板の打ち抜き端面部を計測範囲として、入射X線を打ち抜き端面部にスポット的に照射し、その回折X線を取り込んで回折角を検出しても、残留応力の分布の向きや分布等、信頼性の高い高精度な応力測定ができない。
【0006】
X線応力測定装置による応力測定の他に、複数の歪みゲージを試料に複数方向に貼付して応力を求める方法が考えられる。歪みゲージによる応力測定方法は、貼付した歪みゲージ近傍にかかる応力の総和を数値化して求めるもので、歪みゲージを試料に貼付するのに、最小0.5mmの寸法が必要となる。よって、この応力測定方法では、厚さ0.3mm程度の珪素鋼板の打ち抜き端面部に、歪みゲージを貼付して残留応力を測定することはできない。
【0007】
加えて、この歪みゲージによる応力測定方法は、例えば、ロードセル等の試験機に取り付けた状態にある試料の所定部位に歪みゲージを貼付し、試料に荷重がかかった動的状態で、変化する試料の歪みの大きさを歪みゲージで検知して応力を求める方法である。そのため、この歪みゲージによる応力測定方法では、打ち抜き加工で剪断された珪素鋼板の打ち抜き端面部は、荷重がかからない静的状態にあり、打ち抜き端面部に生じた残留応力の大きさと、その分布を調査することはできない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、母材の金属製薄板を剪断したとき、剪断された薄板の端面部に生じた残留応力とその分布を高精度に測定することができる薄板の残留応力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決するために、本発明の薄板の残留応力測定方法は、次の構成を有している。本発明の薄板の残留応力測定方法では、
(1)多結晶体からなる母材の金属製薄板を挟み込み、母材の金属製薄板を剪断加工により剪断し、母材の金属製薄板から分割して形成された剪断後の薄板に生じた残留応力を測定する薄板の残留応力測定方法において、剪断後の薄板で剪断された端面部の向きと、端面部の位置とを揃え、隣り合う剪断後の薄板同士を重ね合わせて、所定数を満たす複数の剪断後の薄板を積層した金属板積層体を形成すること、金属板積層体のうち、複数の端面部が配置された金属板積層体端面部の少なくとも一部に、X線応力測定法で必要な計測範囲を設定し、X線応力測定装置により、剪断後の薄板の端面部に生じた残留応力を、計測範囲で測定することを特徴とする。
なお、剪断加工とは、第1工具と第2工具とによって母材を挟み込んだ状態、あるいは第1工具上に載置した母材を外力で保持した状態にしておき、母材の剪断予定線上に対応させた位置で、第3工具を母材の厚み方向に移動させ、第3工具により母材を剪断予定線で剪断して母材を分割させる加工を総称したものである。剪断加工に代表される一例として、打ち抜き加工、プレス加工、シャーリング加工等がある。
(2)(1)に記載する薄板の残留応力測定方法において、所定数を満たす複数の数量は、用いるX線応力測定装置で、X線応力測定法で必要とされる計測範囲の大きさを少なくとも超えるよう、剪断後の薄板を積層させるのに必要な数量であることを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する薄板の残留応力測定方法において、X線応力測定装置による測定前に、金属板積層体端面部のうち、設定された残留応力測定範囲に属する各剪断後の薄板の端面だけに電解液を付着させ、電解液が付着した剪断後の薄板の端面を、電解研磨装置により、研磨処理して面粗度を小さくすることを特徴とする。
(4)(3)に記載する薄板の残留応力測定方法において、金属板積層体には、隣り合う剪断後の薄板同士の密着を高める拘束部材が設けられていることを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、薄板は、電磁鋼板であることを特徴とする。
(6)(5)に記載する薄板の残留応力測定方法において、電磁鋼板は、珪素鋼板であることを特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、金属板積層体は、自動車に搭載されるモータで、ステータあるいはロータに構成される鉄心として用いられる積層鋼板であることを特徴とする。
【0010】
上記構成を有する本発明の薄板の残留応力測定方法の作用・効果について説明する。
【0011】
本発明の薄板の残留応力測定方法では、
(1)多結晶体からなる母材の金属製薄板を挟み込み、母材の金属製薄板を剪断加工により剪断し、母材の金属製薄板から分割して形成された剪断後の薄板に生じた残留応力を測定する薄板の残留応力測定方法において、剪断後の薄板で剪断された端面部の向きと、端面部の位置とを揃え、隣り合う剪断後の薄板同士を重ね合わせて、所定数を満たす複数の剪断後の薄板を積層した金属板積層体を形成すること、金属板積層体のうち、複数の端面部が配置された金属板積層体端面部の少なくとも一部に、X線応力測定法で必要な計測範囲を設定し、X線応力測定装置により、剪断後の薄板の端面部に生じた残留応力を、計測範囲で測定することを特徴とするので、例えば、剪断後の薄板の1枚当たりの厚みが0.3mmであり、入射X線と回折X線とに基づいて残留応力を計測するのに、X線応力測定装置の性能上、計測で必要とされる計測範囲(X線スポット径)が直径Φ2mm等の円内全範囲である場合、1枚当たりの剪断後の薄板の厚みを考慮した上で、所定数を満たす複数の剪断後の薄板の数量として、剪断後の薄板を7枚以上重ね合わせた金属板積層体を形成する。
【0012】
これにより、X線応力測定法で必要な計測範囲は、金属板積層体の金属板積層体端面部の少なくとも一部において、剪断された端面で占める範囲内に収まるようになる。この状態になると、試料である薄板の材質によっても異なるが、試料(薄板)の結晶粒が少なくとも数百から五千個ぐらい存在するようになり、薄板に発生した残留応力に起因する歪みの大きさの変化、すなわち、残留応力の発生部分において結晶格子面の間隔の変化やその分布を安定した状態で捉えることができる。よって、金属板積層体端面部の少なくとも一部に占める範囲内の剪断された端面を、X線応力測定法で必要な計測範囲に設定し、周知のX線応力測定装置により、入射X線を計測範囲内の所定位置にスポット的に照射し、その回折X線を取り込んで回折角を検出すれば、信頼性の高い高精度な応力測定が可能となる。また、金属板積層体端面部内において、計測範囲を変えて別の位置で応力測定をすれば、複数積層した剪断後の薄板で剪断された端面部に発生した残留応力の分布を把握することができる。
【0013】
1枚当たりの薄板の厚さが、X線応力測定装置の性能上、X線応力測定法で必要な計測範囲となる直径の大きさより大きくなる板の残留応力については、従来の残留応力測定方法で測定できるため、本発明の薄板の残留応力測定方法は、上記直径の大きさより厚みの小さい薄板を対象としている。その一方で、周知のX線応力測定装置では、上述したように、その性能上、X線応力測定法で必要とされる計測範囲が、例えば、直径Φ2mm等の円内全範囲であり、上記直径の大きさより厚みの小さい薄板の残留応力を測定しようとすると、剪断後の薄板を1枚毎に測定することはできない。そのため、所定数を満たす複数の剪断後の薄板を積層した金属板積層体を形成する必要がある。
【0014】
金属板積層体が、モータにおけるロータやステータに構成される鉄心である場合、剪断後の薄板に残留応力があると、部分的に透磁率が下がり必要な磁束密度を得られずモータの性能に大きく影響を及ぼすため、剪断後の薄板に生じた残留応力を測定して把握する必要がある。モータの場合、剪断後の薄板に生じた残留応力を薄板1枚毎に個々に把握することよりも、複数の剪断後の薄板で構成された金属板積層体を計測対象に、剪断された端面部一帯の残留応力を測定し、金属板積層体(鉄心)全体において、残留応力が、どの程度の大きさで、どのような分布で生じているのかを把握することが重要となる。
【0015】
モータの中でもとりわけ、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車向けモータでは、小型で高出力化が特に要求されており、その解決策の一つとして鉄損等のエネルギロスを少なくするため、金属板積層体を構成する薄板に生じた残留応力を除去、あるいは抑制する必要がある。残留応力の除去等は、薄板を熱処理してもできるが、自動車向けの各種部品には、厳格な品質管理が実施されており、残留応力の除去等を熱処理で行うと、コスト高になる上、加熱による二次的な歪みが薄板に発生する虞があるため、熱処理による残留応力の除去等は好ましくない。そのため、薄板を剪断加工する工程で、残留応力が剪断後の薄板に極力発生しないよう、様々な工夫を行って金属板積層体が製造されている。本発明の薄板の残留応力測定方法では、このように製造された金属板積層体(例示した自動車向けのモータの鉄心等)が量産体制下にある場合でも、品質管理上、定期的に製造される金属板積層体の残留応力とその分布を、X線応力測定法により、信頼性が高く高精度に測定することができる。
【0016】
従って、本発明の薄板の残留応力測定方法では、母材の金属製薄板を剪断したとき、剪断された薄板の端面部に生じた残留応力とその分布を高精度に測定することができる、という優れた効果を奏する。
【0017】
(2)(1)に記載する薄板の残留応力測定方法において、所定数を満たす複数の数量は、用いるX線応力測定装置で、X線応力測定法で必要とされる計測範囲の大きさを少なくとも超えるよう、剪断後の薄板を積層させるのに必要な数量であることを特徴とするので、剪断後の薄板の厚みが薄くても、X線応力測定法に必要な少なくとも数百から五千個ぐらいの結晶粒が、残留応力を測定したい部分において、確保することができるようになる。その結果、測定したい部分で、結晶格子面の間隔の変化を安定した測定精度で捉えることができ、残留応力における大きさ、向き、及び分布等より精度良く取得することができる。
【0018】
(3)(1)または(2)に記載する薄板の残留応力測定方法において、X線応力測定装置による測定前に、金属板積層体端面部のうち、設定された残留応力測定範囲に属する各剪断後の薄板の端面だけに電解液を付着させ、電解液が付着した剪断後の薄板の端面を、電解研磨装置により、研磨処理して面粗度を小さくすることを特徴とするので、研磨処理された剪断後の各薄板の端面から、その深さ方向で結晶粒が存在する薄板内部側に生じた残留応力とその分布を、後述する第1方向及び第2方向の少なくとも2次元で測定することができる。
【0019】
すなわち、剪断加工により、剪断後の各薄板において、剪断された端面は、剪断面と破断面との2層状となり、この剪断された2層状の端面の面形状は、面粗度(凹凸の差)が大きくなった状態となる。そのため、金属板積層体端面部内で設定された残留応力測定範囲に属する各剪断後の薄板の端面を、研磨処理することにより、研磨処理された剪断後の各薄板の端面形状は、凹凸の差が小さくなって面粗度が小さくなり、金属板積層体端面部内で残留応力測定範囲に設定された各剪断後の薄板の端面がより平滑化した形状となる。
【0020】
ここで、説明の便宜上、剪断後の薄板において、薄板の厚み方向を第1方向、薄板が剪断された方向に沿う方向を第2方向、第1方向と第2方向とが直交する方向を第3方向とする。
【0021】
本発明の薄板の残留応力測定方法では、形状が平滑化した金属板積層体端面部の端面を、X線応力測定法で必要となる計測範囲に設定し、X線応力測定装置により、入射X線を計測範囲にスポット的に照射し、その回折X線を取り込んで回折角を検出する。このとき、照射した入射X線が、第3方向に対し、薄板の結晶粒が存在する薄板内部側に、剪断された端面から数十(μm)奥側に位置するところの範囲まで精度良く届き、結晶粒で回折した回折X線が、平滑化された金属板積層体端面部の端面を通じて、X線応力測定装置に精度良く取り込まれるため、回折角2θがより正確に得られ、残留応力の大きさが高精度に得られる。
【0022】
X線応力測定装置では、剪断された端面から数十(μm)奥側に位置する端面部において、第1方向、第2方向、及び第3方向の結晶格子面の間隔を検知し残留応力を求めることができる。また、場合によっては、第3方向の残留応力を零とみなすこともできるため、剪断された端面から数十(μm)奥側に位置する端面部において、第1方向、及び第2方向に生じる残留応力とその分布を、これらの方向に生じる結晶格子面間隔と、その回折角に基づいて求めることができる。よって、研磨処理された剪断後の各薄板の端面から、その深さ方向に結晶粒が存在する薄板内部側に生じた残留応力とその分布を、薄板の厚み方向(第1方向)と、薄板が剪断された方向(第2方向)の少なくとも2次元で、信頼性が高く高精度に測定することができる。
【0023】
ところで、金属板積層体端面部内で残留応力測定範囲に設定された各剪断後の薄板の端面をより平滑化するのに、平滑化しようとする端面に、砥石やサンドペーパ等の研削・研磨手段で外力を物理的に作用させると、この外力の作用により、金属板積層体端面部に新たな応力が生じる虞がある。あるいは、金属板積層体端面部における結晶粒の組織が変質する虞がある。
【0024】
本発明の薄板の残留応力測定方法では、金属板積層体端面部内で残留応力測定範囲に設定された各剪断後の薄板の端面を平滑化するときに、電解研磨法による電解研磨装置で残留応力測定範囲の端面を研磨処理することにより、金属板積層体端面部内の残留応力測定範囲で、上述したような二次的な応力の発生や、結晶粒の組織の変質を阻止することができる。
【0025】
(4)(3)に記載する薄板の残留応力測定方法において、金属板積層体には、隣り合う剪断後の薄板同士の密着を高める拘束部材が設けられていることを特徴とするので、電解研磨法による研磨処理で必要な電解液が、積層する剪断後の薄板同士の間に入り込み、留まってしまうことに起因して、剪断後の薄板が腐食するのを防止することができる。特に、拘束部材が、設定された残留応力測定範囲を挟む両側に少なくとも設けられている場合には、設定された残留応力測定範囲に属する各剪断後の薄板の端面だけに付着させた電解液が、残留応力測定範囲外に流出することを抑止することができる。
【0026】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、薄板は、電磁鋼板であることを特徴とするので、複数の剪断後の電磁鋼板を積層した金属板積層体を、モータにおけるステータあるいはロータに構成される鉄心として用いると、電気エネルギと磁気エネルギとの変換効率が高く得られ、鉄損等のエネルギロスを低減したモータを提供することができる。
【0027】
(6)(5)に記載する薄板の残留応力測定方法において、電磁鋼板は、珪素鋼板であることを特徴とするので、珪素鋼板は、電磁鋼板の中でも、(a)透磁率が比較的高い材料であること、(b)材料コストが安価であること、の各メリットを有する。ひいては、各種モータのほか、変圧器等の製品向けに、鉄心用磁性材料として珪素鋼板を用いれば、高性能な記製品を安価に製造することができる。
【0028】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、金属板積層体は、自動車に搭載されるモータで、ステータあるいはロータに構成される鉄心として用いられる積層鋼板であることを特徴とするので、積層鋼板を量産体制下で製造する場合でも、品質管理上、定期的に積層鋼板の残留応力とその分布を、X線応力測定法により、信頼性が高く高精度に測定することができることから、品質が高い鉄心をステータあるいはロータに備えた自動車向けモータを製造することができる。ひいては、鉄損等のエネルギロスを低減すると共に、小型ながらより高出力化された自動車向けモータを、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータに向けに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る母材の珪素鋼板を打ち抜き加工で剪断する様子を示す模式図である。
【図2】図1に示す母材の珪素鋼板から分割して形成された珪素鋼板成形品を示す模式図である。
【図3】X線応力測定法の測定原理を説明する図であり、試料表面層で紙面に直交する向きに結晶面を有する結晶粒を選択的に図示した模式図である。
【図4】図3に示す左方の結晶粒を用いて、Braggの法則を説明する図である。
【図5】図3に示す各結晶粒の状態について、回折曲線とX線強度曲線との関係を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る珪素鋼板の残留応力測定方法を説明するフローチャート図である。
【図7】10枚の鋼板成形品で構成した珪素鋼板積層体を拘束部材で固定した状態を示す斜視図である。
【図8】拘束した状態の珪素鋼板積層体に電解研磨装置で電解研磨を行っている様子を示す斜視図である。
【図9】図8に示す様子を示す側面図である。
【図10】図8に示す様子を示す正面図である。
【図11】珪素鋼板積層体の珪素鋼板積層体端面部の残留応力をX線応力測定装置で測定する様子を説明する斜視図である。
【図12】図11に示す様子を示す側面図である。
【図13】図11に示す様子を示す正面図である。
【図14】X線応力測定装置による残留応力の調査条件を説明する図である。
【図15】長手方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、CL=aで打ち抜き加工した場合を示す。
【図16】幅方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、CL=aで打ち抜き加工した場合を示す。
【図17】長手方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、CL=4aで打ち抜き加工した場合を示す。
【図18】幅方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、CL=4aで打ち抜き加工した場合を示す。
【図19】打ち抜き加工した試料において、材料端面からの距離と発生する残留応力との一般的な関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の薄板の残留応力測定方法の実施の形態を、図面に基づいて、詳細に説明する。本実施形態では、金属製薄板が、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される駆動用モータ等のモータにおいて、ステータやロータの鉄心として用いる積層鋼板を構成する複数の電磁鋼板である場合について説明する。具体的には、電磁鋼板は珪素鋼板であり、複数の珪素鋼板を重ね合わせて積層させた積層鋼板を構成する場合について説明する。
【0031】
はじめに、積層鋼板を構成する珪素鋼板1枚を製造する工程について、図1、図2、及び参照する図7を用いて簡単に説明する。図1は、実施形態に係る母材の珪素鋼板を打ち抜き加工で剪断する様子を示す模式図である。図2は、図1に示す母材の珪素鋼板から分割して形成された珪素鋼板成形品を示す模式図である。図7は、10枚の鋼板成形品を積層して構成した珪素鋼板積層体を拘束部材で固定した状態を示す斜視図である。
【0032】
積層鋼板を構成する1枚の珪素鋼板である鋼板成形品21の製造には、多結晶体からなる母材珪素鋼板20(母材の金属製薄板)が母材として用いられる。母材珪素鋼板20は、それを構成する結晶粒の平均的な直径がΦ0.15(mm)程度であり、結晶粒の組織が局部的に強くなっておらず、弾性定数やポアソン比等の機械的性質がより正確に把握され、品質的に安定した状態の材料である。
【0033】
鋼板成形品21は、厚さt=0.3(mm)の母材珪素鋼板20を、プレス装置80により、打ち抜き(剪断加工)で分割して成形されている。具体的には、図1に示すように、ダイス81とパンチ83との間に所定のクリアランスCL=a(0<a)が確保された状態で、母材珪素鋼板20をダイス81と板押え82との間に挟み込む。その状態で、パンチ83が、母材珪素鋼板20の剪断予定線上に対応した位置から母材珪素鋼板20の厚み方向下面側(図1中、上下方向下側)に移動して、ダイス81とパンチ83との相対移動によって、母材珪素鋼板20を剪断予定線で剪断する。これにより、母材珪素鋼板20が剪断予定線で分割されて、参照する図7に示す積層鋼板1の構成要素となる鋼板成形品21(剪断後の薄板)が形成される。鋼板成形品21とは別に分割された分割鋼板29は、スクラップ品として廃棄、あるいは先に打ち抜き加工された鋼板成形品として使用される。
【0034】
母材珪素鋼板20の剪断予定線で剪断された鋼板成形品21の打抜き面22(薄板の端面)に、パンチ83の下降によりはじめに剪断面22aが形成された後、破断面22bが形成されて、打抜き面22が、剪断面22aの層と破断面22bの層との2層状となる。剪断面22aの層、及び破断面22bの層において、層の厚みは、正確には鋼板成形品21毎にそれぞれ異なるが、両層とも概ね同じ厚みとなる一方で、面形状は、鋼板成形品21毎にそれぞれ全く異なり、凹凸の差が、打ち抜き加工前の状態に比して、格段に大きくなり、打抜き面22の面粗度は大きくなっている。
【0035】
次に、鋼板成形品21の剪断端面部23(剪断後の薄板で剪断された端面部)に生じた残留応力を測定するX線応力測定法の測定原理と、実際に応力測定を行うX線応力測定装置とについて、図3乃至図5を用いて説明する。図3は、X線応力測定法の測定原理を説明する図であり、試料表面層で紙面に直交する向きに結晶面を有する結晶粒を選択的に図示した模式図である。図4は、図3に示す左方の結晶粒を用いて、Braggの法則を説明する図である。図5は、図3に示す各結晶粒の状態について、X線回折の様子と回折強度曲線との関係を示すグラフである。
【0036】
まず、X線応力測定法の測定原理について説明する。X線応力測定法は、X線回折を利用して多結晶体の材料の表面部の応力を測定する方法である。X線応力測定法の測定原理や具体的な測定方法については、例えば、非特許文献である産技研ニュース77号(2001年10月 大阪府立産業技術総合研究所発行)に開示されており、ここでは、その非特許文献を参考にして、要点だけを簡単に説明する。
【0037】
多結晶体材料の各結晶粒は、原子が規則正しく配列された結晶格子で構成されており、その結晶粒に応力が作用すると、結晶格子面の間隔が変化するため、X線応力測定法は、この格子面間隔の変化を測定し応力を求める。X線応力測定法では、図3に示すように、試料60に引張応力σが作用したとき、試料面法線AX1と格子面法線AX2のなす角度Ψが大きい結晶粒ほど、格子面間隔は拡がる。このときの格子面間隔の拡がりは、応力が大きいほど大きくなる。角度Ψは、通常、0°、15°、30°、45°を選択する。
【0038】
ここで、図3に示す左方の結晶粒61Aに着目して、X線回折について考える。結晶粒61Aでは、図3及び図4に示すように、特定波長の入射X線(特性X線)51が、結晶粒61Aの試料面60Aaに照射されると、回折X線52は、試料面法線AX1の線上で回折する。Braggの法則による回折式は、次式の通りである。
nλ=2dsinθ
n:回折の次数、λ:特性X線の波長、d:格子面間隔、θ:Braggの回折角
入射X線51の延長線と回折X線52のなす角度である回折角2θは、試料60へのX線入射角を順次走査して得られるX線回折強度曲線(図5(a)参照)から求められ、結晶粒61Aで回折角が2θ(0<θ)となる。すなわち、Braggの法則によれば、各結晶面で散乱するX線の経路差がX線波長の整数倍になると、各面からの散乱X線の位相が一致して強め合い、回折波が得られる。
【0039】
結晶粒61Aと同様に、図3に示す角度Ψが異なる結晶粒61B、結晶粒61Cについても、入射X線51を角度Ψだけ傾けて結晶粒61B,結晶粒61Cの試料面60Ba,60Caに照射すれば、角度Ψの大きさ毎に異なった回折角2θが求められる。試料60に引張応力が作用している場合、角度Ψが大きくなるほど、格子面間隔が広くなる。回折角2θは、結晶粒61Bで回折角が2θ(2θ>2θ)、結晶粒61Cで回折角が2θ(2θ>2θ)となる。一方、試料60に圧縮応力が作用する場合、引張応力の場合とは反対に、回折角2θは小さくなる。
【0040】
次に、角度Ψ毎の回折角を、縦軸2θ、横軸sinΨのグラフ(2θ−sinΨ線図)にプロットし、各点を最小二乗法により直線で結び、その勾配Mを求めれば、表面層の応力σは、次式により算出できる。
σ=K・M
K:応力定数
このKは、被測定材料の弾性係数、ポアソン比、無応力時の回折角から求められる。2θ−sinΨ線図を用いたこの方法は、sinΨ法といわれ、後述するX線応力測定法で標準に用いられている。次述するような市販のX線応力測定装置では、角度Ψ毎の回折角の測定、応力が自動で算出できるようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法で用いるX線応力測定装置、及び電解研磨装置について説明する。出願人は、複数の鋼板成形品21の剪断端面部23に生じた残留応力を、市販品のPSPC微小部X線応力測定装置(理学電機株式会社(現社名:株式会社リガク)製)を用いて測定している。用いるこのX線応力測定装置50(図10参照)では、X線応力測定法で必要な計測範囲Mは、直径Φ2(mm)の円内全域となっている。一方、残留応力の測定前に、複数の鋼板成形品21の打抜き面22を研磨処理する電解研磨装置70(図8等参照)として、出願人は、後に詳述するペンシル式ポータブル電解研磨装置2904D1型(理学電機株式会社(現社名:株式会社リガク)製)を用いている。
【0042】
図8に、拘束した状態の珪素鋼板積層体に、電解研磨装置で電解研磨を行っている様子を示す斜視図を示す。図9は、図8に示す様子を側面図で、図10は、図8に示す様子を正面図でそれぞれ示す。ペンシル式ポータブル電解研磨装置70は、図8乃至図10に示すように、周知の電解研磨法により電解研磨するものであり、電解液78を塗布しない試料の電解液塗布外範囲Nにプラス電極71を電気的に接続しておく。その上で、研磨処理面として電解液78を塗布した残留応力測定範囲11Aをマイナス電極72で接触させながら、この研磨処理面を研磨する。
【0043】
次に、本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法について、図6乃至図13を用いて説明する。
【0044】
本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法は、鋼板成形品21で剪断された剪断端面部23の向きと、剪断端面部23の位置とを揃え、隣り合う鋼板成形品21,21同士を重ね合わせて、所定数(本実施形態では7枚以上)を満たす複数の鋼板成形品21を積層した珪素鋼板積層体10を形成する。そして、珪素鋼板積層体10のうち、複数の剪断端面部23が配置された珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11Aに、X線応力測定法で必要な計測範囲Mを設定し、X線応力測定装置50により、鋼板成形品21の剪断端面部23に生じた残留応力を計測範囲Mで測定する。
【0045】
具体的には、図6に、実施形態に係る鋼板成形品の残留応力測定方法を説明するフローチャート図を示し、このフローチャート図を用いて説明する。フローチャート図の前提として、鋼板成形品21は、前述したように、プレス装置80により、母材珪素鋼板20を打ち抜き成形して、図2に示す状態となっている。
【0046】
ステップS10では、鋼板成形品の積層化を行う。具体的には、鋼板成形品21は、厚みが0.3(mm)、図2に示すように、打抜き面22の長手方向(図2中、左下−右上方向)の大きさが100(mm)以上である平板である。使用するX線応力測定装置50では、X線応力測定法で必要な計測範囲Mが、直径Φ2(mm)の円内全域であるため、計測範囲M内を、積層させた打抜き面22で満たすためには、少なくとも7枚以上の鋼板成形品21を重ね合わせた珪素鋼板積層体10を形成する必要がある。
【0047】
図7には、10枚の鋼板成形品21を積層して構成した珪素鋼板積層体10を図示しているが、珪素鋼板積層体10が、自動車に搭載されるモータで、ステータあるいはロータに構成される鉄心として用いられる積層鋼板1として、そのまま用いられることもある。この場合、鋼板成形品21の厚み方向に沿う積層鋼板1の厚みを、例えば、24(mm)とすると、積層鋼板1は、厚さ0.3(mm)の鋼板成形品21を80枚重ね合わせて構成される。X線応力測定装置は、X線応力測定法で必要な計測範囲Mが、直径Φ2(mm)の円内全域であるため、積層鋼板1(珪素鋼板積層体10)の珪素鋼板積層体端部11における打抜き面22で、残留応力の測定は可能である。
【0048】
また、本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法は、珪素鋼板積層体10には、隣り合う鋼板成形品21,21同士の密着を高める拘束部材40が、残留応力測定範囲11Aを挟む打抜き面22の長手方向両側にそれぞれ設けられており、珪素鋼板積層体10を拘束して固定する。すなわち、ステップS20で、例えば、ビニールテープ、ゴムバンド等の拘束部材40が、隣り合う鋼板成形品21,21同士の密着を高めるよう、珪素鋼板積層体端部11のうち、設定された残留応力測定範囲11Aを挟む両側で、珪素鋼板積層体10を挟持して拘束する。
【0049】
ステップS20の実施後、ステップS30で電解研磨処理を行う。ステップS30では、X線応力測定装置50による測定前に、珪素鋼板積層体端部11のうち、設定された残留応力測定範囲11Aに属する各鋼板成形品21の打抜き面22だけに電解液78を付着させ、電解液78が付着した各鋼板成形品21の打抜き面22を、電解研磨装置70により、研磨処理して面粗度を小さくする。
【0050】
具体的には、図7に示す状態の珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11のうち、拘束部材40を挟んだ残留応力測定範囲11Aの外側に位置する片側の電解液塗布外範囲N(図8では左側を選択したが、右側でも良い。)に電解研磨装置70のプラス電極71を、電気的に接触させた状態にしておく。その一方、電解研磨装置70の電源をON状態にして、図8乃至図10に示すように、残留応力測定範囲11Aの電解液78の表面を電解研磨装置70のマイナス電極72でなぞるようにして接触させる。そして、残留応力測定範囲11Aにおいて各鋼板成形品21の打抜き面22が所望の面粗度になるよう、電解研磨装置70の性能に合わせて、所定時間、研磨処理を行う。
【0051】
次いで、残留応力測定範囲11Aやその周辺に付着した電解液78を除去すると共に、残留応力測定範囲11Aにおける各鋼板成形品21の打抜き面22をクリーニングして、X線応力測定装置50による残留応力測定で計測誤差要因となる異物の除去を行う。その後に、ステップS40で、X線応力測定装置50による残留応力測定を行う。
【0052】
図11に、珪素鋼板積層体の珪素鋼板積層体端面部の残留応力をX線応力測定装置で測定する様子を説明する斜視図を示す。図12は、図11に示す様子を示す側面図である。図13は、図11に示す様子を示す正面図である。ステップS40では、図11乃至図13に示すように、前述したX線応力測定装置50を用いて、残留応力測定範囲11Aのうち、測定したい測定ポイント53を中心とする計測範囲Mに、入射X線51を照射する。そして、7枚の鋼板成形品21の打抜き面22が重ね合わされた計測範囲M内の各剪断端面部23より、照射した入射X線51の回折X線52を取り込んで回折角2θを検出する。X線応力測定装置50で検出した回折角2θに基づいて残留応力を測定するX線応力測定法については、既述したため、ここでは、その説明を割愛する。X線応力測定装置50による残留応力を測定後、拘束部材40を珪素鋼板積層体10から取り外す。
【0053】
図19に、打ち抜き加工した試料において、材料端面からの距離と発生する残留応力との一般的な関係を示すグラフを示す。
【0054】
一般的に、プレス装置により打ち抜き成形された鋼板成形品では、打抜き面で残留応力の発生状況とその分布は、打ち抜き成形時の加工条件や、製造時に用いる母材の珪素鋼板のロット、打抜き面での加工精度等の諸条件により、大きく異なる。例えば、同じ母材の珪素鋼板から、試料A、試料B、及び試料Cをサンプリングして、打抜き面での残留応力の発生状況とその分布を見ても、図19に示すように、材料端面に近いところで、引張応力が最も大きくなる試料Aや試料Cがあれば、同じようなところで、圧縮応力が最も大きくなる試料Bもある。そのため、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される駆動用モータ等のモータにおいて、複数の鋼板成形品を重ね合わせて積層した積層鋼板1で、ステータやロータ向けの鉄心(製品)を製造する場合には、打抜き面での残留応力の発生状況とその分布を品質管理することは、製品の品質上、重要な工程となる。
【0055】
そこで、母材の珪素鋼板を、プレス装置により打ち抜き加工で分割して成形された鋼板成形品において、打抜き面で残留応力の発生状況と、その分布について、試料を用いて調査した。以下、その調査について、図14乃至図18を用いて説明する。
【0056】
調査条件は次の通りである。
(a)珪素鋼板積層体10
10枚の鋼板成形品21で構成し、拘束部材40により拘束、電解研磨処理を実施済み
(b)珪素鋼板積層体10のサンプリング数
N=3(ヶ)
(c)珪素鋼板積層体10の方向定義
長手方向(図14中、左下‐右上方向)、幅方向(図14中、上下方向)
(d)珪素鋼板積層体端部11の測定ポイント53の位置
位置P(図14中、長手方向中央位置)、図14乃至図18では、「◆」でプロット
位置Q(図14中、長手方向左側寄りの位置)、図14乃至図18では、「■」でプロット
位置R(図14中、位置Pとは正反対の珪素鋼板積層体端部11で、長手方向中央位置)、図14乃至図18では、「▲」でプロット
(e)用いたX線応力測定装置
前述したPSPC微小部X線応力測定装置50
(f)残留応力測定深さ
打抜き面22の表面近傍、打抜き面22から順に10(μm)、20(μm)、30(μm)、40(μm)、及び50(μm)の深さにそれぞれ位置する計6箇所の各部位
(g)打ち抜き加工条件(ダイス81とパンチ83とのクリアランス)
CL=a(0<a)、CL=4aの2条件
【0057】
図14に、X線応力測定装置による残留応力の調査条件を説明する図を示す。図15は、CL=aで打ち抜き加工した場合において、長手方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、図16は、上記場合の幅方向の残留応力の測定結果を示すグラフである。図17は、CL=4aで打ち抜き加工した場合において、長手方向の残留応力の測定結果を示すグラフであり、図18は、上記場合の幅方向の残留応力の測定結果を示すグラフである。
【0058】
調査結果を示す。長手方向の残留応力の場合、図15に示す測定データと図17に示す測定データとを比較すると、何れも引張応力が残留応力となっている点が共通する。その一方で、CL=aの打ち抜き加工条件による測定データのバラツキ幅が、CL=4aの打ち抜き加工条件による測定データのバラツキ幅より、6箇所の測定部位全体を通じて、小さくなっていることが判る。このことは、打ち抜き加工条件がCL=4aの場合、剪断端面部23の結晶粒が、打ち抜き加工条件がCL=aの場合に比べて大きくなり、粒界や粒内での測定誤差が大きく生じるためと考えられる。
【0059】
幅方向の残留応力の場合、図16に示す測定データと図18に示す測定データとを比較すると、CL=aの打ち抜き加工条件による測定データのバラツキ幅と、CL=4aの打ち抜き加工条件による測定データのバラツキ幅とは、6箇所の測定部位全体を通じて、長手方向の残留応力の場合の程、顕著な差異はない。また、何れも引張応力が残留応力となっている点が共通する。その一方で、CL=aの打ち抜き加工条件による引張応力の大きさは、6箇所の測定部位全体を通じて、CL=4aの打ち抜き加工条件による引張応力の大きさより大きい傾向が見られ、引張応力の発生部分布のバラツキも、CL=4aの打ち抜き加工条件に比して、より安定した傾向が見られる。
【0060】
前述したように、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される駆動用モータ等のモータにおいて、複数の鋼板成形品を重ね合わせて積層した積層鋼板1で、ステータやロータ向けの鉄心(製品)を構成する場合がある。この場合において、出願人は、積層鋼板1の打抜き面22近傍に存在する残留応力として、圧縮応力が引張応力よりも製品に悪影響を及ぼすことを既に把握している。この点について考慮しても、CL=4aの打ち抜き加工条件はCL=aの打ち抜き加工条件に比べて好ましい傾向にあるとは言えない。
【0061】
前述した構成を有する本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法の作用・効果について説明する。
【0062】
本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法では、
(1)多結晶体からなる母材の母材珪素鋼板20を挟み込み、母材珪素鋼板20を打ち抜き加工により剪断し、母材珪素鋼板20から分割して形成された鋼板成形品21に生じた残留応力を測定する珪素鋼板の残留応力測定方法において、鋼板成形品21で剪断された剪断端面部23の向きと、剪断端面部23の位置とを揃え、隣り合う鋼板成形品21同士を重ね合わせて、所定数を満たす複数(本実施形態では、7枚以上)の鋼板成形品21を積層した珪素鋼板積層体10を形成すること、珪素鋼板積層体10のうち、複数の剪断端面部23が配置された珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11Aに、X線応力測定法で必要な計測範囲Mを設定し、X線応力測定装置50により、鋼板成形品21の剪断端面部23に生じた残留応力を計測範囲Mで測定することを特徴とするので、例えば、鋼板成形品21の1枚当たりの厚みが0.3mmであり、入射X線51と回折X線52とに基づいて残留応力を計測するのに、X線応力測定装置50の性能上、計測で必要とされる計測範囲M(X線スポット径)が直径Φ2mm等の円内全範囲である場合、1枚当たりの鋼板成形品21の厚みを考慮した上で、所定数を満たす複数の鋼板成形品21の数量として、鋼板成形品21を7枚以上重ね合わせた珪素鋼板積層体10を形成する。
【0063】
これにより、X線応力測定法で必要な計測範囲Mは、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11Aにおいて、剪断された7枚以上の打抜き面22で占める範囲内に収まるようになる。この状態になると、試料である薄板の材質によっても異なるが、試料(複数積層した状態の鋼板成形品21)の結晶粒が少なくとも数百から五千個ぐらい存在するようになり、母材珪素鋼板20に発生した残留応力に起因する歪みの大きさの変化、すなわち、残留応力の発生部分において結晶格子面の間隔の変化を、安定した測定精度で捉えることができる。よって、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11A内に占める7枚以上の打抜き面22を、X線応力測定法で必要な計測範囲Mに設定し、周知のX線応力測定装置50により、入射X線51を計測範囲M内の所定位置の測定ポイント53にスポット的に照射し、その回折X線52を取り込んで回折角2θを検出すれば、信頼性の高い高精度な応力測定が可能となる。また、珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11A内において、計測範囲Mを変えて別の位置で応力測定をすれば、複数積層した鋼板成形品21で剪断された剪断端面部23に発生した残留応力の分布を把握することができる。
【0064】
1枚当たりの薄板の厚さが、X線応力測定装置の性能上、X線応力測定法で必要な計測範囲となる直径の大きさより大きくなる板の残留応力については、従来の残留応力測定方法で測定できるため、本発明の薄板の残留応力測定方法は、上記直径の大きさより厚みの小さい薄板を対象としている。その一方で、X線応力測定装置50では、上述したように、その性能上、X線応力測定法で必要とされる計測範囲Mが、例えば、直径Φ2mm等の円内全範囲であり、上記直径の大きさより厚みの小さい珪素鋼板(鋼板成形品21)の残留応力を測定しようとすると、鋼板成形品21を1枚毎に測定することはできない。そのため、7枚以上の鋼板成形品21を積層した珪素鋼板積層体10を形成する必要がある。
【0065】
珪素鋼板積層体10が、モータにおけるロータやステータに構成される鉄心である場合、鋼板成形品21に残留応力があると、部分的に透磁率が下がり必要な磁束密度を得られずモータの性能に大きく影響を及ぼすため、鋼板成形品21に生じた残留応力を測定して把握する必要がある。モータの場合、鋼板成形品21に生じた残留応力を、鋼板成形品21を1枚毎に個々に把握することよりも、複数の鋼板成形品21で構成された珪素鋼板積層体10を計測対象に、複数の鋼板成形品21で剪断された剪断端面部23一帯の残留応力を測定し、珪素鋼板積層体10(鉄心)全体において、残留応力が、どの程度の大きさで、どのような分布で生じているのかを把握することが重要となる。
【0066】
モータの中でもとりわけ、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車向けモータでは、小型で高出力化が特に要求されており、その解決策の一つとして鉄損等のエネルギロスを少なくするため、珪素鋼板積層体10(積層鋼板1)を構成する鋼板成形品21に生じた残留応力を除去、あるいは抑制する必要がある。残留応力の除去等は、鋼板成形品21を熱処理してもできるが、自動車向けの各種部品には、厳格な品質管理が実施されており、残留応力の除去等を熱処理で行うと、コスト高になる上、加熱による二次的な歪みが鋼板成形品21に発生する虞があるため、熱処理による残留応力の除去等は好ましくない。そのため、母材珪素鋼板20を剪断加工する工程で、残留応力が鋼板成形品21に極力発生しないよう、様々な工夫を行って珪素鋼板積層体10(積層鋼板1)が製造されている。本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法では、このように製造された珪素鋼板積層体10(積層鋼板1)(例示した自動車向けのモータの鉄心等)が量産体制下にある場合でも、品質管理上、定期的に製造される珪素鋼板積層体10(積層鋼板1)の残留応力とその分布を、X線応力測定法により、信頼性が高く高精度に測定することができる。
【0067】
従って、本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法では、母材珪素鋼板20を剪断したとき、剪断された鋼板成形品21の剪断端面部23に生じた残留応力とその分布を高精度に測定することができる、という優れた効果を奏する。
【0068】
(2)(1)に記載する珪素鋼板の残留応力測定方法において、所定数を満たす複数の数量は、用いるX線応力測定装置50で、X線応力測定法で必要とされる計測範囲Mの大きさ(直径Φ2mm等の円内全範囲)を少なくとも超えるよう、1枚当たりの厚みが0.3mmの鋼板成形品21を積層させるのに必要な数量(本実施形態では7枚以上)であることを特徴とするので、鋼板成形品21の厚みが0.3mmと薄くても、X線応力測定法に必要な少なくとも数百から五千個ぐらいの結晶粒が、残留応力を測定したい残留応力測定範囲11Aの計測範囲Mにおいて、確保することができるようになる。その結果、測定したい残留応力測定範囲11Aで、結晶格子面の間隔の変化を安定した測定精度で捉えることができ、残留応力における大きさ、向き、及び分布等より精度良く取得することができる。
【0069】
(3)(1)または(2)に記載する珪素鋼板の残留応力測定方法において、X線応力測定装置50による測定前に、珪素鋼板積層体端部11のうち、設定された残留応力測定範囲11Aに属する鋼板成形品21の打抜き面22だけに電解液78を付着させ、電解液78が付着した鋼板成形品21の打抜き面22を、電解研磨装置70により、研磨処理して面粗度を小さくすることを特徴とするので、研磨処理された鋼板成形品21の打抜き面22から、その深さ方向で結晶粒が存在する薄板内部(剪断端面部23)側に生じた残留応力とその分布を、後述する第1方向及び第2方向の少なくとも2次元で測定することができる。
【0070】
すなわち、打ち抜き加工により、剪断後の各鋼板成形品21において、打抜き面22は、剪断面22aと破断面22bとの2層状となり、この剪断された2層状の打抜き面22の面形状は、面粗度(凹凸の差)が大きくなった状態となる。そのため、珪素鋼板積層体端部11内で設定された残留応力測定範囲11Aに属する各鋼板成形品21の打抜き面22を、研磨処理することにより、研磨処理された各打抜き面22の端面形状は、凹凸の差が小さくなって面粗度が小さくなり、珪素鋼板積層体端部11内で残留応力測定範囲11Aに設定された各鋼板成形品21の打抜き面22がより平滑化した形状となる。
【0071】
ここで、説明の便宜上、鋼板成形品21において、鋼板成形品21の厚み方向を第1方向、鋼板成形品21が剪断された方向に沿う方向を第2方向、第1方向と第2方向とが直交する方向を第3方向とする。
【0072】
本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法では、形状が平滑化した珪素鋼板積層体10の残留応力測定範囲11Aの打抜き面22を、X線応力測定法で必要となる計測範囲Mに設定し、X線応力測定装置50により、入射X線51を計測範囲Mの測定ポイント53にスポット的に照射し、その回折X線52を取り込んで回折角を検出する。このとき、照射した入射X線51が、第3方向に対し、鋼板成形品21の結晶粒が存在する薄板内部(剪断端面部23)側に、剪断された打抜き面22から数十(μm)奥側に位置するところの範囲まで精度良く届き、結晶粒で回折した回折X線52が、平滑化された珪素鋼板積層体10の残留応力測定範囲11Aの打抜き面22を通じて、回折角2θがより正確に得られ、X線応力測定装置50に精度良く取り込まれるため、残留応力の大きさが精度良く得られる。
【0073】
X線応力測定装置50では、剪断された打抜き面22から数十(μm)奥側に位置する剪断端面部23において、第1方向、第2方向、及び第3方向の結晶格子面の間隔を検知し残留応力を求めることができる。また、本実施形態で実施した調査試験のように、場合によっては、第3方向の残留応力を零とみなすこともできるため、剪断された打抜き面22から数十(μm)奥側に位置する剪断端面部23において、第1方向、及び第2方向に生じる残留応力とその分布を、これらの方向に生じる結晶格子面間隔と、その回折角2θに基づいて求めることができる。よって、研磨処理された各鋼板成形品21の打抜き面22から、その深さ方向に結晶粒が存在する薄板内部側に生じた残留応力とその分布を、鋼板成形品21の厚み方向(第1方向)と、鋼板成形品21が剪断された方向(第2方向)の少なくとも2次元で、信頼性が高く高精度に測定することができる。
【0074】
ところで、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11内で残留応力測定範囲11Aに設定された各鋼板成形品21の打抜き面22をより平滑化するのに、平滑化しようとする剪断端面部23に、砥石やサンドペーパ等の研削・研磨手段で外力を物理的に作用させると、この外力の作用により、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11に新たな応力が生じる虞がある。あるいは、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11における結晶粒の組織が変質する虞がある。
【0075】
本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法では、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11内で残留応力測定範囲11Aに設定された各鋼板成形品21の打抜き面22を平滑化するときに、電解研磨法による電解研磨装置で残留応力測定範囲11Aの打抜き面22を研磨処理することにより、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11内で残留応力測定範囲11Aに、上述したような二次的な応力の発生や、結晶粒の組織の変質を阻止することができる。
【0076】
(4)(3)に記載する本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法において、珪素鋼板積層体10には、隣り合う鋼板成形品21,21同士の密着を高める拘束部材40が設けられているので、電解研磨法による研磨処理で必要な電解液78が、積層する鋼板成形品21,21同士の間に入り込み、留まってしまうことに起因して、鋼板成形品21が腐食するのを防止することができる。特に、拘束部材40,40が、設定された残留応力測定範囲11Aを挟む両側に設けられている場合には、設定された残留応力測定範囲11Aに属する各鋼板成形品21の打抜き面22だけに付着させた電解液78が、残留応力測定範囲11A外の電解液塗布外範囲Nに流出することを抑止することができる。
【0077】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法において、鋼板成形品21(母材珪素鋼板20)は、電磁鋼板であることを特徴とするので、複数の鋼板成形品21を積層した珪素鋼板積層体10を、モータにおけるステータあるいはロータに構成される鉄心として用いると、電気エネルギと磁気エネルギとの変換効率が高く得られ、鉄損等のエネルギロスを低減したモータを提供することができる。
【0078】
(6)(5)に記載する本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法において、鋼板成形品21(母材珪素鋼板20)は、珪素鋼板であることを特徴とするので、珪素鋼板は、電磁鋼板の中でも、(a)透磁率が比較的高い材料であること、(b)材料コストが安価であること、の各メリットを有する。ひいては、各種モータのほか、変圧器等の製品向けに、鉄心用磁性材料として珪素鋼板(鋼板成形品21)を用いれば、高性能な上記製品を安価に製造することができる。
【0079】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する本実施形態の珪素鋼板の残留応力測定方法において、珪素鋼板積層体10は、自動車に搭載されるモータで、ステータあるいはロータに構成される鉄心として用いられる積層鋼板1であることを特徴とするので、積層鋼板1を量産体制下で製造する場合でも、品質管理上、定期的に積層鋼板1の残留応力とその分布を、X線応力測定法により、信頼性が高く高精度に測定することができることから、品質が高い鉄心をステータあるいはロータに備えた自動車向けモータを製造することができる。ひいては、鉄損等のエネルギロスを低減すると共に、小型ながらより高出力化された自動車向けモータを、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータに向けに提供することができる。
【0080】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態では、使用するX線応力測定装置50において、X線応力測定法で必要な計測範囲Mが直径Φ2(mm)の円内全域としたため、珪素鋼板積層体10を構成するのに、7枚以上の鋼板成形品21を積層させるようにした。しかしながら、X線応力測定法で必要な計測範囲は、実施形態に限定されるものではなく、使用するX線応力測定装置の仕様によって異なるため、金属板積層体を構成するために積層させる剪断後の薄板に数量は、剪断後の薄板の端面の大きさがX線応力測定装置の計測範囲を超えるよう、所定数を満たす複数とする。
【0081】
(2)また、実施形態では、珪素鋼板積層体10の珪素鋼板積層体端部11の残留応力測定範囲11Aを、珪素鋼板積層体10のうち、2箇所の拘束部材40で拘束した間に設定したが、珪素鋼板積層体端部11において、隣り合う鋼板成形品21,21同士で十分な密着が確保できれば、珪素鋼板積層体端部11全体を残留応力測定範囲11Aに設定しても良い。
【0082】
(3)また、実施形態では、積層鋼板1や珪素鋼板積層体10を、自動車向けモータのステータあるいはロータの鉄心に用いる場合について説明したが、例えば、コンプレッサ等の各種モータの鉄心や、変圧器に構成される積層鋼板に適用しても良く、積層鋼板や金属板積層体を構成する製品の応用は、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 積層鋼板
10 珪素鋼板積層体(金属板積層体)
11 珪素鋼板積層体端部(金属板積層体端面部)
11A 残留応力測定範囲(金属板積層体端面部の一部)
20 母材珪素鋼板(母材の金属製薄板)
21 鋼板成形品(剪断後の薄板)
22 打抜き面(薄板の端面)
23 剪断端面部(剪断後の薄板で剪断された端面部)
40 拘束部材
50 X線応力測定装置
51 入射X線
52 回析X線
M 計測範囲
70 電解研磨装置
78 電解液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶体からなる母材の金属製薄板を挟み込み、前記母材の金属製薄板を剪断加工により剪断し、前記母材の金属製薄板から分割して形成された剪断後の薄板に生じた残留応力を測定する薄板の残留応力測定方法において、
前記剪断後の薄板で剪断された端面部の向きと、前記端面部の位置とを揃え、隣り合う前記剪断後の薄板同士を重ね合わせて、所定数を満たす複数の前記剪断後の薄板を積層した金属板積層体を形成すること、
前記金属板積層体のうち、複数の前記端面部が配置された金属板積層体端面部の少なくとも一部に、X線応力測定法で必要な計測範囲を設定し、X線応力測定装置により、前記剪断後の薄板の前記端面部に生じた残留応力を、前記計測範囲で測定することを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記所定数を満たす複数の数量は、用いる前記X線応力測定装置で、前記X線応力測定法で必要とされる前記計測範囲の大きさを少なくとも超えるよう、前記剪断後の薄板を積層させるのに必要な数量であることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記X線応力測定装置による測定前に、前記金属板積層体端面部のうち、設定された残留応力測定範囲に属する各前記剪断後の薄板の端面だけに電解液を付着させ、前記電解液が付着した前記剪断後の薄板の端面を、電解研磨装置により、研磨処理して面粗度を小さくすることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記金属板積層体には、隣り合う前記剪断後の薄板同士の密着を高める拘束部材が設けられていることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記薄板は、電磁鋼板であることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記電磁鋼板は、珪素鋼板であることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載する薄板の残留応力測定方法において、
前記金属板積層体は、自動車に搭載されるモータで、ステータあるいはロータに構成される鉄心として用いられる積層鋼板であることを特徴とする薄板の残留応力測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−36787(P2013−36787A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171247(P2011−171247)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591006298)JFEテクノリサーチ株式会社 (52)