薄板ワークの固定装置、およびそれを用いた薄板ワークの加工装置ならびに加工方法
【課題】薄板ワークの支持剛性を向上させて精度良く表面加工することができる薄板ワークの固定装置を提供する。
【解決手段】互いに対向する縁Eを有する薄板ワークWをこれらの縁Eが水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置2であり、この固定装置2は、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構である第1シリンダロッド5と、薄板ワークWの各縁Eをそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構4とを備えている。ワーク縁把持機構4は、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませるように、薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与える。
【解決手段】互いに対向する縁Eを有する薄板ワークWをこれらの縁Eが水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置2であり、この固定装置2は、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構である第1シリンダロッド5と、薄板ワークWの各縁Eをそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構4とを備えている。ワーク縁把持機構4は、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませるように、薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板ワークの表面加工時において、当該薄板ワークの形状を保持しながら薄板ワークを所定の位置に固定する固定装置、および当該固定装置を用いた薄板ワークの加工装置ならびに加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機の機体などに用いられる薄板ワークは、金属製薄板がストレッチフォーミングなどによってあらかじめ所定の3次元形状に成形された加工対象物である。薄板ワークは、軽量化の目的のために、その少なくとも上側の面に肉抜き加工などの表面加工が施される。このような薄板ワークは、3次元形状を有しており、しかも変形しやすいので、薄板ワークの表面加工を行う際には、薄板ワークの形状を保つように当該薄板ワークが所定の位置に保持され、固定される必要がある。
【0003】
そこで、従来、薄板ワークの表面加工を行う加工装置には、特許文献1記載のように、真空吸着を利用して、薄板ワークを下方から支持しながら固定する複数のシリンダロッドを備えたものがある。この構造では、例えば、図16に概略的に示されるように、複数のシリンダロッド110が互いに間隔をあけて薄板ワークW1の長手方向および幅方向に沿ってそれぞれ立設されている。それぞれのシリンダロッド110は、高さを調整することが可能なロッド111と、そのロッド111の先端にそれぞれ取り付けられた吸着パッド113とを備えている。吸着パッド113は、薄板ワークW1を真空引きによって吸着することができる。
【0004】
これらのシリンダロッド110を用いて薄板ワークW1を所定の位置に固定する場合、まず、薄板ワークW1の図面データ(すなわち、設計時の薄板ワークの3次元形状に関するデータ)に基づいて、各ジャッキを用いて各ロッド111の高さが調整されることにより、各吸着パッド113の高さ位置が前記3次元形状に対応する位置に調整される。ついで、各吸着パッド113の上に薄板ワークW1が載せられ、吸着パッドにより真空吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5163793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような薄板ワークW1は、ストレッチフォーミング成形法などによって製作されるので、図16に示されるように、設計時の図面データにおける形状W0と実際の薄板ワークW1の形状との間に形状的な誤差が生じることがある。このため、図面データに基づいて、個々のシリンダロッド111の吸着パッド113の高さを調整しても、薄板ワークW1と吸着パッド113との間に隙間が生じてしまい、薄板ワークW1を吸着パッド113に真空吸着によって強固に固定することができないおそれがある。
【0007】
また、吸着パッドにおける真空吸着によって薄板ワークWの把持だけでは、薄板ワークW1の縁が自由端となり、切削などの表面加工をする際の振動により、吸着パッド113から薄板ワークW1が外れるなど支持剛性が弱く、薄板ワークW1を精度良く表面加工することが難しい問題もある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、薄板ワークの支持剛性を向上させて精度良く表面加工することができる薄板ワークの固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の薄板ワークの固定装置は、互いに対向する縁を有する薄板ワークをこれらの縁が水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置であって、前記薄板ワークの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構と、前記薄板ワークの各縁をそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構とを備えており、前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるように、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えることを特徴としている。
【0010】
本発明の固定装置は、変形しやすい薄板ワークをその形状を保持しながら安定して固定するために、薄板ワークの対向する縁から圧縮荷重(プリロード)を付与して薄板ワークとワーク吸着機構との間の密着性を高めたものである。
【0011】
この構成によれば、まず、薄板ワークは、薄板ワークの下面を吸着保持可能な複数のワーク吸着機構の上に載せられ、さらに、ワーク縁把持機構によって薄板ワークの対向する縁を把持することにより、薄板ワークの対向する縁が固定される。このように薄板ワークが固定された状態で、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁から当該薄板ワークの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)が与えられる。これにより、薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませて、薄板ワークとワーク吸着機構との間の密着性を高めることができる。
【0012】
すなわち、ワーク縁把持機構によって薄板ワークの縁を把持するとともに、薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。
【0013】
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの縁を把持する把持部分と、当該把持部分を支持する支持部分とを備えており、当該支持部分は、前記把持部分へ前記圧縮荷重を与えるプリロード部を備えているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ワーク縁把持機構が薄板ワークの縁を把持する把持部分と当該把持部分を支持する支持部分とを備えている場合において、支持部分がプリロード部を備えているので、このプリロード部よって、支持部分から把持部分へ圧縮荷重を付与することが可能になる。このように把持部分にだけ部分的に圧縮荷重が付与される構成であるので、把持部分および当該把持部分に把持された薄板ワークの縁へ効率よく圧縮荷重を付与することができる。
【0015】
前記プリロード部は、前記把持部分を、当該把持部分が把持する前記薄板ワークの対向する縁に対して当該薄板ワークの中央側へ移動可能となるように案内する案内部と、前記把持部分に前記圧縮荷重を与える加圧手段とを備えているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、プリロード部が案内部と加圧手段を備えており、案内部によって、把持部分を薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて移動可能に案内し、加圧手段によって、把持部分に圧縮荷重を与えることが可能である。これにより、薄板ワークの縁を案内部によって当該薄板ワークの中央側へ向けて安定かつ確実に案内しながら圧縮荷重を付与することができる。
【0017】
また、前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への変位を許容するように支持する変位許容部分を備えているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ワーク縁把持機構において、まず、支持部分の変位許容部分によって、把持部分の位置を変化させて薄板ワークの縁の付近まで移動させることにより、薄板ワークの縁の位置に合わせて、把持部分の位置を変えることができ、薄板ワークを安定かつ確実に把持することができる。
【0019】
また、前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への向きの変更を許容する方向変更許容部分を備えているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ワーク縁把持機構において、方向変更許容部分によって、薄板ワークの縁を上下両面から把持できる向きへ把持部分の向きを変えることができる。これにより、薄板ワークの縁付近の反り具合に合わせて、把持部分の向きを変えることができ、薄板ワークを安定かつ確実に把持することができる。
【0021】
前記把持部分は、前記薄板ワークの上面に当接可能な形状を有する上面当接部と、当該上面当接部に対向して配置され、前記薄板ワークの下面に当接可能な形状を有する下面当接部と、前記上面当接部と前記下面当接部との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部とを有しているのが好ましい。
【0022】
この構成によれば、把持部分における上面当接部と下面当接部との間の距離を、当該上面当接部と下面当接部との間を連結する連結部によって縮めることにより、薄板ワークの上面および下面の両方から力を加えて挟持することができ、薄板ワークを上下両面から安定して把持することができる。
【0023】
前記薄板ワークは、その縁が前記ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状をしており、前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて当該薄板ワークの縁を把持するのが好ましい。
【0024】
この構成によれば、薄板ワークの縁が、ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状である場合には、ワーク吸着機構が薄板ワークの縁を吸着しにくい場合があり、そのような場合、薄板ワークの縁の全周部分または周辺部の大部分がワーク吸着機構で拘束されないいわば自由端となるが、このような場合に、ワーク縁把持機構が前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて薄板ワークの縁を把持することにより、縁が大きく反った3次元形状の薄板ワークであっても、その薄板ワークを加工するときに生じる薄板ワークの縁の振動を抑えることができる。その結果、薄板ワークがワーク縁把持機構から外れるおそれがなく、より精度良く加工することができる。
【0025】
前記薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設された複数のワーク支持機構をさらに備えており、少なくとも2つの前記ワーク吸着機構は、前記薄板ワークの特定方向に沿って並び、かつ、隣接する当該ワーク吸着機構の間には、少なくとも1つの前記ワーク支持機構が配置されており、前記ワーク支持機構は、前記特定方向に関する外形寸法について、前記ワーク吸着機構よりも小さいのが好ましい。
【0026】
この構成では、隣接するワーク吸着機構の間には、薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するワーク支持機構が配置されており、しかも、ワーク支持機構は、特定方向に関する外形寸法について、ワーク吸着機構よりも小さくなっており、ワーク吸着機構よりも占有面積が小さくなる。そのため、薄板ワークの支持点間隔を短くした状態で、薄板ワークを支持することができ、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークを加工するときに工具を押し当てても、薄板ワークのたわみを小さくすることができ、薄板ワークを精度良く加工することができる。
【0027】
本発明の薄板ワークの加工装置は、前記固定装置と、当該固定装置によって所定の位置に固定された前記薄板ワークの表面加工を行う工具と、前記工具を前記薄板ワーク上で移動させる工具移動部とを備えていることを特徴としている。
【0028】
かかる構成によれば、本発明の固定装置を備えており、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【0029】
本発明の薄板ワークの加工方法は、前記固定装置を用いて、当該薄板ワークを所定の位置に固定した状態で加工する薄板ワークの加工方法であって、前記薄板ワークを所定の高さに配置された前記ワーク吸着機構の上に載置する、ワーク載置工程と、前記ワーク縁把持機構によって、前記薄板ワークの対向する縁を把持するとともに、当該薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えて前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるプリロード付与工程と、前記薄板ワークの下面を前記ワーク吸着機構によって吸着保持する吸着工程と、前記ワーク縁把持機構によって当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに前記ワーク吸着機構によって当該薄板ワークの下面が吸着保持された状態を維持しながら、前記薄板ワークを加工する加工工程とを含むことを特徴とする。
【0030】
この特徴によれば、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の薄板ワークの固定装置を備えた加工装置の一実施形態に係わる全体斜視図である。
【図2】図1の固定装置の斜視図である。
【図3】図2の固定装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1の固定装置において、薄板ワークの加工許容値とたわみ量により、支持点間隔を算出し、第1および第2シリンダロッドの位置決め行うことを説明するための説明図である。
【図5】図1のワーク縁把持機構の拡大正面図である。
【図6】図5のプリロード部およびその周辺のクランプおよび受け部の拡大斜視図である。
【図7】図1の吸着パッド内部の球状の着座部およびその周辺部を示す拡大断面図である。
【図8】図2の第1高さ調整部の断面図である。
【図9】図2の第2高さ調整部の断面図である。
【図10】薄板ワークの加工方法におけるNC加工データと実際の薄板ワークの位置とのずれを示す図である。
【図11】薄板ワークの加工方法における図面データ上の基準点と実際の薄板ワークの基準点との位置のずれを示す図である。
【図12】薄板ワークの加工方法におけるNC加工データ上の薄板ワークの加工範囲図面上の基準点と実際のワークの基準点との位置のずれを示す図である。
【図13】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工におけるNC加工データ上の本来の加工位置を示す図である。
【図14】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工における補正後の加工位置を示す図である。
【図15】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工における補正後の加工位置を上昇させる補正をして、最低残存厚みを確保する補正をした図である。
【図16】薄板ワークを従来の加工装置の吸着パッド上に載せたときに、一部の吸着パッドとの間に隙間が生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
つぎに図面を参照しながら本発明の薄板ワークの固定装置およびそれを用いた薄板ワークの加工装置ならびに加工方法についてさらに詳細に説明する。
【0034】
本実施形態の固定装置2は、互いに対向する縁Eを有する変形容易な薄板ワークWを所定の位置に固定する装置であり、これらの縁Eが水平方向に並ぶ状態で当該薄板ワークWの形状を保持しながら安定して所定の位置に固定するために、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構を備える。具体的には、複数の第1シリンダロッド5を備え、各第1シリンダロッド5は吸着パッド13を備える。そして、薄板ワークWが吸着パッド13の上に載せられた状態で、薄板ワークWの対向する縁Eから圧縮荷重(プリロード)が付与され、これにより薄板ワークWと当該吸着パッド13との間の密着性が高められる。(図2〜3参照)。
【0035】
そして、本実施形態の加工装置1は、このような固定装置を装備しており、薄板ワークWの加工時における薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができ、精度良く加工することができる装置である。
【0036】
以下、加工装置1および固定装置2についてそれぞれ順に説明する。
【0037】
(加工装置の全体構成)
図1に示される薄板ワークWの加工装置1は、飛行機の機体などに用いられる金属薄板からなる複雑な3次元形状を有する薄板ワークWの表面加工を行う装置である。本実施形態の加工装置1は、例えば、軽量化のために薄板ワークWの表面を部分的に切削除去して多数の凹部を形成する肉抜き加工あるいはポケット穴加工を行う。
【0038】
この加工装置1は、固定装置2と、工具71と、工具移動部72とを備えている。
【0039】
固定装置2は、薄板ワークWを、工具71の移動可能な範囲内にある所定の位置に固定する。固定装置2の構成については、後段で詳述する。
【0040】
工具71は、5軸加工を行うためのフライス等の切削用工具である。本実施形態の工具71は、薄板ワークWの表面をえぐって多数の凹部(ポケット)を形成して肉抜きする、いわゆる肉抜き加工あるいはポケット穴加工を行うために用いられる。これらの加工は、薄板ワークWの軽量化に寄与する。
【0041】
工具移動部72は、図1に示されるように、工具71を薄板ワークWの上で5軸方向へ移動させる。すなわち、工具移動部72は、工具71を薄板ワークWの長手方向Xへ移動させる長手方向移動部72aと、工具71を薄板ワークWの幅方向Yへ移動させる幅方向移動部72bと、工具71を薄板ワークWの高さ方向(すなわち、厚さ方向)Zへ移動させる高さ方向移動部72cと、工具71を薄板ワークWの上で2つの回転方向α、βへ回転移動させる回転移動部72dとを備えている。2つの回転方向α、βは、互いの回転軸が直交する関係にある。
【0042】
ここで、回転移動部72dは、2つの回転方向α、βへ工具71を旋回させる。本実施形態では、回転方向αは、薄板ワークWの幅方向へ沿うように、長手方向X回りに回転する方向であり、一方、回転方向βは、薄板ワークWの長手方向へ沿うように、幅方向Y回りに回転する方向である。
【0043】
工具71は、回転移動部72dに設けられた工具主軸72eに着脱自在に取り付けられる。
【0044】
(固定装置2の全体構成)
固定装置2は、図1〜3に示されるように、大別すれば、薄板ワークWを下方から固定するワーク下方固定部3と、薄板ワークWの外周の四方の縁を把持するワーク縁把持機構4とから構成されている。
【0045】
ワーク下方固定部3は、複数の第1シリンダロッド5と、複数の第2シリンダロッド6と、間隔変更機構8とを備えている。第1シリンダロッド5は、本発明のワーク吸着機構の一例であり、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設されている。また、第2シリンダロッド6は、本発明のワーク支持機構の一例であり、薄板ワークWの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設されている。
【0046】
第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、水平な基準面である加工装置1の台座1a上で互いに異なる複数の特定方向に並ぶように、互いに間隔をあけて薄板ワークWの長手方向Xおよび幅方向Yに沿ってそれぞれ立設されている。第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、水平な基準面である加工装置1の台座1aに対して垂直に立てられた状態で、間隔変更機構8を介してそれぞれ配置されている。第1シリンダロッド5の間には、第2シリンダロッド6が1本ずつ配置されている。なお、第2シリンダロッド6が2本以上配置されていてもよい。また、「複数の特定方向」は、薄板ワークWの長手方向Xおよび幅方向Yとは異なる方向であってもよい。
【0047】
第1シリンダロッド5は、図3に示されるように、第1ロッド11と、当該第1ロッド11の高さを変更する第1高さ調整部12と、第1ロッド11の先端に設けられ、薄板ワークWを吸着する吸着パッド13とを有している。
【0048】
第1ロッド11は、上下方向に延びる棒状の部材であり、その内部には空気が通る通路11a(図7〜8参照)が第1ロッド11が延びる方向に形成されている。第1ロッド11は、その先端に吸着パッド13を支持することができ、しかも、真空引きのために通路11aの内部を真空状態に確保することができる十分な剛性を有しており、スチールなどの強度の高い金属材料で製造される。
【0049】
第1高さ調整部12は、第1ロッド11を上下に移動させる機構であり、図8に示されるように、例えば、駆動用の電動モータ12aと、その電動モータ12aの回転駆動力を上下方向に向かう直線駆動力に変換して当該直線駆動力を第1ロッド11に伝達する動力伝達部12bと、第1ロッド11を上下方向に移動自在に支持する支持部12cとを備えている。電動モータ12a、動力伝達部12bおよび支持部12cは、ケーシング12dに収容されている。なお、本実施形態では、動力伝達部12bの一例として、ボールネジ機構が図示されているが、他の動力伝達機構を採用してもよい。
【0050】
吸着パッド13は、図7に示されるように、例えば、蛇腹状の筒体からなり、柔軟性を有するゴムなどの材料で製造されている。吸着パッド13は、薄板ワークWの下面に接触すると、薄板ワークWの下面の形状に合わせて変形する。それにより、吸着パッド13の先端縁は、薄板ワークWの表面に気密性よく密着することができる。吸着パッド13が薄板ワークWに密着した状態で、吸着パッド13内の空気が図8に示される真空ポンプVにより第1ロッド11の通路11aを通して抜かれることにより、薄板ワークWを吸着パッド13に真空吸着することができる。
【0051】
また、図7に示されるように、本実施形態の第1シリンダロッド5は、薄板ワークWに接触可能な少なくとも一部が球面16aを有する着座部16をさらに備えている。着座部16は、吸着パッド13の内部に配置されている。着座部16は、連結部19を介して、第1ロッド11の先端に固定されている。着座部16の球面16aは、その球面16aに対向する薄板ワークWの形状や向きに関わらず、薄板ワークWの下面に確実に当接することができる。第1ロッド11の先端に固定された球状の着座部16が薄板ワークWに直接接触して支持する。
【0052】
第2シリンダロッド6は、図3および図9に示されるように、先端14aが薄板ワークWの下面に当接する第2ロッド14と、当該第2ロッド14の高さを変更する第2高さ調整部15とを有している。
【0053】
本実施形態では、第2ロッド14は当接部を構成する先端(上面)14aを有し、この先端14aが、薄板ワークWの下面に対して下から直接当接することにより当該薄板ワークWを下から支持する。なお、第2ロッド14の先端14aに第2ロッド14と別部材の当接部を設けてもよい。
【0054】
第2高さ調整部15は、図9に示されるように、エアシリンダ15aを備えている。
エアシリンダ15aは、その上端に開口15bを有しており、この開口15bを通じて、エアシリンダ15aの内部に、第2ロッド14の下端部14aが上下に往復移動自在に挿入されている。エアシリンダ15a内には、エアポンプAによって圧縮空気が供給され、この圧縮空気の供給と排出により、第2ロッド14の高さが変更される。エアシリンダ15aは、ケーシング15cに収容されている。
【0055】
間隔変更機構8は、図2〜3に示されるように、複数の幅方向変更部17と、長手方向変更部18とを有している。
【0056】
幅方向変更部17は、薄板ワークWの幅方向Yに並ぶ複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6のそれぞれの幅方向Yにおける間隔を変更する。
【0057】
それぞれの幅方向変更部17の上には、複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6が幅方向Yに移動自在に取り付けられている。具体的には、幅方向変更部17は、個々の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6に対応して、第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6の各々を立てた状態で幅方向Yへ移動可能に支持する台座部17aと、当該台座部17aを幅方向Yに沿って所定の位置に移動して停止させることにより、第1シリンダロッド5と第2シリンダロッド6との幅方向Yの間隔を変更する駆動部17bとを備えている。台座部17aは、案内部17cによって幅方向Yに移動自在に案内される。個々の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、これらの駆動部17bによって、それぞれ独立して幅方向Yに沿って往復移動することができる。
【0058】
長手方向変更部18は、薄板ワークWの長手方向Xに並ぶ複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6のそれぞれの長手方向Xについての間隔を変更する。具体的には、長手方向変更部18は、薄板ワークWの長手方向Xに沿って配置されている。
【0059】
長手方向変更部18は、個々の幅方向変更部17を長手方向Xに案内する案内部18aと、個々の幅方向変更部17に取り付けられた駆動部18bとを備えている。案内部18aの上には、複数の幅方向変更部17が長手方向Xに移動自在に取り付けられている。個々の幅方向変更部17は、これらの駆動部18bによって、それぞれ独立して長手方向Xへ移動することができる。それによって、ある幅方向変更部17の上に載っている第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6と、隣接する幅方向変更部17の上に載っている第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6との間の長手方向Xについての間隔を変更することができる。
【0060】
図4に示されるように、互いに隣接する第1シリンダロッド5の第1ロッド11と第2シリンダロッド6の第2ロッド15との支持間隔Lは、工具71から受ける押圧力F、薄板ワークWの板厚t、および加工許容値γなどの条件から算出される。この算出された支持間隔Lに基づいて、幅方向変更部17によって、第1シリンダロッド5の第1ロッド11と第2シリンダロッド6の第2ロッド14との間隔が調整される。
【0061】
本実施形態では、第2シリンダロッド6は、図4に示されるように、薄板ワークWの幅方向Yに関する外形寸法(すなわち、幅Y2)について、第1シリンダロッド5よりも小さい幅Y1を有するから、当該幅方向Yについて、第1シリンダロッド5よりも占有面積が小さくなる。それによって、薄板ワークWの支持間隔を小さくできるようにしている。
【0062】
隣接する第1シリンダロッド5と第2シリンダロッド6との間の間隔Lは、薄板ワークWの寸法形状や加工条件などによって適宜変更して設定されるが、例えば、約127mm(5インチ)程度、第1シリンダロッド5同士の間隔は、その倍の約254mm(10インチ)程度に設定される。
【0063】
薄板ワークWをワーク下方固定部3の上に載せる場合、以下の手順で行われる。
【0064】
(i) まず、図3に示されるように、第2シリンダロッド6の第2ロッド14の先端14aを、隣接する第1シリンダロッド5の吸着パッド13の先端よりも上の位置(図3の二点鎖線の位置)に位置決めする(第2ロッド位置決め工程)。
【0065】
なお、この第2ロッド位置決め工程では、全部の第2ロッド14の先端14aを吸着パッド13の先端よりも上方の位置に位置決めしてもよいし、4〜8本程度の一部の第2ロッド14の先端14aのみを上方の位置に位置決めしてよい。
【0066】
(ii) ついで、第2ロッド14の先端14aの上に、薄板ワークWを載せる(搭載工程)。この工程では、薄板ワークWをクレーンなどを用いて複数の第2ロッド14の先端14aの上に降ろしたとき、そのときに生じる薄板ワークWからの衝撃荷重を第2ロッド14のみで受けることができる。
【0067】
(iii) ついで、第2高さ調整部15によって第2ロッド14を下降させる(下降工程)。
【0068】
(iv) その後、吸着パッド13に吸着させる(吸着工程)。
【0069】
以上の手順では、薄板ワークWをワーク下方固定部3へ搭載するときの落下の衝撃を、吸着パッドを有しない第2ロッド14のみで受けて、第1シリンダロッド5の吸着パッド13へ衝撃が伝達することを防ぐことができる。その結果、吸着パッド13における薄板パッドWの吸着位置がずれたり、吸着パッド13が劣化損傷するなどの不具合の発生を低減することができる。
【0070】
ワーク縁把持機構4は、図2に示されるように、薄板ワークWの互いに対向する外周の四辺の縁Eをそれぞれ把持し、薄板ワークWへ圧縮荷重を与える。本実施形態では、4基のワーク縁把持機構4は、加工装置1の台座1aの上に、ワーク下方固定部3を取り囲むように四角形に配置されている。
【0071】
各々のワーク縁把持機構4は、大別すれば、図5に示されるように、支持台40と、複数の把持アセンブリ43とから構成されている。各把持アセンブリ43は、薄板ワークWと支持台40との間に介在する。支持台40は、薄板ワークWの縁Eの四辺のいずれかの辺に沿って、配置されている。複数の把持アセンブリ43は、1個の支持台40の薄板ワークWに対向する辺に沿って並べて配置されている。すなわち、複数のワーク縁把持機構4のそれぞれの把持アセンブリ43は、薄板ワークWの対向する縁Eを把持できるように配置されている。
【0072】
把持アセンブリ43は、図5に示されるように、大別すれば、薄板ワークWの縁Eを把持する把持部分30と、当該把持部分を支持する支持部分31とから構成されている。把持部分30は、クランプ41と、ワーク取付ネジ48とから構成される。また、支持部分31は、受け部42、支持アーム44、45、ボールジョイント46、47から構成される。また、支持部分31は、把持部分30へ圧縮荷重を与えるプリロード部7を備えている。
【0073】
まず、把持部分30の各構成要素を説明する。
【0074】
クランプ41は、図5〜6に示されるように、薄板ワークWを挟んで保持する。クランプ41は、前方に開いたスリット41aが形成されている。このスリット41aに薄板ワークWから挿入される。また、クランプ41の上面には、スリット41aへ連通するネジ孔41bが形成されている。
【0075】
ネジ孔41bに螺入されるワーク取付ネジ48の先端面48aは、薄板ワークWの上面に当接できるように平面または球面によって形成されている。また、スリット41aの内側の下面41cは、薄板ワークWの下面に当接できるように平面によって形成されている。ネジ孔41bにワーク取付ネジ48を螺入することにより、ワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの間隔を縮めてこれらの先端面48aと下面41cとの間に薄板ワークWを挟持することにより、薄板ワークWがスリット41の内部に保持される。また、ワーク取付ネジ48を緩める方向へ回転させれば、ワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの間隔を広げることができ、薄板ワークWの挟持を解除することができる。ここで、上記の先端面48aは、本願発明の上面当接部の概念に含まれるものであり、下面41cは、本願発明の下面当接部の概念に含まれるものである。また、本実施形態では、これらの上面当接部(先端面48a)と下面当接部(41c)との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部は、ワーク取付ネジ48およびネジ孔41bによって構成される。
【0076】
つぎに、支持部分31の各構成要素を説明する。
【0077】
受け部42は、プリロード部7を介してクランプ41を支持する。
【0078】
一対の支持アーム44、45は、その先端にボールジョイント部44a、45aを有している。ボールジョイント部44a、45aには、受け部42が3軸方向に揺動自在に連結されている。ボールジョイント部44a、45aは、把持部分30の少なくとも上下方向、本実施形態では上下方向および水平方向の向きを変えることができるように支持するものであり、本発明の方向変更許容部分として機能する。
【0079】
また、図5に示されるボールジョイント46、47は、支持台40に高さ方向Zに沿って並んで取り付けられている。支持アーム44、45は、これらのボールジョイント46、47を介して、支持台40に3軸方向へ揺動自在に取り付けられている。これらの支持アーム44、45およびボールジョイント46、47は、把持部分30の少なくとも上下方向の位置(高さ)、本実施形態では高さおよび水平方向に関する三次元的な位置を変えることができるように支持するものであり、本発明の位置変更許容部分として機能する。
【0080】
プリロード部7は、固定側である支持部分31の受け部42に設けられ、可動側である把持部分30(具体的には、クランプ41)へ圧縮荷重を与える。
【0081】
本実施形態のプリロード部7は、具体的には、図5〜6に示されるように、薄板ワークWの縁Eにかかる圧縮荷重の大きさを手動で調整することができる機構である。すなわち、図6に示されるプリロード部7は、ボルト51と、バネ52と、内側ナット53と、クランプ側フランジ54と、受け部側フランジ55と、外側ナット56とから構成され、クランプ41の両側にそれぞれ一対ずつ備えている。
【0082】
ボルト51は、クランプ41と受け部42との間に配置され、クランプ41を薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて移動可能に案内する。ボルト51は、本発明の案内部の概念に含まれるのである。
【0083】
バネ52は、このクランプ41に圧縮荷重(プリロード)を与えるものであり、本発明の加圧手段の概念に含まれるのである。
【0084】
クランプ側フランジ54は、クランプ41の両側面から左右に突出して設けられている。クランプ側フランジ54には、貫通孔54aが形成されている。
【0085】
受け部側フランジ55は、受け部42の両側面から左右に突出して設けられている。受け部側フランジ55には、ネジ孔55aが当該受け部側フランジ55を貫通して形成されている。
【0086】
ボルト51は、クランプ側フランジ54の貫通孔54aに挿入され、受け部側フランジ55のネジ孔55aに螺入されている。ボルト51は、六角形の頭部を有しない直線棒状の形状をしており、外周面におねじが形成されている。
【0087】
バネ52は、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間において、ボルト51が当該バネ52の内部に挿通されるように配置されている。
【0088】
内側ナット53は、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間においてボルト51に結合され、バネ52と隣接して配置されている。
【0089】
外側ナット54は、クランプ側フランジ54に対して受け部側フランジ55と反対側においてボルト51に結合されている。
【0090】
つぎに、ワーク縁把持機構4を用いて薄板ワークWの縁Eを固定する手順について説明する。
【0091】
まず、上記のワーク縁把持機構4により、上記のワーク下方固定部3の上に固定された状態の薄板ワークWの縁Eが把持される。
【0092】
具体的には、図5に示されるように、クランプ41を薄板ワークWの縁Eの位置まで移動させ、ついで、クランプ41のスリット41aに薄板ワークWを挿入し、その後、ワーク取付ネジ48を締め付けることにより、薄板ワークWとクランプ41とが連結される。この作業が、薄板ワークWの外周の四方の縁Eを囲むクランプ41すべてについて行われる。
【0093】
このとき、クランプ41は、一対の支持アーム44、45およびボールジョイント46、47を介して、静止状態で所定の位置および角度で支持台40に支持される。
【0094】
ついで、それぞれのクランプ41について、ワーク縁把持機構4に備えられたプリロード部7によって、薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向(より好ましくは、薄板ワークWの接線方向)へプリロードをかける。具体的には、まず、外側ナット56の締め具合を調整して、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間隔を調整する。ついで、内側ナット53を回転させてクランプ側フランジ54と内側ナット53との距離を変更することにより、バネ52の縮み具合を調整する。これにより、バネ52の縮み具合を変更して、クランプ41に作用する圧縮荷重、すなわちプリロードを調整することができる。
【0095】
薄板ワークWの縁Eにプリロードをかける場合、図3に示されるように、薄板ワークWの対向する2つの縁Eにおいて、両側の縁Eから同程度の大きさの圧縮荷重をかけるようにする。
【0096】
このように、プリロード部7から薄板ワークWの縁Eへ薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて付与される圧縮荷重(プリロード)が、薄板ワークWを吸着パッド13へ向かって下方へ突出するように強制的に撓ませる。これにより、薄板ワークWと吸着パッド13との密着性を高めることができ、吸着パッド13による薄板ワークWの支持剛性を向上することができる。
【0097】
(薄板ワークの加工方法)
つぎに上記の実施形態の固定装置2を用いた薄板ワークWの加工方法について説明する。
【0098】
まず図2〜3に示されるように、薄板ワークWを所定の高さに配置された吸着パッド13の上に載置する(ワーク載置工程)。このとき、吸着パッド13は、薄板ワークWの図面データにおける3次元形状に対応する高さ位置に調整されている。
【0099】
ついで、上記のように、薄板ワークWの周囲の縁Eをワーク縁把持機構4のクランプ41およびワーク取付ネジ48により把持する(把持工程)。
【0100】
ついで、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)を与え、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませる(プリロード付与工程)。
【0101】
ついで、薄板ワークWの下面を第1シリンダロッド5の吸着パッド13に吸着する(吸着工程)。
【0102】
その後、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに第1シリンダロッド5の吸着パッド13によって薄板ワークWの下面が吸着保持された状態を維持しながら、薄板ワークWを肉抜きポケット加工などの加工を行う(加工工程)。
【0103】
上記のような本実施形態の薄板ワークの加工方法では、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの縁Eを把持するとともに、薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを吸着パッド13が安定して保持することを可能にする。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0104】
(データ補正方法)
図2示されるように、本実施形態の固定装置2では、吸着パッド13を有する第1シリンダロッド5および吸着パッドを有さない第2シリンダロッド6が密集した形態からなるワーク下方固定部3によって、薄板ワークWの下方から支持するとともに、薄板ワークWの四方の縁Eをワーク把持部4によって強固に把持しているので、薄板ワークWを高い剛性で所定の位置に固定することができる。
【0105】
しかし、薄板ワークWは変形しやすいので、図面データ通りの形状に固定することが困難である。例えば、図10に示されるように、図面データに基づいて作成されたNC加工データ上の薄板ワークの配置位置W0と、実際の薄板ワークの配置位置W1とがずれるおそれがある。
【0106】
そこで、本発明者らは、本実施形態の固定装置2によって固定された薄板ワークWの形状を計測によって把握して、NC加工データを補正する方法、およびその補正されたNC加工データに基づく薄板ワークWの加工方法を考案している。
【0107】
すなわち、本実施形態における薄板ワークWの加工方法では、変形や伸縮を生じるおそれがある薄板ワークWを固定装置2に固定された状態で実際に計測を行うことによって、薄板ワークWの形状の変化状況を把握し、その計測結果に基づいてNC加工データを補正する。その後、その補正されたNC加工データを用いて、薄板ワークWの肉抜き加工またはポケット穴加工などの加工を行う。
【0108】
また、この加工方法では、位置ズレや伸縮する薄板ワークWを固定装置2に固定された状態で計測して、補正式の算出と状況に応じた加工部位の補正方法により、薄板ワークWの加工を行う。
【0109】
つぎに、NC加工データを補正するための補正式を算出するための計測について説明する。
【0110】
1.補正式を算出するための計測
1) まず、薄板ワークWを上述の固定装置2によって固定した後、NC加工データで定めた基準位置に対する薄板ワークWの位置ズレを計測する。
【0111】
具体的には、図11に示されるように、NC加工データで定めた薄板ワークの配置位置W0に関する基準点P01〜P04に対応する実際の薄板ワークの配置位置W1の表面の基準点P11〜P14を測定プローブで測定し、位置ずれ量を算出する。
【0112】
測定プローブは、図1に示される加工装置1の工具移動部72の工具主軸72eに取り付けられた工具71と交換することによって工具移動部72に取り付けられる。工具移動部72に取り付けられたプローブを5軸方向(長手方向X、幅方向Y、高さ方向Z、および2つの回転方向α、β)に移動させることによって、薄板ワークWの位置ずれ量の測定を行う。
【0113】
位置ずれ量の測定後、薄板ワークWの形状や加工許容誤差を考慮して、下記の処理を選択して、補正式を作成する。
【0114】
2) 図11に示されるように、実際の薄板ワークの配置位置W1の基準点P11〜P14を測定プローブによる計測により、芯出しおよびローテーションを行う。
【0115】
3) 図12に示されるように、実際の薄板ワークが配置された範囲(配置位置W1)の中に、図面データで定めた薄板ワークの配置位置W0内に定められた肉抜き加工を行う予定の範囲である加工範囲W2がすべて含まれるか否かを照合する。なお、ここでは、加工範囲W2がすべて含まれるか否かの判定のみを行い、データ補正の処理はしない。例えば、図12の状態では、実際の薄板ワークの範囲(配置位置W1)から、加工範囲W2の一部がはみ出しているので、加工範囲Wがすべて含まれていないとの判定がなされる。
【0116】
4)また、上記1)〜3)の処理とは別に、実際の薄板ワークWを全体的にレーザースキャンにより計測した結果により、スケーリング係数を求める。スケーリング係数は、設計時の図面データにおける設計寸法に対する実際の薄板ワークWをレーザースキャンにより計測した実寸法の比である。
【0117】
上記の処理1)〜4)の結果より、下記の組み合わせで補正式の算出をする。
【0118】
すなわち、上記の手順1)+2)+3)+4)、1)+3)+4)、または2)+3)+4)のいずれかの組合せによって、補正式が算出される。
【0119】
上記で得られた補正式は、薄板ワークW全体への補正式として使用される。具体的には、上記の方法で求められた補正式は、(位置ずれ量)または(芯出し・ローテーション)の少なくともいずれか1つのパラメータと、スケーリング係数とを含む複合的な座標変換マトリックスの形となる。
【0120】
2.加工部位の補正
つぎに、薄板ワークWの肉抜き加工またはポケット穴加工などの加工による部位、すなわち加工部位におけるNC加工データの補正は、下記のいずれかの方法11)、12)のいずれかを選択して補正することができる。
【0121】
11)上記のように求められた補正式によって、NC加工の指令点ごとに補正する方法。すなわち、指令点ごとに独立して補正をする方法であり、指令点の前後関係(例えば、開始点と終了点との関係など)は考慮しない。
【0122】
12)上記のように求められた補正式によって、加工部位単位で補正する方法。すなわち、加工部位の形状(例えば、直方体状のポケット形状などの形状)は変更しない方法である。
【0123】
上記11)、12)いずれの場合も、「補正許容量」を設定することができる。
【0124】
なお、上記12)の加工部位単位での補正方法の場合には、さらに補正条件として、「最低残存厚み」を設定できる。例えば、図13に示される薄板ワークW内の本来の加工位置H0(肉抜きされて直方体形状のポケットが形成される部分)を示す基準値に対し、図13のように補正により、本来の加工位置H0から補正後の加工位置H1へシフトする場合がある、この場合、補正後の加工位置H1の下端のコーナー部分Cでは、薄板ワークWの肉抜き加工をすれば肉厚が薄くなり、薄板ワークWの設計強度を満足できなくなるおそれがある。
【0125】
そこで、図15に示されるように、加工部位H1を上方へシフトさせる補正をすることにより、設計強度を満たす最低残存厚みθを確保することができる。
【0126】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の固定装置2では、まず、第1高さ調整部12を用いて各第1ロッド11の高さが調整されることにより、各吸着パッド13の高さ位置が薄板ワークWの図面データにおける3次元形状に対応する位置に調整される。その状態で、薄板ワークWは、それぞれの吸着パッド13の上に載せられる。そして、ワーク縁把持機構4によって薄板ワーク4の対向する縁Eを把持することにより、薄板ワークWの対向する縁Eが固定される。
【0127】
このように薄板ワークWが固定された状態で、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって、薄板ワークWの縁から当該薄板ワークWの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)が与えられる。これにより、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませて、薄板ワークWと第1シリンダロッド5の吸着パッド13との間の密着性を高めることができる。
【0128】
すなわち、ワーク縁把持機構4によって、薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、薄板ワークWにプリロードを与えて当該薄板ワークWを第2シリンダロッド6の第2ロッド14の先端14aにあらかじめ当接させておくことにより、加工時に工具71から押付力を受けたときの薄板ワークWの変形を小さくすることができる。
【0130】
(2)
また、本実施形態では、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの縁Eを把持する把持部分30(クランプ41およびワーク取付ネジ48からなる部分)と当該把持部分30を支持する支持部分31(受け部42、支持アーム44、45、およびボールジョイント46、47)とを備えている場合において、支持部分31がプリロード部7を備えているので、このプリロード部7によって、支持部分31から把持部分30へ圧縮荷重を付与することが可能になる。このように把持部分30にだけ部分的に圧縮荷重が付与される構成であるので、把持部分30および当該把持部分30に把持された薄板ワークWの縁Eへ効率よく圧縮荷重を付与することができる。
【0131】
(3)
また、本実施形態では、プリロード部7は、案内部である一対のボルト51と加圧手段である一対のバネ52を備えている。このボルト51は、クランプ41と受け部42との間に配置され、クランプ41を当該クランプ41が把持する薄板ワークWの対向する縁Eに対して当該薄板ワークWの中央側へ移動可能となるように案内する。そして、バネ52は、クランプ41に圧縮荷重(プリロード)を与える。これにより、薄板ワークWの縁Eを一対のボルト51によって当該薄板ワークWの中央側へ向けて安定かつ確実に案内しながらプリロードを付与することができる。
【0132】
(4)
また、本実施形態では、ワーク縁把持機構4において、支持部分31の変位許容部分である支持アーム44、45およびボールジョイント46、47によって、把持部分30の位置を変化させて薄板ワークWの縁Eの付近まで移動させ、その後、方向変更許容部分であるボールジョイント部44a、45aによって、薄板ワークWの縁Eを上下両面から把持できる向きへ把持部分30のクランプ41の向きを変えることができる。これにより、薄板ワークWの縁Eの位置や縁E付近の反り具合に合わせて、把持部分30の位置や向きを変えることができ、薄板ワークWを安定かつ確実に把持することができる。
【0133】
(5)
また、本実施形態のワーク縁把持機構4は、図6に示されるように、薄板ワークWの上面に当接可能な形状を有する上面当接部であるワーク取付ネジ48の先端面48aと、薄板ワークWの下面に当接可能な形状を有する下面当接部であるスリット41aの内側の下面41cと、これら先端面48aと下面41cとの間を距離を変更できるように連結するワーク取付ネジ48およびネジ孔41bによって構成される連結部とを有しており、ワーク取付ネジ48をネジ孔41b内で締めたり緩めたりすることによってワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの距離を変更することができる。これらの先端面48aと下面41cとの間の距離を縮めることにより、薄板ワークWの上面および下面の両方から力を加えて挟持することができ、薄板ワークWを安定して把持することができる。
【0134】
(6)
また、本実施形態のように、薄板ワークWの縁Eが大きく反って台座1aに対して傾斜した3次元形状であっても、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁の中央側へ向いて薄板ワークWに縁Eを把持することにより、その薄板ワークWを加工するときに生じる薄板ワークWの縁Eの振動を抑えることができる。その結果、薄板ワークWが吸着パッド13から外れるおそれがなく、より精度良く加工することができる。
【0135】
(7)
また、本実施形態では、ワーク吸着機構である第1シリンダロッド5が並設され、隣接するこれらの第1シリンダの間には、薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークWを支持するワーク支持機構として第2シリンダロッド6が配置されており、しかも、第2シリンダロッド6は、薄板ワークWの幅方向に関する外形寸法(すなわち、幅Y2)について、第1シリンダロッド5の幅Y1よりも小さくなっており、第1シリンダロッド5よりも占有面積が小さくなっている。そのため、薄板ワークWの支持点間隔を短くした状態で、薄板ワークWを支持することができ、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークWを加工するときに工具71を押し当てても、薄板ワークWのたわみを小さくすることができ、薄板ワークWを精度良く加工することができる。
【0136】
(8)
本実施形態の加工装置1は、上記本実施形態の固定装置2を備えており、ワーク縁把持機構4によって薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを第1シリンダロッド5の吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークWの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【0137】
(9)
本実施形態の薄板ワークの加工方法では、ワーク縁把持機構4によって薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを第1シリンダロッド5の吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0138】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、ワーク縁把持機構4に備えられたプリロード部7として、ボルト51とナット55を手動で締めたり、緩めたりしてバネ52の弾性力を調整することにより、薄板ワークWにかけられるプリロードを手動で調整できるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリロードを自動で調整できるようにしてもよい。例えば、他の態様のプリロード部として、エアシリンダやリニアモータなどを用いてクランプ41に圧縮荷重を加えることにより、薄板ワークWにプリロードを自動的に加えることができる。
【0139】
(B)
また、上記の実施形態では、薄板ワークWの下面を吸着保持するワーク吸着機構の一例として、第1ロッド11、第1高さ調整部12および吸着パッド13を備えた第1シリンダロッド5を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、薄板ワークWの下面を吸着保持できる機構であれば、種々の態様のワーク吸着機構を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 加工装置
2 固定装置
3 ワーク下方固定部
4 ワーク縁把持機構
5 第1シリンダロッド(ワーク吸着機構)
6 第2シリンダロッド(ワーク支持機構)
7 プリロード部
8 間隔変更機構
11 第1ロッド
12 第1高さ調整部
13 吸着パッド
14 第2ロッド
15 第2高さ調整部
16 着座部
44、45 支持アーム(位置変更許容部分)
46、47 ボールジョイント(位置変更許容部分)
44a、45a ボールジョイント部(方向変更許容部分)
51 ボルト(案内部)
52 バネ(加圧手段)
71 工具
72 工具移動部
W 薄板ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板ワークの表面加工時において、当該薄板ワークの形状を保持しながら薄板ワークを所定の位置に固定する固定装置、および当該固定装置を用いた薄板ワークの加工装置ならびに加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機の機体などに用いられる薄板ワークは、金属製薄板がストレッチフォーミングなどによってあらかじめ所定の3次元形状に成形された加工対象物である。薄板ワークは、軽量化の目的のために、その少なくとも上側の面に肉抜き加工などの表面加工が施される。このような薄板ワークは、3次元形状を有しており、しかも変形しやすいので、薄板ワークの表面加工を行う際には、薄板ワークの形状を保つように当該薄板ワークが所定の位置に保持され、固定される必要がある。
【0003】
そこで、従来、薄板ワークの表面加工を行う加工装置には、特許文献1記載のように、真空吸着を利用して、薄板ワークを下方から支持しながら固定する複数のシリンダロッドを備えたものがある。この構造では、例えば、図16に概略的に示されるように、複数のシリンダロッド110が互いに間隔をあけて薄板ワークW1の長手方向および幅方向に沿ってそれぞれ立設されている。それぞれのシリンダロッド110は、高さを調整することが可能なロッド111と、そのロッド111の先端にそれぞれ取り付けられた吸着パッド113とを備えている。吸着パッド113は、薄板ワークW1を真空引きによって吸着することができる。
【0004】
これらのシリンダロッド110を用いて薄板ワークW1を所定の位置に固定する場合、まず、薄板ワークW1の図面データ(すなわち、設計時の薄板ワークの3次元形状に関するデータ)に基づいて、各ジャッキを用いて各ロッド111の高さが調整されることにより、各吸着パッド113の高さ位置が前記3次元形状に対応する位置に調整される。ついで、各吸着パッド113の上に薄板ワークW1が載せられ、吸着パッドにより真空吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5163793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような薄板ワークW1は、ストレッチフォーミング成形法などによって製作されるので、図16に示されるように、設計時の図面データにおける形状W0と実際の薄板ワークW1の形状との間に形状的な誤差が生じることがある。このため、図面データに基づいて、個々のシリンダロッド111の吸着パッド113の高さを調整しても、薄板ワークW1と吸着パッド113との間に隙間が生じてしまい、薄板ワークW1を吸着パッド113に真空吸着によって強固に固定することができないおそれがある。
【0007】
また、吸着パッドにおける真空吸着によって薄板ワークWの把持だけでは、薄板ワークW1の縁が自由端となり、切削などの表面加工をする際の振動により、吸着パッド113から薄板ワークW1が外れるなど支持剛性が弱く、薄板ワークW1を精度良く表面加工することが難しい問題もある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、薄板ワークの支持剛性を向上させて精度良く表面加工することができる薄板ワークの固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の薄板ワークの固定装置は、互いに対向する縁を有する薄板ワークをこれらの縁が水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置であって、前記薄板ワークの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構と、前記薄板ワークの各縁をそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構とを備えており、前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるように、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えることを特徴としている。
【0010】
本発明の固定装置は、変形しやすい薄板ワークをその形状を保持しながら安定して固定するために、薄板ワークの対向する縁から圧縮荷重(プリロード)を付与して薄板ワークとワーク吸着機構との間の密着性を高めたものである。
【0011】
この構成によれば、まず、薄板ワークは、薄板ワークの下面を吸着保持可能な複数のワーク吸着機構の上に載せられ、さらに、ワーク縁把持機構によって薄板ワークの対向する縁を把持することにより、薄板ワークの対向する縁が固定される。このように薄板ワークが固定された状態で、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁から当該薄板ワークの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)が与えられる。これにより、薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませて、薄板ワークとワーク吸着機構との間の密着性を高めることができる。
【0012】
すなわち、ワーク縁把持機構によって薄板ワークの縁を把持するとともに、薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。
【0013】
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの縁を把持する把持部分と、当該把持部分を支持する支持部分とを備えており、当該支持部分は、前記把持部分へ前記圧縮荷重を与えるプリロード部を備えているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ワーク縁把持機構が薄板ワークの縁を把持する把持部分と当該把持部分を支持する支持部分とを備えている場合において、支持部分がプリロード部を備えているので、このプリロード部よって、支持部分から把持部分へ圧縮荷重を付与することが可能になる。このように把持部分にだけ部分的に圧縮荷重が付与される構成であるので、把持部分および当該把持部分に把持された薄板ワークの縁へ効率よく圧縮荷重を付与することができる。
【0015】
前記プリロード部は、前記把持部分を、当該把持部分が把持する前記薄板ワークの対向する縁に対して当該薄板ワークの中央側へ移動可能となるように案内する案内部と、前記把持部分に前記圧縮荷重を与える加圧手段とを備えているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、プリロード部が案内部と加圧手段を備えており、案内部によって、把持部分を薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて移動可能に案内し、加圧手段によって、把持部分に圧縮荷重を与えることが可能である。これにより、薄板ワークの縁を案内部によって当該薄板ワークの中央側へ向けて安定かつ確実に案内しながら圧縮荷重を付与することができる。
【0017】
また、前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への変位を許容するように支持する変位許容部分を備えているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ワーク縁把持機構において、まず、支持部分の変位許容部分によって、把持部分の位置を変化させて薄板ワークの縁の付近まで移動させることにより、薄板ワークの縁の位置に合わせて、把持部分の位置を変えることができ、薄板ワークを安定かつ確実に把持することができる。
【0019】
また、前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への向きの変更を許容する方向変更許容部分を備えているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ワーク縁把持機構において、方向変更許容部分によって、薄板ワークの縁を上下両面から把持できる向きへ把持部分の向きを変えることができる。これにより、薄板ワークの縁付近の反り具合に合わせて、把持部分の向きを変えることができ、薄板ワークを安定かつ確実に把持することができる。
【0021】
前記把持部分は、前記薄板ワークの上面に当接可能な形状を有する上面当接部と、当該上面当接部に対向して配置され、前記薄板ワークの下面に当接可能な形状を有する下面当接部と、前記上面当接部と前記下面当接部との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部とを有しているのが好ましい。
【0022】
この構成によれば、把持部分における上面当接部と下面当接部との間の距離を、当該上面当接部と下面当接部との間を連結する連結部によって縮めることにより、薄板ワークの上面および下面の両方から力を加えて挟持することができ、薄板ワークを上下両面から安定して把持することができる。
【0023】
前記薄板ワークは、その縁が前記ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状をしており、前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて当該薄板ワークの縁を把持するのが好ましい。
【0024】
この構成によれば、薄板ワークの縁が、ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状である場合には、ワーク吸着機構が薄板ワークの縁を吸着しにくい場合があり、そのような場合、薄板ワークの縁の全周部分または周辺部の大部分がワーク吸着機構で拘束されないいわば自由端となるが、このような場合に、ワーク縁把持機構が前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて薄板ワークの縁を把持することにより、縁が大きく反った3次元形状の薄板ワークであっても、その薄板ワークを加工するときに生じる薄板ワークの縁の振動を抑えることができる。その結果、薄板ワークがワーク縁把持機構から外れるおそれがなく、より精度良く加工することができる。
【0025】
前記薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設された複数のワーク支持機構をさらに備えており、少なくとも2つの前記ワーク吸着機構は、前記薄板ワークの特定方向に沿って並び、かつ、隣接する当該ワーク吸着機構の間には、少なくとも1つの前記ワーク支持機構が配置されており、前記ワーク支持機構は、前記特定方向に関する外形寸法について、前記ワーク吸着機構よりも小さいのが好ましい。
【0026】
この構成では、隣接するワーク吸着機構の間には、薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するワーク支持機構が配置されており、しかも、ワーク支持機構は、特定方向に関する外形寸法について、ワーク吸着機構よりも小さくなっており、ワーク吸着機構よりも占有面積が小さくなる。そのため、薄板ワークの支持点間隔を短くした状態で、薄板ワークを支持することができ、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークを加工するときに工具を押し当てても、薄板ワークのたわみを小さくすることができ、薄板ワークを精度良く加工することができる。
【0027】
本発明の薄板ワークの加工装置は、前記固定装置と、当該固定装置によって所定の位置に固定された前記薄板ワークの表面加工を行う工具と、前記工具を前記薄板ワーク上で移動させる工具移動部とを備えていることを特徴としている。
【0028】
かかる構成によれば、本発明の固定装置を備えており、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【0029】
本発明の薄板ワークの加工方法は、前記固定装置を用いて、当該薄板ワークを所定の位置に固定した状態で加工する薄板ワークの加工方法であって、前記薄板ワークを所定の高さに配置された前記ワーク吸着機構の上に載置する、ワーク載置工程と、前記ワーク縁把持機構によって、前記薄板ワークの対向する縁を把持するとともに、当該薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えて前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるプリロード付与工程と、前記薄板ワークの下面を前記ワーク吸着機構によって吸着保持する吸着工程と、前記ワーク縁把持機構によって当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに前記ワーク吸着機構によって当該薄板ワークの下面が吸着保持された状態を維持しながら、前記薄板ワークを加工する加工工程とを含むことを特徴とする。
【0030】
この特徴によれば、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ワーク縁把持機構によって、薄板ワークの縁を把持するとともに薄板ワークの対向する両側の縁に当該薄板ワークの中央側へ向かう方向へ圧縮荷重(プリロード)を与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークをワーク吸着機構の上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークとワーク吸着機構との隙間をなくして、薄板ワークの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の薄板ワークの固定装置を備えた加工装置の一実施形態に係わる全体斜視図である。
【図2】図1の固定装置の斜視図である。
【図3】図2の固定装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1の固定装置において、薄板ワークの加工許容値とたわみ量により、支持点間隔を算出し、第1および第2シリンダロッドの位置決め行うことを説明するための説明図である。
【図5】図1のワーク縁把持機構の拡大正面図である。
【図6】図5のプリロード部およびその周辺のクランプおよび受け部の拡大斜視図である。
【図7】図1の吸着パッド内部の球状の着座部およびその周辺部を示す拡大断面図である。
【図8】図2の第1高さ調整部の断面図である。
【図9】図2の第2高さ調整部の断面図である。
【図10】薄板ワークの加工方法におけるNC加工データと実際の薄板ワークの位置とのずれを示す図である。
【図11】薄板ワークの加工方法における図面データ上の基準点と実際の薄板ワークの基準点との位置のずれを示す図である。
【図12】薄板ワークの加工方法におけるNC加工データ上の薄板ワークの加工範囲図面上の基準点と実際のワークの基準点との位置のずれを示す図である。
【図13】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工におけるNC加工データ上の本来の加工位置を示す図である。
【図14】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工における補正後の加工位置を示す図である。
【図15】薄板ワークの加工方法におけるポケット穴加工における補正後の加工位置を上昇させる補正をして、最低残存厚みを確保する補正をした図である。
【図16】薄板ワークを従来の加工装置の吸着パッド上に載せたときに、一部の吸着パッドとの間に隙間が生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
つぎに図面を参照しながら本発明の薄板ワークの固定装置およびそれを用いた薄板ワークの加工装置ならびに加工方法についてさらに詳細に説明する。
【0034】
本実施形態の固定装置2は、互いに対向する縁Eを有する変形容易な薄板ワークWを所定の位置に固定する装置であり、これらの縁Eが水平方向に並ぶ状態で当該薄板ワークWの形状を保持しながら安定して所定の位置に固定するために、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構を備える。具体的には、複数の第1シリンダロッド5を備え、各第1シリンダロッド5は吸着パッド13を備える。そして、薄板ワークWが吸着パッド13の上に載せられた状態で、薄板ワークWの対向する縁Eから圧縮荷重(プリロード)が付与され、これにより薄板ワークWと当該吸着パッド13との間の密着性が高められる。(図2〜3参照)。
【0035】
そして、本実施形態の加工装置1は、このような固定装置を装備しており、薄板ワークWの加工時における薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができ、精度良く加工することができる装置である。
【0036】
以下、加工装置1および固定装置2についてそれぞれ順に説明する。
【0037】
(加工装置の全体構成)
図1に示される薄板ワークWの加工装置1は、飛行機の機体などに用いられる金属薄板からなる複雑な3次元形状を有する薄板ワークWの表面加工を行う装置である。本実施形態の加工装置1は、例えば、軽量化のために薄板ワークWの表面を部分的に切削除去して多数の凹部を形成する肉抜き加工あるいはポケット穴加工を行う。
【0038】
この加工装置1は、固定装置2と、工具71と、工具移動部72とを備えている。
【0039】
固定装置2は、薄板ワークWを、工具71の移動可能な範囲内にある所定の位置に固定する。固定装置2の構成については、後段で詳述する。
【0040】
工具71は、5軸加工を行うためのフライス等の切削用工具である。本実施形態の工具71は、薄板ワークWの表面をえぐって多数の凹部(ポケット)を形成して肉抜きする、いわゆる肉抜き加工あるいはポケット穴加工を行うために用いられる。これらの加工は、薄板ワークWの軽量化に寄与する。
【0041】
工具移動部72は、図1に示されるように、工具71を薄板ワークWの上で5軸方向へ移動させる。すなわち、工具移動部72は、工具71を薄板ワークWの長手方向Xへ移動させる長手方向移動部72aと、工具71を薄板ワークWの幅方向Yへ移動させる幅方向移動部72bと、工具71を薄板ワークWの高さ方向(すなわち、厚さ方向)Zへ移動させる高さ方向移動部72cと、工具71を薄板ワークWの上で2つの回転方向α、βへ回転移動させる回転移動部72dとを備えている。2つの回転方向α、βは、互いの回転軸が直交する関係にある。
【0042】
ここで、回転移動部72dは、2つの回転方向α、βへ工具71を旋回させる。本実施形態では、回転方向αは、薄板ワークWの幅方向へ沿うように、長手方向X回りに回転する方向であり、一方、回転方向βは、薄板ワークWの長手方向へ沿うように、幅方向Y回りに回転する方向である。
【0043】
工具71は、回転移動部72dに設けられた工具主軸72eに着脱自在に取り付けられる。
【0044】
(固定装置2の全体構成)
固定装置2は、図1〜3に示されるように、大別すれば、薄板ワークWを下方から固定するワーク下方固定部3と、薄板ワークWの外周の四方の縁を把持するワーク縁把持機構4とから構成されている。
【0045】
ワーク下方固定部3は、複数の第1シリンダロッド5と、複数の第2シリンダロッド6と、間隔変更機構8とを備えている。第1シリンダロッド5は、本発明のワーク吸着機構の一例であり、薄板ワークWの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設されている。また、第2シリンダロッド6は、本発明のワーク支持機構の一例であり、薄板ワークWの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設されている。
【0046】
第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、水平な基準面である加工装置1の台座1a上で互いに異なる複数の特定方向に並ぶように、互いに間隔をあけて薄板ワークWの長手方向Xおよび幅方向Yに沿ってそれぞれ立設されている。第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、水平な基準面である加工装置1の台座1aに対して垂直に立てられた状態で、間隔変更機構8を介してそれぞれ配置されている。第1シリンダロッド5の間には、第2シリンダロッド6が1本ずつ配置されている。なお、第2シリンダロッド6が2本以上配置されていてもよい。また、「複数の特定方向」は、薄板ワークWの長手方向Xおよび幅方向Yとは異なる方向であってもよい。
【0047】
第1シリンダロッド5は、図3に示されるように、第1ロッド11と、当該第1ロッド11の高さを変更する第1高さ調整部12と、第1ロッド11の先端に設けられ、薄板ワークWを吸着する吸着パッド13とを有している。
【0048】
第1ロッド11は、上下方向に延びる棒状の部材であり、その内部には空気が通る通路11a(図7〜8参照)が第1ロッド11が延びる方向に形成されている。第1ロッド11は、その先端に吸着パッド13を支持することができ、しかも、真空引きのために通路11aの内部を真空状態に確保することができる十分な剛性を有しており、スチールなどの強度の高い金属材料で製造される。
【0049】
第1高さ調整部12は、第1ロッド11を上下に移動させる機構であり、図8に示されるように、例えば、駆動用の電動モータ12aと、その電動モータ12aの回転駆動力を上下方向に向かう直線駆動力に変換して当該直線駆動力を第1ロッド11に伝達する動力伝達部12bと、第1ロッド11を上下方向に移動自在に支持する支持部12cとを備えている。電動モータ12a、動力伝達部12bおよび支持部12cは、ケーシング12dに収容されている。なお、本実施形態では、動力伝達部12bの一例として、ボールネジ機構が図示されているが、他の動力伝達機構を採用してもよい。
【0050】
吸着パッド13は、図7に示されるように、例えば、蛇腹状の筒体からなり、柔軟性を有するゴムなどの材料で製造されている。吸着パッド13は、薄板ワークWの下面に接触すると、薄板ワークWの下面の形状に合わせて変形する。それにより、吸着パッド13の先端縁は、薄板ワークWの表面に気密性よく密着することができる。吸着パッド13が薄板ワークWに密着した状態で、吸着パッド13内の空気が図8に示される真空ポンプVにより第1ロッド11の通路11aを通して抜かれることにより、薄板ワークWを吸着パッド13に真空吸着することができる。
【0051】
また、図7に示されるように、本実施形態の第1シリンダロッド5は、薄板ワークWに接触可能な少なくとも一部が球面16aを有する着座部16をさらに備えている。着座部16は、吸着パッド13の内部に配置されている。着座部16は、連結部19を介して、第1ロッド11の先端に固定されている。着座部16の球面16aは、その球面16aに対向する薄板ワークWの形状や向きに関わらず、薄板ワークWの下面に確実に当接することができる。第1ロッド11の先端に固定された球状の着座部16が薄板ワークWに直接接触して支持する。
【0052】
第2シリンダロッド6は、図3および図9に示されるように、先端14aが薄板ワークWの下面に当接する第2ロッド14と、当該第2ロッド14の高さを変更する第2高さ調整部15とを有している。
【0053】
本実施形態では、第2ロッド14は当接部を構成する先端(上面)14aを有し、この先端14aが、薄板ワークWの下面に対して下から直接当接することにより当該薄板ワークWを下から支持する。なお、第2ロッド14の先端14aに第2ロッド14と別部材の当接部を設けてもよい。
【0054】
第2高さ調整部15は、図9に示されるように、エアシリンダ15aを備えている。
エアシリンダ15aは、その上端に開口15bを有しており、この開口15bを通じて、エアシリンダ15aの内部に、第2ロッド14の下端部14aが上下に往復移動自在に挿入されている。エアシリンダ15a内には、エアポンプAによって圧縮空気が供給され、この圧縮空気の供給と排出により、第2ロッド14の高さが変更される。エアシリンダ15aは、ケーシング15cに収容されている。
【0055】
間隔変更機構8は、図2〜3に示されるように、複数の幅方向変更部17と、長手方向変更部18とを有している。
【0056】
幅方向変更部17は、薄板ワークWの幅方向Yに並ぶ複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6のそれぞれの幅方向Yにおける間隔を変更する。
【0057】
それぞれの幅方向変更部17の上には、複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6が幅方向Yに移動自在に取り付けられている。具体的には、幅方向変更部17は、個々の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6に対応して、第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6の各々を立てた状態で幅方向Yへ移動可能に支持する台座部17aと、当該台座部17aを幅方向Yに沿って所定の位置に移動して停止させることにより、第1シリンダロッド5と第2シリンダロッド6との幅方向Yの間隔を変更する駆動部17bとを備えている。台座部17aは、案内部17cによって幅方向Yに移動自在に案内される。個々の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6は、これらの駆動部17bによって、それぞれ独立して幅方向Yに沿って往復移動することができる。
【0058】
長手方向変更部18は、薄板ワークWの長手方向Xに並ぶ複数の第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6のそれぞれの長手方向Xについての間隔を変更する。具体的には、長手方向変更部18は、薄板ワークWの長手方向Xに沿って配置されている。
【0059】
長手方向変更部18は、個々の幅方向変更部17を長手方向Xに案内する案内部18aと、個々の幅方向変更部17に取り付けられた駆動部18bとを備えている。案内部18aの上には、複数の幅方向変更部17が長手方向Xに移動自在に取り付けられている。個々の幅方向変更部17は、これらの駆動部18bによって、それぞれ独立して長手方向Xへ移動することができる。それによって、ある幅方向変更部17の上に載っている第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6と、隣接する幅方向変更部17の上に載っている第1シリンダロッド5および第2シリンダロッド6との間の長手方向Xについての間隔を変更することができる。
【0060】
図4に示されるように、互いに隣接する第1シリンダロッド5の第1ロッド11と第2シリンダロッド6の第2ロッド15との支持間隔Lは、工具71から受ける押圧力F、薄板ワークWの板厚t、および加工許容値γなどの条件から算出される。この算出された支持間隔Lに基づいて、幅方向変更部17によって、第1シリンダロッド5の第1ロッド11と第2シリンダロッド6の第2ロッド14との間隔が調整される。
【0061】
本実施形態では、第2シリンダロッド6は、図4に示されるように、薄板ワークWの幅方向Yに関する外形寸法(すなわち、幅Y2)について、第1シリンダロッド5よりも小さい幅Y1を有するから、当該幅方向Yについて、第1シリンダロッド5よりも占有面積が小さくなる。それによって、薄板ワークWの支持間隔を小さくできるようにしている。
【0062】
隣接する第1シリンダロッド5と第2シリンダロッド6との間の間隔Lは、薄板ワークWの寸法形状や加工条件などによって適宜変更して設定されるが、例えば、約127mm(5インチ)程度、第1シリンダロッド5同士の間隔は、その倍の約254mm(10インチ)程度に設定される。
【0063】
薄板ワークWをワーク下方固定部3の上に載せる場合、以下の手順で行われる。
【0064】
(i) まず、図3に示されるように、第2シリンダロッド6の第2ロッド14の先端14aを、隣接する第1シリンダロッド5の吸着パッド13の先端よりも上の位置(図3の二点鎖線の位置)に位置決めする(第2ロッド位置決め工程)。
【0065】
なお、この第2ロッド位置決め工程では、全部の第2ロッド14の先端14aを吸着パッド13の先端よりも上方の位置に位置決めしてもよいし、4〜8本程度の一部の第2ロッド14の先端14aのみを上方の位置に位置決めしてよい。
【0066】
(ii) ついで、第2ロッド14の先端14aの上に、薄板ワークWを載せる(搭載工程)。この工程では、薄板ワークWをクレーンなどを用いて複数の第2ロッド14の先端14aの上に降ろしたとき、そのときに生じる薄板ワークWからの衝撃荷重を第2ロッド14のみで受けることができる。
【0067】
(iii) ついで、第2高さ調整部15によって第2ロッド14を下降させる(下降工程)。
【0068】
(iv) その後、吸着パッド13に吸着させる(吸着工程)。
【0069】
以上の手順では、薄板ワークWをワーク下方固定部3へ搭載するときの落下の衝撃を、吸着パッドを有しない第2ロッド14のみで受けて、第1シリンダロッド5の吸着パッド13へ衝撃が伝達することを防ぐことができる。その結果、吸着パッド13における薄板パッドWの吸着位置がずれたり、吸着パッド13が劣化損傷するなどの不具合の発生を低減することができる。
【0070】
ワーク縁把持機構4は、図2に示されるように、薄板ワークWの互いに対向する外周の四辺の縁Eをそれぞれ把持し、薄板ワークWへ圧縮荷重を与える。本実施形態では、4基のワーク縁把持機構4は、加工装置1の台座1aの上に、ワーク下方固定部3を取り囲むように四角形に配置されている。
【0071】
各々のワーク縁把持機構4は、大別すれば、図5に示されるように、支持台40と、複数の把持アセンブリ43とから構成されている。各把持アセンブリ43は、薄板ワークWと支持台40との間に介在する。支持台40は、薄板ワークWの縁Eの四辺のいずれかの辺に沿って、配置されている。複数の把持アセンブリ43は、1個の支持台40の薄板ワークWに対向する辺に沿って並べて配置されている。すなわち、複数のワーク縁把持機構4のそれぞれの把持アセンブリ43は、薄板ワークWの対向する縁Eを把持できるように配置されている。
【0072】
把持アセンブリ43は、図5に示されるように、大別すれば、薄板ワークWの縁Eを把持する把持部分30と、当該把持部分を支持する支持部分31とから構成されている。把持部分30は、クランプ41と、ワーク取付ネジ48とから構成される。また、支持部分31は、受け部42、支持アーム44、45、ボールジョイント46、47から構成される。また、支持部分31は、把持部分30へ圧縮荷重を与えるプリロード部7を備えている。
【0073】
まず、把持部分30の各構成要素を説明する。
【0074】
クランプ41は、図5〜6に示されるように、薄板ワークWを挟んで保持する。クランプ41は、前方に開いたスリット41aが形成されている。このスリット41aに薄板ワークWから挿入される。また、クランプ41の上面には、スリット41aへ連通するネジ孔41bが形成されている。
【0075】
ネジ孔41bに螺入されるワーク取付ネジ48の先端面48aは、薄板ワークWの上面に当接できるように平面または球面によって形成されている。また、スリット41aの内側の下面41cは、薄板ワークWの下面に当接できるように平面によって形成されている。ネジ孔41bにワーク取付ネジ48を螺入することにより、ワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの間隔を縮めてこれらの先端面48aと下面41cとの間に薄板ワークWを挟持することにより、薄板ワークWがスリット41の内部に保持される。また、ワーク取付ネジ48を緩める方向へ回転させれば、ワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの間隔を広げることができ、薄板ワークWの挟持を解除することができる。ここで、上記の先端面48aは、本願発明の上面当接部の概念に含まれるものであり、下面41cは、本願発明の下面当接部の概念に含まれるものである。また、本実施形態では、これらの上面当接部(先端面48a)と下面当接部(41c)との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部は、ワーク取付ネジ48およびネジ孔41bによって構成される。
【0076】
つぎに、支持部分31の各構成要素を説明する。
【0077】
受け部42は、プリロード部7を介してクランプ41を支持する。
【0078】
一対の支持アーム44、45は、その先端にボールジョイント部44a、45aを有している。ボールジョイント部44a、45aには、受け部42が3軸方向に揺動自在に連結されている。ボールジョイント部44a、45aは、把持部分30の少なくとも上下方向、本実施形態では上下方向および水平方向の向きを変えることができるように支持するものであり、本発明の方向変更許容部分として機能する。
【0079】
また、図5に示されるボールジョイント46、47は、支持台40に高さ方向Zに沿って並んで取り付けられている。支持アーム44、45は、これらのボールジョイント46、47を介して、支持台40に3軸方向へ揺動自在に取り付けられている。これらの支持アーム44、45およびボールジョイント46、47は、把持部分30の少なくとも上下方向の位置(高さ)、本実施形態では高さおよび水平方向に関する三次元的な位置を変えることができるように支持するものであり、本発明の位置変更許容部分として機能する。
【0080】
プリロード部7は、固定側である支持部分31の受け部42に設けられ、可動側である把持部分30(具体的には、クランプ41)へ圧縮荷重を与える。
【0081】
本実施形態のプリロード部7は、具体的には、図5〜6に示されるように、薄板ワークWの縁Eにかかる圧縮荷重の大きさを手動で調整することができる機構である。すなわち、図6に示されるプリロード部7は、ボルト51と、バネ52と、内側ナット53と、クランプ側フランジ54と、受け部側フランジ55と、外側ナット56とから構成され、クランプ41の両側にそれぞれ一対ずつ備えている。
【0082】
ボルト51は、クランプ41と受け部42との間に配置され、クランプ41を薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて移動可能に案内する。ボルト51は、本発明の案内部の概念に含まれるのである。
【0083】
バネ52は、このクランプ41に圧縮荷重(プリロード)を与えるものであり、本発明の加圧手段の概念に含まれるのである。
【0084】
クランプ側フランジ54は、クランプ41の両側面から左右に突出して設けられている。クランプ側フランジ54には、貫通孔54aが形成されている。
【0085】
受け部側フランジ55は、受け部42の両側面から左右に突出して設けられている。受け部側フランジ55には、ネジ孔55aが当該受け部側フランジ55を貫通して形成されている。
【0086】
ボルト51は、クランプ側フランジ54の貫通孔54aに挿入され、受け部側フランジ55のネジ孔55aに螺入されている。ボルト51は、六角形の頭部を有しない直線棒状の形状をしており、外周面におねじが形成されている。
【0087】
バネ52は、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間において、ボルト51が当該バネ52の内部に挿通されるように配置されている。
【0088】
内側ナット53は、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間においてボルト51に結合され、バネ52と隣接して配置されている。
【0089】
外側ナット54は、クランプ側フランジ54に対して受け部側フランジ55と反対側においてボルト51に結合されている。
【0090】
つぎに、ワーク縁把持機構4を用いて薄板ワークWの縁Eを固定する手順について説明する。
【0091】
まず、上記のワーク縁把持機構4により、上記のワーク下方固定部3の上に固定された状態の薄板ワークWの縁Eが把持される。
【0092】
具体的には、図5に示されるように、クランプ41を薄板ワークWの縁Eの位置まで移動させ、ついで、クランプ41のスリット41aに薄板ワークWを挿入し、その後、ワーク取付ネジ48を締め付けることにより、薄板ワークWとクランプ41とが連結される。この作業が、薄板ワークWの外周の四方の縁Eを囲むクランプ41すべてについて行われる。
【0093】
このとき、クランプ41は、一対の支持アーム44、45およびボールジョイント46、47を介して、静止状態で所定の位置および角度で支持台40に支持される。
【0094】
ついで、それぞれのクランプ41について、ワーク縁把持機構4に備えられたプリロード部7によって、薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向(より好ましくは、薄板ワークWの接線方向)へプリロードをかける。具体的には、まず、外側ナット56の締め具合を調整して、クランプ側フランジ54と受け部側フランジ55との間隔を調整する。ついで、内側ナット53を回転させてクランプ側フランジ54と内側ナット53との距離を変更することにより、バネ52の縮み具合を調整する。これにより、バネ52の縮み具合を変更して、クランプ41に作用する圧縮荷重、すなわちプリロードを調整することができる。
【0095】
薄板ワークWの縁Eにプリロードをかける場合、図3に示されるように、薄板ワークWの対向する2つの縁Eにおいて、両側の縁Eから同程度の大きさの圧縮荷重をかけるようにする。
【0096】
このように、プリロード部7から薄板ワークWの縁Eへ薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて付与される圧縮荷重(プリロード)が、薄板ワークWを吸着パッド13へ向かって下方へ突出するように強制的に撓ませる。これにより、薄板ワークWと吸着パッド13との密着性を高めることができ、吸着パッド13による薄板ワークWの支持剛性を向上することができる。
【0097】
(薄板ワークの加工方法)
つぎに上記の実施形態の固定装置2を用いた薄板ワークWの加工方法について説明する。
【0098】
まず図2〜3に示されるように、薄板ワークWを所定の高さに配置された吸着パッド13の上に載置する(ワーク載置工程)。このとき、吸着パッド13は、薄板ワークWの図面データにおける3次元形状に対応する高さ位置に調整されている。
【0099】
ついで、上記のように、薄板ワークWの周囲の縁Eをワーク縁把持機構4のクランプ41およびワーク取付ネジ48により把持する(把持工程)。
【0100】
ついで、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)を与え、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませる(プリロード付与工程)。
【0101】
ついで、薄板ワークWの下面を第1シリンダロッド5の吸着パッド13に吸着する(吸着工程)。
【0102】
その後、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに第1シリンダロッド5の吸着パッド13によって薄板ワークWの下面が吸着保持された状態を維持しながら、薄板ワークWを肉抜きポケット加工などの加工を行う(加工工程)。
【0103】
上記のような本実施形態の薄板ワークの加工方法では、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの縁Eを把持するとともに、薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの対向する縁Eの中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを吸着パッド13が安定して保持することを可能にする。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0104】
(データ補正方法)
図2示されるように、本実施形態の固定装置2では、吸着パッド13を有する第1シリンダロッド5および吸着パッドを有さない第2シリンダロッド6が密集した形態からなるワーク下方固定部3によって、薄板ワークWの下方から支持するとともに、薄板ワークWの四方の縁Eをワーク把持部4によって強固に把持しているので、薄板ワークWを高い剛性で所定の位置に固定することができる。
【0105】
しかし、薄板ワークWは変形しやすいので、図面データ通りの形状に固定することが困難である。例えば、図10に示されるように、図面データに基づいて作成されたNC加工データ上の薄板ワークの配置位置W0と、実際の薄板ワークの配置位置W1とがずれるおそれがある。
【0106】
そこで、本発明者らは、本実施形態の固定装置2によって固定された薄板ワークWの形状を計測によって把握して、NC加工データを補正する方法、およびその補正されたNC加工データに基づく薄板ワークWの加工方法を考案している。
【0107】
すなわち、本実施形態における薄板ワークWの加工方法では、変形や伸縮を生じるおそれがある薄板ワークWを固定装置2に固定された状態で実際に計測を行うことによって、薄板ワークWの形状の変化状況を把握し、その計測結果に基づいてNC加工データを補正する。その後、その補正されたNC加工データを用いて、薄板ワークWの肉抜き加工またはポケット穴加工などの加工を行う。
【0108】
また、この加工方法では、位置ズレや伸縮する薄板ワークWを固定装置2に固定された状態で計測して、補正式の算出と状況に応じた加工部位の補正方法により、薄板ワークWの加工を行う。
【0109】
つぎに、NC加工データを補正するための補正式を算出するための計測について説明する。
【0110】
1.補正式を算出するための計測
1) まず、薄板ワークWを上述の固定装置2によって固定した後、NC加工データで定めた基準位置に対する薄板ワークWの位置ズレを計測する。
【0111】
具体的には、図11に示されるように、NC加工データで定めた薄板ワークの配置位置W0に関する基準点P01〜P04に対応する実際の薄板ワークの配置位置W1の表面の基準点P11〜P14を測定プローブで測定し、位置ずれ量を算出する。
【0112】
測定プローブは、図1に示される加工装置1の工具移動部72の工具主軸72eに取り付けられた工具71と交換することによって工具移動部72に取り付けられる。工具移動部72に取り付けられたプローブを5軸方向(長手方向X、幅方向Y、高さ方向Z、および2つの回転方向α、β)に移動させることによって、薄板ワークWの位置ずれ量の測定を行う。
【0113】
位置ずれ量の測定後、薄板ワークWの形状や加工許容誤差を考慮して、下記の処理を選択して、補正式を作成する。
【0114】
2) 図11に示されるように、実際の薄板ワークの配置位置W1の基準点P11〜P14を測定プローブによる計測により、芯出しおよびローテーションを行う。
【0115】
3) 図12に示されるように、実際の薄板ワークが配置された範囲(配置位置W1)の中に、図面データで定めた薄板ワークの配置位置W0内に定められた肉抜き加工を行う予定の範囲である加工範囲W2がすべて含まれるか否かを照合する。なお、ここでは、加工範囲W2がすべて含まれるか否かの判定のみを行い、データ補正の処理はしない。例えば、図12の状態では、実際の薄板ワークの範囲(配置位置W1)から、加工範囲W2の一部がはみ出しているので、加工範囲Wがすべて含まれていないとの判定がなされる。
【0116】
4)また、上記1)〜3)の処理とは別に、実際の薄板ワークWを全体的にレーザースキャンにより計測した結果により、スケーリング係数を求める。スケーリング係数は、設計時の図面データにおける設計寸法に対する実際の薄板ワークWをレーザースキャンにより計測した実寸法の比である。
【0117】
上記の処理1)〜4)の結果より、下記の組み合わせで補正式の算出をする。
【0118】
すなわち、上記の手順1)+2)+3)+4)、1)+3)+4)、または2)+3)+4)のいずれかの組合せによって、補正式が算出される。
【0119】
上記で得られた補正式は、薄板ワークW全体への補正式として使用される。具体的には、上記の方法で求められた補正式は、(位置ずれ量)または(芯出し・ローテーション)の少なくともいずれか1つのパラメータと、スケーリング係数とを含む複合的な座標変換マトリックスの形となる。
【0120】
2.加工部位の補正
つぎに、薄板ワークWの肉抜き加工またはポケット穴加工などの加工による部位、すなわち加工部位におけるNC加工データの補正は、下記のいずれかの方法11)、12)のいずれかを選択して補正することができる。
【0121】
11)上記のように求められた補正式によって、NC加工の指令点ごとに補正する方法。すなわち、指令点ごとに独立して補正をする方法であり、指令点の前後関係(例えば、開始点と終了点との関係など)は考慮しない。
【0122】
12)上記のように求められた補正式によって、加工部位単位で補正する方法。すなわち、加工部位の形状(例えば、直方体状のポケット形状などの形状)は変更しない方法である。
【0123】
上記11)、12)いずれの場合も、「補正許容量」を設定することができる。
【0124】
なお、上記12)の加工部位単位での補正方法の場合には、さらに補正条件として、「最低残存厚み」を設定できる。例えば、図13に示される薄板ワークW内の本来の加工位置H0(肉抜きされて直方体形状のポケットが形成される部分)を示す基準値に対し、図13のように補正により、本来の加工位置H0から補正後の加工位置H1へシフトする場合がある、この場合、補正後の加工位置H1の下端のコーナー部分Cでは、薄板ワークWの肉抜き加工をすれば肉厚が薄くなり、薄板ワークWの設計強度を満足できなくなるおそれがある。
【0125】
そこで、図15に示されるように、加工部位H1を上方へシフトさせる補正をすることにより、設計強度を満たす最低残存厚みθを確保することができる。
【0126】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の固定装置2では、まず、第1高さ調整部12を用いて各第1ロッド11の高さが調整されることにより、各吸着パッド13の高さ位置が薄板ワークWの図面データにおける3次元形状に対応する位置に調整される。その状態で、薄板ワークWは、それぞれの吸着パッド13の上に載せられる。そして、ワーク縁把持機構4によって薄板ワーク4の対向する縁Eを把持することにより、薄板ワークWの対向する縁Eが固定される。
【0127】
このように薄板ワークWが固定された状態で、ワーク縁把持機構4のプリロード部7によって、薄板ワークWの縁から当該薄板ワークWの中央側へ向けて圧縮荷重(プリロード)が与えられる。これにより、薄板ワークWを下方へ突出する向きに撓ませて、薄板ワークWと第1シリンダロッド5の吸着パッド13との間の密着性を高めることができる。
【0128】
すなわち、ワーク縁把持機構4によって、薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、薄板ワークWにプリロードを与えて当該薄板ワークWを第2シリンダロッド6の第2ロッド14の先端14aにあらかじめ当接させておくことにより、加工時に工具71から押付力を受けたときの薄板ワークWの変形を小さくすることができる。
【0130】
(2)
また、本実施形態では、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの縁Eを把持する把持部分30(クランプ41およびワーク取付ネジ48からなる部分)と当該把持部分30を支持する支持部分31(受け部42、支持アーム44、45、およびボールジョイント46、47)とを備えている場合において、支持部分31がプリロード部7を備えているので、このプリロード部7によって、支持部分31から把持部分30へ圧縮荷重を付与することが可能になる。このように把持部分30にだけ部分的に圧縮荷重が付与される構成であるので、把持部分30および当該把持部分30に把持された薄板ワークWの縁Eへ効率よく圧縮荷重を付与することができる。
【0131】
(3)
また、本実施形態では、プリロード部7は、案内部である一対のボルト51と加圧手段である一対のバネ52を備えている。このボルト51は、クランプ41と受け部42との間に配置され、クランプ41を当該クランプ41が把持する薄板ワークWの対向する縁Eに対して当該薄板ワークWの中央側へ移動可能となるように案内する。そして、バネ52は、クランプ41に圧縮荷重(プリロード)を与える。これにより、薄板ワークWの縁Eを一対のボルト51によって当該薄板ワークWの中央側へ向けて安定かつ確実に案内しながらプリロードを付与することができる。
【0132】
(4)
また、本実施形態では、ワーク縁把持機構4において、支持部分31の変位許容部分である支持アーム44、45およびボールジョイント46、47によって、把持部分30の位置を変化させて薄板ワークWの縁Eの付近まで移動させ、その後、方向変更許容部分であるボールジョイント部44a、45aによって、薄板ワークWの縁Eを上下両面から把持できる向きへ把持部分30のクランプ41の向きを変えることができる。これにより、薄板ワークWの縁Eの位置や縁E付近の反り具合に合わせて、把持部分30の位置や向きを変えることができ、薄板ワークWを安定かつ確実に把持することができる。
【0133】
(5)
また、本実施形態のワーク縁把持機構4は、図6に示されるように、薄板ワークWの上面に当接可能な形状を有する上面当接部であるワーク取付ネジ48の先端面48aと、薄板ワークWの下面に当接可能な形状を有する下面当接部であるスリット41aの内側の下面41cと、これら先端面48aと下面41cとの間を距離を変更できるように連結するワーク取付ネジ48およびネジ孔41bによって構成される連結部とを有しており、ワーク取付ネジ48をネジ孔41b内で締めたり緩めたりすることによってワーク取付ネジ48の先端面48aとスリット41aの内側の下面41cとの距離を変更することができる。これらの先端面48aと下面41cとの間の距離を縮めることにより、薄板ワークWの上面および下面の両方から力を加えて挟持することができ、薄板ワークWを安定して把持することができる。
【0134】
(6)
また、本実施形態のように、薄板ワークWの縁Eが大きく反って台座1aに対して傾斜した3次元形状であっても、ワーク縁把持機構4が薄板ワークWの対向する縁Eから当該薄板ワークWの対向する縁の中央側へ向いて薄板ワークWに縁Eを把持することにより、その薄板ワークWを加工するときに生じる薄板ワークWの縁Eの振動を抑えることができる。その結果、薄板ワークWが吸着パッド13から外れるおそれがなく、より精度良く加工することができる。
【0135】
(7)
また、本実施形態では、ワーク吸着機構である第1シリンダロッド5が並設され、隣接するこれらの第1シリンダの間には、薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークWを支持するワーク支持機構として第2シリンダロッド6が配置されており、しかも、第2シリンダロッド6は、薄板ワークWの幅方向に関する外形寸法(すなわち、幅Y2)について、第1シリンダロッド5の幅Y1よりも小さくなっており、第1シリンダロッド5よりも占有面積が小さくなっている。そのため、薄板ワークWの支持点間隔を短くした状態で、薄板ワークWを支持することができ、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークWを加工するときに工具71を押し当てても、薄板ワークWのたわみを小さくすることができ、薄板ワークWを精度良く加工することができる。
【0136】
(8)
本実施形態の加工装置1は、上記本実施形態の固定装置2を備えており、ワーク縁把持機構4によって薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを第1シリンダロッド5の吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。その結果、薄板ワークWの振動や変形が少ない状態で薄板ワークの加工を行うことができる。
【0137】
(9)
本実施形態の薄板ワークの加工方法では、ワーク縁把持機構4によって薄板ワークWの縁Eを把持するとともに薄板ワークWの対向する両側の縁Eに当該薄板ワークWの幅方向または長手方向についての中央側へ向かう方向へプリロードを与えることにより、製作上形状誤差が生じる薄板ワークWを第1シリンダロッド5の吸着パッド13上に押さえて固定することができる。それにより、薄板ワークWと吸着パッド13との隙間をなくして、薄板ワークWの支持剛性を高めることができる。
【0138】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、ワーク縁把持機構4に備えられたプリロード部7として、ボルト51とナット55を手動で締めたり、緩めたりしてバネ52の弾性力を調整することにより、薄板ワークWにかけられるプリロードを手動で調整できるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリロードを自動で調整できるようにしてもよい。例えば、他の態様のプリロード部として、エアシリンダやリニアモータなどを用いてクランプ41に圧縮荷重を加えることにより、薄板ワークWにプリロードを自動的に加えることができる。
【0139】
(B)
また、上記の実施形態では、薄板ワークWの下面を吸着保持するワーク吸着機構の一例として、第1ロッド11、第1高さ調整部12および吸着パッド13を備えた第1シリンダロッド5を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、薄板ワークWの下面を吸着保持できる機構であれば、種々の態様のワーク吸着機構を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 加工装置
2 固定装置
3 ワーク下方固定部
4 ワーク縁把持機構
5 第1シリンダロッド(ワーク吸着機構)
6 第2シリンダロッド(ワーク支持機構)
7 プリロード部
8 間隔変更機構
11 第1ロッド
12 第1高さ調整部
13 吸着パッド
14 第2ロッド
15 第2高さ調整部
16 着座部
44、45 支持アーム(位置変更許容部分)
46、47 ボールジョイント(位置変更許容部分)
44a、45a ボールジョイント部(方向変更許容部分)
51 ボルト(案内部)
52 バネ(加圧手段)
71 工具
72 工具移動部
W 薄板ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する縁を有する薄板ワークをこれらの縁が水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置であって、
前記薄板ワークの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構と、
前記薄板ワークの各縁をそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構と、
を備えており、
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるように、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与える、
ことを特徴としている薄板ワークの固定装置。
【請求項2】
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの縁を把持する把持部分と、当該把持部分を支持する支持部分とを備えており、
当該支持部分は、前記把持部分へ前記圧縮荷重を与えるプリロード部を備えている、
請求項1に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項3】
前記プリロード部は、
前記把持部分を、当該把持部分が把持する前記薄板ワークの対向する縁に対して当該薄板ワークの中央側へ移動可能となるように案内する案内部と、
前記把持部分に前記圧縮荷重を与える加圧手段とを備えている、
請求項2に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項4】
前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への変位を許容するように支持する変位許容部分を備えている、
請求項2または3に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項5】
前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への向きの変更を許容するように支持する方向変更許容部分を備えている、
請求項2から4のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項6】
前記把持部分は、
前記薄板ワークの上面に当接可能な形状を有する上面当接部と、
当該上面当接部に対向して配置され、前記薄板ワークの下面に当接可能な形状を有する下面当接部と、
前記上面当接部と前記下面当接部との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部と
を有している、
請求項2から5のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項7】
前記薄板ワークは、その縁が前記ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状をしており、
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて当該薄板ワークの縁を把持する、
請求項1から6のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項8】
前記薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設された複数のワーク支持機構をさらに備えており、
少なくとも2つの前記ワーク吸着機構は、前記薄板ワークの特定方向に沿って並び、かつ、隣接する当該ワーク吸着機構の間には、少なくとも1つの前記ワーク支持機構が配置されており、
前記ワーク支持機構は、前記特定方向に関する外形寸法について、前記ワーク吸着機構よりも小さい、
請求項1から7のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置と、
前記固定装置によって所定の位置に固定された前記薄板ワークの表面加工を行う工具と、
前記工具を前記薄板ワーク上で移動させる工具移動部と、
を備えている、
薄板ワークの加工装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の固定装置を用いて、当該薄板ワークを所定の位置に固定した状態で加工する薄板ワークの加工方法であって、
前記薄板ワークを所定の高さに配置された前記ワーク吸着機構の上に載置する、ワーク載置工程と、
前記ワーク縁把持機構によって、前記薄板ワークの対向する縁を把持するとともに、当該薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えて前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるプリロード付与工程と、
前記薄板ワークの下面を前記ワーク吸着機構によって吸着保持する吸着工程と、
前記ワーク縁把持機構によって当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに前記ワーク吸着機構によって当該薄板ワークの下面が吸着保持された状態を維持しながら、前記薄板ワークを加工する加工工程と、
を含むことを特徴とする薄板ワークの加工方法。
【請求項1】
互いに対向する縁を有する薄板ワークをこれらの縁が水平方向に並ぶ状態で所定の位置に固定する固定装置であって、
前記薄板ワークの下面における複数の部位をそれぞれ吸着保持するように並設された複数のワーク吸着機構と、
前記薄板ワークの各縁をそれぞれ把持し、前記薄板ワークへ圧縮荷重を与える複数のワーク縁把持機構と、
を備えており、
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるように、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与える、
ことを特徴としている薄板ワークの固定装置。
【請求項2】
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの縁を把持する把持部分と、当該把持部分を支持する支持部分とを備えており、
当該支持部分は、前記把持部分へ前記圧縮荷重を与えるプリロード部を備えている、
請求項1に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項3】
前記プリロード部は、
前記把持部分を、当該把持部分が把持する前記薄板ワークの対向する縁に対して当該薄板ワークの中央側へ移動可能となるように案内する案内部と、
前記把持部分に前記圧縮荷重を与える加圧手段とを備えている、
請求項2に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項4】
前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への変位を許容するように支持する変位許容部分を備えている、
請求項2または3に記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項5】
前記支持部分は、前記把持部分の少なくとも上下方向への向きの変更を許容するように支持する方向変更許容部分を備えている、
請求項2から4のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項6】
前記把持部分は、
前記薄板ワークの上面に当接可能な形状を有する上面当接部と、
当該上面当接部に対向して配置され、前記薄板ワークの下面に当接可能な形状を有する下面当接部と、
前記上面当接部と前記下面当接部との距離を変更するように当該上面当接部および下面当接部を連結する連結部と
を有している、
請求項2から5のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項7】
前記薄板ワークは、その縁が前記ワーク吸着機構が設けられた基準面に対して傾斜した形状をしており、
前記ワーク縁把持機構は、前記薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向いて当該薄板ワークの縁を把持する、
請求項1から6のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項8】
前記薄板ワークの下面における複数の部位に下方から当接して当該薄板ワークを支持するように並設された複数のワーク支持機構をさらに備えており、
少なくとも2つの前記ワーク吸着機構は、前記薄板ワークの特定方向に沿って並び、かつ、隣接する当該ワーク吸着機構の間には、少なくとも1つの前記ワーク支持機構が配置されており、
前記ワーク支持機構は、前記特定方向に関する外形寸法について、前記ワーク吸着機構よりも小さい、
請求項1から7のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の薄板ワークの固定装置と、
前記固定装置によって所定の位置に固定された前記薄板ワークの表面加工を行う工具と、
前記工具を前記薄板ワーク上で移動させる工具移動部と、
を備えている、
薄板ワークの加工装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の固定装置を用いて、当該薄板ワークを所定の位置に固定した状態で加工する薄板ワークの加工方法であって、
前記薄板ワークを所定の高さに配置された前記ワーク吸着機構の上に載置する、ワーク載置工程と、
前記ワーク縁把持機構によって、前記薄板ワークの対向する縁を把持するとともに、当該薄板ワークの対向する縁から当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重を与えて前記薄板ワークを下方へ突出する向きに撓ませるプリロード付与工程と、
前記薄板ワークの下面を前記ワーク吸着機構によって吸着保持する吸着工程と、
前記ワーク縁把持機構によって当該薄板ワークの対向する縁の中央側へ向けて圧縮荷重が付与されるとともに前記ワーク吸着機構によって当該薄板ワークの下面が吸着保持された状態を維持しながら、前記薄板ワークを加工する加工工程と、
を含むことを特徴とする薄板ワークの加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−106304(P2012−106304A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256116(P2010−256116)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]