説明

薄板収納容器

【課題】容器本体と蓋体とが張り付いても蓋体を容器本体から容易に取り外すことができる薄板収納容器を提供する。
【解決手段】薄板収納容器1は、正面に開口部4を有する容器本体2と、開口部4に嵌め合わされて当該開口部4をシール可能に閉鎖する蓋体3と、を備えており、蓋体3は、蓋体本体11と、蓋体本体11に形成された出没孔13から出没する係止部8を備えた施錠機構7と、を備えている。そして、蓋体本体11のシール用溝27に、容器本体2と蓋体3との間をシールする枠体30及びリップ部31と、リップ部31に接続されて出没孔13に延び、出没孔13を出没する係止部8のローラ部25に変位される被操作リブ32と、を備えるガスケット26を嵌め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の精密基板を収納して保管、搬送、輸送に使用される薄板収納容器であって、特に、薄板収納容器から蓋体を取り外すときに蓋体がシール部材により容器本体に張り付くことを防止する薄板収納容器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の薄板収納容器は、開口部を備えた容器本体と、開口部をシール可能に閉鎖する蓋体とを備えており、容器本体の内部に、1又は複数の基板を整列して収納することが可能となっている。この薄板収納容器は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の基板の保管、工程内搬送、外部への輸送に用いられている。
【0003】
また、現在、半導体業界で主流となっている直径300mm厚さ775μmのシリコンウェーハを収納する薄板収納容器には、加工装置側から自動で操作可能な施錠機構が内蔵された蓋体が使用されている。これにより、容器本体と蓋体とが着脱自在に係合することが可能となっている。
【0004】
このように構成される薄板収納容器は、一般的に、航空機によって輸送される。しかしながら、薄板収納容器の内外に生じる圧力差により、薄板収納容器内部が減圧状態となり、蓋体が開けにくくなる。これにより、蓋体開閉装置により容器本体から蓋体を取り外すことができなくなり、半導体部品の生産性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、複数のウェーハを収納する容器において、シール部材、容器本体又は蓋体に微小な凹凸と形成することで、気圧変動時に気密を損なわせることが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、複数の基板を収納する基板収納容器において、内外圧力差を解消するためのフィルタを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−145311号公報
【特許文献2】特開2009−105205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている容器は、内外圧力差を緩和することはできるものの、容器本体から蓋体を自動で取り除くときに、シール部材のリップの先端が張り付いてしまうという問題を解決するものではない。
【0009】
また、特許文献2に記載されている基板収納容器も、シール部材が張り付くことに関して何らの開示もない。
【0010】
そこで、本発明は、容器本体と蓋体とが張り付いても蓋体を容器本体から容易に取り外すことができる薄板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る薄板収納容器は、開口部を有して基板を収納する容器本体と、施錠機構を備えて開口部に嵌め合わされる蓋体と、開口部と蓋体との間をシールするシール部材と、を有する薄板収納容器であって、施錠機構の開錠操作によりシール部材が変形して開口部と蓋体との間に隙間が形成される。
【0012】
本発明に係る薄板収納容器によれば、シール部材が容器本体及び蓋体に張り付いたとしても、施錠機構の開錠操作により、シール部材が変形して開口部と蓋体との間に隙間が形成されるため、容器本体から蓋体を取り外す際の抵抗が小さくなる。これにより、小さな力で蓋体を容器本体から取り外すことができるため、蓋体開閉装置が停止することなく安定的に容器本体から蓋体を取り外すことができ、半導体部品の生産性を向上することができる。
【0013】
そして、シール部材は、開口部と蓋体との間をシールするシール本体と、シール本体から延びる突片と、を備え、開錠操作が行われる施錠機構により突片が変位されることが好ましい。このように構成することで、施錠時は、シール本体により開口部と蓋体に密着して容器本体と蓋体との間が完全にシールされるが、施錠機構を開錠操作すると、この施錠機構により突片が変位させられるため、シール本体が突片に引っ張られて変形する。これにより、開口部からシール本体が部分的に引き剥がされるため、容器本体から蓋体を取り外す際の抵抗が小さくなり、小さな力で蓋体を容器本体から取り外すことができる。
【0014】
この場合、突片が、施錠機構の移動経路上に配置されることが好ましい。このように構成することで、施錠機構に変更を加えることなく、容易かつ確実に突片を変位させることができる。
【0015】
また、施錠機構は、施錠機構の開錠操作によりシール部材を変形させる操作部を備えることが好ましい。このように構成することで、施錠機構を開錠操作することで、操作部によりシール部材を変形させることができる。これにより、開口部からシール本体が部分的に引き剥がされるため、容器本体から蓋体を取り外す際の抵抗が小さくなり、小さな力で蓋体を容器本体から取り外すことができる。
【0016】
この場合、シール部材は、操作部に係合される被係合部を備えることが好ましい。このように、シール部材に被係合部を設けることで、シール部材を確実に変形させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容器本体と蓋体とが張り付いても蓋体を容器本体から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る薄板収納容器の展開斜視図である。
【図2】容器本体の開口部を示す一部断面図である。
【図3】蓋体裏面側を示す斜視図である。
【図4】施錠機構の施錠状態を示す断面図である。
【図5】施錠機構の開錠状態を示す断面図である。
【図6】蓋体本体の出没孔周辺を示す一部拡大図である。
【図7】ガスケットを示す斜視図である。
【図8】図7に示すガスケットの一部拡大図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】施錠機構が施錠状態の蓋体を示す斜視図である。
【図11】図10の一部拡大図である。
【図12】図10の状態における蓋体の貫通孔周辺を示す一部拡大図である。
【図13】施錠状態におけるラッチ機構とガスケットとの関係を示す断面図である。
【図14】施錠機構が開錠状態の蓋体を示す斜視図である。
【図15】図14の一部拡大図である。
【図16】図14の状態における蓋体の貫通孔周辺を示す一部拡大図である。
【図17】開錠状態におけるラッチ機構とガスケットとの関係を示す断面図である。
【図18】第2の実施形態に係る薄板収納容器の施錠状態を示す一部拡大図である。
【図19】図18の状態における操作部とガスケットとの関係を示す図である。
【図20】第2の実施形態に係る薄板収納容器の施錠状態を示す一部拡大図である。
【図21】図20の状態における操作部とガスケットとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る薄板収納容器の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下左右は、薄板収納容器の上下左右を示す。また、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態に係る薄板収納容器の展開斜視図である。図1に示すように、実施形態に係る薄板収納容器1は、内部に直径300mmのウェーハ(基板)を収納するものである。薄板収納容器1は、容器本体2と、蓋体3と、を備えている。
【0021】
容器本体2は、正面に開口部4を有するフロントオープン型の容器である。容器本体2には、対向する両側壁の内側に、基板を水平に支持するための一対の支持部材5が設けられている。支持部材5は、開口部4から奥側にかけて延びる板状の支承部が上下方向に一定間隔で配列されており、各支承部の開口部4側終端部に、基板の飛び出しを防止する段差部が形成されている。また、容器本体2の奥側の側壁には、基板の挿入限界を規制する位置規制壁が形成されている。
【0022】
図2は、容器本体の開口部を示す一部断面図である。図1及び図2に示すように、開口部4は、角が丸く湾曲した正面視矩形状に形成されている。この開口部4は、断面略L字状に形成されており、蓋体3の周端面に向けられて蓋体3が嵌め合わされる開口周面部4aと、蓋体3の裏面に向けられて蓋体3とのシールを形成する開口正面部4bと、を備える。
【0023】
開口周面部4aの上面及び下面には、蓋体3を容器本体2に対して施錠するための係止凹部6が2箇所ずつ形成されている。この係止凹部6は、後述する施錠機構7の係止部8を係止するために、開口周面部4aを部分的に窪ませて形成されている。
【0024】
図1に示すように、容器本体2の天面には、搬送用のロボティックフランジ9が取り付けられており、容器本体2の底面には、薄板収納容器1を搭載する加工装置に位置決めするための断面逆V字状の台座部材10が取り付けられている。
【0025】
このように構成される容器本体2は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂を用いて形成される。そして、これらの樹脂には、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどの導電性付与剤等が適宜添加される。
【0026】
蓋体3は、容器本体2の開口部4に嵌め合わされて当該開口部4をシール可能に閉鎖するものである。蓋体3は、矩形の薄い板状に形成されており、蓋体3が容器本体2の開口部4に嵌め合わされた際に薄板収納容器1の内部に向けられる面側を、蓋体3の裏面側といい、蓋体3が容器本体2の開口部4に嵌め合わされた際に薄板収納容器1の外部に向けられる面側を、蓋体3の表面側という。また、蓋体3の各外周面から蓋体3の内側に向かう方向を、蓋体3の内側方向といい、蓋体3の各外周面から外側に向かう方向を、蓋体3の外側方向という。
【0027】
この蓋体3は、蓋体本体11と、蓋体本体11の裏面側に取り付けられたリテーナ14と、蓋体本体11の表面側に取り付けられた施錠機構7と、施錠機構7を覆うように蓋体本体11の表面側に取り付けられた表面プレート12と、を備えている。なお、蓋体3の裏面側とは、蓋体3が容器本体2の開口部4に嵌め合わされた際に薄板収納容器1の内側に配置される側をいい、蓋体3の表面側とは、蓋体3が容器本体2の開口部4に嵌め合わされた際に薄板収納容器1の外側に配置される側をいう。
【0028】
このように構成される蓋体3は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂を用いて形成される。そして、これらの樹脂には、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどの導電性付与剤等が適宜添加される。
【0029】
蓋体本体11は、蓋体3の本体を構成するものである。蓋体本体11は、角が丸く面取りされた正面視矩形状に形成されており、その外周面に、容器本体2の開口部4に嵌め合わされる外周面部11aが形成されている。外周面部11aの上下面には、後述する施錠機構7の係止部8が出没する一対の出没孔13が形成されている。
【0030】
図3は、蓋体の裏面側を示す斜視図である。図3に示すように、蓋体本体11の裏面側には、容器本体2に収納されている基板の開口部4側周縁を保持するリテーナ14が取り付けられている。リテーナ14は、枠体15と、枠体15から内側に向けて短冊状に延びる弾性部16と、を備えている。弾性部16は、容器本体2に収納される基板と向き合う方向に張り出しており、その先端に、基板と接触する断面V字状または断面U字状の保持溝17が形成されている。なお、弾性部16は、枠体15に片持ち支持されるが、対向する一対の弾性部16を連結して枠体15に両持ち支持されるものとしてもよい。また、弾性部16の先端に、保持溝17の変わりに、又は、保持溝17とともに、基板を保持する別の保持部を設けてもよい。
【0031】
図1に示すように、表面プレート12には、薄板収納容器1を搭載する加工装置に設けられた蓋体開閉装置により、施錠機構7の施錠操作及び開錠操作を可能とするための操作孔18が形成されている。
【0032】
施錠機構7は、容器本体2に対する蓋体3の施錠及び開錠を行うものであり、蓋体本体11の表面側において左右方向に2組並設されている。この施錠機構7は、それぞれ、回転部材19と、回転部材19に連結される一対の連結バー20と、各連結バー20に連結されて蓋体本体11の出没孔13から出没する係止部8と、を備えている。
【0033】
回転部材19は、円板状に形成されており、蓋体本体11に回転可能に支持されている。この回転部材19には、表面プレート12の操作孔18を通して挿入された操作キーと嵌合する被操作凹部22が形成されている。また、回転部材19には、回転により連結バー20を進退させる案内溝23が形成されている。なお、案内溝23は、回転部材19を正転(図1において左回転)させると、回転部材19の中心からの距離が長くなり、回転部材19を反転(図1において右回転)させると、回転部材19の中心からの距離が短くなるように形成されている。
【0034】
連結バー20は、長尺の矩形板状に形成されており、蓋体本体11に上下方向(蓋体3の内側方向及び外側方向)に進退可能に支持されている。この連結バー20は、内側端部が、回転部材19の案内溝23に遊嵌されており、外側端部が、係止部8に連結されている。このため、操作キーにより回転部材19を回転させることで、連結バー20を進退させることが可能となっている。
【0035】
図4は、施錠機構の施錠状態を示す断面図である。図5は、施錠機構の開錠状態を示す断面図である。図4及び図5に示すように、係止部8は、上方に向けて屈曲した略L字状に形成されている。係止部8は、蓋体3の表面側に位置する基端部(図3及び図4において、左側の端部)が、蓋体本体11に固定されて左右方向に延びる回転軸24に、揺動自在に軸支されている。係止部8には、蓋体3の内側に位置する先端部(図3及び図4において、右側の端部)に、容器本体2の係止凹部6に係止される一対の円筒状のローラ部25が回動自在に取り付けられている。また係止部8には、凸状に屈曲する中央部に、連結バー20の外側端部が揺動自在に連結されている。
【0036】
このため、図4に示すように、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を正転させる施錠機構7の施錠操作を行うと、進行する連結バー20によって係止部8が押し出され、回転軸24を軸とした係止部8の円弧運動により、ローラ部25が蓋体本体11の出没孔13から出現する。これにより、開口部4の開口周面部4aに形成された係止凹部6に、ローラ部25が係止される。
【0037】
一方、図5に示すように、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を反転させる施錠機構7の開錠操作を行うと、後退する連結バー20によって係止部8が引き戻され、回転軸24を軸とした円弧運動により、ローラ部25が蓋体本体11の出没孔13に没入する。これにより、係止凹部6に対するローラ部25の係止が解除される。
【0038】
このように構成される施錠機構7は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタールなどの合成樹脂により形成される。
【0039】
図6は、蓋体本体の出没孔周辺を示す一部拡大図である。図1〜図6に示すように、蓋体本体11には、裏面側の周縁部に、開口部4の開口正面部4bと蓋体本体11との間のシールを行うガスケット26が嵌め込まれるシール用溝27が形成されている。シール用溝27は、開口が蓋体3の外側方向に向けられている。また、蓋体本体11には、シール用溝27から出没孔13に貫通されて、蓋体本体11の外周面部11aからシール用溝27の底面に至るスリット28が形成されている。このスリット28は、係止部8の各ローラ部25と一対一に対応して形成されている。このため、スリット28は、出没孔13ごとに2箇所ずつ形成されており、蓋体本体11で8箇所形成されている。
【0040】
図7は、ガスケットを示す斜視図である。図8は、図7に示すガスケットの一部拡大図である。図9は、図8のIX−IX線断面図である。図3及び図7〜図9に示すように、開口部4の開口正面部4bと蓋体本体11との間のシールを行うガスケット26は、矩形枠状に形成される枠体30と、枠体30から延びるリップ部31と、リップ部31の反対方向に延びて係止部8のローラ部25に操作される被操作リブ32と、を備えている。
【0041】
枠体30は、シール用溝27に嵌め込まれることにより蓋体本体11に固定されて、ガスケット26と蓋体本体11との間のシールを行う部位である。枠体30は、断面略矩形状に形成されており、シール用溝27に当接される少なくとも一方の側周面に、シール用溝27からの脱落を防止するための嵌合リブ33が形成されている。
【0042】
リップ部31は、開口正面部4bに密着されることにより、ガスケット26と開口正面部4bとの間のシールを行う部位である。リップ部31は、枠体30の全周面から、開口正面部4bに向かうように湾曲しながら延びている。リップ部31は、開口正面部4bとの密着性を向上させるために、断面が薄く形成されるとともに、その先端部が丸く膨らんでいる。そして、リップ部31は、開口正面部4bに向けられるシール面31aが凸状に湾曲しており、シール面31aの反対側の裏面31bが凹状に湾曲している。
【0043】
被操作リブ32は、係止部8のローラ部25と一対一に対応して設けられており、リップ部31に接続される第一リブ部32aと、第一リブ部32aから蓋体本体11の出没孔13に向けて延びる第二リブ部32bと、を備えている。
【0044】
第一リブ部32aは、リップ部31の基端から先端部に至る裏面31bに接続されている。このため、第一リブ部32aがリップ部31の裏面31b側から引っ張られると、リップ部31が第一リブ部32aにより持ち上げられる。
【0045】
第二リブ部32bは、第一リブ部32aと一体的に形成されており、断面矩形の棒状に形成されている。第二リブ部32bは、スリット28に挿入されることにより、その先端部が係止部8内に配置される。係止部8内に配置される第二リブ部32bの先端部は、施錠機構7の操作により出没孔13を出没するローラ部25の移動経路上に達している。また、係止部8内に配置される第二リブ部32bは、連結バー20の両側壁の外側であって、施錠機構7を施錠状態としたときにローラ部25に当接しない位置に配置される。
【0046】
このように構成されるガスケット26は、変位可能な素材で形成されており、例えば、フッ素系ゴム、NBRゴムなどのゴムや、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系などの各種熱可塑性エラストマーにより形成される。このため、ガスケット26は、枠体30に対する被操作リブ32及びリップ部31の変形が可能となっている。
【0047】
次に、容器本体2に対する蓋体3の開閉動作について説明する。
【0048】
まず、図10〜図13を参照して、施錠機構7の施錠操作を行うときの薄板収納容器1の動作について説明する。図10は、施錠機構が施錠状態の蓋体を示す斜視図である。図11は、図10の一部拡大図である。図12は、図10の状態における蓋体の貫通孔周辺を示す一部拡大図である。図14は、施錠機構が開錠状態の蓋体を示す斜視図である。なお、図10及び図11では、蓋体3から表面プレート12を取り外した状態を示している。
【0049】
図10〜図13に示すように、施錠機構7の施錠操作を行う際は、まず、蓋体3を容器本体2の開口部4に嵌め合わせる。すると、ガスケット26のリップ部31が開口正面部4bに押圧されて密着し、容器本体2と蓋体3との間がシールされる。
【0050】
そして、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を正転させる施錠操作を行う。すると、回転部材19の正転により連結バー20が蓋体3の外側方向に進行するため、回転軸24を軸とした係止部8の円弧運動により、ローラ部25が出没孔13から押し出される。そして、ローラ部25が係止凹部6に入り込み、ローラ部25が係止凹部6に係止される。これにより、容器本体2に対する蓋体3の施錠が完了する。
【0051】
このとき、ローラ部25は第二リブ部32bに接触しないため、リップ部31と容器本体2との間のシールが適切に保持される。
【0052】
次に、図14〜図17を参照して、施錠機構7の開錠操作を行うときの薄板収納容器1の動作について説明する。図14は、施錠機構が開錠状態の蓋体を示す斜視図である。図15は、図14の一部拡大図である。図16は、図14の状態における蓋体の貫通孔周辺を示す一部拡大図である。図17は、開錠状態におけるラッチ機構とガスケットとの関係を示す断面図である。なお、図14及び図15では、蓋体3から表面プレート12を取り外した状態を示している。
【0053】
図14〜図17に示すように、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を反転させる開錠操作を行う。すると、回転部材19の反転により連結バー20が蓋体3の内側方向に後退するため、回転軸24を軸とした係止部8の円弧運動により、ローラ部25が係止凹部6から抜き出されて出没孔13に没入する。これにより、係止凹部6に対するローラ部25の係止が解除され、施錠機構7による開錠が完了する。
【0054】
このとき、第二リブ部32bの先端部が出没孔13を出没するローラ部25の移動系路上に配置されているため、第二リブ部32bは、出没孔13に没入移動するローラ部25により蓋体3の内側方向に押し倒されて変位する。すると、変位する第二リブ部32bにより第一リブ部32aが引っ張られるため、第一リブ部32aに接続されているリップ部31は、部分的に持ち上げられるように変形し、開口正面部4bから部分的に引き剥がされる。
【0055】
これにより、リップ部31と開口正面部4bとの間に隙間が生じ、リップ部31と開口正面部4bとの間のシールが解除されるため、容器本体2と蓋体3との密着力が小さくなる。なお、図16に示すように、同じ出没孔13に配置される一対の被操作リブ32は近接しているため、この一対の被操作リブ32の間の区間全体において、リップ部31が開口正面部4bから引き剥がされる。
【0056】
このように、本実施形態に係る薄板収納容器1によれば、施錠時は、リップ部31の全面が開口正面部4bに密着して容器本体2と蓋体3との間が完全にシールされるが、施錠機構7を開錠操作すると、ローラ部25により被操作リブ32が変位させられるため、リップ部31が被操作リブ32に引っ張られて変形する。これにより、開口正面部4bからリップ部31が部分的に引き剥がされるため、容器本体2から蓋体3を取り外す際の抵抗が小さくなる。その結果、蓋体開閉装置が停止することなく安定的に容器本体2から蓋体3を取り外すことができ、半導体部品の生産性を向上することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る薄板収納容器は、第1の実施形態に係る薄板収納容器と基本的に同一であり、施錠機構における係止部の構成とガスケットの形状のみ第1の実施形態に係る薄板収納容器と相違する。このため、以下の説明では、第1の実施形態に係る薄板収納容器と相違する事項のみ説明し、第1の実施形態に係る薄板収納容器と同一の事項の説明を省略する。
【0058】
図18は、第2の実施形態に係る薄板収納容器の施錠状態を示す一部拡大図である。図19は、図18の状態における操作部とガスケットとの関係を示す図である。図20は、第2の実施形態に係る薄板収納容器の施錠状態を示す一部拡大図である。図21は、図20の状態における操作部とガスケットとの関係を示す図である。
【0059】
図18〜図21に示すように、第2の実施形態に係る薄板収納容器40の蓋体3には、施錠機構41が取り付けられており、蓋体本体11のシール用溝27に、蓋体3と容器本体2との間のシールを行うとともに施錠機構41に係合されるガスケット45が嵌め込まれている。
【0060】
施錠機構41は、回転部材19と、回転部材19に連結される一対の連結バー20と、各連結バーに連結されて蓋体本体11の出没孔13から出没する係止部42と、を備えている。
【0061】
係止部42は、連結バー20の延長線上に延びる棒状に形成されている。係止部42の先端部には、円筒状のローラ部43が取り付けられている。また、係止部42の胴部には、ガスケット45を変形させるための操作部44が取り付けられている。
【0062】
操作部44は、係止部42に対する垂直方向であって、ガスケット45に向けて延びている。操作部44は、棒状に形成されており、係止部42の進退に伴い蓋体本体11のスリット28内を進退する。
【0063】
ガスケット45は、矩形枠状に形成される枠体30と、枠体30から延びるリップ部31と、操作部44に係合される被係合部48と、を備えている。
【0064】
被係合部48は、操作部44と一対一に対応して設けられており、リップ部31に接続される第一被係合部48aと、操作部44に係合される第二被係合部48bと、を備えている。
【0065】
第一被係合部48aは、リップ部31の基端から先端部付近に至る裏面31bに接続されている。このため、第一被係合部48aがリップ部31の裏面31b側から引っ張られると、リップ部31が第一被係合部48aにより持ち上げられる。
【0066】
第二被係合部48bは、第一被係合部48aからリップ部31の反対方向に突出しており、スリット28に挿入される。そして、第二被係合部48bには、係止部42側の側面に、後退する操作部44に係合される係合凹部49が形成されている。
【0067】
係合凹部49は、後退する操作部44が内部に入り込めるとともに、進行する操作部44の障害とならないように、蓋体3の表面側の方向及び蓋体3の外側方向に向けて開口している。このため、施錠時は、操作部44が係合凹部49に係合されない。また、係合凹部49の進退方向における深さは、操作部44が完全に後退し終える前に操作部44が係合凹部49の底面に当接する深さとなっている。このため、開錠時は、被係合部48が操作部44により蓋体3の内側方向に押圧された状態となる。
【0068】
次に、容器本体2に対する蓋体3の開閉動作について説明する。
【0069】
まず、施錠機構41の施錠操作を行うときの薄板収納容器40の動作について説明する。図18及び図19に示すように、施錠機構41の施錠操作を行う際は、まず、蓋体3を容器本体2の開口部4に嵌め合わせる。すると、ガスケット45のリップ部31が開口正面部4bに押圧されて密着し、容器本体2と蓋体3との間がシールされる。
【0070】
そして、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を正転させる施錠操作を行う。すると、回転部材19の正転により連結バー20が蓋体3の外側方向に進行するため、係止部42のローラ部43が出没孔13から押し出される。そして、ローラ部43が係止凹部6に入り込み、ローラ部43が係止凹部6に係止される。これにより、容器本体2に対する蓋体3の施錠が完了する。
【0071】
このとき、操作部44は係合凹部49に係合しないため、リップ部31と容器本体2との間のシールが適切に保持される。
【0072】
次に、施錠機構41の開錠操作を行うときの薄板収納容器40の動作について説明する。図20及び図21に示すように、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材19を反転させる開錠操作を行う。すると、回転部材19の反転により連結バー20が上下方向に後退するため、ローラ部43が係止凹部6から抜き出されて出没孔13に没入する。これにより、係止凹部6に対するローラ部43の係止が解除され、施錠機構41による開錠が完了する。
【0073】
このとき、蓋体3の内側方向に後退する操作部44が係合凹部49に係合され、更に、操作部44が係合凹部49を蓋体3の内側方向に押圧するため、第二被係合部48bが蓋体3の内側方向に撓むように変形する。すると、変形する第二被係合部48bにより第一被係合部48aが引っ張られるため、第一被係合部48aに接続されているリップ部31は、部分的に持ち上げられるように変形し、開口正面部4bから部分的に引き剥がされる。
【0074】
これにより、リップ部31と開口正面部4bとの間に隙間が生じ、リップ部31と開口正面部4bとの間のシールが解除されるため、容器本体2と蓋体3との密着力が小さくなる。
【0075】
このように、本実施形態に係る薄板収納容器40によれば、施錠機構41を開錠することで、操作部44により被係合部48を押圧変形させて、リップ部31を変形させることができる。これにより、開口正面部4bからリップ部31が部分的に引き剥がされるため、容器本体2から蓋体3を取り外す際の抵抗が小さくなり、容器本体2から蓋体3を取り外す際の抵抗が小さくなる。その結果、蓋体開閉装置が停止することなく安定的に容器本体2から蓋体3を取り外すことができ、半導体部品の生産性を向上することができる。
【0076】
また、被係合部48に係合凹部49を形成することで、被係合部48を確実に変形させることができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、ガスケットが蓋体に嵌め込まれるものとして説明したが、容器本体に嵌め込まれるものとしてもよい。更に、上記実施形態では、シール部材としてガスケット26、45を用いるものとして説明したが、容器本体2と蓋体3との間をシールすることができれば、如何なる部材を用いてもよい。
【0078】
また、第1の実施形態では、突片である被操作リブ32が棒状であるものとして説明したが、出没孔13に挿入されてローラ部25により変位される形状であれば、如何なる形状であってもよい。更に、第1の実施形態では、施錠機構7のローラ部25で被操作リブ32を変位させるものとして説明したが、施錠機構7の如何なる部位で被操作リブ32を変異させてもよい。
【0079】
また、第2の実施形態では、操作部44が棒状であるものとして説明したが、施錠機構41に取り付けられるとともに開錠操作により被係合部48を変形させることができれば、弾性片や別部材など、如何なる形状、素材、構造のもので操作部44を構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…薄板収納容器、2…容器本体、3…蓋体、4…開口部、4a…開口周面部、4b…開口正面部、5…支持部材、6…係止凹部、7…施錠機構、8…係止部、9…ロボティックフランジ、10…台座部材、11…蓋体本体、11a…外周面部、12…表面プレート、13…出没孔、14…リテーナ、15…枠体、16…弾性部、17…保持溝、18…操作孔、19…回転部材、20…連結バー、22…被操作凹部、23…案内溝、24…回転軸、25…ローラ部、26…ガスケット(シール部材)、27…シール用溝、28…スリット、30…枠体(シール本体)、31…リップ部(シール本体)、31a…シール面、31b…裏面、32…被操作リブ(突片)、32a…第一リブ部、32b…第二リブ部、33…嵌合リブ、40…薄板収納容器、41…施錠機構、42…係止部、43…ローラ部、44…操作部、45…ガスケット(シール部材)、48…被係合部、48a…第一被係合部、48b…第二被係合部、49…係合凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有して基板を収納する容器本体と、施錠機構を備えて前記開口部に嵌め合わされる蓋体と、前記開口部と前記蓋体との間をシールするシール部材と、を有する薄板収納容器であって、
前記施錠機構の開錠操作により前記シール部材が変形して前記開口部と前記蓋体との間に隙間が形成される、薄板収納容器。
【請求項2】
前記シール部材は、前記開口部と前記蓋体との間をシールするシール本体と、前記シール本体から延びる突片と、を備え、
開錠操作が行われる前記施錠機構により前記突片が変位される、請求項1に記載の薄板収納容器。
【請求項3】
前記突片が、前記施錠機構の移動経路上に配置される、請求項2に記載の薄板収納容器。
【請求項4】
前記施錠機構は、前記施錠機構の開錠操作により前記シール部材を変形させる操作部を備える、請求項1に記載の薄板収納容器。
【請求項5】
前記シール部材は、前記操作部に係合される被係合部を備える、請求項4に記載の薄板収納容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−190928(P2012−190928A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51970(P2011−51970)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】