説明

薄板状材料搬送用エアテーブル及び薄板状材料搬送装置

【課題】クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる信頼性が高い薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を提供する。
【解決手段】薄板状材料搬送用エアテーブル14は、上面部16が略平坦な箱状体でガラス基板12の下面に対して空気(気体)を供給するための複数の給気孔18が上面部16に形成された外壁部20と、該外壁部20の内側を該外壁部20内に空気を導入するための下側チャンバ22及び給気孔18に隣接する上側チャンバ24に隔てるように該外壁部20内に設置され、且つ、上下方向に貫通する複数の中間通気孔26が形成された隔壁部28と、中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させるように上側チャンバ24内に設置された気流均一分配減衰器30と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料を非接触で支持する薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備える薄板状材料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイのガラス基板は僅かな傷や埃でも品質に大きく影響するため、このようなガラス基板の搬送においてはガラス基板の表面に傷が生じたり異物が付着しないようにガラス基板を平面に近い形状に保持しつつ所定の搬送面に沿って滑らかに搬送することが要求されている。
【0003】
一方、液晶ディスプレイでは、ガラス基板のサイズがますます大型化しており、例えば第8世代においては、W2200mm×L2500mmという大きさに比べて厚さは0.5〜0.7mm程度と非常に薄いため、ガラス基板を水平に搬送する際に、その外周端部のみならず、これよりも内側の部分も支持しなければ中央部が大きく垂れ下がってしまう。
【0004】
そこでガラス基板の搬送装置は、ガラス基板を全面においてできるだけ均等に支持し、平面に近い形状に保持して搬送するように工夫されている。
【0005】
例えば、搬送面の搬送方向及び搬送方向に垂直な幅方向に適宜なピッチで複数のローラを設置し、これら複数のローラでガラス基板を下方から支持して駆動する搬送装置が知られている。
【0006】
しかしながら、複数のローラでガラス基板を下方から支持して駆動する搬送装置は、ガラス基板の大型化に伴ってローラ、軸、軸受等の部品点数や組立工数が増加するため製造コストの増大という問題がある。更に、部品点数の増大によりメンテナンスコストが増大するという問題もある。又、ガラス基板がローラとの接触とローラからの離間とを繰り返すため振動が生じ、これにより騒音や発埃したり、ガラス基板の表面が欠損することがあり、ローラの増加により騒音や埃が一層発生しやすくなるという問題がある。又、軸の長尺化による軸の真直度の低下や撓み量の増大によりローラの回転精度が低下し、この点でも騒音や埃が発生しやすくなったり、ガラス基板の表面が欠損しやすくなるという問題もある。
【0007】
これに対し、上面部に多数の細孔が形成されたエアテーブルを用いてガラス基板を浮上させつつエアの圧力で駆動して非接触で搬送する搬送装置が知られている(例えば特許文献1、2、3参照)。又、セラミック等の多孔質材料で上面部を構成したエアテーブルも知られている(例えば特許文献4参照)
【0008】
又、ガラス基板の幅方向の中央近傍にはエアテーブルを設置してガラス基板の中央部の垂れ下がりを抑制し、ガラス基板における搬送方向に垂直な幅方向の両端近傍をローラで下方から支持してガラス基板を駆動するようにした搬送装置が知られている(例えば特許文献5、6参照)。
【0009】
エアテーブルでガラス基板を搬送する搬送装置や、ガラス基板の幅方向の中央近傍にはエアテーブルを設置してガラス基板の中央部の垂れ下がりを抑制し、ガラス基板における搬送方向に垂直な幅方向の両端近傍をローラで下方から支持してガラス基板を駆動するようにした搬送装置は、ガラス基板を均一な圧力で、且つ、非接触で支持するので、搬送装置との接触によるガラス基板の振動やガラス基板の欠損、ガラス基板への異物の付着の抑制が期待される。
【0010】
【特許文献1】特開平10−139160号公報
【特許文献2】特開平11−268830号公報
【特許文献3】特開平11−268831号公報
【特許文献4】特開2004−307152号公報
【特許文献5】特開2003−63643号公報
【特許文献6】特開2005−29359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、実際にはガラス基板の浮上量(ガラス基板とエアテ−ブルの上面との隙間)は0.1〜0.5mm程度と小さいため、ガラス基板とエアテーブルとの接触を確実に防止することは困難であり、信頼性という点で問題がある。尚、ガラス基板とエアテーブルとの接触を確実に防止するためには浮上量が1mm以上であることが好ましい。又、浮上量が小さいため、複数のエアテーブルを並べて設置する場合、これらの上面の高さをそれだけ高精度で一致させる必要があり、設置作業が煩雑で設置工数が大きいという問題がある。又、ガラス基板の搬送装置はクリーンルーム内で使用されることが多いが、クリーンルームの清浄空気の下降気流の流速が500mm/sec程度であるのに対し、エアテーブルから噴射する空気の流速は900〜2500mm/sec程度でクリーンルームの清浄空気の下降気流よりも大幅に速いため、クリーンルーム内の空気の乱れを生じさせるという問題がある。尚、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制するためには、エアテーブルから噴射する空気の流速をクリーンルームの清浄空気の下降気流の流速よりも小さく抑制することが好ましい。又、このような空気の乱れにより、却ってガラス基板に埃等の異物が付着しやすくなることもある。尚、セラミック等の多孔質材料で上面部を構成したエアテーブルは、通気抵抗が大きく噴出する空気の流量が少ないため、クリーンルーム内の空気の乱れは抑制されるが、上記よりも浮上量が更に小さいという問題がある。
【0012】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであってクリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる信頼性が高い薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上面部が略平坦な箱状体で薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が前記上面部に形成された外壁部と、該外壁部の内側を該外壁部内に前記気体を導入するための下側チャンバ及び前記給気孔に隣接する上側チャンバに隔てるように該外壁部内に設置され、且つ、上下方向に貫通する複数の中間通気孔が形成された隔壁部と、前記中間通気孔から前記給気孔への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させるように前記上側チャンバ内に設置された気流均一分配減衰器と、を有することを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブルにより、上記目的を達成するものである。
【0014】
本発明に想到する過程で、発明者らは、薄板状材料の浮上量を増加させるために様々な構成のエアテーブルを試作し、実際に薄板状材料を搬送して薄板状材料の浮上量を測定したところ、例えば、圧縮空気の圧力の増加等により、エアテーブルの上面の給気孔から供給する気体の流速を増大させることで、薄板状材料の浮上量を増加させることができた。しかしながら、このように供給する気体の流速を増加させることで、クリーンルーム内の空気の乱れを大きくしてしまった。そこで発明者らは更に鋭意検討を重ねたところ、エアテーブルの上面の給気孔から供給する気体の流速を増大させなくても、エアテーブルの上面の給気孔から供給する気体の流量を増大させれば薄板状材料の浮上量を増加させることができることを見出した。具体的には、エアテーブル内における気体の流路の抵抗を低減することで薄板状部材の下面に供給する気体の流量を増加させて薄板状材料の浮上量を増加させることができ、更に、エアテーブル内を中間通気孔が形成された隔壁部で気体を導入するための下側チャンバ及び給気孔に隣接する上側チャンバに隔て、隔壁部において気流の分布をある程度均一化すると共に上側チャンバ内に中間通気孔から給気孔への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させる気流均一分配減衰器を備えることで、給気孔から薄板状部材の下面に供給する気体の流速を低減してクリーンルーム内の空気の乱れを抑制することができることを見出した。
【0015】
このように、本発明は、エアテーブルの上面の給気孔から薄板状部材の下面に供給する気体の流速を抑制しつつ気体の流量を増大させるものであり、気体の流速を増大させることで薄板状材料の浮上量を増加させるという技術とは全く異なるコンセプトに基いてなされたものである。
【0016】
尚、前記気流均一分配減衰器は、例えば、網状体及び厚さ方向に貫通する複数の減衰用通気孔が形成された板状体のいずれかで開口面積比率が前記隔壁部よりも大きく、前記上側チャンバ内を上下方向に仕切るように設置された均一開口部材を有してなる構成としてもよい。
【0017】
この場合、前記気流均一分配減衰器は、前記隔壁部の中間通気孔の真上に相当する領域の少なくとも一部に、前記中間通気孔から真上への前記気体の流れを妨げるための障壁部を有する構成としてもよい。
【0018】
又、前記気流均一分配減衰器は、略垂直な姿勢で配置された複数の薄板部材が微細な間隔で略平行に並設されたフィン状の均一開口部材を有してなる構成としてもよい。
【0019】
又、前記気流均一分配減衰器は、前記隔壁部の上側を覆うように配設された綿状の均一開口部材を有してなる構成としてもよい。
【0020】
これらの場合、前記外壁部の底板部の中央近傍に前記気体を導入するための導入孔を設け、前記隔壁部を前記中間通気孔の開口面積比率が中央部よりも周辺部において高い構成としてもよい。
【0021】
又、網状体及び複数の通気孔が形成された板状体のいずれかで開口面積比率が前記隔壁部よりも大きい、前記気流均一分配減衰器を保護するための保護部材を前記気流均一分配減衰器の上側に設置してもよい。
【0022】
又、本発明は、以上のいずれかに記載の薄板状材料搬送用エアテーブルを備えることを特徴とする薄板状材料搬送装置により、上記目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる信頼性が高い薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明の好ましい実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る薄板状材料搬送装置10は、例えば大型のLCD用のガラス基板(薄板状材料)12を、薄板状材料搬送用エアテーブル14で非接触で支持して搬送するものであり、薄板状材料搬送用エアテーブル14の構造に特徴を有している。
【0026】
図2に示されるように、薄板状材料搬送用エアテーブル14は、上面部16が略平坦な箱状体でガラス基板12の下面に対して空気(気体)を供給するための複数の給気孔18が上面部16に形成された外壁部20と、外壁部20の内側を外壁部20内に空気を導入するための下側チャンバ22及び給気孔18に隣接する上側チャンバ24に隔てるように外壁部20内に設置され、且つ、上下方向に貫通する複数の中間通気孔26が形成された隔壁部28と、中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させるように上側チャンバ24内に設置された気流均一分配減衰器30と、を有している。
【0027】
尚、薄板状材料搬送用エアテーブル14は、ガラス基板12の搬送方向に対して垂直な幅方向に複数(本第1実施形態では4台)備えられている。
【0028】
外壁部20は、略直方体で上方に開口した箱体の基部32と、第1の枠体34と、第2の枠体36と、第3の枠体38と、を有している。これら第1の枠体34、第2の枠体36及び第3の枠体38は、いずれも基部32の内側面に内接し、この順で基部32の底板部40から上側に重なるように配置されている。尚、第2の枠体36は、上側チャンバ24を升目格子状に仕切るように設置された格子部材36Aを備えている。又、第3の枠体38も、格子部材36Aの真上に相当する位置に格子部材38Aを備えている。第3の枠体38の上端は基部32の上端よりも上方に突出しており、この第3の枠体38の上端に前記上面部16が取付けられている。
【0029】
上面部16は、網状体や厚さ方向に貫通する給気孔が形成された板状体等であり、気流均一分配減衰器30を保護するための保護部材の役割も担っている。尚、給気孔の形状としては、丸孔、角孔、長孔、スリット等を例示することができる。又、基部32の底板部40の中央近傍には空気を導入するための導入孔42が設けられている。導入孔42には給気管44を介してブロア又はコンプレッサー等の給気ユニット46及びエアフィルタ48が連結されており、エアフィルタ48で異物が除去された空気が上面部16の給気孔18から上方に供給されるようになっている。
【0030】
隔壁部28は、外壁部20の基部32の内側面に内接する板状体であり、第1の枠体34と第2の枠体36に挟まれて外壁部20の上面部16と底板部40との間に保持されている。尚、隔壁部28は、網状体としてもよい。本第1実施形態では隔壁部28の中間通気孔26の開口面積比率は全面において均一である。
【0031】
気流均一分配減衰器30は、上側チャンバ24内を上下方向に仕切るように設置された網状体の均一開口部材50を有している。均一開口部材50は複数の減衰用通気孔51を有している。均一開口部材50は、第2の枠体36と第3の枠体38に挟まれて外壁部20の上面部16と隔壁部28との間に保持されている。尚、厚さ方向に貫通する複数の減衰用通気孔が形成された板状体を均一開口部材として用いてもよい。均一開口部材50は減衰用通気孔51の開口面積比率が隔壁部28よりも大きいことが好ましい。
【0032】
又、気流均一分配減衰器30は、隔壁部28の中間通気孔26の真上に相当する領域に、中間通気孔26から真上への気体の流れを妨げるための障壁部52を有している。障壁部52は、中間通気孔26よりも若干大きな小片であり均一開口部材50の下面に取付けられている。尚、網状体の均一開口部材50に障壁部52が取付けられた構成の気流均一分配減衰器30に代えて、例えば、通気孔が形成された板状体で隔壁部52の中間通気孔26の真上に相当する部分が非開口の障壁部である一体構造の気流均一分配減衰器を用いてもよい。
【0033】
又、薄板状材料搬送装置10は、ガラス基板12を搬送方向に駆動するための駆動ユニット54を備えている。
【0034】
駆動ユニット54は、ガラス基板12の下面に接触してガラス基板12を搬送方向に駆動する複数のローラ56を有している。これらローラ56は、複数並べて設置された薄板状材料搬送用エアテーブル14の幅方向両側に配置され、複数の対のローラ56が搬送方向に適宜なピッチで設置されている。ローラ56は、ガラス基板12の下面に接触するローラ部56A及びこれよりも幅方向外側に設置されたフランジ部56Bを備え、図示しない回転駆動源に連結されている。尚、駆動ユニット54は、ローラ56のローラ部56A上端が薄板状材料搬送用エアテーブル14の上面部16よりも数mm程度高くなるように設置されている。
【0035】
次に、薄板状材料搬送装置10の作用について説明する。
【0036】
薄板状材料搬送装置10は、例えば、薄板状材料搬送用エアテーブル14の上面部16の開口面積比率の拡大等により、薄板状材料搬送用エアテーブル14における空気の流路の抵抗を低減することで、ガラス基板12の大きな浮上量が得られる。
【0037】
又、導入孔42から薄板状材料搬送用エアテーブル14の外壁部20内に導入される空気は、隔壁部28の中間通気孔26を通過することで気流の分布がある程度均一化される。更に、中間通気孔26を通過して上昇する空気は、気流均一分配減衰器30の障壁部52により流速が低減されると共に、均一開口部材50を通過することで、気流の分布が更に均一化される。このように気流の分布が均一化され、流速が低減された空気を薄板状材料搬送用エアテーブル14の上面部16の給気孔18からガラス基板12の下面に供給するので、供給する気体の流量を増大させて、ガラス基板12の浮上量を増加させても、給気孔18から供給する空気の流速が低く、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制される。尚、図2において気流を示す矢印の一部が均一開口部材50の非開口部を通過するように図示されているが、図2の均一開口部材50の図示は模式的なものであり、実際には気流は均一開口部材50の減衰用通気孔51を通過する。
【0038】
又、ガラス基板12の下面に供給する気体の流速を増大させるのではなく、気体の流量を増大させてガラス基板12の浮上量を増加させるので、高圧の圧縮気体を使用する必要がなく、給気ユニット46を含めた装置の製造コストの低減に寄与する。
【0039】
又、薄板状材料搬送装置10は、駆動ユニット54の複数のローラ56がガラス基板12の下面に接触してガラス基板12を搬送方向に駆動するが、薄板状材料搬送用エアテーブル14が非接触でガラス基板12を支持しているので、ローラ56との接触部においてガラス基板12に作用する力が小さく、ローラ56との接触による表面の欠損や異物の付着が抑制される。
【0040】
又、空気の圧力で駆動力を付与する搬送装置と比較すると、ガラス基板12を支持するだけの低圧の空気を供給するのみで足りるので、この点でも装置の製造コストの低減に寄与でき、更に、エアの複雑な制御が不要であるので、構造が簡単である。
【0041】
このように、薄板状材料搬送装置10は、薄板状材料搬送用エアテーブル14によりガラス基板12を大きな浮上量で非接触で支持するので、ガラス基板12と薄板状材料搬送用エアテーブル14との接触を防止でき、更に、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制されるので、ガラス基板12の表面に傷が生じたり異物が付着しにくく、信頼性が高い搬送を実現できる。
【0042】
又、ガラス基板12の大きな浮上量が得られるので、複数の薄板状材料搬送用エアテーブル14を並べて設置する際に、これらの上面部16の高さのずれの許容値がそれだけ広く、設置工数の低減に寄与する。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0044】
本第2実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブル60は、図3及び図4に示されるように前記第1実施形態に係る気流均一分配減衰器30に代えて、略垂直な姿勢で配置された複数の薄板部材62Aが微細な間隔で略平行に並設されたフィン状の均一開口部材62を有してなり、薄板部材62Aの間の隙間部が減衰用通気孔を構成する気流均一分配減衰器64を備えることを特徴としている。
【0045】
他の構成については前記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については図1及び図2と同一符号を付することとして説明を省略する。尚、図3では、便宜上隔壁部28を線で描いているが、隔壁部28は前記第1実施形態と同様に中間通気孔26が形成された板状体としてもよいし、網状体としてもよい。
【0046】
均一開口部材62は、複数の薄板部材62Aを厚さ方向に貫通する複数のパイプ部材62Bを有しこれらパイプ部材62Bの両端において外壁部20の基部22に取付けられている。尚、本第2実施形態では外壁部20は、第1の枠体34、第2の枠体36及び第3の枠体38を備えておらず、上面部16は基部32の上端に取付けられている。
【0047】
薄板状材料搬送用エアテーブル60も、前記第1実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブル14と同様に、上側チャンバ24内に中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させる気流均一分配減衰器64を備えているので、ガラス基板12の下面に供給する空気の流量を増大させて、ガラス基板12の浮上量を増加させても、給気孔18から供給する空気の流速が低く、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制される。
【0048】
尚、外壁部20の上面部16から空気を均一に供給するためには、隔壁部28は、中間通気孔26の開口面積比率が(導入孔42の真上の)中央部よりも周辺部において高い構成であることが好ましい。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0050】
本第3実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブル70は、図5に示されるように前記第1実施形態に係る気流均一分配減衰器30に代えて、隔壁部28の上側を覆うように配設された綿状の均一開口部材72を有してなり、綿状の均一開口部材72の隙間が減衰用通気孔を構成する気流均一分配減衰器74を備えることを特徴としている。他の構成については前記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については図1及び図2と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0051】
均一開口部材72は、隔壁部28の上面の全面に敷設されている。又、気流均一分配減衰器74は、均一開口部材72を上側から覆う網状部材76を有しており、この網状部材76により、綿状の均一開口部材72の飛散が防止されている。均一開口部材72としては、例えばステンレススチールウールや非発塵性の高分子長繊維等を用いることができる。
【0052】
薄板状材料搬送用エアテーブル70も、前記第1実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブル14と同様に、上側チャンバ24内に中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させる気流均一分配減衰器74を備えているので、ガラス基板12の下面に供給する空気の流量を増大させて、ガラス基板12の浮上量を増加させても、給気孔18から供給する気体の流速が低く、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制される。
【0053】
本第3実施形態においても、外壁部20の上面部16から空気を均一に供給するためには、隔壁部28は、中間通気孔26の開口面積比率が(導入孔42の真上の)中央部よりも周辺部において高い構成であることが好ましい。
【0054】
尚、上記第1〜第3実施形態において、薄板状材料搬送装置10は、駆動ユニット54のローラ56がガラス基板12の下面に接触してガラス基板12を搬送方向に駆動する構成であるが、薄板状材料搬送用エアテーブルでガラス基板全面を浮上支持し、薄板状材料搬送用エアテーブルからガラス基板の下面に向けて、且つ、搬送方向に傾斜した方向に気体を供給してガラス基板を非接触で搬送方向に駆動する構成としてもよい。
【0055】
この場合も、薄板状材料搬送用エアテーブルの上側チャンバ24内に中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させる気流均一分配減衰器を備えることで、ガラス基板12の下面に供給する空気の流量を増大させて、ガラス基板12の浮上量を増加させても、給気孔18から供給する気体の流速が低くなり、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制される。
【0056】
尚、上記第1〜第3実施形態の気流均一分配減衰器30、64、74は本発明の例であり、隔壁部28の中間通気孔26から給気孔18への気流の分配を均一化し、且つ、該気流の速度を減衰させることができるものであれば、他の構成の気流均一分配減衰器を上側チャンバに備えてもよい。
【0057】
又、上記第1〜第3実施形態において、外壁部20の上面部16は、網状体又は給気孔が形成された板状体で気流均一分配減衰器を保護する保護部材の役割を担っているが、例えば前記第1実施形態の気流均一分配減衰器30のように、上部から異物等が落下しても損傷しにくい気流均一分配減衰器を用いる場合には、例えば基部32の上端面が上面部を構成し、基部32の上端面の開口部が給気孔を構成する薄板状材料搬送用エアテーブルとしてもよい。
【0058】
又、上記第1〜第3実施形態において、薄板状材料搬送用エアテーブル14、60、70からガラス基板12の下面に供給する気体は空気であるが、例えば、窒素ガス、希ガス等の他の気体をガラス基板12の下面に供給してもよい。
【0059】
又、上記第1〜第3実施形態において、薄板状材料搬送装置10は、薄板状材料搬送用エアテーブル14、60、70を幅方向に4台備えているが、ガラス基板12の幅等に応じて3台以下の薄板状材料搬送用エアテーブルを備える構成としてもよく、5台以上の薄板状材料搬送用エアテーブルを備える構成としてよい。
【0060】
又、上記第1〜第3実施形態は、ガラス基板12を搬送するためのものであるが、面積に比較して板厚の薄いいわゆる薄板状材料であれば、他の材料の搬送にも本発明は適用可能である。例えば、金属薄板状材料、樹脂の薄板状材料等の撓みを生じ易い材料の搬送の場合に適用可能である。
【実施例1】
【0061】
上記第1実施形態のとおり、薄板状材料搬送装置10を構成し、クリーンルーム内でガラス基板12を搬送した。具体的な条件は以下のとおりである。
【0062】
ガラス基板12の寸法:W1500mm×L1800mm×t0.7mm
クリーンルーム内の下降気流の流速:約500mm/sec
薄板状材料搬送用エアテーブル14の外形寸法:W300mm×L700mm×H40mm
第2の枠体36及び第3の枠体38の升目格子寸法:90mm×25mm
第2の枠体36及び第3の枠体38の升目格子数:3列×23行
中間通気孔26の大きさ及びピッチ:φ3.5×P15mm
隔壁部28の開口面積比率:4.2%
気流均一分配減衰器30の均一開口部材50の材料:金網
気流均一分配減衰器30の開口面積比率:37%
外壁部20の上面部16の材料:金網
外壁部20の上面部16の開口面積比率:60%
【0063】
以上の条件で、ガラス基板12の中央近傍における浮上量を測定したところ、浮上量は2〜6mmであった。
【0064】
又、薄板状材料搬送用エアテーブル14から上方に供給する空気の流速を測定したところ流速の最大値は約220mm/secであった。
【実施例2】
【0065】
上記第2実施形態のとおり、薄板状材料搬送装置10を構成し、クリーンルーム内でガラス基板12を搬送した。具体的な条件は以下のとおりである。
【0066】
薄板状材料搬送用エアテーブル60の外形寸法:W300mm×L700mm×H50mm
隔壁部28の材料:エキスパンドメタル
隔壁部28の開口面積比率:65%
気流均一分配減衰器64の外形寸法:W280mm×L680mm×22mm
薄板部材62Aの材料:アルミニウム薄板
薄板部材62Aの厚さ×並設ピッチ:T0.11mm×P22mm
【0067】
尚、ガラス基板12の寸法、クリーンルームの下降気流の流速、外壁部20の上面部16の材料、開口面積比率は実施例1と同様である。
【0068】
以上の条件で、ガラス基板12の中央近傍における浮上量を測定したところ、浮上量は3〜6mmであった。
【0069】
又、薄板状材料搬送用エアテーブル60から上方に供給する空気の流速を測定したところ流速の最大値は約140mm/secであった。
【実施例3】
【0070】
上記第3実施形態のとおり、薄板状材料搬送装置10を構成し、クリーンルーム内でガラス基板12を搬送した。具体的な条件は以下のとおりである。
【0071】
薄板状材料搬送用エアテーブル60の外形寸法:W300mm×L700mm×H50mm
隔壁部28の材料:エキスパンドメタル
隔壁部28の開口面積比率:65%
気流均一分配減衰器74の均一開口部材72の堆積高さ:18mm
気流均一分配減衰器74の均一開口部材72の充填率:約3重量%
【0072】
尚、外壁部20の上面部16の材料、開口面積比率、ガラス基板12の寸法、クリーンルームの下降気流の流速は実施例1と同様である。
【0073】
以上の条件で、ガラス基板12の中央近傍における浮上量を測定したところ、浮上量は2.5〜5mmであった。
【0074】
又、薄板状材料搬送用エアテーブル70から上方に供給する空気の流速を測定したところ流速の最大値は約120mm/secであった。
【0075】
実施例1〜3の測定結果を表1に対比して示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示されるように、実施例1〜3は、いずれもガラス基板12の浮上量が2mm以上であり、ガラス基板と薄板状材料搬送用エアテーブルとの接触を防止するために充分な浮上量が得られた。
【0078】
又、実施例1〜3は、いずれも薄板状材料搬送用エアテーブルから供給する空気の流速が220mm/sec以下で、クリーンルームの下降気流の流速である500mm/secの半分以下であり、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制する充分な効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料の搬送に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薄板状材料搬送装置を示す一部ブロック図を含む前面図
【図2】同薄板状材料搬送装置の薄板状材料搬送用エアテーブルの構造を示す断面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブルの構造を示す断面図
【図4】同薄板状材料搬送用エアテーブルの気流均一分配減衰器の構造を示す斜視図
【図5】本発明の第3実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブルの構造を示す断面図
【符号の説明】
【0081】
10…薄板状材料搬送装置
12…ガラス基板(薄板状材料)
14、60、70…薄板状材料搬送用エアテーブル
16…上面部
18…給気孔
20…外壁部
22…下側チャンバ
24…上側チャンバ
26…中間通気孔
28…隔壁部
30、64、74…気流均一分配減衰器
50、62、72…均一開口部材
51…減衰用通気孔
62A…薄板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部が略平坦な箱状体で薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が前記上面部に形成された外壁部と、該外壁部の内側を該外壁部内に前記気体を導入するための下側チャンバ及び前記給気孔に隣接する上側チャンバに隔てるように該外壁部内に設置され、且つ、上下方向に貫通する複数の中間通気孔が形成された隔壁部と、前記中間通気孔から前記給気孔への気流の分配を均一化すると共に該気流の速度を減衰させるように前記上側チャンバ内に設置された気流均一分配減衰器と、を有することを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項2】
請求項1において、
前記気流均一分配減衰器は、網状体及び厚さ方向に貫通する複数の減衰用通気孔が形成された板状体のいずれかで開口面積比率が前記隔壁部よりも大きく前記上側チャンバ内を上下方向に仕切るように設置された均一開口部材を有してなる構成であることを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項3】
請求項2において、
前記気流均一分配減衰器は、前記隔壁部の中間通気孔の真上に相当する領域の少なくとも一部に、前記中間通気孔から真上への前記気体の流れを妨げるための障壁部を有することを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項4】
請求項1において、
前記気流均一分配減衰器は、略垂直な姿勢で配置された複数の薄板部材が微細な間隔で略平行に並設されたフィン状の均一開口部材を有してなる構成であることを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項5】
請求項1において、
前記気流均一分配減衰器は、前記隔壁部の上側を覆うように配設された綿状の均一開口部材を有してなる構成であることを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記外壁部の底板部の中央近傍に前記気体を導入するための導入孔が設けられ、前記隔壁部は前記中間通気孔の開口面積比率が中央部よりも周辺部において高いことを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項7】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
網状体及び複数の通気孔が形成された板状体のいずれかで開口面積比率が前記隔壁部よりも大きい、前記気流均一分配減衰器を保護するための保護部材が前記気流均一分配減衰器の上側に設置されたことを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の薄板状材料搬送用エアテーブルを備えることを特徴とする薄板状材料搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−106521(P2007−106521A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296809(P2005−296809)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(592053778)株式会社日本設計工業 (18)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】