説明

薄板状電磁波シールド材及び車載用電磁波シールド部品

【課題】ワイヤーハーネスのコネクタ等、複雑な外面形状の部分でも確実に電磁シールド状態とすることができる薄板状電磁波シールド材を提供する。
【解決手段】厚さ10〜200μmの高分子材料からなるフィルム状の支持体2の片面或いは両面に、金、銀、銅、アルミニウム又は錫等の導電金属材料の中から選ばれた少なくとも一種以上の金属を厚さ10〜500nmにて蒸着した導電性薄膜3を有し、幅が0.1〜1.0mm、長さが100mm以上であり、且つ、弾性率が2〜4GPa、静摩擦係数が0.2〜0.7、真直度が1〜60μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス、ケーブル、コネクタ等に対する電磁波を遮蔽するために、これらの外側を覆うように巻き付けられる薄板状電磁波シールド材、及び、この電磁波シールド材を巻き付けてなる車載用電磁波シールド部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネス、ケーブル、コネクタ等に対する電磁波を遮蔽するために電磁波シールド材が用いられている。この電磁波シールド材としては、従来、特許文献1又は特許文献2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1記載の電磁波シールド材(難燃性電磁波シールド材)は、フィルム状の支持体の片面に導電性薄膜を介在させて導電性接着剤層を積層してなる三層構造のものであり、導電性接着剤層が、接着剤に導電性粉末及び難燃剤を添加してなる構成とされている。この場合、フィルム状の支持体の厚さは9〜75μm、導電性薄膜の厚さが0.03〜3.5μm、導電性接着剤層が5〜80μmとされ、リボン電線、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント回路基板等の電線又はワイヤーハーネスなどに、縦添え又はラップ巻きされる。
【0004】
特許文献2記載の電磁波シールド材は、シールド用金属箔の一面に樹脂基材が一体に設けられるとともに、シールド用金属箔の長手方向と直交する幅方向の端部に、樹脂基材の幅方向の端部より長く外側に突出した突出部が形成されており、ワイヤーハーネスに巻き付ける際に、突出部に裏面を重ね合わせながら螺旋状に巻き付けることで、金属箔がワイヤーハーネスの長手方向に連続するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−258480号公報
【特許文献2】特開2007−27050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ワイヤーハーネスのほぼ直線状又は大きな曲線半径のケーブル部分に電磁波シールド材を巻き付ける場合は、上記のような電磁波シールド材で十分にシールドすることができるが、複数本束ねられたケーブルから複数に分岐されるような場合に、その分岐部に巻き付ける場合、あるいは、ケーブル端部のコネクタなど、表面に凹凸を有する複雑形状のものに巻き付ける場合は、上記のような電磁波シールド材では、複雑形状の外面に沿って正確に巻き付けることが難しく、螺旋状に重ね巻きできずにシールド材間に隙間が生じたり、電磁波シールド材に皺が生じて部分的に浮き上がるなどにより、シールド構造が不完全になり易い。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、ワイヤーハーネスのコネクタ等、複雑な外面形状の部分でも確実に電磁シールド状態とすることができる薄板状電磁波シールド材、及び、この電磁波シールド材を巻き付けてなる車載用電磁波シールド部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
外面形状に凹凸を有する複雑形状の対象物に対しては、その凹凸よりも広い幅の電磁波シールド材では、巻き付けたときに凹凸面に追従しないで、隙間や皺が生じ易い。このため、電磁波シールド材の幅を小さくすれば、対象物表面の凹凸形状に沿って隙間なく緊密に巻き付けることができると考えられる。この場合、幅が細いほど、微小な凹凸面にも追従できるが、電磁波シールド材としては、単にシールド材を細幅にするだけでは不十分であり、電磁波シールド材に要求される機能を満足させることが必要である。
【0009】
本発明の薄板状電磁波シールド材は、厚さ10〜200μmの高分子材料からなるフィルム状の支持体の片面或いは両面に、金、銀、銅、アルミニウム又は錫等の導電金属材料の中から選ばれた少なくとも一種以上の金属を厚さ10〜500nmにて蒸着した導電性薄膜を有し、幅が0.1〜1.0mm、長さが100mm以上であり、且つ、弾性率が2〜4GPa、静摩擦係数が0.2〜0.7、真直度が1〜60μmであること特徴とする。
【0010】
この薄板状電磁波シールド材は、高分子材料からなるフィルム状支持体に導電金属材料を蒸着して得た導電性薄膜が設けられているので、ワイヤーハーネス等に巻き付ける際の柔軟性を確保しつつ電磁波遮蔽効果を得ることができる。そして、その場合に、幅が0.1〜1.0mmと細幅に形成されているので、複雑な外面形状の対象物にも密に巻き付けることができる。この場合、幅が1.0mmを超えると、複雑な外面形状のものには対応することが難しく、0.1mm未満では、巻き付け時の引っ張り力に耐えられずに破断等が生じるため、幅は0.1〜1.0mmが好ましい。
【0011】
また、弾性率は、2GPa未満であると、巻き付けに必要な張力によって導電性薄膜に亀裂が生じるおそれがあり、一方、4GPaを超えると、巻き付け時の抵抗が大きくなることから、緊密な巻き付けに支障をきたすおそれがある。したがって、この弾性率が2〜4GPaの範囲に設定されていることから、ワイヤーハーネスへの巻き付け作業の際にフィルム状の支持体と導電性薄膜との一体となった変形を容易にし、導電性薄膜に亀裂を発生させることなく緊密に巻き付けることができる。
【0012】
さらに、複雑な凹凸表面に円滑に巻き付けるには、適度な滑り性が必要であり、静摩擦係数が0.7を超えると、摩擦によってシールド材に傷等が生じ易く、また、0.2未満では形崩れが生じ易く、巻き付け状態が不安定になる。このため、静摩擦係数は0.2〜0.7の範囲が好ましい。
【0013】
また、この電磁波シールド材をワイヤーハーネス等に巻き付ける場合に、ゆがみがあると、密に巻き付けることが難しくなり、その真直度が1〜60μmの範囲内であることにより、正確かつ緊密に巻き付けることができる。
【0014】
また、本発明の薄板状電磁波シールド材において、前記導電性薄膜の表面に、Si酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、Sn酸化物、Y酸化物、インジウム錫酸化物、Mg酸化物から選択される1種または2種以上からなる酸化物膜が0.7〜10mg/mの付着量で形成されているとよい。
これらの酸化物膜は、導電性薄膜の表面を覆って腐食を防止する効果があり、その付着量が0.7mg/m未満では、防食の効果が不十分であり、10mg/mを超えると、導電性能に支障をきたす。この酸化物膜は、導電性薄膜の表面に蒸着法にて付着することができる。この酸化物膜としてはSiOが最適である。
【0015】
本発明の薄板状電磁波シールド材を撚糸して製造された電磁波シールド糸としてもよい。
撚糸して電磁波シールド糸とすることにより、その強度を向上させることができる。
【0016】
そして、本発明の薄板状電磁波シールド材或いは電磁波シールド糸を車載用のワイヤーハーネス周りに巻き付けることにより形成された車載用電磁波シールド部品とするとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高分子材料からなるフィルム状支持体に導電金属材料を蒸着して得た導電性薄膜が設けられているので、ワイヤーハーネス等に巻き付ける際の柔軟性を確保しつつ電磁波遮蔽効果を得ることができるとともに、幅が0.1〜1.0mmと細幅に形成されているので、複雑な外面形状の対象物にも密に巻き付けることができ、その場合に、弾性率が2〜4GPa、静摩擦係数が0.2〜0.7であるので、ワイヤーハーネスへの巻き付け作業の際にフィルム状の支持体と導電性薄膜との一体となった変形を容易にし、導電性薄膜に亀裂が発生することを防止することができ、また、適度の滑り性によって、複雑な凹凸表面に円滑に巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の薄板状電磁波シールド材の一実施形態を示す拡大断面図である。
【図2】図1の電磁波シールド材の製造途中の工程を概略的に示す模式図である。
【図3】図2中のボビンの正面図である。
【図4】図1の電磁波シールド材をワイヤーハーネスに巻き付けている状態を示す斜視図である。
【図5】電磁波シールド効果の評価装置を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
この実施形態の電磁波シールド材1は、図1に示すように、高分子材料からなるフィルム状の支持体2の片面に、導電金属材料からなる導電性薄膜3が形成されている。
【0020】
フィルム状の支持体2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、これに限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル等の合成樹脂、ブチルゴムやシリコーンゴムなども適用することができる。この支持体の厚さは、その柔軟性を維持しつつ巻き付け時の機械的強度を有する範囲として、10〜200μmが好ましい。
【0021】
導電金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、錫等が適用可能であり、支持体2の表面に真空蒸着、スパッタリング、CVD等の蒸着法によって成膜され、その導電性薄膜3の厚さは、10〜500nmとされる。これら導電金属材料のうちの少なくとも一種が選択されるが、二種以上を積層した導電性薄膜としてもよい。また、図1にはフィルム状の支持体2の片面にのみ導電性薄膜3を形成したものを示しているが、支持体2の両面に導電性薄膜3を形成したものとしてもよい。
【0022】
また、図1に示す例では、導電性薄膜3の表面にSi酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、Sn酸化物、Y酸化物、インジウム錫酸化物、Mg酸化物から選択される1種または2種以上からなる酸化物膜4が形成されている。これらの酸化物膜4は、耐食性に優れるため、導電性薄膜3の表面を覆って腐食を防止する効果があり、長期にわたって変色等を防止することができる。その中でもSiO膜が最も適している。
この酸化物膜4は付着量が0.7〜10mg/mとされる。付着量が0.7mg/m未満では、防食の効果が不十分であり、10mg/mを超えると、導電性能に支障をきたす。また、この範囲の付着量とすることにより、SiO膜などは透明度が高いため、導電性薄膜3の光沢を阻害せず、電磁波シールド材1の表面を良好な金属光沢面とすることができる。この酸化物膜4は、導電性薄膜3の表面に真空蒸着、スパッタリング等の蒸着法にて付着することができる。
なお、この酸化物膜4は、この程度の付着量であると、緻密な膜ではなく多孔質状あるいは不連続に分散して形成されるため、導電性薄膜3の表面が完全な電気絶縁状態となるわけではない。
【0023】
このような積層構造とされた電磁波シールド材1の全体としての幅は0.1〜1.0mmとされている。この幅を0.1〜1.0mmとしたのは、1.0mmを超えると、複雑な外面形状のものには対応することが難しく、0.1mm未満では、巻き付け時の引っ張り力に耐えられずに破断等が生じるおそれがあるからである。
【0024】
また、この電磁波シールド材1の全体の弾性率は2〜4GPa、静摩擦係数は0.2〜0.7、真直度は1〜60μmとされる。
このうち、弾性率は、電磁波シールド材に引っ張り力を作用させたときの伸びとの関係から求められる縦弾性係数(ヤング率)であり、曲げ剛性、たわみ剛性とも呼ばれる。この弾性率が2GPa未満であると、伸び易くはなるが、導電性薄膜3がその伸びに追従できないので、巻き付けに必要な張力を作用させると導電性薄膜3に亀裂が生じるおそれがある。一方、4GPaを超えると、巻き付け時の抵抗が大きくなることから、緊密な巻き付けに支障をきたし、隙間が生じたり巻き付けむらが生じたりするおそれがある。
【0025】
また、静摩擦係数は0.7を超えると、摩擦によってシールド材1に傷等が生じ易く、また、0.2未満では、複雑な表面形状に巻き付けると形崩れが生じ易く、巻き付け状態が不安定になる。
さらに、真直度は、60μmを超えると、ゆがみが大き過ぎるために、巻き付け時に隣接するシールド材間に隙間が生じたり、相互に重なり合ったりする不具合が生じる。この真直度を1μm未満としても、それ以上の効果は期待できず不経済である。
したがって、この電磁波シールド材1の全体としての静摩擦係数は0.2〜0.7、真直度は1〜60μmが好ましい。
【0026】
このように構成した電磁波シールド材1は、広幅のフィルム状支持体に導電性薄膜及び酸化物膜をそれぞれ蒸着した後、図2に示すように、この電磁波シールドフィルム5をスリッター6によって0.1〜1.0mmに裁断することにより、製造される。
この場合、裁断後の電磁波シールド材1はボビン7に巻き取ることが行われ、そのボビン7としては、図3に示す形状のものが好ましい。このボビン7は、ストレートの胴体部7aの両端部につば部7bが形成されているが、そのつば部7bの内面が胴体部7aに対して直角ではなく、若干両端方向に傾いており、胴体部7aの外周面との間の角度が90°以上に形成されている。
【0027】
電磁波シールド材1のような細い線材をボビンに巻き取る場合、両端位置においては、つば部との間に隙間が生じて、既に巻き取られた部分とつば部との間に線材が食い込んでしまうことがあるが、図3に示すようなボビン7に巻き取ることにより、ボビン7の両端部においても電磁波シールド材1が整然と巻き取られ、これを繰り出す際にねじれや破断等が生じることが防止される。
【0028】
そして、この電磁波シールド材1を車載用のワイヤーハーネスに巻き付ける際は、予めワイヤーハーネスの必要箇所に接着剤を塗布しておき、その上から巻き付けられ、これにより車載用電磁波シールド部品が形成される。
この場合に、電磁波シールド材1は、その幅が0.1〜1.0mmの細幅に形成されているので、図4に示すようにワイヤーハーネス8に設けられるコネクタ8aの外面に巻き付ける場合など、複雑形状の対象物表面にも隙間なく緊密に巻き付けることができ、優れたシールド機能を発揮することができる。
【0029】
また、弾性率が2〜4GPaの範囲に設定されていることから、ワイヤーハーネス8への巻き付け作業の際にフィルム状の支持体2と導電性薄膜3との一体となった変形を容易にし、導電性薄膜3に亀裂を発生させることなく緊密に巻き付けることができる。
また、静摩擦係数が0.2〜0.7の範囲に設定されていることから、複雑な凹凸表面に適度な滑り性でもって巻き付けられ、傷等の発生や形崩れ等を生じることなく、巻き付け状態を安定させることができる。
さらに、真直度が1〜60μmの範囲内であることにより、巻き付けたシールド材間に隙間が生じたり、相互に重なり合ったりする不具合がなく、正確かつ緊密に巻き付けることができる。
また、導電性薄膜3の表面に酸化物膜4を形成したので、導電性薄膜3が腐食することが防止され、長期的に安定して電磁波シールド機能を発揮することができる。
【0030】
なお、この電磁波シールド材1を対象物に巻き付ける際に、一巻き毎にその幅寸法ずつ巻き付け位置をずらしながら螺旋状に巻き付けることにより、対象物の外表面全面を覆う方法、あるいは、対象物の外表面に多層状に巻き付けることにより、対象物の外表面全面を覆う方法、のいずれの巻き付け方法としてもよい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の効果を実証するために行った実施例について説明する。
フィルム状の支持体としてポリエチレンテレフタレートを用い、このポリエチレンテレフタレートの広幅のフィルムの片面に銅を蒸着して導電性薄膜を得た。さらに、この導電性薄膜の上にSiOからなる酸化物膜を蒸着により形成した。
そして、この広幅の電磁波シールド材を裁断して、細幅の電磁波シールド材とした。この電磁波シールド材として、表1に示す種類のものを作成した。
【0032】
【表1】

【0033】
そして、これら電磁波シールド材について、弾性率、静摩擦係数、真直度、巻き付け性、電磁波シールド効果、耐食性を測定、評価した。
弾性率は、株式会社エー・アンド・ディー製卓上万能試験機を使用し、JIS C 2151に準拠して測定した。
静摩擦係数は、株式会社エー・アンド・ディー製卓上万能試験機を使用し、ASTM D1894に準拠して測定した。
また、真直度は、株式会社ミツトヨ製3D CNC画像測定器の真直度測定モードを使用し、JIS B 0621に準拠し、切断面(スリット端面)を測定した。
【0034】
巻き付け性については、ブレーディング装置を使用してワイヤーハーネスに4Nの張力で巻き付けた後、巻き付け状態を目視により観察し、ねじれやシールド材間の隙間等がなく巻き付けられていたものを○、ねじれや隙間等が生じていたものを×とした。
【0035】
電磁波シールド効果については、社団法人関西電子工業振興センターで開発されたKEC法により評価した。図5は、社団法人関西電子工業振興センターで紹介されている評価装置を示しており、(a)が電界シールド効果評価装置11、(b)が磁界シールド効果評価装置12を示す。電界シールド効果評価装置11は、TEMセルの寸法配分を取り入れ、その伝送軸方向に垂直な面内で左右対称に分割した構造となっている。但し、測定試料の挿入によって、短絡回路が形成されることを防止するために、測定治具13の中心導体14の軸方向長さを短くしている。また、磁界シールド効果評価装置12は、磁界成分の大きな電磁界を発生させるために、測定治具15にシールド型円形ループ・アンテナ16を使用し、90度角の金属板と組み合わせて、ループ・アンテナの1/4の部分が外部に出ている構造となっている。符号17は発振器、18は分析器である。
【0036】
これら評価装置の測定治具13又は15の間に、裁断前の広幅の電磁波シールド材(電磁波シールドフィルム)Aを設置し、所定の周波数(MHz)を有する電磁波(入射波;入射電界又は入射磁界)を所定のエネルギーE1で電磁波シールド材のSiO2膜側から入射させて、電磁波シールド材の他方の面に透過する透過波(透過電界又は透過磁界)のエネルギーE2を測定し、下記式によりシールド効果(dB)を求めた。
シールド効果(dB)=20×log(E2/E1)
そして、1〜1000MHzの周波数範囲において、シールド効果が90%以上のものを○、90%未満のものを×とした。
【0037】
耐食性については、JIS H 8502に規定される中性塩水噴霧試験により、24時間試験を行い、錆の発生が認められなかったものを○、錆の発生が認められたものを×とした。
その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
この表2に示すように、試料1〜6のものにおいては、弾性率が2〜4GPa、静摩擦係数が0.2〜0.7、真直度が1〜60μmの範囲内であり、巻き付け性、電磁遮蔽効果、耐食性ともに良好であった。
なお、本発明は以上の記載に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、以上説明した薄板状電磁波シールド材を撚糸して電磁波シールド糸としてもよく、撚糸した電磁波シールド糸とすることにより、その強度をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 電磁波シールド材
2 支持体
3 導電性薄膜
4 酸化物膜
5 電磁波シールドフィルム
6 スリッター
7 ボビン
8 ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ10〜200μmの高分子材料からなるフィルム状の支持体の片面或いは両面に、金、銀、銅、アルミニウム又は錫等の導電金属材料の中から選ばれた少なくとも一種以上の金属を厚さ10〜500nmにて蒸着した導電性薄膜を有し、幅が0.1〜1.0mm、長さが100mm以上であり、且つ、弾性率が2〜4GPa、静摩擦係数が0.2〜0.7、真直度が1〜60μmであること特徴とする薄板状電磁波シールド材。
【請求項2】
前記導電性薄膜の表面にSi酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、Sn酸化物、Y酸化物、インジウム錫酸化物、Mg酸化物から選択される1種または2種以上からなる酸化物膜が0.7〜10mg/mの付着量で形成されていることを特徴とする請求項1記載の薄板状電磁波シールド材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の薄板状電磁波シールド材を撚糸して製造された電磁波シールド糸。
【請求項4】
請求項1又は2記載の薄板状電磁波シールド材を車載用のワイヤーハーネス周りに巻き付けることにより形成された車載用電磁波シールド部品。
【請求項5】
請求項3記載の電磁波シールド糸を車載用のワイヤーハーネス周りに巻き付けることにより形成された車載用電磁波シールド部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−35213(P2011−35213A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181083(P2009−181083)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】