薄片状酸化鉄微粒子、薄片状Fe系金属微粒子及びそれらの製造方法
【課題】有機物中への分散性、配向性に優れ、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子。該薄片状酸化鉄微粒子は、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することによりに製造され、また該薄片状Fe系金属微粒子は、該薄片状酸化鉄微粒子をさらに還元することにより製造される。
【解決手段】珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子。該薄片状酸化鉄微粒子は、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することによりに製造され、また該薄片状Fe系金属微粒子は、該薄片状酸化鉄微粒子をさらに還元することにより製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態が均一な薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子並びにそれらの製造方法に関する。本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子は、塗料用、顔料用、印刷インキ用、化粧品用、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料として好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化鉄は、結晶構造の違いにより、ヘマタイト(α-Fe2O3)が赤色系を示し、マグネタイト(Fe3O4)が黒色系を示し、マグヘマイト(γ-Fe2O3)が茶褐色系を示すことが知られている。そのため、これまで顔料用材料として広く使用されてきた。
また、マグネタイト、マグヘマイトは、顔料用材料としての用途の他に、その磁気特性を活かして、電波吸収体用、ノイズ抑制用、高透磁率材料用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料にも使用されている。
その中でも、粒子形態を薄片状に制御した酸化鉄粒子は、粒子形態が薄片状であることに起因して配向しやすいために、分散性及び被覆性に優れ、金属光沢を有する。このような粒子形態を活かした特性の向上が期待されている。
【0003】
一方、Fe系金属粒子の製法には、機械的粉砕法、噴霧法(アトマイズ法)、熱分解法(カーボニル法)、還元法、電解法等が用いられている。Fe系金属粒子の多くが粉末冶金用として使用されているが、強磁性体であることから磁性材料として電波吸収体用、ノイズ抑制用、高透磁率材料用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料にも使用されている。
その中でも、粒子形態を薄片状に制御した金属鉄粒子は、粒子形態の薄片状に起因して配向しやすいため分散性及び被覆性に優れ、金属光沢を有する。
また、粒子形態が薄片状の金属鉄粒子では、面内に磁気モーメントを向ける際の磁気異方性HA1と、面直方向に磁気モーメントを向ける際の磁気異方性HA2との比HA2/HA1が六方晶フェライトよりも大きく、強磁性体であるため飽和磁化も著しく大きい。
そのため、スネークの関係式から六方晶フェライトよりも共鳴周波数が高周波数帯域になる。このような粒子形態を活かした特性の向上が期待されている。
【0004】
近年では、情報通信の高速化、大容量化、モバイル化に従って、電子機器の高周波化、小型化、薄型化、軽量化が要求されている。電子機器の高周波化の進展により、高周波域の輻射ノイズが発生しやすく、人体又は周辺機器に対して、悪影響を及ぼす危険性がある。
そのため、電波吸収体、ノイズ対策シートとして、ポリマー等の有機物中に磁性材料を分散させた複合材料が必要とされている。更に、電子機器の小型化、軽量化に伴い、複合材料の薄シート化も求められている。また、高周波用プリント配線基板においても同様の複合材料が有効である。
ポリマー等の有機物中に分散させる磁性材料には、微細化、均一化、高分散化、高充填化及び高透磁率化が不可欠である。磁性材料として粒子形態を薄片状に制御した磁性酸化鉄微粒子及びFe系金属微粒子は上記のような課題に対して好適である。
【0005】
これまで、薄片状酸化鉄微粒子の製造方法としては、含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液を水熱処理する方法(例えば特許文献1〜3参照)、種晶として板状ヘマタイト粒子又は針状ヘマタイト粒子を添加した含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液を水熱処理する方法(例えば特許文献4及び5参照)等が知られている。
【0006】
特許文献1及び2の方法では、アルカリ濃度のみで粒子径の制御を行うが、粒子径が不均一であり、粒子の厚さの制御ができない。また、高アルカリ濃度で粒子径の大きな粒子を合成すると、粒子形態も不均一となる。
【0007】
特許文献3の方法では、含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液に珪素等を添加して水熱処理することで、粒子の厚さの制御を行うことを特徴としている。珪素等の添加量の増加により粒子の厚さが低下するが、粒子径も変化するため、粒子径が一定でのアスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)の制御ができない。
【0008】
特許文献4及び5の方法では、種晶として板状ヘマタイト又は針状ヘマタイトを添加することで均一な粒子又は粒子の厚さの制御が可能であることが特徴であるが、種晶同士の凝集による粒子成長が生じるため、粒子形態が不均一となったり、種晶間の成長性の違いにより粒子径が不均一となったりする。
【0009】
また、これまでの薄片状Fe系金属微粒子の製造方法では、粒子径、粒子の厚さの制御が困難であり、粒子形態、粒度分布が不均一であったり、工業的に用いる製法としては困難であったり、粒子形態が均一であっても粒子の結晶性が悪く、特性が低いといった問題点があった。
【0010】
薄片状Fe系金属微粒子の製造方法としては、機械的粉砕法、噴霧法、熱分解法、還元法、液体急冷法等で製造したセンダスト(鉄-Si-Al)粉末、パーマロイ(Ni-鉄)合金粉末、Co-鉄合金粉末、カーボニル鉄粉末、アモルファス合金粉末を乾式又は湿式での粉砕、圧延等の機械的処理により薄片状に鍛造している(例えば特許文献6及び7参照)。
しかしながら、この方法では、原料の粒子径を分級により均一にしても、鍛造した際に粒子径及びアスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)が不均一となり、粒子同士の凝集等により粒子形態も不均一となる。また原料の粒子径が小さくなればなる程、粒子形態の制御が出来ず、薄片状粒子の微粒子化も困難である。
【0011】
粒子形態が均一であり、粒子径及びアスペクト比の制御が可能な製造方法として、真空蒸着、スパッタリング等の気相成長法で生成した薄膜の打ち抜き又はエッチングによる方法、マスクパターンを用いた気相成長法等が知られている(例えば特許文献7参照)。
しかしながら、これらの製法は、薄膜の型からの剥離が困難であり、粒子形態の変形、破損が生じやすい。さらに、工業的に用いる製法としては収率が悪いため、製造コストが高くなる。
【0012】
また、磁性粒子の形状に対応する電極領域と、その周囲を囲む絶縁領域とをパターン形成しためっき金型を使用して、電気めっきにより、電極領域に選択的に析出させた薄膜を剥離するといった電気めっき法が提案されている(例えば特許文献8参照)。該電気めっき法は、上記気相成長法に比べ、金型からの剥離が容易であり、粒子形態の変形、破損が生じにくい。
しかしながら、電気めっき法は、フォトリソグラフ法により金型を作製することから、粒子径を変える場合にはそのつど金型の作製が必要であり、粒子径が小さくなればなる程、パターン形成が困難となる。また、格子欠陥を減少、結晶性を高くして高透磁率化するためには、磁性粒子の熱処理が必要となるが、電気めっき法での磁性粒子は300℃以上で熱処理を行うと粒子間焼結が生じ、粒子形態を維持できない。
【0013】
このように、これまでの薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子の製造方法では、粒子径及び粒子の厚さの制御が困難であり、粒子形態や粒度分布が不均一な粒子しか得られないという問題点があった。
【0014】
従って、これまでの製造方法によって得られる薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子を、高透磁率材料、電波吸収体、ノイズ対策シート、プリント配線基板等の複合材料として使用する場合、微細化、均一化、高分散化、高充填化及び高透磁率化を同時に実現するという課題が残されている。
【0015】
【特許文献1】特許第722501号公報
【特許文献2】特許第781611号公報
【特許文献3】特許第1677541号公報
【特許文献4】特許第1023572号公報
【特許文献5】特許第3045207号公報
【特許文献6】特許第3468556号公報
【特許文献7】特開2001-60790号公報
【特許文献8】特開2002-319787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであり、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の様々な用途に適した、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定の元素を含有した特定の粒子径及び特定のアスペクト比をもつ薄片状酸化鉄微粒子及び該薄片状酸化鉄微粒子を還元して得られる薄片状Fe系金属微粒子が、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な微粒子が得られ、特に高透磁率材料、電波吸収体、ノイズ対策シート及びプリント配線基板等の複合材料として使用する場合、微細化、均一化、高分散化、高充填化、高透磁率化等の要求される性能を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、本発明は、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、上記薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記の本発明の薄片状酸化鉄微粒子を製造するための好ましい製造方法として、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することを特徴とする薄片状酸化鉄微粒子の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状Fe系金属微粒子を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、上記薄片状Fe系金属微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、上記の本発明の薄片状Fe系金属微粒子を製造するための好ましい製造方法として、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元すること特徴とする薄片状Fe系金属微粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な粒子であることから、有機物中への分散性及び配向性に優れる。そのため、これらの本発明の薄片状酸化鉄微粒子又は薄片状Fe系金属微粒子を用いた本発明の複合材料は、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子及びそれらを用いた複合材料並びにそれらの製造方法について好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0026】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、主に以下に述べる複合材料として、各種用途、例えば、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の材料に好適に使用することができる。
【0027】
先ず、本発明の薄片状酸化鉄微粒子について説明する。
【0028】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、珪素及びマグネシウムを含有することにより、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり均一な粒子とすることができる。その理由は明らかでないが、珪素とマグネシウムとが固溶することにより、水熱反応時の析出機構に影響を及ぼしたり、固溶せずにフィロ珪酸塩のリザルダイト等が粒子内部に混在したり、粒子表面を修飾したりして粒子形態を制御することに起因するとも考えられる。また、珪素及びマグネシウムの含有は還元により金属化する際の粒子形態の維持にも効果があり、結晶性の高い粒子を得ることができる。更に、高温での熱処理を行っても、粒子間の焼結が起こらないため、粒子形態の維持が可能である。
【0029】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子において、上記珪素の含有量は、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、4〜30mol%がより一層好ましい。珪素の含有量が0.1mol%より少ない場合、後述する鉄水酸化物含有水溶液のpH値が13未満では粒子形態が薄片状にならず、pH値が13以上では粒子形態が薄片状になるが、粒子が不均一であり、アルカリ濃度が敏感に影響して粒子径の制御が困難となる。また、珪素の含有量が95mol%より多い場合、粒子が不均一となり、粒子形態の制御が困難となる。
【0030】
また、本発明の薄片状酸化鉄微粒子において、上記マグネシウムの含有量は、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、1〜30mol%がより一層好ましい。珪素のみを含有する場合、粒子の厚さが薄くなるとともに粒子径も小さくなり、アスペクト比の制御が困難となる。マグネシウムを0.1mol%以上含有させると、珪素単独よりも粒子が均一となり、粒子径が一定でのアスペクト比の制御が可能となる。また、マグネシウムの含有量が95mol%より多い場合、粒子が不均一となり、粒子形態の制御が困難となる。
また、珪素とマグネシウムとの好ましいmol比率(前者:後者)は、1:6〜6:1であり、特に1:2〜2:1が好ましい。
【0031】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その粒子径が、0.01〜100μmであり、0.05〜50μm であることが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.3〜20μmがより一層好ましい。該薄片状酸化鉄微粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡による観察に基づいて、倍率が100倍〜1万倍のSEM像から50個以上の任意の粒子を計測し、計測値の平均により求める。
粒子形態を薄片状に制御できる粒子径の下限は0.01μmである。また、結晶成長を促進するNaOH等のアルカリを高濃度にすると比例して粒子径が増大するが、中和後のアルカリ濃度が20mol/L以上になると粒子径が100μmで一定となるため、粒子径の上限は100μmである。
また、粒子径は、原料調製時の鉄濃度、アルカリ濃度、珪素及びマグネシウムの添加量に大きく影響を受け、水熱反応の温度、時間の影響は小さい。
【0032】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その粒子径が、先に述べた範囲であることに加えて、アスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)が、3〜200であり、5〜100であることが好ましく、8〜50がより好ましく、10〜30がより一層好ましく、該範囲内において用途により適宜最適な値が選択される。薄片状酸化鉄微粒子のアスペクト比は、BET法により測定した該粒子の比表面積と上記の方法により求めた粒子径から該粒子の厚さを算出して求める。
上記アスペクト比が3未満であるとポリマー等の有機物中に分散させた場合、粒子の配向性や充填性が悪くなり、アスペクト比が200超であると薄片状に粒子形態を制御することが困難となる。
【0033】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その組成に制限されず、ヘマタイト(α-Fe2O3)を始めとして、マグネタイト(Fe3O4)又はマグヘマイト(γ-Fe2O3)や中間組成のべルトライド化合物(FeOx・Fe2O3 、0<x<1)、及びこれらの単独又は複合化合物、さらにこれらの化合物にFe、珪素、Mg以外のLi、Ca、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Ba等の酸化鉄に固溶する元素を少なくとも1種以上含有させたフェライトであってもよい。
【0034】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、ポリマー等の有機物中への分散性の向上、又は該有機物との接着性の向上のために適宜表面処理を行うことができる。
例えば、薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着させることにより、有機溶剤に対して濡れやすく分散性を向上させる。また、カップリング剤を被覆して有機物との接着性を向上させる。
【0035】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に有機化合物を吸着させる場合、使用される有機化合物としては、被吸着薄片状酸化鉄微粒子が所望の物性を充たせば特に制限はないが、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルグリシン等が挙げられる。
また、有機化合物の添加量は、薄片状酸化鉄微粒子に対し、0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜8.0重量%がより好ましい。
また、有機化合物の吸着方法は、特に制限はなく、従来公知の方法は何れも使用することができ、適宜選択すればよい。
【0036】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面にカップリング剤を被覆させる場合、使用されるカップリング剤も同様に、被覆薄片状酸化鉄微粒子が所望の物性を充たせば特に制限はないが、カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。
また、カップリング剤の添加量は、薄片状酸化鉄微粒子に対し、0.1〜5.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。
また、カップリング剤の被覆方法は、特に制限はなく、従来公知の方法は何れも使用することができ、適宜選択すればよい。
【0037】
次に、本発明の薄片状酸化鉄微粒子を用いた本発明の複合材料について説明する。
【0038】
本発明の複合材料は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなるものであり、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の様々な用途に用いられる。
【0039】
上記薄片状酸化鉄微粒子を分散させる有機物は、用途に応じ適宜選択される。
本発明の複合材料を高透磁率用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、変性ポリフェニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シアネートエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
また、電波吸収体用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、ノイズ抑制用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、プリント配線基板用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、変性ポリフェニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シアネートエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、磁性トナー用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
また、磁気記録用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられる。
【0041】
また、その他、塗料用材料、顔料用材料、印刷インキ用材料、化粧品用材料として用いる場合には、有機物としては、それらの用途に応じて適宜選択される。
【0042】
本発明の複合材料において、上記薄片状酸化鉄微粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されるが、通常、上記有機物に対して、該薄片状酸化鉄微粒子5〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましい。
【0043】
次に、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の好ましい製造方法について説明する。
【0044】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状ヘマタイト微粒子は、i)珪素及びマグネシウムの添加された鉄水酸化物含有水溶液の調製工程と、ii)i)の工程で調製した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応させる水熱反応工程により製造できる。以下工程順に説明する。
【0045】
<i)鉄水酸化物含有水溶液の調製工程>
調製方法としては、下記(イ)及び(ロ)の方法が挙げられる。
(イ)先ず、鉄塩水溶液を調製し、この鉄塩水溶液に珪素化合物及びマグネシウム化合物を添加する。次に、珪素化合物及びマグネシウム化合物を添加した鉄塩水溶液にアルカリ水溶液を添加して、中和反応により無定形の鉄水酸化物を生成させて鉄水酸化物含有水溶液を得る。
(ロ)先ず、鉄塩水溶液を調製し、この鉄塩水溶液をアルカリ水溶液に添加して、中和反応により無定形の鉄水酸化物を生成させて鉄水酸化物含有水溶液を得る。この方法の場合、珪素化合物及びマグネシウム化合物は、無定形の鉄水酸化物を生成させた後に添加してもよく、アルカリ水溶液に予め添加しておいてもよい。
また、上記(イ)及び(ロ)の方法において、中和反応により生成した無定形の鉄水酸化物を100℃以下の温度範囲で加熱して結晶化させてもよい。
【0046】
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いる鉄塩水溶液としては、例えば、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、塩化物、炭酸塩等といった各種の鉄塩の水溶液を使用することができる。また、一つの鉄塩水溶液を使用してもよく、複数の鉄塩水溶液の混合物を使用してもよい。該鉄塩水溶液は、その濃度が好ましくは0.05〜3.2mol%、より好ましくは0.1〜2.0mol%のものを使用する。
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いる珪素化合物としては、酸化物、塩化物、オキソ酸塩等といった各種の珪素化合物を使用することができる。該珪素化合物の添加量は、珪素として、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、4〜30mol%がより一層好ましい。
また、上記(イ)及び(ロ)の方法で用いるマグネシウム化合物としては、例えば、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、塩化物、炭酸塩等といった各種のマグネシウム化合物を使用することができる。該マグネシウム化合物の添加量は、マグネシウムとして、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、1〜30mol%がより一層好ましい。
【0047】
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いるアルカリ水溶液としては、例えば、NaOH、KOH、NH3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、(NH4)2CO3等を用いることができる。
上記アルカリ水溶液の添加量は、添加終了時のpH値が7以上となるように添加することが好ましく、8〜14がより好ましく、10〜14がより一層好ましい。また、上記鉄塩水溶液とアルカリ水溶液との好ましい添加量の重量比率(前者:後者)は、1.0:0.1〜1.0:10であり、特に1.0:0.5〜1.0:5.0が好ましい。上記アルカリ水溶液の添加終了時のpH値(アルカリ濃度)が高くなるほど、粒子の成長を促進して粒子径を増大させるが、pH7未満では薄片状微粒子が形成されない。
【0048】
上記鉄水酸化物含有水溶液には、更に、結晶成長制御剤としてポリオキソ酸塩を形成するB、P、V、Nb、Ta、Mo、W等の化合物を添加してもよい。これらの結晶成長制御剤は、鉄水酸化物含有水溶液の調製工程の何れの段階で添加してもよく、鉄水酸化物含有水溶液の調製後に添加してもよい。該結晶成長制御剤の添加量は、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜10mol%が好ましく、0.1〜5mol%がより好ましい。
【0049】
また、上記鉄水酸化物含有水溶液には、磁性材料として飽和磁化、透磁率等の磁気特性の制御を行う目的で、Li、Ca、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Ba等の酸化鉄に固溶する元素を添加し、フェライト化させてもよい。これらの酸化鉄に固溶する元素は、鉄水酸化物含有水溶液の調製工程の何れの段階で添加してもよく、鉄水酸化物含有水溶液の調製後に添加してもよい。該酸化鉄に固溶する元素の添加量は、鉄に対し、0.1〜50mol%が好ましく、1.0〜10mol%がより好ましい。
【0050】
<ii)水熱反応工程>
上記水熱反応は、温度が100℃以上、好ましくは150〜450℃、より好ましくは250〜400℃、且つ全圧力が0.1MPa以上、好ましくは0.2〜40MPa、より好ましくは2.5〜30MPaで、通常0.1時間以上、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.1〜8時間行うとよい。このような条件下で水熱反応させて、粒子径、粒子の厚さ、粒子の均一性等の粒子形態の制御を行い、濾過、水洗した後、乾燥することにより、本発明の薄片状ヘマタイト微粒子が得られる。
上記水熱反応の条件は、鉄水酸化物含有水溶液における原料の種類、仕込み量、pH値、珪素及びマグネシウムの添加量、反応温度、反応圧力及び反応時間等によって上記範囲内において適宜決定するとよい。上記水熱反応で薄片状微粒子を形成する最低温度は100℃である。上記水熱反応の最高温度は特に制限がなく、臨界点を超えてもよいが、使用する装置の仕様に制限される。
【0051】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状マグネタイト微粒子は、上記工程により製造された薄片状ヘマタイト微粒子を還元させることにより得ることができる。更に該薄片状マグネタイト微粒子を酸化させることにより、本発明の薄片状マグヘマイト微粒子が得られる。
また、上記工程により製造された薄片状ヘマタイト微粒子を焼成することにより、本発明の薄片状フェライト微粒子を得ることができる。
【0052】
上記薄片状マグネタイト微粒子を得るための還元は、水素雰囲気下で、最高到達温度が通常300〜500℃、好ましくは300〜400℃、且つ全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-3
MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧10-7〜10-4MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。また、この還元は、上記水熱反応の際に還元剤を添加するか、上記水熱反応を水素等の還元性雰囲気下に行うことにより、粒子形態の制御と同時に行ってもよい。
【0053】
上記薄片状マグヘマイト微粒子を得るための酸化は、大気雰囲気下、最高到達温度が通常200〜400℃、好ましくは200〜300℃、且つ全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧0.02〜0.3MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧0.02〜0.2MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。
【0054】
上記薄片状フェライト微粒子を得るための焼成は、窒素雰囲気下(又は大気雰囲気下)、最高到達温度が通常800℃以上、好ましくは800〜1500℃、より好ましくは800〜1100℃で、全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-3MPa(又は0.02〜0.3MPa))、好ましくは0.1〜1.0Pa(酸素分圧10-7〜10-4M Pa(又は0.02〜0.2MPa))で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。
【0055】
次に、本発明の薄片状Fe系金属微粒子について説明する。
【0056】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子と同様に、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200のものである。
本発明の薄片状Fe系金属微粒子の好ましい粒子径及びアスペクト比並びに珪素及びマグネシウムの好ましい含有量等については、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子において記載したことと同様である。
【0057】
また、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子と同様に、ポリマー等の有機物中への分散性の向上、又は有機物との接着性の向上のために適宜表面処理を行うことができる。表面処理を行う場合の条件等は、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子において記載したことと同様である。
また、本発明の薄片状Fe系金属微粒子を用いた本発明の複合材料についても、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子を用いた本発明の複合材料において記載したことと同様である。
【0058】
次に、本発明の薄片状Fe系金属微粒子の好ましい製造方法について述べる。
【0059】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元することにより製造できる。この酸化鉄を得るための鉄水酸化物含有水溶液の調製及び水熱反応は、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子の好ましい製造方法において説明したことと同様である。
即ち、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状ヘマタイト微粒子を還元することにより製造できる。
【0060】
上記酸化鉄(薄片状ヘマタイト微粒子)の還元は、水素雰囲気下で、最高到達温度が通常300℃以上、好ましくは400〜1000℃、且つ全圧力が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-4
MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧10-7〜10-5MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。また、この還元は、上記水熱反応の際に還元剤を添加するか、上記水熱反応を水素等の還元性雰囲気下に行うことにより、粒子形態の制御と同時に行ってもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0062】
[薄片状ヘマタイト微粒子の製造]
(実施例1〜20、比較例1〜7)
鉄塩水溶液として塩化第二鉄水溶液、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液、珪素化合物として酸化珪素、マグネシウム化合物として塩化マグネシウム六水和物を用いて、表1記載のFe量、アルカリ量、Si添加量及びMg添加量となるように原料を準備した。次に、塩化第二鉄水溶液に塩化マグネシウム六水和物を加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液と酸化珪素とを添加して鉄水酸化物含有水溶液を調製した。調製後の鉄水酸化物含有水溶液のpH値を表1に示す。調製した鉄水酸化物含有水溶液をオートクレーブで攪拌しながら、表1記載の条件にて水熱反応を行った。反応終了後、室温まで冷却を行い、生成物を濾過、水洗、乾燥して目的物である薄片状ヘマタイト微粒子を得た。
【0063】
得られた薄片状ヘマタイト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を以下の方法により評価した。それらの結果を表1に示す。また、実施例11、実施例12、比較例2、比較例7の電子顕微鏡写真(×5000)を図1、2、3及び4に示す。
【0064】
(1)X線回折
理学電機製X線回折装置(RINT-2200V)にて測定した。
(2)比表面積
ユアサアイオニクス製比表面積測定装置(4ソーブBET計)にて測定した。
(3)粒子径の測定及び粒子の均一性評価
走査型電子顕微鏡写真を用いて、50個以上の粒子の粒子径を測定し、その平均値を求めた。また、粒子の均一性については該電子顕微鏡写真の目視による観察により評価した。
(4)アスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)
上記(2)で測定した比表面積と上記(3)で測定した粒子径とから粒子の厚さを算出して、アスペクト比を求めた。
【0065】
【表1】
【0066】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子では、実施例1〜20の結果からFe量、アルカリ量、Si添加量及びMg添加量により、粒子径及びアスペクト比の制御が可能であり、均一な薄片状Fe系金属微粒子を得ることができる。
実施例3〜7の結果から、水熱反応温度を上昇させると粒子径が大きくなると同時に、アスペクト比が減少する。また実施例8〜9の結果から、水熱反応時間による粒子径及びアスペクト比への影響は少ない。水熱反応温度の最高温度には特に制限はないが、比較例1の結果から90℃では非晶質であるため、100℃以上での水熱反応が必要である。比較例2と実施例11との電子顕微鏡写真(図3と図1)との比較から、珪素単独よりも珪素とマグネシウムを添加した方が均一な粒子の生成が可能となる。
【0067】
実施例5、12〜14及び比較例3〜6における粒子径とアスペクト比との関係を図5に示す。
この図5に示した粒子径とアスペクト比との関係から次のことが明らかである。
比較例3〜6のようにマグネシウムを添加しないで、珪素添加量を増加させてアスペクト比を制御しようとすると粒子の厚さは薄くなるが、粒子径も減少するためアスペクト比の制御が困難である。
これに対して、実施例5、12〜14のように一定量のマグネシウムを珪素と一緒に添加することにより、粒子径を減少させずにアスペクト比を増大させることができる。
【0068】
また、実施例15〜20のようにマグネシウムと珪素の添加量を同時に一定の割合で増加させることにより、粒子径を減少させずにアスペクト比を増大させることができる。
図4の比較例7の電子顕微鏡写真で見られるように、珪素及びマグネシウムの添加量を鉄に対してそれぞれ95mol%より多くした場合、不均一な粒子が生成される。これに対し、図2の実施例12の電子顕微鏡写真で見られるように、本発明に係る珪素及びマグネシウムの添加量の範囲内では、薄片状酸化鉄微粒子は均一な粒子であることが分かる。
【0069】
[薄片状マグネタイト微粒子の製造]
(実施例21)
実施例3で得られた薄片状ヘマタイト微粒子を、水素雰囲気下、360℃、2時間にて気相還元を行い、薄片状マグネタイト微粒子を得た。得られた薄片状マグネタイト微粒子について、X線回折、比表面積、粒子径、及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を下記(5)の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図6に示す。
(5)磁気特性
東英工業製振動試料型磁力計(VSMP-1S)を使用し、外部磁場14kOeにて測定した。
【0070】
[薄片状マグヘマイト微粒子の製造]
(実施例22)
実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子を大気下、250℃、30分にて酸化を行い、薄片状マグヘマイト微粒子を得た。得られた薄片状マグヘマイト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図7に示す。
【0071】
本発明の薄片状ヘマタイト微粒子を還元することにより、本発明の薄片状マグネタイト微粒子を製造し、該薄片状マグネタイト微粒子を酸化することにより、本発明の薄片状マグヘマイト微粒子を製造したが、それらの粒子形態は、還元及びそれに続く酸化によっても維持されており、磁気特性に優れた均一な薄片状微粒子を得ることができた。
【0072】
[薄片状フェライト微粒子の製造]
(実施例23)
実施例3で得られた薄片状ヘマタイト微粒子を、窒素雰囲気下、1000℃、2時間にて、焼成を行うことにより、薄片状フェライト微粒子を得た。得られた薄片状フェライト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図8に示す。
【0073】
本発明の薄片状ヘマタイト微粒子を焼成することにより、本発明の薄片状フェライト微粒子を製造したが、粒子形態が焼成しても維持されており、磁気特性に優れた均一な薄片状微粒子を得ることができた。
【0074】
【表2】
【0075】
[複合材料の作製]
(実施例24)
実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子を、アミノ官能性シランカップリング剤とポリカルボン酸型高分子分散剤とを添加したアクリル樹脂に分散させた。薄片状マグネタイト微粒子と樹脂との重量比率が、90:10又は80:20となるように配合した。
また、シランカップリング剤の添加量は薄片状マグネタイト微粒子に対して1重量%とし、分散剤の添加量は薄片状マグネタイト微粒子に対して5重量%とした。薄片状マグネタイト微粒子を分散させたアクリル樹脂を乾燥し、粉砕したものを外形19mm、内径9mm、厚さ2mmのトロイダル状に一軸成型して本発明の複合材料を得た。得られた複合材料をインピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー製E4991A)により複素透磁率測定を行った。測定結果を図9に示す。
【0076】
本発明の薄片状マグネタイト微粒子は均一性が優れているため、樹脂中への分散性が良好であった。また、該薄片状マグネタイト微粒子を分散させた本発明の複合材料は、その複素透磁率が高周波数まで安定した特性を示した。
【0077】
(実施例25〜45、比較例8〜13)
[薄片状Fe系金属微粒子の製造]
上記実施例1〜20で得られた薄片状酸化鉄微粒子をそれぞれ表3記載の条件にて気相還元を行い、薄片状Fe系金属微粒子を得た。得られた薄片状Fe系金属微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表3に示す。また、実施例40、比較例11の電子顕微鏡写真(×5000)を図10及び11に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子では、実施例25〜45の結果から、Fe量、アルカリ量、Si添加量、Mg添加量により、粒子径及びアスペクト比の制御が可能であり、磁気特性に優れた均一な薄片状Fe系金属微粒子を得ることができる。
実施例27〜31の結果から、水熱反応温度を上昇させると粒子径が大きくなると同時にアスペクト比が減少する。また実施例32〜33の結果から、水熱反応時間による粒子径及びアスペクト比の影響は少ない。
比較例8〜12の結果、図11の比較例11の電子顕微鏡写真から、珪素のみを添加すると形骸粒子が崩壊する。
比較例13の結果から、珪素及びマグネシウムの添加量を鉄に対してそれぞれ95mol%よりも多くした場合、不均一な粒子が生成される。これに対し、図10の実施例40の電子顕微鏡写真で見られるように、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は均一な粒子であることが分かる。
また、実施例40及び41の結果から、還元温度を上昇させても粒子径は変化しないが、アスペクト比が減少する。
【0080】
[複合材料の作製]
(実施例46)
実施例40で得られた薄片状Fe系金属微粒子を、アミノ官能性シランカップリング剤とポリカルボン酸型高分子分散剤とを添加したアクリル樹脂に分散させた。薄片状Fe系金属微粒子と樹脂との重量比率が、90:10又は80:20となるように配合した。また、シランカップリング剤の添加量は薄片状Fe系金属微粒子に対して1重量%とし、分散剤の添加量は薄片状Fe系金属微粒子に対して5重量%とした。薄片状Fe系金属微粒子を分散させたアクリル樹脂を乾燥し、粉砕したものを外形19mm、内径9mm、厚さ2mmのトロイダル状に一軸成型して複合材料を得た。得られた複合材料をインピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー製E4991A)により複素透磁率測定を行った。測定結果を図12に示す。
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、均一性が優れているため、分散性が良好であった。
また、該薄片状Fe系金属微粒子を分散させた本発明の複合材料は、複素透磁率が高周波数まで安定した特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、実施例11で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図2】図2は、実施例12で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図3】図3は、比較例2で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図4】図4は、比較例7で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図5】図5は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子径とアスペクト比との関係を示す。
【図6】図6は、実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図7】図7は、実施例22得られた薄片状マグヘマイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図8】図8は、実施例23得られた薄片状フェライト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図9】図9は、実施例24で得られた複合材料の複素透磁率の測定結果である。
【図10】図10は、実施例40で得られた薄片状Fe系金属微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図11】図11は、比較例11で得られた薄片状Fe系金属微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図12】実施例46で得られた複合材料の複素透磁率の測定結果である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態が均一な薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子並びにそれらの製造方法に関する。本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子は、塗料用、顔料用、印刷インキ用、化粧品用、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料として好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化鉄は、結晶構造の違いにより、ヘマタイト(α-Fe2O3)が赤色系を示し、マグネタイト(Fe3O4)が黒色系を示し、マグヘマイト(γ-Fe2O3)が茶褐色系を示すことが知られている。そのため、これまで顔料用材料として広く使用されてきた。
また、マグネタイト、マグヘマイトは、顔料用材料としての用途の他に、その磁気特性を活かして、電波吸収体用、ノイズ抑制用、高透磁率材料用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料にも使用されている。
その中でも、粒子形態を薄片状に制御した酸化鉄粒子は、粒子形態が薄片状であることに起因して配向しやすいために、分散性及び被覆性に優れ、金属光沢を有する。このような粒子形態を活かした特性の向上が期待されている。
【0003】
一方、Fe系金属粒子の製法には、機械的粉砕法、噴霧法(アトマイズ法)、熱分解法(カーボニル法)、還元法、電解法等が用いられている。Fe系金属粒子の多くが粉末冶金用として使用されているが、強磁性体であることから磁性材料として電波吸収体用、ノイズ抑制用、高透磁率材料用、磁性トナー用及び磁気記録用等の材料にも使用されている。
その中でも、粒子形態を薄片状に制御した金属鉄粒子は、粒子形態の薄片状に起因して配向しやすいため分散性及び被覆性に優れ、金属光沢を有する。
また、粒子形態が薄片状の金属鉄粒子では、面内に磁気モーメントを向ける際の磁気異方性HA1と、面直方向に磁気モーメントを向ける際の磁気異方性HA2との比HA2/HA1が六方晶フェライトよりも大きく、強磁性体であるため飽和磁化も著しく大きい。
そのため、スネークの関係式から六方晶フェライトよりも共鳴周波数が高周波数帯域になる。このような粒子形態を活かした特性の向上が期待されている。
【0004】
近年では、情報通信の高速化、大容量化、モバイル化に従って、電子機器の高周波化、小型化、薄型化、軽量化が要求されている。電子機器の高周波化の進展により、高周波域の輻射ノイズが発生しやすく、人体又は周辺機器に対して、悪影響を及ぼす危険性がある。
そのため、電波吸収体、ノイズ対策シートとして、ポリマー等の有機物中に磁性材料を分散させた複合材料が必要とされている。更に、電子機器の小型化、軽量化に伴い、複合材料の薄シート化も求められている。また、高周波用プリント配線基板においても同様の複合材料が有効である。
ポリマー等の有機物中に分散させる磁性材料には、微細化、均一化、高分散化、高充填化及び高透磁率化が不可欠である。磁性材料として粒子形態を薄片状に制御した磁性酸化鉄微粒子及びFe系金属微粒子は上記のような課題に対して好適である。
【0005】
これまで、薄片状酸化鉄微粒子の製造方法としては、含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液を水熱処理する方法(例えば特許文献1〜3参照)、種晶として板状ヘマタイト粒子又は針状ヘマタイト粒子を添加した含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液を水熱処理する方法(例えば特許文献4及び5参照)等が知られている。
【0006】
特許文献1及び2の方法では、アルカリ濃度のみで粒子径の制御を行うが、粒子径が不均一であり、粒子の厚さの制御ができない。また、高アルカリ濃度で粒子径の大きな粒子を合成すると、粒子形態も不均一となる。
【0007】
特許文献3の方法では、含水酸化第二鉄粒子又は第二鉄塩を含むアルカリ性懸濁液に珪素等を添加して水熱処理することで、粒子の厚さの制御を行うことを特徴としている。珪素等の添加量の増加により粒子の厚さが低下するが、粒子径も変化するため、粒子径が一定でのアスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)の制御ができない。
【0008】
特許文献4及び5の方法では、種晶として板状ヘマタイト又は針状ヘマタイトを添加することで均一な粒子又は粒子の厚さの制御が可能であることが特徴であるが、種晶同士の凝集による粒子成長が生じるため、粒子形態が不均一となったり、種晶間の成長性の違いにより粒子径が不均一となったりする。
【0009】
また、これまでの薄片状Fe系金属微粒子の製造方法では、粒子径、粒子の厚さの制御が困難であり、粒子形態、粒度分布が不均一であったり、工業的に用いる製法としては困難であったり、粒子形態が均一であっても粒子の結晶性が悪く、特性が低いといった問題点があった。
【0010】
薄片状Fe系金属微粒子の製造方法としては、機械的粉砕法、噴霧法、熱分解法、還元法、液体急冷法等で製造したセンダスト(鉄-Si-Al)粉末、パーマロイ(Ni-鉄)合金粉末、Co-鉄合金粉末、カーボニル鉄粉末、アモルファス合金粉末を乾式又は湿式での粉砕、圧延等の機械的処理により薄片状に鍛造している(例えば特許文献6及び7参照)。
しかしながら、この方法では、原料の粒子径を分級により均一にしても、鍛造した際に粒子径及びアスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)が不均一となり、粒子同士の凝集等により粒子形態も不均一となる。また原料の粒子径が小さくなればなる程、粒子形態の制御が出来ず、薄片状粒子の微粒子化も困難である。
【0011】
粒子形態が均一であり、粒子径及びアスペクト比の制御が可能な製造方法として、真空蒸着、スパッタリング等の気相成長法で生成した薄膜の打ち抜き又はエッチングによる方法、マスクパターンを用いた気相成長法等が知られている(例えば特許文献7参照)。
しかしながら、これらの製法は、薄膜の型からの剥離が困難であり、粒子形態の変形、破損が生じやすい。さらに、工業的に用いる製法としては収率が悪いため、製造コストが高くなる。
【0012】
また、磁性粒子の形状に対応する電極領域と、その周囲を囲む絶縁領域とをパターン形成しためっき金型を使用して、電気めっきにより、電極領域に選択的に析出させた薄膜を剥離するといった電気めっき法が提案されている(例えば特許文献8参照)。該電気めっき法は、上記気相成長法に比べ、金型からの剥離が容易であり、粒子形態の変形、破損が生じにくい。
しかしながら、電気めっき法は、フォトリソグラフ法により金型を作製することから、粒子径を変える場合にはそのつど金型の作製が必要であり、粒子径が小さくなればなる程、パターン形成が困難となる。また、格子欠陥を減少、結晶性を高くして高透磁率化するためには、磁性粒子の熱処理が必要となるが、電気めっき法での磁性粒子は300℃以上で熱処理を行うと粒子間焼結が生じ、粒子形態を維持できない。
【0013】
このように、これまでの薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子の製造方法では、粒子径及び粒子の厚さの制御が困難であり、粒子形態や粒度分布が不均一な粒子しか得られないという問題点があった。
【0014】
従って、これまでの製造方法によって得られる薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子を、高透磁率材料、電波吸収体、ノイズ対策シート、プリント配線基板等の複合材料として使用する場合、微細化、均一化、高分散化、高充填化及び高透磁率化を同時に実現するという課題が残されている。
【0015】
【特許文献1】特許第722501号公報
【特許文献2】特許第781611号公報
【特許文献3】特許第1677541号公報
【特許文献4】特許第1023572号公報
【特許文献5】特許第3045207号公報
【特許文献6】特許第3468556号公報
【特許文献7】特開2001-60790号公報
【特許文献8】特開2002-319787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであり、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の様々な用途に適した、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な薄片状酸化鉄微粒子及び薄片状Fe系金属微粒子並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定の元素を含有した特定の粒子径及び特定のアスペクト比をもつ薄片状酸化鉄微粒子及び該薄片状酸化鉄微粒子を還元して得られる薄片状Fe系金属微粒子が、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な微粒子が得られ、特に高透磁率材料、電波吸収体、ノイズ対策シート及びプリント配線基板等の複合材料として使用する場合、微細化、均一化、高分散化、高充填化、高透磁率化等の要求される性能を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、本発明は、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、上記薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記の本発明の薄片状酸化鉄微粒子を製造するための好ましい製造方法として、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することを特徴とする薄片状酸化鉄微粒子の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状Fe系金属微粒子を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、上記薄片状Fe系金属微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、上記の本発明の薄片状Fe系金属微粒子を製造するための好ましい製造方法として、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元すること特徴とする薄片状Fe系金属微粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり、粒子形態及び粒度分布が均一な粒子であることから、有機物中への分散性及び配向性に優れる。そのため、これらの本発明の薄片状酸化鉄微粒子又は薄片状Fe系金属微粒子を用いた本発明の複合材料は、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子及びそれらを用いた複合材料並びにそれらの製造方法について好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0026】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子及び本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、主に以下に述べる複合材料として、各種用途、例えば、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の材料に好適に使用することができる。
【0027】
先ず、本発明の薄片状酸化鉄微粒子について説明する。
【0028】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、珪素及びマグネシウムを含有することにより、粒子径及び粒子の厚さの制御が可能であり均一な粒子とすることができる。その理由は明らかでないが、珪素とマグネシウムとが固溶することにより、水熱反応時の析出機構に影響を及ぼしたり、固溶せずにフィロ珪酸塩のリザルダイト等が粒子内部に混在したり、粒子表面を修飾したりして粒子形態を制御することに起因するとも考えられる。また、珪素及びマグネシウムの含有は還元により金属化する際の粒子形態の維持にも効果があり、結晶性の高い粒子を得ることができる。更に、高温での熱処理を行っても、粒子間の焼結が起こらないため、粒子形態の維持が可能である。
【0029】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子において、上記珪素の含有量は、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、4〜30mol%がより一層好ましい。珪素の含有量が0.1mol%より少ない場合、後述する鉄水酸化物含有水溶液のpH値が13未満では粒子形態が薄片状にならず、pH値が13以上では粒子形態が薄片状になるが、粒子が不均一であり、アルカリ濃度が敏感に影響して粒子径の制御が困難となる。また、珪素の含有量が95mol%より多い場合、粒子が不均一となり、粒子形態の制御が困難となる。
【0030】
また、本発明の薄片状酸化鉄微粒子において、上記マグネシウムの含有量は、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、1〜30mol%がより一層好ましい。珪素のみを含有する場合、粒子の厚さが薄くなるとともに粒子径も小さくなり、アスペクト比の制御が困難となる。マグネシウムを0.1mol%以上含有させると、珪素単独よりも粒子が均一となり、粒子径が一定でのアスペクト比の制御が可能となる。また、マグネシウムの含有量が95mol%より多い場合、粒子が不均一となり、粒子形態の制御が困難となる。
また、珪素とマグネシウムとの好ましいmol比率(前者:後者)は、1:6〜6:1であり、特に1:2〜2:1が好ましい。
【0031】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その粒子径が、0.01〜100μmであり、0.05〜50μm であることが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.3〜20μmがより一層好ましい。該薄片状酸化鉄微粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡による観察に基づいて、倍率が100倍〜1万倍のSEM像から50個以上の任意の粒子を計測し、計測値の平均により求める。
粒子形態を薄片状に制御できる粒子径の下限は0.01μmである。また、結晶成長を促進するNaOH等のアルカリを高濃度にすると比例して粒子径が増大するが、中和後のアルカリ濃度が20mol/L以上になると粒子径が100μmで一定となるため、粒子径の上限は100μmである。
また、粒子径は、原料調製時の鉄濃度、アルカリ濃度、珪素及びマグネシウムの添加量に大きく影響を受け、水熱反応の温度、時間の影響は小さい。
【0032】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その粒子径が、先に述べた範囲であることに加えて、アスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)が、3〜200であり、5〜100であることが好ましく、8〜50がより好ましく、10〜30がより一層好ましく、該範囲内において用途により適宜最適な値が選択される。薄片状酸化鉄微粒子のアスペクト比は、BET法により測定した該粒子の比表面積と上記の方法により求めた粒子径から該粒子の厚さを算出して求める。
上記アスペクト比が3未満であるとポリマー等の有機物中に分散させた場合、粒子の配向性や充填性が悪くなり、アスペクト比が200超であると薄片状に粒子形態を制御することが困難となる。
【0033】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、その組成に制限されず、ヘマタイト(α-Fe2O3)を始めとして、マグネタイト(Fe3O4)又はマグヘマイト(γ-Fe2O3)や中間組成のべルトライド化合物(FeOx・Fe2O3 、0<x<1)、及びこれらの単独又は複合化合物、さらにこれらの化合物にFe、珪素、Mg以外のLi、Ca、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Ba等の酸化鉄に固溶する元素を少なくとも1種以上含有させたフェライトであってもよい。
【0034】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子は、ポリマー等の有機物中への分散性の向上、又は該有機物との接着性の向上のために適宜表面処理を行うことができる。
例えば、薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着させることにより、有機溶剤に対して濡れやすく分散性を向上させる。また、カップリング剤を被覆して有機物との接着性を向上させる。
【0035】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に有機化合物を吸着させる場合、使用される有機化合物としては、被吸着薄片状酸化鉄微粒子が所望の物性を充たせば特に制限はないが、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルグリシン等が挙げられる。
また、有機化合物の添加量は、薄片状酸化鉄微粒子に対し、0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜8.0重量%がより好ましい。
また、有機化合物の吸着方法は、特に制限はなく、従来公知の方法は何れも使用することができ、適宜選択すればよい。
【0036】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面にカップリング剤を被覆させる場合、使用されるカップリング剤も同様に、被覆薄片状酸化鉄微粒子が所望の物性を充たせば特に制限はないが、カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。
また、カップリング剤の添加量は、薄片状酸化鉄微粒子に対し、0.1〜5.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。
また、カップリング剤の被覆方法は、特に制限はなく、従来公知の方法は何れも使用することができ、適宜選択すればよい。
【0037】
次に、本発明の薄片状酸化鉄微粒子を用いた本発明の複合材料について説明する。
【0038】
本発明の複合材料は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなるものであり、高透磁率材料用、電波吸収体用、ノイズ抑制用、プリント配線基板用、磁性トナー用、磁気記録用、塗料用、顔料用、印刷インキ用及び化粧品用等の様々な用途に用いられる。
【0039】
上記薄片状酸化鉄微粒子を分散させる有機物は、用途に応じ適宜選択される。
本発明の複合材料を高透磁率用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、変性ポリフェニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シアネートエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
また、電波吸収体用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、ノイズ抑制用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、プリント配線基板用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、変性ポリフェニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シアネートエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、磁性トナー用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
また、磁気記録用材料として用いる場合、有機物としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられる。
【0041】
また、その他、塗料用材料、顔料用材料、印刷インキ用材料、化粧品用材料として用いる場合には、有機物としては、それらの用途に応じて適宜選択される。
【0042】
本発明の複合材料において、上記薄片状酸化鉄微粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されるが、通常、上記有機物に対して、該薄片状酸化鉄微粒子5〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましい。
【0043】
次に、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の好ましい製造方法について説明する。
【0044】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状ヘマタイト微粒子は、i)珪素及びマグネシウムの添加された鉄水酸化物含有水溶液の調製工程と、ii)i)の工程で調製した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応させる水熱反応工程により製造できる。以下工程順に説明する。
【0045】
<i)鉄水酸化物含有水溶液の調製工程>
調製方法としては、下記(イ)及び(ロ)の方法が挙げられる。
(イ)先ず、鉄塩水溶液を調製し、この鉄塩水溶液に珪素化合物及びマグネシウム化合物を添加する。次に、珪素化合物及びマグネシウム化合物を添加した鉄塩水溶液にアルカリ水溶液を添加して、中和反応により無定形の鉄水酸化物を生成させて鉄水酸化物含有水溶液を得る。
(ロ)先ず、鉄塩水溶液を調製し、この鉄塩水溶液をアルカリ水溶液に添加して、中和反応により無定形の鉄水酸化物を生成させて鉄水酸化物含有水溶液を得る。この方法の場合、珪素化合物及びマグネシウム化合物は、無定形の鉄水酸化物を生成させた後に添加してもよく、アルカリ水溶液に予め添加しておいてもよい。
また、上記(イ)及び(ロ)の方法において、中和反応により生成した無定形の鉄水酸化物を100℃以下の温度範囲で加熱して結晶化させてもよい。
【0046】
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いる鉄塩水溶液としては、例えば、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、塩化物、炭酸塩等といった各種の鉄塩の水溶液を使用することができる。また、一つの鉄塩水溶液を使用してもよく、複数の鉄塩水溶液の混合物を使用してもよい。該鉄塩水溶液は、その濃度が好ましくは0.05〜3.2mol%、より好ましくは0.1〜2.0mol%のものを使用する。
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いる珪素化合物としては、酸化物、塩化物、オキソ酸塩等といった各種の珪素化合物を使用することができる。該珪素化合物の添加量は、珪素として、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、4〜30mol%がより一層好ましい。
また、上記(イ)及び(ロ)の方法で用いるマグネシウム化合物としては、例えば、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、塩化物、炭酸塩等といった各種のマグネシウム化合物を使用することができる。該マグネシウム化合物の添加量は、マグネシウムとして、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜95mol%であることが好ましく、0.5〜40mol%がより好ましく、1〜30mol%がより一層好ましい。
【0047】
上記(イ)及び(ロ)の方法で用いるアルカリ水溶液としては、例えば、NaOH、KOH、NH3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、(NH4)2CO3等を用いることができる。
上記アルカリ水溶液の添加量は、添加終了時のpH値が7以上となるように添加することが好ましく、8〜14がより好ましく、10〜14がより一層好ましい。また、上記鉄塩水溶液とアルカリ水溶液との好ましい添加量の重量比率(前者:後者)は、1.0:0.1〜1.0:10であり、特に1.0:0.5〜1.0:5.0が好ましい。上記アルカリ水溶液の添加終了時のpH値(アルカリ濃度)が高くなるほど、粒子の成長を促進して粒子径を増大させるが、pH7未満では薄片状微粒子が形成されない。
【0048】
上記鉄水酸化物含有水溶液には、更に、結晶成長制御剤としてポリオキソ酸塩を形成するB、P、V、Nb、Ta、Mo、W等の化合物を添加してもよい。これらの結晶成長制御剤は、鉄水酸化物含有水溶液の調製工程の何れの段階で添加してもよく、鉄水酸化物含有水溶液の調製後に添加してもよい。該結晶成長制御剤の添加量は、上記鉄水酸化物含有水溶液中、鉄に対して0.1〜10mol%が好ましく、0.1〜5mol%がより好ましい。
【0049】
また、上記鉄水酸化物含有水溶液には、磁性材料として飽和磁化、透磁率等の磁気特性の制御を行う目的で、Li、Ca、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Ba等の酸化鉄に固溶する元素を添加し、フェライト化させてもよい。これらの酸化鉄に固溶する元素は、鉄水酸化物含有水溶液の調製工程の何れの段階で添加してもよく、鉄水酸化物含有水溶液の調製後に添加してもよい。該酸化鉄に固溶する元素の添加量は、鉄に対し、0.1〜50mol%が好ましく、1.0〜10mol%がより好ましい。
【0050】
<ii)水熱反応工程>
上記水熱反応は、温度が100℃以上、好ましくは150〜450℃、より好ましくは250〜400℃、且つ全圧力が0.1MPa以上、好ましくは0.2〜40MPa、より好ましくは2.5〜30MPaで、通常0.1時間以上、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.1〜8時間行うとよい。このような条件下で水熱反応させて、粒子径、粒子の厚さ、粒子の均一性等の粒子形態の制御を行い、濾過、水洗した後、乾燥することにより、本発明の薄片状ヘマタイト微粒子が得られる。
上記水熱反応の条件は、鉄水酸化物含有水溶液における原料の種類、仕込み量、pH値、珪素及びマグネシウムの添加量、反応温度、反応圧力及び反応時間等によって上記範囲内において適宜決定するとよい。上記水熱反応で薄片状微粒子を形成する最低温度は100℃である。上記水熱反応の最高温度は特に制限がなく、臨界点を超えてもよいが、使用する装置の仕様に制限される。
【0051】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状マグネタイト微粒子は、上記工程により製造された薄片状ヘマタイト微粒子を還元させることにより得ることができる。更に該薄片状マグネタイト微粒子を酸化させることにより、本発明の薄片状マグヘマイト微粒子が得られる。
また、上記工程により製造された薄片状ヘマタイト微粒子を焼成することにより、本発明の薄片状フェライト微粒子を得ることができる。
【0052】
上記薄片状マグネタイト微粒子を得るための還元は、水素雰囲気下で、最高到達温度が通常300〜500℃、好ましくは300〜400℃、且つ全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-3
MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧10-7〜10-4MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。また、この還元は、上記水熱反応の際に還元剤を添加するか、上記水熱反応を水素等の還元性雰囲気下に行うことにより、粒子形態の制御と同時に行ってもよい。
【0053】
上記薄片状マグヘマイト微粒子を得るための酸化は、大気雰囲気下、最高到達温度が通常200〜400℃、好ましくは200〜300℃、且つ全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧0.02〜0.3MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧0.02〜0.2MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。
【0054】
上記薄片状フェライト微粒子を得るための焼成は、窒素雰囲気下(又は大気雰囲気下)、最高到達温度が通常800℃以上、好ましくは800〜1500℃、より好ましくは800〜1100℃で、全圧が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-3MPa(又は0.02〜0.3MPa))、好ましくは0.1〜1.0Pa(酸素分圧10-7〜10-4M Pa(又は0.02〜0.2MPa))で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。
【0055】
次に、本発明の薄片状Fe系金属微粒子について説明する。
【0056】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子と同様に、珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200のものである。
本発明の薄片状Fe系金属微粒子の好ましい粒子径及びアスペクト比並びに珪素及びマグネシウムの好ましい含有量等については、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子において記載したことと同様である。
【0057】
また、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子と同様に、ポリマー等の有機物中への分散性の向上、又は有機物との接着性の向上のために適宜表面処理を行うことができる。表面処理を行う場合の条件等は、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子において記載したことと同様である。
また、本発明の薄片状Fe系金属微粒子を用いた本発明の複合材料についても、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子を用いた本発明の複合材料において記載したことと同様である。
【0058】
次に、本発明の薄片状Fe系金属微粒子の好ましい製造方法について述べる。
【0059】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元することにより製造できる。この酸化鉄を得るための鉄水酸化物含有水溶液の調製及び水熱反応は、上述の本発明の薄片状酸化鉄微粒子の好ましい製造方法において説明したことと同様である。
即ち、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の一形態である薄片状ヘマタイト微粒子を還元することにより製造できる。
【0060】
上記酸化鉄(薄片状ヘマタイト微粒子)の還元は、水素雰囲気下で、最高到達温度が通常300℃以上、好ましくは400〜1000℃、且つ全圧力が0.1〜1.5MPa(酸素分圧10-7〜10-4
MPa)、好ましくは0.1〜1.0MPa(酸素分圧10-7〜10-5MPa)で、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜8時間行うとよい。また、この還元は、上記水熱反応の際に還元剤を添加するか、上記水熱反応を水素等の還元性雰囲気下に行うことにより、粒子形態の制御と同時に行ってもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0062】
[薄片状ヘマタイト微粒子の製造]
(実施例1〜20、比較例1〜7)
鉄塩水溶液として塩化第二鉄水溶液、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液、珪素化合物として酸化珪素、マグネシウム化合物として塩化マグネシウム六水和物を用いて、表1記載のFe量、アルカリ量、Si添加量及びMg添加量となるように原料を準備した。次に、塩化第二鉄水溶液に塩化マグネシウム六水和物を加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液と酸化珪素とを添加して鉄水酸化物含有水溶液を調製した。調製後の鉄水酸化物含有水溶液のpH値を表1に示す。調製した鉄水酸化物含有水溶液をオートクレーブで攪拌しながら、表1記載の条件にて水熱反応を行った。反応終了後、室温まで冷却を行い、生成物を濾過、水洗、乾燥して目的物である薄片状ヘマタイト微粒子を得た。
【0063】
得られた薄片状ヘマタイト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を以下の方法により評価した。それらの結果を表1に示す。また、実施例11、実施例12、比較例2、比較例7の電子顕微鏡写真(×5000)を図1、2、3及び4に示す。
【0064】
(1)X線回折
理学電機製X線回折装置(RINT-2200V)にて測定した。
(2)比表面積
ユアサアイオニクス製比表面積測定装置(4ソーブBET計)にて測定した。
(3)粒子径の測定及び粒子の均一性評価
走査型電子顕微鏡写真を用いて、50個以上の粒子の粒子径を測定し、その平均値を求めた。また、粒子の均一性については該電子顕微鏡写真の目視による観察により評価した。
(4)アスペクト比(=粒子径/粒子の厚さ)
上記(2)で測定した比表面積と上記(3)で測定した粒子径とから粒子の厚さを算出して、アスペクト比を求めた。
【0065】
【表1】
【0066】
本発明の薄片状酸化鉄微粒子では、実施例1〜20の結果からFe量、アルカリ量、Si添加量及びMg添加量により、粒子径及びアスペクト比の制御が可能であり、均一な薄片状Fe系金属微粒子を得ることができる。
実施例3〜7の結果から、水熱反応温度を上昇させると粒子径が大きくなると同時に、アスペクト比が減少する。また実施例8〜9の結果から、水熱反応時間による粒子径及びアスペクト比への影響は少ない。水熱反応温度の最高温度には特に制限はないが、比較例1の結果から90℃では非晶質であるため、100℃以上での水熱反応が必要である。比較例2と実施例11との電子顕微鏡写真(図3と図1)との比較から、珪素単独よりも珪素とマグネシウムを添加した方が均一な粒子の生成が可能となる。
【0067】
実施例5、12〜14及び比較例3〜6における粒子径とアスペクト比との関係を図5に示す。
この図5に示した粒子径とアスペクト比との関係から次のことが明らかである。
比較例3〜6のようにマグネシウムを添加しないで、珪素添加量を増加させてアスペクト比を制御しようとすると粒子の厚さは薄くなるが、粒子径も減少するためアスペクト比の制御が困難である。
これに対して、実施例5、12〜14のように一定量のマグネシウムを珪素と一緒に添加することにより、粒子径を減少させずにアスペクト比を増大させることができる。
【0068】
また、実施例15〜20のようにマグネシウムと珪素の添加量を同時に一定の割合で増加させることにより、粒子径を減少させずにアスペクト比を増大させることができる。
図4の比較例7の電子顕微鏡写真で見られるように、珪素及びマグネシウムの添加量を鉄に対してそれぞれ95mol%より多くした場合、不均一な粒子が生成される。これに対し、図2の実施例12の電子顕微鏡写真で見られるように、本発明に係る珪素及びマグネシウムの添加量の範囲内では、薄片状酸化鉄微粒子は均一な粒子であることが分かる。
【0069】
[薄片状マグネタイト微粒子の製造]
(実施例21)
実施例3で得られた薄片状ヘマタイト微粒子を、水素雰囲気下、360℃、2時間にて気相還元を行い、薄片状マグネタイト微粒子を得た。得られた薄片状マグネタイト微粒子について、X線回折、比表面積、粒子径、及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を下記(5)の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図6に示す。
(5)磁気特性
東英工業製振動試料型磁力計(VSMP-1S)を使用し、外部磁場14kOeにて測定した。
【0070】
[薄片状マグヘマイト微粒子の製造]
(実施例22)
実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子を大気下、250℃、30分にて酸化を行い、薄片状マグヘマイト微粒子を得た。得られた薄片状マグヘマイト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図7に示す。
【0071】
本発明の薄片状ヘマタイト微粒子を還元することにより、本発明の薄片状マグネタイト微粒子を製造し、該薄片状マグネタイト微粒子を酸化することにより、本発明の薄片状マグヘマイト微粒子を製造したが、それらの粒子形態は、還元及びそれに続く酸化によっても維持されており、磁気特性に優れた均一な薄片状微粒子を得ることができた。
【0072】
[薄片状フェライト微粒子の製造]
(実施例23)
実施例3で得られた薄片状ヘマタイト微粒子を、窒素雰囲気下、1000℃、2時間にて、焼成を行うことにより、薄片状フェライト微粒子を得た。得られた薄片状フェライト微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、また磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表2に示し、電子顕微鏡写真(×5000)を図8に示す。
【0073】
本発明の薄片状ヘマタイト微粒子を焼成することにより、本発明の薄片状フェライト微粒子を製造したが、粒子形態が焼成しても維持されており、磁気特性に優れた均一な薄片状微粒子を得ることができた。
【0074】
【表2】
【0075】
[複合材料の作製]
(実施例24)
実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子を、アミノ官能性シランカップリング剤とポリカルボン酸型高分子分散剤とを添加したアクリル樹脂に分散させた。薄片状マグネタイト微粒子と樹脂との重量比率が、90:10又は80:20となるように配合した。
また、シランカップリング剤の添加量は薄片状マグネタイト微粒子に対して1重量%とし、分散剤の添加量は薄片状マグネタイト微粒子に対して5重量%とした。薄片状マグネタイト微粒子を分散させたアクリル樹脂を乾燥し、粉砕したものを外形19mm、内径9mm、厚さ2mmのトロイダル状に一軸成型して本発明の複合材料を得た。得られた複合材料をインピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー製E4991A)により複素透磁率測定を行った。測定結果を図9に示す。
【0076】
本発明の薄片状マグネタイト微粒子は均一性が優れているため、樹脂中への分散性が良好であった。また、該薄片状マグネタイト微粒子を分散させた本発明の複合材料は、その複素透磁率が高周波数まで安定した特性を示した。
【0077】
(実施例25〜45、比較例8〜13)
[薄片状Fe系金属微粒子の製造]
上記実施例1〜20で得られた薄片状酸化鉄微粒子をそれぞれ表3記載の条件にて気相還元を行い、薄片状Fe系金属微粒子を得た。得られた薄片状Fe系金属微粒子についてX線回折、比表面積、粒子径及びアスペクト比を実施例1と同様の方法により、磁気特性を実施例21と同様の方法により評価した。それらの結果を表3に示す。また、実施例40、比較例11の電子顕微鏡写真(×5000)を図10及び11に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の薄片状Fe系金属微粒子では、実施例25〜45の結果から、Fe量、アルカリ量、Si添加量、Mg添加量により、粒子径及びアスペクト比の制御が可能であり、磁気特性に優れた均一な薄片状Fe系金属微粒子を得ることができる。
実施例27〜31の結果から、水熱反応温度を上昇させると粒子径が大きくなると同時にアスペクト比が減少する。また実施例32〜33の結果から、水熱反応時間による粒子径及びアスペクト比の影響は少ない。
比較例8〜12の結果、図11の比較例11の電子顕微鏡写真から、珪素のみを添加すると形骸粒子が崩壊する。
比較例13の結果から、珪素及びマグネシウムの添加量を鉄に対してそれぞれ95mol%よりも多くした場合、不均一な粒子が生成される。これに対し、図10の実施例40の電子顕微鏡写真で見られるように、本発明の薄片状Fe系金属微粒子は均一な粒子であることが分かる。
また、実施例40及び41の結果から、還元温度を上昇させても粒子径は変化しないが、アスペクト比が減少する。
【0080】
[複合材料の作製]
(実施例46)
実施例40で得られた薄片状Fe系金属微粒子を、アミノ官能性シランカップリング剤とポリカルボン酸型高分子分散剤とを添加したアクリル樹脂に分散させた。薄片状Fe系金属微粒子と樹脂との重量比率が、90:10又は80:20となるように配合した。また、シランカップリング剤の添加量は薄片状Fe系金属微粒子に対して1重量%とし、分散剤の添加量は薄片状Fe系金属微粒子に対して5重量%とした。薄片状Fe系金属微粒子を分散させたアクリル樹脂を乾燥し、粉砕したものを外形19mm、内径9mm、厚さ2mmのトロイダル状に一軸成型して複合材料を得た。得られた複合材料をインピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー製E4991A)により複素透磁率測定を行った。測定結果を図12に示す。
本発明の薄片状Fe系金属微粒子は、均一性が優れているため、分散性が良好であった。
また、該薄片状Fe系金属微粒子を分散させた本発明の複合材料は、複素透磁率が高周波数まで安定した特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、実施例11で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図2】図2は、実施例12で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図3】図3は、比較例2で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図4】図4は、比較例7で得られた薄片状ヘマタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図5】図5は、本発明の薄片状酸化鉄微粒子の粒子径とアスペクト比との関係を示す。
【図6】図6は、実施例21で得られた薄片状マグネタイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図7】図7は、実施例22得られた薄片状マグヘマイト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図8】図8は、実施例23得られた薄片状フェライト微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図9】図9は、実施例24で得られた複合材料の複素透磁率の測定結果である。
【図10】図10は、実施例40で得られた薄片状Fe系金属微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図11】図11は、比較例11で得られた薄片状Fe系金属微粒子の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×5000)である。
【図12】実施例46で得られた複合材料の複素透磁率の測定結果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項2】
珪素の含有量が、鉄に対して0.1〜95mol%であり、マグネシウムの含有量が、鉄に対して0.1〜95mol%である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項3】
ヘマタイトの結晶構造を有する薄片状ヘマタイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項4】
請求項3記載の薄片状ヘマタイト微粒子を還元して得られる、薄片状マグネタイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項5】
請求項4で得られた薄片状マグネタイト微粒子を酸化して得られる、薄片状マグヘマイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項6】
請求項3記載の薄片状ヘマタイト微粒子を焼成して得られる、薄片状フェライト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項7】
上記薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着又はカップリング剤を被覆してなる請求項1〜6の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法であって、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することを特徴とする薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項10】
上記鉄水酸化物含有水溶液が、鉄に対して、珪素を0.1〜95mol%及びマグネシウムを0.1〜95mol%添加したものである請求項9記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項11】
上記鉄水酸化物含有水溶液が、pH7以上である請求項9又は10記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項12】
上記水熱反応を100℃以上で行う請求項9〜11の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項13】
珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項14】
請求項1〜3の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子を還元して得られる、請求項13記載の薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項15】
上記薄片状Fe系金属微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着又はカップリング剤を被覆してなる請求項13又は14記載の薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項16】
請求項13〜15の何れかに記載の薄片状Fe系金属微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料。
【請求項17】
請求項13〜16の何れかに記載の薄片状Fe系金属微粒子の製造方法であって、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元することを特徴とする薄片状Fe系金属微粒子の製造方法。
【請求項18】
上記還元を水素雰囲気下、300℃以上で行う請求項17記載の薄片状Fe系金属微粒子の製造方法。
【請求項1】
珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項2】
珪素の含有量が、鉄に対して0.1〜95mol%であり、マグネシウムの含有量が、鉄に対して0.1〜95mol%である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項3】
ヘマタイトの結晶構造を有する薄片状ヘマタイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項4】
請求項3記載の薄片状ヘマタイト微粒子を還元して得られる、薄片状マグネタイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項5】
請求項4で得られた薄片状マグネタイト微粒子を酸化して得られる、薄片状マグヘマイト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項6】
請求項3記載の薄片状ヘマタイト微粒子を焼成して得られる、薄片状フェライト微粒子である請求項1記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項7】
上記薄片状酸化鉄微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着又はカップリング剤を被覆してなる請求項1〜6の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法であって、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応することを特徴とする薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項10】
上記鉄水酸化物含有水溶液が、鉄に対して、珪素を0.1〜95mol%及びマグネシウムを0.1〜95mol%添加したものである請求項9記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項11】
上記鉄水酸化物含有水溶液が、pH7以上である請求項9又は10記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項12】
上記水熱反応を100℃以上で行う請求項9〜11の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子の製造方法。
【請求項13】
珪素及びマグネシウムを含有し、粒子径が0.01〜100μm、アスペクト比が3〜200である薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項14】
請求項1〜3の何れかに記載の薄片状酸化鉄微粒子を還元して得られる、請求項13記載の薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項15】
上記薄片状Fe系金属微粒子の粒子表面に、有機化合物を吸着又はカップリング剤を被覆してなる請求項13又は14記載の薄片状Fe系金属微粒子。
【請求項16】
請求項13〜15の何れかに記載の薄片状Fe系金属微粒子を有機物中に分散させてなる複合材料。
【請求項17】
請求項13〜16の何れかに記載の薄片状Fe系金属微粒子の製造方法であって、珪素及びマグネシウムを添加した鉄水酸化物含有水溶液を水熱反応して得られた酸化鉄を還元することを特徴とする薄片状Fe系金属微粒子の製造方法。
【請求項18】
上記還元を水素雰囲気下、300℃以上で行う請求項17記載の薄片状Fe系金属微粒子の製造方法。
【図5】
【図9】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−254969(P2008−254969A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99585(P2007−99585)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
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