説明

薄片状防錆顔料

【課題】更なる防錆性能を改良した薄片状防錆顔料を提供する。
【解決手段】薄片状粒子を含有する防錆顔料であって、前記薄片状粒子がリン酸系ガラスであり、好ましくは、リン酸系ガラスの組成が、モル%で表して、P :20〜80%、Fe:5〜50%、RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計):5〜50%で表される組成物から成り、前記薄片状粒子が、長さ3〜200μm、幅1〜150μm、厚さ0.01〜5μm、アスペクト比(長さ/厚み)3以上、であることを特徴とする防錆顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の防錆を目的とする防錆塗料、表面処理組成物、防錆効果を有するインキ組成物等に使用される薄片状防錆顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防錆顔料として、クロム系顔料や鉛系顔料が使用されていた。これらの防錆顔料は、金属に対して優れた防錆性能を発揮するものの、人体や環境に影響を及ぼす有害重金属化合物が使用されており、世界的な環境意識の高まりから、クロムや鉛などの重金属を排除する流れの中、該重金属を含まない防錆顔料の提供が期待されている。
【0003】
クロムや鉛を含まない防錆顔料として、リン酸系顔料、モリブデン酸系顔料、ホウ素系顔料などの、有害重金属を含まない無公害型防錆顔料が市販されている。これらの無公害型防錆顔料は、安全性の問題は少ないが、一般的に防錆力が低く、その持続性も低いという問題があった。このような背景のもと、種々の無公害型防錆顔料が提案されている。
【0004】
無公害型防錆顔料の一例として、薄片状粒子を用いた顔料が検討されている。例えば、特許文献1には、樹脂組成物中に薄片状のチタン酸カリウム粒子を配合させ、この薄片状粒子によって、酸素、水分、塩素イオンなどの腐食因子が樹脂塗膜を透過して金属表面に到達することを防止して、防錆性能を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−329959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような、薄片状粒子を樹脂組成物に配合させ、金属の錆びの原因となる腐食因子を、薄片状粒子によって、物理的に遮断するだけでは、実用面において、クロム系や鉛系の防錆顔料を含む塗料組成物に匹敵する十分な防錆性能を得ることが難しかった。
【0007】
そのため、さらに、防錆性能を向上させるために、別途、亜鉛粉末やリン酸亜鉛などの防錆顔料を添加する、あるいは、樹脂塗膜の膜厚を厚くする、などの手段がとられていた。しかしながら、別途、防錆顔料を添加する場合、顔料のコスト高に繋がり好ましくない。また、樹脂塗膜の膜厚を厚くすれば、薄片状粒子を配合させる割合を多くすることができ、防錆性能は向上するが、塗膜の乾燥に時間が長くなり、生産上好ましくない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、更なる防錆性能を改良した薄片状防錆顔料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、薄片状粒子の形状に由来する腐食因子の遮断による物理的作用だけでなく、防錆顔料として使用する薄片状粒子の材質及びその組成成分に着目し、化学的作用として、薄片状粒子自体の成分溶出による防錆不動態膜を形成させること、すなわち、物理的作用と化学的作用による防錆作用の相乗効果によって、より優れた防錆性能を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、薄片状粒子を含有する防錆顔料であって、前記薄片状粒子がリン酸系ガラスであり、5〜50モル%のFeを含有することを特徴とする防錆顔料である。
【0011】
また、前記リン酸系ガラスは、モル%で表して、P :20〜80%、Fe:5〜50%、RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計):5〜50%で表される組成物からなることが好ましい。
【0012】
また、前記薄片状粒子は、長さ3〜200μm、幅1〜150μm、厚さ0.01〜5μm、アスペクト比(長さ/厚み)3以上、であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薄片状防錆顔料によれば、薄片状粒子の形状に由来する腐食因子の遮断による物理的作用だけでなく、薄片状粒子自体の成分溶出による防錆不動態膜を形成させる化学的作用を持つため、物理的作用と化学的作用による防錆作用の相乗効果によって、より優れた防錆性能を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防錆塗膜の断面を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係る薄片状粒子の製造に用いる製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の防錆顔料は、リン酸系ガラスからなる薄片状粒子を含んだ防錆顔料であり、リン酸系ガラス組成おいて、5〜50モル%の鉄成分(Fe)を含有させ、この鉄成分(Fe)の溶出による化学的作用による防錆性能と、薄片状粒子の形状による物理的作用による防錆性能との相乗効果によって、更なる防錆性能を発現させることを特徴としている。
【0016】
さらに、本発明の防錆顔料は、薄片状粒子が成分として、Pと、Feと、RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計)と、を含んでおり、モル%で表して、P :20〜80%、Fe:5〜50%、RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計):5〜50%で表される組成物から成る防錆顔料である。以下、本発明において、上述の組成割合を規定する理由について説明する。
【0017】
本発明の成分系においてPは、ガラスを形成するための主要な必須成分であり、ガラス溶融を容易とする成分である。ガラス中にモル%で20〜80%の範囲で含有させることが望ましい。20%未満では上記作用を発揮しえずかつガラス化が困難となり、80%を超えると、吸湿しやすくなりその結果、ガラスの耐湿性が悪くなる。より好ましくは30〜80%の範囲である。
【0018】
Feは耐水性を高めるための必須成分であり、P系ガラスで問題となる吸湿性を改善し、ガラスを安定化させる成分である。ガラス中にモル%で5〜50%の範囲で含有させることが望ましい。5質量%未満では上記作用を発揮しえず、50%を超えるとガラス化しなくなる。より好ましくは10〜40%の範囲である。また、Fe成分を上記範囲にすることによって、Fe3から溶出する鉄成分とP5から溶出するリン酸成分を結合させることによって、防錆作用をもつ強固なリン酸鉄不動態膜を、より効果的に形成させるという利点がある。
【0019】
RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計)は防錆性をより高めるための成分であり、軟化点を調整することが出来る成分である。適宜、ガラス中にモル%で5〜50%の範囲で含有させる。50%を超えるとガラス化が困難となる。より好ましくは10〜50%の範囲である。
【0020】
上記各成分の割合が前記組成の範囲から外れると、本発明の防錆顔料となるガラス組成物を形成することができず、ガラス組成物からの防錆効果を発現する成分の溶出が得られにくくなるため、本発明の効果を十分に得られなくなるため好ましくない。
【0021】
また、本発明の防錆顔料となるガラス組成物は、実質的にSiO成分を含まないので、SiO成分を含むガラス組成物と比較して、ガラスの軟化点を低くして、ガラス組成物の溶融温度を低くすることができ、成形性や作業性などの取り扱いが容易になる。また、溶融温度を低くすることによって、設備に掛かる負担やエネルギー消費量を減らすことができ、コスト低減に対する利点がある。
【0022】
また、本発明における効果を損なわない範囲において、上記以外に一般的な酸化物で表すSr、Ti、Al、Ba、Li、Na、Kなどの金属酸化物を、モル%で表して、5%まで含有させてもよい。
【0023】
本発明の防錆顔料は、フレーク状ガラスなどの薄片状粒子が用いられる。防錆顔料を薄片状粒子にすることによって、防錆顔料を樹脂塗膜中に配合させ、金属材料に塗布した際に、フレーク状ガラスの面が、金属基材の表面と平行に配置され、水、酸素が塗膜を透過して金属基材に達するのを効率的に防止して、防錆効果を得ることができる。以下、本発明の防錆顔料として使用される薄片状粒子について説明する。
【0024】
本発明における薄片状粒子のサイズは、所定の大きさより大きくなると、塗膜組成物として使用する際の塗料調製において、分散性や作業性が悪くなる。一方、所定の大きさより小さくなると、塗膜内での薄片状粒子の多層積層効果としての透過遮断能が弱まり、十分な防錆性能を発現することができない。そのため、薄片状粒子は、長さは、3〜200μm、幅1〜150μmであって、アスペクト比(長さ/厚み)が約3以上の形態を有するものは、より効果的な防錆性能を発現する上では特に好適である
【0025】
また、薄片状粒子の厚みについて、所定の厚さより厚くなると、塗膜中での多層の重なりが損なわれ、透過遮断能の低下を招く。一方、厚さが所定の厚さより薄いと、薄片状粒子の強度が乏しくなり、塗料組成物中の混錬調製時の薄片状粒子の破損を生じ易くなるため好ましくない。そのため、薄片状粒子は、厚さが0.01〜5μmとすることが好ましく、さらには、0.01〜2μmの範囲とすることがより好ましい。
【0026】
また、薄片状粒子の形状に関して、薄片状粒子の楕円率(短軸と長軸の比)が所定の値より大きくなると、塗膜を形成させる際に、塗膜中に薄片状粒子を多層化することが難しくなり、多層積層効果が損なわれ、透過遮断性能が弱まってしまい十分な防錆性能を発現することができなるため好ましくない。そのため、薄片状粒子の楕円率は、1以下とすることが好ましく、さらに、0.8以下とすることがより好ましい。なお、ここで言う楕円率とは、薄片状粒子の平面において、短軸と長軸の比(短軸/長軸)で表される。また、楕円率の算出については、一般的な電子顕微鏡などにて薄片状粒子を観察して、得られた電子顕微鏡写真から算出するようにするとよい。
【0027】
塗料組成物中の薄片状粒子の配合量は、通常2〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%の範囲で調整するとよい。2質量%より少ない場合は、上記の塗膜性能改善効果を十分に発現することができず、70質量%より多いと、塗膜調整や塗膜作業性が低下し、また塗膜ピンホール等を生じる原因となるので好ましくない。
【0028】
本発明の薄片状粒子を含有する防錆塗料組成物が塗布される被塗物としては、金属部材が挙げられ、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛/アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板等が挙げられる。
【0029】
また、薄片状粒子は、分散性を向上させる目的で、高級脂肪酸またはその誘導体、界面活性剤、シランカップリング剤でさらに表面処理したものであってよい。
【0030】
本発明の防錆塗料に用いられる塗料としては、塗料用樹脂として用いられるものであれば、特に制限を受けることなく各種のものを用いることができる。例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、酸無水物変性ポリプロミレン、ケイ素樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム誘導体、その他繊維素誘導体等の樹脂が挙げられる。
【0031】
本発明に係る防錆塗膜の形成は、所望の粘度に防錆塗料を調製した後、エアースプレー、静電エアースプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による汎用の塗装機、刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いて、対象部材表面に塗布し、乾燥することにより行われる。乾燥膜厚は、使用状況に応じて、5〜700μmに調整することができ、数十μm程度の膜厚で十分な防錆性能を得ることができる。また、本発明の薄片状粒子を用いると膜厚を数十μm程度にして、薄くすること、もしくは、厚くして使用することも可能であり、幅広い用途に使用することが可能である。
【0032】
また、本発明に係る防錆塗膜は、上記の防錆顔料と塗料用樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない程度に必要に応じて、その他の添加剤を混合することも可能である。例えば、その他の添加剤として、酸化鉄、コバルト、ビスマス等を含有して金属酸化物系顔料ペリレン、ジケトピロロピロール等の有機顔料、シリカで表面処理をしている酸化チタン等の良好な耐侯性を有している着色顔料、炭酸カルシウム、垂晶石粉等の体質顔料、または、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等を加えるようにしてもよい。
【0033】
また、本発明に係る防錆塗料は、腐食環境に暴露される金属部材に被覆させ使用することができ、用途としては、例えば、化学装置、タンク、橋梁、船舶、海洋構造物、自動車の車体、建築外装、配管、ネジ部品、自動車、鉄道、建築用部品、などの防錆または防食塗膜として幅広く適用することができる。
【0034】
次に、本発明の防錆顔料となる薄片状粒子の製造方法について説明する。まず、防錆顔料となるガラス組成の各成分を含有する原料を混合し、溶融した後、冷却及び成形し、ブロック状のガラス組成物を形成する。次いで、このブロック状にしたガラス組成物からなる成形体を用いて、薄片状粒子の製造を行う。さらに、得られた薄片状粒子を分級することで粒度調整して、本発明の薄片状防錆顔料として使用することができる。
【0035】
なお、本発明において、ブロック状のガラス組成物を薄片状にする方法は、特に限定されないが、例えば、フレーク状の薄片状ガラスを製造する公知の方法(特公表平2−503669号公報)または、本出願人の発明に係る特願2010−277502号で提唱した薄片状ガラスの製造方法を採用することができる。
【0036】
以下、図2に示す薄片状ガラスの製造装置100を参考として、本出願人が特願2010−277502号で提唱した薄片状ガラスの製造方法について説明する。図2に示すように、薄片状ガラス9は、紡糸製造技術の応用技術である遠心法を用いることによって製造することができる。
【0037】
具体的には、ガラス融液供給部1から、前記ブロック状のガラス組成物を溶融することにより得られたガラス融液2(溶融ガラス)がガラス融液供給管3を経て、ガラス融液拡散室10に配置された拡散部4に供給され、ガラス融液2を遠心力で拡散部4の下端部から流出させる。さらに、一対のプレート7、8内を真空引きすることによって、拡散部4により放射方向外向きに引き出されたガラス融液6を引き出し、ガラス融液6を破砕することによって薄片状ガラス9を得ることができる。なお、拡散部4(回転カップ)はモーター5によって回転させる構成となっており、拡散部4のあるガラス拡散室10と、排気管12のある薄片状ガラス回収室11は間仕切りされている。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。以下の手順にて、薄片状ガラス(薄片状防錆顔料)の作製を行い、次いで、得られた薄片状ガラスを樹脂塗料と混合して金属基板(SPCC-SD鋼板)に防錆塗膜を形成した。さらに、この防錆塗膜に対して、JIS5600−7−1:1999に準拠した塩水噴霧試験によって防錆性能試験を行った。
【0039】
<ガラス成形体の形成>
源として正リン酸を、Fe源として酸化鉄を、MgO源として酸化マグネシウムを、CaO源として炭酸カルシウムを、ZnO源として酸化亜鉛を使用してこれらを表1の組成となるべく調合したうえで、白金ルツボに投入し、電気加熱炉内でそれぞれ表1に示す溶融温度にて、1〜3時間加熱溶融した。溶融ガラスを鋳型に流し込み、ブロック状とし、ガラス転移点以上に保持した電気炉内に移入して徐冷し、表1の実施例1〜4、比較例1、2に示す組成のブロック状のガラス成形体を得た。
【表1】

【0040】
<薄片状ガラスの製造>
次いで、表1の実施例1〜4及び比較例2に示すガラス成形体について、上記説明の本出願人が提唱した特願2010−277502号に基づき、溶融ガラスを遠心力で拡散部の下端部から流出させ、環状プレート内を真空引きすることによって、薄片状ガラスを放射方向に引き出し、破砕することによって薄片状ガラスを作製した。
【0041】
更に、得られた薄片状ガラスをスーパージェットミルSJ−100(日清エンジニアリング製)を用いて粉砕、分級して、平均粒子径25μm(D50)となるように粒度調整した薄片状ガラスを得た。
【0042】
また、比較例1において、粒状ガラスを作製する場合は、表1に示す組成割合となるように、ガラス原料を調合し、ブロック状ガラスを作製するまで、実施例1〜4と同様の手順で行った。次いで、ブロック状ガラスを、ジェットミル100AFG(ホソカワミクロン製)を用いて粉砕、分級して、平均粒径2μm(D50)となるように粒度調整した粒状ガラス防錆顔料を得た。
【0043】
本発明の範疇である薄片状防錆顔料について、組成割合を変化させたものを、実施例1〜4とした。また、本発明の範疇に入らない、防錆顔料の形状を粒状にしたものを、比較例1とした。薄片状ガラスとして一般的に使用されているEガラスを比較例2とした、さらに、防錆顔料として一般的に市販されているリン酸亜鉛(堺化学工業(株) ZPF)を使用したものを、比較例3とした。
【0044】
なお、比較例2に使用したEガラスの組成は、モル%で表して、SiO:54.6、B:6.7、Al:13.5、CaO:23.5、NaO:0.5、MgO:0.45、Fe:0.15、F:0.6のガラス組成であるものを用いた。さらに、ガラスブロックを成形するときの溶融温度は1400℃とした。
【0045】
また、実施例1〜4、比較例2に使用した薄片状粒子は、それぞれの形状(長さ、幅、アスペクト比)は長さ25μm、幅25μm、厚み0.6μm、アスペクト比が41.6であるものを使用した。なお、ここで言う形状(長さ、幅、アスペクト比)は、製造した薄片状粒子の形状を走査型電子顕微鏡SEM(S−4500、日立製作所)にて観察し、得られた電子顕微鏡写真より、無作為に数百個抽出した薄片状粒子から算出した平均の値である。
【0046】
<防錆塗膜の形成>
実施例1〜4及び比較例1〜3における防錆顔料と、樹脂塗料(ニッペホームプロダクツ製、アルキドウレタン樹脂シルバー24、BL13AS−3)とを混合して、防錆塗膜となる試験塗料組成物を作製した。この試験塗料組成物を用いて塗膜形成後、塩水噴霧試験を行った。なお、塗装および塗装条件については、表2に示す。
【表2】

【0047】
また、防錆性評価方法における塩水噴霧試験については、表2の塗装条件で被塗板上に塗膜を形成することによって作成した試験板にカッターナイフで被塗板表面に達するクロスカットを入れ、JIS5600−7−1:1999 中性塩水噴霧試験に準拠し、塩水噴霧試験機内温度35℃、噴霧圧力1kg/cmの条件にて5質量%NaCl水溶液を試験鋼板に500時間噴霧試験し、錆の発生状況および塗膜の膨れを錆の発生面積、並びにクロスカット部の腐食幅で評価した。クロスカット部の腐食幅評価基準、平面部の膨れ、錆発生面積評価基準について表3に示す。いずれの評価においても評価点が高いほど防錆能が優れている。
【表3】

【0048】
<防錆塗膜の観察>
実施例1にて得られた防錆塗膜の断面を走査型電子顕微鏡SEM(S−4500、日立製作所)にて観察したところ、図1に示すように、薄片状ガラスが、樹脂塗膜中にて互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成されていることが確認された。
【0049】
実施例1〜4及び比較例1〜3の防錆塗膜の防錆性評価について、表4にその結果を示す。
【表4】

【0050】
表4の結果より、本発明の範疇に入る実施例1〜4の薄片状ガラスを含有する防錆塗膜は、金属部材(SPCC-SD鋼板)に塗布した際に、優れた防錆性能を発揮していることが分かる。また、比較例1に示すように、防錆顔料の形状を粒状にすると、実施例1〜4と比較して十分な防錆性能を発揮することができなかった。また、比較例2より、本発明の組成範囲を外れると十分な防錆性能を発揮することができなかった。
【0051】
また、実施例1〜4の防錆性能評価結果より、本発明の薄片状ガラスを配合させた防錆塗膜は、28〜33μm程度の薄い膜厚においても優れた防錆性能を発揮することができ、乾燥時間に要する時間が短く、生産上のメリットが大きいことがわかる。さらに、実施例1〜4の結果より、本発明の防錆塗膜は、防錆顔料として、薄片状ガラス以外に別途防錆顔料を加えることなく、十分な防錆性能を得ることができ顔料のコスト的にも有利である。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス融液供給部
2 ガラス融液
3 ガラス融液供給管
4 拡散部
5 モーター
6 拡散部により放射方向外向きに引き出されたガラス融液
7 一対のプレート(上側)
8 一対のプレート(下側)
9 薄片状ガラス
10 ガラス融液拡散室
11 薄片状ガラス回収室
12 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状粒子を含有する防錆顔料であって、前記薄片状粒子がリン酸系ガラスであり、5〜50モル%のFeを含有することを特徴とする防錆顔料。
【請求項2】
前記リン酸系ガラスが、モル%で表して、
:20〜80%
Fe:5〜50%
RO(MgO、CaO、ZnOから選択される1種以上の合計):5〜50%
で表される組成物から成ることを特徴とする請求項1に記載の防錆顔料。
【請求項3】
前記薄片状粒子が、長さ3〜200μm、幅1〜150μm、厚さ0.01〜5μm、アスペクト比(長さ/厚み)3以上、であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防錆顔料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の防錆顔料を含むことを特徴とする防錆塗料組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の防錆塗料組成物で被覆したことを特徴とする金属部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1621(P2013−1621A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136895(P2011−136895)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】