説明

薄片状黒鉛微粒子の製造方法

【課題】扁平な炭素系ナノ構造物質、すなわち、薄く、かつ高アスペクト比である薄片状黒鉛微粒子の低温製造方法を提供する。
【解決手段】粒状黒鉛を、アルカリ性反応剤又はアルカリ性反応剤を含む混合物の存在下で、機械的摩耗処理し;挿入用溶媒が黒鉛の炭素層間へ浸透するように、黒鉛粒子を挿入用溶媒に曝し;ナノ構造物質の形成に十分な時間、超音波エネルギーを黒鉛粒子の分散液に供給する:工程を含む扁平な炭素系ナノ構造物質の製造方法。この方法で得られる炭素系ナノ構造体(CBNS)は、厚さが4〜20nmで、アスペクト比が500〜7000で、および様々な表面化学的性質を有し、また、高機能黒鉛材料として広範囲の用途、特にバッテリーおよび燃料電池における電気化学的用途に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄くかつ高アスペクト比である薄片状黒鉛微粒子の低温製造方法に関する。この方法によれば、厚みが4〜20nmで、アスペクト比が500〜7000で且つ様々な表面化学的性質を有する炭素系ナノ構造体(CBNS)を得ることができる。該炭素系ナノ構造体は高機能黒鉛材料として広範囲の用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
グラフェンのような薄く扁平なCBNSは、高伝熱性・高導電性などの様々な特異的性質を有する、炭素系材料として知られている。複数の炭素層を有するCBNSの製造は、理想的なグラフェンに比べて、複雑で無いと思われる。そして、この薄く扁平なCBNSの多くは、理想的なグラフェンが持つ伝導性及び光学的特性とほぼ同じ特性を有するので、商業的に広く応用することができる。
【0003】
本発明の目的は、CBNSの大量生産に適した、CBNSの新しい製造方法の開発である。
【0004】
黒鉛材料は、高導電性、潤滑性、耐腐食性、および耐熱性などの優れた特性を有し、工業的に広く応用されている。これら用途の大部分で、黒鉛は、通常、黒鉛単独又は黒鉛と他の材料との組み合わせからなる成形体として使われる。他に、黒鉛粉末は、フレキシブルフラット電極の形成材料、固体潤滑剤などとして重要な地位を占めている。
【0005】
このような分野に用いられる粒状黒鉛は、相互に多数接触するように均一に分散され、導電性や伝熱性などの機能特性を与えることができるので、高アスペクト比の微粒子形状が望まれる。
【0006】
従来技術では、粒状黒鉛は、通常、天然黒鉛又は合成黒鉛を湿式又は乾式の粉砕法によって機械的に分散させて製造される。しかし、すべての公知の粉砕法には問題がある。それらの中で最も重要な問題は、黒鉛の結晶化度が進むと黒鉛の結晶格子面の間ですべりが生じ、高分散度で黒鉛を微細化することが困難なことである。その結果、粉砕力や粉砕時間を増やしても、均一形状の微粒子は得られない。一方、熱膨張黒鉛TEG(例えば、インターカレーテッド黒鉛の熱処理で製造される。)を粉砕して製造される黒鉛粉末の場合、一般的な機械的粉砕法で膨張黒鉛を微粒子まで小さくすることは困難である。具体的には、膨張黒鉛の結晶格子面は、荷重又は衝撃の方向に対して直角に配向する傾向があるので、薄いフィルムが形成される。そのうえ、TEG粒子は非常に柔らかく、容易に押しつぶされ、かつ加圧によって板状の塊になる。更に、TEG粒子は非常に嵩高くて軽いので、粉砕工程の間にまき散る傾向がある。
【0007】
これらの問題を防ぐために、特開昭61−127612号公報(ダウエント抄録86−194944/30)は、TEGの空隙に液体を含浸した状態、又は更に該液体を凍結した状態でTEGを粉砕することを特徴とする導電性黒鉛材料の製造方法を開示している。粒子がまき散る問題はこれで解決できるが、他のほとんどの問題は解決しない。この方法は直接的な機械的衝撃力での粉砕に基づくので、膨張黒鉛の空隙を液体で完全に充填することが望ましく、そして、液体の充填と除去という操作を余分に行わなければならない。更に、膨張黒鉛に液体を含浸しても、それを均一に粉砕するのは困難である。結局、この方法の最も重要な問題は、スケールアップしたときに黒鉛微細化の効率が低いということである。
【0008】
米国特許第5330680号明細書には、TEG粒子を液体に分散する工程、その液体中で超音波を照射してその黒鉛粒子を砕く工程、を含む方法が記載されている。この方法は、径が小さく、アスペクト比が高い、より均一な薄片状黒鉛微粒子の製造を可能にする。この特許は、粒子の構造中に存在する空隙に液体を充填するための特段の操作を要せずにTEG粒子を直接的に液体に分散して、液体中でそれらを砕くと明言している。この方法により製造される薄片状黒鉛微粒子は、厚さが1μm(1000nm)以下で、直径が1〜100μmで、かつ平均アスペクト比が100〜7000の範囲である。
【0009】
しかし、黒鉛の層間領域内への液体分子の挿入過程の進みが遅いので、この方法はTEG結晶子の均一な分割を保証するものではない。米国特許第5330680号明細書中で、実際に使われた条件下では、黒鉛結晶内の全体積において挿入が生じず、黒鉛粒子の表面層の層間領域への挿入が期待できるだけである。そのような形態での表面の分割はゆっくり進行する。この特許で得られる結果には約70nm未満の結晶子サイズを示すデータがないので、このような仮説が裏付けられる。
【0010】
要するに、従来の粉砕又はその他の方法では、均一分布の、粒径が小さく(特に厚さが小さく)、且つアスペクト比が高い、黒鉛微粒子を製造することは非常に困難である。従って、均一な薄い黒鉛粒子の製造方法が求められるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術における前記問題を解決するために、本発明は、各種用途に応じた高機能黒鉛材料の製造に容易に適用でき、厚さが薄く、高アスペクト比で、かつ様々な表面化学的性質を備えた、均一な薄片状黒鉛微粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の製造方法は下記の工程を有する扁平な炭素系ナノ構造物質の製造方法である。(a)アルカリ性反応剤又はアルカリ性反応剤を含む混合物の存在下で粒状黒鉛に機械的摩耗処理を施す工程、(b)黒鉛粒子を挿入用溶媒に曝して黒鉛の炭素層間に該溶媒を浸透させる工程、および(c)黒鉛粒子の分散液に超音波エネルギーをナノ構造物質の形成に十分な時間供給する工程。
【発明の効果】
【0013】
この方法によれば、500〜7000の範囲の高アスペクト比で、厚さが4〜20nmの範囲にある薄い黒鉛結晶子を有する均一な薄片状黒鉛微粒子を製造できる。そのうえ、複合材料中の様々な重合体マトリクスとの親和化に適用できる完全に酸化されたCBNSから、バッテリーおよび燃料電池における電気化学的用途に適した高い導電性を有する完全に還元されたCBNSまでの、様々な表面化学的性質を備える薄い葉のような粒状CBNSを製造できる。
【0014】
理論的な関連は良くわからないが、本発明の新しくかつ予期せぬ効果は、恐らく、アルカリ性反応剤の存在下での機械的摩耗処理によって粒状黒鉛が割れることによって引き起こされる。これは、トポケミカル反応として知られる、アルカリ性水酸化物の存在下での微細フレーク状黒鉛の周囲の化学酸化によって促進される。しかしながら、この粉砕工程自体は、結晶子の微細化に関して制限がある(粉砕技術に関する前記解説を参照)。そのうえ、より徹底的で長時間の粉砕をすると、アモルファス炭素が形成されることが知られている。本発明者らは、そのようにして得た黒鉛試料は、粉末X線回折パターンにおいて黒鉛特有のピークを示さないことを実験的に確認した。
【0015】
次の段階では、一方ではその薄さのため、他方では表面が酸化された炭素粒子との良好な親和性のために、黒鉛結晶子の層間領域内部へ溶媒分子が均一に浸透して、溶媒の挿入が進む。その結果、分散液への超音波エネルギーの供給を引き続いて行うと、追加的に多くの分割が起きて、ナノ構造物質が形成される。
【0016】
このようにして得られる薄片状黒鉛微粒子は、凝集しづらく、形状が均一な、高アスペクト比の結晶性黒鉛微粒子である。そのため、薄片状黒鉛微粒子は、プラスチックマトリクスとの高い化学的親和性、および(必要に応じて)高導電性および高伝熱性などの優れた特性を有する材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る方法に従ったCBNSの製造を行うために、アルカリ性反応剤の存在下に粒状黒鉛に機械的摩耗処理を施す段階では、ミルが供給するエネルギーが黒鉛粒子を割るのに十分である限り、様々なミルを用ることができる。ボールミルやその他の型式のミルが好適である。
【0018】
ここで用いられるアルカリ性反応剤としては、固体アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。固体アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物としては、Li、Na、K、及びRbの水酸化物、並びにCa、Mg、及びSrの水酸化物を挙げることができる。十分に高いアルカリ性および良好な操作性を有するので、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムの水酸化物が好ましく、カリウムの水酸化物が、最も好ましい。
【0019】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物系添加剤と、粒状黒鉛との混合物は、第三成分として任意の無機塩型酸化剤を含むことができる。添加剤として無機酸化剤を用いて得られるCBNS試料は、通常、比表面積が大きい。すなわち、それらは、より微細で且つ薄くなっている。そのうえ、それらは、高酸素含有性、並びに水および他の極性溶媒との良好な濡れ性などの特有の性質を有する。それら表面の官能性分析によれば、表面は主にカルボキシル基で占められていることが判る。添加剤としての無機塩型酸化剤は、アルカリ金属の 過マンガン酸塩、過硫酸塩、および過塩素酸塩からなる群から選ぶことができる。過マンガン酸カリウムが最も好ましい。
【0020】
アルカリ性反応剤存在下での粒状黒鉛の機械的摩耗処理の段階は、一般式 R1234NOH で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムの存在下で行うことができる。ここで、R1〜R4は、C1〜C8アルキル基である。水酸化テトラメチルアンモニウム Me4NOH、又は一般式 Me31NOH(ただし、R1はC1〜C8アルキル基である。)で表される水酸化トリメチルアルキルアンモニウム、が好ましい。
【0021】
黒鉛の層間への溶媒の挿入、および、音波処理の間に黒鉛を割って薄いフレーク状のナノ構造物質の形成を伴う、(b)挿入用溶媒を黒鉛の炭素層間へ浸透させる段階、及び(c)超音波エネルギーを黒鉛粒子の分散液に供給する段階は、別々の段階又は連結した段階として行うことができる。
【0022】
本発明の方法におけるこれらの段階は、(i)脂肪族ポリオール類又は(ii)メチルフェニルシロキサン類の2つの群の1つから選ばれる液体溶媒を用いて効果的に行うことができる。
【0023】
第一段階として、溶媒中でのTEG剥離の試験を簡易な手法を用いて行った。化学的/機械的処理、洗浄、分離、および乾燥の後に、TEGを溶媒と混ぜて、0.1重量%の分散液を得、次いで機械的に1時間撹拌した。その後、該混合物を、プローブ型超音波分散装置UZDN−2Tを用いて、超音波で1時間処理した。このようにして得られた、割れたTEGの懸濁液を24時間静置した。その後、懸濁物質および沈殿物の目視観察および重量分析を行って、用いた溶媒の性能を評価した。「安定」懸濁液は、その全体積で懸濁したままであり、沈殿量が総黒鉛物質の20%未満を含む。安定懸濁液に関して、CBNS試料を超遠心分離し、空気中130℃で乾燥させた。次に、その試料をXRD及びSEMで分析した。
【0024】
脂肪族ジオールに関して、本発明者らは、末端C2〜C6ジオール類の存在下で行った超音波処理が最も効果的であることを確証した。末端C2〜C6ジオール類としては、末端のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールが例示される。エチレングリコール及びブタンジオールが最も好ましい。
【0025】
本発明によるCBNS製造のための溶媒挿入および超音波処理の段階を行うための効果的な媒体として有用な溶媒の他の群はメチルフェニルシロキサン類である。具体的には、一般式 [Si(Me)(Ph)O]n(ここで、n=4〜8) の環状メチルフェニルシロキサン類に代表されるメチルフェニルシロキサン(MPS)オリゴマーが適している。式 [Si(Me)(Ph)O]4 で表される液状環状メチルフェニルシロキサンが最も好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示し本発明を説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0027】
実施例1
かさ密度4.5kg/m3の熱膨張黒鉛(TEG)を原料として用いた。その構造特性は以下のとおりであった。
比表面積SS(BET法による窒素吸着で規定)は19.1m2/gである。
結晶子サイズLC(粉末XRD法で規定)は29.7nmである。
【0028】
TEG1gと水酸化カリウム5gとの混合物を直径10mmφのステンレス鋼(SS)製ボール400g(容積の2/3)とともに、容積225mlのシリンダ容器(Moでドープしたステンレス鋼(SS)製)に入れた。遊星型ボールミルPulverisette 6(フリッチュ社製)を用いて、機械的/化学的活性化処理を650回転/分で行った。3時間粉砕した後、容器を開け、水50mlを加え、500回転/分で10分間処理を続けた。水を体積1Lになるまで加え、塩酸で中和し、グラスフィルターで濾過し、130℃で乾燥させた。
【0029】
構造を測定し、以下の結果を得た。
比表面積SS 110m2/g;
結晶子サイズLC 7.5nm
【0030】
〔溶媒中でのTEGの剥離〕
【0031】
乾燥させたTEG 100mgをエチレングリコール100mlに混ぜて、0.1重量%溶液を得た。プローブ型超音波分散装置UZDN-2T(周波数22kHz、出力400W)を用いて、混合液を超音波で1時間処理した。24時間曝した後に得られた、割れたTEGの懸濁液は、その体積全体でCBNSが懸濁したままであった。実質的な沈殿物は観測されなかった。超遠心分離と130℃の空気による乾燥とを行った後の試料を、XRD及びSEMで分析し、以下の結果を得た。
比表面積SS 145m2/g;
結晶子サイズLC 5.6nm
【0032】
得られたCBNSのアスペクト比を試料のSEM観察で評価した。SEMパターンの半定量的処理データから、CBNS粒子は、平均粒子長さが10μm、平均粒子幅が2μmで且つアスペクト比が1200であるフレーク状で高異方性のものであることがわかった。
【0033】
本発明の方法で製造したCBNSの表面化学的性質を評価するために本発明者らは表面の活性官能基を分析した。
結果を以下に示す。
フェノール性基+カルボキシル基の合計 0.60mol/g
カルボキシル基 0.09mol/g
フェノール性基(計算) 0.51mol/g
カルボニル基 0.04mol/g
「フェノール性」水酸基(すなわち、三級炭素原子に結合したOH基、≡C−OH)が、得られた試料に多くあることがわかる。
【0034】
実施例2〜4
実施例1に記載の手法と同様にして実施例2〜4を行った。同じTEGを原料として用いた。CBNS製造における設定値及び特定値を表1に示すものに変えた。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例5
実施例1に記載の手法と同様にしてCBNS試料を製造した。水酸化カリウムに加えて、第三成分の無機塩型酸化剤として過マンガン酸カリウムを用いた。同じTEGを原料として用いた。
【0037】
TEG500mg、水酸化カリウム5g、および過マンガン酸カリウム2.5gからなる粉末混合物を、遊星型ボールミルに入れ650回転/分で1時間処理した。自然冷却後、エチレングリコール(EG)50mlを加え、30分間以上粉砕を続けた。水50mlを加えて攪拌し、得られたTEG懸濁液を取り出した。蒸留水を体積1Lになるまで加え、塩酸で中和した。過酸化水素を加え撹拌し、マンガン化合物残渣を可溶性マンガン酸塩に酸化した。懸濁液をpHが中性になるまで6000gで遠心分離した。エタノールを加え、懸濁液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られたCBNS試料を115℃で乾燥させた。
試料の比表面積(SS)は132m2/gであった。
結晶子サイズLCは6.3nmであった。
XRD及びBETの測定結果から、過マンガン酸カリウムを添加した場合にはTEG剥離度が上がることが判る。
【0038】
溶媒中で、このCBNS試料の更なる剥離を、実施例1の記載と全く同じようにして行った。得られた試料をXRD及びSEMで分析して以下の結果を得た。
比表面積SS 148m2/g;
結晶子サイズLC 5.1nm
【0039】
表面滴定分析を、115°Сで乾燥したCBNS試料について行った。結果を以下に示す。
フェノール性基+カルボキシル基の合計 0.77mol/g
カルボキシル基 0.48mol/g
フェノール性基(計算) 0.26mol/g
カルボニル基 0.11mol/g
無機塩型酸化剤を用いた場合は、カルボキシル性官能基が多くなることがわかる。
このCBNS試料は、元素分析の結果、C、HおよびO(残余で規定)の含有量がそれぞれ85.0重量%、0.2重量%および14.8重量%であった。酸素含有量は、実施例1で製造したCBNS試料より約1.5倍多かった。
【0040】
実施例6〜9
これら試料のためのTEGの化学的/機械的処理の段階を、実施例1に従って行った。同じTEGを原料として用いた。溶媒挿入及び音波処理の段階で使用した溶媒種、並びに超音波処理条件を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例10
実施例1に記載の手法に従ってCBNS試料を製造した。そして、試料を、アルゴン気流下、900℃で3時間アニールして還元した。
製造されたCBNS試料の表面化学分析データは以下の通りであった。
カルボキシル基 0.00mol/g
「フェノール性」基 0.12mol/g
カルボニル基 0.00mol/g
この還元された試料の元素分析データは以下の通りであった。
[C]=98.9%; [H]<0.00%; [O](計算値)=1.1%
このように、酸素含有量および三級ヒドロキシル基含量は著しく減少している。
【0043】
還元した試料の構造をXRD及びSEMで分析した結果は以下のとおりであった。
比表面積SS 139m2/g;
結晶子サイズLC 5.5nm
【0044】
還元した試料の比表面積は高いままであり、また、結晶子サイズは変化していない。従って、用いた穏やかな条件下での還元では、CBNSの再結晶は起きていないことがわかる。
【0045】
本発明に従って製造したCBNSの電気化学素子への適用可能性を評価するため、本発明者らは、還元した試料の導電性評価を行った。
本発明者らは、新たに用意した乾燥エタノール懸濁液(5重量%)を分散させ、懸濁液を30分間音波処理し、ニュークリアPET製で細孔径0.2μmの薄膜フィルターを通して薄膜領域を減圧しながらゆっくりとプローブの末端でろ過した。非加熱、減圧下で、フィルムになるまで乾燥を行った。構造を保ち十分で良好な結合をしたフィルムコーティングを薄膜基材上に得た。フィルムの厚さは、10〜100μmの範囲で変えることができる。標準的な四探針法で厚さ35μmのフィルムの電気抵抗を測定すると、14オームであった。これは、導電性バインダーを用いずに製造した未加圧の試料としては、十分に高い値である。
アニールしていないCBNS試料の抵抗は、3.2×10-3オーム程度の非常に低い値であった。この値は、表面酸化黒鉛として期待できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粒状黒鉛を、アルカリ性反応剤又はアルカリ性反応剤を含む混合物の存在下で、機械的摩耗処理し、
(b)挿入用溶媒が黒鉛の炭素層間へ浸透するように、黒鉛粒子を挿入用溶媒に曝し、
(c)ナノ構造物質の形成に十分な時間、超音波エネルギーを黒鉛粒子の分散液に供給する、
ことを含む扁平な炭素系ナノ構造物質の製造方法。
【請求項2】
アルカリ性反応剤が、固体のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリ性反応剤を含む混合物が、アルカリ金属の、過マンガン酸塩、過硫酸塩、および過塩素酸塩からなる群から選ばれる無機塩型酸化剤を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
アルカリ性反応剤が、一般式
1234NOH
(式中、R1〜R4は、C1〜C8アルキル基である。)
で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記曝露および超音波処理を、脂肪族ポリオール類又はメチルフェニルシロキサン類からなる群から選ばれる溶媒にて行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
超音波処理を、末端C2〜C6ジオール類の存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記超音波処理を、次式
[Si(Me)(Ph)O]n
(式中、nは4〜10である。)
で表されるメチルフェニルシロキサン類の存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
超音波エネルギーの供給を120W〜600Wで1〜4時間行う、請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−100219(P2013−100219A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−230742(P2012−230742)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】