薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置
【課題】比較用のデータをあらかじめ準備しておくことなく、薄肉部位の検出が可能な薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、壁部表面において厚さが一定の部位naと厚さが不明な部位とに測定点mpがそれぞれ指定され、加熱時及び前記自然冷却時のうち少なくとも一方において測定点毎に温度が時系列に測定され、測定点mp毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される。この取得された厚さが一定の部位naに指定された測定点spにおける基準データ群と、厚さが不明な部位に指定された測定点cpにおける比較データ群との類似度が導出されこの類似度に基づいて基準データ群が取得された測定点spでの壁部に対する比較データ群が取得された測定点cpでの壁部の薄さの度合いが導出されることで薄肉部位taが検出されることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、壁部表面において厚さが一定の部位naと厚さが不明な部位とに測定点mpがそれぞれ指定され、加熱時及び前記自然冷却時のうち少なくとも一方において測定点毎に温度が時系列に測定され、測定点mp毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される。この取得された厚さが一定の部位naに指定された測定点spにおける基準データ群と、厚さが不明な部位に指定された測定点cpにおける比較データ群との類似度が導出されこの類似度に基づいて基準データ群が取得された測定点spでの壁部に対する比較データ群が取得された測定点cpでの壁部の薄さの度合いが導出されることで薄肉部位taが検出されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器や管等の内部と外部とを隔てる壁部において、内部側から腐食等によって減肉して薄肉状態となった部位(薄肉部位)を外部から検出するための薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器や管等の構造物の壁部において、内部側からの腐食等によって減肉して薄肉(厚さの薄い)状態となった薄肉部位を外部から検出する方法としては、特許文献1に記載の方法が知られている。
【0003】
この方法では、パイプ表面における測定部位が等温度となるように加熱され、この加熱後に自然除熱によって冷却される。
【0004】
この冷却過程において、任意の時刻での前記測定部位における温度分布が赤外線カメラによって測定される。この測定によって得られた温度分布とあらかじめデータベースに多数蓄積された温度分布データとが次々に比較され、前記測定によって得られた温度分布と最も近似する温度分布データが前記データベースから抽出される。
【0005】
そして、この抽出された温度分布データが解析等によって求められた際の解析モデル(解析条件)に基づき前記測定部位の減肉形状の最大減肉深さ、減肉長さ、及び最大減肉深さ部における断面の減肉角度等が決定される。
【0006】
即ち、あらかじめ解析等によって求められ蓄積された多数の温度分布データのうち、実際に測定した温度分布に最も近似する温度分布データが抽出され、当該温度分布データの解析モデルに基づいて測定部位の肉厚が決定され、薄肉部位の検出がなされる。
【特許文献1】特開2000−161943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記の薄肉部位検出方法では、あらかじめ解析等によって求められた多数の温度分布データの蓄積されたデータベース等が必要となる。即ち、実際に測定して得た温度分布と比較するための温度分布データ(時間と対応した温度データの温度データ群)があらかじめ準備されていなければ前記比較ができないため測定部位の肉厚が決定できず薄肉部位の検出が行えない。
【0008】
しかも、このようなデータベース等の作成には、条件を変更した数多くの解析モデルに基づく解析が必要となり、非常に多くの時間や労力が必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、比較用のデータ群をあらかじめ準備しておくことなく、薄肉部位の検出が可能な薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る薄肉部位検出方法は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱され、その後自然除熱により冷却される変温ステップと、前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とに測定点がそれぞれ指定され、前記加熱時及び前記自然除熱による冷却時のうち少なくとも一方において前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、この温度測定ステップで取得された前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群である基準データ群と、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群である比較データ群との両データ群全体同士の類似度が導出される類似度ステップと、前記類似度に基づいて、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いが導出されることで前記薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る薄肉部位検出装置は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とにそれぞれ指定された測定点の温度を測定するための温度測定手段と、前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群を基準データ群とし、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群を比較データ群とし、これら基準データ群と比較データ群との両データ群全体同士の類似度を導出するための類似度導出手段と、この類似度導出手段によって導出された前記類似度に基づいて前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する前記比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いを導出することで薄肉部位を検出する第1薄さ度導出手段とを有することを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、前記被測温部材の表面温度が時系列に測定されて導出された前記類似度に基づき、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データが取得された測定点での前記壁部の薄さの度合い(薄さ度)が導出され、前記厚さが一定の部位よりも薄い薄肉部位の検出がなされる。
【0013】
しかも、前記被測温部材が温度測定されることで前記基準データ群と前記比較データ群との両方のデータ群が並行して取得されるため、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がない。
【0014】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記類似度ステップでは、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数が用いられる構成が好ましく、薄肉部位検出装置においては、前記類似度導出手段は、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数を導出するように構成されるのが好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、単純な計算によって前記相関係数が導出可能なため、前記基準データ群と前記比較データ群とが一致しているか否かの判定が短時間でなされ、薄肉部位の検出時間の短縮が図られる。
【0016】
また、前記相関係数が用いられることで、温度変化の特徴(例えば、グラフ化した際に直線的に変化する、又は曲線的に変化する等)の類似が評価されることとなり、温度値の絶対値の大小には影響され難くなる。そのため、前記判定における前記壁部表面の加熱むらや放射率のむらなどの影響が削減される。
【0017】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記類似度ステップでは、前記基準温度データ群と前記比較温度データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方が除かれたものに基づいて前記類似度が導出される構成が好ましく、薄肉部位検出装置においては、前記類似度導出手段は、前記基準データ群と前記比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方を除いたものに基づいて前記類似度を導出するように構成されるのが好ましい。
【0018】
これらの構成によれば、熱源からの放射エネルギ(熱)の被測温部材表面における反射の影響が基準データ群と比較データ群とから削除され、より薄肉部位の検出精度が向上する。
【0019】
即ち、取得される温度データ群において、前記反射による影響が前記加熱開始直後の温度上昇率及び加熱停止直後(前記自然除熱による冷却開始直後)の温度低下率に最も現れるため、かかる部分の温度データを除いて前記基準データ群と前記比較データ群との類似度が導出されることで、より精度よく類似度の導出が可能となる。
【0020】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記温度測定ステップでは、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群がそれぞれ取得され、前記類似度ステップでは、前記比較データ群毎に前記基準データ群に対する類似度がそれぞれ導出され、前記検出ステップでは、前記比較データ群が取得された測定点毎に前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで前記薄肉部位が検出される構成が好ましい。また、本発明に係る薄肉部位検出装置においては、前記温度検出手段は、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群をそれぞれ取得するように構成され、前記類似度導出手段は、前記基準データ群に対する前記比較データ群毎の類似度をそれぞれ導出するように構成され、前記第1薄さ度導出手段は、前記比較データ群を取得した前記測定点毎に前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出するように構成されることが好ましい。
【0021】
これらの構成によれば、前記壁部表面において1回の温度測定で複数箇所の薄肉部位の検出、即ち、各薄肉部位における前記薄さの度合いの導出が可能となる。このように複数箇所の薄肉部位における各薄さの度合いの導出が可能となることで、前記壁部表面における前記薄さの度合いの分布が得られる。その結果、1回の温度測定で前記壁部表面におけるより広い範囲での薄肉部位の検出が可能となる。また、各薄肉部位における減肉の相対的な大きさの検出も可能となる。
【0022】
また、本発明に係る薄肉部位検出方法において、前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される構成が好ましい。
【0023】
かかる構成のように、前記薄肉部位か否かの判定に前記両データ群の類似度が用いられることで、前記判定において前記加熱時における熱源からの反射や加熱むら等の外乱の影響が抑制される。
【0024】
そのため、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記両データ群のみからでも薄肉部位の検出が可能となる。その場合、前記自然除熱による冷却時の前記両データ群を取得する必要がなく、前記薄肉部位の検出時間の短縮が図られる。
【0025】
また、前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの自然除熱による冷却時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される構成であってもよい。
【0026】
かかる構成によれば、加熱時に生じる熱源からの反射や加熱むら等の外乱が含まれない温度データ群の取得が可能となり、より精度よく前記薄肉部位の検出が可能となる。
【0027】
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る薄肉部位検出方法においては、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱される加温ステップと、前記壁部表面において複数の測定点が指定され、前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、この温度測定ステップで取得された温度データのうち、前記測定点のうちの特定の測定点における温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの測定点における温度データ群を第1の比較データ群として、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布が導出される相関係数ステップと、前記導出された相関係数の分布における当該相関係数の度数分布から最も頻度の高い相関係数が選定され、この選定された相関係数が導出された各測定点の前記加熱ステップでの特定の時刻における温度の度数分布が導出されて最も頻度の高い温度が選定される選定ステップと、この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の前記測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記相関係数の分布が再導出される再導出ステップと、前記再導出ステップで再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る薄肉部位検出装置は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、前記壁部表面において指定された複数の測定点の温度を測定するための温度測定手段と、前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、特定の温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの温度データ群を第1の比較データ群とし、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数を導出し、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布を導出する相関係数導出手段と、前記導出した相関係数の分布から当該相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定し、この選定した相関係数が導出された各測定点の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定する選定手段と、この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出し、前記相関係数の分布を導出する再導出手段と、この再導出手段によって再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出する第2薄さ度導出手段とを備えることを特徴とする。
【0029】
通常、前記被測温部材の壁部において前記薄肉部位は局所的に集中する、即ち、前記薄肉部位の範囲に比べて前記厚さが一定の部位の範囲は広くなる。この厚さが一定の部位では、前記相関係数の分布において、当該相関係数(相関係数の値(相関値))が一定若しくはほぼ一定となる。また、前記厚さが一定の部位では、加熱時における前記温度も一定若しくはほぼ一定となる。
【0030】
そこで、特定の測定点における温度データ群を前記基準データ群とし、前記比較データ群との前記相関係数をそれぞれ導出してその分布を求める。この相関係数の分布に基づき、当該相関係数の度数分布を求めて最も頻度の高い相関係数を求める。さらに、この相関係数が導出された各測定点における加熱時の特定の時刻での温度の度数分布を求めて最も頻度の高い温度を求める。この温度が取得された各測定点が前記厚さの一定な部位として導出される。
【0031】
このようにして前記厚さが一定の部位が導出され、この部位の測定点で取得された温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点で取得された温度データ群をそれぞれ第2の比較データ群と設定することで、上記のように前記壁部の厚さが一定の部位がわかっていた場合と同様にして、前記薄肉部位の検出が可能となる。
【0032】
即ち、あらかじめ前記壁部表面において前記厚さが一定の部位が不明であっても、薄肉部位の範囲及び各測定点における薄さの度合いの検出が可能となる。
【0033】
この場合も、前記再度の相関係数の分布から各測定点における前記薄さの度合いが導出され、前記壁部表面における薄肉部位の検出が可能となると共に各薄肉部位における減肉の相対的な大きさの検出が可能となる。
【発明の効果】
【0034】
以上より、本発明によれば、比較用のデータ群をあらかじめ準備しておくことなく、薄肉部位の検出が可能な薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態に係る薄肉部位検出装置(以下、単に「検出装置」とも称する。)10は、容器や管等の内部空間を有する部材(被測温部材)Tの前記内部空間と前記被測温部材Tの外部とを隔てる被測温部材Tの壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位taを前記外部から検出するための装置である。
【0037】
具体的には、検出装置10は、被測温部材Tの表面を加熱するためのハロゲンランプ(加熱手段)12と、被測温部材Tの表面の温度を測定するための赤外線カメラ(温度測定手段)14と、この赤外線カメラ14が接続され、薄肉部位taを検出するための検出装置本体(薄肉部位検出手段)20と、検出装置本体20に接続され、前記検出された薄肉部位taを表示するためのモニタ(出力手段)16とを備える。
【0038】
ハロゲンランプ12は、被測温部材Tの表面に光(加熱光)を照射することで、この照射領域(後述する測定領域)を均一若しくは略均一に加熱するためのものである。本実施形態において、ハロゲンランプ12は、検出装置本体20に接続され、当該検出装置本体20からの指示によって熱流速や加熱時間、加熱の開始及び終了時期を制御される。
【0039】
尚、本実施形態においては、加熱手段12としてハロゲンランプが用いられているが、キセノンランプ等であってもよい。
【0040】
赤外線カメラ14は、被測温部材Tの表面における測定領域の温度を測定するものである。また、この赤外線カメラ14は測定領域の温度を時系列に測定することができる。
【0041】
図2にも示されるように、この測定領域tは、ハロゲンランプ12によって光が照射される被測温部材T表面の部位(領域)であり、測定点mpが複数含まれている。この測定点mpは、温度測定手段14によって指定された被測温部材T表面における温度が測定される部位である。具体的には、本実施形態においては、赤外線カメラ14における各画素にそれぞれ対応する被測温部材T表面上の部位である。尚、複数の測定点mpには、被測温部材Tの表面において厚さが一定の部位naに指定された測定点である基準測定点spと、被測温部材Tの表面において厚さが不明な部位に指定された測定点である比較測定点cpとが含まれている。
【0042】
従って、赤外線カメラ14では、2次元の温度分布が測定されるため、各測定点mp、即ち、前記少なくとも1つの基準測定点sp及び複数の比較測定点cpから並行して温度(表面温度)が測定される。
【0043】
検出装置本体20は、赤外線カメラ14から送られてくる測定点mp毎に時系列に測定された時間と対応した温度データのデータ群(温度データ群)から被測温部材Tの表面における薄肉部位taを検出するためのものであり、類似度導出手段22と、第一薄さ度導出手段30とを備える。
【0044】
類似度導出手段22は、赤外線カメラ14から取得した測定点mp毎の温度データ群のうち、基準測定点spにおける温度データ群を基準データ群とし、比較測定点cpにおける温度データ群を比較データ群とし、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ及び自然除熱による冷却開始直後の温度データ(以下、単に「特異点」とも称する。)を除き、これら特異点を除いた後の基準データ群と比較データ群との類似度を導出するためのものである。この類似度導出手段22は、本実施形態においては、各測定点(各画素)での温度データ群一時記憶手段24と、基準データ群一時記憶手段26と、基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段28とを有する。
【0045】
各測定点での温度データ群一時記憶手段(以下、単に「温度データ群一時記憶手段」とも称する。)24は、赤外線カメラ14で時系列に測定した2次元温度分布の測定データを測定点(赤外線カメラにおける画素)mp毎の時系列の当該時間と対応した温度データの温度データ群として一時的に格納するためのものである。基準データ群一時記憶手段26は、温度データ群一時記憶手段24に格納された基準測定点spにおける基準データ群を抽出し、一時的に格納するためのものである。基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段(以下、単に「相関係数導出手段」とも称する。)28は、基準データ群一時記憶手段26に格納された基準データ群と温度データ群一時記憶手段24に比較測定点cp毎に個別に格納されている各比較データ群との相関係数をそれぞれ導出するためのものである。
【0046】
尚、本実施形態においては、基準データ群と比較データ群との類似度の定量化の指標(評価パラメータ)として両データ群間の直線的関連の程度を表す係数である相関係数が用いられている。このように両データ群の類似度を導出する指標として相関係数が用いられると、単純な計算によって前記相関係数が導出可能なため基準データ群と比較データ群とが一致しているか否かの判定が短時間でなされ、薄肉部位taの検出時間の短縮が図られる。
【0047】
また、相関係数が用いられることで、温度変化の特徴(例えば、グラフ化した際に直線的に変化する、又は曲線的に変化する等)の類似が評価されることとなり、温度値の絶対値の大小には影響され難くなる。
【0048】
第一薄さ度導出手段30は、類似度導出手段22によって導出された相関係数に基づいて各比較測定点cp、即ち、比較データ群が取得された測定点が薄肉部位taであるか否かを判定するためのものである。具体的には、第一薄さ度導出手段30は、比較測定点(各画素)cp毎に当該測定点が薄肉部位taか否かをそれぞれ判定すると共に、複数の薄肉部位taが存在する場合には各薄肉部位taでの正常な部位naに対する薄さの度合い、即ち、薄さの順位を導出する。
【0049】
モニタ(出力手段)16は、CRT、LCD等で構成される。本実施形態において、出力手段16は、画面を通じて薄肉部位taを作業者等が取得できるように構成されているが、プリンタ等の印刷手段であってもよい。又、出力手段16は、両方を備えていてもよい。
【0050】
本実施形態に係る検出装置10は、以上の構成からなり、次に、この検出装置10の作用について図3も参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、被測温部材Tを水平若しくは略水平に配管されている管とし、その表面温度が測定されることで、腐食等によって内側から減肉され管壁の厚さが薄くなった部位(薄肉部位)taが検出される。
【0051】
まず、ハロゲンランプ12から光(加熱光)が照射されることで管Tの表面における測定領域(基準測定点sp及び複数の比較測定点cpを含む領域)tが均一若しくは略均一に加熱される。管Tの表面では、この加熱が所定時間行われ(加熱過程)、その後、加熱が中止されて自然除熱により冷却される(冷却過程)(ステップ1)。
【0052】
この加熱過程及び冷却過程(ステップ1)と並行して、測定領域tの表面温度が赤外線カメラ14で測定される。このとき、赤外線カメラ14では時系列に温度が測定され、逐次、検出装置本体20に送られて当該検出装置本体20の温度データ群一時記憶手段24に格納される(ステップ2)。このように、加熱過程及び冷却過程の両過程の温度を測定することで、加熱又は冷却の一方の過程のみで温度を測定するよりも測定データのデータ数が増え、より精度よく薄肉部位taの検出が可能となる。
【0053】
検出装置本体20に送られた測定データ(温度データ群)は、前記のように測定点(各画素)mp毎に個別に温度データ群一時記憶手段24に格納される。尚、赤外線カメラ14での温度測定の際、管Tの減肉が予想される部位のみを視野にいれて温度測定するのではなく、視野の一部に管壁の肉厚が正常な部位naが入るように温度測定を行う。
【0054】
検出装置本体20に接続された入力手段(図示省略)によって温度データ群一時記憶手段24に格納された複数の温度データ群のうちから管Tにおける減肉されていない、即ち、管壁の肉厚が正常な部位naにおける測定点(基準測定点)spを指定する(ステップ3)。この指定によって基準データ群が基準データ群一時記憶手段26に抽出されて一時的に格納される。このとき、温度データ群一時記憶手段24に格納されている残りの各温度データ群が比較データ群となる。
【0055】
この基準データ群一時記憶手段26に格納された基準データ群が相関係数導出手段28に引き出されると共に温度データ群一時記憶手段24に格納された各比較データ群もそれぞれ相関係数導出手段28に引き出される。これら引き出された基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ及び自然除熱による冷却開始直後の温度データ(以下、単に「特異点」とも称する。:図8(b)の楕円で囲まれた部分Tp1及びTp2参照)が除かれる(ステップ4)。本実施形態においては、この特異点Tp1及びTp2は、ハロゲンランプ12での加熱開始直後のコンマ数秒間の温度データ及び加熱停止直後のコンマ数秒間の温度データである。具体的には、加熱開始直後の特異点Tp1は、温度データ群のうち、当該加熱開始直後を除く加熱時の温度上昇に比べて温度上昇率の大きい温度データの部分であり、加熱停止直後の特異点Tp2は、当該加熱停止直後を除く自然除熱による冷却時の温度低下に比べて温度低下率の大きい温度データの部分である。
【0056】
これら特異点が除去された後の基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。このとき、特異点が除去された後の基準データ群と各比較データ群とがそれぞれ正規化され、これら正規化された基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。この導出された各相関係数は、第一薄さ度導出手段30に送られる(ステップ5)。尚、本実施形態においては、特異点が除去された後の基準データ群と各比較群データとが正規化された後、これら正規化された基準データ群と各比較群データとから相関係数が導出されるが、これに限定されず、特異点が除去された後の基準データ群と各比較群データとから直接相関係数が導出されてもよい。
【0057】
そして、第一薄さ度導出手段30では、前記のように導出されて送られてきた各相関係数を用いて測定領域tにおける相関係数の分布が導出される。そして、この相関係数の分布に基づき測定領域tでの各比較測定点cpにおいて基準比較点spでの管壁に対する当該比較測定点cpでの管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出される。このようにして測定領域tにおける前記薄さ度の分布が導出され、この前記薄さ度の分布に基づき薄肉部位taの検出がなされる(ステップ6)。
【0058】
具体的には、相関係数が1の比較測定点cpは、減肉されていない正常な厚さの部位naであり、相関係数が1から外れた比較測定点cpは、正常な厚さよりも減肉された部位(薄肉部位)taであると判定される。そして、相関係数が1でない比較測定点cp同士においては相関係数(相関値)が小さくなるほど薄くなっていると判断される。
【0059】
この結果が出力され、モニタ16に表示される(ステップ7)。このとき、各相関係数(各相関値)に応じて画面の対応する位置の色が変わるように構成されてもよく、相関係数(相関値)が測定領域tの各測定点mpに対応して表示されるように構成されてもよい。また、この結果は、画面で表示されると共にハードディスク等の記憶手段に格納されてもよく、印刷手段等によって印刷されてもよい。
【0060】
以上のように、管Tの表面温度が時系列に測定されて導出された類似度(相関係数)に基づき、基準データ群と比較データ群との一致の度合いが導出され、この一致の度合いに基づき薄肉部位taが検出される。即ち、基準データ群と比較データ群との類似度から両方のデータ群の一致の度合い、即ち、基準データ群が取得された基準測定点spでの管壁に対する比較データ群が取得された比較測定点cpでの管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出され、前記厚さが一定の部位(正常な肉厚の部位)naよりも薄い薄肉部位taの検出がなされる。換言すると、両データ群が一致したときには、その比較データ群が取得された比較測定点cpは前記厚さが一定の部位naとして検出される。
【0061】
しかも、類似度が導出されるときに、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ特異点が除去されることで、ハロゲンランプ12からの照射の測定領域tにおける反射の影響が前記基準データ群及び比較データ群から除去されるため、より薄肉部位taの検出精度が向上する。即ち、取得される温度データ群(基準データ群及び比較データ群)において、前記測定領域tでの反射による影響が特異点として現れるため、かかる部分の温度データを除いて基準データ群と比較データ群との類似度が導出されることで、より精度のよい類似度の導出が可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態のように、基準データ群と比較データ群とから特異点が除去された後、正規化されることで、加熱過程と冷却過程とで反射等の外乱の影響が異り、この外乱の影響の異なる両過程の温度データを用いて類似度の導出が行われる場合であっても、精度のよい類似度の導出が可能となる。
【0063】
即ち、加熱過程と冷却過程との両過程で温度が測定され、この温度データに基づく基準データ群及び比較データ群から類似度(相関係数)が導出される場合には、正規化が行われることで、導出される類似度の精度がより向上する。尚、加熱過程又は冷却過程のみの温度データ(測定データ)に基づく基準データ群及び比較データ群から類似度が導出される場合には、正規化を行う必要がなく、特異点の除去のみが行われることで精度のよい類似度の導出ができる。
【0064】
また、管T表面における測定領域(2次元の領域内)tの表面温度が測定されることで、複数の測定点mpの温度が並行して測定される。そして、これら温度が測定された複数の測定点mpの中から基準測定点spが指定されると残りの測定点が比較測定点cpとなる。そのため、基準データ群と比較データ群との両方のデータ群が並行して取得されることとなり、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がなくなる。
【0065】
また、前記のように赤外線カメラ14で2次元の温度分布が時系列に測定されることで、管T表面の測定領域tにおいて複数の測定点mpの温度が測定される。そのため、各測定点mpに対応した部位での薄肉部位taの検出が可能となる。このように複数箇所での薄肉部位taの検出が可能となることで、測定領域tにおける薄肉部位(相関係数)taの分布が得られ、1回の温度測定で管Tの管壁表面におけるより広い範囲での薄肉部位taの検出が可能となる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態に係る検出装置10aは、第1実施形態に係る検出装置10と異なり、測定領域tにおいて、あらかじめ厚さが正常な部位naが不明な管(被測温部材)Tにおいても薄肉部位の検出が可能な装置である。
【0068】
即ち、第1実施形態に係る検出装置10は、測定領域tにおいて、あらかじめ厚さの正常な部位naがわかっている場合には、この正常な部位naを基準に各比較測定点cpとの相関係数を導出することで薄肉部位taを検出することができるが、測定領域tでの厚さの正常な部位naが不明な場合には必ずし正確な薄肉部位taの検出ができない。
【0069】
具体的には、検出装置10では、厚さが正常な部位naよりも薄い部位を基準にして各比較測定点cpとの相関係数が導出されると、厚さが正常な部位naにおいても相関係数が1よりも小さな値となってしまう。
【0070】
ここで、相関係数は、基準となる点との類似性の度合い、本実施形態の場合では基準となる部位の厚さからどれだけ厚さが異なるかを数値で表すものであるため、基準となる部位の厚さに対して厚いのか又は薄いのかの判断はできない。従って、前記のように相関係数が1よりも小さな値となった場合、相関係数を見ただけでは厚さが正常な部位naか薄肉部位taかがわからない場合がある。
【0071】
そこで、本実施形態に係る検出装置10aでは、測定領域tにおいて任意に基準となる部位(厚さが正常な部位na以外の部位)を特定したとしても、薄肉部位taを検出できるように構成されている。具体的には、以下に説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0072】
本実施形態に係る検出装置10aにおける検出装置本体20は、相関係数導出手段22aと、選定手段32と、再導出手段34と、第二薄さ度導出手段36とを備える。
【0073】
相関係数導出手段22aは、赤外線カメラ14から取得した測定点mp毎の温度データ群のうち、基準測定点sp1における温度データ群を第1の基準データ群とし、比較測定点cp1における温度データ群を第1の比較データ群とし、第1の基準データ群と第1の比較データ群とからそれぞれ特異点を除いて正規化し、これら特異点を除いて正規化した後の第1の基準データ群と第1の比較データ群との相関係数を導出し、測定領域tに沿った相関係数(相関値)の分布を導出するものである。この相関係数導出手段22aは、第1実施形態における類似度導出手段22と同様に、各測定点(各画素)での温度データ群一時記憶手段24と、基準データ群一時記憶手段26と、基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段28とを有する。尚、本実施形態においては、相関係数導出手段22aは、第1の基準データ群と第1の比較データ群とを正規化した後、相関係数を導出しているが、これに限定されず、正規化することなく相関係数を導出するように構成されてもよい。
【0074】
選定手段32は、相関係数導出手段22aで導出された相関係数の分布から相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定する。そして、この選定した相関係数が導出された各比較測定点cp1の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定するものである。本実施形態においては、前記度数分布としてヒストグラムが用いられる。
【0075】
再導出手段34は、選定手段32によって選定された温度(温度値)が導出された測定点mpのうちの特定の測定点(第2の基準測定点)sp2での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点mpでの各温度データ群を第2の比較データ群とする。そして、第2の基準データ群と第2の比較データ群とからそれぞれ特異点を除き、これら特異点を除いた後の第2の基準データ群と第2の比較データ群とのデータ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出して、この導出した複数の相関係数の測定領域tに沿った分布を導出するものである。尚、再導出手段34においても、相関係数導出手段22a同様、特異点を除いた後の第2の基準データ群と第2の比較データ群とが正規化され、これら正規化された第2の基準データ群と第2の比較データ群とから相関係数が導出されている。
【0076】
第二薄さ度導出手段36は、再導出手段34によって再導出した相関係数の分布に基づいて、第2の比較データ群が取得された第2の比較測定点cp2毎に、第2の基準データ群を取得した第2の基準測定点sp2での管壁に対する当該第2の比較データ群を取得した第2の比較測定点cp2での管壁の薄さの度合いをそれぞれ導出するものである。
【0077】
本実施形態に係る検出装置10aは、以上の構成からなり、次に、この検出装置10aの作用について図6も参照しつつ説明する。
【0078】
まず、ハロゲンランプ12から光(加熱光)が照射されることで管Tの表面における測定領域tが均一若しくは略均一に加熱される(ステップ1a)。管Tの表面では、この加熱が所定時間行われる。
【0079】
この加熱過程(ステップ1a)と並行して、測定領域tの表面温度が赤外線カメラ14で測定される。このとき、赤外線カメラ14では時系列に温度が測定され、逐次、検出装置本体20に送られて当該検出装置本体20の温度データ群一時記憶手段24に格納される(ステップ2a)。このとき、検出装置本体20に送られた測定データ(温度データ群)は、前記のように測定点mp毎に個別に温度データ群一時記憶手段24に格納される。
【0080】
検出装置本体20に接続された入力手段(図示省略)によって温度データ群一時記憶手段24に格納された複数の温度データ群のうちから任意に第1の基準測定点sp1が指定される(ステップ3a)。この指定によって第1の基準データ群が基準データ群一時記憶手段26に抽出されて一時的に格納される。このとき、温度データ群一時記憶手段24に格納されている残りの各温度データ群が第1の比較データ群となる。
【0081】
この基準データ群一時記憶手段26に格納された第1の基準データ群が相関係数導出手段28に引き出されると共に温度データ群一時記憶手段24に格納された各第1の比較データ群もそれぞれ相関係数導出手段28に引き出される。これら引き出された第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ特異点が除かれる(ステップ4a)。
【0082】
これら特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。このとき、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとがそれぞれ正規化され、これら正規化された第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。この導出された各相関係数の測定領域tに沿った分布が導出され、当該相関係数の分布が選定手段32に送られる(ステップ5a)。尚、本実施形態においても、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとが正規化され、これら正規化された第1の基準データ群と各比較群データとから相関係数が導出されるが、これに限定されず、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとから直接相関係数が導出されてもよい。
【0083】
選定手段32では、送られてきた相関係数の分布から相関係数(相関値)のヒストグラム(度数分布)が導出される。このヒストグラムに基づき、最も頻度の高い相関係数が選定される。このとき、選定される相関係数の値は、一つの値ではなくその前後複数の値を含む所定の幅を有するように選定される(ステップ6a―1)。このとき、赤外線カメラ14の視野に対して被測温物(管)Tの大きさが小さい場合には、あらかじめ所定の領域が指定され(図12のFL参照)、この領域内での相関係数の度数分布が導出される。
【0084】
このように選定された相関係数が導出された各比較測定点cp1の加熱過程(ステップ1a)での特定の時刻における温度(温度値)のヒストグラムが導出される。このヒストグラムに基づき、最も頻度の高い温度が選定される。このときも、前記同様、所定の幅を有するように温度が選定される(ステップ6a−2)。
【0085】
そして、この選定された温度が導出された比較測定点cp1のうちから、特定の測定点(第2の基準測定点)sp2が指定される。この第2の基準測定点sp2は、本実施形態では、検出装置10の操作者がマウス等の入力手段(図示せず)によって前記ヒストグラムから導出された温度の部位の中から任意に指定するが、検出装置10が任意に指定するように設定されてもよい。
【0086】
このように指定された第2の基準測定点sp2で取得された温度データ群が第2の基準データ群とされる。一方、他の全ての測定点mpが第2の比較測定点cp2とされて各第2の比較測定点cp2で取得された温度データ群が第2の比較データ群とされる(図5参照)。これら第2の基準データ群と各第2の比較データ群との相関係数がそれぞれ導出され、測定領域tにおける前記相関係数の分布が導出(再導出)される(ステップ7a)。尚、当該ステップにおいても、第2の基準データ群と各第2の比較データ群とからそれぞれ特異点が除かれ、これら特異点除去後の第2の基準データ群と各第2の比較データ群とから相関係数が導出される。このとき、第2の基準データ群と各第2の比較データ群とが、一旦正規化され、これら正規化された第2の基準データ群と各第2の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出されるが、前記同様、正規化されることなく、特異点の除去後、直接相関係数が導出されてもよい。
【0087】
再導出された相関係数の分布に基づき、測定領域tにおける各第2の比較測定点cp2において第2の基準測定点sp2での管壁に対する当該第2の比較測定点cp2での管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出される。このようにして測定領域tにおける前記薄さ度の分布が導出され、この前記薄さ度の分布に基づき薄肉部位taの検出がなされる(ステップ8a)。
【0088】
この結果が出力され、モニタ16に表示される(ステップ9a)。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、あらかじめ測定領域tにおいて管壁の厚さが一定の部位が不明であっても、薄肉部位taの範囲及び各測定点mpにおける薄さの度合いの検出が可能となる。
【0090】
即ち、通常、管Tの管壁において孔食(薄肉部位ta)は、腐食が局所的に集中し、薄肉部位taが点在するような状態となる。従って、薄肉部位taの範囲に比べて厚さが一定の部位naの範囲は広くなる。この厚さが一定の部位naでは、相関係数の分布において当該相関係数が一定若しくはほぼ一定となると共に、加熱時における温度も一定若しくはほぼ一定となる。
【0091】
そこで、第1の基準測定点sp1における温度データ群を第1の基準データ群とし、各第1の比較データ群との相関係数をそれぞれ導出してその分布を求める。この相関係数の分布に基づき、当該相関係数の度数分布を求めて最も頻度の高い相関係数を求める。さらに、この相関係数が導出された各測定点mpにおける加熱時の特定の時刻での温度の度数分布を求めて最も頻度の高い温度を求める。この温度が取得された各第1の比較測定点cp1が前記厚さの一定な部位naとして導出される。
【0092】
このようにして厚さが一定の部位naが導出され、この部位naの特定の測定点(第2の基準測定点sp2)で取得された温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点(第2の比較測定点cp2)で取得された温度データ群をそれぞれ第2の比較データ群と設定することで、第1実施形態のように管壁の厚さが一定の部位naがわかっていた場合と同様にして、薄肉部位taの検出が可能となる。
【0093】
この場合も、再度の相関係数の分布から各第2の比較測定点cp2における前記薄さの度合いが導出され、測定領域tにおける薄肉部位taの検出が可能となると共に各薄肉部位taにおける減肉の相対的な大きさの検出が可能となる。
【0094】
しかも、第1実施形態同様、各相関係数を導出する際に、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ特異点が除去されることで、精度のよい薄肉部位の検出が可能となる。また、第1実施形態同様、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がない。
【0095】
尚、本発明に係る検出装置は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0096】
例えば、第1実施形態において、被測温部材(管)Tの測定領域tの温度測定は、加熱過程及び冷却過程の両過程を通して行われているが、加熱過程又は冷却過程のいずれか一方で温度測定が行われてもよい。このように加熱過程又は冷却過程の各測定点mpの温度データ群を用いても、基準測定点spが指定されて基準データ群と比較データ群との相関係数が導出されることで薄肉部位taの検出が容易となる。
【0097】
特に、加熱過程で(加熱時に)取得された基準データ群及び比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることで、冷却過程での温度測定が必要なくなり、薄肉部位taの検出時間の短縮が図られる。
【0098】
従来の検出方法では、加熱過程の温度データ群内に加熱時における加熱手段からの反射や加熱むら等の外乱の影響が含まれ、精度よく薄肉部位taを検出できなかった。そのため、冷却過程の任意の時刻での温度分布を測定していた。これに対し、本発明に係る検出方法によれば、薄肉部位taか否かの判定に前記両データ群の類似度の定量化の指標として相関係数が用いられることで、前記判定における前記外乱の影響が除去され、加熱過程のみでの温度測定であっても精度よく薄肉部位の検出が可能となった。
【0099】
また、冷却過程で(自然除熱による冷却時に)取得された基準データ群及び比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される場合には、加熱過程で生じる反射や加熱むら等の外乱が含まれない温度データ群の取得が可能となる。
【0100】
また、第1及び第2実施形態においては、一つの基準測定点sp及び複数の比較測定点cpで温度測定を行って薄肉部位taを検出しているが、一つの基準測定点sp及び一つの比較測定点cpでの温度測定を行って薄肉部位taの検出が行われてもよい。このように構成されても、基準データ群と比較データ群との相関係数が導出されることで、薄肉部位taの検出は可能となる。
【実施例1】
【0101】
前記第1実施形態の検出装置10を用い、図7に示されるようなテストピースを用いて薄肉部位を検出する場合の実験を行った。このテストピースは、厚さが6mm、縦が200mm、横が200mmの板状の軟鋼で構成されている。そして、このテストピースの中央部には、3箇所に薄肉部位が設けられている。この3箇所の薄肉部位は、テストピースの裏面に設けられた直径20mmの円形状の凹部で、図において右から順に厚さが1mm、2mm、3mmとなるように形成されている。
【0102】
このテストピースがハロゲンランプ12で加熱される。このとき、1〜2kw/m2の熱流束を20secテストピースに与えた場合の各薄肉部位及び正常部位(厚さ6mmの部位)の温度変化の測定結果を図8(a)及び図8(b)に示す。図8(b)は、図8(a)における加熱過程の拡大図である。ここで、各温度変化のグラフf(A)〜f(G)は、温度を測定した各測定部位(図7におけるPointA〜G)における時間と対応した温度データのデータ群で構成されている。
【0103】
加熱過程(加熱時)と冷却過程(自然除熱による冷却時)とで反射等の外乱の影響が異なる場合において、両過程での温度データを類似度算出に用いるときには、これら各温度データ群f(A)〜f(G)から特異点(図8(b)におけるTp1及びTp2の温度データ)が除かれた後、正規化処理が行われる。即ち、各計測点PointA〜Gにおける加熱開始時の温度を0とすると共に加熱停止時の温度を1とし、また、自然除熱による冷却開始時の温度を0と共に冷却終了時の温度を1とする正規化処理が実行される。その結果を図9(a)及び図9(b)に示す。図9(b)は、図9(a)の加熱過程における拡大図である。尚、本実施例においては、PointDにおける温度データ群を基準データ群とし、他の部位(PointA〜C、PointE〜G)における温度データ群をそれぞれ比較データ群とする。
【0104】
このように正規化することで前記の加熱むら等の外乱の影響が除去され、例えば、図7における正常部位(PointD)のデータ群f(D)と厚さが2mmの部位(PointB)での温度データ群f(B)との違いが表れてくる。
【0105】
この結果から、正常部位(PointD〜F)の加熱過程では、加熱時間に比例してほぼ直線的に温度が上昇することが確認できる。一方、薄肉部位(PointA〜C)の温度変化は、正常部位と比較すると直線から外れた曲線(円弧状)となっていることが確認できる。
【0106】
以上のように、その形(図8(a)及び図8(b)のグラフ(各データ群))が正常部位(本実施例においてはPointD)の時系列の温度変化を示す温度データ群からどれだけずれているかを尺度として表すことが(定量化することが)できれば、測定領域における薄肉部位を容易に判定できることがわかる。また、冷却過程も正常部位と薄肉部位とでグラフの形が異なるため、同様の処理を行うことで区別できることもわかる。
【0107】
そこで、前記の実施形態においては、前記の正常部位の温度データ群f(D)と薄肉部位の温度データ群f(A)〜f(C)とのずれの前記尺度として、相関係数が用いられた。この相関係数は、温度変化の特徴(直線的に変化する、曲線的に変化する)の類似を評価できるからである。そのため、加熱むらや、表面の反射率のむら等による外乱の影響を抑制することができ、加熱過程のみの温度測定からでも精度よく薄肉部位の検出が可能になる。
【0108】
図9(b)についての相関係数を求めた結果を図10に示す。この図からわかるように、正常部位(PointD)に対して厚さ(厚さの値)が離れるに従って相関係数が小さくなっている。即ち、前記相関係数の大小から各薄肉部(PointA〜C)の薄さの大小関係を判断することが可能となる。
【0109】
しかし、加熱及び冷却の両過程での温度データを用いて各測定点における温度データ群から特異点が除かれることなく且つ正規化しなかった場合に相関係数が求められると、図11に示されるように、正常部位であるPointDが薄肉部位PointA〜Cの相関係数よりも小さくなる場合がある。これは、PointDにおいて反射される加熱源(ハロゲンランプ12)からの放射エネルギ(熱)を主とする外乱によるものである。即ち、PointDのような正常部位であるにも関わらず、反射によるオフセットが乗っている温度データ群がそのまま用いられて類似度が導出されると、正確な薄肉部位の検出が行えない。そこで、本実施例(前記第1及び第2実施形態)のように、各温度データ群から特異点が除かれて相関係数が導出されることで、前記温度データ群に乗っているオフセットの影響がキャンセルされて精度よく薄肉部位の検出が行われる。
【0110】
ここで、オフセットとは、反射による放射エネルギのことをいう。詳細には、テストピースにおいて裏面から透過して赤外線カメラ(温度測定手段)14に入射する放射エネルギがない場合、テストピースの放射率εとテストピースの反射率ρとの関係は、
1=ε+ρ ・・・・・(1)
となる。赤外線カメラ14に入る放射エネルギは、加熱されたテストピース自身からの放射エネルギと環境温度及びハロゲンランプ12からの熱が反射された放射エネルギとの和となる。この式(1)におけるρにテストピースに入射する放射エネルギを乗じた値がオフセット(反射による放射エネルギ)である。
【0111】
尚、本実施例においては、オフセットの影響の大きいPointDの温度データ群を基準データ群として相関係数を導出しているが、オフセットの影響の小さい他の正常部位(PointE〜G)の何れかの部位での温度データ群を基準データ群としても、本実施例同様の精度のよい薄肉部位の検出が可能である。
【0112】
次に、第2実施形態の検出装置10aを用い、前記のテストピースを用いて厚さが3mmの部位を基準に相関係数の分布を導出した。他の条件は、前記実施例と同様とし、その結果を図12に示す。この図12は、相関係数の大きさに対応するように色の濃淡で各部位の薄さの度合いを表している。
【0113】
この図からもわかるように、厚さが1mmの部位と厚さが正常な部位(6mmの部位)との色(本図においては濃淡)が同じようになり、この結果からでは正確に薄肉部位taを検出することができないことがわかる。
【0114】
この図12の結果から、前記第2実施形態におけるステップ6a―1及びステップ6a−2での処理を行った結果、図13が得られた。この図13は、前記厚さが正常な部位を基準にして相関係数の分布を導出した結果と一致若しくはほぼ一致している。
【0115】
このことから、厚さが正常な部位が不明な被測温物の場合に、厚さが正常な部位や最も薄い部位を基準にすることなく任意の測定点を基準としても、第2実施形態と同様に、相関係数の分布を再導出することで、薄肉部位の検出及び各薄肉部位の薄さの度合いの導出が可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】第1実施形態に係る薄肉部位検出装置のブロック図である。
【図2】同実施形態に係る被測温部材表面の測定領域及び測定点を示す概念図である。
【図3】同実施形態に係る薄肉部位検出装置での薄肉部位の検出のフローを示す図である。
【図4】第2実施形態に係る薄肉部位検出装置のブロック図である。
【図5】同実施形態に係る被測温部材表面の測定領域及び測定点を示す概念図である。
【図6】同実施形態に係る薄肉部位検出装置での薄肉部位の検出のフローを示す図である。
【図7】実施形例でのテストピースの正面図である。
【図8】図7のテストピースを加熱及び自然除熱により冷却した場合の各部位の温度変化を測定した結果を示す図であって、(a)は加熱時及び冷却時の全体を示す図であり、(b)は図8(a)における加熱時を拡大した図である。
【図9】(a)は図8(a)を正規化処理した図であり、(b)は図8(b)を正規化処理した図である。
【図10】図9(a)についての相関係数を示す図である。
【図11】図8(a)についての相関係数を示す図である。
【図12】実施例でのテストピースにおいて厚さが3mmの部位を基準に相関係数の分布を示す図である。
【図13】図12に基づいて第2実施形態に係る薄肉検出方法によって再導出した相関係数の分布を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 薄肉部位検出装置
12 ハロゲンランプ(加熱手段)
14 赤外線カメラ(温度測定手段)
16 モニタ(出力手段)
22 類似度導出手段
30 第一薄さ度導出手段
cp 比較測定点
mp 測定点
na 厚さが一定の部位
sp 基準測定点
T 管(被測温部材)
ta 薄肉部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器や管等の内部と外部とを隔てる壁部において、内部側から腐食等によって減肉して薄肉状態となった部位(薄肉部位)を外部から検出するための薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器や管等の構造物の壁部において、内部側からの腐食等によって減肉して薄肉(厚さの薄い)状態となった薄肉部位を外部から検出する方法としては、特許文献1に記載の方法が知られている。
【0003】
この方法では、パイプ表面における測定部位が等温度となるように加熱され、この加熱後に自然除熱によって冷却される。
【0004】
この冷却過程において、任意の時刻での前記測定部位における温度分布が赤外線カメラによって測定される。この測定によって得られた温度分布とあらかじめデータベースに多数蓄積された温度分布データとが次々に比較され、前記測定によって得られた温度分布と最も近似する温度分布データが前記データベースから抽出される。
【0005】
そして、この抽出された温度分布データが解析等によって求められた際の解析モデル(解析条件)に基づき前記測定部位の減肉形状の最大減肉深さ、減肉長さ、及び最大減肉深さ部における断面の減肉角度等が決定される。
【0006】
即ち、あらかじめ解析等によって求められ蓄積された多数の温度分布データのうち、実際に測定した温度分布に最も近似する温度分布データが抽出され、当該温度分布データの解析モデルに基づいて測定部位の肉厚が決定され、薄肉部位の検出がなされる。
【特許文献1】特開2000−161943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記の薄肉部位検出方法では、あらかじめ解析等によって求められた多数の温度分布データの蓄積されたデータベース等が必要となる。即ち、実際に測定して得た温度分布と比較するための温度分布データ(時間と対応した温度データの温度データ群)があらかじめ準備されていなければ前記比較ができないため測定部位の肉厚が決定できず薄肉部位の検出が行えない。
【0008】
しかも、このようなデータベース等の作成には、条件を変更した数多くの解析モデルに基づく解析が必要となり、非常に多くの時間や労力が必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、比較用のデータ群をあらかじめ準備しておくことなく、薄肉部位の検出が可能な薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る薄肉部位検出方法は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱され、その後自然除熱により冷却される変温ステップと、前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とに測定点がそれぞれ指定され、前記加熱時及び前記自然除熱による冷却時のうち少なくとも一方において前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、この温度測定ステップで取得された前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群である基準データ群と、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群である比較データ群との両データ群全体同士の類似度が導出される類似度ステップと、前記類似度に基づいて、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いが導出されることで前記薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る薄肉部位検出装置は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とにそれぞれ指定された測定点の温度を測定するための温度測定手段と、前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群を基準データ群とし、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群を比較データ群とし、これら基準データ群と比較データ群との両データ群全体同士の類似度を導出するための類似度導出手段と、この類似度導出手段によって導出された前記類似度に基づいて前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する前記比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いを導出することで薄肉部位を検出する第1薄さ度導出手段とを有することを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、前記被測温部材の表面温度が時系列に測定されて導出された前記類似度に基づき、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データが取得された測定点での前記壁部の薄さの度合い(薄さ度)が導出され、前記厚さが一定の部位よりも薄い薄肉部位の検出がなされる。
【0013】
しかも、前記被測温部材が温度測定されることで前記基準データ群と前記比較データ群との両方のデータ群が並行して取得されるため、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がない。
【0014】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記類似度ステップでは、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数が用いられる構成が好ましく、薄肉部位検出装置においては、前記類似度導出手段は、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数を導出するように構成されるのが好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、単純な計算によって前記相関係数が導出可能なため、前記基準データ群と前記比較データ群とが一致しているか否かの判定が短時間でなされ、薄肉部位の検出時間の短縮が図られる。
【0016】
また、前記相関係数が用いられることで、温度変化の特徴(例えば、グラフ化した際に直線的に変化する、又は曲線的に変化する等)の類似が評価されることとなり、温度値の絶対値の大小には影響され難くなる。そのため、前記判定における前記壁部表面の加熱むらや放射率のむらなどの影響が削減される。
【0017】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記類似度ステップでは、前記基準温度データ群と前記比較温度データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方が除かれたものに基づいて前記類似度が導出される構成が好ましく、薄肉部位検出装置においては、前記類似度導出手段は、前記基準データ群と前記比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方を除いたものに基づいて前記類似度を導出するように構成されるのが好ましい。
【0018】
これらの構成によれば、熱源からの放射エネルギ(熱)の被測温部材表面における反射の影響が基準データ群と比較データ群とから削除され、より薄肉部位の検出精度が向上する。
【0019】
即ち、取得される温度データ群において、前記反射による影響が前記加熱開始直後の温度上昇率及び加熱停止直後(前記自然除熱による冷却開始直後)の温度低下率に最も現れるため、かかる部分の温度データを除いて前記基準データ群と前記比較データ群との類似度が導出されることで、より精度よく類似度の導出が可能となる。
【0020】
本発明に係る薄肉部位検出方法においては、前記温度測定ステップでは、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群がそれぞれ取得され、前記類似度ステップでは、前記比較データ群毎に前記基準データ群に対する類似度がそれぞれ導出され、前記検出ステップでは、前記比較データ群が取得された測定点毎に前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで前記薄肉部位が検出される構成が好ましい。また、本発明に係る薄肉部位検出装置においては、前記温度検出手段は、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群をそれぞれ取得するように構成され、前記類似度導出手段は、前記基準データ群に対する前記比較データ群毎の類似度をそれぞれ導出するように構成され、前記第1薄さ度導出手段は、前記比較データ群を取得した前記測定点毎に前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出するように構成されることが好ましい。
【0021】
これらの構成によれば、前記壁部表面において1回の温度測定で複数箇所の薄肉部位の検出、即ち、各薄肉部位における前記薄さの度合いの導出が可能となる。このように複数箇所の薄肉部位における各薄さの度合いの導出が可能となることで、前記壁部表面における前記薄さの度合いの分布が得られる。その結果、1回の温度測定で前記壁部表面におけるより広い範囲での薄肉部位の検出が可能となる。また、各薄肉部位における減肉の相対的な大きさの検出も可能となる。
【0022】
また、本発明に係る薄肉部位検出方法において、前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される構成が好ましい。
【0023】
かかる構成のように、前記薄肉部位か否かの判定に前記両データ群の類似度が用いられることで、前記判定において前記加熱時における熱源からの反射や加熱むら等の外乱の影響が抑制される。
【0024】
そのため、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記両データ群のみからでも薄肉部位の検出が可能となる。その場合、前記自然除熱による冷却時の前記両データ群を取得する必要がなく、前記薄肉部位の検出時間の短縮が図られる。
【0025】
また、前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの自然除熱による冷却時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される構成であってもよい。
【0026】
かかる構成によれば、加熱時に生じる熱源からの反射や加熱むら等の外乱が含まれない温度データ群の取得が可能となり、より精度よく前記薄肉部位の検出が可能となる。
【0027】
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る薄肉部位検出方法においては、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱される加温ステップと、前記壁部表面において複数の測定点が指定され、前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、この温度測定ステップで取得された温度データのうち、前記測定点のうちの特定の測定点における温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの測定点における温度データ群を第1の比較データ群として、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布が導出される相関係数ステップと、前記導出された相関係数の分布における当該相関係数の度数分布から最も頻度の高い相関係数が選定され、この選定された相関係数が導出された各測定点の前記加熱ステップでの特定の時刻における温度の度数分布が導出されて最も頻度の高い温度が選定される選定ステップと、この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の前記測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記相関係数の分布が再導出される再導出ステップと、前記再導出ステップで再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る薄肉部位検出装置は、内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、前記壁部表面において指定された複数の測定点の温度を測定するための温度測定手段と、前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、特定の温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの温度データ群を第1の比較データ群とし、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数を導出し、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布を導出する相関係数導出手段と、前記導出した相関係数の分布から当該相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定し、この選定した相関係数が導出された各測定点の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定する選定手段と、この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出し、前記相関係数の分布を導出する再導出手段と、この再導出手段によって再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出する第2薄さ度導出手段とを備えることを特徴とする。
【0029】
通常、前記被測温部材の壁部において前記薄肉部位は局所的に集中する、即ち、前記薄肉部位の範囲に比べて前記厚さが一定の部位の範囲は広くなる。この厚さが一定の部位では、前記相関係数の分布において、当該相関係数(相関係数の値(相関値))が一定若しくはほぼ一定となる。また、前記厚さが一定の部位では、加熱時における前記温度も一定若しくはほぼ一定となる。
【0030】
そこで、特定の測定点における温度データ群を前記基準データ群とし、前記比較データ群との前記相関係数をそれぞれ導出してその分布を求める。この相関係数の分布に基づき、当該相関係数の度数分布を求めて最も頻度の高い相関係数を求める。さらに、この相関係数が導出された各測定点における加熱時の特定の時刻での温度の度数分布を求めて最も頻度の高い温度を求める。この温度が取得された各測定点が前記厚さの一定な部位として導出される。
【0031】
このようにして前記厚さが一定の部位が導出され、この部位の測定点で取得された温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点で取得された温度データ群をそれぞれ第2の比較データ群と設定することで、上記のように前記壁部の厚さが一定の部位がわかっていた場合と同様にして、前記薄肉部位の検出が可能となる。
【0032】
即ち、あらかじめ前記壁部表面において前記厚さが一定の部位が不明であっても、薄肉部位の範囲及び各測定点における薄さの度合いの検出が可能となる。
【0033】
この場合も、前記再度の相関係数の分布から各測定点における前記薄さの度合いが導出され、前記壁部表面における薄肉部位の検出が可能となると共に各薄肉部位における減肉の相対的な大きさの検出が可能となる。
【発明の効果】
【0034】
以上より、本発明によれば、比較用のデータ群をあらかじめ準備しておくことなく、薄肉部位の検出が可能な薄肉部位検出方法及び薄肉部位検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態に係る薄肉部位検出装置(以下、単に「検出装置」とも称する。)10は、容器や管等の内部空間を有する部材(被測温部材)Tの前記内部空間と前記被測温部材Tの外部とを隔てる被測温部材Tの壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位taを前記外部から検出するための装置である。
【0037】
具体的には、検出装置10は、被測温部材Tの表面を加熱するためのハロゲンランプ(加熱手段)12と、被測温部材Tの表面の温度を測定するための赤外線カメラ(温度測定手段)14と、この赤外線カメラ14が接続され、薄肉部位taを検出するための検出装置本体(薄肉部位検出手段)20と、検出装置本体20に接続され、前記検出された薄肉部位taを表示するためのモニタ(出力手段)16とを備える。
【0038】
ハロゲンランプ12は、被測温部材Tの表面に光(加熱光)を照射することで、この照射領域(後述する測定領域)を均一若しくは略均一に加熱するためのものである。本実施形態において、ハロゲンランプ12は、検出装置本体20に接続され、当該検出装置本体20からの指示によって熱流速や加熱時間、加熱の開始及び終了時期を制御される。
【0039】
尚、本実施形態においては、加熱手段12としてハロゲンランプが用いられているが、キセノンランプ等であってもよい。
【0040】
赤外線カメラ14は、被測温部材Tの表面における測定領域の温度を測定するものである。また、この赤外線カメラ14は測定領域の温度を時系列に測定することができる。
【0041】
図2にも示されるように、この測定領域tは、ハロゲンランプ12によって光が照射される被測温部材T表面の部位(領域)であり、測定点mpが複数含まれている。この測定点mpは、温度測定手段14によって指定された被測温部材T表面における温度が測定される部位である。具体的には、本実施形態においては、赤外線カメラ14における各画素にそれぞれ対応する被測温部材T表面上の部位である。尚、複数の測定点mpには、被測温部材Tの表面において厚さが一定の部位naに指定された測定点である基準測定点spと、被測温部材Tの表面において厚さが不明な部位に指定された測定点である比較測定点cpとが含まれている。
【0042】
従って、赤外線カメラ14では、2次元の温度分布が測定されるため、各測定点mp、即ち、前記少なくとも1つの基準測定点sp及び複数の比較測定点cpから並行して温度(表面温度)が測定される。
【0043】
検出装置本体20は、赤外線カメラ14から送られてくる測定点mp毎に時系列に測定された時間と対応した温度データのデータ群(温度データ群)から被測温部材Tの表面における薄肉部位taを検出するためのものであり、類似度導出手段22と、第一薄さ度導出手段30とを備える。
【0044】
類似度導出手段22は、赤外線カメラ14から取得した測定点mp毎の温度データ群のうち、基準測定点spにおける温度データ群を基準データ群とし、比較測定点cpにおける温度データ群を比較データ群とし、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ及び自然除熱による冷却開始直後の温度データ(以下、単に「特異点」とも称する。)を除き、これら特異点を除いた後の基準データ群と比較データ群との類似度を導出するためのものである。この類似度導出手段22は、本実施形態においては、各測定点(各画素)での温度データ群一時記憶手段24と、基準データ群一時記憶手段26と、基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段28とを有する。
【0045】
各測定点での温度データ群一時記憶手段(以下、単に「温度データ群一時記憶手段」とも称する。)24は、赤外線カメラ14で時系列に測定した2次元温度分布の測定データを測定点(赤外線カメラにおける画素)mp毎の時系列の当該時間と対応した温度データの温度データ群として一時的に格納するためのものである。基準データ群一時記憶手段26は、温度データ群一時記憶手段24に格納された基準測定点spにおける基準データ群を抽出し、一時的に格納するためのものである。基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段(以下、単に「相関係数導出手段」とも称する。)28は、基準データ群一時記憶手段26に格納された基準データ群と温度データ群一時記憶手段24に比較測定点cp毎に個別に格納されている各比較データ群との相関係数をそれぞれ導出するためのものである。
【0046】
尚、本実施形態においては、基準データ群と比較データ群との類似度の定量化の指標(評価パラメータ)として両データ群間の直線的関連の程度を表す係数である相関係数が用いられている。このように両データ群の類似度を導出する指標として相関係数が用いられると、単純な計算によって前記相関係数が導出可能なため基準データ群と比較データ群とが一致しているか否かの判定が短時間でなされ、薄肉部位taの検出時間の短縮が図られる。
【0047】
また、相関係数が用いられることで、温度変化の特徴(例えば、グラフ化した際に直線的に変化する、又は曲線的に変化する等)の類似が評価されることとなり、温度値の絶対値の大小には影響され難くなる。
【0048】
第一薄さ度導出手段30は、類似度導出手段22によって導出された相関係数に基づいて各比較測定点cp、即ち、比較データ群が取得された測定点が薄肉部位taであるか否かを判定するためのものである。具体的には、第一薄さ度導出手段30は、比較測定点(各画素)cp毎に当該測定点が薄肉部位taか否かをそれぞれ判定すると共に、複数の薄肉部位taが存在する場合には各薄肉部位taでの正常な部位naに対する薄さの度合い、即ち、薄さの順位を導出する。
【0049】
モニタ(出力手段)16は、CRT、LCD等で構成される。本実施形態において、出力手段16は、画面を通じて薄肉部位taを作業者等が取得できるように構成されているが、プリンタ等の印刷手段であってもよい。又、出力手段16は、両方を備えていてもよい。
【0050】
本実施形態に係る検出装置10は、以上の構成からなり、次に、この検出装置10の作用について図3も参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、被測温部材Tを水平若しくは略水平に配管されている管とし、その表面温度が測定されることで、腐食等によって内側から減肉され管壁の厚さが薄くなった部位(薄肉部位)taが検出される。
【0051】
まず、ハロゲンランプ12から光(加熱光)が照射されることで管Tの表面における測定領域(基準測定点sp及び複数の比較測定点cpを含む領域)tが均一若しくは略均一に加熱される。管Tの表面では、この加熱が所定時間行われ(加熱過程)、その後、加熱が中止されて自然除熱により冷却される(冷却過程)(ステップ1)。
【0052】
この加熱過程及び冷却過程(ステップ1)と並行して、測定領域tの表面温度が赤外線カメラ14で測定される。このとき、赤外線カメラ14では時系列に温度が測定され、逐次、検出装置本体20に送られて当該検出装置本体20の温度データ群一時記憶手段24に格納される(ステップ2)。このように、加熱過程及び冷却過程の両過程の温度を測定することで、加熱又は冷却の一方の過程のみで温度を測定するよりも測定データのデータ数が増え、より精度よく薄肉部位taの検出が可能となる。
【0053】
検出装置本体20に送られた測定データ(温度データ群)は、前記のように測定点(各画素)mp毎に個別に温度データ群一時記憶手段24に格納される。尚、赤外線カメラ14での温度測定の際、管Tの減肉が予想される部位のみを視野にいれて温度測定するのではなく、視野の一部に管壁の肉厚が正常な部位naが入るように温度測定を行う。
【0054】
検出装置本体20に接続された入力手段(図示省略)によって温度データ群一時記憶手段24に格納された複数の温度データ群のうちから管Tにおける減肉されていない、即ち、管壁の肉厚が正常な部位naにおける測定点(基準測定点)spを指定する(ステップ3)。この指定によって基準データ群が基準データ群一時記憶手段26に抽出されて一時的に格納される。このとき、温度データ群一時記憶手段24に格納されている残りの各温度データ群が比較データ群となる。
【0055】
この基準データ群一時記憶手段26に格納された基準データ群が相関係数導出手段28に引き出されると共に温度データ群一時記憶手段24に格納された各比較データ群もそれぞれ相関係数導出手段28に引き出される。これら引き出された基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ及び自然除熱による冷却開始直後の温度データ(以下、単に「特異点」とも称する。:図8(b)の楕円で囲まれた部分Tp1及びTp2参照)が除かれる(ステップ4)。本実施形態においては、この特異点Tp1及びTp2は、ハロゲンランプ12での加熱開始直後のコンマ数秒間の温度データ及び加熱停止直後のコンマ数秒間の温度データである。具体的には、加熱開始直後の特異点Tp1は、温度データ群のうち、当該加熱開始直後を除く加熱時の温度上昇に比べて温度上昇率の大きい温度データの部分であり、加熱停止直後の特異点Tp2は、当該加熱停止直後を除く自然除熱による冷却時の温度低下に比べて温度低下率の大きい温度データの部分である。
【0056】
これら特異点が除去された後の基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。このとき、特異点が除去された後の基準データ群と各比較データ群とがそれぞれ正規化され、これら正規化された基準データ群と各比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。この導出された各相関係数は、第一薄さ度導出手段30に送られる(ステップ5)。尚、本実施形態においては、特異点が除去された後の基準データ群と各比較群データとが正規化された後、これら正規化された基準データ群と各比較群データとから相関係数が導出されるが、これに限定されず、特異点が除去された後の基準データ群と各比較群データとから直接相関係数が導出されてもよい。
【0057】
そして、第一薄さ度導出手段30では、前記のように導出されて送られてきた各相関係数を用いて測定領域tにおける相関係数の分布が導出される。そして、この相関係数の分布に基づき測定領域tでの各比較測定点cpにおいて基準比較点spでの管壁に対する当該比較測定点cpでの管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出される。このようにして測定領域tにおける前記薄さ度の分布が導出され、この前記薄さ度の分布に基づき薄肉部位taの検出がなされる(ステップ6)。
【0058】
具体的には、相関係数が1の比較測定点cpは、減肉されていない正常な厚さの部位naであり、相関係数が1から外れた比較測定点cpは、正常な厚さよりも減肉された部位(薄肉部位)taであると判定される。そして、相関係数が1でない比較測定点cp同士においては相関係数(相関値)が小さくなるほど薄くなっていると判断される。
【0059】
この結果が出力され、モニタ16に表示される(ステップ7)。このとき、各相関係数(各相関値)に応じて画面の対応する位置の色が変わるように構成されてもよく、相関係数(相関値)が測定領域tの各測定点mpに対応して表示されるように構成されてもよい。また、この結果は、画面で表示されると共にハードディスク等の記憶手段に格納されてもよく、印刷手段等によって印刷されてもよい。
【0060】
以上のように、管Tの表面温度が時系列に測定されて導出された類似度(相関係数)に基づき、基準データ群と比較データ群との一致の度合いが導出され、この一致の度合いに基づき薄肉部位taが検出される。即ち、基準データ群と比較データ群との類似度から両方のデータ群の一致の度合い、即ち、基準データ群が取得された基準測定点spでの管壁に対する比較データ群が取得された比較測定点cpでの管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出され、前記厚さが一定の部位(正常な肉厚の部位)naよりも薄い薄肉部位taの検出がなされる。換言すると、両データ群が一致したときには、その比較データ群が取得された比較測定点cpは前記厚さが一定の部位naとして検出される。
【0061】
しかも、類似度が導出されるときに、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ特異点が除去されることで、ハロゲンランプ12からの照射の測定領域tにおける反射の影響が前記基準データ群及び比較データ群から除去されるため、より薄肉部位taの検出精度が向上する。即ち、取得される温度データ群(基準データ群及び比較データ群)において、前記測定領域tでの反射による影響が特異点として現れるため、かかる部分の温度データを除いて基準データ群と比較データ群との類似度が導出されることで、より精度のよい類似度の導出が可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態のように、基準データ群と比較データ群とから特異点が除去された後、正規化されることで、加熱過程と冷却過程とで反射等の外乱の影響が異り、この外乱の影響の異なる両過程の温度データを用いて類似度の導出が行われる場合であっても、精度のよい類似度の導出が可能となる。
【0063】
即ち、加熱過程と冷却過程との両過程で温度が測定され、この温度データに基づく基準データ群及び比較データ群から類似度(相関係数)が導出される場合には、正規化が行われることで、導出される類似度の精度がより向上する。尚、加熱過程又は冷却過程のみの温度データ(測定データ)に基づく基準データ群及び比較データ群から類似度が導出される場合には、正規化を行う必要がなく、特異点の除去のみが行われることで精度のよい類似度の導出ができる。
【0064】
また、管T表面における測定領域(2次元の領域内)tの表面温度が測定されることで、複数の測定点mpの温度が並行して測定される。そして、これら温度が測定された複数の測定点mpの中から基準測定点spが指定されると残りの測定点が比較測定点cpとなる。そのため、基準データ群と比較データ群との両方のデータ群が並行して取得されることとなり、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がなくなる。
【0065】
また、前記のように赤外線カメラ14で2次元の温度分布が時系列に測定されることで、管T表面の測定領域tにおいて複数の測定点mpの温度が測定される。そのため、各測定点mpに対応した部位での薄肉部位taの検出が可能となる。このように複数箇所での薄肉部位taの検出が可能となることで、測定領域tにおける薄肉部位(相関係数)taの分布が得られ、1回の温度測定で管Tの管壁表面におけるより広い範囲での薄肉部位taの検出が可能となる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態に係る検出装置10aは、第1実施形態に係る検出装置10と異なり、測定領域tにおいて、あらかじめ厚さが正常な部位naが不明な管(被測温部材)Tにおいても薄肉部位の検出が可能な装置である。
【0068】
即ち、第1実施形態に係る検出装置10は、測定領域tにおいて、あらかじめ厚さの正常な部位naがわかっている場合には、この正常な部位naを基準に各比較測定点cpとの相関係数を導出することで薄肉部位taを検出することができるが、測定領域tでの厚さの正常な部位naが不明な場合には必ずし正確な薄肉部位taの検出ができない。
【0069】
具体的には、検出装置10では、厚さが正常な部位naよりも薄い部位を基準にして各比較測定点cpとの相関係数が導出されると、厚さが正常な部位naにおいても相関係数が1よりも小さな値となってしまう。
【0070】
ここで、相関係数は、基準となる点との類似性の度合い、本実施形態の場合では基準となる部位の厚さからどれだけ厚さが異なるかを数値で表すものであるため、基準となる部位の厚さに対して厚いのか又は薄いのかの判断はできない。従って、前記のように相関係数が1よりも小さな値となった場合、相関係数を見ただけでは厚さが正常な部位naか薄肉部位taかがわからない場合がある。
【0071】
そこで、本実施形態に係る検出装置10aでは、測定領域tにおいて任意に基準となる部位(厚さが正常な部位na以外の部位)を特定したとしても、薄肉部位taを検出できるように構成されている。具体的には、以下に説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0072】
本実施形態に係る検出装置10aにおける検出装置本体20は、相関係数導出手段22aと、選定手段32と、再導出手段34と、第二薄さ度導出手段36とを備える。
【0073】
相関係数導出手段22aは、赤外線カメラ14から取得した測定点mp毎の温度データ群のうち、基準測定点sp1における温度データ群を第1の基準データ群とし、比較測定点cp1における温度データ群を第1の比較データ群とし、第1の基準データ群と第1の比較データ群とからそれぞれ特異点を除いて正規化し、これら特異点を除いて正規化した後の第1の基準データ群と第1の比較データ群との相関係数を導出し、測定領域tに沿った相関係数(相関値)の分布を導出するものである。この相関係数導出手段22aは、第1実施形態における類似度導出手段22と同様に、各測定点(各画素)での温度データ群一時記憶手段24と、基準データ群一時記憶手段26と、基準データ群と各比較データ群との相関係数導出手段28とを有する。尚、本実施形態においては、相関係数導出手段22aは、第1の基準データ群と第1の比較データ群とを正規化した後、相関係数を導出しているが、これに限定されず、正規化することなく相関係数を導出するように構成されてもよい。
【0074】
選定手段32は、相関係数導出手段22aで導出された相関係数の分布から相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定する。そして、この選定した相関係数が導出された各比較測定点cp1の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定するものである。本実施形態においては、前記度数分布としてヒストグラムが用いられる。
【0075】
再導出手段34は、選定手段32によって選定された温度(温度値)が導出された測定点mpのうちの特定の測定点(第2の基準測定点)sp2での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点mpでの各温度データ群を第2の比較データ群とする。そして、第2の基準データ群と第2の比較データ群とからそれぞれ特異点を除き、これら特異点を除いた後の第2の基準データ群と第2の比較データ群とのデータ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出して、この導出した複数の相関係数の測定領域tに沿った分布を導出するものである。尚、再導出手段34においても、相関係数導出手段22a同様、特異点を除いた後の第2の基準データ群と第2の比較データ群とが正規化され、これら正規化された第2の基準データ群と第2の比較データ群とから相関係数が導出されている。
【0076】
第二薄さ度導出手段36は、再導出手段34によって再導出した相関係数の分布に基づいて、第2の比較データ群が取得された第2の比較測定点cp2毎に、第2の基準データ群を取得した第2の基準測定点sp2での管壁に対する当該第2の比較データ群を取得した第2の比較測定点cp2での管壁の薄さの度合いをそれぞれ導出するものである。
【0077】
本実施形態に係る検出装置10aは、以上の構成からなり、次に、この検出装置10aの作用について図6も参照しつつ説明する。
【0078】
まず、ハロゲンランプ12から光(加熱光)が照射されることで管Tの表面における測定領域tが均一若しくは略均一に加熱される(ステップ1a)。管Tの表面では、この加熱が所定時間行われる。
【0079】
この加熱過程(ステップ1a)と並行して、測定領域tの表面温度が赤外線カメラ14で測定される。このとき、赤外線カメラ14では時系列に温度が測定され、逐次、検出装置本体20に送られて当該検出装置本体20の温度データ群一時記憶手段24に格納される(ステップ2a)。このとき、検出装置本体20に送られた測定データ(温度データ群)は、前記のように測定点mp毎に個別に温度データ群一時記憶手段24に格納される。
【0080】
検出装置本体20に接続された入力手段(図示省略)によって温度データ群一時記憶手段24に格納された複数の温度データ群のうちから任意に第1の基準測定点sp1が指定される(ステップ3a)。この指定によって第1の基準データ群が基準データ群一時記憶手段26に抽出されて一時的に格納される。このとき、温度データ群一時記憶手段24に格納されている残りの各温度データ群が第1の比較データ群となる。
【0081】
この基準データ群一時記憶手段26に格納された第1の基準データ群が相関係数導出手段28に引き出されると共に温度データ群一時記憶手段24に格納された各第1の比較データ群もそれぞれ相関係数導出手段28に引き出される。これら引き出された第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ特異点が除かれる(ステップ4a)。
【0082】
これら特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。このとき、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとがそれぞれ正規化され、これら正規化された第1の基準データ群と各第1の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出される。この導出された各相関係数の測定領域tに沿った分布が導出され、当該相関係数の分布が選定手段32に送られる(ステップ5a)。尚、本実施形態においても、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとが正規化され、これら正規化された第1の基準データ群と各比較群データとから相関係数が導出されるが、これに限定されず、特異点が除去された後の第1の基準データ群と各第1の比較群データとから直接相関係数が導出されてもよい。
【0083】
選定手段32では、送られてきた相関係数の分布から相関係数(相関値)のヒストグラム(度数分布)が導出される。このヒストグラムに基づき、最も頻度の高い相関係数が選定される。このとき、選定される相関係数の値は、一つの値ではなくその前後複数の値を含む所定の幅を有するように選定される(ステップ6a―1)。このとき、赤外線カメラ14の視野に対して被測温物(管)Tの大きさが小さい場合には、あらかじめ所定の領域が指定され(図12のFL参照)、この領域内での相関係数の度数分布が導出される。
【0084】
このように選定された相関係数が導出された各比較測定点cp1の加熱過程(ステップ1a)での特定の時刻における温度(温度値)のヒストグラムが導出される。このヒストグラムに基づき、最も頻度の高い温度が選定される。このときも、前記同様、所定の幅を有するように温度が選定される(ステップ6a−2)。
【0085】
そして、この選定された温度が導出された比較測定点cp1のうちから、特定の測定点(第2の基準測定点)sp2が指定される。この第2の基準測定点sp2は、本実施形態では、検出装置10の操作者がマウス等の入力手段(図示せず)によって前記ヒストグラムから導出された温度の部位の中から任意に指定するが、検出装置10が任意に指定するように設定されてもよい。
【0086】
このように指定された第2の基準測定点sp2で取得された温度データ群が第2の基準データ群とされる。一方、他の全ての測定点mpが第2の比較測定点cp2とされて各第2の比較測定点cp2で取得された温度データ群が第2の比較データ群とされる(図5参照)。これら第2の基準データ群と各第2の比較データ群との相関係数がそれぞれ導出され、測定領域tにおける前記相関係数の分布が導出(再導出)される(ステップ7a)。尚、当該ステップにおいても、第2の基準データ群と各第2の比較データ群とからそれぞれ特異点が除かれ、これら特異点除去後の第2の基準データ群と各第2の比較データ群とから相関係数が導出される。このとき、第2の基準データ群と各第2の比較データ群とが、一旦正規化され、これら正規化された第2の基準データ群と各第2の比較データ群とからそれぞれ相関係数が導出されるが、前記同様、正規化されることなく、特異点の除去後、直接相関係数が導出されてもよい。
【0087】
再導出された相関係数の分布に基づき、測定領域tにおける各第2の比較測定点cp2において第2の基準測定点sp2での管壁に対する当該第2の比較測定点cp2での管壁の薄さの度合い(薄さ度)が導出される。このようにして測定領域tにおける前記薄さ度の分布が導出され、この前記薄さ度の分布に基づき薄肉部位taの検出がなされる(ステップ8a)。
【0088】
この結果が出力され、モニタ16に表示される(ステップ9a)。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、あらかじめ測定領域tにおいて管壁の厚さが一定の部位が不明であっても、薄肉部位taの範囲及び各測定点mpにおける薄さの度合いの検出が可能となる。
【0090】
即ち、通常、管Tの管壁において孔食(薄肉部位ta)は、腐食が局所的に集中し、薄肉部位taが点在するような状態となる。従って、薄肉部位taの範囲に比べて厚さが一定の部位naの範囲は広くなる。この厚さが一定の部位naでは、相関係数の分布において当該相関係数が一定若しくはほぼ一定となると共に、加熱時における温度も一定若しくはほぼ一定となる。
【0091】
そこで、第1の基準測定点sp1における温度データ群を第1の基準データ群とし、各第1の比較データ群との相関係数をそれぞれ導出してその分布を求める。この相関係数の分布に基づき、当該相関係数の度数分布を求めて最も頻度の高い相関係数を求める。さらに、この相関係数が導出された各測定点mpにおける加熱時の特定の時刻での温度の度数分布を求めて最も頻度の高い温度を求める。この温度が取得された各第1の比較測定点cp1が前記厚さの一定な部位naとして導出される。
【0092】
このようにして厚さが一定の部位naが導出され、この部位naの特定の測定点(第2の基準測定点sp2)で取得された温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての測定点(第2の比較測定点cp2)で取得された温度データ群をそれぞれ第2の比較データ群と設定することで、第1実施形態のように管壁の厚さが一定の部位naがわかっていた場合と同様にして、薄肉部位taの検出が可能となる。
【0093】
この場合も、再度の相関係数の分布から各第2の比較測定点cp2における前記薄さの度合いが導出され、測定領域tにおける薄肉部位taの検出が可能となると共に各薄肉部位taにおける減肉の相対的な大きさの検出が可能となる。
【0094】
しかも、第1実施形態同様、各相関係数を導出する際に、基準データ群と比較データ群とからそれぞれ特異点が除去されることで、精度のよい薄肉部位の検出が可能となる。また、第1実施形態同様、あらかじめ基準データ群を準備しておく必要がない。
【0095】
尚、本発明に係る検出装置は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0096】
例えば、第1実施形態において、被測温部材(管)Tの測定領域tの温度測定は、加熱過程及び冷却過程の両過程を通して行われているが、加熱過程又は冷却過程のいずれか一方で温度測定が行われてもよい。このように加熱過程又は冷却過程の各測定点mpの温度データ群を用いても、基準測定点spが指定されて基準データ群と比較データ群との相関係数が導出されることで薄肉部位taの検出が容易となる。
【0097】
特に、加熱過程で(加熱時に)取得された基準データ群及び比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることで、冷却過程での温度測定が必要なくなり、薄肉部位taの検出時間の短縮が図られる。
【0098】
従来の検出方法では、加熱過程の温度データ群内に加熱時における加熱手段からの反射や加熱むら等の外乱の影響が含まれ、精度よく薄肉部位taを検出できなかった。そのため、冷却過程の任意の時刻での温度分布を測定していた。これに対し、本発明に係る検出方法によれば、薄肉部位taか否かの判定に前記両データ群の類似度の定量化の指標として相関係数が用いられることで、前記判定における前記外乱の影響が除去され、加熱過程のみでの温度測定であっても精度よく薄肉部位の検出が可能となった。
【0099】
また、冷却過程で(自然除熱による冷却時に)取得された基準データ群及び比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出される場合には、加熱過程で生じる反射や加熱むら等の外乱が含まれない温度データ群の取得が可能となる。
【0100】
また、第1及び第2実施形態においては、一つの基準測定点sp及び複数の比較測定点cpで温度測定を行って薄肉部位taを検出しているが、一つの基準測定点sp及び一つの比較測定点cpでの温度測定を行って薄肉部位taの検出が行われてもよい。このように構成されても、基準データ群と比較データ群との相関係数が導出されることで、薄肉部位taの検出は可能となる。
【実施例1】
【0101】
前記第1実施形態の検出装置10を用い、図7に示されるようなテストピースを用いて薄肉部位を検出する場合の実験を行った。このテストピースは、厚さが6mm、縦が200mm、横が200mmの板状の軟鋼で構成されている。そして、このテストピースの中央部には、3箇所に薄肉部位が設けられている。この3箇所の薄肉部位は、テストピースの裏面に設けられた直径20mmの円形状の凹部で、図において右から順に厚さが1mm、2mm、3mmとなるように形成されている。
【0102】
このテストピースがハロゲンランプ12で加熱される。このとき、1〜2kw/m2の熱流束を20secテストピースに与えた場合の各薄肉部位及び正常部位(厚さ6mmの部位)の温度変化の測定結果を図8(a)及び図8(b)に示す。図8(b)は、図8(a)における加熱過程の拡大図である。ここで、各温度変化のグラフf(A)〜f(G)は、温度を測定した各測定部位(図7におけるPointA〜G)における時間と対応した温度データのデータ群で構成されている。
【0103】
加熱過程(加熱時)と冷却過程(自然除熱による冷却時)とで反射等の外乱の影響が異なる場合において、両過程での温度データを類似度算出に用いるときには、これら各温度データ群f(A)〜f(G)から特異点(図8(b)におけるTp1及びTp2の温度データ)が除かれた後、正規化処理が行われる。即ち、各計測点PointA〜Gにおける加熱開始時の温度を0とすると共に加熱停止時の温度を1とし、また、自然除熱による冷却開始時の温度を0と共に冷却終了時の温度を1とする正規化処理が実行される。その結果を図9(a)及び図9(b)に示す。図9(b)は、図9(a)の加熱過程における拡大図である。尚、本実施例においては、PointDにおける温度データ群を基準データ群とし、他の部位(PointA〜C、PointE〜G)における温度データ群をそれぞれ比較データ群とする。
【0104】
このように正規化することで前記の加熱むら等の外乱の影響が除去され、例えば、図7における正常部位(PointD)のデータ群f(D)と厚さが2mmの部位(PointB)での温度データ群f(B)との違いが表れてくる。
【0105】
この結果から、正常部位(PointD〜F)の加熱過程では、加熱時間に比例してほぼ直線的に温度が上昇することが確認できる。一方、薄肉部位(PointA〜C)の温度変化は、正常部位と比較すると直線から外れた曲線(円弧状)となっていることが確認できる。
【0106】
以上のように、その形(図8(a)及び図8(b)のグラフ(各データ群))が正常部位(本実施例においてはPointD)の時系列の温度変化を示す温度データ群からどれだけずれているかを尺度として表すことが(定量化することが)できれば、測定領域における薄肉部位を容易に判定できることがわかる。また、冷却過程も正常部位と薄肉部位とでグラフの形が異なるため、同様の処理を行うことで区別できることもわかる。
【0107】
そこで、前記の実施形態においては、前記の正常部位の温度データ群f(D)と薄肉部位の温度データ群f(A)〜f(C)とのずれの前記尺度として、相関係数が用いられた。この相関係数は、温度変化の特徴(直線的に変化する、曲線的に変化する)の類似を評価できるからである。そのため、加熱むらや、表面の反射率のむら等による外乱の影響を抑制することができ、加熱過程のみの温度測定からでも精度よく薄肉部位の検出が可能になる。
【0108】
図9(b)についての相関係数を求めた結果を図10に示す。この図からわかるように、正常部位(PointD)に対して厚さ(厚さの値)が離れるに従って相関係数が小さくなっている。即ち、前記相関係数の大小から各薄肉部(PointA〜C)の薄さの大小関係を判断することが可能となる。
【0109】
しかし、加熱及び冷却の両過程での温度データを用いて各測定点における温度データ群から特異点が除かれることなく且つ正規化しなかった場合に相関係数が求められると、図11に示されるように、正常部位であるPointDが薄肉部位PointA〜Cの相関係数よりも小さくなる場合がある。これは、PointDにおいて反射される加熱源(ハロゲンランプ12)からの放射エネルギ(熱)を主とする外乱によるものである。即ち、PointDのような正常部位であるにも関わらず、反射によるオフセットが乗っている温度データ群がそのまま用いられて類似度が導出されると、正確な薄肉部位の検出が行えない。そこで、本実施例(前記第1及び第2実施形態)のように、各温度データ群から特異点が除かれて相関係数が導出されることで、前記温度データ群に乗っているオフセットの影響がキャンセルされて精度よく薄肉部位の検出が行われる。
【0110】
ここで、オフセットとは、反射による放射エネルギのことをいう。詳細には、テストピースにおいて裏面から透過して赤外線カメラ(温度測定手段)14に入射する放射エネルギがない場合、テストピースの放射率εとテストピースの反射率ρとの関係は、
1=ε+ρ ・・・・・(1)
となる。赤外線カメラ14に入る放射エネルギは、加熱されたテストピース自身からの放射エネルギと環境温度及びハロゲンランプ12からの熱が反射された放射エネルギとの和となる。この式(1)におけるρにテストピースに入射する放射エネルギを乗じた値がオフセット(反射による放射エネルギ)である。
【0111】
尚、本実施例においては、オフセットの影響の大きいPointDの温度データ群を基準データ群として相関係数を導出しているが、オフセットの影響の小さい他の正常部位(PointE〜G)の何れかの部位での温度データ群を基準データ群としても、本実施例同様の精度のよい薄肉部位の検出が可能である。
【0112】
次に、第2実施形態の検出装置10aを用い、前記のテストピースを用いて厚さが3mmの部位を基準に相関係数の分布を導出した。他の条件は、前記実施例と同様とし、その結果を図12に示す。この図12は、相関係数の大きさに対応するように色の濃淡で各部位の薄さの度合いを表している。
【0113】
この図からもわかるように、厚さが1mmの部位と厚さが正常な部位(6mmの部位)との色(本図においては濃淡)が同じようになり、この結果からでは正確に薄肉部位taを検出することができないことがわかる。
【0114】
この図12の結果から、前記第2実施形態におけるステップ6a―1及びステップ6a−2での処理を行った結果、図13が得られた。この図13は、前記厚さが正常な部位を基準にして相関係数の分布を導出した結果と一致若しくはほぼ一致している。
【0115】
このことから、厚さが正常な部位が不明な被測温物の場合に、厚さが正常な部位や最も薄い部位を基準にすることなく任意の測定点を基準としても、第2実施形態と同様に、相関係数の分布を再導出することで、薄肉部位の検出及び各薄肉部位の薄さの度合いの導出が可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】第1実施形態に係る薄肉部位検出装置のブロック図である。
【図2】同実施形態に係る被測温部材表面の測定領域及び測定点を示す概念図である。
【図3】同実施形態に係る薄肉部位検出装置での薄肉部位の検出のフローを示す図である。
【図4】第2実施形態に係る薄肉部位検出装置のブロック図である。
【図5】同実施形態に係る被測温部材表面の測定領域及び測定点を示す概念図である。
【図6】同実施形態に係る薄肉部位検出装置での薄肉部位の検出のフローを示す図である。
【図7】実施形例でのテストピースの正面図である。
【図8】図7のテストピースを加熱及び自然除熱により冷却した場合の各部位の温度変化を測定した結果を示す図であって、(a)は加熱時及び冷却時の全体を示す図であり、(b)は図8(a)における加熱時を拡大した図である。
【図9】(a)は図8(a)を正規化処理した図であり、(b)は図8(b)を正規化処理した図である。
【図10】図9(a)についての相関係数を示す図である。
【図11】図8(a)についての相関係数を示す図である。
【図12】実施例でのテストピースにおいて厚さが3mmの部位を基準に相関係数の分布を示す図である。
【図13】図12に基づいて第2実施形態に係る薄肉検出方法によって再導出した相関係数の分布を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 薄肉部位検出装置
12 ハロゲンランプ(加熱手段)
14 赤外線カメラ(温度測定手段)
16 モニタ(出力手段)
22 類似度導出手段
30 第一薄さ度導出手段
cp 比較測定点
mp 測定点
na 厚さが一定の部位
sp 基準測定点
T 管(被測温部材)
ta 薄肉部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、
前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱され、その後自然除熱により冷却される変温ステップと、
前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とに測定点がそれぞれ指定され、前記加熱時及び前記自然除熱による冷却時のうち少なくとも一方において前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、
この温度測定ステップで取得された前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群である基準データ群と、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群である比較データ群との両データ群全体同士の類似度が導出される類似度ステップと、
前記類似度に基づいて、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いが導出されることで前記薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数が用いられることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記基準温度データ群と前記比較温度データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方が除かれたものに基づいて前記類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記温度測定ステップでは、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群がそれぞれ取得され、
前記類似度ステップでは、前記比較データ群毎に前記基準データ群に対する類似度がそれぞれ導出され、
前記検出ステップでは、前記比較データ群が取得された測定点毎に前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで前記薄肉部位が検出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの自然除熱による冷却時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項7】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、
前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱される加温ステップと、
前記壁部表面において複数の測定点が指定され、前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、
この温度測定ステップで取得された温度データのうち、前記測定点のうちの特定の測定点における温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの測定点における温度データ群を第1の比較データ群として、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布が導出される相関係数ステップと、
前記導出された相関係数の分布における当該相関係数の度数分布から最も頻度の高い相関係数が選定され、この選定された相関係数が導出された各測定点の前記加熱ステップでの特定の時刻における温度の度数分布が導出されて最も頻度の高い温度が選定される選定ステップと、
この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の前記測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記相関係数の分布が再導出される再導出ステップと、
前記再導出ステップで再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項8】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、
前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、
前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とにそれぞれ指定された測定点の温度を測定するための温度測定手段と、
前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、
前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、
前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群を基準データ群とし、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群を比較データ群とし、これら基準データ群と比較データ群との両データ群全体同士の類似度を導出するための類似度導出手段と、この類似度導出手段によって導出された前記類似度に基づいて前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する前記比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いを導出することで薄肉部位を検出する第1薄さ度導出手段とを有することを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薄肉部位検出装置において、
前記類似度導出手段は、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数を導出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の薄肉部位検出装置において、
前記類似度導出手段は、前記基準データ群と前記比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方を除いたものに基づいて前記類似度を導出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の薄肉部位検出装置において、
前記温度検出手段は、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群をそれぞれ取得するように構成され、
前記類似度導出手段は、前記基準データ群に対する前記比較データ群毎の類似度をそれぞれ導出するように構成され、
前記第1薄さ度導出手段は、前記比較データ群を取得した前記測定点毎に前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項12】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、
前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、
前記壁部表面において指定された複数の測定点の温度を測定するための温度測定手段と、
前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、
前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、
前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、特定の温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの温度データ群を第1の比較データ群とし、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数を導出し、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布を導出する相関係数導出手段と、
前記導出した相関係数の分布から当該相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定し、この選定した相関係数が導出された各測定点の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定する選定手段と、
この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出し、前記相関係数の分布を導出する再導出手段と、
この再導出手段によって再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出する第2薄さ度導出手段とを備えることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項1】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、
前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱され、その後自然除熱により冷却される変温ステップと、
前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とに測定点がそれぞれ指定され、前記加熱時及び前記自然除熱による冷却時のうち少なくとも一方において前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、
この温度測定ステップで取得された前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群である基準データ群と、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群である比較データ群との両データ群全体同士の類似度が導出される類似度ステップと、
前記類似度に基づいて、前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する前記比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いが導出されることで前記薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数が用いられることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記基準温度データ群と前記比較温度データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方が除かれたものに基づいて前記類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記温度測定ステップでは、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群がそれぞれ取得され、
前記類似度ステップでは、前記比較データ群毎に前記基準データ群に対する類似度がそれぞれ導出され、
前記検出ステップでは、前記比較データ群が取得された測定点毎に前記基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで前記薄肉部位が検出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの加熱時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉部位検出方法において、
前記類似度ステップでは、前記温度測定ステップにおいて前記変温ステップの自然除熱による冷却時に取得された前記基準データ群及び前記比較データ群のみを用い、両データ群の類似度が導出されることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項7】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出方法であって、
前記壁部表面が均一若しくは略均一に加熱される加温ステップと、
前記壁部表面において複数の測定点が指定され、前記測定点毎に温度が時系列に測定され、前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群が取得される温度測定ステップと、
この温度測定ステップで取得された温度データのうち、前記測定点のうちの特定の測定点における温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの測定点における温度データ群を第1の比較データ群として、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布が導出される相関係数ステップと、
前記導出された相関係数の分布における当該相関係数の度数分布から最も頻度の高い相関係数が選定され、この選定された相関係数が導出された各測定点の前記加熱ステップでの特定の時刻における温度の度数分布が導出されて最も頻度の高い温度が選定される選定ステップと、
この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の前記測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数がそれぞれ導出され、前記相関係数の分布が再導出される再導出ステップと、
前記再導出ステップで再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群が取得された測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群が取得された測定点での前記壁部の薄さの度合いがそれぞれ導出されることで薄肉部位が検出される検出ステップとを備えることを特徴とする薄肉部位検出方法。
【請求項8】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、
前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、
前記壁部表面において前記厚さが一定の部位と前記厚さが不明な部位とにそれぞれ指定された測定点の温度を測定するための温度測定手段と、
前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、
前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、
前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、前記厚さが一定の部位に指定された前記測定点における温度データ群を基準データ群とし、前記厚さが不明な部位に指定された前記測定点における温度データ群を比較データ群とし、これら基準データ群と比較データ群との両データ群全体同士の類似度を導出するための類似度導出手段と、この類似度導出手段によって導出された前記類似度に基づいて前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する前記比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いを導出することで薄肉部位を検出する第1薄さ度導出手段とを有することを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薄肉部位検出装置において、
前記類似度導出手段は、前記類似度の定量化の指標として前記基準データ群と前記比較データ群との相関を表す相関係数を導出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の薄肉部位検出装置において、
前記類似度導出手段は、前記基準データ群と前記比較データ群とからそれぞれ加熱開始直後の温度データ又は自然除熱による冷却開始直後の温度データのうちの少なくとも一方を除いたものに基づいて前記類似度を導出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の薄肉部位検出装置において、
前記温度検出手段は、前記壁部表面の複数箇所から前記比較データ群をそれぞれ取得するように構成され、
前記類似度導出手段は、前記基準データ群に対する前記比較データ群毎の類似度をそれぞれ導出するように構成され、
前記第1薄さ度導出手段は、前記比較データ群を取得した前記測定点毎に前記基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出するように構成されることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【請求項12】
内部空間を有する被測温部材を構築すると共に前記内部空間と前記被測温部材の外部とを隔てる厚さが一定の前記被測温部材の壁部において、前記内部空間側から減肉された薄肉部位を前記外部から検出する薄肉部位検出装置であって、
前記壁部表面を加熱するための加熱手段と、
前記壁部表面において指定された複数の測定点の温度を測定するための温度測定手段と、
前記温度測定手段での測定結果に基づいて前記壁部表面における前記薄肉部位を検出するための薄肉部位検出手段と、
前記薄肉部位検出手段によって検出された前記薄肉部位を出力する出力手段とを備え、
前記薄肉部位検出手段は、前記温度測定手段から取得した前記測定点毎の温度を時系列に測定して取得した前記測定点毎の時間と対応した温度データの温度データ群のうち、特定の温度データ群を第1の基準データ群とし、残りの温度データ群を第1の比較データ群とし、これら第1の基準データ群と第1の比較データ群との両データ群全体同士の相関係数を導出し、前記壁部表面に沿った前記相関係数の分布を導出する相関係数導出手段と、
前記導出した相関係数の分布から当該相関係数の度数分布を導出して最も頻度の高い相関係数を選定し、この選定した相関係数が導出された各測定点の加熱時の特定の時刻における温度の度数分布を導出して最も頻度の高い温度を選定する選定手段と、
この選定された温度が導出された前記測定点のうちの特定の測定点での温度データ群を第2の基準データ群とし、他の全ての前記測定点での各温度データ群を第2の比較データ群として、両データ群全体同士の相関係数をそれぞれ導出し、前記相関係数の分布を導出する再導出手段と、
この再導出手段によって再導出された相関係数の分布に基づいて、前記第2の比較データ群が取得された前記測定点毎に、前記第2の基準データ群を取得した測定点での前記壁部に対する当該第2の比較データ群を取得した測定点での前記壁部の薄さの度合いをそれぞれ導出することで薄肉部位を検出する第2薄さ度導出手段とを備えることを特徴とする薄肉部位検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−38570(P2010−38570A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198539(P2008−198539)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(594126159)神鋼検査サービス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(594126159)神鋼検査サービス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]