説明

薄膜の製造方法

【課題】
透明性、ガスバリア性の優れたガスバリア性のある薄膜を触媒CVDなどの方法において、効率よく製造する方法、及びその方法によって得られる薄膜を提供することを目的とする。
【解決手段】
触媒CVDにより基材の表面に窒化珪素(SiN)膜等の無機薄膜を形成する方法であって、触媒CVDを行う減圧系に供給される原料ガス中のシラン系ガスの流量に対する水素ガスの流量の比率を3〜15とすることを特徴とする窒化珪素又は酸窒化珪素の薄膜の製造方法。原料ガスを触媒CVDの減圧系に供給し、かつ加熱された金属体の近傍の減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜をその減圧系に配置された基材上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒CVD(Chemical Vapor Deposition)、或いはHFCVD(Hot Filament CVD)、高温媒体CVD、ホットワイヤCVDなど呼ばれる方法によって得られる薄膜、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、主にポリエステル、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基材の表面に減圧系内のアンモニア、シランと共に、水素、或いは更に酸素などを原料として当該基材表面に形成される窒化珪素(SiN)等の薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性のプラスチックフィルムを得る方法として、プラスチックフィルムに無機材料のガスバリア性膜をコーティングすることが知られており、透明性のあるガスバリア性フィルムとして、電子ビーム蒸着法、スパッタ法、プラズマCVD法による酸化シリコンや酸化アルミニウムの膜が知られている。
【0003】
中でも、原料のガスを分解し、反応により得られる化合物からなる薄膜をフィルム上に形成するいわゆる触媒CVDによる薄膜製造法は、減圧雰囲気下において加熱された金属フィラメントに原料ガスを接触させ、触媒反応により分解や活性化され化学種をフィルム上に薄膜状に堆積させるものであり、薄膜の形成時のフィルム温度が比較的低温であり、耐熱温度が比較的低いプラスチックフィルムであっても適用できる点で有用な方法である。
【0004】
また、触媒CVDにより窒化珪素膜を形成する際に、モノシラン、アンモニナと共に水素を併用することは知られており、特開2004−292877には、ガスの流量比をモノシラン1に対してアンモニア1〜30、水素5〜400とすることが開示されている。
また、特開2006−57121の実施例では、シランガス1に対して、アンモニアガス25〜100、水素ガス25〜100の例が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−217966号公報
【特許文献2】特開2006−57121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガスバリア性に特に優れた窒化珪素(SiN)等の無機薄膜を効率よく製造方法を提供することを目的とする。このような薄膜を利用したガスバリア性フィルムは、液晶表示素子、有機EL等の素子、面状発光体、光ディバイス、太陽電池等の収納に利用が期待され、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、触媒CVDにより基材の表面に窒化珪素または酸窒化珪素の薄膜を形成する方法であって、触媒CVDを行う減圧系へ供給されるシランガスの流量(容量)に対する水素ガスの流量(容量)の比率を3〜15とすることを特徴とする窒化珪素(SiN)等の薄膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、触媒CVDを用いてガスバリア性に特に優れた窒化珪素(SiN)等の無機薄膜を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる基材として、フィルム、シート、板状物等形態は特に限定されず、当該基材を構成する素材も熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂の他、ステンレス、アルミニウム合金、鉄等の金属、及びセラミクス等を例示することができる。
【0010】
基材が熱可塑性樹脂からなるフィルム、又はシート(以下、「フィルム等」という)の場合も、素材は特に限定されるものではなく、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのエチレン系ポリマー、アイソタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のプロピレン系ポリマー、ポリ−4−メチルー1―ペンテン、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド等のフィルムが例示される。本発明はこれらの素材からなる透明性を有するフィルム等を基材として用いる場合に好ましく用いられる。
【0011】
また、上述したフィルム等を構成する熱可塑性樹脂の例示のうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる基材層はガスバリア性膜の用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
【0012】
さらに、基材の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。 また、基材は、形成される薄膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理、脱脂処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。アンダーコートをする場合は、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系などのアンダーコート剤が塗布される。
このようなアンダーコート剤に用いられるエポキシ(メタ)アクリルレート系の化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラク型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等のエポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる化合物、更にはこれらの化合物をカルボン酸またはその無水物と反応させて得られる酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが例示される。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系の化合物は、光重合開始剤及び必要に応じて他の光重合あるいは熱反応性モノマーからなる希釈剤と共に、基材の表面に塗布され、その後紫外線等を照射して架橋反応によりアンダーコート層が形成される。
【0013】
また、ウレタン系(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物からなるオリゴマーをアクリレート化したものから構成される。 用いられる層の形成に使用するポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオールとの縮合生成物から得ることができる。具体的なポリイソシアネートとしては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェートなどが例示でき、また、具体的なポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどがある。アクリレートを構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどがある。 これらのエポキシ(メタ)アクリレート系の化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系の化合物は、必要に応じて、併用される。また、これらを重合させる方法としては、公知の種々の方法、具体的には電離性放射線の照射又は加熱などによる方法があげられる。 これらを紫外線で硬化して使用する場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミフィラベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステルまたはチオキサントン類などを光重合開始剤として、また、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィンなどを光増感剤として混合して使用するのが好ましい。 本発明では、エポキシ(メタ)アクリレート系の化合物とウレタン(メタ)アクリレート系の化合物は、併用することも行われる。 また、これらのエポキシ(メタ)アクリレート系の化合物やウレタン(メタ)アクリレート系の化合物は、(メタ)アクリル系モノマーで希釈することが行われる。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示でされる。
【0014】
本発明に用いられる原料ガスとしては、シラン系ガス、窒素含有ガス及び水素ガスから構成されていることが望ましく、窒化珪素(SiN)等からなる無機薄膜を得ることができる。
シラン系ガスには、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン等が挙げられ、SiH4が好適である。また窒素含有ガスには、アンモニア、ヒドラジン、アジ化水素等が挙げられ、中でもアンモニアが好適である。
前記シラン系ガス、窒素含有ガス及び水素ガスについては、当該ガスを単独で原料ガス導入口から供給してもよいし、窒素ガスや不活性ガスとの混合ガスを上記原料ガス導入口から供給してもよい。
ここで、減圧系に供給される原料ガス中のシラン系ガスの流量(容量)に対する水素ガスの流量(容量)の比率は3〜15に制御される。本発明では、特にその比率を3〜10に制御することが望ましい。
その比率が3未満では、薄膜のガスバリア性が低下する傾向があり、15を超えても薄膜のガスバリア性が低下する傾向がある。
これらの原料ガスは、減圧下に触媒CVDを行う減圧系に供給される。そこで、これら複数の原料ガスは減圧下において反応し、その反応物からなる無機薄膜を減圧系に配置された基材上に形成することで無機薄膜が形成される。
また、本発明では、基材表面を前処理する表面改質及び/又は基材に設けられた薄膜の表面を後処理する表面改質を触媒CVDの減圧系と同一の減圧系内で行うことが望ましい。
複数の種類の原料ガスを減圧系に導入する方法としては、種々の方法があり、原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素、及びシラン系ガスを系内に保持し、かつ加熱された金属体の近傍に供給することが行われる。
【0015】
また他の例として、第1の原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素を系内に保持し、かつ加熱された金属体の近傍に供給し、第2の原料ガス導入口からシラン系ガスが導入される態様がある。
これらの導入の方法において、減圧系内に隘路、又は隔壁板によって連通部を有するように第1室と第2室が形成され、前記第1室に加熱された金属体、及び第1の原料ガス導入口が、第2室に減圧のための排気口、及び第2の原料ガス導入口を設けた減圧系の薄膜製造装置を用いてもよい。
【0016】
これらの減圧系からなる薄膜製造装置は、さらに前記第2室において基材表面を前処理することが望ましく、そのための表面改質装置を備えることが望ましい。また、基材に設けられた薄膜の表面を後処理することが望ましく、表面改質装置を備えていることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、SiN(窒化珪素)等の無機薄膜を触媒CVD法により効率よく製造することができる。特に、本発明で得られた薄膜のガスバリア性は特に優れている。
【0018】
用いられる金属体には、タングステン、モリブデン、タンタル、チタン、バナジウム、オスミウム、高純度鉄、白金などがあり、タングステン、中でも高純度のタングステンが望ましい。金属体の形状はワイヤー、フィラメント状、さらにこれを2次加工したコイル状、バネ状、編み目状、格子状、ドーナツ状、さらには金属体の板にスリットを設けた形状等が例示される。
【0019】
減圧系の圧力は、10―3Torr以下、通常10―7Torrのオーダーの真空度とすることが望ましい。
以下により具体的に本発明について図面を参照しつつ詳述する。
図1は本発明の方法に用いられる触媒CVD装置の断面を模式的に表示したものである。減圧系を形成する減圧容器1には、フィルムの供給ロール10や巻取ロール11や排気口7が設けられている。
また、第1の原料ガス導入口4、及び金属体3がある。系内のガスの排気は排気口7から排気される。
【0020】
また、薄膜が堆積したフィルム8は、フィルム供給ロール10から巻き出され、ロール9に接しつつ第2室に導入されることにより、表面に薄膜が形成されている。薄膜が堆積したフィルム8は連続的にフィルム巻取りロール11側に巻き取られる。
【0021】
さらに、基材表面を前処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材の前処理としてプラズマ処理する場合には、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材表面を改質処理することにより、製膜時により均一で表面状態が安定した薄膜を形成することができる。
【0022】
また、基材に形成された薄膜表面を後処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材に形成された薄膜表面の後処理としてプラズマ処理する場合には、薄膜表面に極性基を付与し濡れ性を向上させるという観点から、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材に形成された薄膜表面を改質処理することにより、濡れ性が向上し、静電気に起因する異物の付着、又は混入を防止することができる。
さらに、第1室1Aには、フィルムの供給ロール10や巻取ロール11を第2の原料ガス導入口5や排気口7と隔離する仕切部材12を設けることが望ましい。
【0023】
図1に示す装置によれば、原料ガス導入口4からアンモニア等の窒素含有ガス、水素及びシラン系ガスが、加熱された金属体3の近傍に導入される。原料ガス導入口4から導入された原料ガスは、加熱された金属体に接触して分解されて生じた活性種がフィルム8a上に到達し、SiNからなる薄膜が連続的に形成され、巻取ロール11に巻き取られる

【0024】
薄膜が堆積したフィルム8は、ロール9を経て巻取ロール11に順次巻き取られる。これにより、薄膜を連続的に製造することができる。
【0025】
図2は本発明の方法に用いられる触媒CVD装置の断面を模式的に表示したものである。
図2に示すように、減圧系を形成する減圧容器1には、第1室1Aと第2室1Bがあり、隔壁版2で連通している。当該隔壁板は一般に多数の練通する孔を有する多孔板である。第1室1Aと第2室1Bはまた隘路で連通していてもよい。
【0026】
さらに、第1室1Aには、フィルムの供給ロール10や巻取ロール11を第2の原料ガス導入口5や排気口7と隔離する仕切部材12を設けることが望ましい。
【0027】
また、系内のガスの排気は排気口7から排気される。排気口7は図示するように第2室1Bにあることが望ましい。第1室に排気口があると第2の原料ガス導入口から導入されるガスが隔壁板の連通部を通して第1室に流入し加熱された金属体に接することで必要とされる化学種とは異なる分解種が生成したりして、前記加熱された金属体の汚損が促進されるなどの問題が生じてしまうからである。
【0028】
また、薄膜が堆積したフィルム8は、フィルム供給ロール10から巻き出され、ロール9に接しつつ第2室に導入されることにより、表面に薄膜が形成されている。薄膜が堆積したフィルム8は連続的にフィルム巻取りロール11側に巻き取られる。
【0029】
さらに、第2室1Bに基材表面を前処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材の前処理としてプラズマ処理する場合には、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材表面を改質処理することにより、製膜時により均一で表面状態が安定した薄膜を形成することができる。
【0030】
また、第2室1Bに基材に形成された薄膜表面を後処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材に形成された薄膜表面の後処理としてプラズマ処理する場合には、薄膜表面に極性基を付与し濡れ性を向上させるという観点から、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材に形成された薄膜表面を改質処理することにより、濡れ性が向上し、静電気に起因する異物の付着、又は混入を防止することができる。
【0031】
図2に示す装置によれば、本発明は第1の原料ガス導入口4からアンモニア等の窒素含有ガス、及び水素が、第1室1Aの加熱された金属体3の近傍に導入される。
【0032】
一方、第2室には、第2の原料ガス導入口5からシラン系ガス、例えばSiH4が導入される。この場合、シラン系ガスは必要に応じて、窒素ガスなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。第1の原料ガス導入口4から第1室1Aに導入された原料ガスは、加熱された金属体に接触して分解されて生じた水素ラジカル等の活性種が、隔壁板2を通過して第2室1Bに移動することにより、第2の原料ガス導入口5から供給されるシラン系ガスと反応し、フィルム8a上に薄膜状に堆積する。これにより、フィルム8a上にはSiNからなる薄膜が連続的に形成され、巻取ロール11に巻き取られる。
【0033】
薄膜が堆積したフィルム8は、ロール9を経て巻取ロール11に順次巻き取られる。これにより、薄膜を連続的に製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
【0035】
<評価方法>
(1)水蒸気透過度[g/(m2・day)]:
厚さ50ミクロン(μm)の線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製):7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性フィルムの金属薄膜面を貼り合わせ(ドライラミネート)し、多層フィルムを得た。
【0036】
その多層フィルムを2枚重ね合わせ、3方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m2になるように袋を作成し、これを40℃、90%RHの条件で7日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0037】
(2)光線透過率(%)
HazeMeter(日本電色工業社製 NDH−300A)を使用して、フィルム1枚の光線透過率をJIS K 7105に準拠して測定した。
【0038】
実施例1
厚さ125ミクロン(μm)の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材の平滑面に、エポキシアクリレート(エポキシアクリレート系UV硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m2(固形分)になるようにコートし、100℃、15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm2、積算光量:117mJ/cm2の条件で紫外線を照射してアンダーコート層の重合を行った。次にそのアンダーコート面に、CAT−CVDにより、厚さ50ナノメートルの無機薄膜層(SiN)を設けた。
なお、CAT−CVD内には隔壁は設けておらず、製膜条件は、SiH4流量 22sccm、NH3流量50sccm、H2流量150sscm、ガス圧力35Pa、触媒体温度1800℃、基材温度50℃である。
よって、SiH4の流量に対する、H2の流量の比率は、6.8である。
得られたガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過度及び全光線透過度を前記の方法で測定した結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
実施例1において、製膜条件のうちの水素ガス(H2)の流量を300sccmとする以外は、実施例1と同様に行った。
よって、SiH4の流量に対するH2の流量の比率は、13.6である。
【0040】
実施例3及び4
実施例1及び2において、それぞれアンダーコート層を設けない以外は同様に行った。測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例5ないし8
実施例1ないし4において、厚さ125ミクロン(μm)の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材を、厚さ100ミクロンミクロン(μm)二軸延伸ポリエチレンナフタレートからなる基材とする以外は同様に行った。測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の薄膜の形成されたフィルムはガスバリア性が特に優れており、液晶表示素子、有機EL等の素子、面状発光体、光ディバイス、太陽電池等の収納に利用することができる。
【0044】
また、耐酸素透過性等のガスバリア性に優れているので、かかる特徴を活かして、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
【0045】
さらに、本発明の薄膜の製造方法によると、透明性が高いガスバリア性等機能性を有する薄膜が安定的、かつ効率的に得ることができるため、生産効率の向上等による製造コストの低減等の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に用いられるCAT−CVDの装置の断面を模式的に表示したもの。
【図2】本発明に用いられるCAT−CVDの装置の他の例を模式的に表示したもの。
【符号の説明】
【0047】
1:減圧容器
2:隔壁板
3:金属体
4:第1の原料ガス導入口
5:第2の原料ガス導入口
6:第3の原料ガス導入口
7:排気口
8:薄膜を形成したフィルム
9:ロール
10:供給ロール
11:巻き取りロール
12:仕切り部材
1A:第1室
1B:第2室
8a:フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒CVDにより基材の表面に無機薄膜を形成する方法であって、触媒CVDを行う減圧系に供給される原料ガス中のシラン系ガスの流量に対する水素ガスの流量の比率を3〜15とすることを特徴とする無機薄膜の製造方法。
【請求項2】
原料ガスがシラン系ガス、窒素含有ガス及び水素ガスから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
無機薄膜が、窒化珪素(SiN)の無機薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
原料ガスを触媒CVDの減圧系に供給し、かつ加熱された金属体の近傍の減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜をその減圧系に配置された基材上に形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
基材表面を前処理する表面改質及び/又は基材に設けられた薄膜の表面を後処理する表面改質を触媒CVDの減圧系と同一の減圧系内で行う請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項6】
シラン系ガスがSiH4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208440(P2008−208440A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48165(P2007−48165)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】