説明

薄膜を有する成形品の製造方法および製造装置

【課題】射出成形機と成膜装置のそれぞれを高い稼働率で稼動させて、高均質の薄膜を有する成形品を安価に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】射出成形機(4)で成形した成形品(1)を第1の搬送装置(14)によってテンポラリーステージ(12)に搬送する。射出成形工程を繰り返してテンポラリーステージ(12)では射出成形工程の複数回に相当する成形品(1)をプールする。第2の搬送装置(15)はテンポラリーステージ(12)上にプールされている全成形品(1)を一括で成膜装置(5)に搬送する。成膜装置(5)において成形品(1)を成膜し、第3の搬送装置(16)によって成形品(1)を外部に搬送する。成膜工程の実施中に、引き続き射出成形工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形により樹脂製の成形品を成形し、該成形品を成膜室に搬入して成形品の所定の面に薄膜を形成する、薄膜を有する成形品の製造方法、および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形品の表面の一部に0.1〜数μmオーダの薄膜を有する成形品として、例えば自動車に装備されるフロントランプ、デジタルデータを記録するCD/DVD、液晶表示装置の透明電極、金属光沢を有する玩具等、を挙げることがきる。これらの薄膜を有する成形品は射出成形機によって基材となる成形品が射出成形され、この成形品が成膜用ワークとして成膜装置に搬入されて成膜される。射出成形機も成膜装置も従来周知である。射出成形機については、型締装置がトグル式、直圧式等色々なタイプがあるが、一対の金型、型締装置、射出装置等から構成されている。従って型締装置によって一対の金型を型締めし、射出装置において材料の樹脂を溶融して溶融樹脂を金型内のキャビティに射出する。冷却固化を待って型締装置を駆動して一対の金型を開くと成形品が得られる。
【0003】
一方成膜装置は成膜室からなるが、成膜方法に応じて色々なタイプの成膜装置が提供されている。成膜方法として例えば、成膜用ワークの表面とターゲット材料とを対向させておき数Pa〜数10Pa程度のアルゴンガス雰囲気中でターゲット材料に数百V〜数kVの負の電圧を印加し、そして放電させて薄膜を形成するスパッタリング方法、真空室中で電子銃から発生する電子ビームをターゲット材料に照射して、加熱蒸発させ、成膜用ワークの表面に成膜する電子ビーム蒸着方法、成膜用ワークに数百V〜数kVの負の電圧を印加し数Paのアルゴンガスの圧力下で真空蒸着するイオンプレーティング方法、プラズマ成膜方法等が知られ、また化学蒸着法も知られている。このような成膜方法に使用されるターゲット材料としては酸化物、窒化物、炭化物などの化合物ターゲットが知られ、金属ターゲット、パウダーターゲット等も知られている。このように色々な成膜方法があり、それぞれの成膜方法に適した成膜装置が提供されている。
【0004】
ところで成形品を成膜するとき、成形品に手垢やゴミが付着していると適切に成膜できないし、成形品に形成される薄膜にもムラができてしまう。従って射出成形された成形品を成膜装置に搬送するとき手垢やゴミが付着しないようにする必要がある。また成形品は成形直後は高温であるが、放置して熱が低下すると水分が吸着してしまう。成形品に水分が吸着していると、成膜室から空気を吸引する際の妨げになってしまうし、成膜される薄膜の品質が低下してしまうので、成膜するとき事前に成形品を熱して成形品に吸着している水分を蒸発させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3677033号公報
【特許文献2】特開2011−58048号公報
【0006】
特許文献1には、固定側型と可動側金型とにより成形される一対の半中空体の一方の半中空体の内表面すなわち成形品の表面を、固定側金型に残した状態で、ターゲット電極、基板電極、真空吸引管等の蒸着要素が設けられている成膜チャンバーで覆って、固定側金型内で蒸着すなわち成膜する、薄膜を有する成形品の製造装置が示されている。特許文献2には、射出成形機で成形された成形品が成膜装置に搬送されるとき、ヒータによって保温された状態で搬送される射出成形機と成膜装置と搬送装置とからなる薄膜を有する成形品の製造装置が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されている製造装置によると、射出成形した金型から成形品を取り出すことなく、同じ金型内に設けられている成膜チャンバーを使用して成膜することができるので、手垢、塵埃等により成形品が汚染されることはないし、成形品の温度は十分に高いことが予想されので水分の吸着もない。そうすると、成膜チャンバーから容易に空気を吸引でき、高品質の薄膜を有する成形品を得ることができる。特許文献2に示されている製造装置においても、射出成形された成形品は搬送装置によって成膜装置に搬送されるので、手垢、塵埃等により成形品が汚染されることがないし、搬送時にはヒータによって保温されるので水分の吸着もない。そうすると成膜装置からの空気の吸引も容易に実施でき、高品質の薄膜を有する成形品を得ることができる
【0008】
しかしながら、改良すべき点も認められる。具体的には、まず射出成形に要する時間と成膜に要する時間が異なることによって効率を十分に高くできないという問題がある。射出成形により成形品を得る場合、例えば10〜30秒を要するだけで短時間で成形することができるが、成膜装置によって成膜するには1分以上を要してしまう。そうすると特許文献1、2に記載のそれぞれの製造装置において射出成形と成膜とを並行して実施しても、射出成形機に待ち時間が生じてしまい射出成形機の稼働率は低い。すなわち効率を高くすることができずコストが高くなる。特許文献1に記載の製造装置に特有の問題もある。すなわちこの装置においては、成膜チャンバーの開口部を金型のパーティング面に密着させて内部に真空室を形成しなければならないのでシールの問題が認められる。真空度は製品の品質に影響を及ぼすので高シール性が要求されるが、成膜チャンバーは金型の影響を受けやすく金型の温度が変化すると成膜チャンバーのシール性にも影響が生じる。すなわち高シール性が確保される保障がない。シール性を考慮すると金型で成形された成形品は金型外に設けられている成膜装置に搬送して成膜するのが好ましいともいえる。特許文献2に記載の製造装置においても特有の問題がある。すなわちこの装置においては、搬送時に成形品を保温するために格別にヒータが設けられているが、一般的に成形直後には成形品の温度は十分に高いので、実質的に水分は吸着されないはずであり、ヒータに供給するエネルギーが無駄になっている。
【0009】
したがって本発明は、成膜される成形品に手垢、塵埃が付着したり、水分が吸着されることがなく、従って高品質の成膜成形品を得ることができ、射出成形機と成膜装置のそれぞれを高い稼働率で稼動させることができ、従って成膜成形品のコストを低下させることができる薄膜を有する成形品の製造方法、および薄膜を有する成形品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、成形品を成形する射出成形機と、成形品を搬送する第1〜3の搬送装置と、成形品を成膜する成膜装置と、成形品をプールする所定のテンポラリーステージとからなる製造装置によって、薄膜を有する成形品を製造する。射出成形機で成形品を成形すると、第1の搬送装置によって成形品をテンポラリーステージに搬送してプールする。この搬送は射出成形毎に実施する。テンポラリーステージにプールされている成形品は、第2の搬送装置によって一括で成膜装置に搬送し、成膜装置において成膜する。成膜された成形品は第3の搬送装置によって成膜装置から外部に搬送する。なお、成膜装置に搬送される成形品はその表面温度が40℃以下に低下する前に搬送するように実施する。
【0011】
すなわち請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、搬送装置によって前記成形品を搬送する搬送工程と、成膜装置によって前記成形品を成膜する成膜工程とからなる薄膜を有する成形品の製造方法であって、前記搬送工程は、前記射出成形工程を1回実施する毎に成形品を前記射出成形機から所定の成形品プールエリアに搬送する第1の搬送工程と、前記成形品プールエリアにプールされている、前記射出成形工程の複数回分の成形品を成膜装置に搬送する第2の搬送工程と、前記成膜装置で成膜された成形品を外部に搬送する第3の搬送工程とからなり、前記第2の搬送工程は、成形品をその表面温度が40℃以下に低下する前に前記成膜装置に搬送するようにし、前記成膜工程は、前記射出成形工程の複数回分の成形品を一括で成膜することを特徴とする薄膜を有する成形品の製造方法として構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、前記第2の搬送工程は、前記成形品プールエリアにプールされている全成形品を前記成膜装置に搬送することを特徴とする薄膜を有する成形品の製造方法として構成される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、成形品を成形する射出成形機と、成形品を搬送する第1〜3の搬送装置と、成形品を成膜する成膜装置と、成形品をプールする所定のテンポラリーステージとからなる薄膜を有する成形品の製造装置であって、前記射出成形機によって成形された成形品は、前記第1の搬送装置によって、前記射出成形機の1ショット毎に前記テンポラリーステージに搬送され、前記テンポラリーステージにプールされている成形品は、前記第2の搬送装置によって、表面温度が40℃以下に低下する前に複数ショット分が前記成膜装置に搬送され、そして前記成膜装置において一括で成膜され、前記成膜装置で成膜された成形品は前記第3の搬送装置によって外部に搬送されるようになっていることを特徴とする薄膜を有する成形品の製造装置として構成される。請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の製造装置において、前記テンポラリーステージにプールされている成形品は全量が前記第2の搬送装置によって前記成膜装置に搬送されることを特徴とする薄膜を有する成形品の製造装置として構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明は、射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、搬送装置によって成形品を搬送する搬送工程と、成膜装置によって成形品を成膜する成膜工程とからなる薄膜を有する成形品の製造方法であるので、成膜される成形品は搬送装置で搬送するので手垢や塵埃が付着することがない。そして、本発明によると、搬送工程は、射出成形工程を1回実施する毎に成形品を射出成形機から所定の成形品プールエリアに搬送する第1の搬送工程と、成形品プールエリアにプールされている、射出成形工程の複数回分の成形品を成膜装置に搬送する第2の搬送工程と、成膜装置で成膜された成形品を外部に搬送する第3の搬送工程とからなり、第2の搬送工程は、成形品をその表面温度が40℃以下に低下する前に成膜装置に搬送するように構成されている。そうすると成膜される成形品の表面は十分温度が高く、水分が吸着されていないことになる。前記したように手垢や塵埃が付着せず、水分が吸着されていないので、成膜装置からの空気の吸引が容易であると共に高品質の薄膜を成膜することができる。そして本発明によると、成膜工程は、射出成形工程の複数工程分の成形品を一括で成膜するように構成されている。成膜工程に要する時間は、射出成形工程に要する時間よりも長く、例えば2〜6倍あるいはそれ以上必要であるが、このように成膜工程では射出成形工程の複数回分の成形品を一括で成膜するように構成されているので、成膜装置はもちろんのこと射出成形機の稼働率も高い。従って薄膜を有する成形品を小さなコストで製造することができる。
【0014】
他の発明によると、成形品を成形する射出成形機と、成形品を搬送する第1〜3の搬送装置と、成形品を成膜する成膜装置と、成形品をプールする所定のテンポラリーステージとからなる薄膜を有する成形品の製造装置として構成されるので、シンプルな装置として構成されている。そして射出成形機によって成形された成形品は、第1の搬送装置によって、射出成形機の1ショット毎にテンポラリーステージに搬送され、テンポラリーステージにプールされている成形品は、第2の搬送装置によって、表面温度が40℃以下に低下する前に複数ショット分が成膜装置に搬送され、そして成膜装置において一括で成膜され、成膜装置で成膜された成形品は第3の搬送装置によって外部に搬送されるようになっている。すなわちテンポラリステージを設けることによって、射出成形機で成形される成形品をプールしておくことができ、プールされた成形品を一括で成膜装置で成膜することができる。そうすると射出成形機も成膜装置も高い稼働率を実現できることになる。このように高い稼働率を実現できる装置であるにも関わらず、装置全体はシンプルであるので、装置を安価に提供できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る薄膜を有する成形品の製造装置を模式的に示す平面図である。
【図2】(ア)は本実施の実施の形態に係る薄膜を有する成形品を示す斜視図であり、(イ)はその成形品を成形するための金型の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る薄膜を有する成形品の製造装置を構成している搬送装置の一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る製造装置で製造される薄膜を有する成形品1は、いわゆるブロック玩具であり、複数個の成形品1、1、…を結合して所望の造形物を造ることができるようになっている。この薄膜を有する成形品1は、図2の(ア)に示されているように、直方体状を呈しており直方体の上面に突起2、2、…が形成されている。これらの突起2、2、…によって他の成形品1と結合できるようになっている。成形品1は樹脂から射出成形によって成形されており、成形された成形品は成膜装置によって成膜されている。従って成形品1は金属光沢を有している。
【0017】
本発明の実施に係る薄膜を有する成形品の製造装置3は、図1に模式的に示されているように、一部の構成が相違しているが、概略従来の製造装置と同様に構成されている。すなわち製造装置3は、射出成形機4、成膜装置5、成形品を搬送する搬送装置6等から構成されている。
【0018】
射出成形機4、成膜装置5のそれぞれは従来周知であるので、概略的に説明する。射出成形機4は、型締装置がトグル式のもの、直圧式のもの等色々あるし、射出装置もスクリュ式のもの、プランジャ式のもの等ありいずれを採用することもできるが、本実施の形態において射出成形機4は、スクリュ式の射出装置を備えたトグル式射出成形機からなる。すなわち射出成形機4は、一対の金型7a、7b、これらの金型7a、7bを型締めするトグル式型締装置8、材料の樹脂を溶融して型締めされた金型7a、7bに射出する射出装置、等から構成されている。トグル式型締装置8の一部と射出装置は保護カバーに覆われているので、図1には示されていない。本実施の形態に係る金型7aは、図2の(イ)に模式的に示されているが、成形品1を成形するためのキャビティ9、9、…が4個形成され、これらのキャビティ9、9、…に溶融樹脂を供給するランナ10が形成されている。従って1回の射出成形工程によって4個の成形品1、1、…を同時に成形できるようになっている。本実施の形態に係る射出成形機4は、20秒で1回射出成形を実施することができる。従って1分間に射出成形工程を3回分実施することができ、1分当たり12個の成形品1、1、…を成形することができる。
【0019】
成膜装置5は、スパッタリング成膜装置、電子ビーム蒸着装置、イオンプレーティング成膜装置等の周知の装置から構成することができ、またスパッタリング方式の成膜装置の中にも直流式、高周波式、マグネトロン式等として色々な方式のものがある。図1に装置内部は示されていないが、成膜装置5を直流式のスパッタリング成膜装置から構成する場合には、成膜装置5は、成膜室、成膜室の下部に設けられていて成形品を載せるための成膜台、成膜台と対向してその上方に設けられているターゲット電極、このターゲット電極に設けられているターゲット、ターゲット電極に直流電圧を供給する直流電源、成膜室から空気を吸引する真空源、不活性ガスタンクあるいは炭酸ガスのような不活性ガスを成膜室に供給する不活性ガス供給源等から構成されている。ところで成膜装置5には、成膜室の内外にスライド可能な搬送台13が設けられており、成形品を載せて成膜室内に搬送したり、成膜室内で成膜した成形品を外部に搬送することができる。本実施の形態においては、この搬送台13は前記した成膜台になっている。本実施の形態に係る成膜装置5は、成膜台が比較的大きく、12個の成形品1、1、…を載せて一括で成膜することができる。本実施の形態に係る成膜装置5は、1回の成膜工程に要する時間は1分である。
【0020】
本実施の形態に係る薄膜を有する成形品の製造装置3には、本実施の形態に特有の装置あるいは部材が設けられている。すなわち製造装置3には、成形品をプールしておくプールエリア、すなわちテンポラリーステージ12が設けられている。このテンポラリーステージ12は、射出成形機4と成膜装置5の中間に配置されている台であって、射出成形機4で成形された成形品が載せられるようになっている。本実施の形態においてはテンポラリステージ12の上に成形品1、1、…を12個プールできるようになっている。
【0021】
本実施の形態において搬送装置6は、射出成形機4において成形された成形品1、1、…をテンポラリーステージ12に搬送したり、テンポラリーステージ12上にプールされている成形品1、1、…を成膜装置5に搬送する装置である。搬送装置6は、複数の搬送装置14、15、16から構成されているが、これらの搬送装置14、15、16がスライドするためのレールがメインレール17として共用されているので全体として1台の搬送装置のようになっている。メインレール17は、射出成形機4、テンポラリーステージ12、成膜装置5の上方に設けられ、一方の端部が射出成形機4に、他方の端部寄りの部分が成膜装置5にそれぞれ位置している。成膜装置5の側方には、成膜された成形品1、1、…を外部に搬送するベルトコンベヤ18が設けられており、メインレール17の他方の端部は、このベルトコンベヤ18の上部に位置している。このメインレール17には、射出成形機4寄りに第1のメインスライド装置20が、成膜装置5寄りに第2のメインスライド装置21がそれぞれスライド可能に設けられている。これらの第1、2のメインスライド装置20、21には、メインレール17と直交する水平方向に延びる第1、2の横レール23、24がそれぞれ固定されている。第1の横レール23には、レール23上をスライドする第1の横スライド装置26が設けられ、第2の横レール24には、レール24上をスライドする第2、3の横スライド装置27、28が設けられている。そして第1〜3の横スライド装置26、27、28には、それぞれ鉛直方向にスライドされる第1〜3の鉛直バー30、31、32が設けられ、これらの第1〜3の鉛直バー30、31、32の下部のそれぞれに第1〜3のロボットチャック33、34、35が設けられている。本実施の形態においては、第1の搬送装置14は、メインレール17、第1のメインスライド装置20、第1の横レール23、第1の横スライド装置26、第1の鉛直バー30、第1のロボットチャック33から構成され、図3に水平方向から見た第1の搬送装置14が示されている。第1の搬送装置14は、射出成形機4において成形された4個の成形品1、1、…をテンポラリーステージ12に搬送する装置になっている。第2の搬送装置15は、メインレール17、第2のメインスライド装置21、第2の横レール24、第2の横スライド装置27、第2の鉛直バー31、第2のロボットチャック34から構成され、テンポラリーステージ12上にプールされている12個の成形品1、1、…を成膜装置5に搬送する装置になっている。そして第3の搬送装置16は、メインレール17、第2のメインスライド装置21、第2の横レール24、第3の横スライド装置28、第3の鉛直バー32、第3のロボットチャック35から構成され、成膜装置5において成膜された12個の成形品1、1、…をベルトコンベヤ18に搬送する装置になっている。
【0022】
本実施の形態に係る薄膜を有する成形品の製造装置3において、薄膜を有する成形品を製造する方法を説明する。従来周知の様に射出成形機4において射出成形工程を実施して成形品1、1、…を成形する。すなわち金型7a、7bを型締めし、射出装置から金型内に溶融樹脂を射出する。冷却固化を待って金型7a、7bを開くと成形品1、1、…が4個得られる。得られた成形品1、1、…を第1の搬送装置14によって取り出して、テンポラリーステージ12に搬送する。同様にして2回の射出成形工程を実施して、射出成形工程を実施する毎に第1の搬送装置14によって成形品1、1、…をテンポラリーステージ12に搬送する。3回の射出成形工程を実施してテンポラリーステージ12上に成形品1、1、…を搬送すると、テンポラリーステージ12上に12個の成形品1、1、…がプールされた状態になる。この状態が図1に模式的に示されている。
【0023】
第2の搬送装置15によってテンポラリーステージ12上の12個の成形品1、1、…を成膜装置5に搬送する。すなわち第2の搬送装置15は成形品1、1、…を成膜装置5の搬送台13上に載せる。搬送台13を駆動して12個の成形品1、1、…を成膜装置5の成膜室に搬送する。成形品1、1、…はいずれも射出成形後1分経過していないので、表面温度は高く50〜80℃前後である。すなわち表面温度が40℃以上あることが保障されている。そうすると水分の吸着はなく成膜工程に影響を与えない。従来周知のように成膜工程を実施する。すなわち成膜室を密閉し、真空源を駆動して空気を吸引し、不活性ガス供給源から不活性ガスを供給して成膜室内を数Pa〜数10Pa程度の不活性ガス雰囲気にする。ターゲットと成膜台に電圧を印加して放電する。そうすると成形品1、1、…に薄膜が形成される。すなわち薄膜を有する成形品1、1、…が得られる。
【0024】
成膜工程が終了したら、成膜室を開いて搬送台13を駆動し、薄膜を有する成形品1、1、…を成膜装置5の外部に移動する。第3の搬送装置16によって薄膜を有する成形品1、1、…を取り出してベルトコンベヤ18に搬送する。
【0025】
なお、第2の搬送装置15によってテンポラリーステージ12から成膜装置5に成形品1、1、…を搬送すると、テンポラリーステージ12に成形品が残っていない状態になる。引き続き射出成形機4において繰り返し射出成形工程を実施して成形品1、1、…を成形し、第1の搬送装置14によってテンポラリーステージ12に搬送する。そうすると、射出成形工程と成膜工程を並行して実施することができ、射出成形工程を3回分実施する間に、成膜工程を1回実施することになる。従って射出成形機4も成膜装置5も実質的に待ち時間が生じることがなく、いずれも連続的に稼動されることになる。
【0026】
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、本実施の形態においては射出成形工程に要する時間が20秒であり、成膜工程に要する時間の1分の1/3であるので、射出成形工程を3回分実施する間に成膜工程を1回実施するように説明したが、射出成形工程に要する時間が10秒で済む場合には、射出成形工程を6回分実施する間に成膜工程を1回実施するようにすることができる。また、第2の搬送装置15は、テンポラリステージ12上にプールされている全ての成形品1、1、…を成膜装置5に搬送するように説明したが、搬送するのは成形後所定の時間が経過した成形品1、1、…だけに限定し、成形された直後の成形品は残すようにしてもよい。この場合、残された成形品1、1、…は次回以降に成膜装置5に搬送することになる。このようにすると成膜装置5に搬送される成形品は、表面温度が40〜50℃に低下する。このような温度は水分の吸着の心配がない温度であると共に、成膜工程における成形品1、1、…の過剰な温度上昇を防ぐことができる温度でもある。
【符号の説明】
【0027】
1 薄膜を有する成形品 3 薄膜を有する成形品の製造装置
4 射出成形機 5 成膜装置
6 搬送装置 7 金型
8 トグル式型締装置 9 キャビティ
12 テンポラリーステージ 13 搬送台
14、15、16 第1〜3の搬送装置
17 メインレール 18 ベルトコンベヤ
20、21 第1、2のメインスライド装置
23、24 第1、2の横レール
26、27、28 第1〜3の横スライド装置
30、31、32 第1〜3の鉛直バー
33、34、35 第1〜3のロボットチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、搬送装置によって前記成形品を搬送する搬送工程と、成膜装置によって前記成形品を成膜する成膜工程とからなる薄膜を有する成形品の製造方法であって、
前記搬送工程は、前記射出成形工程を1回実施する毎に成形品を前記射出成形機から所定の成形品プールエリアに搬送する第1の搬送工程と、前記成形品プールエリアにプールされている、前記射出成形工程の複数回分の成形品を成膜装置に搬送する第2の搬送工程と、前記成膜装置で成膜された成形品を外部に搬送する第3の搬送工程とからなり、
前記第2の搬送工程は、成形品をその表面温度が40℃以下に低下する前に前記成膜装置に搬送するようにし、前記成膜工程は、前記射出成形工程の複数回分の成形品を一括で成膜することを特徴とする薄膜を有する成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、前記第2の搬送工程は、前記成形品プールエリアにプールされている全成形品を前記成膜装置に搬送することを特徴とする薄膜を有する成形品の製造方法。
【請求項3】
成形品を成形する射出成形機と、成形品を搬送する第1〜3の搬送装置と、成形品を成膜する成膜装置と、成形品をプールする所定のテンポラリーステージとからなる薄膜を有する成形品の製造装置であって、
前記射出成形機によって成形された成形品は、前記第1の搬送装置によって、前記射出成形機の1ショット毎に前記テンポラリーステージに搬送され、
前記テンポラリーステージにプールされている成形品は、前記第2の搬送装置によって、表面温度が40℃以下に低下する前に複数ショット分が前記成膜装置に搬送され、そして前記成膜装置において一括で成膜され、
前記成膜装置で成膜された成形品は前記第3の搬送装置によって外部に搬送されるようになっていることを特徴とする薄膜を有する成形品の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の製造装置において、前記テンポラリーステージにプールされている成形品は全量が前記第2の搬送装置によって前記成膜装置に搬送されることを特徴とする薄膜を有する成形品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−86427(P2013−86427A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230932(P2011−230932)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】