説明

薄膜コンデンサ及びその製造方法

【課題】高い静電容量を維持しつつ、ESRを低減することができる薄膜コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による薄膜コンデンサ1は、基体2上に設けられた複数のトレンチ3aが形成された絶縁層3と、トレンチ3aの内壁上及び絶縁層3上に形成された下部電極4と、下部電極4上に追従して形成された誘電体膜5と、誘電体膜5上に追従して形成された上部電極6と、2つのトレンチ3a間の絶縁層3を介して離間した下部電極4の部位同士、及び/又はトレンチ3aを介して離間した上部電極6の部位同士を連結する補助導体10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜コンデンサ及びその製造方法に関し、特に、トレンチ型の薄膜コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータや携帯端末等の電子機器の内部回路には、表面実装型の多種の電子部品が搭載されている。近時、電子機器の更なる高性能化及び小型化の要求に応えるべく、能動素子、受動素子を問わず、各種電子部品の更なる小型化及び薄型(薄膜)化が急務となっている。このような薄膜型の電子部品としては、薄膜形成プロセスを利用した、例えば、薄膜コンデンサ、薄膜インダクタ、薄膜LC複合部品、薄膜集中定数デバイス、薄膜分布デバイス、薄膜積層型複合部品等が挙げられる。
【0003】
これらのなかでも薄膜コンデンサの単位体積(容積)当たりの静電容量を増大させつつ小型化及び薄型化を達成する手法の一つとして、基体にトレンチ(下地段差構造)を形成し、そのトレンチに薄膜コンデンサを形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−325970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトレンチ型の薄膜コンデンサでは、トレンチの数及びアスペクト比(深さ/幅)を大きくし、トレンチの内壁を被覆する電極、誘電体膜、電極の積層膜を形成することにより、単位面積当たりの電極表面積をより増大させることができ、これにより、コンデンサの静電容量を更に増やすことが可能となる。
【0005】
しかしながら、下地段差に起因して電極の電流経路が長くなることから、電極の抵抗が高くなる。さらに、トレンチの内壁を被覆するように積層膜を形成するためには、積層膜の膜厚を薄くする必要があるため、電極の高抵抗化を助長し、ひいては、等価直列抵抗(ESR)が増大するという問題が生じる。また、更なる静電容量の増大を企図して、トレンチの内壁を被覆する積層膜を多段に(例えば、2セット以上)設ける場合には、各電極及び誘電体膜の膜厚の更なる薄膜化が必要となり、上述した問題がより一層顕在化する。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い静電容量を維持しつつ、ESRを低減することができる薄膜コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の薄膜コンデンサは、基体上に設けられており且つ複数のトレンチが形成された絶縁層と、トレンチの内壁上及び絶縁層上に形成された下部電極と、下部電極上に追従して形成された誘電体膜と、誘電体膜上に追従して形成された上部電極と、2つのトレンチ間の絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又はトレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体と、を備える。
【0008】
上記構成では、2つのトレンチ間の絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又はトレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体が形成されている。この補助導体により、電極自体の電流経路とは別にもう一つの電流経路が確保される。また、単純に電流経路が増える効果だけでなく、電極自体の電流経路に比べて短い電流経路が確保される。この補助導体により、トレンチがない場合の電流経路と同等の短さの電流経路を確保することも可能となる。このように、本発明によれば、トレンチの形成により高い静電容量を維持しつつ、下部電極又は上部電極の低抵抗化を図ることができ、ひいては薄膜コンデンサのESRの低減が図れる。
【0009】
本発明の一実施形態では、補助導体は、絶縁層を介して下部電極と重なり合う領域、及び/又は保護層を介して上部電極と重なり合う領域のうち少なくとも一部に開口部を有する。このような領域の全面に補助導体が形成されている場合には、下部電極/上部電極と補助導体との間に浮遊容量が発生するが、このような領域における補助導体の一部に開口部を設けることにより、浮遊容量を低減できる。
【0010】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明の薄膜コンデンサの製造方法は、基体上に、複数のトレンチが形成された絶縁層を形成する工程と、トレンチの内壁上及び絶縁層上に、下部電極を形成する工程と、下部電極上に追従して誘電体膜を形成する工程と、誘電体膜上に追従して上部電極を形成する工程と、を有し、下部電極を形成する工程の前及び/又は上部電極を形成する工程の後に、2つの前記トレンチ間の前記絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又は前記トレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体を形成する工程を有する。
【0011】
上記構成の本発明では、下部電極のうち互いに離間した部位同士、及び/又は上部電極のうち互いに離間した部位同士を連結する補助導体を形成することにより、電極自体の電流経路とは別にもう一つの電流経路が確保される。また、単純に電流経路が増える効果だけでなく、電極自体の電流経路に比べて短い電流経路が確保される。この結果、トレンチの形成により高い静電容量を維持しつつ、下部電極又は上部電極の低抵抗化を図ることができ、ひいては薄膜コンデンサのESRの低減が図れる。
【0012】
本発明の一実施形態では、絶縁層を形成する工程の前に、基体上において、少なくともトレンチが形成される部位を覆う補助導体を形成し、絶縁層を形成する工程は、基体及び補助導体上に絶縁層を堆積する工程と、補助導体に達するトレンチを絶縁層に形成する工程とを有する。このように、基体上において少なくともトレンチが形成される部位を覆う補助導体を形成することにより、トレンチの形成の際に補助導体がエッチストッパとして作用することから、トレンチの深さが均一になり、ひいてはコンデンサの容量ばらつきの低減に繋がる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2つのトレンチ間の絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又はトレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体を設けることにより、電極自体の電流経路に加えてこれより短い電流経路を確保することができることから、電極の低抵抗化に繋がり、ひいては薄膜コンデンサのESRを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、それぞれ本発明による薄膜コンデンサの好適な一実施形態の概略構成を示す斜視図であり、図2は図1におけるII-II線に沿う断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、基体2上には、絶縁層3が形成されており、絶縁層3にはトレンチ3aが形成されている。絶縁層3の厚さは、形成すべきトレンチ3aの深さに応じて適宜設定することができる。また、基体2の材料としては、特に制限されず、シリコン基板、アルミナ等のセラミックス基板、ガラスセラミックス基板、ガラス基板、サファイア、MgO、SrTiO3等の単結晶基板が挙げられ、化学的且つ熱的に安定で応力発生が少なく表面の平滑性を保持し易いものを用いることが好ましい。さらに、絶縁層3の材質も特に制限されず、例えばAl23、SiO2、Si等を列挙することができる。
【0017】
このトレンチ3aの内壁上及び絶縁層3上には、下地の段差構造に追従して、下部電極4、誘電体膜5、及び、上部電極6からなる積層膜が形成されている。また、誘電体膜5には、パッド電極8と下部電極4との接続部位に開口部5aが形成されている。
【0018】
下部電極4及び上部電極6としては、例えば、Cu、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni等を含む金属、又はこれらを含む複合金属が挙げられる。誘電体膜5の材料は特に限定されず、例えば、Al23、PbTiO3(PZT)、BaTiO3、BaTiO3、ZrO2、HfO2、Bi4Ti3O12、SrBi2Ta29、SiO2等からなる。
【0019】
この積層膜上には、保護膜7が形成されており、保護膜7には2つの開口部7a,7aが形成されて、さらに、開口部7a内には下部電極4及び上部電極6が露出している。そして、この開口部7aを埋め込むように、保護膜7上に2つのパッド電極8,8が形成されている。
【0020】
保護膜7は、絶縁材料であれば特に限定されず、例えば、Al23、SiO2、SiNなどの無機物とポリイミド、エポキシなどの樹脂からなる。パッド電極8として、例えば、Cu、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni等を含む金属、又はこれらを含む複合金属が挙げられる。
【0021】
本実施形態では、基体2と絶縁層3の間には、補助導体10が形成されている。この補助導体10は、2つのトレンチ3a間の絶縁層3の凸部3bを介して離間した下部電極4の部位同士、すなわち、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を連結している。これにより、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を、絶縁層3の凸部3bに追従して形成された下部電極自体よりも短い電流経路で接続することができる。
【0022】
図3は、補助導体10の平面形状を示す図である。なお、図3には、基板2およびトレンチ3aの形状も図解している。図3に示すように、本実施形態では、補助導体10は、複数のトレンチ3aの領域及びトレンチ3a間の凸部3bの領域で基体2を被覆するような平面形状をなしている。
【0023】
本実施形態では、後述するように、補助導体10はエッチストッパとしても機能する。このため、補助導体10の材料としては、導電材料の中でも、絶縁層3の材料に比してエッチングレート又はミリングレートの低い材料を使用することが好ましい。ここで、絶縁層3として、例えばAl23、SiO2、Siを用いる場合には、補助導体10としてRu、Pt、Ir、Auが好ましく、RuO2、SrRuO3、IrO2などの酸化物が用いられる。
【0024】
次に、上記構成の本実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について、図4〜図11を参照して説明する。
【0025】
図4は、薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図(工程図)である。図4に示すように、まず、基体2上に補助導体10をパターニングする。当該工程では、例えば、Siからなる基体2上にスパッタリング法によりRu膜を堆積させた後に、Ru膜上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたドライエッチング又はウェットエッチングにより、Ru膜をパターニングして、補助導体10を形成する(サブトラクティブ法)。または、基体2上にレジストパターンを形成した後に、全面にスパッタリング法によりRu膜を堆積させて、レジストパターンとともにレジストパターン上の不要なRu膜を除去することにより、補助導体10を形成する(アディティブ法)。Ru膜の膜厚は、適宜調整することができ、例えば300nm堆積させる。
【0026】
次に、図5に示すように、基体2及び補助導体10上の全面に、絶縁層3を形成する。絶縁層3の形成では、例えばスパッタリング法により、Al23膜を堆積させる。絶縁層3の厚さは、形成すべきトレンチに応じて設定され、例えば、5μm〜50μmである。
【0027】
次いで、図6に示すように、絶縁層3上に、トレンチを形成すべき部位に開口部20aを有するマスク層20を形成する。本実施形態では、マスク層20として、例えばRu、または、NiFeからなる金属マスクをパターニングする。Ru、または、NiFe膜の堆積にはスパッタリング法を用いることができ、膜のパターン化にはサブトラクティブ法又はアディティブ法を用いることができる。
【0028】
それから、図7に示すように、リアクティブイオンエッチング(RIE)により、開口部20a内に露出した絶縁層3を除去して、補助導体10に達するトレンチ3aを絶縁層3に形成した後に、マスク層20を除去する。ここで、図8に、1つの薄膜コンデンサに形成されるトレンチ3aの平面図を示す。図8では、3つの矩形状のトレンチ3aを形成した例を示す。
【0029】
トレンチ3aの形成では、補助導体10はエッチストッパとして機能する。これにより、絶縁層3に均一な深さのトレンチ3aを複数形成できる。ここで、本実施形態では、基体2の材料としてSiO2酸化膜付きSiを用い、絶縁層3の材料としてAl23を用いる例を示すが、これらの材料間のエッチングレートの差は小さいため、補助導体10が設けられていない場合には、基体2の上面はエッチストッパとして機能せずにエッチされてしまう。なお、トレンチ3aの形成方法として、イオンミリングを用いてもよい。補助導体10としては、絶縁層3の材料に対して、エッチングレート又はミリングレートの低い材料を使用することが好ましい。
【0030】
このようなトレンチ3aを形成した後に、図9に示すように、トレンチ3aの内壁上及び絶縁層3上に、下部電極4をパターニングする。当該工程では、下部電極4としてCu膜をスパッタリング、または、CVD方法で成膜し、下部電極4のパターニングには、上述したサブトラクティブ法又はアディティブ法を使用する。
【0031】
次に、図10に示すように、下部電極4及び絶縁層3上に、誘電体膜5をパターニングする。当該工程では、ALD(Atomic Layer Deposition)法によりAl23膜を堆積させた後、レジストパターンとイオンミリングを用いたエッチングにより、パッド電極8との接続部位におけるAl23膜を除去して開口部5aを形成する。
【0032】
さらに、図11に示すように、誘電体膜5上に上部電極6をパターニングする。当該工程では、上部電極6としてCu膜をスパッタリングし、上部電極6のパターニングには、上述したサブトラクティブ法又はアディティブ法を使用する。
【0033】
次いで、図12に示すように、下部電極4、誘電体膜5、及び、上部電極6上に、下部電極4及び上部電極6が露出した開口部7a,7aを備える保護膜7を形成する。保護膜7の形成では、例えば基体2の全面に、例えばスパッタリング法により、Al23膜を堆積させた後、レジストパターンを用いたエッチングにより、開口部7a,7aを形成する。
【0034】
以降の工程としては、必要に応じて基体2の裏面を研削して薄膜化した後に、ダイシングにより個々の薄膜コンデンサ1に分割し、薄膜コンデンサ1を得る。
【0035】
このように構成された薄膜コンデンサ1によれば、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を連結する補助導体10が形成されていることにより、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を、絶縁層3の凸部3bに追従して形成された下部電極自体よりも短い電流経路で接続することができる。これにより、電極自体の電流経路に加えて、これよりも短い電流経路が確保されることから、電極部11の抵抗を低減することができる。
【0036】
ここで、図13に、薄膜コンデンサ1のトレンチ部位の等価回路を示す。図13においては、抵抗R0、R1、R2及び容量Cを構成する部材の符号を括弧書きで示す。図13の等価回路図を参照すると明らかなように、補助導体10の抵抗R0は、下部電極4の抵抗R1に対して並列接続された状態となることから、電極部11の抵抗Rは下記式(1)で表される。
【0037】
R=1/(1/R1+1/R2) (1)
【0038】
よって、R<R1となり、電極部11の抵抗Rは、下部電極4自体の抵抗R1よりも小さくなる。本発明者らは、補助導体10による効果を実証するため、補助導体10を有する薄膜コンデンサ(A:本実施形態)と、補助導体10を有しない薄膜コンデンサ(B:比較例)について、損失係数(DF)を測定した。なお、損失係数(DF)は、Tanδで表されるものであり、このTanδは、コンデンサのエネルギー損失量の測定値であって、特定の温度下において特定の周波数(f)の正弦波を印加した場合におけるコンデンサの電力損失を示す指標である。
【0039】
図14は、本実施形態(A)及び比較例(B)に係る薄膜コンデンサの損失係数(DF)の測定結果を示すグラフである。損失係数(DF)は、室温において、200mVrmsの正弦波信号1kHzを薄膜コンデンサ1に印加して、インピーダンスアナライザ(YHP社製4194A)にて測定した。図中のパターン1及びパターン2は、それぞれ、トレンチ3aの幅と距離(L/S)を1.5μm/1.5μm及び2.0μm/2.0μmに作製したコンデンサを示す。尚、実施形態(A)及び比較例(B)におけるトレンチの高さは10μmに作製した。
【0040】
図14より、補助導体10を設けることにより、補助導体10を設けない場合に比べて、薄膜コンデンサ1の損失係数が減少することが理解される。ここで、等価直列抵抗(ESR)とは、コンデンサの内部抵抗、接続抵抗、誘電体内部の粘性、欠陥によるバイパス電流等の抵抗ロスの影響全てを合わせたものに相当し、下記式(2)で表される。なお、ESRは、温度及び周波数によって変動し得るものである。
【0041】
ESR=Tanδ/2πfC (2)
上記式中、fは周波数(Hz)を示し、Cは容量を示す。
【0042】
上記式(2)より、Tanδが小さいほどESRが低減されることが明らであり、上述の如く、本発明の薄膜コンデンサ1では、Tanδが低減できることから、ESRを確実に減少させることができる。すなわち、本発明の薄膜コンデンサ1によれば、トレンチ3aを設けて表面積を増大させることにより、高い静電容量を維持しつつ、ESRを低減することができることが確認された。
【0043】
また、本発明の薄膜コンデンサ1によれば、補助導体10をエッチストッパとして機能させるので、トレンチ3aの深さを均一化することができ、これにより、容量のばらつきを低減することができる。本発明者らは、この効果を実証すべく、補助導体10を設けた上でトレンチ3aを形成した薄膜コンデンサ1(A:本実施形態例)と、補助導体10を設けずにトレンチ3aを形成した薄膜コンデンサ(B:比較例)の容量のばらつき(3σ)を測定した。
【0044】
図15は、本実施形態(A)及び比較例(B)に係る薄膜コンデンサについての容量のばらつき(3σ)の測定結果を示すグラフである。なお、補助導体10の膜厚は、いずれも300nmとした。図15において、図中のパターン1及びパターン2は、それぞれ、トレンチ3aの幅と距離(L/S)を1.5μm/1.5μm及び2.0μm/2.0μmに作製したコンデンサを示す。尚、実施形態(A)及び比較例(B)におけるトレンチの高さは10μmに作製した。
【0045】
図15に示すように、補助導体10をトレンチ3aの形成の際のエッチストッパとして用いることにより、薄膜コンデンサの容量ばらつきを12〜17.5%から5〜8%まで減少できていることが判明した。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る薄膜コンデンサ1によれば、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を連結する補助導体10が形成されていることにより、2つのトレンチ3aの底部における下部電極4の部位同士を、絶縁層3の凸部3bに追従して形成された下部電極自体よりも短い電流経路で接続することができる。これにより、電極自体の電流経路に加えて、これよりも短い電流経路が確保されることから、電極部11を低抵抗化することができ、その結果、薄膜コンデンサのESRを低減することが可能となる。
【0047】
さらに、絶縁層3へのトレンチ3aの形成の際に、補助導体10をエッチストッパとして用いることにより、トレンチ3aの深さの面内均一性を向上でき、容量ばらつきを低減することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図16は、第2実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図であり、図17は、補助導体10の平面形状を示す図である。なお、図17では、基板2およびトレンチ3aの平面形状も図解している。
【0049】
図16及び図17に示すように、本実施形態では、補助導体10は、絶縁層3の凸部3bを介して下部電極4と重なり合う領域のうち少なくとも一部に開口部10aを有する。換言すれば、絶縁層3bの下部領域において、補助導体10の少なくとも一部に開口部10aが形成されている。なお、開口部10aの形状に限定はなく、例えば絶縁層3bの下部領域に複数の開口部10aを設けてもよい。
【0050】
絶縁層3の下部領域の全面に補助導体が形成されている場合には、絶縁層3を介して下部電極と補助導体との間に浮遊容量が発生するが、このような領域における補助導体10の一部に開口部10aを設けることにより、浮遊容量を低減することができる。
【0051】
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図である。
図18に示すように、本実施形態では、トレンチ3aを介して離間した上部電極の部位同士、より詳細には、トレンチ3aの両側の絶縁層3上の上部電極6の部位同士を連結する補助導体12が形成されている。
【0052】
図19は、補助導体10の平面形状の一例を示す図である。なお、図19では、基板2及び上部電極6の平面形状も図解している。
図19に示すように、補助導体12は、上部電極6の凹部6a及び上部電極6の領域を被覆するような平面形状をなしている。これにより凹部6aの両側における上部電極6の部位同士が、補助導体12により接続される。なお、補助導体12は、凹部6a毎に分離していてもよい。
【0053】
図20は、補助導体12の平面形状の他の例を示す図である。なお、図20では、基板2及び上部電極6の平面形状も図解している。
図20に示す例では、補助導体12は、保護膜7を介して上部電極6と重なり合う領域のうち少なくとも一部に開口部12aを有する。換言すれば、凹部6aの部位において、補助導体12の少なくとも一部に開口部12aが形成されている。なお、開口部12aの数および形状に限定はない。凹部6aの部位の全面に保護膜7を介して補助導体12が形成されている場合には、保護膜7を介して上部電極6と補助導体12との間に浮遊容量が発生するが、このような領域における補助導体12の一部に開口部12aを設けることにより、浮遊容量を低減することができる。
【0054】
第3実施形態に係る薄膜コンデンサ1によれば、補助導体12により、トレンチ3aを介して離間した上部電極6の部位同士を、トレンチ3aの内壁に追従して形成された上部電極6自体よりも短い電流経路で接続することができる。これにより、電極自体の電流経路に加えて、これよりも短い電流経路が確保されることから、上部電極6および補助導体12を含めた電極部を低抵抗化することができ、その結果、薄膜コンデンサのESRを低減することが可能となる。
【0055】
<第4実施形態>
図21は、第4実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図である。
図21に示すように、本実施形態では、トレンチ3aの途中の深さにおいて、トレンチ3aの側壁に形成され、トレンチ3aを挟んで対向配置した上部電極6同士を連結する補助導体13が形成されている。
【0056】
このような補助導体13であっても、第3実施形態と同様の理由で上部電極6および補助導体13を含めた電極部を低抵抗化することができ、その結果、薄膜コンデンサのESRを低減することが可能となる。
【0057】
なお、上述したとおり、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。
例えば、トレンチ3aの内壁及び絶縁層3上に下部電極4、誘電体膜5、及び、上部電極6からなる積層膜のセットを多段に(例えば、2セット以上)形成してもよい。またさらに、必要に応じて、薄膜コンデンサ1上に窒化シリコンからなる密着層を形成し、この密着層上に補助導体10及び絶縁層3を形成してもよい。
【0058】
また、絶縁層3に形成するトレンチ3aの数及び形状に制限はなく、例えば、トレンチは、楕円形のような丸みを帯びた形状の断面を有していてもよく、閉じていない形状、すなわちトレンチ3aの一端が薄膜コンデンサの外縁にまで延在していてもよい。また、下部電極4、誘電体膜5、及び、上部電極6からなる積層膜には、更に他の機能層が適宜の位置に形成されていいてもよい。加えて、基体の両面にコンデンサ構造を形成してもよく、この場合、トレンチ3a、絶縁層3、並びに、下部電極4、誘電体膜5、及び上部電極6からなる積層膜は、基体の両面に形成される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明した通り、本発明の薄膜コンデンサ及びその製造方法によれば、高い静電容量を維持しつつ、ESRを低減した薄膜コンデンサを実現することができるので、薄膜型の電子部品を内蔵する機器、装置、システム、各種デバイス等、特に小型化及び高性能化が要求されるものの製造用途に広く且つ有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る薄膜コンデンサ1の斜視図である。
【図2】図1におけるII-II線に沿う断面図である。
【図3】補助導体10の平面形状を示す図である。
【図4】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図5】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図6】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図7】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図8】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す平面図である。
【図9】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図10】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図11】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図12】薄膜コンデンサ1を製造している状態を示す断面図である。
【図13】薄膜コンデンサのトレンチ部位の等価回路図である。
【図14】本実施形態(A)及び比較例(B)に係る薄膜コンデンサの損失係数(DF)の測定結果を示す図である。
【図15】本実施形態(A)及び比較例(B)に係る薄膜コンデンサについての容量ばらつき(3σ)の測定結果を示す図である。
【図16】第2実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図である。
【図17】補助導体10の平面形状を示す図である。
【図18】第3実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図である。
【図19】補助導体12の平面形状の一例を示す図である。
【図20】補助導体12の平面形状の他の例を示す図である。
【図21】第4実施形態に係る薄膜コンデンサ1の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…薄膜コンデンサ、2…基体、3…絶縁層、3a…トレンチ、3b…凸部、4…下部電極、5…誘電体膜、5a…開口部、6…上部電極、6a…凹部、7…保護膜、7a…開口部、8…パッド電極、10…補助導体、10a…開口部、11…電極部、12,13…補助導体、12a…開口部、20…マスク層、20a…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に設けられており、且つ、複数のトレンチが形成された絶縁層と、
前記トレンチの内壁上及び前記絶縁層上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に追従して形成された誘電体膜と、
前記誘電体膜上に追従して形成された上部電極と、
2つの前記トレンチ間の前記絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又は前記トレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体と、
を備える薄膜コンデンサ。
【請求項2】
前記補助導体は、絶縁層を介して下部電極と重なり合う領域のうち少なくとも一部に開口部を有する、
請求項1記載の薄膜コンデンサ。
【請求項3】
前記上部電極を被覆する保護層をさらに有し、
前記補助導体は、前記保護層を介して上部電極と重なり合う領域のうち少なくとも一部に開口部を有する、
請求項1記載の薄膜コンデンサ。
【請求項4】
前記補助導体は、前記基体上に形成されており、2つの前記トレンチの底部における前記下部電極の部位同士を連結する、
請求項1記載の薄膜コンデンサ。
【請求項5】
基体上に、複数のトレンチが形成された絶縁層を形成する工程と、
前記トレンチの内壁上及び前記絶縁層上に、下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に追従して誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に追従して上部電極を形成する工程と、
を有し、
前記下部電極を形成する工程の前及び/又は前記上部電極を形成する工程の後に、2つの前記トレンチ間の前記絶縁層を介して離間した下部電極の部位同士、及び/又は前記トレンチを介して離間した上部電極の部位同士を連結する補助導体を形成する工程を有する、
薄膜コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層を形成する工程の前に、前記基体上において、少なくとも前記トレンチが形成される部位を覆う前記補助導体を形成し、
前記絶縁層を形成する工程は、前記基体及び前記補助導体上に絶縁層を堆積する工程と、前記補助導体に達するトレンチを前記絶縁層に形成する工程とを有する、
請求項5記載の薄膜コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−135311(P2009−135311A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311070(P2007−311070)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】