説明

薄膜シリカ材料及びその製造方法

【課題】有効利用率が高く、物質移動を促進し得る表面構造を備え、ろ過材や触媒担体、吸着材などとして実用的な材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】シリカ材料を、半球カップ状、ボウル状、あるいは皿状に湾曲した二重薄膜構造を有し、膜厚が10〜100nmのものとして使用する。望ましくはその直径をナノサイズからマイクロサイズレベルのものであって、さらに望ましくはその表面にCH(メチル)基を備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ材料、特に、湾曲した二重構造を有し、例えば、触媒の担体を元として、吸着剤やろ過剤として用いることができる微細な薄膜シリカ材料と、このようなシリカ材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ(SiO)やアルミナ(Al)などの酸化物粒子は、微細な細孔を有するため比表面積が大きく、ろ過材、触媒担体、吸着材など、各方面への応用がなされている。 近年は、機能性向上を目指して、ナノサイズレベルの中空状、チューブ状、ベルト状などといった各種形態を有する酸化物の合成が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミナやスピネル、酸化鉄などから成り、皮殻厚さが20nm以下の中空状酸化物粉末粒子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−203810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの形態の材料においても、物質移動の妨げとなる閉鎖的空間を有しており、実用的には有効利用率の低い部分が生じる。
【0006】
すなわち、このような材料を、例えば、触媒担体に用いた場合には、細孔内部に入り込んだ触媒成分へは反応物が接近し難くなるため、触媒成分の利用率が低下する。また、反応物が細孔内部深くに入り込んだ場合には、反応物が外部に出るのが困難となり、触媒内部に長く捕らえるために、好ましくない副反応が起こる起点となり得る。
さらに、このような酸化物から成る材料をろ過材や吸着材として用いた場合には、再生が困難になるなどの弊害も生じる。
【0007】
一方、酸化物材料の薄膜化や微細粒子化は、有効表面積を増大させる一つの有効な方法であるが、重なり部分が生ずることや強度が不足するなどの問題が生じる。
したがって、ナノレベルで高い物質移動性や拡散性を実現するために有効な構造を有する優れた材料が望まれていた。
【0008】
本発明は、ろ過材や触媒担体、吸着材などとして用いられる従来の酸化物粒子における上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、有効利用率が高く、物質移動を促進し得る表面構造を持つ実用的な材料とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、マイクロサイズからナノサイズレベルの半球体あるいはカップ状に湾曲したシリカ粒子が、上記のような触媒担体や吸着剤などの用途に好適であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の薄膜シリカ材料は、湾曲状をなす二重構造をなし、膜厚が10〜100nmであることを特徴とする。
また、本発明による上記薄膜シリカ材料の製造方法は、有機ケイ素ハロゲン化物を出発原料とするものであって、鎖長が異なる少なくとも2種類のアルキル基を備えた有機塩化ケイ素化合物を用い、水/有機溶剤(W/O)型エマルションを調製する工程と、その後の加水分解による重縮合工程を含む。そして、より長い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加してエマルションを形成した後、より短い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加して加水分解による重縮合を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナノメートルオーダーの膜厚を有し、曲率を持つ湾曲状の二重薄膜構造を備えたシリカ材料としたため、実用的に有効利用率が高く、物質移動を促進することができ、触媒担体や吸着剤を始めとする種々の用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の薄膜シリカ材料の製造手順を示す概略説明図である。
【図2】本発明の薄膜シリカ材料のTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【図3】本発明の薄膜シリカ材料における焼成温度と比表面積及び細孔容積の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の薄膜シリカ材料における焼成温度とCH基量(C量)の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の薄膜シリカ材料における細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の薄膜シリカ材料について、その製造方法と共に詳細に説明する。なお、本明細書において、濃度、含有量、配合量などについての「%」は、特記しない限り、質量百分率を意味するものとする。
【0014】
本発明の薄膜シリカ材料は、上記したように、例えばカップ状、ボウル状、あるいは皿状に湾曲した曲率を持ち、典型的には半球カップ状の二重構造をなし、10〜100nmの膜厚を有するものである。したがって、サイズは直径によって表示するのが妥当であり、その直径は0.1〜10μmであることが望ましい。
【0015】
このような薄膜シリカ材料は、上記のような形態、サイズであることによって、ナノ〜数マイクロメートルサイズの空間を持つ極めて嵩高い集合状態を形成できるため、分子やナノサイズの微粒子を取り扱う触媒の担体、吸着材、ろ過材などに好適に用いられる。
そして、極めて嵩高く、薄膜状であるため、細孔を持っていてもその内部への出入りが容易であることから、実用的に有効利用率が高く、物質移動を促進し得る表面を備えている。
【0016】
したがって、例えば、当該シリカ材料を触媒担体として用いた場合には、触媒の有効利用率を高めることができ、触媒成分の節減に貢献することができる。また、ろ過材、吸着材に適用することで、コンパクト化、長寿命化が実現できるため、エネルギーの節約に寄与することができる。
【0017】
さらに、本発明の薄膜シリカ材料は、上記のような形態のため、個々のシリカ材料粒子が互いに最小の接触点で自立することができ、反応において分子を効果的に拡散し得るナノ〜マイクロサイズのラッシヒリングとしても期待される。
【0018】
本発明の薄膜シリカ材料においては、その表面にメチル(CH)基を残すことができ、これによって有機−無機複合材料としての機能を備えたものとすることができ、親水性あるいは疎水性物質を扱う反応に適用した場合においても物質移動を促進することができるようになる。
このメチル基の含有量は、焼成温度によって制御することができ、例えば600℃程度の焼成によって、Cとして数%のメチル基を保持することができる。この場合における上記メチル基の含有量については、当該メチル(CH)基からもたらされるC量として25%以下であることが望ましい。
【0019】
さらに、当該シリカ材料の表面には、微細な細孔が存在しており、この細孔の径、容積は、製造条件により制御することができ、適用ニーズに応じて調整することができる。
このような細孔の分布については、平均細孔径が0.7nm以下の範囲にシャープなピークを持つ分布をとることが可能であり、例えば400℃の焼成工程を経て得られたシリカ材料には、平均細孔径0.6nmにピークを持つ細孔分布を有することが確認されている。
この細孔分布について、具体的には、焼成操作によって制御することができ、焼成温度を高めることによって、メチル基が除去されると同時に、細孔径は小さくなり、メチル基がほとんど除去される700℃程度の焼成によって細孔も消失する。
【0020】
本発明のシリカ材料の比表面積についても、焼成することによって制御することができ、焼成温度に応じて数m/g〜400m/g程度の値とすることができる。
例えば、当該シリカ材料を触媒担体として利用する場合における適正な比表面積の値は、20〜100m/g程度であって、このような比表面積とするための焼成温度は480〜600℃である。
【0021】
本発明の薄膜シリカ材料は、有機ケイ素ハロゲン化物を出発原料として製造することができ、鎖長が異なる少なくとも2種類のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物が用いられ、水/有機溶剤(Water/Oil、以下「W/O」と略記することがある)型エマルションの調製工程と、その後の加水分解による重縮合工程を含む。そして、より長い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加してエマルションを形成した後、より短い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加して加水分解による重縮合が行われる。
【0022】
すなわち、本発明の薄膜シリカ材料は、図1に示すような要領によって製造することができる。
ここで、本発明によるシリカ材料の製法は、従来の多孔質中空粒子の製法と類似の工程を含むが、有機テンプレートは使用せず、Water/Oilモル比(W/O比)、及び乳化剤として有機塩化ケイ素化合物(オルガノクロロシラン、以下「OCS」と略記することがある)の添加量条件が異なる。
【0023】
オルガノクロロシランの添加量は、水/OCSモル比をパラメーターとして、特定の範囲に制御することが重要であり、これにより、上記のような特殊な形態のシリカを形成することができる。
【0024】
本発明の薄膜シリカの製造方法においては、乳化剤として鎖長の違う少なくとも2種類のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を用いることを特徴とするが、まず、油中水(W/O)型エマルションを調製する。ここでは、オクチル基のような長鎖アルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加して、超音波を与えながら撹拌することによって、分散性の良いエマルションを得ることができる。
次いで、鎖長の短いアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物、典型的にはメチルトリクロロシランを加えて、再び良く撹拌する。この工程で、エマルションが取り込んだ水粒子によって加水分解を受け、重縮合し、球体のオルガノポリシロキサンの前駆体を形成する。
【0025】
その後、洗浄、乾燥、焼成の工程を経て、典型的には半球状に湾曲状した二重薄膜構造をなすシリカ材料が得られる。
このとき、油中水(W/O)型エマルション調製の工程においては、有機溶剤(Oil)としてC6以上の炭化水素を用いることが好ましい。C5以下の油(炭化水素)は低沸点のため、揮発しやすく、作業の管理が難しい。また、出発原料である有機塩化ケイ素化合物との馴染みも重要であり、該ケイ素化合物のもつアルキル基と近い物性を有する油を用いることで、良好なエマルションが形成できる。
【0026】
上記エマルションにおけるWater/Oilモル比(W/O比)については、0.07〜0.40の範囲とすることが望ましい。
このとき、当該モル比が0.07未満では、水が少なすぎて、製造の歩留まりが悪くなり、実用的ではない。一方、0.40を超える場合には、水粒子の密度が高くなるため、凝集が起こりやすくなって適正な形態のシリカが調製できなくなる。
【0027】
また、有機塩化ケイ素化合物(OCS)の添加量としては、水/OCSモル比で、3.6を超え、91.0以下の範囲とすることが望ましい。
当該モル比が3.6以下の場合には、シリカの膜厚が大きくなり、球体シリカが形成されてしまい、逆に、91.0を超えた場合には、シリカ源が不足し、形態を成さないアモルファス状のポリオルガノシロキサン粉末となってしまうことがある。
【0028】
本発明の製造方法においては、この水と、乳化剤ともなる有機塩化ケイ素化合物(OCS)との比率を制御することが極めて重要となる。
つまり、一旦、ポリオルガノシロキサンの薄膜から成る中空球体を前駆体として形成させておき、焼成過程において中空部内の水を除去することによって、丁度ボールから空気を抜く要領で中空球体が潰れ、半球状の二重構造を備えたシリカ材料となるものと考えられる。
【0029】
本発明の製造方法においては、鎖長の短い有機塩化ケイ素化合物として、メチルトリクロロシラン(CHSiCl、以下「MTCS」と略記することがある)を用いることが望ましく、この添加量は、メチル基の導入量、シリカ殻の強度を左右することから、重要なパラメーターである。
なお、鎖長の短いOCSとして、上記のメチルトリクロロシランを用いる場合、その添加量としては、水/MTCSモル比で、4.7〜91.0、さらには11.5〜69.2の範囲とすることが望ましい。また、鎖長の長いOCSとしては、例えばオクチルトリクロロシラン(C17SiCl、以下「OTCS」と略記することがある)を用いることができるが、この場合には、水/OTCSモル比で、3.6〜71.0、さらには8.9〜54.0の範囲とすることが望ましい。
【0030】
このように、本発明の薄膜シリカ材料は、ポリオルガノシロキサンの薄膜から成る中空球状の前駆体を焼成することにより、中空部内の水を排除して薄膜同士を密着させ、もってカップ状あるいは皿状に湾曲した二重構造にしたものであり、当該シリカ材料の最大外径面はほぼ円形となる。したがって、本発明の薄膜シリカ材料の「直径」とは、この外径を意味するものとする。
また、「膜厚」とは、薄膜が密着することによって二重構造を形成している一方の薄膜の厚さを意味する。したがって、当該薄膜シリカ材料の肉厚としては、上記膜厚の2倍以上となる。
【0031】
そして、前駆体としてのポリオルガノシロキサンは、焼成が進むにしたがって、細孔や炭化水素基(メチル基)が除去される結果、最終的にシリカ(SiO)となる。
したがって、本発明の「シリカ材料」は、厳密な意味で「シリカ」とは必ずしも言えず、特にメチル基を備えたものについては、ポリメチルシロキサンとシリカとの中間状態のものも含まれることになる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔実施例1〕
イオン交換水7.5mL、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)500mLを混合し、よく撹拌することによって油中に水を分散させた。
そこに、オクチルトリクロロシラン(OTCS、C17SiCl)5.8を添加して、超音波撹拌することにより、油中水(W/O)エマルションを調製した。さらに、メチルトリクロロシラン(MTCS)2.7を添加して、よく撹拌した後、ろ過、洗浄、乾燥し、大気中400℃で3時間焼成することによって、実施例1の薄膜シリカ材料を得た。得られたシリカ材料の(透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図2に示す。
【0034】
当該シリカ材料は、直径1μm程度のカップ状半球体をなしており、膜厚十数nmの二重薄膜構造を有していることがわかる。二重構造であるために、このような薄膜であっても強固であり、実用的な強度を備えたものとなっている。
なお、上記製造方法において、W/O比は0.14、水/OTCSモル比は17.8、水/MTCSモル比は23.1である。
【0035】
〔実施例2〕
イオン交換水とイソオクタンの量を実施例1と同一とし、オクチルトリクロロシランを11.6g、メチルトリクロロシランを5.4gとしたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって実施例2の薄膜シリカ材料を得た。なお、このときの水/OTCSモル比は8.9、水/MTCSモル比は11.5である。
【0036】
〔実施例3〕
イオン交換水及びイソオクタンの量を実施例1と同一とし、オクチルトリクロロシランを1.93g、メチルトリクロロシランを0.9gとしたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって実施例3の薄膜シリカ材料を得た。なお、このときの水/OTCSモル比は53.5、水/MTCSモル比は69.2である。
【0037】
〔実施例4〕
イソオクタン量を1000mLとした以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって実施例4の薄膜シリカ材料を得た。なお、このときのW/O比は0.07である。
【0038】
〔実施例5〕
イソオクタン量を180mLとしたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって実施例5の薄膜シリカ材料を得た。なお、このときのW/O比は0.38である。
【0039】
〔実施例6〕
トルエン500mLと、イオン交換水7.0mLを混合し、オクチルトリクロロシランを4.0g、メチルトリクロロシランを1.9g用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返すことによって実施例6の薄膜シリカ材料を得た。なお、このときのW/O比は0.08、水/OTCSモル比は24.1、水/MTCSモル比は30.6である。
【0040】
〔比較例1〕
イオン交換水とイソオクタンの量は実施例1と同一とし、オクチルトリクロロシランを29g、メチルトリクロロシランを13.5gとしたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返したが、この場合には、焼成後も球体を保ち、湾曲状をなす二重構造の薄膜シリカ材料は得られなかった。なお、このときの水/OTCSモル比は3.6、水/MTCSモル比は4.6である。
【0041】
〔比較例2〕
イオン交換水とイソオクタンの量は実施例1と同一とし、オクチルトリクロロシランを1.45g、メチルトリクロロシランを0.68gとしたこと以外は実施例1と同様の操作を繰り返したが、この場合には、薄膜シリカの欠片が得られただけで、特定の形態を有するシリカ材料は得られなかった。なお、このときの水/OTCSモル比は71.2、水/MTCSモル比は91.6である。
【0042】
〔比較例3〕
イソオクタン量を125mLとした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返したが、この場合には、適切なエマルションが形成されず、シリカの凝集体が得られたに過ぎなかった。なお、このときのW/Oモル比は0.55である。
【0043】
上記した実施例及び比較例におけるシリカ粉末の調製条件と共に、得られた薄膜シリカ材料の平均径及び平均膜厚を表1に示す。なお、これらの数値は、TEMおよびSEM観察によって求めた代表値である。
【0044】
【表1】

【0045】
本発明の製造方法においては、油中水(W/O)エマルションの形成にあたり、その形成メカニズムからも、W/Oモル比、有機塩化ケイ素化合物の添加量を規定する水/OCSモル比が極めて重要であることが分かる。
有機塩化ケイ素化合物(OCS)の添加量としては、水/OCSモル比が3.6以下の場合には、シリカ膜が厚くなり、球体シリカが形成されてしまう。逆に、水/OCSモル比が71.0を超えた場合には、シリカ源が不足となり、明確な形態を成さないアモルファス状のポリオルガノシロキサン粉末となる。
【0046】
次に、上記実施例1で得られたシリカ材料をさらに高い種々の温度で焼成し、比表面積や細孔容積、メチル基含有量を測定し、焼成温度と比表面積及び細孔容積の関係を図3に示す。また、焼成温度とメチル基の含有量(C量)の関係を図4に示す。
焼成温度を高めると、比表面積、細孔容積は低下する。このとき、表面のメチル基が分解・脱離するが、600℃焼成でも、Cとしての質量基準で3%のメチル基が残っており、比較的高温でもメチル基の機能を活かすことができることが確認された。
【0047】
図5には、上記実施例1により得られた薄膜シリカ材料の400℃3時間焼成状態における細孔分布を示す。この場合は、平均細孔径のピークが0.6nmに位置しているが、この細孔特性も焼成条件により変化するため、焼成温度の制御により、用途に応じた種々の細孔特性を有するシリカ材料を得ることができる。
【0048】
以上のように、本発明の薄膜シリカ材料は、その特殊な形態を有していること、表面有機基(メチル基)、及び細孔特性の調整によって、親水/疎水性、サイズ選択性が変えられることから、多方面への応用が可能な多機能性材料と言うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率を持つ湾曲状二重構造を有し、膜厚が10〜100nmであることを特徴とする薄膜シリカ材料。
【請求項2】
直径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜シリカ材料。
【請求項3】
メチル基を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜シリカ材料。
【請求項4】
上記メチル基に由来するCの含有量が25質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜シリカ材料。
【請求項5】
表面に細孔を備え、平均細孔径のピークが2.5nm以下である細孔分布を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の薄膜シリカ材料。
【請求項6】
有機ケイ素ハロゲン化物を出発原料とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の薄膜シリカ材料の製造方法であって、
鎖長が異なる少なくとも2種類のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を用い、水/有機溶剤(W/O)型エマルションの調製工程と、その後の加水分解による重縮合工程を含み、
より長い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加してエマルションを形成した後、より短い鎖のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物を添加して加水分解による重縮合を行うことを特徴とする薄膜シリカ材料の製造方法。
【請求項7】
上記水/有機溶剤(W/O)型エマルションの調製工程において、有機溶剤としてC6以上の炭化水素を用い、水/有機溶剤のモル比(W/Oモル比)を0.07〜0.40の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の薄膜シリカ材料の製造方法。
【請求項8】
鎖長が異なる少なくとも2種類のアルキル基を有する有機塩化ケイ素化合物の添加量が、水/有機塩化ケイ素化合物のモル比で3.6を超え91.0以下とすることを特徴とする請求項6又は7に記載の薄膜シリカ材料の製造方法。
【請求項9】
上記有機塩化ケイ素化合物として、少なくともメチルトリクロロシランを用いることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つの項に記載の薄膜シリカ材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−187561(P2012−187561A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55755(P2011−55755)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:触媒学会 刊行物名:第106回触媒討論会 討論会A予稿集 発行年月日:平成22年9月15日発行
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】