説明

薄膜トランジスタ、アクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイ、及びアクティブマトリクス駆動表示装置

【課題】オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスにより提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタ1は、絶縁基板2、ゲート電極3、ゲート絶縁膜4、下層の半導体層5、ソース電極6、ドレイン電極7、上層の半導体層8からなっている。特に特徴的な構造として、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタに関し、さらに詳しくは、有機半導体分子の集合体で構成された半導体膜を用いる薄膜トランジスタであって、特に半導体層が少なくとも2層以上の層構成を有する薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化の進展に伴い、紙に代わる薄くて軽い電子ペーパーや、商品1つ1つを瞬時に識別可能なIDタグ等の開発が注目されている。現行では、これらのデバイスにアモルファスシリコンa−Siや多結晶シリコンp−Siを半導体に用いた薄膜トランジスタTFTをスイッチング素子として使用している。しかし、これらのシリコン系半導体を用いた薄膜トランジスタを作製するには、高価なプラズマ化学気相成長CVD装置やスパッタリング装置等が必要なために製造コストがかかるうえに、真空プロセス、フォトリソグラフィー、加工等のプロセスをいくつも経るため、スループットが低いという問題がある。さらに、既存のシリコン薄膜トランジスタでは、外部の衝撃によって容易に砕け、また、300℃以上の高温工程によって生産されるため、プラスチック基板を使用できないという問題点がある。このため、印刷工程のような塗布プロセスにより形成が可能で、安価に製品を提供することができる有機材料を半導体層に用いた有機薄膜トランジスタが注目されている。
【0003】
一般的な有機薄膜トランジスタは、基板、ゲート電極、絶縁膜、ドレイン電極、ソース電極、および有機半導体膜から構成される。ゲート電極への印加電圧により、絶縁膜と有機半導体膜の界面に蓄積されるキャリア量を過剰状態から不足状態に変調して、ドレイン電極とソース電極の間を流れる電流量を変化させてスイッチング動作を行う。有機半導体膜は低分子または高分子からなる有機半導体分子の集合体からなり、低分子系としては、ペンタセン、チオフェンオリゴマーに代表されるアセン系材料、高分子系としては、ポリチオフェン系でポリ−3、ヘキシルチオフェンP3HT、ポリフルオレン系ではフルオレン−バイチオフェンF8T2の共重合体、またポリフェニレンビニレンPPVなどが知られている。
有機薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス・ディスプレイは、プラスチック基板上に作製できるため、高画質、軽量、フレキシブル曲がる、省スペースといった点で、最近、大きな注日を集めている。
【0004】
従来の有機薄膜トランジスタは、基板上にゲート電極を設け、その上にゲート絶縁膜を形成し、その上にソース電極とドレイン電極を互いに離して設け、さらに、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜上に有機半導体層を積層して構成され、ソース電極とドレイン電極との間の横方向にチャネルが形成される。
前述したように、有機薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極との間に電圧ソース−ドレイン間電圧を印加すると共に、ゲート電極に印加する電圧ゲート電圧:Vg を変化させると、ゲート電圧に依存して有機半導体層とゲート絶縁膜との界面における電荷量が変化し、ソース電極とドレイン電極との間における有機半導体層の部分チャネルを流れる電流ソース−ドレイン電流を変化させることができる。このようにして、有機薄膜トランジスタでは、ゲート電圧を制御することにより、ドレイン電極から得られるドレイン電流Idを制御することができる。
【0005】
ここで、有機薄膜トランジスタのゲインgm、即ち、ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化dId/dVgは、ソース−ドレイン電流が流れるチャネルが長方形であるとすると、
gm=W/L・ε0ε/d・μ・Vg−VT ・・・(1)
(1)式のように表される。ただし、Wは、チャネル幅であり、Lは、チャネル長であり、ε0は、真空誘電率であり、εは、絶縁膜の比誘電率であり、dは、ゲート絶縁膜の厚さであり、μは、キャリア移動度であり、VTは、閾値電圧である。(1)式によれば、チャネル幅Wとチャネル長Lの比W/Lが大きいほど、有機薄膜トランジスタのゲインは大きくなり、また、このトランジスタは高速になる。また、有機半導体のキャリア移動度が大きいほど、有機薄膜トランジスタのゲインも大きくなるため、キャリア移動度の大きい有機半導体層を形成することが望ましい。
これらのことを鑑みると、有機薄膜トランジスタのチャネル長Lを精緻に規定できる、優れたソフトリソグラィー技術の開発が必須となる。
【0006】
マイクロコンタクトプリント法(以下、μCPと呼ぶ)は、横方向の寸法がμm〜サブμmの有機物単分子層のパターンを形成する技術であり、特許文献2に示される装置を用いて研究が進められている。μCPはエラストマーの「スタンプ」を使用して印刷することによりパターンを形成する。このスタンプは、フォトリソグラフィー等の技術により作製した母型を用いて、シリコーン・エラストマーを成形moldingすることにより製作する。これまでのμCPの実例と適用には、シリコーン・エラストマーとしてポリジメチルシロキサンPDMSエラストマーを金型中で重合させてパターン形成したスタンプを使用している。硬化後、PDMSスタンプは、金型のパターンのネガティブ像を保持し、一連のインク付けおよび印刷に使用することができる。つまり、スタンプは正確なパターンを有し、インク付け、印刷、および表面たとえば金型からの剥離の間安定でなければならないが、塗布する基板に密着するのに十分な柔らかさがなければならない。さらに、スタンプは製作および操作が容易でなければならない。スタンプの材料としてのシリコーン・エラストマーは、上記の必要条件を満たしている。
【0007】
従来技術として特許文献1には、印刷法により形成されたソース・ドレイン電極を有し、有機半導体層の膜厚を50nm以上500nm以下と厚くすることでソース・ドレイン電極との接触面積を大きくし、接触抵抗を下げ、十分なオン電流を得られ、且つ高いオンオフ比が得られる有機薄膜トランジスタについて開示されている。
また、特許文献2には、ナノ構造を構築するための、μCP法であって、並置された第1ステーション並びに第2ステーション、それらの間を移動する移動体、及び、いずれか一方のステーションに配置可能な光源装置、を備えており、いずれか一方のステーションにて光源装置を用いて試料を露光し、スタンプのマスターを作製し、移動体にマスターから複製したスタンプを配置し、他方のステーションにてスタンプをスタンプ台に接離させることによりインクを補充し、いずれか一方のステーションにて、そこに配置された試料に対してスタンプを接離させることにより、スタンプの持つパターンを試料に転写可能としたμCP法について開示されている。
【特許文献1】特開2007−234974公報
【特許文献2】特開2005−129791公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン電極の配置によりボトムコンタクト型とトップコンタクト型に分かれる。一般的に印刷法により形成されたソース・ドレイン電極は、フォトリソグラフィーにより形成された金などのソース・ドレイン電極に比べて有機半導体との接触抵抗が大きく、十分なオン電流が得られないためにオンオフ比は小さくなる。
特許文献1に開示されている従来技術は、ボトムコンタクト型薄膜トランジスタの有機半導体層の膜厚を50nm以上500nm以下と厚くすることでソース・ドレイン電極との接触面積を大きくしているが、上述したように、ゲート電圧に依存して有機半導体層とゲート絶縁膜との界面における電荷量を変化させ、ソース電極とドレイン電極との間における有機半導体層の部分チャネルを流れる電流ソース−ドレイン電流を変化させるトランジスタの性質上、実効的なチャネル領域を広げるには不十分である。また、上記課題を解決するためにボトムコンタクト型よりもソース・ドレイン電極と半導体の接触面積を大きくとれるトップコンタクト型の薄膜トランジスタの研究が進められているが、トップコンタクト型の接触面積でも十分とは言えない。さらにトップコンタクト型では、半導体層の上にソース・ドレイン電極を設けることになるが、μCP法やフレキソ印刷等の印刷プロセスで形成する場合、半導体層を厚くすると、半導体層の段差のためソースまたはドレイン電極線が欠線する不具合があった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、絶縁基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極、半導体層を設けた薄膜トランジスタにおいて、半導体層が少なくとも2層以上の層構成を有することで、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスにより提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、絶縁基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極、及び半導体層を積層した薄膜トランジスタにおいて、前記半導体層を少なくとも2層以上の層構成としたことを特徴とする。
請求項2は、前記2層以上の層構成を有する半導体層のうち、上層の半導体層の肉厚が下層の半導体層よりも厚いことを特徴とする。
請求項3は、前記絶縁基板上に前記下層の半導体層、前記ソース・ドレイン電極、及び前記上層の半導体層が順次積層されてなることを特徴とする。
請求項4は、前記2層以上の層構成を有する半導体層が同一材料からなることを特徴とする。
請求項5は、前記半導体層及び前記ソース・ドレイン電極がマイクロコンタクトプリント法により構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項6は、前記ソース・ドレイン電極が金属材料で構成されることを特徴とする。
請求項7は、前記半導体層が有機半導体で構成されることを特徴とする。
請求項8は、前記ソース・ドレイン電極と前記上層の半導体層との界面に自己組織化単分子膜を設けることを特徴とする。
請求項9は、複数のゲート配線、複数の信号配線、絶縁膜、保護膜、及び画素電極を有し、前記複数のゲート配線と前記複数の信号配線をマトリクス状に配置し、前記マトリクスの交差部に請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタが配置され、前記ゲート配線とゲート電極が接続され、前記信号配線とソース電極が接続され、前記画素電極とドレイン電極が接続されることを特徴とする。
請求項10は、請求項9に記載のアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを用いて表示素子を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極、半導体層を設けた薄膜トランジスタにおいて、半導体層が少なくとも2層以上の層構成を有することで、ソース電極及びドレイン電極と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
また、2層以上の層構成を有する半導体層のうち、上層の半導体層が下層の半導体層より厚く形成されていることで、ソース電極及びドレイン電極と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。さらに、下層の半導体層の厚さが上層の半導体層と比較して薄いため、下層の半導体層による段差を少なくすることができ、ソース電極及びドレイン電極の印刷精度を向上でき、ソースまたはドレイン電極線に欠線のない高品質な薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
また、下層の半導体層とソース・ドレイン電極と前記上層の半導体層が順次積層されてなることで、ソース電極及びドレイン電極と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
【0012】
また、2層以上の層構成を有する半導体層が同一材料からなることで、製造を簡便にでき、トランジスタ駆動を安定化させ、バラツキの少なく、低バラツキでオン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
また、半導体層及び前記ソース・ドレイン電極がμCP法により形成されることで、製造を簡便にでき、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。さらに、精緻な解像度を有した前記半導体層及び前記ソース・ドレイン電極形成を同一装置上で実施でき、低コストで薄膜トランジスタを製造することができる。
また、ソース・ドレイン電極が金属材料で形成されることで、電極部の比抵抗を小さくすることができ、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
また、半導体層が有機半導体で形成されることで、インク化溶媒への溶解性を確保が可能になり、印刷技術により半導体層を形成でき、オン電流が大きな薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
【0013】
また、ソース・ドレイン電極と前記上層の半導体層の界面に自己組織化単分子膜を設けることで、キャリア注入の電位障壁となる界面をショットキーからオーミック接触に変更できるため、動作周波数が大きく、且つ、低消費電力な薄膜トランジスタを安価な印刷プロセスで製造することができる。
また、複数のゲート配線、絶縁膜、ゲート配線に対してマトリクス状に交差した複数の信号配線、保護膜、画素電極を有し、複数のゲート配線と信号配線の交差部に本発明の薄膜トランジスタが配置され、ゲート配線とゲート電極が接続され、信号配線とソース電極が接続され、画素電極とドレイン電極が接続されることで、オン電流が大きく、且つ、画素バラツキの小さいアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを得ることができる。
また、本発明のアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを用いて表示素子を駆動することで、画素バラツキの小さいアクティブマトリクス駆動表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。薄膜トランジスタ1は、絶縁基板2、ゲート電極3、ゲート絶縁膜4、下層の半導体層5、ソース電極6、ドレイン電極7、上層の半導体層8からなっている。特に特徴的な構造として、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしている。
ここで、薄膜トランジスタ1の形状寸法について記す。
ゲート電極幅:5μm、ゲート電極厚さ:100nm、ゲート絶縁膜厚さ:500nm、下層の半導体層厚さ:30nm、上層の半導体層厚さ:200nm、ソース電極厚さ:100nm、ドレイン電極厚さ:100nm、チャネル長:5μmである。
【0015】
次に、図2を用いて薄膜トランジスタ1の製造工程について説明する。
絶縁基板2として、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムを用い、その上に銀ナノインクをμCP法で印刷し、150℃・1時間で焼成した。形成されたゲート電極3は厚さ100nmであった。次に、厚さ500nmのポリイミドをスピンコートで成膜し、180℃・1時間でイミド化し、次に、ゲート絶縁膜4上に下層の半導体層5としてポリチオフェン系のポリ−3、ヘキシルチオフェンP3HTをμCP法で印刷し、窒素雰囲気下において150℃・30分でアニールした。アニール後の下層の半導体層5厚さは30nmであった。次に上述した銀ナノインクをμCP法で印刷し、150℃・1時間で焼成し、厚さ100nmのソース電極6及びドレイン電極7を形成した(図2(b))。
【0016】
次に、μCP法により、上述したポリチオフェン系のポリ−3、ヘキシルチオフェンP3HTを印刷し、窒素雰囲気下において150℃・30分でアニールすることで厚さ200nmで上層の半導体層8を形成して、薄膜トランジスタ1を製造した(図2(c))。図2(a)のようにスタンプ9は、レジストパターンをPDMSで反転コピーする方法で製造した。
本実施形態の薄膜トランジスタ1は、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしていることで、ソース電極6及びドレイン電極7と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流の大きな薄膜トランジスタを製造することができる。本実施形態の薄膜トランジスタ1はボトム及びトップにコンタクトを得られる構造となっている。
【0017】
ここで、比較例1として下層の半導体層5を設けない従来のボトムコンタクト型薄膜トランジスタ10の概略図を図3に、比較例2として上層の半導体層8を設けない従来のトップコンタクト型薄膜トランジスタ11の概略図を図4に示す。比較例1と本実施形態のドレイン電流Id−ゲート電圧Vg依存性を比較すると、比較例1では、上層の半導体層8との界面の接触抵抗により、ソース電極5とドレイン電極6の間を流れる電流が制限され、その結果、オン電流が小さくなる。比較例2でも比較例1よりは接触面積を大きくとれているが、やはり不十分であり、オン電流が小さい。
比較例1及び2に対して、本実施形態では、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしていることで、ソース電極6及びドレイン電極7と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流の大きな薄膜トランジスタを製造することができている。
本実施形態では、2層以上の層構成を有する半導体層のうち、上層の半導体層8が200nmと下層の半導体層530nmより厚く形成されていることで、下層の半導体層5による段差を少なくすることができ、ソース電極6及びドレイン電極7の印刷精度を向上でき、且つ、ソース電極6及びドレイン電極7と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流の大きな薄膜トランジスタを製造することができている。
【0018】
また、本実施形態では、2層以上の層構成を有する半導体層が同一材料からなることで、トランジスタ駆動を安定化させ、低バラツキでオン電流の大きな薄膜トランジスタを製造することができている。
また、本実施形態では、絶縁基板2に、ポリカーボネートフィルムを用いたが、絶縁性であり、プロセス温度に対する耐熱を有する材料であれば広い範囲から選択することが可能である。具体的には、ポリイミド膜、ポリエステル膜、ポリエチレン膜、ポリフェニルレンスルフィド膜、ポリパラキシレン膜等の絶縁プラスチック、及びこれら無機材料と絶縁プラスチックとを組み合わせたハイブリッド基板等が使用可能である。
また、本実施形態では、ゲート電極3に銀を用いたが、タンタル、アルミニウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、クロム、モリブデン、ニッケル等や、これらの金属を用いた合金、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ−3、4−エチレンジオキシチオフェンPEDOT等の導電性高分子が使用可能である。また、本実施形態では、ゲート電極3は、μCP法により形成したが、インクジェットやその他の印刷法を用いることも可能である。
【0019】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜4にポリイミドを用いたが、ポリビニルフェノールPVP、ポリビニルアルコールPVA、酸化ケイ素等を塗布し、100℃〜200℃で焼成しても構わない。
また、本実施形態では、ソース電極6、ドレイン電極7に銀を用いたが、ゲート電極と同様、金、銀、銅、白金、パラジウム、クロム、モリブデン等であっても構わない。但し、有機半導体とのショットキー障壁を減らすため、仕事関数が4.5eV程度の材料、例えば、上述した材料の他に、ITO、IZOやPEDOT等が望ましい。また、μCP法により形成したが、インクジェットやその他の印刷法を用いても構わない。
また、本実施形態では、下層の半導体層5及び上層の半導体層8にポリ−3、ヘキシルチオフェンP3HTを用いたが、低分子系としては、ペンタセン、チオフェンオリゴマーに代表されるアセン系材料、高分子系としては、ポリフルオレン系ではフルオレン−バイチオフェンF8T2の共重合体、またポリフェニレンビニレンPPV等を用いることもできる。
【0020】
図5は本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタをアクティブ素子に用いたアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイの平面図であり、図6に回路を含んだ概略図を示す。
アクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイ19は、絶縁基板2上に、水平方向にm本のゲート走査配線12が配置され、垂直方向にn本の信号配線13が配置され、マトリクス状に配置された前記の交差部に第1の実施形態の薄膜トランジスタ1が配置され、各薄膜トランジスタのゲート電極3はゲート走査配線12に接続され、ソース電極6は信号配線13に接続され、ドレイン電極7はパッシベーション膜層間絶縁膜14に開口されたビアホール15を介して画素電極16と接続される。ゲート走査配線12はゲート電極3と併せて形成され、信号配線13はソース電極6、ドレイン電極7と併せて形成される。パッシベーション膜14のビアホール15は、ドレイン電極7以外に、各ゲート走査配線12の端子部17と各信号配線13の端子部18にも開口する。
【0021】
図7は本実施形態のアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを用いた電気泳動表示装置の主要部品構成を示す断面図である。アクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイ19のゲート走査配線の端子部17には、ゲート走査回路20が、信号配線の端子部18には信号回路21が接続され、さらに両回路はコントロール回路22に接続される。
表示部は、画素電極16に対向して設けられた透明電極23が配置されている。すなわち、透明電極23は、各画素電極16に対向する対向電極を構成し、この透明電極23と画素電極16の間に電気泳動分散液層24を有し、電気泳動分散液層24に分散した光反射用電気泳動粒子25と光吸収用電気泳動粒子26からなっている。
透明電極23は、光透過性を有するもの、好ましくは実質的に無色透明、着色透明または半透明なものである。これにより、前述した電気泳動分散液層24中における光反射用電気泳動粒子25と光吸収用電気泳動粒子26の状態を、すなわち、表示された所望の情報を、目視により容易に認識することができる。
【0022】
本実施形態の電気泳動表示装置は以下のように動作する。ゲート走査回路20から出力される走査電圧が印加されたゲート走査配線12/ゲート電極3に接続された薄膜トランジスタ1が動作して、この薄膜トランジスタ1に接続された画素電極16に、走査電圧と同期して信号回路21から供給される信号電圧が加わり、電気泳動粒子がいわゆる線順次駆動されて、各画素の反射光量が変化するかたちで表示装置が動作する。この表示装置は携帯電話、デジタルカメラ、フラットテレビ、ノートPC等のフラットパネルディスプレイのほか、電子ペーパー等のフレキスブルディスプレイ等にも適用できる。
画素電極16の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属、または、これらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
透明電極23は、電気泳動分散液層24に電圧を印加する他方の電極として機能するものであり、フィルム状膜状をなしている。
透明電極23の構成材料としては、例えば、インジウムティンオキサイドITO、フッ素ドープした酸化スズFTO、酸化インジウムIO、酸化スズSnO2 のような導電性金属酸化物の他、ポリアセチレンのような導電性樹脂、導電性金属微粒子を含有する導電性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
電気泳動分散液層24としては、比較的高い絶縁性を有する有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1、2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シリコン系オイル、フッ素系オイル、オリーブ油等の種々の鉱物油および植物油類、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
電気泳動粒子は、光反射用電気泳動粒子25として酸化チタンを、光吸収用電気泳動粒子26としてカーボンブラックを使用したが、有機または無機の粒子、または、これらを含む複合体を用いることができる。この粒子としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色粒子、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色粒子があげられる。さらに、カラー化をするためには、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系粒子、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色粒子、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色粒子、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色粒子、フタロシアニングリーン等の緑色粒子等が挙げられる。
本実施形態では、電気泳動分散液層24として用いているが、マイクロカプセス内に分散液、電気泳動粒子を内包する方式であっても本発明は適用可能である。
本実施形態はモノクロディスプレイであるが、例えば、カラーフィルタ等を介することでカラーディスプレイとして使用することも可能である。また、本発明の薄膜トランジスタは、十分なオン電流を得られ、且つ高いオンオフ比が得られ、トランジスタ特性が非常に良好であるので、電子ペーパーやRFIDタグ等、各種用途に有効である。
【0024】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。薄膜トランジスタ27は、絶縁基板2、ゲート電極3、ゲート絶縁膜4、下層の半導体層5、ソース電極6、ドレイン電極7、自己組織化単分子膜28、上層の半導体層8からなっている。特に特徴的な構造として、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしている。自己組織化単分子膜28は、図面では分かりやすくするため実際よりも厚く示している。
ここで、薄膜トランジスタ27の形状寸法について記す。
ゲート電極幅:10μm、ゲート電極厚さ:50nm、ゲート絶縁膜厚さ:200nm、下層の半導体層厚さ:50nm、上層の半導体層厚さ:150nm、ソース・ドレイン電極厚さ:80nm、自己組織化単分子膜厚さ:1.5nm、チャネル長:10μmである。
【0025】
次に、薄膜トランジスタ27の製造工程について説明する。
絶縁基板2として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その上に厚さ50nmの銅ナノインクをフレキソ印刷で形成し、ゲート電極3を形成した。次に、ポリビニルフェノールをスリットコートし、厚さ200nmのゲート絶縁膜4を作製した。次に、溶解性ペンタセンをμCP法により印刷形成して、厚さ50nmの下層の半導体層5を、次に銀ナノインクをμCP法によりパターニングし、ソース電極6及びドレイン電極7を厚さ80nmで形成した。次に、チオケトンを、ソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8との界面となる箇所に、自己組織化単分子膜28を形成した。最後に厚さ150nmの溶解性ペンタセンをμCP法により形成して、上層の半導体層8を作製して薄膜トランジスタ27を製造した。
【0026】
本実施形態の薄膜トランジスタ27は、半導体層が2層構成であり、下層の半導体層5とソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8が順次積層された構造をしていることで、ソース電極6及びドレイン電極7と半導体層の接触面積を大きくすることができ、オン電流の大きな薄膜トランジスタを製造することができる。さらに、ソース電極6及びドレイン電極7と上層の半導体層8との界面となる箇所に、自己組織化単分子膜28を形成したことで、キャリア注入の電位障壁となる界面をショットキーからオーミック接触に変更できるため、動作周波数が大きく、低消費電力な薄膜トランジスタを製造することができる。
自己組織化単分子膜としては、ソース電極6及びドレイン電極7の材料である銀との親和性の良いチオール系を用いることで均質な単分子膜が形成でき、さらに上層の半導体層8の材料であるペンタセンと親和性の良い上述したチオケトンの他、ヘキサデカンチオールなどのアルカンチオールを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【図2】薄膜トランジスタ1の製造工程について説明する図である。
【図3】従来のボトムコンタクト型薄膜トランジスタ10の概略図である。
【図4】従来のトップコンタクト型薄膜トランジスタ11の概略図である。
【図5】第1の実施形態に係る薄膜トランジスタをアクティブ素子に用いたアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイの平面図である。
【図6】アクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイに回路を含んだ概略図である。
【図7】本実施形態のアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを用いた電気泳動表示装置の主要部品構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 薄膜トランジスタ、2 絶縁基板、3 ゲート電極、4 ゲート絶縁膜、5 下層の半導体層、6 ソース電極、7 ドレイン電極、8 上層の半導体層、9 スタンプ、10 比較例1のボトムコンタクト型薄膜トランジスタ、11 比較例2のトップコンタクト型薄膜トランジスタ、12 ゲート走査配線、13 信号配線、14 パッシベーション膜、15 ビアホール、16 画素電極、17 ゲート走査配線の端子部、18 信号配線の端子部、19 アクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイ、20 ゲート走査回路、21 信号回路、22 コントロール回路、23 透明電極、24 電気泳動分散液層、25 光反射用電気泳動粒子、26 光吸収用電気泳動粒子、27 第3の実施形態の薄膜トランジスタ、28 自己組織化単分子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極、及び半導体層を積層した薄膜トランジスタにおいて、前記半導体層を少なくとも2層以上の層構成としたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記2層以上の層構成を有する半導体層のうち、上層の半導体層の肉厚が下層の半導体層よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記絶縁基板上に前記下層の半導体層、前記ソース・ドレイン電極、及び前記上層の半導体層が順次積層されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記2層以上の層構成を有する半導体層が同一材料からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記半導体層及び前記ソース・ドレイン電極がマイクロコンタクトプリント法により構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記ソース・ドレイン電極が金属材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体層が有機半導体で構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記ソース・ドレイン電極と前記上層の半導体層との界面に自己組織化単分子膜を設けることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
複数のゲート配線、複数の信号配線、絶縁膜、保護膜、及び画素電極を有し、
前記複数のゲート配線と前記複数の信号配線をマトリクス状に配置し、
前記マトリクスの交差部に請求項1乃至4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタが配置され、前記ゲート配線とゲート電極が接続され、前記信号配線とソース電極が接続され、前記画素電極とドレイン電極が接続されることを特徴とするアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイ。
【請求項10】
請求項9に記載のアクティブマトリクス型薄膜トランジスタアレイを用いて表示素子を駆動することを特徴とするアクティブマトリクス駆動表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−67767(P2010−67767A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232175(P2008−232175)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】