薄膜トランジスタおよびその製造方法、電子機器
【課題】コンパクトでありながら、より安定した動作を行う薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】この薄膜トランジスタは、ゲート電極と、絶縁膜を介してゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、この有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、互いに離間して配置され、かつ、有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、絶縁性構造体を覆い、ソース電極と接続されると共にドレイン電極と分離された導電性材料層とを有する。
【解決手段】この薄膜トランジスタは、ゲート電極と、絶縁膜を介してゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、この有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、互いに離間して配置され、かつ、有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、絶縁性構造体を覆い、ソース電極と接続されると共にドレイン電極と分離された導電性材料層とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機半導体層を備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびにその薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置に代表される多くの電子機器にアクティブマトリクス駆動方式が導入されており、そのスイッチング(画像選択)を行うための素子として薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている。
【0003】
最近では、チャネル層として有機半導体層を用いた有機TFTが注目されている。この有機TFTでは、チャネル層を塗布法や印刷法により形成することができるため、低コスト化が可能である。また、蒸着法などよりも低い温度でチャネル層を形成できるため、低耐熱性かつフレキシブルなプラスチックフィルムなどに有機TFTを実装できるという利点を有する。
【0004】
このような有機TFTは、ソース電極およびドレイン電極の位置に対するゲート電極の位置によってトップゲート構造またはボトムゲート構造の2種類に分類される。また、有機半導体層とソース電極およびドレイン電極との位置関係から、トップコンタクト型またはボトムコンタクト型の2種類に分類される。これらのうち、ボトムゲート構造の有機TFTでは、トップコンタクト型のほうがボトムコンタクト型よりも熱などのストレスに起因する特性劣化が抑制されるので好ましいことが知られている。
【0005】
このトップコンタクト型ボトムゲート構造の有機TFTは、ゲート電極が埋設されたゲート絶縁膜の上に有機半導体層が形成され、さらに、その有機半導体層の上面の少なくとも一部を覆うようにソース電極およびドレイン電極が互いに離間して配置されたものである。このようなトップコンタクト型ボトムゲート構造の有機TFTを作製する方法として、例えば特許文献1に記載の方法が提案されている。特許文献1では、有機半導体層上にレジスト層を選択的に形成したのち全面的に電極材料を堆積する。その後、レジスト層を溶解させることで不要な電極材料をリフトオフさせ、所定位置にソース電極およびドレイン電極を形成するようにしている。ところが、リフトオフしたはずの電極材料がソース電極やドレイン電極などに再付着してしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本出願人は、有機半導体層上に逆テーパ状の構造体を形成することで、高精度のソース電極およびドレイン電極を形成する方法を既に提案している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−85200号公報
【特許文献2】特開2011−100831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の方法では、逆テーパ状の構造体の上に孤立した電極材料層が残存するので、その電極材料層の電位が問題となる場合が懸念される。すなわち、表示装置を駆動する際の信号線や走査線の電位の変化が生じると、それ応じて孤立した(フローティング状態の)電極材料層の電位も変化してしまう。その結果、バックチャネルの特性変動が生じ、有機TFTとしての安定した動作が損なわれてしまう可能性がある。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、コンパクトな構成でありながら、より安定した動作を行う薄膜トランジスタおよび電子機器を提供することにある。本開示の第2の目的は、上記のような薄膜トランジスタを効率的に製造する薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の薄膜トランジスタは、ゲート電極と、絶縁膜を介してゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、その有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、互いに離間して配置され、かつ、有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、絶縁性構造体を覆い、ソース電極と接続されると共にドレイン電極と分離された導電性材料層とを有するものである。また、本開示の電子機器は、上記した本開示の薄膜トランジスタを備えたものである。
【0011】
本開示の薄膜トランジスタおよび電子機器では、ソース電極が、有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体を覆う導電性材料層と接続されている。このため、導電性材料層がソース電極と等電位となり、安定化する。
【0012】
本開示の薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成する工程と、絶縁膜を介してゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、有機半導体層の上面の一部と接すると共に導電性材料層と一体化されたソース電極と、有機半導体層の上面の一部と接すると共に導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程とを含むものである。
【0013】
本開示の薄膜トランジスタの製造方法では、絶縁性構造体の一の端部がオーバーハング形状を有するようにしたので、その端部において導電膜が分離されてソース電極およびドレイン電極が一括形成される。絶縁性構造体を覆う導電性材料層は、ソース電極と一体化されるので、導電性材料層がソース電極と等電位となり、安定化する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の薄膜トランジスタおよび電子機器によれば、バックチャネルの特性が安定化するので、その安定駆動が実現される。また、本開示の薄膜トランジスタの製造方法によれば、そのような薄膜トランジスタを簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の一実施の形態としての薄膜トランジスタである有機TFTの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した有機TFTを上方から眺めた平面図である。
【図3】図1に示した有機TFTを製造するための製造方法における一工程を表す断面図である。
【図4】図3に続く一工程を表す断面図である。
【図5】図4に続く一工程を表す断面図である。
【図6】図5に続く一工程を表す断面図である。
【図7】図1に示した有機TFTにおける、導電層と有機半導体層との間のキャパシタンスを説明するための断面図である。
【図8】図1に示した絶縁構造体の端部における静電容量比と比誘電率の比との関係を表す特性図である。
【図9】薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した液晶表示装置の回路構成を表す図である。
【図11】薄膜トランジスタの適用例である有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示した有機EL表示装置の回路構成を表す図である。
【図13】薄膜トランジスタの適用例である電子ペーパー表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序に従って行う。
1.薄膜トランジスタ(有機TFT)およびその製造方法
2.薄膜トランジスタ(有機TFT)の適用例(電子機器)
2−1.液晶表示装置
2−2.有機EL表示装置
2−3.電子ペーパー表示装置
【0017】
<1.有機TFTおよびその製造方法>
[有機TFTの構成]
図1は、本開示の一実施形態としての薄膜トランジスタである有機TFTの断面構成を表している。また、図2は、図1に示した有機TFTを上方から眺めた平面構成を表している。この有機TFTは、ゲート電極2が有機半導体層4よりも下方に位置すると共にソース電極5およびドレイン電極6が有機半導体層4の上に重なっている、いわゆるトップコンタクト・ボトムゲート型である。
【0018】
有機TFTは、支持基板1の上に設けられたゲート電極2と、そのゲート電極2を覆うゲート絶縁膜3と、そのゲート絶縁膜3の上に設けられた有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6を有する。有機半導体層4は、ゲート絶縁膜層3を介してゲート電極2と対向して配置されており、その上には絶縁構造体8が設けられている。ソース電極5およびドレイン電極6は、絶縁構造体8を挟んで互いに離間して配置されており、それぞれの一部が有機半導体層4の上面4Sの一部(端部)と重なり合っている。すなわち、有機半導体層4の上面の一部は、ソース電極5およびドレイン電極6の一部とそれぞれ接している。
【0019】
絶縁構造体8は、有機半導体層4と反対側の上面8Sと、ソース電極5と対向する端面8T1と、ドレイン電極6と対向する端面8T2とを有する。絶縁構造体8は、その上面8Sから端面8T1にかけて導電層7によって覆われている。導電層7はソース電極5と接続される一方、ドレイン電極6とは分離されている。
【0020】
ここで、端面8T1は、有機半導体層4から離れるほどソース電極5からも遠ざかるように傾斜していることが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり絶縁構造体8を覆う導電層7の厚さのばらつきが低減され、この有機TFTの駆動時における導電層7の電位が安定化するからである。一方の端面8T2は、有機半導体層4から離れるほどドレイン電極6に近づくように傾斜していることが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり、絶縁構造体8を覆う導電層7と、ドレイン電極6との分離が生じやすくなるからである。さらに、絶縁構造体8は、ソース電極5およびドレイン電極6のいずれよりも大きな厚さを有することが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり、絶縁構造体8を覆う導電層7と、ドレイン電極6との分離が生じやすくなるからである。
【0021】
支持基板1は、例えばガラス、プラスチック材料または金属材料などからなる基板でもよいし、プラスチック材料または金属材料などからなるフィルムでもよいし、紙(一般紙)でもよい。プラスチック材料は、例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリエチルエーテルケトン(PEEK)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどである。なお、基体の表面には、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などの各種層が設けられていてもよい。
【0022】
ゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)またはポリスチレンスルホン酸(PSS)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極2は、上記した各種材料の層が2層以上積層されたものでもよく、そのような積層構造は、ゲート絶縁膜3、有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6においても採用可能である。
【0023】
ゲート絶縁膜3は、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリイミド、ポリメタクリル酸アクリレート、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0024】
有機半導体層3は、複数の有機半導体分子を含んでおり、例えば、以下で説明する低分子材料、溶解性低分子材料または高分子材料などの半導体材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。低分子材料は、一般的に溶媒に溶解しにくい材料であり、例えば、ペンタセン、アントラジチオフェン、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f]チエノ[3,2−b]チエノフェン、2,9−ジフェニル−ペリ−キサンテノキサンテンまたは2,9−ジナフチル−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン化合物、あるいは銅フタロシアニンなどである。溶解性低分子材料は、低分子材料を化学修飾などして溶解性を改善した材料であり、例えば、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、2,7−ジドデシル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンまたは2,9−ビス(p−エチルフェニル)−ペリ−キサンテノキサンテンなどである。高分子材料は、例えば、α−クウォーターチオフェン、ポリ−(β−ヘキシルチオフェン)またはポリ(2,5−ビス(3−ドデシル−5−(3−ドデシルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアソールなどである。
【0025】
この他、半導体材料は、例えば、以下の材料でもよい。テトラセン、アントラセン、2,9−ジメチルペンタセン、ルブレンまたはパーフルオロペンタセンなどのアセン類化合物である。α,ω−ジアルキルアントラジチオフェンなどのアントラジチオフェン類化合物である。2,9−ビス(p−プロピルフェニル)−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン類化合物である。2,6−ジ(2−ナフチル)ナフト[1,8−bc:5,4−b’c’]ジチオフェンなどのナフト[1,8−bc:5,4−b’c’]ジチオフェン類化合物である。2,6−ジフェニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンなどのベンゾジチオフェン類化合物である。2,7−ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンなどの[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン類化合物である。α−クウォーターセレノフェンなどのオリゴチオフェンおよびオリゴセレノフェン類化合物である。ポリ−(3,3’”−ジドデシルクオーターチオフェン)などのβ置換チオフェンポリマーおよびオリゴマー類化合物である。α,ω−ジヘキシルクウォーターチオフェンなどのα,ω置換チオフェンオリゴマー類化合物である。ビス(ベンゾジチオフェン)などの縮環チオフェンオリゴマー類化合物である。2,5−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)チオフェンなどのチオフェン−フェニレンオリゴマー類化合物である。5,5’−ビス−(7−ヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)−[2,2’]ビチオフェンなどのチオフェン−フルオレンオリゴマー類化合物である。6,6’−ジヘキシル−[2,2’]ビアントラセニルなどのチオフェン−アセンオリゴマー類化合物である。フタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンなどのフタロシアニン類化合物である。テトラベンゾポルフィリンなどのポルフィリン類化合物である。C60などのフラーレン類化合物である。
【0026】
導電層7、ソース電極5およびドレイン電極6は、いずれも、例えば上記したゲート電極2と同様の材料により形成可能である。導電層7、ソース電極5およびドレイン電極6は、全て同一材料によって構成されていることが望ましい。導電層7およびソース電極5は、例えば一括形成された連続層からなり、一体化されている。また、ソース電極5およびドレイン電極6は、有機半導体層4にオーミック接触していることが好ましい。
【0027】
絶縁構造体8は、例えばフォトレジストなどの絶縁性材料によって構成されている。
【0028】
この有機TFTでは、ソース電極5から有機半導体層4を経由してドレイン電極6へ電流が流れ、その流路に沿って電荷が移動する。
【0029】
なお、この有機TFTは、上記以外の他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素としては、例えば、有機TFTの全体を覆う保護層などが挙げられる。この保護層は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成される。
【0030】
[有機TFTの製造方法]
この有機TFTを製造するためには、いくつかの手順を用いることができる。図3〜図6は有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。以下では、一連の構成要素の形成材料については既に説明したので、それらの説明を随時省略する。なお、以下で説明する有機TFTの製造方法はあくまで一例であり、各構成要素の形成材料および形成方法などは適宜変更可能である。
【0031】
(第1製造方法)
最初に、図3に示したように、支持基板1を用意したのち、その上にゲート電極2を形成する。この場合には、例えば、金属材料層を形成したのち、その金属材料層の上にレジストパターンなどのマスク(図示せず)を形成する。続いて、マスクを用いて金属材料層をエッチングしたのち、アッシング法またはエッチング法などを用いてマスクを除去する。金属材料層の形成方法は、例えば、真空成膜法、塗布法またはめっき法などである。真空成膜法は、例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、スパッタリング法、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、パルスレーザ堆積法(PLD)またはアーク放電法などである。塗布法は、例えば、スピンコート法、スリットコート法、バーコート法またはスプレーコート法などである。鍍金法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。レジストパターンを形成する場合には、例えば、フォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ法、レーザ描画法、電子線描画法またはX線描画法などを用いてフォトレジスト膜をパターニングする。ただし、レジスト転写法などを用いてレジストパターンを形成してもよい。金属材料層のエッチング方法は、例えば、ドライエッチング法、またはエッチャント溶液を用いたウェットエチング法であり、そのドライエッチング法は、例えば、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などである。マスクを除去するためのエッチング方法も、同様である。なお、ゲート電極1の形成方法は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法またはグラビアオフセット印刷法などの各種印刷法でもよい。また、レーザアブレーション法、マスク蒸着法またはレーザ転写法などを用いて、マスクとしてレジストパターンの代わりに金属パターンなどを形成してもよい。もちろん、ゲート電極2を形成するために、金属材料層の代わりに無機導電性材料層、有機導電性材料層または炭素材料層などを形成してもよい。
【0032】
続いて、ゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3を形成する。このゲート絶縁膜3の形成手順は、例えば、その形成材料により異なる。無機絶縁性材料を用いる場合の形成手順は、例えば、塗布法がゾル・ゲル法などでもよいことを除き、ゲート電極2を形成した場合と同様である。有機絶縁性材料を用いる場合の形成手順は、例えば、フォトリソグラフィ法などを用いて感光性材料をパターニングしてもよいことを除き、ゲート電極1を形成した場合と同様である。
【0033】
続いて、ゲート絶縁膜3の上に有機半導体層4を形成する。有機半導体層4の形成方法は、例えばその形成材料により異なる。低分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の真空成膜法などである。溶解性低分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の真空成膜法、塗布法または印刷法などである。高分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の塗布法または印刷法などである。一般的に、溶解性が高い材料を用いる場合には塗布法または印刷法などを用いると共に、溶解性が低い材料または非溶解性の材料を用いる場合には真空成膜法などを用いることが好ましい。
【0034】
次に、図4に示したように、全体を覆うようにレジスト層8Zを形成する。その材料としては、例えばAZ5214(AZマテリアルズ社製)などのフォトレジストを用いる。そののち、開口MKを有するマスクMを用いて例えば紫外線により選択的な露光を行う。この際、斜め方向(上面4Sに対して垂直な方向から例えば30°程度傾斜した方向)から光(紫外線)を照射することにより露光を行う。
【0035】
露光ののち現像を行うことにより、図5に示したように所定形状の絶縁構造体8が現れる。露光を斜め方向から行ったため、上面4Sに対して傾斜した端面8T1,8T2が形成される。なお、ここではフォトリソグラフィ法により絶縁構造体8を形成する場合を例示したが、例えばグラビアオフセット印刷やドライレジストラミネーションなどの転写印刷法により、絶縁構造体8を形成することも可能である。
【0036】
次に、図6に示したように、例えば真空成膜法を用いて全面を覆うように金属膜Zを形成する。ここでは、金属膜Zを形成した段階で、その金属膜Zのうち、絶縁構造体8を覆う部分(導電層7となる部分)Z1と、ドレイン電極6となる部分Z2とは、上面8Sと上面4Sとの段差によって分断される。特に、絶縁構造体8がオーバーハング形状となっており、上面8Sと上面4Sとを繋ぐ端面8T2が有機半導体層4から離れるほどドレイン電極6に近づくように傾斜していることから、両者は確実に分離される。その一方で、導電層7となる部分Z1と、ソース電極5となる部分Z3とは、相互に繋がった状態となる。
【0037】
続いて、その金属膜Zをパターニングすることにより、図1および図2に示したソース電極5、ドレイン電極6および導電層7が一括して形成される。パターニングは、例えばゲート電極2を形成した場合と同様の手順を用いる。具体的には、金属膜Zの上にレジストパターンなどを形成したのち、それをマスクとして金属膜Zをエッチングする。この場合、有機半導体層4に対してダメージを与えにくいウェットエッチング法などが好ましい。これにより、有機TFTが完成する。
【0038】
このように、本実施態様の有機TFTによれば、有機半導体層4の上に絶縁構造体8を設けるようにした。これにより、ソース電極5とドレイン電極6とを確実に分離しつつ、面内方向における相互間隔(ソース電極5と上面4Sとの接触界面と、ドレイン電極6と上面4Sとの接触界面との距離)を近づけることができる。このため、電流リークを抑制しつつ、さらなる高集積化に対応可能となる。特に、絶縁構造体8が、ソース電極5およびドレイン電極6の厚さよりも大きな厚さを有するうえ、有機半導体層4から遠ざかるほどドレイン電極6に近づくように傾斜した端面8T2を含むオーバーハング形状を有するものとした。これにより、ソース電極5とドレイン電極6との分離を、より確実に行うことができるので好ましい。
【0039】
なお、このようなオーバーハング形状とすることで、端面8T2が上面4Sに対して垂直である場合と比較して、導電層7と有機半導体層4との間に形成されるキャパシタの静電容量を小さくすることができる。図7(A),7(B)を参照して具体的に説明する。端面8T2が傾斜面である場合(図7(A))、導電層7と有機半導体層4との間の空間のうち端面8T2が投影される領域Aに相当する空間は、絶縁構造体8および空気の双方によって半分ずつ占められる。一方、端面8T2が垂直面である場合(図7(B))、領域Aに相当する空間は、絶縁構造体8のみによって全て占められる。絶縁体は、空気よりも誘電率が高いので、その分、端面8T2が傾斜面である場合(図7(A))には静電容量を低減することができる。例えば、空気の比誘電率をε1、絶縁構造体8の比誘電率をε2、領域Aに相当する空間のうちの、空気が占める部分の静電容量をC1、絶縁構造体8が占める部分の静電容量をC2とする。その場合、下記の式(1)に示したように、静電容量比C2/C1は比誘電率の比ε1/ε2の対数で表される。また、両者の関係を図8に示す。
C2/C1=ln(X)/(X−1) ……(1)
式(1)および図8に示したように、例えば比誘電率ε1=4.0、比誘電率ε2=1.0の場合、静電容量比C2/C1は0.46となる。このような静電容量の低減の結果、バックチャネルを流れる電流(リーク電流)を減少させることができ、動作安定性を高めることができる。
【0040】
また、絶縁構造体8を覆う導電層7を、ソース電極5と接続するようにしたので、導電層7がフローティング状態とはならず、ソース電極5の電位と同等の電位で安定化させることができる。よって、バックチャネルの特性変動を防止し、有機TFTとしての安定した動作を確保することができる。なお、導電層7をドレイン電極6と接続してしまうと新たなチャネルが誘起されやすくなり、好ましくない。
【0041】
以上のような理由から、本実施の形態によれば、微小な寸法のソース電極5およびドレイン電極6について高精度の形成が可能となるので、全体構成のコンパクト化を図りつつ、その安定動作が可能となる。よって、この有機TFTを各種の電子機器に用いた場合には、動作安定性に優れた複数の有意TFTの高集積化により、その表示機器のコンパクト化および高性能化が期待される。
【0042】
<2.有機TFTの適用例(電子機器)>
次に、上記した有機TFTの適用例について説明する。この有機TFTは、例えば、以下で順に説明するように、いくつかの電子機器に適用可能である。
【0043】
[2−1.液晶表示装置]
有機TFTは、例えば、液晶表示装置に適用される。図9および図10は、それぞれ液晶表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図9)および回路構成(図10)はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0044】
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図9に示したように、駆動基板20と対向基板30との間に液晶層41が封入されたものである。
【0045】
駆動基板20は、例えば、支持基板21の一面に有機TFT22、平坦化絶縁層23および画素電極24がこの順に形成されていると共に、複数の有機TFT22および画素電極24がマトリクス状に配置されたものである。ただし、1画素内に含まれる有機TFT22の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図4および図5では、例えば、1画素内に1つの有機TFT22が含まれる場合を示している。
【0046】
支持基板21は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、有機TFT22は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様であり、そのことは、以下で随時説明する場合においても同様である。平坦化絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極24は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極24は、平坦化絶縁層23に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT22に接続されている。
【0047】
対向基板30は、例えば、支持基板31の一面に対向電極32が全面形成されたものである。支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極32は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。
【0048】
駆動基板20および対向基板30は、液晶層41を挟んで画素電極24と対向電極32とが対向するように配置されていると共に、シール材40により貼り合わされている。液晶層41に含まれる液晶分子の種類は、任意に選択可能である。
【0049】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0050】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図10に示したように、有機TFT22および液晶表示素子44(画素電極24、対向電極32および液晶層41を含む素子部)と共に、キャパシタ45を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線42が配列されていると共に列方向に複数の走査線43が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT22、液晶表示素子44およびキャパシタ45が配置されている。有機TFT22におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図10に示した態様に限らず、任意に設定可能である。信号線42および走査線43は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。
【0051】
この液晶表示装置では、有機TFT22により液晶表示素子44が選択され、その画素電極24と対向電極32との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層41における液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
【0052】
この液晶表示装置によれば、有機TFT22が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、その移動度およびオンオフ比が向上する。よって、表示性能を向上させることができる。なお、液晶表示装置は、透過型に限らずに反射型でもよい。
【0053】
[2−2.有機EL表示装置]
有機TFTは、例えば、有機EL表示装置に適用される。図11および図12は、それぞれ有機EL表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図11)および回路構成(図12)はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0054】
ここで説明する有機EL表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の有機ELディスプレイである。この有機EL表示装置は、駆動基板50と対向基板60とが接着層70を介して貼り合わされたものであり、例えば、対向基板60を経由して光を放出するトップエミッション型である。
【0055】
駆動基板50は、例えば、支持基板51の一面に有機TFT52、保護層53、平坦化絶縁層54、画素分離絶縁層55、画素電極56、有機層57、対向電極58および保護層59がこの順に形成されたものである。複数の有機TFT52、画素電極56および有機層57は、マトリクス状に配置されている。ただし、1画素内に含まれる有機TFT52の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図6および図7では、例えば、1画素内に2つの有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)が含まれる場合を示している。
【0056】
支持基板51は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されている。トップエミッション型では対向基板60から光が取り出されるため、支持基板51は、透過性材料または非透過性材料のいずれにより形成されていてもよい。有機TFT52は、上記した有機TFTと同様の構成を有しており、保護層53は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリパラキシリレンなどの高分子材料により形成されている。平坦化絶縁層54および画素分離絶縁層55は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されている。この画素分離絶縁層55は、例えば、形成工程を簡略化すると共に所望の形状に成形可能にするために、光パターニングまたはリフローなどにより成形可能な感光性樹脂材料により形成されていることが好ましい。なお、保護層53により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層54は省略されてもよい。
【0057】
画素電極56は、例えば、アルミニウム、銀、チタンまたはクロムなどの反射性材料により形成されており、対向電極58は、例えば、ITOまたはIZOなどの透過性導電性材料により形成されている。ただし、カルシウム(Ca)などの透過性の金属材料またはその合金や、PEDOTなどの透過性の有機導電性材料により形成されていてもよい。有機層57は、赤色、緑色または青色などの光を発生させる発光層を含んでおり、必要に応じて正孔輸送層および電子輸送層などを含む積層構造を有していてもよい。発光層の形成材料は、発生させる光の色に応じて任意に選択可能である。画素電極56および有機層57は、画素分離絶縁層55により離間されながらマトリクス状に配置されているのに対して、対向電極58は、有機層57を介して画素電極56に対向しながら連続的に延在している。保護層59は、例えば、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、窒化ケイ素(SiN)、ポリパラキシリレンまたはウレタンなどの光透過性誘電材料により形成されている。なお、画素電極56は、保護層53および平坦化絶縁層54に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT52に接続されている。
【0058】
対向基板60は、例えば、支持基板61の一面にカラーフィルタ62が設けられたものである。支持基板61は、例えば、ガラスまたはブラスチック材料などの透過性材料により形成されており、カラーフィルタ62は、有機層57において発生する光の色に対応する複数の色領域を有している。ただし、カラーフィルタ62は省略されてもよい。
【0059】
接着層70は、例えば、熱硬化型樹脂などの接着剤である。
【0060】
有機EL表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図12に示したように、有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)および有機EL表示素子73(画素電極56、有機層57および対向電極58を含む素子部)と共に、キャパシタ74を含んでいる。この回路では、複数の信号線71および走査線72が交差する位置に、有機TFT52、有機EL表示素子73およびキャパシタ74が配置されている。選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52Bにおけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図12に示した態様に限らず、任意に設定可能である。
【0061】
この有機EL表示装置では、例えば、選択用TFT52Aにより有機EL表示素子73が選択されると、その有機EL表示素子73が駆動用TFT52Bにより駆動される。これにより、画素電極56と対向電極58との間に電界が印加されると、有機層57において光が発生する。この場合には、例えば、隣り合う3つの有機EL表示素子73において、それぞれ赤色、緑色または青色の光が発生する。これらの光の合成光が対向基板60を経由して外部へ放出されるため、階調画像が表示される。
【0062】
この有機EL表示装置によれば、有機TFT52が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能を向上させることができる。
【0063】
なお、有機EL表示装置は、トップエミッション型に限らず、駆動基板50を経由して光を放出するボトムエミッション型でもよいし、駆動基板50および対向基板60の双方を経由して光を放出するデュアルエミッション型でもよい。この場合には、画素電極56および対向電極58のうち、光が放出される側の電極が透過性材料により形成され、光が放出されない側の電極が反射性材料により形成されることになる。
【0064】
[2−3.電子ペーパー表示装置]
有機TFTは、例えば、電子ペーパー表示装置に適用される。図13は、電子ペーパー表示装置の断面構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図13)および図10を参照して説明する回路構成はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0065】
ここで説明する電子ペーパー表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の電子ペーパーディスプレイである。この電子ペーパー表示装置は、例えば、駆動基板80と複数の電気泳動素子93を含む対向基板90とが接着層100を介して貼り合わされたものである。
【0066】
駆動基板80は、例えば、支持基板81の一面に有機TFT82、保護層83、平坦化絶縁層84および画素電極85がこの順に形成されていると共に、複数の有機TFT82および画素電極85がマトリクス状に配置されたものである。支持基板81は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されており、有機TFT82は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。保護層83および平坦化絶縁層84は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極85は、例えば、銀(Ag)などの金属材料により形成されている。なお、画素電極85は、保護層83および平坦化絶縁層84に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT82に接続されている。また、保護層83により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層84は省略されてもよい。
【0067】
対向基板90は、例えば、支持基板91の一面に対向電極92、および複数の電気泳動素子93を含む層がこの順に形成されていると共に、その対向電極92が全面形成されたものである。支持基板91は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極92は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料により形成されている。電気泳動素子93は、例えば黒色に着色されており、画素電極85に印加された電圧に応じて上下に移動することによりその画素の階調を表示することができるものである。
【0068】
この他、電子ペーパー表示装置は、例えば、カラーフィルタなどの他の構成要素(図示せず)を備えていてもよい。
【0069】
電子ペーパー表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図10に示した液晶表示装置の回路と同様の構成を有している。電子ペーパー表示装置の回路は、有機TFT22および液晶表示素子44の代わりに、それぞれ有機TFT82および電子ペーパー表示素子(画素電極85、対向電極92および電気泳動素子93を含む素子部)を含んでいる。
【0070】
この電子ペーパー表示装置では、有機TFT82により電子ペーパー表示素子が選択され、その画素電極85と対向電極92との間に電界が印加されると、その電界に応じて電気泳動素子93中の黒粒子または白粒子が対向電極92に引き寄せられる。これにより、黒粒子および白粒子によりコントラストが表現されるため、階調画像が表示される。
【0071】
この電子ペーパー表示装置によれば、有機TFT82が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能を向上させることができる。
【0072】
以上、実施形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本開示の薄膜トランジスタが適用される電子機器は、液晶表示装置、有機EL表示装置または電子ペーパー表示装置に限らず、他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)表示部などが挙げられる。この場合においても、表示性能を向上させることができる。
【0073】
さらに、本開示の薄膜トランジスタは、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。このような電子機器としては、例えば、センサマトリックスまたはメモリセルなどが挙げられる。この場合においても、よって、薄膜トランジスタの移動度およびオンオフ比が向上するため、性能向上を図ることができる。
【0074】
また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する
薄膜トランジスタ。
(2)
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極および前記ドレイン電極のいずれよりも大きな厚さを有する
上記(1)記載の薄膜トランジスタ。
(3)
前記導電性材料層は、前記絶縁性構造体の端面をも覆うように形成され、前記ソース電極と連結されている
上記(1)または(2)に記載の薄膜トランジスタ。
(4)
前記導電性材料層、ソース電極およびドレイン電極は、全て同一材料によって構成されており、
前記導電性材料層およびソース電極は、一括形成された連続層からなる
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(5)
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極と対向する第1端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ソース電極から遠ざかるように傾斜したものである
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(6)
前記絶縁性構造体は、前記ドレイン電極と対向する第2端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ドレイン電極に近づくように傾斜したものである
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(7)
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する薄膜トランジスタを備えた電子機器。
(8)
基板上にゲート電極を形成する工程と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、
前記有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、
前記絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、前記絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層と一体化されたソース電極と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【符号の説明】
【0075】
2…ゲート電極、3…ゲート絶縁膜、4…有機半導体層、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7…導電層、8…絶縁構造体。
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機半導体層を備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびにその薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置に代表される多くの電子機器にアクティブマトリクス駆動方式が導入されており、そのスイッチング(画像選択)を行うための素子として薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている。
【0003】
最近では、チャネル層として有機半導体層を用いた有機TFTが注目されている。この有機TFTでは、チャネル層を塗布法や印刷法により形成することができるため、低コスト化が可能である。また、蒸着法などよりも低い温度でチャネル層を形成できるため、低耐熱性かつフレキシブルなプラスチックフィルムなどに有機TFTを実装できるという利点を有する。
【0004】
このような有機TFTは、ソース電極およびドレイン電極の位置に対するゲート電極の位置によってトップゲート構造またはボトムゲート構造の2種類に分類される。また、有機半導体層とソース電極およびドレイン電極との位置関係から、トップコンタクト型またはボトムコンタクト型の2種類に分類される。これらのうち、ボトムゲート構造の有機TFTでは、トップコンタクト型のほうがボトムコンタクト型よりも熱などのストレスに起因する特性劣化が抑制されるので好ましいことが知られている。
【0005】
このトップコンタクト型ボトムゲート構造の有機TFTは、ゲート電極が埋設されたゲート絶縁膜の上に有機半導体層が形成され、さらに、その有機半導体層の上面の少なくとも一部を覆うようにソース電極およびドレイン電極が互いに離間して配置されたものである。このようなトップコンタクト型ボトムゲート構造の有機TFTを作製する方法として、例えば特許文献1に記載の方法が提案されている。特許文献1では、有機半導体層上にレジスト層を選択的に形成したのち全面的に電極材料を堆積する。その後、レジスト層を溶解させることで不要な電極材料をリフトオフさせ、所定位置にソース電極およびドレイン電極を形成するようにしている。ところが、リフトオフしたはずの電極材料がソース電極やドレイン電極などに再付着してしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本出願人は、有機半導体層上に逆テーパ状の構造体を形成することで、高精度のソース電極およびドレイン電極を形成する方法を既に提案している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−85200号公報
【特許文献2】特開2011−100831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の方法では、逆テーパ状の構造体の上に孤立した電極材料層が残存するので、その電極材料層の電位が問題となる場合が懸念される。すなわち、表示装置を駆動する際の信号線や走査線の電位の変化が生じると、それ応じて孤立した(フローティング状態の)電極材料層の電位も変化してしまう。その結果、バックチャネルの特性変動が生じ、有機TFTとしての安定した動作が損なわれてしまう可能性がある。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、コンパクトな構成でありながら、より安定した動作を行う薄膜トランジスタおよび電子機器を提供することにある。本開示の第2の目的は、上記のような薄膜トランジスタを効率的に製造する薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の薄膜トランジスタは、ゲート電極と、絶縁膜を介してゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、その有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、互いに離間して配置され、かつ、有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、絶縁性構造体を覆い、ソース電極と接続されると共にドレイン電極と分離された導電性材料層とを有するものである。また、本開示の電子機器は、上記した本開示の薄膜トランジスタを備えたものである。
【0011】
本開示の薄膜トランジスタおよび電子機器では、ソース電極が、有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体を覆う導電性材料層と接続されている。このため、導電性材料層がソース電極と等電位となり、安定化する。
【0012】
本開示の薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成する工程と、絶縁膜を介してゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、有機半導体層の上面の一部と接すると共に導電性材料層と一体化されたソース電極と、有機半導体層の上面の一部と接すると共に導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程とを含むものである。
【0013】
本開示の薄膜トランジスタの製造方法では、絶縁性構造体の一の端部がオーバーハング形状を有するようにしたので、その端部において導電膜が分離されてソース電極およびドレイン電極が一括形成される。絶縁性構造体を覆う導電性材料層は、ソース電極と一体化されるので、導電性材料層がソース電極と等電位となり、安定化する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の薄膜トランジスタおよび電子機器によれば、バックチャネルの特性が安定化するので、その安定駆動が実現される。また、本開示の薄膜トランジスタの製造方法によれば、そのような薄膜トランジスタを簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の一実施の形態としての薄膜トランジスタである有機TFTの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した有機TFTを上方から眺めた平面図である。
【図3】図1に示した有機TFTを製造するための製造方法における一工程を表す断面図である。
【図4】図3に続く一工程を表す断面図である。
【図5】図4に続く一工程を表す断面図である。
【図6】図5に続く一工程を表す断面図である。
【図7】図1に示した有機TFTにおける、導電層と有機半導体層との間のキャパシタンスを説明するための断面図である。
【図8】図1に示した絶縁構造体の端部における静電容量比と比誘電率の比との関係を表す特性図である。
【図9】薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した液晶表示装置の回路構成を表す図である。
【図11】薄膜トランジスタの適用例である有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示した有機EL表示装置の回路構成を表す図である。
【図13】薄膜トランジスタの適用例である電子ペーパー表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序に従って行う。
1.薄膜トランジスタ(有機TFT)およびその製造方法
2.薄膜トランジスタ(有機TFT)の適用例(電子機器)
2−1.液晶表示装置
2−2.有機EL表示装置
2−3.電子ペーパー表示装置
【0017】
<1.有機TFTおよびその製造方法>
[有機TFTの構成]
図1は、本開示の一実施形態としての薄膜トランジスタである有機TFTの断面構成を表している。また、図2は、図1に示した有機TFTを上方から眺めた平面構成を表している。この有機TFTは、ゲート電極2が有機半導体層4よりも下方に位置すると共にソース電極5およびドレイン電極6が有機半導体層4の上に重なっている、いわゆるトップコンタクト・ボトムゲート型である。
【0018】
有機TFTは、支持基板1の上に設けられたゲート電極2と、そのゲート電極2を覆うゲート絶縁膜3と、そのゲート絶縁膜3の上に設けられた有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6を有する。有機半導体層4は、ゲート絶縁膜層3を介してゲート電極2と対向して配置されており、その上には絶縁構造体8が設けられている。ソース電極5およびドレイン電極6は、絶縁構造体8を挟んで互いに離間して配置されており、それぞれの一部が有機半導体層4の上面4Sの一部(端部)と重なり合っている。すなわち、有機半導体層4の上面の一部は、ソース電極5およびドレイン電極6の一部とそれぞれ接している。
【0019】
絶縁構造体8は、有機半導体層4と反対側の上面8Sと、ソース電極5と対向する端面8T1と、ドレイン電極6と対向する端面8T2とを有する。絶縁構造体8は、その上面8Sから端面8T1にかけて導電層7によって覆われている。導電層7はソース電極5と接続される一方、ドレイン電極6とは分離されている。
【0020】
ここで、端面8T1は、有機半導体層4から離れるほどソース電極5からも遠ざかるように傾斜していることが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり絶縁構造体8を覆う導電層7の厚さのばらつきが低減され、この有機TFTの駆動時における導電層7の電位が安定化するからである。一方の端面8T2は、有機半導体層4から離れるほどドレイン電極6に近づくように傾斜していることが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり、絶縁構造体8を覆う導電層7と、ドレイン電極6との分離が生じやすくなるからである。さらに、絶縁構造体8は、ソース電極5およびドレイン電極6のいずれよりも大きな厚さを有することが望ましい。この有機TFTを製造するにあたり、絶縁構造体8を覆う導電層7と、ドレイン電極6との分離が生じやすくなるからである。
【0021】
支持基板1は、例えばガラス、プラスチック材料または金属材料などからなる基板でもよいし、プラスチック材料または金属材料などからなるフィルムでもよいし、紙(一般紙)でもよい。プラスチック材料は、例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリエチルエーテルケトン(PEEK)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどである。なお、基体の表面には、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などの各種層が設けられていてもよい。
【0022】
ゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)またはポリスチレンスルホン酸(PSS)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極2は、上記した各種材料の層が2層以上積層されたものでもよく、そのような積層構造は、ゲート絶縁膜3、有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6においても採用可能である。
【0023】
ゲート絶縁膜3は、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリイミド、ポリメタクリル酸アクリレート、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0024】
有機半導体層3は、複数の有機半導体分子を含んでおり、例えば、以下で説明する低分子材料、溶解性低分子材料または高分子材料などの半導体材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。低分子材料は、一般的に溶媒に溶解しにくい材料であり、例えば、ペンタセン、アントラジチオフェン、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f]チエノ[3,2−b]チエノフェン、2,9−ジフェニル−ペリ−キサンテノキサンテンまたは2,9−ジナフチル−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン化合物、あるいは銅フタロシアニンなどである。溶解性低分子材料は、低分子材料を化学修飾などして溶解性を改善した材料であり、例えば、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、2,7−ジドデシル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンまたは2,9−ビス(p−エチルフェニル)−ペリ−キサンテノキサンテンなどである。高分子材料は、例えば、α−クウォーターチオフェン、ポリ−(β−ヘキシルチオフェン)またはポリ(2,5−ビス(3−ドデシル−5−(3−ドデシルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアソールなどである。
【0025】
この他、半導体材料は、例えば、以下の材料でもよい。テトラセン、アントラセン、2,9−ジメチルペンタセン、ルブレンまたはパーフルオロペンタセンなどのアセン類化合物である。α,ω−ジアルキルアントラジチオフェンなどのアントラジチオフェン類化合物である。2,9−ビス(p−プロピルフェニル)−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン類化合物である。2,6−ジ(2−ナフチル)ナフト[1,8−bc:5,4−b’c’]ジチオフェンなどのナフト[1,8−bc:5,4−b’c’]ジチオフェン類化合物である。2,6−ジフェニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンなどのベンゾジチオフェン類化合物である。2,7−ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンなどの[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン類化合物である。α−クウォーターセレノフェンなどのオリゴチオフェンおよびオリゴセレノフェン類化合物である。ポリ−(3,3’”−ジドデシルクオーターチオフェン)などのβ置換チオフェンポリマーおよびオリゴマー類化合物である。α,ω−ジヘキシルクウォーターチオフェンなどのα,ω置換チオフェンオリゴマー類化合物である。ビス(ベンゾジチオフェン)などの縮環チオフェンオリゴマー類化合物である。2,5−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)チオフェンなどのチオフェン−フェニレンオリゴマー類化合物である。5,5’−ビス−(7−ヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)−[2,2’]ビチオフェンなどのチオフェン−フルオレンオリゴマー類化合物である。6,6’−ジヘキシル−[2,2’]ビアントラセニルなどのチオフェン−アセンオリゴマー類化合物である。フタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンなどのフタロシアニン類化合物である。テトラベンゾポルフィリンなどのポルフィリン類化合物である。C60などのフラーレン類化合物である。
【0026】
導電層7、ソース電極5およびドレイン電極6は、いずれも、例えば上記したゲート電極2と同様の材料により形成可能である。導電層7、ソース電極5およびドレイン電極6は、全て同一材料によって構成されていることが望ましい。導電層7およびソース電極5は、例えば一括形成された連続層からなり、一体化されている。また、ソース電極5およびドレイン電極6は、有機半導体層4にオーミック接触していることが好ましい。
【0027】
絶縁構造体8は、例えばフォトレジストなどの絶縁性材料によって構成されている。
【0028】
この有機TFTでは、ソース電極5から有機半導体層4を経由してドレイン電極6へ電流が流れ、その流路に沿って電荷が移動する。
【0029】
なお、この有機TFTは、上記以外の他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素としては、例えば、有機TFTの全体を覆う保護層などが挙げられる。この保護層は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成される。
【0030】
[有機TFTの製造方法]
この有機TFTを製造するためには、いくつかの手順を用いることができる。図3〜図6は有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。以下では、一連の構成要素の形成材料については既に説明したので、それらの説明を随時省略する。なお、以下で説明する有機TFTの製造方法はあくまで一例であり、各構成要素の形成材料および形成方法などは適宜変更可能である。
【0031】
(第1製造方法)
最初に、図3に示したように、支持基板1を用意したのち、その上にゲート電極2を形成する。この場合には、例えば、金属材料層を形成したのち、その金属材料層の上にレジストパターンなどのマスク(図示せず)を形成する。続いて、マスクを用いて金属材料層をエッチングしたのち、アッシング法またはエッチング法などを用いてマスクを除去する。金属材料層の形成方法は、例えば、真空成膜法、塗布法またはめっき法などである。真空成膜法は、例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、スパッタリング法、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、パルスレーザ堆積法(PLD)またはアーク放電法などである。塗布法は、例えば、スピンコート法、スリットコート法、バーコート法またはスプレーコート法などである。鍍金法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。レジストパターンを形成する場合には、例えば、フォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ法、レーザ描画法、電子線描画法またはX線描画法などを用いてフォトレジスト膜をパターニングする。ただし、レジスト転写法などを用いてレジストパターンを形成してもよい。金属材料層のエッチング方法は、例えば、ドライエッチング法、またはエッチャント溶液を用いたウェットエチング法であり、そのドライエッチング法は、例えば、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などである。マスクを除去するためのエッチング方法も、同様である。なお、ゲート電極1の形成方法は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法またはグラビアオフセット印刷法などの各種印刷法でもよい。また、レーザアブレーション法、マスク蒸着法またはレーザ転写法などを用いて、マスクとしてレジストパターンの代わりに金属パターンなどを形成してもよい。もちろん、ゲート電極2を形成するために、金属材料層の代わりに無機導電性材料層、有機導電性材料層または炭素材料層などを形成してもよい。
【0032】
続いて、ゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3を形成する。このゲート絶縁膜3の形成手順は、例えば、その形成材料により異なる。無機絶縁性材料を用いる場合の形成手順は、例えば、塗布法がゾル・ゲル法などでもよいことを除き、ゲート電極2を形成した場合と同様である。有機絶縁性材料を用いる場合の形成手順は、例えば、フォトリソグラフィ法などを用いて感光性材料をパターニングしてもよいことを除き、ゲート電極1を形成した場合と同様である。
【0033】
続いて、ゲート絶縁膜3の上に有機半導体層4を形成する。有機半導体層4の形成方法は、例えばその形成材料により異なる。低分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の真空成膜法などである。溶解性低分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の真空成膜法、塗布法または印刷法などである。高分子材料を用いる場合の形成方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様の塗布法または印刷法などである。一般的に、溶解性が高い材料を用いる場合には塗布法または印刷法などを用いると共に、溶解性が低い材料または非溶解性の材料を用いる場合には真空成膜法などを用いることが好ましい。
【0034】
次に、図4に示したように、全体を覆うようにレジスト層8Zを形成する。その材料としては、例えばAZ5214(AZマテリアルズ社製)などのフォトレジストを用いる。そののち、開口MKを有するマスクMを用いて例えば紫外線により選択的な露光を行う。この際、斜め方向(上面4Sに対して垂直な方向から例えば30°程度傾斜した方向)から光(紫外線)を照射することにより露光を行う。
【0035】
露光ののち現像を行うことにより、図5に示したように所定形状の絶縁構造体8が現れる。露光を斜め方向から行ったため、上面4Sに対して傾斜した端面8T1,8T2が形成される。なお、ここではフォトリソグラフィ法により絶縁構造体8を形成する場合を例示したが、例えばグラビアオフセット印刷やドライレジストラミネーションなどの転写印刷法により、絶縁構造体8を形成することも可能である。
【0036】
次に、図6に示したように、例えば真空成膜法を用いて全面を覆うように金属膜Zを形成する。ここでは、金属膜Zを形成した段階で、その金属膜Zのうち、絶縁構造体8を覆う部分(導電層7となる部分)Z1と、ドレイン電極6となる部分Z2とは、上面8Sと上面4Sとの段差によって分断される。特に、絶縁構造体8がオーバーハング形状となっており、上面8Sと上面4Sとを繋ぐ端面8T2が有機半導体層4から離れるほどドレイン電極6に近づくように傾斜していることから、両者は確実に分離される。その一方で、導電層7となる部分Z1と、ソース電極5となる部分Z3とは、相互に繋がった状態となる。
【0037】
続いて、その金属膜Zをパターニングすることにより、図1および図2に示したソース電極5、ドレイン電極6および導電層7が一括して形成される。パターニングは、例えばゲート電極2を形成した場合と同様の手順を用いる。具体的には、金属膜Zの上にレジストパターンなどを形成したのち、それをマスクとして金属膜Zをエッチングする。この場合、有機半導体層4に対してダメージを与えにくいウェットエッチング法などが好ましい。これにより、有機TFTが完成する。
【0038】
このように、本実施態様の有機TFTによれば、有機半導体層4の上に絶縁構造体8を設けるようにした。これにより、ソース電極5とドレイン電極6とを確実に分離しつつ、面内方向における相互間隔(ソース電極5と上面4Sとの接触界面と、ドレイン電極6と上面4Sとの接触界面との距離)を近づけることができる。このため、電流リークを抑制しつつ、さらなる高集積化に対応可能となる。特に、絶縁構造体8が、ソース電極5およびドレイン電極6の厚さよりも大きな厚さを有するうえ、有機半導体層4から遠ざかるほどドレイン電極6に近づくように傾斜した端面8T2を含むオーバーハング形状を有するものとした。これにより、ソース電極5とドレイン電極6との分離を、より確実に行うことができるので好ましい。
【0039】
なお、このようなオーバーハング形状とすることで、端面8T2が上面4Sに対して垂直である場合と比較して、導電層7と有機半導体層4との間に形成されるキャパシタの静電容量を小さくすることができる。図7(A),7(B)を参照して具体的に説明する。端面8T2が傾斜面である場合(図7(A))、導電層7と有機半導体層4との間の空間のうち端面8T2が投影される領域Aに相当する空間は、絶縁構造体8および空気の双方によって半分ずつ占められる。一方、端面8T2が垂直面である場合(図7(B))、領域Aに相当する空間は、絶縁構造体8のみによって全て占められる。絶縁体は、空気よりも誘電率が高いので、その分、端面8T2が傾斜面である場合(図7(A))には静電容量を低減することができる。例えば、空気の比誘電率をε1、絶縁構造体8の比誘電率をε2、領域Aに相当する空間のうちの、空気が占める部分の静電容量をC1、絶縁構造体8が占める部分の静電容量をC2とする。その場合、下記の式(1)に示したように、静電容量比C2/C1は比誘電率の比ε1/ε2の対数で表される。また、両者の関係を図8に示す。
C2/C1=ln(X)/(X−1) ……(1)
式(1)および図8に示したように、例えば比誘電率ε1=4.0、比誘電率ε2=1.0の場合、静電容量比C2/C1は0.46となる。このような静電容量の低減の結果、バックチャネルを流れる電流(リーク電流)を減少させることができ、動作安定性を高めることができる。
【0040】
また、絶縁構造体8を覆う導電層7を、ソース電極5と接続するようにしたので、導電層7がフローティング状態とはならず、ソース電極5の電位と同等の電位で安定化させることができる。よって、バックチャネルの特性変動を防止し、有機TFTとしての安定した動作を確保することができる。なお、導電層7をドレイン電極6と接続してしまうと新たなチャネルが誘起されやすくなり、好ましくない。
【0041】
以上のような理由から、本実施の形態によれば、微小な寸法のソース電極5およびドレイン電極6について高精度の形成が可能となるので、全体構成のコンパクト化を図りつつ、その安定動作が可能となる。よって、この有機TFTを各種の電子機器に用いた場合には、動作安定性に優れた複数の有意TFTの高集積化により、その表示機器のコンパクト化および高性能化が期待される。
【0042】
<2.有機TFTの適用例(電子機器)>
次に、上記した有機TFTの適用例について説明する。この有機TFTは、例えば、以下で順に説明するように、いくつかの電子機器に適用可能である。
【0043】
[2−1.液晶表示装置]
有機TFTは、例えば、液晶表示装置に適用される。図9および図10は、それぞれ液晶表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図9)および回路構成(図10)はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0044】
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図9に示したように、駆動基板20と対向基板30との間に液晶層41が封入されたものである。
【0045】
駆動基板20は、例えば、支持基板21の一面に有機TFT22、平坦化絶縁層23および画素電極24がこの順に形成されていると共に、複数の有機TFT22および画素電極24がマトリクス状に配置されたものである。ただし、1画素内に含まれる有機TFT22の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図4および図5では、例えば、1画素内に1つの有機TFT22が含まれる場合を示している。
【0046】
支持基板21は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、有機TFT22は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様であり、そのことは、以下で随時説明する場合においても同様である。平坦化絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極24は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極24は、平坦化絶縁層23に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT22に接続されている。
【0047】
対向基板30は、例えば、支持基板31の一面に対向電極32が全面形成されたものである。支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極32は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。
【0048】
駆動基板20および対向基板30は、液晶層41を挟んで画素電極24と対向電極32とが対向するように配置されていると共に、シール材40により貼り合わされている。液晶層41に含まれる液晶分子の種類は、任意に選択可能である。
【0049】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0050】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図10に示したように、有機TFT22および液晶表示素子44(画素電極24、対向電極32および液晶層41を含む素子部)と共に、キャパシタ45を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線42が配列されていると共に列方向に複数の走査線43が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT22、液晶表示素子44およびキャパシタ45が配置されている。有機TFT22におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図10に示した態様に限らず、任意に設定可能である。信号線42および走査線43は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。
【0051】
この液晶表示装置では、有機TFT22により液晶表示素子44が選択され、その画素電極24と対向電極32との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層41における液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
【0052】
この液晶表示装置によれば、有機TFT22が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、その移動度およびオンオフ比が向上する。よって、表示性能を向上させることができる。なお、液晶表示装置は、透過型に限らずに反射型でもよい。
【0053】
[2−2.有機EL表示装置]
有機TFTは、例えば、有機EL表示装置に適用される。図11および図12は、それぞれ有機EL表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図11)および回路構成(図12)はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0054】
ここで説明する有機EL表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の有機ELディスプレイである。この有機EL表示装置は、駆動基板50と対向基板60とが接着層70を介して貼り合わされたものであり、例えば、対向基板60を経由して光を放出するトップエミッション型である。
【0055】
駆動基板50は、例えば、支持基板51の一面に有機TFT52、保護層53、平坦化絶縁層54、画素分離絶縁層55、画素電極56、有機層57、対向電極58および保護層59がこの順に形成されたものである。複数の有機TFT52、画素電極56および有機層57は、マトリクス状に配置されている。ただし、1画素内に含まれる有機TFT52の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図6および図7では、例えば、1画素内に2つの有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)が含まれる場合を示している。
【0056】
支持基板51は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されている。トップエミッション型では対向基板60から光が取り出されるため、支持基板51は、透過性材料または非透過性材料のいずれにより形成されていてもよい。有機TFT52は、上記した有機TFTと同様の構成を有しており、保護層53は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリパラキシリレンなどの高分子材料により形成されている。平坦化絶縁層54および画素分離絶縁層55は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されている。この画素分離絶縁層55は、例えば、形成工程を簡略化すると共に所望の形状に成形可能にするために、光パターニングまたはリフローなどにより成形可能な感光性樹脂材料により形成されていることが好ましい。なお、保護層53により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層54は省略されてもよい。
【0057】
画素電極56は、例えば、アルミニウム、銀、チタンまたはクロムなどの反射性材料により形成されており、対向電極58は、例えば、ITOまたはIZOなどの透過性導電性材料により形成されている。ただし、カルシウム(Ca)などの透過性の金属材料またはその合金や、PEDOTなどの透過性の有機導電性材料により形成されていてもよい。有機層57は、赤色、緑色または青色などの光を発生させる発光層を含んでおり、必要に応じて正孔輸送層および電子輸送層などを含む積層構造を有していてもよい。発光層の形成材料は、発生させる光の色に応じて任意に選択可能である。画素電極56および有機層57は、画素分離絶縁層55により離間されながらマトリクス状に配置されているのに対して、対向電極58は、有機層57を介して画素電極56に対向しながら連続的に延在している。保護層59は、例えば、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、窒化ケイ素(SiN)、ポリパラキシリレンまたはウレタンなどの光透過性誘電材料により形成されている。なお、画素電極56は、保護層53および平坦化絶縁層54に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT52に接続されている。
【0058】
対向基板60は、例えば、支持基板61の一面にカラーフィルタ62が設けられたものである。支持基板61は、例えば、ガラスまたはブラスチック材料などの透過性材料により形成されており、カラーフィルタ62は、有機層57において発生する光の色に対応する複数の色領域を有している。ただし、カラーフィルタ62は省略されてもよい。
【0059】
接着層70は、例えば、熱硬化型樹脂などの接着剤である。
【0060】
有機EL表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図12に示したように、有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)および有機EL表示素子73(画素電極56、有機層57および対向電極58を含む素子部)と共に、キャパシタ74を含んでいる。この回路では、複数の信号線71および走査線72が交差する位置に、有機TFT52、有機EL表示素子73およびキャパシタ74が配置されている。選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52Bにおけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図12に示した態様に限らず、任意に設定可能である。
【0061】
この有機EL表示装置では、例えば、選択用TFT52Aにより有機EL表示素子73が選択されると、その有機EL表示素子73が駆動用TFT52Bにより駆動される。これにより、画素電極56と対向電極58との間に電界が印加されると、有機層57において光が発生する。この場合には、例えば、隣り合う3つの有機EL表示素子73において、それぞれ赤色、緑色または青色の光が発生する。これらの光の合成光が対向基板60を経由して外部へ放出されるため、階調画像が表示される。
【0062】
この有機EL表示装置によれば、有機TFT52が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能を向上させることができる。
【0063】
なお、有機EL表示装置は、トップエミッション型に限らず、駆動基板50を経由して光を放出するボトムエミッション型でもよいし、駆動基板50および対向基板60の双方を経由して光を放出するデュアルエミッション型でもよい。この場合には、画素電極56および対向電極58のうち、光が放出される側の電極が透過性材料により形成され、光が放出されない側の電極が反射性材料により形成されることになる。
【0064】
[2−3.電子ペーパー表示装置]
有機TFTは、例えば、電子ペーパー表示装置に適用される。図13は、電子ペーパー表示装置の断面構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図13)および図10を参照して説明する回路構成はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0065】
ここで説明する電子ペーパー表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の電子ペーパーディスプレイである。この電子ペーパー表示装置は、例えば、駆動基板80と複数の電気泳動素子93を含む対向基板90とが接着層100を介して貼り合わされたものである。
【0066】
駆動基板80は、例えば、支持基板81の一面に有機TFT82、保護層83、平坦化絶縁層84および画素電極85がこの順に形成されていると共に、複数の有機TFT82および画素電極85がマトリクス状に配置されたものである。支持基板81は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されており、有機TFT82は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。保護層83および平坦化絶縁層84は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極85は、例えば、銀(Ag)などの金属材料により形成されている。なお、画素電極85は、保護層83および平坦化絶縁層84に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT82に接続されている。また、保護層83により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層84は省略されてもよい。
【0067】
対向基板90は、例えば、支持基板91の一面に対向電極92、および複数の電気泳動素子93を含む層がこの順に形成されていると共に、その対向電極92が全面形成されたものである。支持基板91は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極92は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料により形成されている。電気泳動素子93は、例えば黒色に着色されており、画素電極85に印加された電圧に応じて上下に移動することによりその画素の階調を表示することができるものである。
【0068】
この他、電子ペーパー表示装置は、例えば、カラーフィルタなどの他の構成要素(図示せず)を備えていてもよい。
【0069】
電子ペーパー表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図10に示した液晶表示装置の回路と同様の構成を有している。電子ペーパー表示装置の回路は、有機TFT22および液晶表示素子44の代わりに、それぞれ有機TFT82および電子ペーパー表示素子(画素電極85、対向電極92および電気泳動素子93を含む素子部)を含んでいる。
【0070】
この電子ペーパー表示装置では、有機TFT82により電子ペーパー表示素子が選択され、その画素電極85と対向電極92との間に電界が印加されると、その電界に応じて電気泳動素子93中の黒粒子または白粒子が対向電極92に引き寄せられる。これにより、黒粒子および白粒子によりコントラストが表現されるため、階調画像が表示される。
【0071】
この電子ペーパー表示装置によれば、有機TFT82が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能を向上させることができる。
【0072】
以上、実施形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本開示の薄膜トランジスタが適用される電子機器は、液晶表示装置、有機EL表示装置または電子ペーパー表示装置に限らず、他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)表示部などが挙げられる。この場合においても、表示性能を向上させることができる。
【0073】
さらに、本開示の薄膜トランジスタは、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。このような電子機器としては、例えば、センサマトリックスまたはメモリセルなどが挙げられる。この場合においても、よって、薄膜トランジスタの移動度およびオンオフ比が向上するため、性能向上を図ることができる。
【0074】
また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する
薄膜トランジスタ。
(2)
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極および前記ドレイン電極のいずれよりも大きな厚さを有する
上記(1)記載の薄膜トランジスタ。
(3)
前記導電性材料層は、前記絶縁性構造体の端面をも覆うように形成され、前記ソース電極と連結されている
上記(1)または(2)に記載の薄膜トランジスタ。
(4)
前記導電性材料層、ソース電極およびドレイン電極は、全て同一材料によって構成されており、
前記導電性材料層およびソース電極は、一括形成された連続層からなる
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(5)
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極と対向する第1端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ソース電極から遠ざかるように傾斜したものである
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(6)
前記絶縁性構造体は、前記ドレイン電極と対向する第2端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ドレイン電極に近づくように傾斜したものである
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
(7)
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する薄膜トランジスタを備えた電子機器。
(8)
基板上にゲート電極を形成する工程と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、
前記有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、
前記絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、前記絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層と一体化されたソース電極と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【符号の説明】
【0075】
2…ゲート電極、3…ゲート絶縁膜、4…有機半導体層、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7…導電層、8…絶縁構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極および前記ドレイン電極のいずれよりも大きな厚さを有する
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記導電性材料層は、前記絶縁性構造体の端面をも覆うように形成され、前記ソース電極と連結されている
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記導電性材料層、ソース電極およびドレイン電極は、全て同一材料によって構成されており、
前記導電性材料層およびソース電極は、一括形成された連続層からなる
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極と対向する第1端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ソース電極から遠ざかるように傾斜したものである
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記絶縁性構造体は、前記ドレイン電極と対向する第2端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ドレイン電極に近づくように傾斜したものである
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する薄膜トランジスタを備えた電子機器。
【請求項8】
基板上にゲート電極を形成する工程と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、
前記有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、
前記絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、前記絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層と一体化されたソース電極と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項1】
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極および前記ドレイン電極のいずれよりも大きな厚さを有する
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記導電性材料層は、前記絶縁性構造体の端面をも覆うように形成され、前記ソース電極と連結されている
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記導電性材料層、ソース電極およびドレイン電極は、全て同一材料によって構成されており、
前記導電性材料層およびソース電極は、一括形成された連続層からなる
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記絶縁性構造体は、前記ソース電極と対向する第1端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ソース電極から遠ざかるように傾斜したものである
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記絶縁性構造体は、前記ドレイン電極と対向する第2端面が前記有機半導体層から離れるほど前記ドレイン電極に近づくように傾斜したものである
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
ゲート電極と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向して配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層の上に設けられた絶縁性構造体と、
互いに離間して配置され、かつ、前記有機半導体層の上面の一部とそれぞれ接するソース電極およびドレイン電極と、
前記絶縁性構造体を覆い、前記ソース電極と接続されると共に前記ドレイン電極と分離された導電性材料層と
を有する薄膜トランジスタを備えた電子機器。
【請求項8】
基板上にゲート電極を形成する工程と、
絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように有機半導体層を形成する工程と、
前記有機半導体層の一部を覆うと共に一の端部がオーバーハング形状を有するように絶縁性構造体を形成する工程と、
前記絶縁性構造体およびその近傍領域を覆うように導電膜を形成することにより、前記絶縁性構造体を覆う導電性材料層と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層と一体化されたソース電極と、前記有機半導体層の上面の一部と接すると共に前記導電性材料層およびソース電極と分離されたドレイン電極とを一括形成する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−33886(P2013−33886A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170002(P2011−170002)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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