説明

薄膜トランジスタ及びそれを用いた有機EL表示装置

【課題】低温でレーザアニール工程を省略した薄膜トランジスタ
【解決手段】薄膜トランジスタにおいて、Si,Geを含有した半導体層4を適用し、この半導体層4のGe濃度が、絶縁基板1側で高く、半導体層4の結晶配向が絶縁基板1側から20nmの領域でランダム配向、半導体層4の膜表面側で(111)、(110)あるいは(100)優先配向性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si,Geを含有した薄膜トランジスタ及びそれを用いた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置などの周辺回路に適用可能な移動度の高い薄膜トランジスタ(以下「TFT」という。)として、多結晶Siを半導体層に適用したpoly−SiTFTがある。特に、TFTをより低温で形成するため、Geを導入した多結晶SiGeを半導体層に適用する方法がある。下記特許文献では、移動度特性を向上するために、Geを結晶粒界に偏析する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−231958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、背景技術では、高い移動度を示す多結晶SiGe膜を低温で形成するのが困難である。このため、軟化温度の低い安価なガラス基板上に素子を形成することが困難となる。この問題を解決するため、レーザアニールを適用する方法もある。しかし、この場合、レーザアニール工程が増加してプロセスコストが高くなるという欠点がある。また、レーザのメンテナンスにコストがかかるという欠点もある。
【0004】
本発明は、これらの課題を解決するために、低温でレーザアニールを用いずに、高品質の多結晶薄膜を形成して、移動度特性の良好なTFTを得ると共に、このTFTを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、Geの濃度を絶縁基板側で高くする構成とした。このようなGe濃度分布はRBS(Rutherford Back Scattering)などで評価することが可能である。絶縁基板側のGe濃度を高くすることにより成膜初期の結晶核を低温で生成することが可能になる。また、基板側表面を結晶核で被覆できるよう等方成長を促進するため、結晶面の配向性がランダムになるよう制御した。さらに、膜表面側のGe濃度を減少した。さらに、膜表面側で結晶面が(110)、(111)あるいは(100)配向になるようにした。これらの結晶配向性は、X線回折により評価することができる。このような構造にすることにより、結晶粒子を繊密に成長することができる。
【0006】
このような膜構造にするために、GeF4及びSi26を用いた反応熱CVDを用いて成膜した。特に、絶縁基板側のGe濃度を増加するために、成膜初期に導入するGeF4ガスの濃度を増加した。この濃度を高くすることによりGe濃度の高いランダム配向の結晶核を450℃と低い温度で形成できた。その後、GeF4濃度を減少し、Si26流量、Heなどのキャリアガスの流量及びガス圧力などを最適化することにより、良好な結晶性を示す配向性が高くGe濃度の低い半導体膜を形成できる。
【0007】
この半導体膜を用いて、図1に示すTFTを形成した。このTFTはレーザアニール工程を用いずに高品質な結晶膜を形成できる。また、このTFTを有機EL表示装置の駆動回路に適用することにより、有機EL表示装置を低コストで提供することが可能になる。また、液晶表示装置の駆動回路や周辺回路に適用することにより、液晶表示装置を低コストで提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0008】
Ge濃度を高くすることにより、結晶化温度を低下させることが可能になり、低温で良質な結晶核を形成することができる。また、ランダム配向にすることにより、基板側表面を結晶核で被覆できる。さらにその後の、優先成長面の選択の自由度が拡大し、成膜条件を調整することにより成長面を制御することができる。
【0009】
本発明では、膜表面側で(110)、(111)及び(100)配向に制御した。このような構造にすることにより、結晶粒を繊密に成長することができる。これにより、ゲート絶縁膜界面の欠陥準位密度を低減することが可能となり、しきい値(Vth)シフトの少ない安定した特性のTFTを提供することができる。また、Ge濃度を減少することによりTFTのオフ電流を低減することができる。
【0010】
また、本発明のTFTは、低温で形成できレーザアニールも不要である。このため、表示装置を低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明に係るトップゲート型TFTの断面模式図である。図1において、絶縁基板1上に下地層としてSiN膜2とSiO2膜3をPECVD(Plasma Emphatic CVD)法で成膜した。その上に、半導体層4として多結晶SiGe膜を形成した。このSiGe膜は、基板側20nm以下の領域でGe濃度が高く結晶配向性はランダムであり、膜厚40nm以上の領域でGe濃度が低く(110)配向性を示す構成を適用した。
【0013】
ここで、基板側20nm以下の領域のGe濃度は10at%以上、好ましくは15at%以上である。この領域のGe濃度10at%以上とすることで450℃の成膜で結晶性を示し、15at%以上では95%以上の結晶分率となった。このため、この領域のGe濃度を10at%以上とすることで、この上に成長する膜厚20nm以上の領域で良好な結晶膜を形成することができる。
【0014】
さらに、Ge濃度を15at%以上とすることで、ボトムゲート型TFTを形成した際でも、TFTの移動度5cm2/Vs以上を示すことがわかった。この移動度のTFTを適用することにより、有機EL素子を駆動することも可能になる。
【0015】
また、膜厚40nm以上の領域では、Ge濃度は20at%以下、好ましくは15at%以下にした。Ge濃度を20at%以下にすることにより、TFTのオフ電流を10-10A以下にでき、有機EL表示装置の駆動回路に適用できる。さらに、15at%以下にすることによりオフ電流を10-12A以下にでき、液晶表示装置の画素駆動に適用してもリーク電流が小さく高画質の映像を得ることができる。
【0016】
また、膜厚20nm以下の領域をランダム配向にすることにより、結晶性を良好にするとともに、この上に成長する膜の配向性を成膜条件により制御することが可能になる。この場合、X線回折ピーク強度として(220)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.5倍以上0.7倍以下、(311)ピーク強度が(111)強度の0.2倍以上0.4倍以下が望ましい。また、(400)ピーク強度の場合、(111)の0.05倍以上、0.07倍以下が望ましい。
【0017】
さらに、膜厚40nm以上の領域の結晶配向性を(110)とする場合、X線回折の(220)ピーク強度が(111)強度の0.8倍以上とすることにより繊密性の高い膜を形成できる。一方、(111)配向にする場合は、(111)ピーク強度を(220)強度の2.2倍以上とすることが望ましい。また、(100)配向にする場合には、(400)ピーク強度を(111)強度の0.1倍以Lにすることが望ましい。このような構造により繊密性の高い半導体を形成できる。
【0018】
このSiGe膜を形成するために、反応熱CVD法を用いた。この方法では、基板温度を450℃以上に加熱し、GeF4、Si26、Heを導入する。GeF4:Si26の流量比は0.005〜2:1、Si26:Heの流量比は1:10〜5000の範囲で良好な膜質のSiGe膜を形成することが可能である。
【0019】
前述の膜構成を作製するために、まず、GeF4とSi26との比率を、Si26を1としてGeF4を0.1以上に設定し導入した後、この比率を低下して成膜する。膜厚40nm以上でGe比率20at%以下にするためには、この比率を0.1以下にする。またガス圧力あるいは流量を変更する。このような2段成膜を適用することにより、前述の膜構成のSiGe膜を形成することが可能になる。
【0020】
トップゲート型TFTを形成する場合、半導体層4としてのSiGe膜を、ホトリソグラフィーを用いて島状に加工する。次いで、この上にゲート絶縁層5を形成する。ゲート絶縁層5の材料としては、SiO2やSiNなどが挙げられる。これらの膜をPECVD、スパッタリング法などで成膜する。また、プラズマ酸化、光酸化などを併用してもよい。この上に、ゲート電極配線6を形成する。ゲート電極配線6の材料としては、Si、Geやその合金、Nb、Mo、W、Ta、Cr、Ti、Fe、Ni、Coなどやそれらの合金が挙げられる。次いで、ホトリソグラフィーを用いてゲート電極配線パターンに加工した。
【0021】
この後、イオン打ち込みにより、P又はBを注入して、ドレインドープ領域4’とソースドープ領域4”を形成した。この上に、層間絶縁層7としてSiO2膜又はSiN膜を前述の方法で形成した後に、ホトリソグラフィーを用いてコンタクトホールを形成した。次いで、このコンタクトホールを通してソース電極配線9とドレイン電極配線10を形成した。これらの電極配線の材料としては、Nb、Mo、W、Ta、Cr、Ti、Fe、Ni、Coなどやそれらの合金が挙げられる。次いで、ホトリソグラフィー法によりソース電極配線パターンとドレイン電極配線パターンに加工した。
【0022】
さらに、この上に、保護性絶縁膜11としてSiN膜を、ホトリソグラフィーを用いて形成した後に、コンタクトホールを形成した。次いで、画素電極12として反射金属板や透明導電膜を形成し、ホトリソグラフィーを用いて加工した。
【0023】
有機EL表示装置を形成する場合、図2に示すように、この上に、有機ELの電荷輸送層13、発光層14、電荷輸送層15を蒸着法などにより形成し、さらに、上部電極16として透明導電膜を蒸着やスパッタリング法などで形成し、封止層17としてSiN膜を形成して、有機EL表示装置を作製した。作製した有機EL表示装置はTFTの安定性が良好なため高輝度で長寿命の特性を示した。
【0024】
また、液晶表示装置を形成する場合には、図3に示すように、画素電極12上に配向膜18を形成し、スペーサ19を介して対向基板20を張り合わせ、液晶21を封入して、TFT液晶表示装置を作製した。作製したTFT液晶表示装置は高精細な画像を示した。
【0025】
以上は、トップゲート型TFTについて説明したが、図4,5に示すように、ボトムゲート型TFTを形成することも可能である。
【実施例2】
【0026】
図2は、本発明に係るトップゲート型TFTを用いた有機EL表示装置の断面模式図である。図2において、まず、図1に示すように、絶縁基板1上に下地層としてSiN膜2とSiO2膜3をPECVD法で成膜した。その上に、半導体層4として多結晶SiGe膜を、反応熱CVDを用いて形成した。
【0027】
この際、Si26とGeF4とHeの混合ガスを用いた。まず、Si26:3sccm、GeF4:0.5sccm、He:1slm(=1000sccm)を導入し結晶核を形成した。次いで、Si26:3sccm、GeF4:0.03sccm、He:1slm導入した。ガス圧力は665PaとしSiGe結晶を成長した。膜厚は100nmである。RBSによる組成分布評価では、基板側20nm以下の領域で18at%以上であり、膜厚40nm以上の領域で13at%以下であった。
【0028】
また、X線回折による評価では、膜厚20nmでは、(220)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.60倍、(311)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.32倍とランダム配向であった。また、膜厚100nmでは、(220)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.91倍であり(110)配向性を示した。
【0029】
このSiGe膜を、ホトリソグラフィーを用いて島状に加工した。この上に、ゲート絶縁層5としてSiO2膜を、TEOSを用いたPECVDにより形成した。膜厚は100nmとした。次いで、スパッタリング法によりNb膜を形成し、ホトリソグラフィーを用いてゲート電極配線6に加工した。この上に、層間絶縁層7としてSiO2膜を、TEOSを用いたPECVDにより形成し、ホトリソグラフィーを用いてコンタクトホールを形成した。次いで、CrMo膜をスパッタリング法により形成し、ホトリソグラフィー法によりソース電極配線9とドレイン電極配線10に加工した。さらに、この上に、保護性絶縁層11としてSiN膜をPECVD法で形成し、ホトリソグラフィーを用いてコンタクトホールを形成した。次いで、画素電極12としてAl膜をスパッタリング法で成膜し、ホトリソグラフィーを用いて加工した。
【0030】
この上に、有機ELの電荷輸送層13、発光層14、電荷輸送層15を蒸着法などにより形成し、さらに上部電極16として透明導電膜を蒸着やスパッタリング法などで形成し、封止層17としてSiN膜をCat−CVD(Catalytic CVD:触媒CVD)法を用いて形成し、有機EL表示装置を作製した。作製した有機EL表示装置は高画質で長寿命の画像を示した。
【実施例3】
【0031】
図3は、本発明に係るトップゲート型TFTを用いた液晶表示装置の断面模式図である。図3において、実施例1と同様な方法で、絶縁基板1上に下地層としてSiN膜2とSiO2膜3を形成した。次いで、半導体層4として多結晶SiGe膜を、反応熱CVDを用いて形成した。
【0032】
この際、Si26とGeF4とHeの混合ガスを用いた。まず、Si26:3sccm、GeF4:0.3sccm、He:1slmを導入しガス圧力665Paとして結晶核を形成し、次いで、Si26:3sccm、GeF4:0.03sccm、He:1slm導入した。ガス圧力は1330Paとした。膜厚は100nmである。RBSによる組成分布評価では、基板側20nm以下の領域で15at%以上であり、膜厚40nm以上の領域で13at%以下であった。
【0033】
また、X線回折による評価では、膜厚20nmでは、(220)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.58倍、(311)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.31倍とランダム配向であった。又、膜厚100nmでは、(111)ピーク強度が(220)ピーク強度の2.5倍で(111)配向性を示した。
【0034】
このSiGe膜を、ホトリソグラフィーを用いて島状に加工した。実施例1と同様な方法で、ゲート絶縁層5、ゲート電極配線6、層間絶縁層7、ソース電極配線9、ドレイン電極配線10を形成した。さらに、実施例1と同じ方法で、保護性絶縁層11を形成した。次いで、画素電極12としてITO膜をスパッタリング法で成膜し、ホトリソグラフィーを用いて加工した。
【0035】
この上に、配向膜18を形成し、スペーサ19を介して配向膜18’を形成した対向基板20を張り合わせ、液晶21を封入し、TFT液晶表示装置を作製した。作製したTFT液晶表示装置は高精細な画像を示した。
【実施例4】
【0036】
図4は、本発明に係るボトムゲート型TFTを用いた有機EL表示装置の断面模式図である。図4において、まず、絶縁基板1上にゲート電極配線6としてNb膜をスパッタリングにより成膜しホトリソグラフィーを用いて加工した。この上に、ゲート絶縁層5としてSiO2膜を、TEOSを用いたPECVDにより成膜した。その上に、反応熱CVDを用いて多結晶SiGe膜を形成した。
【0037】
この際、Si26とGeF4とHeの混合ガスを用いた。まずSi26:3sccm、GeF4:0.3sccm、He:1slmを導入し結晶核を形成し、次いで、Si26:3sccm、GeF4:0.03sccm、He:2slm導入した。ガス圧力は665Paとした。膜厚は100nmである。RBSによる組成分布評価では、基板側20nm以下の領域で15at%以上であり、膜厚40nm以上の領域で、13at%以下であつた。また、X線回折による評価では、膜厚20nmでは、(220)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.58倍、(400)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.6倍とランダム配向であつた。また、膜厚100nmでは、(400)ピーク強度が(111)ピーク強度の0.12倍で(100)配向を示した。次いで、コンタクト層22としてn+Si膜をPECVD法で成膜した。この後、ホトリソグラフィーを用いてn+Si膜/多結晶SiGe膜を島状に加工した。
【0038】
この上に、Nb膜をスパッタリング法で成膜しホトリソグラフィーを用いてソース電極配線9とドレイン電極配線10に加工した。次いで、コンタクト層22のn+Si膜をエッチングした。さらに、この上に保護性絶縁膜11としてSiN膜をPECVD法で形成した後に、層間絶縁層7として有機樹脂を形成した。この後、ホトリソグラフィーを用いて、層間絶縁層7と保護性絶縁膜11にコンタクトホールを形成した。次いで、画素電極12としてAl膜をスパッタリング法で成膜し、ホトリソグラフィーを用いて加工した。
【0039】
この上に、有機EL素子の電荷輸送層13、発光層14、電荷輸送層15を蒸着法により形成し、さらに、上部電極16として透明導電膜を蒸着及びスパッタリングで形成し、封止層17としてSiN膜をCat−CVDを用いて形成し、有機EL表示装置を作製した。作製した有機El表示装置はTFTの安定性が良好なため高輝度で長寿命の特性を示した。
【実施例5】
【0040】
図5は、本発明に係るボトムゲート型TFTを用いた液晶表示装置の断面模式図である。図5において、実施例1と同様な方法で、絶縁基板1上にゲート電極配線6、ゲート絶縁層5、半導体層4、コンタクト層22、ソース電極配線9、ドレイン電極配線10を形成し、保護性絶縁膜11と層間絶縁層7を形成した。その後、ホトリソグラフィーを用いて、層間絶縁層7と保護性絶縁膜11にスルーホールを加工した。次いで、画素電極12としてITO膜をスパッタリング法で成膜し、ホトリソグラフィーを用いて加工した。
【0041】
この上に、配向膜18を形成し、スペーサ19を介して配向膜18’を形成した対向基板20を張り合わせ、液晶21を封入し、TFT液晶表示装置を作製した。作製したTFT液晶表示装置は高精細な画像を示した。
【0042】
以上、説明したように、本発明に係る多結晶薄膜をボトムゲートTFTに適用する際には、ゲート絶縁膜上に成長させるが、この部分をランダム配向となるよう制御することによりTFTチャネル部の結晶化率を向上することが可能になり、移動度を向上することが可能になる。また、膜表面側を、優先配向を示す構造にすることにより、膜が徴密化できオフ電流の低減が可能になる。また、バックチャネルエッチ構造において、コンタクト層をエッチングする際、膜表面側を、優先配向を示す半導体層を適用することにより、この層のエッチングレートを下げることができ、コンタクト層との選択比を向上できる。このため、半導体層の厚さを薄くすることが可能になる。また、コンタクト層のエッチングレートを上げることもできる。これにより、生産性を向上できる。また、TFT素子の寄生抵抗を下げることができるため、オン電流を増大することができる。また、半導体層の体積が減少するため熱励起される電荷を減少でき、オフ電流も下げることができる。
【0043】
また、この膜をトップゲートTFTに適用する際には、TFTチャネルとなる膜表面側を繊密な優先配向結晶粒にできるため、移動度を向上できる。
【0044】
移動度を最も向上するためには、(111)配向に制御することが望ましい。表面電荷密度は、[111]面が最も大きく、[110]面、[100]面の順に小さくなる。キャリアは基板と平行方向に走行する。基板に垂直に(111)配向させると、基板面と平行方向に表面電荷密度の小さい[100]面あるいは[110]面を向けることができ、キャリアの走行性が良好になる。したがって、優先配向方向を(111)配向に制御することにより移動度の高いTFTを作製することが可能になる。
【0045】
一方、[100]面が他の面と比較し良質な酸化膜が形成でき、次いで[110]面が比較的良質な酸化膜の形成が可能となる。このため、結晶成長を(100)配向に制御した場合では、ボトムゲートTFTにおいてはバックチャネル部、トップゲートTFTにおいてはフロントチャンル部の欠陥を低減することができ、オフ電流の低減を効果的に実施することが可能となる。
【0046】
さらに、結晶成長を(110)方向に制御することにより、移動度とオフ電流がバランスをとりながら比較的良好な特性のTFTを作製することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】トップゲート型TFTの断面模式図
【図2】トップゲート型TFTを用いた有機EL表示装置の断面模式図
【図3】トップゲート型TFTを用いた液晶表示装置の断面模式図
【図4】ボトムゲート型TFTを用いた有機EL表示装置の断面模式図
【図5】ボトムゲート型TFTを用いた液晶表示装置の断面模式図
【符号の説明】
【0048】
1…絶縁基板、2…SiN膜、3…SiO2膜、4…半導体層、4’…ドレインドープ領域、4”…ソースドープ領域、5…ゲート絶縁膜、6…ゲート電極配線、7…層間絶縁層、9…ソース電極配線、10…ドレイン電極配線、11…保護性絶縁層、12…画素電極、13…電荷輸送層、14…発光層、15…電荷輸送層、16…上部電極、17…封止層、18…配向層、19…スペーサ、20…対向基板、21…液晶、22…コンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜が、Si,Geを含有し、Geの濃度が絶縁基板側で高いことを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項2】
前記Ge濃度が、絶縁基板側20nm以下の領城で10at%以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ
【請求項3】
前記Ge濃度が、膜厚40nm以上の領域で20at%以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ
【請求項4】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶配向が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(110)配向性を示すことを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項5】
前記ランダム配向性を示すX線回折強度として、(220)強度が(111)強度の0.5倍以上0.7倍以下、(311)強度が(111)強度の0.2倍以上0.4倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ
【請求項6】
前記(110)配向性が、膜厚40nmより表面側でX線回折(220)強度が(111)強度の0.8倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ
【請求項7】
前記Geの濃度が、絶縁基板側で高いことを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ
【請求項8】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶配向が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(111)配向性を示すことを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項9】
前記ランダム配向性を示すX線回折強度として、(220)強度が(111)強度の0.5倍以上0.7倍以下、(311)強度が(111)強度の0.2倍以上0.4倍以下であることを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項10】
前記(111)配向性が、膜厚40nmより表面側でX線回折(111)強度が(220)強度の2.5倍以上であることを特徴とする請求項8に記載の薄膜トランジスタ
【請求項11】
前記Ge濃度が、絶縁基板側で高いことを特徴とする請求項8に記載の薄膜トランジスタ
【請求項12】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶配向が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(100)配向性を示すことを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項13】
前記ランダム配向性を示すX線回折強度として、(220)強度が(111)強度の0.5倍以上0.7倍以下、(400)強度が(111)強度の0.05倍以上0.07倍以下であることを特徴とする薄膜トランジスタ
【請求項14】
前記(100)配向性が、膜厚40nmより表面側でX線回折(400)強度が(111)強度の0.1倍以上であることを特徴とする請求項12に記載の薄膜トランジスタ
【請求項15】
前記Ge濃度が、絶縁基板側で高いことを特徴とする請求項12に記載の薄膜トランジスタ
【請求項16】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタを具備した有機EL表示装置において、前記多結晶薄膜が、Si,Geを含有し、Geの濃度が絶縁基板側で高いことを特徴とする有機EL表示装置
【請求項17】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶は移行が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(110)配向性を示すことを特徴とする有機EL表示装置
【請求項18】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶は移行が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(111)配向性を示すことを特徴とする有機EL表示装置
【請求項19】
絶縁基板上に、多結晶薄膜からなる半導体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を具備する薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶薄膜がSi,Geを含有し、前記多結晶薄膜の結晶は移行が絶縁基板側20nmの領域でランダム配向性を示し、膜表面側で(100)配向性を示すことを特徴とする有機EL表示装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−235658(P2008−235658A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74574(P2007−74574)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】