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薄膜フィルム及びその製造方法
説明

薄膜フィルム及びその製造方法

【課題】貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、非動物由来材料を用いて形成される薄膜フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する薄膜フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人は、外観を美しく整えることで、心が元気になり、豊かな気持ちになることができる。顔や身体の外観に悩みがある人にとっては勿論のこと、そのような悩みのない人にとっても、化粧によって外観を美しく整えることにより、心が元気になり、豊かな気持ちになることができる。したがって、化粧は、人が社会生活を送る上で重要な事項の一つである。化粧は、人が自分の中の元気を引き出す作業ともいえる。そのため、太古の昔から、様々な化粧が行われてきた。
【0003】
近年では、生活の質の向上に伴って、皮膚のつや、潤い、白さの改善や、シワ防止などを目的とした化粧用シートが注目されている。そのような化粧用シートとして、従来、木材繊維由来の紙に保湿剤などを貼付してなるシワ改善シートが提供されていたが(例えば、特許文献1参照)、基材が紙であるために破れ易く、また皮膚に対する密着性が悪いうえ、装着時に違和感があるなど装着感に劣るものであった。
【0004】
そのような背景のもと、シート状パックなどの化粧品材料として、カゼイン及びシルク由来の天然系原料の利用が検討されてきた。また、非特許文献1には、キトサン及びアルギン酸を交互に積層した皮膚貼合薄膜フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3215852号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T.Fujie et al.,Adv.Funct.Mater.,2009年,19巻,2560−2568頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
狂牛病(BSE)問題が惹起されて以降、例えば化粧品分野では、安全性を考慮し、天然由来成分の中でも、植物や微生物などの非動物由来材料の利用開発が望まれている。
【0008】
非特許文献1に記載の皮膚貼合薄膜フィルムは、粘着剤などを一切必要とせずに皮膚に貼合可能であり、化粧料又は化粧料成分を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼合シート、及び化粧保護シートとしての使用を目的とする薄膜フィルムに関するものである。しかしながら、キトサンはカニやえびの殻から炭酸カルシウム、タンパク質、色素などを除いて精製したキチンを脱アセチル化して、抽出精製したものであり、非動物由来材料の利用開発が望まれている化粧品分野ではあまり好ましい材料ではない。
【0009】
このように、化粧用の皮膚貼合用シートは、(1)肌に貼付した状態にある貼付剤自体が目立って不自然である、(2)被適用者が貼付状態に違和感を持つ、(3)動物由来材料の利用は好ましくないなどの問題を抱えていた。そのため、これらの問題を総合的に解決することができる新たな薄膜フィルムが求められている。
【0010】
そこで、本発明は、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、非動物由来材料を用いて形成される薄膜フィルムを提供することを目的とする。本発明はまた、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、非動物由来材料を用いて形成される薄膜フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩(以下「ポリリジン等」ともいう。)を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩(以下「アルギン酸等」ともいう。)を含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する薄膜フィルムを提供する。
【0012】
上記薄膜フィルムは、上記構成を有しているため、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れ、かつ皮膚に対する自己密着性を有する。このため、貼付時に目立ちにくく、かつ貼付時の違和感が低減されている。また、ポリリジン等及びアルギン酸等は、非動物由来材料であるため、上記薄膜フィルムは安全性が高い。さらに、ポリリジン等及びアルギン酸等は生分解性又は生体適合性の高い材料であるため、上記薄膜フィルムは皮膚アレルギーを起こしにくいという利点がある。
【0013】
上記薄膜フィルムは、A層とB層とが交互に積層されたものであることが好ましい。A層とB層とが交互に積層されたものであることによって、機械的強度、及び自己密着性により優れた薄膜フィルムとなる。なお、A層とB層とが交互に積層されるとは、1層のA層と1層のB層とが交互に積層されている場合に限られず、複数の層からなるA層と、複数の層からなるB層とが交互に積層されている場合も含む。
【0014】
上記薄膜フィルムは、上述のような効果を奏するため、皮膚貼合用薄膜フィルムとして好適に使用することができる。また、化粧用薄膜フィルムとして好適に使用することができる。さらに、化粧用皮膚貼合用薄膜フィルムとしても好適に使用することができる。
【0015】
本発明はまた、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体若しくはこれらの塩を含む溶液、又はアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体若しくはこれらの塩を含む溶液に基材を接触させて、基材の表面にポリリジン若しくはポリリジン誘導体若しくはこれらの塩、又はアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体若しくはこれらの塩に由来する層を形成する層形成工程と、
(i)ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層に、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を接触させて、前記ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層上にアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層を形成するステップと、
(ii)アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層に、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を接触させて、前記アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層上にポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層を形成するステップと、
を繰り返す積層工程と、を備える、薄膜フィルムの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の製造方法は、上記各工程を有するため、上記薄膜フィルムを簡便かつ迅速に製造することができる。また、工業的に生産するのが容易であり、汎用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薄膜フィルムは、ナノメートルサイズのシートであるため、皺や肌の細かな凹凸(微細な溝)にも適合し、さらに、透明であるために貼付箇所が目立つことがない。また、非常に薄い薄膜であるため、貼り付けた際の違和感がない。さらに、皮膚に対する自己密着性を有するため、接着剤(粘着剤)を用いる必要がなく、接着剤によるかぶれや肌荒れの心配がない。さらに、ポリリジン等及びアルギン酸等の生分解性又は生体適合性ポリマーを使用しているため、皮膚に貼り付けた際に皮膚アレルギーが生じにくく、かつ廃棄後、環境に悪影響を及ぼさないとの利点を有する。
【0018】
本発明の薄膜フィルムに用いるポリリジン等は微生物による発酵生産物であり、また、アルギン酸等は主に褐藻に含まれる多糖類の一種である。したがって、本発明の薄膜フィルムは動物由来材料を使用していないため、安全性が高く、皮膚貼合用、又は化粧用として好適に使用することができる。
【0019】
また、本発明の薄膜フィルムは、化粧料又は化粧料成分を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼合シート、及び化粧保護シートとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】SiO基板上にカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを交互に積層したときの、積層のサイクル数(回)と積層膜の膜厚(nm)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る薄膜フィルムは、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層とを有する。
【0022】
〔ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩〕
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩は、カチオン性ポリマー(1分子中に2個以上のカチオン性基を有するポリマー)の一種である。
【0023】
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩としては、後述するアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩と、水の存在下でゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができるものであれば特に制限されない。このように形成されるポリイオンコンプレックスは、生体組織接着作用を発揮し、かつ、生体に対する有害反応が少ないものである。
【0024】
ポリリジンは、アミノ酸の一種であるリジンをモノマー単位とするポリペプチド(ポリマー)である。本実施形態に係るポリリジンは、モノマー単位が、D−リジンであってもよく、L−リジンであってもよく、又はD−リジンとL−リジンの混合物であってもよい。ポリリジンは非動物由来材料である。
【0025】
ポリリジン誘導体としては、例えば、エステル化物、ハロゲン化物、アミド化物が挙げられる。
【0026】
ポリリジン又はポリリジン誘導体の塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸等の無機酸との塩、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、安息香酸及びグルコン酸等の有機酸との塩、カプロン酸、ラウリン酸及びステアリル酸等の中鎖又は長鎖飽和脂肪酸との塩、並びに、オレイン酸、リノール酸及びアラキドン酸等の中鎖又は長鎖不飽和脂肪酸との塩が挙げられる。中でも水に対する溶解性が良好であるとの観点から、無機酸との塩が好ましく、臭化水素酸塩が特に好ましい。
【0027】
さらに、上述のポリリジン等を架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。ポリリジン等を架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。例えば、ポリリジン等のアミノ基をジカルボン酸と縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。
【0028】
ポリリジン等の分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、薄膜フィルムの製造時に溶液の粘度が高くなり流延が困難となる傾向があること、及び生体吸収性が低下する傾向があることから、ポリリジン等の粘度平均分子量は1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0029】
本明細書において、「粘度平均分子量」とは、一般的な測定方法である粘度法により評価すればよく、例えば、JIS K 7367−3:1999に基づいて測定した極限粘度数[η]からMνを算出すればよい。
【0030】
〔ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液〕
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液(以下「ポリリジン等の溶液」ともいう。)には、ポリリジン、ポリリジン誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリリジン等の溶液中のポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩の濃度は、総量で、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2.0質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。
【0032】
ポリリジン等の溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、0.5〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、1〜100mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。本明細書において、粘度とは、A&D社製音叉型振動式粘度計SV−10を用い、サンプル量10mL、20℃で測定した値である。
【0033】
ポリリジン等の溶液の溶媒としては、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩の電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。
【0034】
ポリリジン等の溶液は、pHを調整する必要はなく、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を溶媒に溶解させたものをそのまま用いることができる。例えば、pHは1.2〜6.6にすることができる。
【0035】
〔アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩〕
アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩は、アニオン性ポリマー(1分子中に2個以上のアニオン性基を有するポリマー)の一種である。アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩は、天然の多糖類であり、生体適合性に優れ、かつ入手が容易であることから、好ましい材料である。
【0036】
アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩としては、前述したポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩と、水の存在下でゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができるものであれば特に制限されない。
【0037】
アルギン酸誘導体としては、例えば、水酸基の一部又は全部を、酢酸、硝酸、硫酸、及びリン酸等と反応させたもの;カルボキシル基又はカルボキシレート基の一部をエチレングリコール、及びプロピレングリコール等の低分子アルコールでエステル化した化合物が挙げられる。
【0038】
アルギン酸誘導体としては、具体的には、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸エチレングリコールエステル、及びアルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
【0039】
これらのアルギン酸誘導体におけるエステル化度は特に制限されないが、エステル化度が高くなりすぎると、カルボキシル基又はカルボキシレート基の割合、すなわちアニオン性が低下し、上記ポリリジン等との間に形成されるポリイオンコンプレックスの機械的強度が低下する傾向にある。そこで、上記アルギン酸誘導体におけるエステル化度は40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0040】
アルギン酸又はアルギン酸誘導体の塩としては、これらと1価のイオンとの塩、例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩が挙げられる。中でも、水に対する溶解性が高いとの観点から、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0041】
さらに上述のアルギン酸等を架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。アルギン酸等を架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。例えば、アルギン酸等のカルボキシル基又はカルボキシレート基をジアミンと縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。
【0042】
アルギン酸等の分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、薄膜フィルムの製造時に溶液の粘度が高くなり流延が困難となる傾向があること、及び生体吸収性が低下する傾向があることから、アルギン酸等の粘度平均分子量は1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0043】
〔アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液〕
アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液(以下「アルギン酸等の溶液」ともいう。)には、アルギン酸、アルギン酸誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される2種以上を併用してもよい。
【0044】
アルギン酸等の溶液中のアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩の濃度は、総量で、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。
【0045】
アルギン酸等の溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、1〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、10〜100mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
【0046】
アルギン酸等の溶液のpHは、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩の溶解性が良好、及び成膜性に優れるとの観点から、1.6〜5.4の範囲内であることが好ましく、1.8〜5.0の範囲内であることがより好ましく、2.0〜4.5の範囲内であることが更に好ましく、2.5〜4.0の範囲内であることが更により好ましい。
【0047】
アルギン酸等の溶液のpHは、例えば、酢酸、リンゴ酸、プロピオン酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を添加することで調整できる。
【0048】
アルギン酸等の溶液の溶媒としては、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩の電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。
【0049】
〔薄膜フィルム〕
本実施形態に係る薄膜フィルムは、ポリリジン等の溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸等の溶液を用いて形成されるB層と、を有する。また、本実施形態に係る薄膜フィルムは、A層とB層が交互に積層された交互積層薄膜であることが好ましい。
【0050】
A層とB層とが交互に積層されるものである場合、積層の数は特に限定されるものではないが、薄膜フィルムの透明性を確保しやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが1〜50層であることが好ましい。また、薄膜フィルムが、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが3〜30層とすることがより好ましく、4〜20層とすることが特に好ましい。本実施形態に係る薄膜フィルムは、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を用いているため、1層の厚みを厚くすることができる。このため、層の数が少なくても十分な機械的強度を確保することができる。
【0051】
本実施形態に係る薄膜フィルムにおけるA層とB層の積層構造は、例えば、薄膜フィルムをIR、NMR、TOF−SIMS等で観察することにより、確認することができる。
【0052】
本実施形態に係る薄膜フィルムの膜厚は特に制限されないが、自己密着性、吸水性、及び乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜250nmの範囲内であることがより好ましく、40nm〜200nmの範囲内であることが更に好ましく、60nm〜150nmの範囲内であることが更により好ましい。
【0053】
本実施形態に係る薄膜フィルムには、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、化粧料及び化粧料成分が徐々に薄膜フィルムから溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。
【0054】
化粧料としては、保湿クリーム、スキンクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、及び美容ジェル等のスキンケアに用いられる化粧料全般を用いることができる。化粧料成分としては、化粧品学的に許容される皮膚に有効な成分であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、保湿剤、ホワイトニング成分、しみ取り成分、防皺成分、ビタミン類、抗炎症成分、血流促進成分、湿潤成分、油分、及び金属微粒子等の化粧料に用いられる成分を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
このような化粧料成分としては、例えば、アーモンド油、アクリル酸アルキルコポリマー、麻セルロース、アシタバエキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、キサンチン、アスタキサンチン、アスパラガスエキス、アスパラギン酸、アズレン、アセロラエキス、アデノシン三リン酸2Na、アボカド油、アマチャエキス、アミノ酪酸、アラニン、アラントイン、アルギニン、アルギン酸Na、アルジルリン、アルテアエキス、アルニカエキス、アルブミン、アロエベラエキス‐2−キダチアロエエキス、安息香酸塩Na、イチョウエキス、イノシトール、ウコンエキス、ウワウルシエキス、エイジツエキス、塩化ナトリウム、オイスターエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オリーブ油、オリザノール、海塩、加水分解ケラチン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解コンキリオン、加水分解シルク、加水分解卵殻膜、加水分解卵白、褐藻エキス、カフェイン、カミツレエキス、カラミン、カリンエキス、カロチン、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カンフル、キイチゴエキス、キウイエキス、キシリトール、キトサン、キュウリエキス、クオタニウム‐73、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、グリコール酸、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸2K、グリチルレチン酸ステアリル、グルコース、グルタチオン、グルタミン酸、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、ケ−プアロエエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、コエンザイムQ10、コーヒーエキス、コーンスターチ、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココベタイン、ゴボウエキス、ゴマ油、コムギデンプン、コムギ胚芽エキス、コメヌカエキス、コレステロール、コンフリーエキス、酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、サザンカオイル、サフラワー油、サリチル酸、サリチル酸Na、酸化亜鉛、酸化チタン、サンザシエキス、シアノコバラミン、シイタケエキス、ジオウエキス、ジグリセリン、シコンエキス、シソエキス、ジヒドロコレステロール、ジフェニルジメチルメコン、シモツケソウエキス、酒石酸、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シルク、シルクエキス、水添レシチン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、セイヨウキヅタエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、セタノール、セラミド3、セリン、セルロースガム、ソウハクヒエキス、ソルビトール、ダイズエキス、ダイズ発酵エキス、月見草油、ドクダミエキス、トコフェロール、トレハロース、ナイアシンアミド、ニコチン酸トコフェロール、乳酸、乳酸Na、尿素、バクガエキス、ハチミツ、パパイン、ハマメリスエキス、パルミチン酸レチノール、パンテノール、ヒアルロン酸Na、ビオチン、ヒキオコシエキス、ヒマシ油、ヒマワリ油、ピリドキシンHCl、ビワ葉エキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子油、プラセンタエキス、プルラン、ベタイン、ヘチマエキス、ボタンエキス、ホップエキス、ホホバオイル、メドウフォーム油、メトキシケイヒサンオクチル、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ヤシ油、ユーカリエキス、ユーカリ油、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨウ化ニンニクエキス、葉酸、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラズベリーケトン、ラクトフェリン、ラノリン、ラベンダーエキス、リシン、リシンHCl、リノール酸、リボフラビン、硫酸Na、リンゴエキス、レイシエキス、レシチン、レゾルシン、レタスエキス、レモンエキス、レモン油、ロイシン、ローズ水、ローズヒップ油、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリー、ワレモコウエキス、AHA、BG、DNA、PCA−Na、PCA−Naアラントイン、PG、PPG−28ブテス−35、RNA−NA、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、α−アルブチン、ムコ多糖、クレアチン、ジアセチルボルジン、ビタミンA及びその誘導体、ヒドロキノン、リポ核酸及びその塩、アミノ酸及びその誘導体、各種植物エキス、各種動物由来抽出物、及び金属微粒子が挙げられる。金属微粒子としては、金、銀、白金、及びパラジウム等の化粧品用着色剤、及び抗酸化剤等として用いられる金属が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る薄膜フィルムは、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を皮膚に塗布し、その上に薄膜フィルムを貼り合わせるようにして用いることもできる。この場合、化粧料及び化粧料成分が保持され、剥がれ落ちにくいという効果が得られる。
【0057】
本実施形態に係る薄膜フィルムは、薄膜フィルムを肌の上に貼り合せた後、その上に化粧料又は化粧料成分を塗布するように用いることもできる。この場合、皺、たるみ、しみ、あざ、そばかす、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡、又は皮膚疾患による変色等のある肌を目立たなくすることができる。
【0058】
〔薄膜フィルムの製造方法〕
本実施形態に係る薄膜フィルムは、例えば、基材と、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液(以下「溶液A」ともいう。)と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液(以下「溶液B」ともいう。)とから、Langmuir,Vol.13,pp.6195−6203,(1997年)に記載された交互積層法によって製造することができる。
【0059】
〔基材〕
基材は、薄膜フィルムを製造する際の支持基板として機能する。基材として使用可能な材料としては、例えば、樹脂、シリコーン等の半導体、金属、セラミックス、ガラス、紙、不織布、無機非金属、木質、及び粉体等が挙げられる。基材の形状はフィルム、シート、板、及び曲面を有する形状等任意の形状とすることができる。その中でも量産性を考慮すると、基材としてはフレキシブル性を有する樹脂フィルムが好ましい。
【0060】
フレキシブル性を有する樹脂フィルムを用いる場合の樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、実用的な観点から、5μm〜500μmが好ましい。
【0061】
樹脂フィルムの樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポロプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂等、又はこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
これらの樹脂フィルムの中でも特に、積層膜の接着性により優れることからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。
【0062】
ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
【0063】
金属としては、例えば、金、クロム、銀、銅、鉄、チタン、ニッケル、タングステン、タンタル、アルミニウム、白金等が挙げられる。また、これらの合金である、SUS316L等のステンレス鋼、Ti−Ni合金若しくはCu−Al−Mn合金等の形状記憶合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金又はタングステン合金等の合金を用いることもできる。
【0064】
セラミックとしては、例えば、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられる。また、これらの混合物を用いることもできる。
【0065】
紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が挙げられる。
【0066】
不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、硝子等の繊維からなる不織布が挙げられる。紙や不織布は、その繊維間若しくは他層との層間強度を強化したものでもよい。また、ケバ立ち防止のため、又は浸透性抑制のために、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)したものでもよい。
【0067】
無機非金属としては、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料等が挙げられる。
【0068】
木質としては、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0069】
粉体としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、板状酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化クロム、群青、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、板状シリカ、カオリン、シリマナイト、水酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ホウ素、シリカ−アルミナ粉末、ベントナイト、スメクタイト、フッ化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の無機顔料、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリエチレン粉体、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンガム、シルクパウダー、カルナバワックス、ライスワックス、デンプン、微結晶セルロース等の有機粉体、ローダミンB等の有機色素、赤色201号、黒色401号、黄色4号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機着色料、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母等の複合粉体、表面処理がなされている粉体等が挙げられる。その形状としては、球状、板状、針状、繊維状等通常化粧料に用いられる形状、粒径であれば構わない。好ましい粉体は無機顔料である。
【0070】
また、基材の表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン処理、アルカリや酸等による化学的エッチング処理等を施してもよい。
【0071】
基材は、基材上に樹脂膜、無機膜又は有機材料と無機材料とを含む膜(有機−無機膜)が積層されていてもよい。それら樹脂膜層、無機膜層又は有機−無機膜層からなる積層構造は基材表面の一部を覆っていればよい。また、積層構造中、最表面層に位置しない膜は、極性基を有する必要はない。
【0072】
<溶液A及び溶液B>
溶液A及び溶液Bとしては、上述のポリリジン等の溶液、及びアルギン酸等の溶液をそれぞれ用いることができる。
【0073】
<薄膜フィルムの製造方法>
本実施形態に係る薄膜フィルムの製造方法は、具体的には、溶液A又は溶液Bに基材を接触させて、基材の表面にポリリジン等又はアルギン酸等に由来する層を形成する層形成工程と、
(i)ポリリジン等に由来する層に、溶液Bを接触させて、ポリリジン等に由来する層上にアルギン酸等に由来する層を形成するステップと、
(ii)アルギン酸等に由来する層に、溶液Aを接触させて、アルギン酸等に由来する層上にポリリジン等に由来する層を形成するステップと、を繰り返す積層工程と、を備える。
【0074】
この交互積層法によると、基材上に形成されるポリリジン等に由来する層(又はアルギン酸等に由来する層)と、溶液B(又は溶液A)とが接触することで、ポリリジン等及びアルギン酸等が交互に吸着して積層膜が形成される。また、上記接触によりポリリジン等又はアルギン酸等の吸着が進行して表面電荷が反転すると、さらなる静電吸着は起こらなくなるため、溶液A又は溶液Bとの接触により形成される層の厚さは制御することができる。
【0075】
層形成工程では、溶液Aに基材を接触させて、基材の表面にポリリジン等に由来する層を形成するか、又は溶液Bに基材を接触させて、基材の表面にアルギン酸等に由来する層を形成する。基材の表面が負に帯電している場合は前者を、基材の表面が正に帯電している場合は後者を行うことが好ましい。また、基材の表面の少なくとも一部を、溶液A又は溶液Bに接触させればよい。溶液A又は溶液Bとの接触は、2回以上に分けて行ってもよい。
【0076】
積層工程では、ステップ(i)又はステップ(ii)において、表面電荷が反転すればよい。また、接触の回数は特に限定されるものではない。例えば、ステップ(i)において、溶液Bとの接触を2回以上に分けて行ってもよく、ステップ(ii)において、溶液Aとの接触を2回以上に分けて行ってもよい。
【0077】
積層工程において、ステップ(i)とステップ(ii)とを繰り返す回数に特に制限はないが、薄膜フィルムの透明性を確保しやすい傾向にあることから、ポリリジン等に由来する層及びアルギン酸等に由来する層のいずれもが1〜50層となるまで繰り返すことが好ましい。また、薄膜フィルムが、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、ポリリジン等に由来する層及びアルギン酸等に由来する層のいずれもが3〜30層となるまで繰り返すことがより好ましく、4〜20層となるまで繰り返すことが特に好ましい。なお、積層工程における繰り返し回数を制御することによって、薄膜フィルムの膜厚を制御することができる。本実施形態に係る薄膜フィルムの製造方法では、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いているため、1層の厚みを厚くすることができる。すなわち、層の数が少なくても十分な機械的強度を有する薄膜フィルムを製造することができるため、ステップ(i)とステップ(ii)とを繰り返す回数を少なくすることが可能となり、製造工程を短縮することができる。
【0078】
上記製造方法においては、層形成工程又は積層工程における溶液A又は溶液Bとの接触後、吸着面をリンスすることが好ましい。これにより、吸着面から余分な材料を除去することができる。
【0079】
リンスに用いるリンス液としては、水、有機溶媒又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0080】
上記製造方法においては、基材、ポリリジン等に由来する層又はアルギン酸等に由来する層を、溶液A又は溶液Bに浸漬することにより接触させることが好ましい。例えば、層形成工程においては、基材を溶液A又は溶液Bに浸漬することにより接触させることが好ましく、積層工程においては、ポリリジン等に由来する層(又はアルギン酸等に由来する層)を溶液B(又は溶液A)に浸漬することにより接触させることが好ましい。これにより、より一層工業的に生産するのが容易となり、より一層汎用可能な製造方法とすることができる。
【0081】
積層膜の形成装置として、J.Appl.Phys.,Vol.79,pp.7501−7509,(1996)、特願2000−568599号等に記載されたディッパーと呼ばれる装置を用いてもよい。ディッパーを用いる場合、基材を固定したアームが自動的に動き、プログラムに従って基材等を溶液A中、溶液B中又はリンス液中に順次浸漬させることができる。
【0082】
交互に浸漬する方法(以下「交互浸漬法」ともいう。)によれば、表面電荷が反転する限り、膜の形成を継続することができる。そのため、通常のディップコート法よりも、交互浸漬法で形成した薄膜の膜厚均一性は高く、かつ膜厚制御性も高い。
【0083】
また、交互浸漬法によれば、基材の一部又は全部が筒状、糸状、繊維、発泡体等の形状を有していても、浸漬することにより溶液が入り込むことができるものであれば、積層膜がその表面に形成されるので使用することができる。また、基材の表面が凹凸形状を有していても、表面の構造に追従して積層膜を形成することができる。さらに、基材表面がナノメートルスケールやサブミクロンスケールの構造を有していても、その構造に追従して積層膜を形成することができる。
【0084】
本実施形態に係る薄膜フィルムは、基材に溶液A又は溶液Bを滴下又はスプレーするスピンコート法で積層膜を形成することにより製造してもよい。その際、リンス液は滴下、スプレー若しくはシャワー又はそれらを組み合わせた方法で供給されてもよい。基材は、搬送や回転等の運動を行っていてもよい。しかしながら、スピンコート法は溶液A、溶液B等の使用量が多く、また、一枚一枚の成膜になるため、量産性に優れないというデメリットがある。
【0085】
いずれの製造方法を用いる場合も、溶液A又は溶液Bの溶媒としては、それぞれ、ポリリジン等又はアルギン酸等を溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリリジン等又はアルギン酸等の電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。ポリリジン等又はアルギン酸等の溶液中の濃度は特に制限されるものではなく、各製造方法に応じて適宜設定すればよい。
【0086】
さらに、ポリリジン等及びアルギン酸等の少なくとも一方が塩であり、その塩におけるカチオン基又はアニオン基の対イオンを除去することによりポリリジン等又はアルギン酸等の水への溶解性が低下する場合、薄膜フィルムを形成した後に薄膜フィルムに含まれる対イオンを除去することによって、薄膜フィルムの力学的強度を向上させることができる。対イオンの除去は、例えば、洗浄工程の回数を増やす、pH調整液に浸す等の方法により行うことができる。
【0087】
本実施形態に係る薄膜フィルムの形状や大きさは、例えば、肌の形状や大きさに合わせて適宜設定することができる。薄膜フィルムの形状としては、例えば、長方形、正方形、三角形、その他の多角形、円形、三日月形状、楕円形、及びしずく型形状が挙げられる。本実施形態に係る薄膜フィルムは、フリーサイズのテープ又はシートをハサミ等により、所望の形状と大きさに切り抜いて使用することもできる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
カチオン性ポリマーとしてポリリジン塩酸塩水溶液(アルドリッチ社製:粘度平均分子量90,000、粘度12.5mPa・s、濃度:0.1質量%)、及びキトサン水溶液(キミカ社製:粘度平均分子量90,000、粘度12.5mPa・s、濃度:0.1質量%)、アニオン性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム水溶液(和光純薬社製:粘度平均分子量100,000、粘度6.7mPa・s、濃度:0.1質量%)、pH調整剤として酢酸(和光純薬社製)、及びリンゴ酸(和光純薬社製)を用いた。溶液のpHの測定にはpHメータD−50(HORIBA社製)を用いた。
【0090】
〔実施例1〕
ポリリジン塩酸塩水溶液は、上記0.1質量%のポリリジン塩酸塩水溶液をそのまま使用した。アルギン酸ナトリウム水溶液は、0.1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液に酢酸を滴下して、pHを3.5に調整したものを使用した。
SiO基板(旭日産業製、5インチシリコンウエハ:30mm×70mm×1.0mm厚)を、(ア)ポリリジン塩酸塩水溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水(比抵抗18MΩ・cm)に1分間浸漬し、(イ)アルギン酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水に1分間浸漬した。
(ア)と(イ)を順番に行う手順を1サイクルとして、このサイクルを10回繰り返し、SiO基板上にポリリジン塩酸塩とアルギン酸ナトリウムの積層膜(薄膜フィルム)を得た。
【0091】
〔比較例1〕
ポリリジン塩酸塩水溶液をキトサン水溶液(上記0.1質量%のキトサン水溶液をそのまま使用した。)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0092】
〔比較例2〕
サイクルを50回繰り返したこと以外は比較例1と同様の操作を行った。
【0093】
実施例1及び比較例2で得られた薄膜フィルムを基材から剥離したのち、以下に示す評価方法に従って、目立ちにくさ、違和感及び保湿性を評価した。なお、比較例1で得られた薄膜フィルムは、基材から剥離することが困難であり、目立ちにくさ、違和感及び保湿性を評価できなかった。
【0094】
〔目立ちにくさの評価〕
30mm×30mmの大きさに裁断した薄膜フィルムを用いて、「目立ちにくさ」を目視により評価した。裁断した薄膜フィルムを成人女性(被験者)の頬部に貼付し、被験者の貼付状態について、パネリスト(成人女性)5名が目視により、「目立ちにくい」又は「目立ちやすい」の2段階で評価した。3名以上のパネリストが「目立ちにくい」と評価した場合を「A」、2名のパネリストが「目立ちにくい」と評価した場合を「B」、1名以下のパネリストが「目立ちにくい」と評価した場合を「C」とした。
【0095】
〔違和感の評価〕
薄膜フィルムを成人女性5名の頬部に貼付し、違和感の有無を「違和感がある」又は「違和感がない」の2段階で評価してもらった。4名以上が「違和感がない」と評価した場合を「AA」、3名が「違和感がない」と評価した場合を「A」、2名が「違和感がない」と評価した場合を「B」、1名以下が「違和感がない」と評価した場合を「C」とした。
【0096】
〔膜厚測定〕
SiO基板上に得られた薄膜フィルムの膜厚は薄膜測定装置F20(フィルメトリクス社製)によって測定した。
【0097】
〔保湿性評価〕
モニター10名の薄膜フィルム貼付前の被検部位(目尻の部分)の角層水分量を、角層水分量計(アサヒバイオメッド社製)におけるコンダクタンス値にて評価した。
その後、実施例1及び比較例1〜2の薄膜フィルムを、被検部位に15分間貼付して剥離した後30分後の角層水分量について角層水分量計(アサヒバイオメッド社製)におけるコンダクタンス値にて評価した。薄膜フィルム貼付前後におけるコンダクタンス値を比較し、10名の平均にてコンダクタンス値が15%以上増加していた場合を「AA」、10%以上15%未満増加していた場合を「A」、2%以上10%未満増加していた場合を「B」、2%未満増加していた場合を「C」として評価した。
【0098】
膜厚、目立ちにくさ、違和感及び保湿性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0099】
カチオン性ポリマーとしてポリリジン塩酸塩を用いた場合、目立ちにくさ、違和感及び保湿性に優れる薄膜フィルムを得ることができた。
【0100】
また、カチオン性ポリマーとしてポリリジン塩酸塩を用いた場合(実施例1)、及びキトサンを用いた場合(比較例1及び2)のサイクル数と得られた薄膜フィルムの膜厚との関係を図1に示す。図1から明らかなように、カチオン性ポリマーとしてポリリジン塩酸塩を用いた場合には、1サイクルあたりの膜厚の増加量が、カチオン性ポリマーとしてキトサンを用いた場合と比べて、極めて大きい。したがって、カチオン性ポリマーとしてポリリジン塩酸塩を用いた場合には、少ないサイクル数で厚い薄膜フィルムを製造することができるため、製造工程を短縮することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する薄膜フィルム。
【請求項2】
前記A層と前記B層とが交互に積層されたものである、請求項1に記載の薄膜フィルム。
【請求項3】
皮膚貼合用である、請求項1又は2に記載の薄膜フィルム。
【請求項4】
化粧用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜フィルム。
【請求項5】
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体若しくはこれらの塩を含む溶液、又はアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体若しくはこれらの塩を含む溶液に基材を接触させて、該基材の表面にポリリジン若しくはポリリジン誘導体若しくはこれらの塩、又はアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体若しくはこれらの塩に由来する層を形成する層形成工程と、
(i)ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層に、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を接触させて、前記ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層上にアルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層を形成するステップと、
(ii)アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層に、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を接触させて、前記アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩に由来する層上にポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩に由来する層を形成するステップと、
を繰り返す積層工程と、を備える、薄膜フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−71907(P2013−71907A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211465(P2011−211465)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】