説明

薄膜半導体装置及びその製造方法

【課題】チャネル保護型の薄膜トランジスタにおいて、オフ特性及び信頼性に優れた薄膜半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1を準備する第1工程と、基板1上にゲート電極2を形成する第2工程と、ゲート電極2上に第1絶縁膜としてゲート絶縁膜3を形成する第3工程と、ゲート絶縁膜3上に非結晶質の半導体薄膜4aを形成する第4工程と、非結晶質の半導体薄膜4a上に第2絶縁膜としてチャネル保護膜5を形成する第5工程と、チャネル保護膜5の上方からレーザー光を照射することにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化させて結晶化領域を形成する第6工程と、結晶化領域の上方にソース電極7S及びドレイン電極7Dを形成する第7工程と、を含み、第5工程において、チャネル保護膜5は、前記レーザー光に対して透明となるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜半導体装置及びその製造方法に関し、特にチャネル保護型の薄膜トランジスタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに変わる次世代フラットパネルディスプレイの一つとしての有機材料のEL(Electro luminescence)を利用した有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイ等のアクティブマトリクス方式の表示装置では、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)と呼ばれる薄膜半導体装置が用いられる。
【0003】
特に、有機ELディスプレイは、電圧駆動型の液晶ディスプレイと異なり電流駆動型のディスプレイデバイスであり、アクティブマトリクス方式の表示装置の駆動回路として優れたオンオフ特性を有する薄膜トランジスタの開発が急がれている。薄膜トランジスタの構成は、基板上に、ゲート電極、半導体層(チャネル層)、ソース電極及びドレイン電極が形成されたものであり、チャネル層にはシリコン薄膜を用いることが一般的である。
【0004】
また、ディスプレイデバイスには大画面化及び低コスト化が求められており、容易に低コスト化が可能な薄膜トランジスタとして、一般的には、ゲート電極がチャネル層より基板側に形成されたボトムゲート型の薄膜トランジスタが用いられる。
【0005】
ボトムゲート型の薄膜トランジスタは、チャネル層がエッチングされるチャネルエッチング型の薄膜トランジスタと、チャネル層をエッチング処理から保護するチャネル保護型(エッチングストッパ型)の薄膜トランジスタとの2つに大別される。
【0006】
チャネルエッチング型の薄膜トランジスタは、チャネル保護型の薄膜トランジスタに比べて、フォトリソグラフィ工程数を削減することができ、製造コストを抑えられるという利点がある。
【0007】
一方、チャネル保護型の薄膜トランジスタは、エッチング処理によるチャネル層へのダメージを防ぐことができ、基板面内での特性ばらつきを抑制することができる。また、チャネル保護型の薄膜トランジスタの方がチャネル層を薄膜化することができ、寄生抵抗成分を低減してオン特性を向上させることができるため、高精細化には有利である。
【0008】
このため、チャネル保護型の薄膜トランジスタは、例えば有機EL素子を用いた電流駆動型の有機EL表示装置における駆動トランジスタに適しており、チャネルエッチング型の薄膜トランジスタに比べて製造コストが増加したとしても、有機EL表示装置の画素回路に採用する試みがなされている。
【0009】
例えば特許文献1には、微結晶半導体薄膜をチャネル層とするチャネル保護型のTFTが開示されており、チャネル層上にバッファ層を介してチャネル保護層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−76894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、チャネル保護型の薄膜トランジスタでは、チャネル保護層に正の固定電荷が存在するので、この固定電荷によってチャネル層にバックチャネルが形成され、その結果、リーク電流が増大し、薄膜トランジスタのオフ特性が悪化するという問題がある。特に、有機材料を塗布することによってチャネル保護層を形成すると、無機材料のチャネル保護層と比べて、チャネル保護層に正の固定電荷が多く含まれるので、リーク電流がさらに増大し、オフ特性が一層悪化する。
【0012】
また、チャネル保護型の薄膜トランジスタでは、チャネル保護層に含まれる不純物等によってチャネル保護層内にはトラップ準位が存在するため、このトラップ準位によりキャリアがトラップされやすく、その結果、薄膜トランジスタの閾値電圧がシフトして、薄膜トランジスタの信頼性が悪化するという問題もある。特に、塗布型の有機材料からなるチャネル保護層は、無機材料のチャネル保護層と比べて、チャネル保護層内にトラップ準位が多く存在するため、閾値電圧のシフト量が大きくなり、薄膜トランジスタの信頼性が一層悪化する。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、チャネル保護型の薄膜トランジスタにおいて、オフ特性及び信頼性に優れた薄膜半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法は、基板を準備する第1工程と、前記基板上にゲート電極を形成する第2工程と、前記ゲート電極上に第1絶縁膜を形成する第3工程と、前記第1絶縁膜上に非結晶質の半導体薄膜を形成する第4工程と、前記非結晶質の半導体薄膜上に第2絶縁膜を形成する第5工程と、前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより、前記非結晶質の半導体薄膜を結晶化させて結晶化領域を形成する第6工程と、前記結晶化領域の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する第7工程と、を含み、前記第5工程において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明となるように形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置は、基板と、前記基板上に形成したゲート電極と、前記ゲート電極上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された結晶質の半導体薄膜と、前記結晶質の半導体薄膜の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、前記結晶質の半導体薄膜上に形成された第2絶縁膜と、を具備し、前記結晶質の半導体薄膜は、前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより非結晶質の半導体薄膜の少なくとも一部を結晶化したものであり、前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オフ特性及び信頼性に優れた薄膜半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3A】図3Aは、従来の薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3B】図3Bは、従来の薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。
【図4】図4は、従来の薄膜半導体装置の電流電圧特性を示す図である。
【図5】図5は、酸化シリコン膜のIRスペクトルを示す図である。
【図6】図6は、有機膜のIRスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、有機膜のIRスペクトルを示す図である。
【図8A】図8Aは、図7の(c)における有機膜のIRスペクトルの拡大図である。
【図8B】図8Bは、図7の(d)における有機膜のIRスペクトルの拡大図である。
【図9A】図9Aは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、屈折率に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が波長)である。
【図9B】図9Bは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、屈折率に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が温度)である。
【図10A】図10Aは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、消衰係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が波長)である。
【図10B】図10Bは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、消衰係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が温度)である。
【図11A】図11Aは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が波長)である。
【図11B】図11Bは、材料Aの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が温度)である。
【図12A】図12Aは、材料Bの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が波長)である。
【図12B】図12Bは、材料Bの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が温度)である。
【図13A】図13Aは、材料Cの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が波長)である。
【図13B】図13Bは、材料Cの有機膜を熱処理したときにおける、吸収係数に関する波長及び温度の依存性を示す図(横軸が温度)である。
【図14】図14は、有機膜の吸収係数と有機膜の膜厚とに対する有機膜の透過率の関係を示す図である。
【図15A】図15Aは、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図15B】図15Bは、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図16】図16は、チャネル保護膜の膜厚を変化させた場合における非結晶質の半導体薄膜の吸収率の変化を示す図である。
【図17A】図17Aは、界面層が形成された場合における第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。
【図17B】図17Bは、界面層が形成された場合における第1の実施の形態に係る他の薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。
【図18A】図18Aは、図17Aに示す薄膜半導体装置の界面層周辺における断面TEM像である。
【図18B】図18Bは、図18Aの破線で囲まれる領域Bの断面構造を説明するための模式図である。
【図19】図19は、図17Aに示す薄膜半導体装置を構成する膜中に含まれる炭素及び硫黄の濃度分布を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図21】図21は、本発明の第3の実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。
【図22】図22は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置を用いた表示装置における画素の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法は、基板を準備する第1工程と、前記基板上にゲート電極を形成する第2工程と、前記ゲート電極上に第1絶縁膜を形成する第3工程と、前記第1絶縁膜上に非結晶質の半導体薄膜を形成する第4工程と、前記非結晶質の半導体薄膜上に第2絶縁膜を形成する第5工程と、前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより、前記非結晶質の半導体薄膜を結晶化させて結晶化領域を形成する第6工程と、前記結晶化領域の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する第7工程と、を含み、前記第5工程において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明となるように形成される。
【0019】
本態様によれば、非結晶質の半導体薄膜を結晶化するときの光線に対して透明である第2絶縁膜を非結晶質の半導体薄膜の上に形成し、当該第2絶縁膜の上方から光線を照射して非結晶質の半導体薄膜を結晶化する。これにより、第2絶縁膜の下方に位置する非結晶質の半導体薄膜を結晶化することができるとともに、非結晶質の半導体薄膜が結晶化するときの熱によって第2絶縁膜を無機化することができる。従って、第2絶縁膜の固定電荷を少なくしてバックチャネルの形成を抑えることができ、優れたオフ特性を有する薄膜半導体装置を実現できる。さらに、第2絶縁膜を無機化することにより、第2絶縁膜のトラップ準位を少なくしてキャリアのトラップを抑えて閾値電圧のシフトを抑えることができるので、信頼性の高い薄膜半導体装置を実現できる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法では、前記第5工程において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対する透過率が37%以上となるように形成されることが好ましい。
【0021】
これにより、非結晶質の半導体薄膜を結晶化するときの光線が第2絶縁膜を確実に透過することができる。この結果、非結晶質の半導体薄膜が結晶化するときの熱を、直上のチャネル保護膜に効率良く伝導させることができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法では、前記第6工程において、前記第2絶縁膜は、前記結晶化領域が形成される際の熱によって無機化される、とすることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法において、前記第2絶縁膜は、有機材料からなる、とすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置は、基板と、前記基板上に形成したゲート電極と、前記ゲート電極上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された結晶質の半導体薄膜と、前記結晶質の半導体薄膜の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、前記結晶質の半導体薄膜上に形成された第2絶縁膜と、を具備し、前記結晶質の半導体薄膜は、前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより非結晶質の半導体薄膜の少なくとも一部を結晶化したものであり、前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明である。
【0025】
本態様によれば、非結晶質の半導体薄膜を結晶化するときの光線に対して透明である第2絶縁膜を非結晶質の半導体薄膜の上に形成し、当該第2絶縁膜の上方から光線を照射して非結晶質の半導体薄膜を結晶化する際に、光線が第2絶縁膜を透過して非結晶質の半導体薄膜に照射する。これにより、第2絶縁膜の下方に位置する非結晶質の半導体薄膜が結晶化されるとともに、非結晶質の半導体薄膜が結晶化するときの熱によって第2絶縁膜が無機化される。従って、第2絶縁膜の固定電荷を少なくしてバックチャネルの形成を抑えることができ、優れたオフ特性を有する薄膜半導体装置を実現できる。さらに、第2絶縁膜を無機化することにより、第2絶縁膜のトラップ準位を少なくしてキャリアのトラップを抑えて閾値電圧のシフトを抑えることができるので、信頼性の高い薄膜半導体装置を実現できる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対する透過率が37%以上である。
【0027】
これにより、非結晶質の半導体薄膜を結晶化するときの光線を、第2絶縁膜に対して確実に透過させることができる。この結果、非結晶質の半導体薄膜が結晶化するときの熱を、直上のチャネル保護膜に効率良く伝導させることができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記第2絶縁膜は、前記結晶化領域が形成される際の熱によって無機化したものである。
【0029】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記第2絶縁膜は、有機材料からなる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、さらに、前記結晶質の半導体薄膜と前記第2絶縁膜との間に形成された、カーボンを含有する界面層を有し、前記界面層に含有されるカーボンの濃度は、前記結晶質の半導体薄膜に含有される不純物としてのカーボンの濃度の50倍以上である。
【0031】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層に含有されるカーボンの濃度は、5×1020(atoms/cm)以上である。
【0032】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層は、硫黄を含む。
【0033】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層に含有される硫黄の濃度は、前記結晶質の半導体薄膜に含まれる不純物としての硫黄の濃度の100倍以上である。
【0034】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層に含有される硫黄の濃度は、5×1019(atoms/cm)以上である。
【0035】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層の比抵抗は、2×10[Ω・cm]以上である。
【0036】
また、本発明の一態様に係る薄膜半導体装置において、前記界面層の厚みは、1nm以上、5nm以下である。
【0037】
以下、本発明の実施の形態における薄膜半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲だけによって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。また、各図面において、実質的に同一の構成、動作、及び効果を表す要素については、同一の符号を付す。
【0038】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置10の構成を模式的に示した断面図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置10は、チャネル保護型でボトムゲート型の薄膜トランジスタであって、基板1と、基板1の上方に順次形成された、ゲート電極2、ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)3、チャネル層(半導体薄膜)4及びチャネル保護膜(第2絶縁膜)5とを備え、さらに、チャネル保護膜5を挟んでチャネル層4の上方に形成された一対のコンタクト層6と、コンタクト層6の上に形成された一対のソース電極7S及びドレイン電極7Dとを備える。
【0040】
以下、本実施の形態に係る薄膜半導体装置10の各構成要素について詳述する。
【0041】
基板1は、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス及び高耐熱性ガラス等のガラス材料からなるガラス基板である。なお、ガラス基板の中に含まれるナトリウムやリン等の不純物がチャネル層4に侵入することを防止するために、表面に窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)又はシリコン酸窒化膜(SiO)等からなるアンダーコート層が形成された基板を用いてもよい。また、アンダーコート層は、レーザーアニール等の高温熱処理プロセスにおいて、基板1への熱の影響を緩和させる役割を担うこともある。アンダーコート層の膜厚は、例えば、100nm〜2000nm程度とすることができる。
【0042】
ゲート電極2は、基板1の上方に所定形状で形成される。ゲート電極2は、シリコンの融点温度に耐えられる導電性材料又はその合金等の単層構造又は多層構造からなり、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ni(ニッケル)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、又はモリブデンタングステン(MoW)等を用いることができる。ゲート電極2は、基板1上にこれらの材料からなるゲート金属膜を形成し、これを所定形状にパターニングすることで形成される。ゲート電極2の膜厚は、好ましくは30nm以上300nm以下であり、より好ましくは、50nm以上100nm以下である。これは、ゲート電極2の膜厚が薄いと、ゲート電極2の透過率が増加してしまい、レーザー光の反射が低下しやすくなるからである。一方、ゲート電極2の膜厚が厚いとゲート絶縁膜3のカバレッジが低下してしまい、特にはゲート電極2の端部でゲート絶縁膜3が段切れしてしまう等、薄膜トランジスタの特性が劣化しやすくなるからである。
【0043】
ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2の上に形成された第1絶縁膜であり、基板1上のゲート電極2を覆うように基板1及びゲート電極2の上に形成される。ゲート絶縁膜3は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム(AlO)、酸化タンタル(TaO)又はその積層膜等を用いて形成することができる。
【0044】
本実施の形態では、チャネル層4として結晶質シリコン薄膜を用いているので、ゲート絶縁膜3としては酸化シリコンを用いることが好ましい。これは、TFTにおける良好な閾値電圧特性を維持するためにはチャネル層4とゲート絶縁膜3との界面状態を良好なものにすることが好ましく、これには酸化シリコンが適しているからである。
【0045】
チャネル層4は、ゲート絶縁膜3上に形成される結晶質の半導体薄膜を含み、ゲート電極2の電圧によってキャリアの移動が制御される領域であるチャネル領域を有する。本実施の形態において、チャネル層4の少なくともチャネル領域は、多結晶質シリコン薄膜からなる結晶質シリコン薄膜であり、前駆体としての非結晶質シリコン薄膜(アモルファスシリコン膜)における非晶質のシリコンの少なくとも一部をレーザー照射することにより多結晶質化(微結晶化も含む)することで形成された結晶化領域である。なお、チャネル層4は、非結晶性シリコンと結晶性シリコンとの混晶構造を有する結晶質シリコン薄膜とすることもできる。また、チャネル層4に含まれる結晶の平均粒径は例えば10nm以上1μm以下である。
【0046】
本実施の形態において、チャネル層4の結晶化は、レーザー光に対して透過率が高いチャネル保護膜5の上方からレーザー光を走査することにより行われる。これにより、有機膜5aの下方の領域も含めて非結晶質シリコン薄膜が結晶化して結晶質シリコン薄膜となる。
【0047】
チャネル保護膜5は、チャネル層4の上に形成される第2絶縁膜であり、チャネル層4のチャネル領域を保護する保護膜である。すなわち、チャネル保護膜5は、一対のコンタクト層6を形成するときのエッチング処理時において、チャネル層4がエッチングされてしまうことを防止するためのチャネルエッチングストッパ(CES)層として機能する。なお、チャネル保護膜5は、絶縁性を有するので、一対のコンタクト層6同士は電気的に接続されていない。
【0048】
また、チャネル保護膜5は、チャネル層4の結晶化時におけるレーザー光に対して透明となるように形成されている。本実施の形態において、チャネル保護膜5は、チャネル層4の結晶化時におけるレーザー光に対する透過率が37%以上となるように形成されている。これにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するときのレーザー光がチャネル保護膜5を確実に透過するので、チャネル保護膜5の下方に位置する非結晶質の半導体薄膜4aを容易に結晶化させることができる。
【0049】
上記レーザー光に対して透明なチャネル保護膜5は、チャネル層4上に塗布した有機膜に対してレーザー光を照射することにより形成することができる。この場合、チャネル保護膜5は、前駆体(レーザー光照射前のチャネル保護膜5)である不透明の有機膜がレーザー照射によって透明化された透明化膜であり、チャネル保護膜5を透明化するためのレーザー光に対する透過率は、レーザー光の照射後においてレーザー光の照射前よりも高くなっている。具体的には、チャネル保護膜5において、有機膜(前駆体)のレーザー光に対する透過率は37%未満である。すなわち、チャネル保護膜5を透明化するためのレーザー光に対する透過率は、レーザー光の照射前で37%未満である。このとき、レーザー光の照射前において、チャネル保護膜5の吸収係数とチャネル保護膜5の膜厚との積が1より大きくなっている。この場合、レーザー光の照射前におけるチャネル保護膜5(第2絶縁膜)の透過率は37%以下であるため、レーザー光はチャネル保護膜5に吸収され熱発生する。これにより、チャネル保護膜5を容易に透明化することができる。
【0050】
一方、この有機膜(前駆体)はレーザー光の照射により透明化し、レーザー光に対する透過率は37%以上となる。すなわち、レーザー光に対する透過率は、レーザー光の照射後で37%以上となる。このとき、レーザー光の照射後において、チャネル保護膜5の吸収係数とチャネル保護膜5の膜厚との積が1以下となっている。
【0051】
なお、チャネル保護膜5の透過率は、有機膜の膜厚及び有機膜の吸収係数によって決定される。また、有機膜の吸収係数は、レーザー光の波長及び有機膜の加熱温度によって決定される。詳細については後述する。
【0052】
さらに、チャネル保護膜5は、チャネル層4の結晶化時のレーザー光の照射によって、酸化シリコン成分や窒化シリコン成分等の無機成分を主成分とする無機化膜に改質される。すなわち、チャネル保護膜5は、チャネル層4の結晶化時において上方からレーザー光が照射されると、当該レーザー光はチャネル保護膜5を透過してチャネル層4に照射される。これにより、チャネル層4の前駆体である非結晶質の半導体薄膜が結晶化する。この結晶化時に発生するチャネル層4の発生熱がチャネル保護膜5に伝導して、チャネル保護膜5の温度が上昇し、これにより、チャネル保護膜5が無機化する。
【0053】
ここで、チャネル保護膜5の前駆体である有機膜は、シリコン、酸素及びカーボンを含む有機材料を主として含有する有機材料からなり、例えば、感光性塗布型の有機材料をパターニング及び固化することによって形成することができる。
【0054】
この有機膜(前駆体)を形成するための有機材料は、例えば、有機樹脂材料、界面活性剤、溶媒及び感光剤からなる。有機樹脂材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト及びベンゾシクロブテン等の中から選ばれる1種又は複数種からなる感光性又は非感光性の有機樹脂材料を用いることができる。界面活性剤としては、シロキサン等のシリコン化合物からなる界面活性剤を用いることができる。溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は1,4−ジオキサン等の有機溶媒を用いることができる。また、感光剤としては、ナフトキノンジアジト等のポジ型感光剤を用いることができる。なお、感光剤には、炭素及び硫黄が含まれている。
【0055】
一対のコンタクト層6は、不純物を高濃度に含む非晶質半導体層、又は不純物を高濃度に含む多結晶半導体層からなり、その一部がチャネル層4の上方にチャネル保護膜5を介して形成され、他部がチャネル層4の上に接して形成される。また、一対のコンタクト層6は、チャネル保護膜5上において所定の間隔をあけて対向配置されている。
【0056】
一対のコンタクト層6のそれぞれは、チャネル保護膜5の上面端部からチャネル層4の上面までを跨るようにして形成されており、チャネル保護膜5の上面と側面、及び、チャネル層4の上面を覆うように形成されている。より具体的には、2つのコンタクト層6は、チャネル層4の両端部の上方に設けられており、チャネル保護膜5の端部の上面及び側面、チャネル保護膜5の側面につらなるチャネル層4の上面上に形成されている。
【0057】
一対のコンタクト層6は、例えば、アモルファスシリコンに不純物としてリン(P)をドーピングしたn型半導体層であって、1×1019(atm/cm)以上の高濃度の不純物を含むn層である。各コンタクト層6の膜厚は、例えば5nm〜100nmとすることができる。
【0058】
一対のソース電極7S及びドレイン電極7Dは、それぞれチャネル層4のチャネル領域(結晶化領域)の上方にチャネル保護膜5を介して同層に形成されており、本実施の形態では、一対のコンタクト層6上に所定の間隔をあけて対向配置される。すなわち、ソース電極7Sは、コンタクト層6を介してチャネル層4の一方の端部の上方に形成されており、また、ドレイン電極7Dは、コンタクト層6を介してチャネル層4の他方の端部の上方に形成されている。
【0059】
ソース電極7S及びドレイン電極7Dは、それぞれ導電性材料又はこれらの合金等からなる単層構造又は多層構造とすることができ、例えば、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)又はクロム(Cr)等の材料により構成される。また、ソース電極7S及びドレイン電極7Dは、MoW/Al/MoWの三層構造とすることもできる。なお、ソース電極7S及びドレイン電極7Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nm程度とすることができる。
【0060】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置10の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法における各工程の構成を模式的に示した断面図である。
【0061】
本実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法は、基板1を準備する第1工程と、基板1上にゲート電極2を形成する第2工程と、ゲート電極2上に第1絶縁膜としてゲート絶縁膜3を形成する第3工程と、ゲート絶縁膜3上に非結晶質の半導体薄膜4aを形成する第4工程と、非結晶質の半導体薄膜4a上に第2絶縁膜としてチャネル保護膜5を形成する第5工程と、チャネル保護膜5の上方からレーザー光を照射することにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化して結晶化領域を形成する第6工程と、結晶化領域の上方にソース電極7S及びドレイン電極7Dを形成する第7工程と、を含む。そして、第5工程において、チャネル保護膜5は、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するときのレーザー光に対して透明となるように形成される。
【0062】
以下、本実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法における各工程について、図面を用いて詳細に説明する。
【0063】
まず、図2の(a)に示すように、基板1としてガラス基板を準備する。なお、ゲート電極2を形成する前に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等によって基板1の表面に、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、及びシリコン酸窒化膜等からなるアンダーコート層を形成してもよい。アンダーコート層は、1.5<y<2.0のシリコン酸化膜(SiO)で、300nm以上1500nm以下の膜厚で構成されるのが好ましい。より好ましいアンダーコート層の膜厚範囲は、500nm以上1000nm以下である。これは、アンダーコート層の厚みを厚くすると基板1への熱負荷を低減できるが、厚すぎると膜剥がれやクラックが発生してしまうことによる。なお、基板1を準備する工程には、アンダーコート層を形成する工程の他に、基板1を洗浄する工程も含まれる。
【0064】
次に、図2の(b)に示すように、基板1上に所定形状のゲート電極2を形成する。例えば、基板1上にMo又はMoWを含む高融点金属あるいは当該高融点金属の合金からなるゲート金属膜をゲート電極2としてスパッタによって成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いてゲート金属膜をパターニングすることにより、所定形状のゲート電極2を形成することができる。MoWのウェットエッチングは、例えば、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)、酢酸(CHCOOH)及び水を所定の配合で混合した薬液を用いて行うことができる。なお、基板1の表面にアンダーコート層が形成されている場合には、アンダーコート層上にゲート電極2を形成する。
【0065】
次に、図2の(c)に示すように、ゲート電極2を覆って基板1及びゲート電極2の上にゲート絶縁膜3を形成する。例えば、プラズマCVD法により、ゲート絶縁膜3として酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜あるいはこれらの積層膜をゲート電極2の上に成膜する。
【0066】
次に、図2の(d)に示すように、ゲート絶縁膜3上に、チャネル層4となる非結晶質の半導体薄膜4aを形成する。例えば、ゲート絶縁膜3上に、非結晶質の半導体薄膜4aとして、アモルファスシリコンからなる非結晶質シリコン薄膜をプラズマCVD等によって成膜する。この非結晶質シリコン薄膜は、例えば、シランガス(SiH)と水素ガス(H)とを所定の濃度比で導入することで成膜することができる。なお、非結晶質シリコン薄膜は、プラズマCVDによってゲート絶縁膜3の成膜と連続的に成膜することができる。
【0067】
次に、図2の(e)に示すように、非結晶質の半導体薄膜4aの上に、チャネル保護膜5の前駆体として、有機材料からなる有機膜5aを所定の塗布方法によって形成する。例えば、所定の有機材料を非結晶質の半導体薄膜4a上に塗布及びスピンコートすることによって有機膜5aを非結晶質の半導体薄膜4aの全面に形成する。なお、有機膜5aの所定の有機材料としては、シリコン、酸素及びカーボンを含む上述の感光性塗布型の有機材料を用いることができる。また、有機膜5aは、本工程で照射されるレーザー光に対する透過率が37%未満となるように形成されることが好ましい。なお、その後、有機膜5aに対してプリベークを行って有機膜5aの仮焼成を行う。例えば、約110℃の温度で約60秒間の加熱を行う。これにより、有機膜5aに含まれる溶剤が気化する。
【0068】
次に、図2の(f)に示すように、フォトマスクを用いて露光及び現像することにより、有機膜5aを所定形状にパターニングする。なお、現像液としては、例えば、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxyde)の2.38%水溶液を用いることができる。その後、パターン形成された有機膜5aに対してポストベークを行うことにより、有機膜5aの本焼成を行う。例えば、280℃〜300℃の温度で約1時間の加熱を行う。これにより、有機膜5a中の有機成分の一部が気化、分解して、膜質が改善される。
【0069】
次に、図2の(g)に示すように、有機膜5aに対して所定のレーザー光を走査して照射することにより有機膜5aを透明化することにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するときのレーザー光に対して透明なチャネル保護膜5を形成する。具体的には、有機膜5aにレーザー光が照射されると、有機膜5aは、レーザー光のエネルギーを吸収して光反応、あるいは熱反応し、不透明から透明に改質されて透明化する。すなわち、レーザー光が照射された有機膜5aは透過率が高くなって透明化する。なお、このときに、有機膜5aは、レーザー光のエネルギーを吸収して熱反応し、有機膜5aは無機化する場合もある。
【0070】
本実施の形態において、チャネル保護膜5のレーザー光に対する透過率は、レーザー光の照射前で37%未満であり、レーザー光の照射後で37%以上とすることが好ましい。すなわち、透明化のためのレーザー光は、当該レーザー光の照射後における有機膜5aの透過率が37%以上となるような条件にて行うことが好ましい。これにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するときのレーザー光を、チャネル保護膜5に確実に透過させることができるので、チャネル保護膜5の下方に位置する非結晶質の半導体薄膜4aを容易に結晶化させることができる。この結果、非結晶質の半導体薄膜4aが結晶化するときの熱を、直上のチャネル保護膜5に効率良く伝導させることができる。従って、チャネル保護膜5の無機化を容易に行うことができる。
【0071】
次に、図2の(h)に示すように、非結晶質の半導体薄膜4aをアニールすることによって、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化させることにより、結晶化領域を有するチャネル層4を形成する。この工程により、非結晶質の半導体薄膜4aが結晶化して、多結晶質(微結晶を含む)の結晶化領域を含むチャネル層4とすることができる。
【0072】
本実施の形態において、非結晶質の半導体薄膜4aの結晶化は、同図に示すように、チャネル保護膜5の上方から非結晶質の半導体薄膜4aに対してレーザー光を照射することによって行った。このとき、チャネル保護膜5は透明化されているので、レーザー光はチャネル保護膜5を透過して、チャネル保護膜5の下の非結晶質の半導体薄膜4aにも照射される。従って、チャネル保護膜5の下方の非結晶質の半導体薄膜4aについても結晶化することができる。
【0073】
非結晶質の半導体薄膜4aの結晶化は、非結晶質の半導体薄膜4aがレーザー光のエネルギーを吸収して温度上昇することによって発現する。本実施の形態では、非結晶質の半導体薄膜4aとしてアモルファスシリコン膜を用いているので、アモルファスシリコンが1414度(シリコンの融点)以上の温度にまで上昇して多結晶化する場合だけではなく、アモルファスシリコンが750度〜1414度程度の温度により固相成長又は過冷却液体状態を経て微結晶化する場合も含まれる。この場合、チャネル層4における結晶シリコンの平均結晶粒径は、5nm〜1000nm程度であり、チャネル層4には、平均結晶粒径が100nm以上の多結晶シリコンだけではなく、平均結晶粒径が5nm〜100nmのマイクロクリスタル(μc)と呼ばれる微結晶シリコンも含まれる場合もある。
【0074】
そして、この工程において、チャネル保護膜5は、非結晶質の半導体薄膜4aが結晶化して結晶化領域が形成される際に発生する熱によって無機化される。すなわち、結晶化時に非結晶質の半導体薄膜4aから熱が発生し、この熱がチャネル保護膜5に伝導することによってチャネル保護膜5の加熱されて無機化する。有機膜5aの無機化の詳細については後述する。
【0075】
このように、本実施の形態では、基板1に対してレーザー光を相対走査することによってチャネル保護膜5の上方からレーザー光の照射を行うことにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するとともにチャネル保護膜5を無機化する。
【0076】
なお、レーザー光のレーザー光源としては、紫外線領域、可視光領域、又は赤外線領域の波長の光を発する光源を用いることができ、これらの光源を、図2の(g)に示す有機膜の透明化の工程、あるいは図2の(h)に示す半導体薄膜の結晶化の工程のそれぞれに応じて使い分けることができる。
【0077】
本実施の形態では、紫外線領域の波長の光を発するレーザーを用いることができる。例えば、有機膜の吸収係数が不透明領域から透明領域に急峻に変化する発光波長が約190nm以上350nm以下であるエキシマレーザーを用いることができる。
【0078】
また、線状に集光されたレーザー光を非結晶質の半導体薄膜4a及び有機膜5aに照射するが、この照射の方法には例えば2つある。1つは、線状に集光されたレーザー光の照射位置を固定し、非結晶質の半導体薄膜4a及び有機膜5aが形成された基板1が載せられたステージを移動させる方法である。もう1つは、逆に、ステージ(基板1)を固定し、レーザー光の照射位置を移動させる方法である。いずれの方法においても、レーザー光は、非結晶質の半導体薄膜4a及び有機膜5aに対して相対的に移動しながら照射される。
【0079】
次に、図2の(i)に示すように、チャネル保護膜5の上面からチャネル層4の上面までを跨るようにして、コンタクト層6を形成する。具体的には、チャネル保護膜5の上面及び側面上と、チャネル層4の上面上とを覆うようにして、例えばプラズマCVDによってリン等の5価元素の不純物をドープしたアモルファスシリコンからなるコンタクト層6を成膜する。
【0080】
次に、図2の(j)に示すように、コンタクト層6を覆うようにして、ソース電極7S及びドレイン電極7Dとなるソースドレイン金属膜7を形成する。例えば、スパッタによって、MoW/Al/MoWの三層構造のソースドレイン金属膜7を成膜する。
【0081】
その後、図示しないが、所定形状のソース電極7S及びドレイン電極7Dをパターン形成するために、ソースドレイン金属膜7上にレジスト材料を塗布し、露光及び現像を行って、所定形状にパターニングされたレジストを形成する。
【0082】
次に、このレジストをマスクとしてエッチングを施してソースドレイン金属膜7をパターニングすることにより、図2の(k)に示すように、所定形状のソース電極7S及びドレイン電極7Dを形成する。このとき、コンタクト層6がエッチングストッパとして機能する。その後、ソース電極7S及びドレイン電極7D上のレジストを除去し、ソース電極7S及びドレイン電極7Dをマスクとしてドライエッチングを施すことにより、コンタクト層6をパターニングするとともにチャネル層4を島状にパターニングする。これにより、所定形状の一対のコンタクト層6と島状のチャネル層4とを形成することができる。ドライエッチングの条件としては、例えば、塩素系ガスを用いることができる。
【0083】
以上のようにして、本実施の形態に係る薄膜半導体装置10を製造することができる。
【0084】
次に、本実施の形態に係る薄膜半導体装置の特性について、発明に至った経緯も含めて、図3A〜図14を用いて説明する。
【0085】
まず、図3A、図3B及び図4を用いて、従来の薄膜半導体装置100の課題について説明する。図3A及び図3Bは、従来の薄膜半導体装置の構成を示す断面図である。また、図4は、従来の薄膜半導体装置の電流電圧特性を示す図である。
【0086】
図3A及び図3Bに示す従来の薄膜半導体装置100と図1に示す本実施の形態に係る薄膜半導体装置10とは、チャネル保護膜の構成が異なっており、従来の薄膜半導体装置100のチャネル保護膜105は有機材料で構成されているが、レーザー照射されておらず、透明化されていない。
【0087】
このような構成の従来の薄膜半導体装置100では、図3Aに示すように、有機材料からなるチャネル保護膜105には正の固定電荷が多く含まれる。このため、固定電荷によってチャネル保護膜105の下のチャネル層4(チャネル保護膜5とチャネル層4との界面近傍)に微弱な電圧(Vf)が印加される状態となる。この場合、固定電荷による電圧(Vf)が、チャネル層4におけるバックチャネルの閾値電圧(Vbc)以上になってしまうと、寄生トランジスタが動作してバックチャネルが形成される。その結果、リーク電流が増大し、図4に示すように、薄膜半導体装置のオフ特性が悪化する。
【0088】
また、有機材料からなるチャネル保護膜105に含まれる不純物等によってチャネル保護膜105にはトラップ準位が多数存在し、このトラップ準位によりキャリアがトラップされやすくなっている。このトラップ準位によってキャリアがトラップされるので、図4に示すように、薄膜半導体装置100の閾値電圧がシフトし、薄膜半導体装置の信頼性が悪化したり、電気特性にバラツキが生じて基板面内均一性が悪化したりする。
【0089】
このように、有機材料のチャネル保護膜を有する薄膜半導体装置は、オフ特性及び信頼性が悪いという問題がある。
【0090】
そこで、本願発明者は、以下の実験を行って鋭意検討した結果、有機膜からなるチャネル保護膜を無機化することによって、すなわち有機膜のストイキオメトリーを無機膜のストイキオメトリーに近づけるように膜改質することによって、上記課題を解決できることを見出した。以下、詳細に説明する。
【0091】
まず、無機材料からなる無機膜としては、酸化シリコン膜がある。そこで、まず、酸化シリコン膜の化学構造を調べるために、シリコン基板上に100nm程度の酸化シリコン膜を形成してIRスペクトルを測定した。図5は、酸化シリコン膜のIRスペクトルを示す図である。
【0092】
測定の結果、図5に示すように、酸化シリコン膜には、Si−O−Siの振動として3つのピークが見られることが分かった。具体的には、480cm−1(A)におけるSi−O−Si(横揺れ振動)と、780cm−1(B)におけるSi−O−Si(変角振動)と、1080cm−1(C)におけるSi−O−Si(伸縮振動)とを確認することができる。
【0093】
次に、有機膜の化学構造を調べるために、シリコン基板上に100nm程度の有機材料からなる有機膜を形成してIRスペクトルを測定した。また、有機膜は熱処理によって固化させるが、有機膜のIRスペクトルの温度依存性についても調べた。図6は、有機膜のIRスペクトルを示す図である。なお、有機膜は、上述の本実施の形態におけるチャネル保護膜5の有機材料を用いた。また、有機膜は、20分間のベークを行ったものである。
【0094】
測定の結果、図6に示すように、有機膜には、A〜Iの9個のピークが見られることが分かった。具体的には、480cm−1(A)におけるSi−O−Si(横揺れ)と、700cm−1(B)におけるC−H(変角(芳香族))と、780cm−1(C)におけるSi−O−Si(変角)と、1080cm−1(D)におけるSi−O−Si(伸縮)と、1130cm−1(E)におけるSi−phenylと、1280cm−1(F)におけるSi−CH(変角)と、1430cm−1(G)におけるSi−phenylと、1500cm−1(H)におけるC−C(伸縮(芳香族))と、1580cm−1(I)におけるC−C(伸縮(芳香族))とを確認することができる。
【0095】
また、ベーク温度を300度〜600度の温度範囲で変化させて測定しているが、図6に示すように、ベーク温度の上昇とともに、Si−O−Si結合が増加するとともに、Si−OH、Si−phenyl結合が減少していることが確認できる。
【0096】
図5及び図6に示す結果に基づいて、本願発明者は、有機膜を加熱することによって有機膜のストイキオメトリーを無機膜のストイキオメトリーに近づけることができ得るという知見を得ることができた。
【0097】
しかしながら、図6に示すように、600度の熱処理後においても、相当な量の有機成分が残っていることが分かる。そこで、有機膜に対して600度以上の熱処理を施すことにより、有機膜をさらに無機化することができると考えられるが、ベーク温度を600度以上にするとガラス基板が溶融してしまうので、ベーク温度を600度以上にすることは難しい。また、ベーク温度を600度以上にすると、上限が400度程度である低温プロセスを用いて薄膜トランジスタを製造することができなくなる。なお、通常、有機膜のチャネル保護膜のベーク温度は最大でも400度程度で十分であることからも、ベーク温度を600度以上にすることは好ましくない。このように、ベークは、基板全体が高温に曝されてしまうので、ベーク温度を上昇させるには限界がある。
【0098】
そこで、本願発明者は、有機膜に対してレーザー光を照射することによって有機膜を600度以上の高温にすることを考えた。レーザー光であれば、レーザー光の照射部分を局所的に高温にすることができるので、ガラス基板を溶融させることなく、また、低温プロセスを用いて薄膜トランジスタを製造することも可能となる。
【0099】
図7は、有機膜のIRスペクトルを示す図であり、有機膜を300度〜1100度の温度範囲で5分間の熱処理を行った後、IR測定した結果を示している。なお、図7における有機膜は、シロキサンを主骨格に含む有機材料(材料A)によって構成されている。
【0100】
図7に示すように、温度の増加に伴って、1280cm−1でピークが見られるSi−CH(変角)等の有機物に起因する振動モードが消失し、1080cm−1でピークが見られるSi−O−Si(伸縮)が増加してSiOの結合が増加していることが分かる。特に、500度と600度との間においてスペクトルが急に変化していることが分かる。図8Aの(a)及び図8Bの(a)は、それぞれ図7の(c)及び(d)を拡大したものである。図8Aの(b)及び図8Bの(b)は、それぞれ図8Aの(a)及び図8Aの(a)における破線で囲まれる領域を拡大した図である。
【0101】
図8A及び図8Bに示すように、500度と600度との間において吸収係数が急に大きくなるとともに半値幅が急に小さくなることも分かる。従って、本実施の形態では、有機膜のIRスペクトルが急に変化する500度と600度とにおける1080cm−1に存在するピークの半値幅が(60cm−1+170cm−1)/2=115cm−1以下となる場合を無機化と定義する。
【0102】
次に、上記有機材料(材料A)によって形成された有機膜におけるレーザー光に対する光学特性について、図9A、図9B、図10A及び図10Bを用いて説明する。図9A及び図9Bは、材料Aの有機膜に熱処理したときにおける、有機膜の屈折率の波長依存性と熱処理温度の依存性を示したものであり、照射するレーザー光の波長と、有機膜の熱処理温度と、有機膜の屈折率との関係を示した図である。また、図10A及び図10Bは、材料Aの有機膜に熱処理したときにおける、有機膜の消衰係数に関する波長依存性と熱処理温度の依存性を示したものであり、照射するレーザー光の波長と、有機膜の熱処理温度と、有機膜の消衰係数との関係を示した図である。なお、図9Bは、図9Aと横軸のパラメータが異なるのみで、図9Aと同じ特性を示している。図10Bも同様に図10Aと同じ特性を示している。
【0103】
まず、図9A及び図9Bに示すように、有機膜の加熱温度が上昇するに従って、屈折率が小さくなり、酸化シリコンの屈折率(n=1.4)に近づくことが分かる。すなわち、屈折率の観点から、レーザー光によって有機膜を加熱することによって有機膜を酸化シリコン膜に近づけることができる、ということが分かる。
【0104】
また、図10A及び図10Bに示すように、有機膜の加熱温度が上昇するに従って、消衰係数が小さくなることが分かる。すなわち、レーザー光によって有機膜を加熱することによって、有機膜を透明化することができる。なお、図10A及び図10Bにおいて、約800度〜約900度までの温度範囲についてはデータがプロットされていないが、これは測定装置の検出限界を超えたためである。この範囲では、消衰係数の値は小さく、1×10−7cm−1以下となっている。なお、測定装置は、分光エリプソメーターを用いた。
【0105】
また、吸収係数αは、入射する波長をλ、消衰係数をkとすると、α=4πk/λとして表すことができるので、図10A及び図10Bに示す消衰係数の特性は吸収係数の特性としても表すことができ、図11A及び図11Bに示す結果となる。図11A及び図11Bは、材料Aの有機膜に熱処理したときにおける、有機膜の吸収係数の波長依存性と熱処理温度の依存性を示したものであり、照射するレーザー光の波長と、有機膜の熱処理温度と、有機膜の吸収係数との関係を示す図である。なお、図11Bは、図11Aと横軸のパラメータが異なるのみで、図11Aと同じ特性を示している。
【0106】
図11A及び図11Bに示すように、有機膜(材料A)の吸収係数は、500度までは一定あるいは微増しているが、500度から600度になると1桁以上小さくなることが分かる。また、600度を超えてさらに高温になると、吸収係数はさらに小さくなることが分かる。なお、図11A及び図11Bにおいて、約800度〜約900度までの温度範囲についてはデータがプロットされていないが、図10Bと同様に、実際には限りなく小さい値の吸収係数であり、吸収係数は1×10−1cm−1以下となっている。
【0107】
以上のように、有機膜は、レーザー光の照射によって温度が上昇し、これにより、吸収係数が小さくなって透明化するということが分かる。また、有機膜の温度が上昇することによって、有機物に起因する振動モードが消失するとともにSiOの結合が増加し、これにより、無機化することが分かる。
【0108】
次に、有機膜の材料を変えて、図11A及び図11Bと同様にして有機膜における吸収係数の波長及び温度の依存性を測定した結果について説明する。図12A及び図12Bは、材料Bによって形成された有機膜を熱処理したときにおける、有機膜の吸収係数の波長依存性と熱処理温度の依存性を示したものである。また、図13A及び図13Bは、材料Cによって形成された有機膜を熱処理したときにおける、有機膜の吸収係数の波長依存性と熱処理温度の依存性を示したものである。なお、図12B及び図13Bは、それぞれ、図12A及び図13Aに対して横軸のパラメータが異なるのみで、図12A及び図12Bと同じ特性を示している。
【0109】
ここで、材料Bは、材料Aと同様に、シロキサンを主骨格に含む有機材料である。また、材料Cは、シルセスシオキサンを主骨格に含む有機材料である。なお、材料B及び材料Cのその他の構成は材料Aと同様である。
【0110】
図12A及び図12Bに示すように、有機膜(材料B)の吸収係数は、有機膜(材料A)と同様に、500度までは一定あるいは微増しているが、500度から600度になると1桁以上小さくなることが分かる。また、600度を超えてさらに高温になると、吸収係数はさらに小さくなることが分かる。
【0111】
また、図13A及び図13Bに示すように、有機膜(材料C)の吸収係数は、有機膜(材料A)と同様に、500度までは一定あるいは微増しているが、500度から600度になると1桁以上小さくなることが分かる。また、600度を超えてさらに高温になると、吸収係数はさらに小さくなることが分かる。なお、図13A及び図13Bにおいて、約700度〜約900度までの温度範囲についてはデータがプロットされていないが、図11Bと同様に、実際には限りなく小さい値の吸収係数であり、吸収係数は1×10−1cm−1以下となっている。
【0112】
以上のように、異なる有機材料からなる有機膜であっても、レーザー光の照射によって温度が上昇し、これにより、吸収係数が小さくなって透明化するということが分かる。また、有機膜の温度が上昇することによって、有機物に起因する振動モードが消失するとともにSiOの結合が増加し、これにより、無機化することが分かる。
【0113】
また、有機膜の材料を異ならせることによって、レーザー光の波長に対する吸収係数を変えることができることも分かる。これにより、レーザー光の照射前においては非透明(色付き)となるように、かつ、レーザー光の照射後においては透明となるように、有機材料の種類及びレーザー光の波長を選択することができる。
【0114】
本実施の形態では、チャネル保護膜5の前駆体である非透明の有機膜5aにレーザー光を照射することによって、当該有機膜5aを透明化してチャネル保護膜5を形成する。従って、レーザー光照射前における透過率が37%未満となるように、また、レーザー光照射後における透過率が37%以上となるように、有機膜5aの材料及びレーザー光の波長を選択することが好ましい。
【0115】
ここで、有機膜の透過率τは、入射光の強度Iと、有機膜を通過した光の強度Iとを用いて表すと、τ=I/Iで表され、さらに、有機膜の吸収係数αと、有機膜の膜厚tとを用いて表すと、τ=I/I=exp(−αt)で表すことができる。本実施の形態において、有機膜が不透明である場合を、有機膜の吸収係数αと有機膜の膜厚tとの積が1より大きい場合とすると、この場合、−αt=−1となる透過率τは、τ=exp(−1)=0.36789≒37%となるので、透過率は37%未満となる。一方、有機膜が透明である場合を、有機膜の吸収係数αと有機膜の膜厚tとの積が1以下の場合とすると、この場合、透過率は37%以上となる。なお、吸収率は、1−透過率(τ)で表すことができる。
【0116】
図14は、有機膜の吸収係数α(cm−1)と有機膜の膜厚t(cm)とに対する有機膜の透過率の関係を示す図である。図14に示すように、本実施の形態では、有機膜の透過率が37%未満となる場合を不透明とし、有機膜の透過率が37%以上となる場合を透明としている。
【0117】
これにより、図14と、図11A〜図13Bとを用いることにより、レーザー光を照射する前には不透明としつつレーザー光を照射した後には透明となるような、所望の有機材料の種類、レーザー光の波長及びレーザー照射条件(加熱温度)を選択することができる。
【0118】
以上、本実施の形態に係る薄膜半導体装置10によれば、結晶化時のレーザー光に対して透明なチャネル保護膜5の上方から非結晶質の半導体薄膜4aに対して所望のレーザー光を照射することにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するとともに、このときに発生する熱によってチャネル保護膜5を無機化する。すなわち、チャネル保護膜5には、非結晶質の半導体薄膜4aの結晶化時に発生する熱が伝導し、この熱によってチャネル保護膜5の温度が上昇してチャネル保護膜5が無機化される。
【0119】
従って、図15Aに示すように、チャネル保護膜5が無機化されることによって、チャネル保護膜5の固定電荷が減少するので、バックチャネルの形成を抑えることができる。これにより、優れたオフ特性を有する薄膜半導体装置を実現することができる。
【0120】
また、チャネル保護膜5が無機化されることによって、図15Bに示すように、チャネル保護膜5のトラップ準位を減少させることもできるので、チャネル保護膜5におけるキャリアのトラップを抑えることができる。これにより、薄膜半導体装置における閾値電圧のシフトを抑えることができるので、信頼性に優れ、かつ、面内均一性が高い薄膜半導体装置を実現することができる。
【0121】
なお、本実施の形態において、チャネル保護膜5の膜厚は、以下に説明するような範囲とすることが好ましい。
【0122】
図16は、チャネル保護膜5の膜厚を変化させた場合における非結晶質の半導体薄膜4aの吸収率の変化を示す図である。なお、図16では、チャネル保護膜5の光学膜厚をレーザー光の波長で除算した値を横軸に、非結晶質の半導体薄膜4aの吸収率を縦軸に示している。また、図16の計算では、ゲート絶縁膜3が酸化シリコンからなり、ゲート絶縁層3の光学膜厚、すなわちゲート絶縁層3の膜厚にゲート絶縁層3の屈折率を積算した値を、レーザー光の波長で除算した値が0.276(波長532nmで酸化シリコン層膜厚が100nmに対応)からなり、チャネル保護膜5の下の非結晶質の半導体薄膜4a(非結晶性シリコン薄膜)の光学膜厚に非結晶質の半導体薄膜4aの屈折率を積算した値を、レーザー光の波長で除算した値が0.477(波長532nmで非結晶性シリコン層の膜厚が50nmに対応)からなるモデルを用いている。そして、図16の破線、二点鎖線および実線は、それぞれゲート電極2がCu、AlおよびMoWの場合の計算結果を示している。
【0123】
図16に示すように、チャネル保護膜5の光学膜厚をレーザー光の波長で除算した値をZとし、kを0から始まる整数とし、Zが下記の(式1)を満たせば、非結晶質の半導体薄膜4aにおけるレーザー光の吸収効率を増大させることができる。なお、図16のk=0、1、2は、それぞれ(式1)におけるk=0、1、2のときのZの範囲を示している。
【0124】
(式1)0.5×(k+0.3)≦Z≦0.5×(k+0.7)
【0125】
このように、チャネル保護膜5の膜厚を(式1)の条件を満たすように設定することにより、チャネル保護膜5の下の非結晶質の半導体薄膜4aにおけるレーザー光の吸収効率を増大させることができるので、チャネル保護膜5の下の領域を効率的に加熱処理でき、非結晶質の半導体薄膜を効率的に結晶化することができるとともに、半導体薄膜からの熱伝播によりチャネル保護膜5を効率的に透明化できる。これによりオフ特性及び信頼性に優れた薄膜半導体装置を実現することができる。
【0126】
また、本実施の形態において、図2の(e)において、有機膜5aに対してプリベークを行ったが、このときに、非結晶質の半導体薄膜4aと有機膜5aとの界面に界面層50が生成する場合がある。界面層50は、カーボンを主成分として含むものであり、その主成分であるカーボンは有機膜5aの有機材料に由来するカーボンである。
【0127】
図17Aは、界面層50が形成された場合における第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置10Aの構成を示す断面図である。
【0128】
図17Aに示すように、界面層50は、チャネル層4とチャネル保護膜5との間に形成される。界面層50は、絶縁性を有する絶縁膜であって、界面層50の比抵抗は、2×10(Ω・cm)以上とすることが好ましい。
【0129】
また、図17Aに示すように、薄膜半導体装置10Aでは、界面層50とコンタクト層6との間に、一対の非結晶質のシリコン薄膜60が形成されている。非結晶質のシリコン薄膜60は、アモルファスシリコン膜からなり、意図的な不純物のドーピングが行われていないi層である。従って、非結晶質のシリコン薄膜60は、不純物がドープされたコンタクト層6と比べて電気抵抗が高くなっている。但し、非結晶質のシリコン薄膜60には、自然に含まれる不純物は存在し、非結晶質のシリコン薄膜60の不純物濃度としては、1×1017(atm/cm)以下である。
【0130】
次に、図17Aに示す薄膜半導体装置10Aにおける界面層50の構成について、図18A及び図18Bを用いて説明する。図18Aは、図17Aに示す薄膜半導体装置の界面層周辺における断面TEM像である。また、図18Bは、図18Aの破線で囲まれる領域Bの断面構造を説明するための模式図である。
【0131】
図18Aに示すように、チャネル層4とチャネル保護膜5との界面に、極薄膜の界面層50が形成されていることが分かる。また、図18Aから、膜厚が2nm程度の界面層50が形成されていることが分かる。
【0132】
界面層50は、上述のように、チャネル保護膜5を加熱固化する際に生成される層であり、図18Bに示すように、界面層50のチャネル層4側は、チャネル保護膜5の前駆体である有機膜5aの材料に含まれる界面活性剤のシリコン化合物と、チャネル層4のシリコン原子とが結合した状態となっていると考えられる。
【0133】
具体的には、図18Bに示すように、界面層50とチャネル層との界面は、界面活性剤のY−Si−(O)と結晶シリコン薄膜のSiとが結合し、Si−O−Si結合が存在する状態となっている。なお、Y−Si−(O)におけるYは、有機材料と反応結合する官能基であって、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基又はメルカプト基等である。
【0134】
また、界面層50のチャネル保護膜5側は、SiOC系ポリマー(少なくともSi、O、Cを主成分元素として形成された薄膜)及びS(硫黄)系ポリマー(構成元素としてSi、O、C、Sを含有する薄膜)が存在する状態となっている。SiOC系ポリマーは、有機膜5aの材料に含まれる界面活性剤のシリコン化合物と感光性有機樹脂材料に含まれるカーボンとがポリマー化したものと考えられる。また、S系ポリマーは、有機膜5aの有機材料に含まれる感光剤、界面活性剤及び感光剤がポリマー化した薄膜であると考えられる。
【0135】
このように、界面層50は、Si−O−Si結合とポリマーとが複合的にマトリクス状となった構成であると考えられる。また、界面層50の上には、バルクのSiOC系ポリマーからなるチャネル保護膜5が存在する。
【0136】
なお、界面層50がチャネル層4及びチャネル保護膜5のいずれとも異なる材料で構成されることは、図18Aからも明らかである。すなわち、図18AのTEM像に示されるように、チャネル層4とチャネル保護膜5との間にはコントラストの異なる層が確認できる。なお、TEM像においてコントラストの違いは材料の密度が異なることを表しており、異なる層が存在することを意味する。従って、チャネル層4とチャネル保護膜5との間には、これらの層とは異なる層として界面層50が存在している。
【0137】
次に、図17Aに示す薄膜半導体装置10Aにおける炭素(C)及び硫黄(S)の濃度分布について、図19を用いて説明する。図19は、図17Aに示す薄膜半導体装置を構成する膜中に含まれる炭素及び硫黄の濃度分布を示す図であって、図17Aの矢印Aに示される厚み(深さ)方向における元素濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定してプロットしたものである。
【0138】
図17Aに示される薄膜半導体装置10Aにおいて、同図の矢印Aの深さ方向に従って炭素及び硫黄の濃度を測定すると、すなわち、コンタクト層6、非結晶質のシリコン薄膜60、界面層50及びチャネル層4の順に炭素及び硫黄の濃度を測定すると、図19に示す測定結果となる。なお、図19において、「12C」及び「32S」で示す曲線は、それぞれ炭素及び硫黄の濃度分布を表している。
【0139】
図19に示すように、界面層50は他の層と比べて炭素濃度及び硫黄濃度が高くなっており、界面層50に含まれる炭素濃度は、5×1020(atoms/cm)以上であり、また、界面層50に含まれる硫黄濃度は、5×1019(atoms/cm)以上であることが分かる。
【0140】
さらに、界面層50に含まれる炭素濃度は、チャネル層4に含まれる不純物としての炭素濃度の50倍以上であることも分かる。また、界面層50に含まれる硫黄濃度は、チャネル層4に含まれる不純物としての硫黄濃度の100倍以上であることも分かる。
【0141】
このように形成された界面層50は、カーボンを主成分としているので、チャネル層4と比較してより多くのカーボンを含有している。このように、チャネル層4の凸部とチャネル保護層5との界面にカーボンを主成分とする界面層50が存在するので、チャネル保護層5とチャネル層4との界面において散乱を増大させることができ、当該界面層50がキャリアの移動をブロックする障壁として機能する。すなわち、チャネル層4の上部における抵抗値を増加させることができる。これにより、チャネル層4のバックチャネル領域でのキャリア移動度を低下させることができる。
【0142】
また、界面層50に含まれる硫黄は、チャネル保護層5の有機材料の感光剤に含まれる硫黄である。すなわち、界面層50に含まれる硫黄は、チャネル保護層5の有機材料に由来する。硫黄は、カーボン及び酸素に比べて原子半径が大きいため、キャリアの移動を妨げる効果がカーボン及び酸素に比べて大きい。従って、界面層6に硫黄が含まれていることにより、上記のキャリア移動度をさらに低下させることができ、薄膜半導体装置のオフ特性を一層向上させることができる。
【0143】
これにより、仮にチャネル保護層5に固定電荷が発生した場合であっても、界面層50による散乱によって、キャリアのバックチャネル伝導を抑制することができる。
【0144】
なお、図17Aに示した薄膜半導体装置10Aは、界面層50の成分を詳細に検討するために、界面層50を除去せずに意図的にチャネル層4の全面に界面層50を残しているが、TFT特性を向上させるという観点からは、電流経路に存在する界面層50は十分除去することが好ましい。つまり、図17Aに示した薄膜半導体装置10Aでは、電流経路となるコンタクト層60とチャネル層4の間に高抵抗の界面層50が存在するため、オン特性が低下する。従って、優れたオン特性を有する薄膜半導体装置を実現するためには、有機膜5aを所定形状にパターニングする際、残渣として残りうる界面層50を現像処理、またはエッチング処理を用いて十分除去することによって、図17Bに示す薄膜半導体装置10Bのように、電流経路となるコンタクト層60とチャネル層4の間に高抵抗の界面層50が存在させないことが好ましい。
【0145】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る他の薄膜半導体装置10Bによれば、チャネル層4の上部とチャネル保護層5との間にカーボンを主成分として含む界面層50が形成されているので、チャネル層4のバックチャネル領域でのキャリア移動度を低下させることができる。これにより、オフ時のリーク電流を抑制することができるので、オフ特性を向上させることができる。
【0146】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法について、図20を用いて説明する。図20は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。なお、図20において、図2に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0147】
本実施の形態に係る薄膜半導体装置の構成は、図1に示す第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置の構成と同様であるが、本実施の形態は、チャネル保護膜5が無機膜からなる点で、チャネル保護膜5を有機膜とする第1の実施の形態と異なる。また、第1の実施の形態では、チャネル保護膜5を非透明から透明にして透明化したが、本実施の形態では、チャネル保護膜5を最初から透明膜で構成している。
【0148】
以下、本実施の形態に係る薄膜半導体装置の具体的な製造方法について、図20を参照して説明する。
【0149】
まず、図20の(a)〜(d)に示すように、図2の(a)〜(d)と同様の工程を行う。これにより、図20の(d)に示すように、ゲート絶縁膜3の上に、非結晶質の半導体薄膜4aが形成される。
【0150】
次に、図20の(e)に示すように、非結晶質の半導体薄膜4aの上に、無機材料からなる無機膜5bを形成する。無機膜5bは、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するときのレーザー光に対して透明な材料によって構成されており、本実施の形態でも、当該レーザー光に対する透過率は37%以上とすることが好ましい。
【0151】
無機膜5bは、例えば、プラズマCVDによって酸化シリコンを成膜することによって形成することができる。なお、透明な無機膜5bとしては、酸化シリコン以外の無機材料を用いても構わない。
【0152】
次に、図20の(f)に示すように、無機膜5bをパターニングすることによって所定形状のチャネル保護膜5を形成する。無機膜5bのパターニングは、フォトリソグラフィ及びエッチングによって行うことができる。
【0153】
次に、図20の(g)〜(j)に示すように、図2の(h)〜(k)と同様の工程を行う。これにより、第1の実施の形態と同様の構成の薄膜半導体装置を得ることができる。
【0154】
以上、本実施の形態に係る薄膜半導体装置によれば、第1の実施の形態と同様に、結晶化時のレーザー光に対して透明なチャネル保護膜5の上方から非結晶質の半導体薄膜4aに対して所望のレーザー光を照射することにより、非結晶質の半導体薄膜4aを結晶化するとともに、このときに発生する熱によってチャネル保護膜5を無機化する。
【0155】
これにより、チャネル保護膜5の固定電荷を減少させることができるので、バックチャネルの形成を抑えることができる。従って、優れたオフ特性を有する薄膜半導体装置を実現することができる。
【0156】
また、チャネル保護膜5を無機化することによってチャネル保護膜5のトラップ準位を減少させることもできる。これにより、チャネル保護膜5におけるキャリアのトラップを抑えることができるので、薄膜半導体装置における閾値電圧のシフトを抑えることができる。従って、信頼性に優れ、かつ、面内均一性が高い薄膜半導体装置を実現することができる。
【0157】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記の各実施の形態に係る薄膜半導体装置を表示装置に適用した例であり、本実施の形態では、有機EL表示装置への適用例について説明する。
【0158】
図21は、本発明の第3の実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。上述の薄膜半導体装置は、有機EL表示装置におけるアクティブマトリクス基板のスイッチングトランジスタ又は駆動トランジスタとして用いることができる。
【0159】
図21に示すように、有機EL表示装置20は、アクティブマトリクス基板(TFTアレイ基板)21と、アクティブマトリクス基板21においてマトリクス状に配置された複数の画素22と、複数の画素22のそれぞれに対応して形成された有機EL素子23と、画素22の行方向に沿って形成された複数の走査線(ゲート線)27と、画素22の列方向に沿って形成された複数の映像信号線(ソース線)28と、映像信号線28と並行して形成された電源線29(不図示)とを備える。有機EL素子23は、アクティブマトリクス基板21上に順次積層された、陽極24、有機EL層25及び陰極26を有する。なお、陽極24は、実際には画素22に対応して複数形成される。また、有機EL層25も画素22に対応して複数形成されるとともに、それぞれ、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の各層が積層されて構成されている。
【0160】
次に、上記有機EL表示装置20における画素22の回路構成について、図22を用いて説明する。図22は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜半導体装置を用いた画素の回路構成を示す図である。
【0161】
図22に示すように、各画素22は、直交する走査線27と映像信号線28とによって区画されており、駆動トランジスタ31と、スイッチングトランジスタ32と、コンデンサ33と、有機EL素子23とを備える。駆動トランジスタ31は、有機EL素子23を駆動するトランジスタであり、また、スイッチングトランジスタ32は、画素22を選択するためのトランジスタである。
【0162】
駆動トランジスタ31において、ゲート電極31Gがスイッチングトランジスタ32のドレイン電極32Dに接続され、ソース電極31Sが中継電極(不図示)を介して有機EL素子23のアノードに接続され、ドレイン電極31Dが電源線29に接続される。
【0163】
また、スイッチングトランジスタ32において、ゲート電極32Gは走査線27に接続され、ソース電極32Sは映像信号線28に接続され、ドレイン電極32Dはコンデンサ33及び駆動トランジスタ31のゲート電極31Gに接続されている。
【0164】
この構成において、走査線27にゲート信号が入力されて、スイッチングトランジスタ32がオン状態になると、映像信号線28を介して供給された映像信号電圧がコンデンサ33に書き込まれる。コンデンサ33に書き込まれた映像信号電圧は、1フレーム期間を通じて保持され、この保持された映像信号電圧により、駆動トランジスタ31のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が有機EL素子23のアノードからカソードへと流れて有機EL素子23が発光する。
【0165】
なお、本実施の形態では、有機EL素子を用いた有機EL表示装置について説明したが、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示装置にも適用することができる。また、このように構成される表示装置については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのあらゆる表示パネルを有する電子機器に適用することができる。
【0166】
以上、本発明の実施の形態に係る薄膜半導体装置及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0167】
例えば、上記の実施の形態では、半導体薄膜としてシリコン薄膜を用いたが、シリコン薄膜以外の半導体薄膜を用いることができる。例えば、ゲルマニウム(Ge)又はSiGeからなる半導体薄膜を結晶化させて結晶質の半導体薄膜からなるチャネル層を形成することもできる。
【0168】
また、上記の実施の形態において、結晶質シリコン薄膜は、n型半導体であっても、p型半導体であっても良い。
【0169】
なお、その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明に係る薄膜半導体装置は、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話などの表示装置、又はその他薄膜トランジスタを有する様々な電気機器等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0171】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 チャネル層
4a 非結晶質の半導体薄膜
5、105 チャネル保護膜
5a 有機膜
5b 無機膜
6 コンタクト層
7 ソースドレイン金属膜
7D ドレイン電極
7S ソース電極
10、10A、10B、100 薄膜半導体装置
20 有機EL表示装置
21 アクティブマトリクス基板
22 画素
23 有機EL素子
24 陽極
25 有機EL層
26 陰極
27 走査線
28 映像信号線
29 電源線
31 駆動トランジスタ
32 スイッチングトランジスタ
31G、32G ゲート電極
31S、32S ソース電極
31D、32D ドレイン電極
33 コンデンサ
50 界面層
60 非結晶質のシリコン薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する第1工程と、
前記基板上にゲート電極を形成する第2工程と、
前記ゲート電極上に第1絶縁膜を形成する第3工程と、
前記第1絶縁膜上に非結晶質の半導体薄膜を形成する第4工程と、
前記非結晶質の半導体薄膜上に第2絶縁膜を形成する第5工程と、
前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより、前記非結晶質の半導体薄膜を結晶化させて結晶化領域を形成する第6工程と、
前記結晶化領域の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する第7工程と、を含み、
前記第5工程において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明となるように形成される、
薄膜半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第5工程において、前記第2絶縁膜は、前記光線に対する透過率が37%以上となるように形成される、
請求項1に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第6工程において、前記第2絶縁膜は、前記結晶化領域が形成される際の熱によって無機化される、
請求項1又は2に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、有機材料からなる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に形成したゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成された結晶質の半導体薄膜と、
前記結晶質の半導体薄膜の上方に形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記結晶質の半導体薄膜上に形成された第2絶縁膜と、を具備し、
前記結晶質の半導体薄膜は、前記第2絶縁膜の上方から光線を照射することにより非結晶質の半導体薄膜の少なくとも一部を結晶化したものであり、
前記第2絶縁膜は、前記光線に対して透明である、
薄膜半導体装置。
【請求項6】
前記第2絶縁膜は、前記光線に対する透過率が37%以上である、
請求項5に記載の薄膜半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁膜は、前記結晶化領域が形成される際の熱によって無機化したものである、
請求項5又は6に記載の薄膜半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は、有機材料からなる、
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。
【請求項9】
さらに、前記結晶質の半導体薄膜と前記第2絶縁膜との間に形成された、カーボンを含有する界面層を有し、
前記界面層に含有されるカーボンの濃度は、前記結晶質の半導体薄膜に含有される不純物としてのカーボンの濃度の50倍以上である、
請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。
【請求項10】
前記界面層に含有されるカーボンの濃度は、5×1020(atoms/cm)以上である、
請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。
【請求項11】
前記界面層は、硫黄を含む、
請求項5ないし請求項10のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。
【請求項12】
前記界面層に含有される硫黄の濃度は、前記結晶質の半導体薄膜に含まれる不純物としての硫黄の濃度の100倍以上である、
請求項11に記載の薄膜半導体装置。
【請求項13】
前記界面層に含有される硫黄の濃度は、5×1019(atoms/cm)以上である、
請求項11に記載の薄膜半導体装置。
【請求項14】
前記界面層の比抵抗は、2×10[Ω・cm]以上である、
請求項5ないし請求項13のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。
【請求項15】
前記界面層の厚みは、1nm以上、5nm以下である、
請求項5ないし請求項14のいずれか1項に記載の薄膜半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図18A】
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【公開番号】特開2013−98244(P2013−98244A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237568(P2011−237568)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】