説明

薄膜基板の製造方法

【課題】 薄膜基板上に、効率的かつ安定的にパターンを形成する製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜基板、仮固定用粘接着剤、硬質基板の順に積層されており、硬質基板に粘接着剤を介して薄膜基板を固定したのち、パターン形成を行う。その後、薄膜基板と粘接着剤の界面にて剥離する薄膜基板の製造方法を提供することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜基板へのパターン形成方法に関し、より具体的にはフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板の製造や太陽電池の成膜プロセスにおける薄膜基板へのパターン形成方法、及びその方法に使用する粘接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板や有機ELパネルのベース基板、カラーフィルター等の基板は、厚みがあるために剛性があったため、これらの基板上へのパターン形成時において、基板の固定や移動等のハンドリングには苦慮せず、正確な位置に固定してこれらの基板上にパターン形成を行うことが可能であった。実際駆動回路やカラーフィルター、タッチパネルの回路基板はガラス基板上に形成するのが通常であり、このような十分な剛性を備えたガラス基板に対するパターン形成時にはなんら問題を生じなかった。
【0003】
しかしながら、最近、電子デバイス中の部品やディスプレイ、より具体的にはフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイのTFT(駆動回路)、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板そのものにおいて、軽量かつ、衝撃をうけても破壊しにくく、しかも薄いことを特徴とするタイプの開発が開始されている。
【0004】
この場合、駆動回路、パッシブマトリクス、カラーフィルタータッチパネルの回路基板等は従来のガラス基板ではなく、いわゆる耐熱性のある金属箔やプラスチック基板上にパターンを形成する必要があるが、これら金属箔やプラスチック基板は薄膜のため、正確な固定および搬送が難しいという課題が山積している。
特にパターン形成を行う際には、基板のわずかなゆがみから位置ずれを起こしてしまい、結果的に大きく歩留まりを低下させてしまう。また、多孔質板を用いた吸着プレートを用いて基板を固定しても、その吸着部のわずかなくぼみが位置ずれを生じさせ、結果的に歩留まりを低下させてしまう等の課題が生じている。
【0005】
このためPhilips Corporationはα‐Si TFT- EPDディスプレイを開発するべく、ポリイミドをガラス上に塗布してから、転写技術を利用してポリイミド基板をガラスから引き離す方法を提案しているが、この場合、ガラス基板を取り去るのに、レーザーアニーリングを用いることが必要とされ、結果的に新機設備が必要であったり、耐熱の観点から、安価な薄膜基板を用いることができないという課題がある。
さらに最近ではRoll to Roll作成プロセスも試みられているが、この場合、従来のバッチプロセスではないため、既存のTFT設備を使用することができず新たな設備が必要になる。またロール巻きされた基板の回転と接触に起因するいくつかの問題を克服しなければならない。
一方フレキシブルディスプレーの製造方法としては、特許文献1に記載されているように、仮基板の上に剥離層を形成し、この上に下から順にゲート電極、ゲート絶縁層及び有機活性層が形成され、ソース電極及びドレイン電極が前記有機活性層に電気的に接続された構造のTFTと、前記TFTの前記ドレイン電極に電気的に接続される画素電極とを形成する工程と、前記TFTの上又は上方に、バリア絶縁層を形成する工程と、前記バリア絶縁層の上に、接着層を介して、プラスチックフィルムを接着する工程と、前記仮基板を前記剥離層との界面から剥離することにより、前記プラスチックフィルム上に、前記接着層を介して、前記バリア絶縁層、前記TFT、前記画素電極及び前記剥離層を上下反転させた状態で転写・形成する工程と、前記剥離層を除去して、前記TFT及び前記画素電極の一部を露出させる工程と、前記各画素の前記画素電極の上に発光層を含む有機EL層をそれぞれ形成する工程と、前記有機EL層上に金属電極を形成する工程と、前記金属電極を被覆する封止層を形成する工程とを含む方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−12815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来の技術による課題、つまり、電子デバイス中の部品やディスプレイ等に用いられる薄膜基板上にパターンを形成させる方法において、該薄膜基板を正確に固定・搬送し、気泡を生じずに位置がずれることなくパターン形成できると共に安価な耐熱基板を採用することができ、仮基板上の剥離層の上に電極や絶縁層等の素子を積層させ、この上に別に用意したプラスチックフィルムを接着して、該プラスチックフィルム上に転写・形成する工程を含む方法のように、転写・剥離工程を必要とし、かつそのために不十分な剥離・転写が行われる可能性を排除する方法を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記のような従来の問題を解決しようとするものであり、薄膜基板を用いた場合でも硬質基板上に粘接着剤を介して固定することで、気泡なくゆがみなく固定できる。それにより、位置ずれを発生させず安定的にパターン形成を行え、また搬送後、ダメージなく取り出せることが可能となる方法を提供するものであり、そのために下記の手段を採用する。
【0009】
1.パターンが形成された薄膜基板を製造する方法であって、硬質基板表面に設けた粘接着剤層上に薄膜基板を固定した後、該薄膜基板上にパターンを形成し、次いで、薄膜基板を粘接着剤との界面にて剥離する方法。
2.該薄膜基板は少なくとも1層以上からなり、その厚みが2mm以下であり、ガラス転移点温度(Tg)が23℃以上かつ引張弾性率が300MPa以上である層を有する1の方法。
3.該薄膜基板の150℃でのCTEが300ppm以下である1又は2の方法。
4.該粘接着剤層は、少なくとも1層以上の層からなり、総厚が1〜1mmであり、23℃から150℃までの貯蔵弾性率が1×10〜1×10である1〜3のいずれかの方法。
5.該粘接着剤層は、150℃×1hr加熱後の粘着力の値が加熱前測定値の3倍以内であり、且つ薄膜基板を剥離する際のピール速度300mm/分での180度ピール粘着力が1.5N/10mm以下である1〜4のいずれかの方法。
6.パターンを形成する工程は80℃〜270℃に加熱する工程を1回以上含む1〜5のいずれかの方法
7.上記1〜6のいずれかの方法における粘接着剤層に使用する粘接着剤。
8.1〜6のいずれかの方法において使用される、硬質基板と硬質基板表面に設けた粘接着剤層からなる積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の手段を採用することにより、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明における粘接着剤は粘着性及び/又は接着性を有する組成物であり、その組成物により少なくとも1層からなる層構造を形成できる。そして、該粘接着剤は、80〜270℃の高温雰囲気下において、パターン形成のための硬質基板と、薄膜基板を1次的に仮固定する材料であって、加熱後の粘着力の上昇を制御できることで、最終的な薄膜基板の取り出し時において、ダメージや剥離不良、糊残り不具合を発生することなく、薄膜基板・粘接着剤からの剥離を可能とする。これにより装置稼働率をあげ、安価な回路部材を提供することができる。
さらに従来技術による方法とは異なり、該薄膜基板を正確に固定・搬送し、気泡を生じずに位置がずれることなくパターン形成できることで歩留まりの向上を図ることが可能であり、安価な耐熱基板を採用することができ、別に用意した両面テープを用いることなくバッチプロセスを採用できる方法を得て、これにより効率的かつ安定的なパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の薄膜基板固定用粘接着シートを用いて薄膜基板を硬質基板に固定した断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、薄膜基板上にパターンを形成させるにあたって、予め硬質基板を用意し、この表面に粘接着剤層を介して薄膜基板を固定させることにより、その後のパターン形成から該薄膜基板を該粘着剤層から剥離する工程を円滑に行うための発明である。
【0013】
(パターン)
本発明におけるパターンとは、薄膜基板を、その用途であるフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板や太陽電池の成膜プロセス等の用途に使用するために、必要とされる該薄膜基板上に形成される回路や薄膜、素子等を示す。
このパターンとしては上記の用途に必要なものであれば良く、パターンの形状や材質は問わない。
【0014】
(硬質基板)
硬質基板として用いられるものとしては、ガラス、金属板、半導体ウエハのほか、なんら限定するものではない。十分な強度を有して、基板上に本発明中の粘接着剤からなる層を形成することが可能で、かつ、その粘接着剤からなる層の上に、さらにパターンを形成させる対象である薄膜基板を安定的に積層させることが可能であればよい。
硬質基板の厚みは0.01mm〜10mm、より好ましくは0.02mm〜7mm、さらにこのましくは0.03mm〜5mmであり、0.01〜10mmの厚みであれば、保持し搬送することが容易であり、かつ耐衝撃性を有する点で好ましい。保持・耐衝撃性を満たすものならばこの厚みの範囲においてもさらに薄いほうが軽量であるために搬送しやすくさらに好ましい。
【0015】
(薄膜基板)
薄膜基板として用いられるものとしては、少なくとも1層以上からなる基板であって、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ステンレス箔等が使用できる。
またこの他の材料であっても上述のフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター等の用途に使用可能であればなんら制限をうけない。
その薄膜基板の構成として、単層のみならず、複層や多層であってもなんら問題はなく、また耐摩耗性や平滑性の向上、防湿性の向上のためにいずれかの面に処理層が設けられてもなんら問題はない。
薄膜基板の表面粗さは特に制限はないが、パターンが形成される面は平滑であるほうが好ましく、この点においてRmaxが10μm未満、より好ましくは5μm未満であることが好ましい。
その厚みは、軽量・薄膜化と同時に最終的に組み立てできる厚みであることが必要なことから、5μm〜2mm厚、好ましくは7μm〜0.5mm厚、より好ましくは、10μm〜0.3mm厚である。
【0016】
薄膜基板の弾性率はパターン形成工程でのハンドリングによる折れ曲がり防止等を考慮すると、ある程度の弾性率を有するものが好ましく、具体的には100MPa以上 、より好ましくは300MPa以上である。100MPa以上のフィルムであれば、パターン形成後のハンドリングにおいて、薄膜基板のシワ・折れを頻繁に生じることなく、歩留まりが低下しない。さらに弾性率が低いフィルムのように、一般的に加熱により軟化溶融して使用が難しいという欠点が解消される。
また薄膜基板のガラス転移温度(Tg)は室温でのハンドリング性・ゆがみ制御を考慮すると、23℃以上であることが好ましい。
【0017】
特にTFT(駆動回路)やカラーフィルターの形成においては150℃以上の加熱工程下にて処理されることが一般的であり、CTE値(線膨張係数)が大きな材料を使用すると、硬質基板とのCTE値の差により、パターン形成時の膨張・収縮が生じ回路形成時のずれ等が発生し、結果として歩留まりが下がる等の問題が発生してしまうため、この値は重要である。
具体的には150℃でのCTE値が300ppm未満のものが使用でき、より好ましくは200ppm未満、さらに好ましくは150ppm未満、さらには100ppm未満の薄膜基板を使用するのがよい。150℃でのCTE値が300ppm以上の場合、150℃以上のパターン形成において、各回路層形成時の位置ずれが生じてしまい、結果的に歩留まりが低下する結果がみられた。
【0018】
(粘接着剤)
粘接着剤に関しては、硬質基板と薄膜基板を貼り合わせ・固定するというその役目により、薄膜基板を硬質基板に十分な粘接着性をもって固定できる組成物であることが必要である。本発明における粘接着剤は粘着剤あるいは接着剤として機能する剤を包含する。
このため、例えば粘接着剤としては、有機系接着剤、具体的には天然ゴム接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エチレン−酢酸ビニルホットメルト接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶剤系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、反応性ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール系接着剤、ポリベンズイミダゾール接着剤、ポリメタクリレート樹脂溶剤系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤等、及びこれらの樹脂の粘着剤を用いることができる。またその他の材料であってもなんら制限はない。
【0019】
粘接着剤は、より具体的にはゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系粘接着剤を用いてもその他の材料を用いても、なんら制限はない。ここでは具体例として、アクリル系粘着剤を例にとるが、これ以外の材料においてもなんら制限がない。
また、粘接着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)のほかに、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、ゴム、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。
このような粘接着剤をあらかじめバーコーターにて硬質基板上に塗布したのち、薄膜基板を貼り合わせることもできるし、薄膜基板上に塗布したのち、硬質基板に貼り合わせてもよい。
【0020】
粘接着剤は有機溶剤あるいは水中に適宜溶解させ、硬質基板上にバーコーターあるいはマイヤーバーを用いて塗布し、必要に応じて乾燥工程を経ることで、仮固定層として使用することができる。
又は、有機溶剤あるいは水中に適宜溶解させた粘接着剤を薄膜基板の一面に塗布し、これを乾燥することにより、該粘接着剤層を該薄膜基板の片面に形成し、次いで、粘接着剤層側の面を硬質基板表面に合わせることによって、硬質基板表面に該粘接着剤層を介して薄膜基板を固定させることも可能である。
さらに、硬質基板又は薄膜基板に粘接着剤層を設けるにあたり、一旦、剥離ライナー層上に有機溶剤あるいは水中に適宜溶解させた粘接着剤を塗布・乾燥して得た粘接着剤層を、薄膜基板や硬質基板に転写する手段を採用することもできる。
この際の粘接着剤層の厚みとしては0.01μm〜3mmが好ましく、より好ましくは0.02μm〜2.5mmが好ましい。また粘接着剤層は基材を有さない構造として形成してもよいし、少なくとも1層からなる補強層 を介して同様あるいは異種の粘接着剤を両面に塗布した構造を有していても良い。
0.01μmよりも厚いと、薄膜基板を固定するために十分な接着力を得ることができ、3mm厚以下であれば、パターン形成工程後工程にあたる、薬液工程にて粘着剤および基材がダメージをうけず、端部より薬液が浸入することがないので、固定の不具合やデラミの不具合を生じるおそれがない。
【0021】
粘接着剤の貯蔵弾性率は23℃〜150℃の間で1×10〜1×10Paが好ましい。1×10Pa以上では、パターン形成時に粘接着剤層が薄膜基板の膨張・収縮を抑制することができ、結果的に変形しないので、パターンずれを発生させない。一方1×10Pa以下では、硬質基板や薄膜基板に対する接着性が得られ、浮きやはがれを生じない。これらの貯蔵弾性率は、架橋剤を含む硬化剤のほか、シリカ、粘着付与剤、可塑剤 、フッ素樹脂、シランカップリング剤等の添加によっても調整可能であるから特に問題はない。
また、パターン形成過程が80℃〜270℃の加熱環境で20分〜3時間程度で処理されることが多いことから、本発明の粘接着剤は本用途において150℃×1時間加熱後の粘着力の値が、加熱前測定値の3倍以内であることが望ましい。加熱後粘着力が3倍以内の粘・接着シートは薄膜基板の微小な凹凸に完全に追従することがないので、剥離が困難となることがない。
【0022】
薄膜基板に対する粘着剤の加熱による濡れ性を抑制するため、アクリルポリマー中にグリシジルメタクリレートとアクリル酸を共重合させ、パターン形成時の加熱工程によって、熱硬化させることで濡れ性を抑制してもよい。そのほかの方法として、加熱前後での粘着力の上昇を抑制するために、重合時にアクリルモノマー全体に対するアクリル酸の重量比率を7%未満におさえることも効果的である。その他、可塑剤やワックス、界面活性剤、接触面積を減らすためのシリカといった成分を添加してもなんら問題はない。
【0023】
薄膜基板の剥離工程においてピール速度300mm/分での180度ピール粘着力は2N/10mm以下、好ましくは1.5N/10mm以下、さらに好ましくは1.0N/10mm以下である。
2N/10mm以上では、薄膜基板の剥離が容易ではなく、結果として剥離時にダメージを与えてしまい、薄膜基板やその上に形成した層を傷つけることになり、良品率が低下してしまう問題がある。剥離過程においては、実質剥離力がゼロに近ければ近いほど、剥離時のダメージが生じないため、これがより好ましい。
【0024】
このように、パターン形成プロセスでは粘着力が高いことが望ましい。しかしながら、薄膜基板上にパターンを形成した後には粘接着剤層から薄膜基板を剥離することが必要であるから、薄膜基板剥離時には過度に薄膜基板に力がかかることによるストレス・ダメージなく円滑に剥離させることが重要である。
【0025】
こういった観点から、例えば紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより粘接着力を低下させることができる粘接着剤や、加熱することにより粘接着力を低下させることができる粘接着剤層を用いることができる。
紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより粘接着力を低下させることができる粘接着剤として、例えばアクリル系を用いる場合、ポリマー骨格中にC=C結合導入されているポリマーを用いたり、アクリレート、ウレタンオリゴマーといわれるC=C2重結合を含む化合物を添加し、光重合開始剤と呼ばれる化合物を有機溶剤下で混合してなる粘接着剤を使用できる。
これを剥離ライナー上にバーコーターで塗布後、120℃×5分乾燥させることで所定の粘接着シートを得ることができる。このようにして得られた粘接着シートは上述のように紫外線照射で容易に粘着力を低下させることができる。
【0026】
また、加熱することにより粘接着力を低下させることができる粘接着剤としては、松本油脂等で販売されている「マイクロスフェアーシリーズ」等のマイクロカプセル等の発泡剤を粘着剤中に配合した粘接着剤を採用する。これを塗布してなる粘接着剤層は加熱によるマイクロカプセルが発泡・膨張により、粘接着剤層‐被着体界面に物理的な凹凸が発生し、薄膜基板と粘接着剤層との接着面積が著しく減少するため、結果的に粘接着力を極小まで変化させることができ、この結果として薄膜基板を発泡した粘接着剤層から容易に剥離することができる。
なかでも、加熱することにより粘着力を低下させることができる粘接着剤は、加熱時に熱膨張性微小球等の発泡剤の膨張及び/又は発泡を可及的に拘束しないようなものが好ましく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリープ特性改良型粘着剤などの公知の粘接着剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる
【0027】
上記粘接着剤に架橋剤を添加する場合は、その添加量としては、ベースポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8重量部である。なお、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、チウラム系架橋剤、樹脂系架橋剤、金属キレートなどの架橋剤を用いることができる。
【0028】
なお、加熱処理前の適度な接着力と加熱処理後の接着力の低下性のバランスの点から、より好ましい粘接着剤は、動的弾性率が常温から150℃において5000〜100万Paの範囲にあるポリマーをベースとした感圧接着剤である。
【0029】
前記熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であればよい。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。なお、本発明の熱膨張性微小球としては、例えば、松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F30D、F50D」などの市販品を使用することも可能である。
【0030】
また、加熱処理により粘接着剤層の接着力を効率よく低下させるため、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する熱膨張性微小球が好ましい。
【0031】
熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量は、粘接着剤層の膨張倍率や粘着力(接着力)の低下性などに応じて適宜設定し得るが、一般には粘接着剤層を形成するベースポリマー(例えば、アクリル系の粘着剤である場合にはアクリルポリマー)100重量部に対して、例えば1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部である。上記熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量が1重量部未満では、十分な易剥離性を発揮することができない場合があり、一方、配合量が150重量部を超えると、粘接着剤層表面が凸凹して接着性が低下する場合がある。特に本発明においては、薄膜基板が破壊しない程度に容易に剥離できればよく、かつ、薄い粘接着剤層を形成する場合は、熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量をある程度少なく抑えることが表面状態を安定的に形成する上で好ましい。この点から、完全剥離(粘着力がゼロとなる)のために必要な配合量の半分程度の配合量(30〜80重量部)が最適である。
【0032】
本発明の粘接着剤層の熱膨張開始温度は、回路が形成される等薄膜基材およびその上に形成された層の耐熱性などに応じて適宜決定され、特に限定するものではないが、なお、本発明における「熱膨張開始温度」とは、熱膨張性微小球等の発泡剤を熱分析装置(SII・ナノテクノロジー(株)製、商品名「TMA/SS6100」)を使用し、膨張法(荷重:19.6N、プローブ:3mmφ)にて測定した際の、熱膨張性微小球の膨張が開始した温度である。
【0033】
上記熱膨張開始温度は、熱膨張性微小球等の発泡剤の種類や粒径分布などによって適宜制御することができる。特に、熱膨張性微小球を分級し、使用する熱膨張性微小球の粒径分布をシャープにすることにより容易に制御することができる。分級方法としては、公知の方法を用いることができ、乾式・湿式のいずれの方法を用いてもよく、分級装置としては、例えば、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機など公知の分級装置を用いることが可能である。
熱膨張性微小球を含有する場合の粘着剤層の厚さとしては、例えば、5〜300μm、好ましくは10〜200μm程度である。
熱膨張性微小球を含有する粘接着剤層の場合は、含有する熱膨張性微小球の最大粒径より厚ければよく、この場合には熱膨張性微小球が粘接着剤からなる層表面に凹凸を形成させることがない。
【0034】
(セパレータ)
本発明において、粘接着剤層を形成した後、薄膜基板を該粘接着剤層上に積層させる前に、場合により該粘接着剤層表面の汚染防止の目的でセパレータとして剥離ライナーを積層させておくことができる。
用いられるセパレータとしては、特に限定されず、公知の剥離紙などを使用できる。例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン系等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
【0035】
(フレキシブル回路基板製造工程)
本発明の粘接着剤を使用してフレキシブル回路基板を製造する場合には、薄膜基板であるフレキシブル回路基板の基材フィルムを硬質基板上に形成された粘接着剤層により仮固定した状態で、該フレキシブル回路基板の基材フィルム上に回路や素子を形成し、あるいは素子を実装することによりフレキシブル回路基板を製造する。
【0036】
具体的には、まず、フレキシブル回路基板の基材フィルムを硬質基板に粘接着剤層を介して仮固定し、仮固定されたフレキシブル回路基板の基材フィルム上に回路を形成し、次いで素子を固定することにより得られる。前記フレキシブル回路基板の基材フィルムを固定する硬質基板としては、フレキシブル回路基板の基材フィルムを保持することができればよく、特に限定されないが、フレキシブル回路基板の基材フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。硬質基板の厚さとしては、0.01〜10mm、さらに0.4mm以上(例えば、0.4〜5.0mm)が好ましい。
【0037】
硬質基板上に粘接着剤層を介してフレキシブル回路基板用フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板とフレキシブル回路基板用フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0038】
フレキシブル回路基板を構成する基板材料としては、耐熱性、寸法安定性、ガスバリア性、表面平滑性を有する材料であれば特に限定されることはなく、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、環状オレフィン系ポリマー、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルスルホン、全芳香族ポリケトン、液晶ポリマー、ポリイミドなどからなるフィルムを使用することができる。また、これらのフィルムに、必要によりガスバリア性向上のための被膜形成を行ってもよい。
また、銅張積層板、メンブレン配線板、多層フレキシブル回路基板を基板材料として採用しても良く、ビアホール加工等を行ってなる基板も使用することができる。
【0039】
これらのフィルムの厚さとしては、配線部の厚さを除外して例えば800μm以下程度、好ましくは5〜700μm程度、特に好ましくは5〜600μm程度である。
【0040】
フレキシブル回路基板としては、片面回路、両面回路、多層回路等の各フレキシブル回路基板とすることができ、回路の形成のみではなく、素子等を実装することもできる。薄膜基板の両面に回路を形成するには、片面に回路を形成した後、その回路形成面を粘接着剤を介して硬質基板に固定して他面に回路を形成する手段を採用できる。
フレキシブル回路基板の基材フィルム上に形成する有機トランジスタ材料としては、特に限定されることがなく、低分子系有機半導体材料、高分子系有機半導体材料、有機・無機ハイブリッド半導体材料を使用でき、ゲート絶縁材料としては有機ポリマー材料や無機材料を使用できる。
【0041】
有機トランジスタを形成する手段としては、転写法などによることができるが、電極や配線はフィルム上に直接描画することにより形成することができる。それらの材料としては、銀等の金属ナノ粒子を含有する金属ナノペーストやインク、金属酸化物のナノ粒子を含有するペーストやインクを採用できる。また導電性ポリマーの溶液などを採用しても良い。
これらのトランジスタ、電極・配線の描画方法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷、ナノプリント技術を採用することができる。
さらにTFT回路等を転写によってフィルム上に形成しても良い。
【0042】
このようにして製造されるフレキシブル回路基板上に、さらに液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示層を形成させるために必要な層を形成させることが可能であり、それぞれのディスプレイに応じた層構造となるように加工される。
【0043】
フレキシブル回路基板の製造方法においてはフレキシブル回路基板製造工程後に、さらに、フレキシブル回路基板を硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離されたフレキシブル回路基板は、周知慣用の方法で回収される。
【0044】
また、フレキシブル回路基板剥離工程においては、より好ましくは粘接着剤層の粘接着力を低下させ、フレキシブル回路基板形成工程を経て得られたフレキシブル回路基板を支持板から剥離させることが好ましい。
【0045】
粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
しかしながらフレキシブル回路基板の耐熱温度を考慮して、加熱により粘接着力を低下させることにより有機ELパネルを支持板から剥離させる場合には、その加熱温度を該耐熱温度より低い温度とすべきであり、この点において、紫外線等の活性エネルギー線による剥離を行う手段が好ましい。
【0046】
粘接着剤層として先に述べた熱剥離型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球が膨張及び/又は発泡する温度であり、かつ形成したフレキシブル回路基板を損傷しない温度であればよく、特に限定はされない。
【0047】
(有機ELパネル製造工程)
本発明の粘接着剤を使用して有機ELパネルを製造する場合には、薄膜基板である有機ELパネル用支持フィルムを硬質基板上に形成された粘接着剤層により仮固定した状態で、該有機ELパネル用支持フィルム上に発光層及び波長を調整する層、カバー層等を形成することにより製造する。
【0048】
具体的には、本発明中の薄膜基板として必要に応じて金属酸化物により被覆されてなる樹脂フィルムを採用する。これを硬質基板に粘接着剤層を介して仮固定し、仮固定された樹脂フィルム上に絶縁層、ITO,酸化インジウム、IZO,銀等の電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、RGBカラーフィルター等を任意の順に形成することにより得られる。前記硬質基板を構成する材料としては、貼り合わされる薄膜基板を保持することができればよく、特に限定されないが、有機ELパネル用支持フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。このような硬質基板の厚さとしては0.01〜10mm、さらには0.4mm以上(例えば、0.4〜5.0mm)が好ましい。
【0049】
硬質基板上に粘接着剤層を介して有機ELパネル用支持フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板と有機ELパネル用支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0050】
薄膜基板である有機ELパネル用支持フィルムを構成する材料としては、平滑性、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、かつ発光に必要な各層を形成させた後においても柔軟性を発揮することができる材料であれば特に限定されることはなく、例えば、樹脂層、酸化シリコン層や窒化シリコン層等のバリア層により被覆されてもよいポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、芳香族ポリエーテルサルフォンからなるフィルム、さらに場合により極薄ガラスを使用することができる。
【0051】
このような有機ELパネル用支持フィルムの厚さとしては、例えば3mm以下程度、好ましくは10μm〜2.5mm程度、特に好ましくは15μm〜2.5mm程度である。
【0052】
有機ELパネル用支持フィルム上に形成する有機EL用の各層としては、ガスバリア性、水蒸気バリア性向上のための層以外について、従来のガラス基板上に設ける有機ELのための積層構造と同様であり、その積層手段についてもガラス基板上への積層手段と同様の手段を採用することができる。
【0053】
得られる有機ELパネルとしては特に制限がなく、アクティブ方式フルカラーパネル、カラーフレキシブルパネル、高分子正孔輸送層を有するパネル、パッシブ型高分子有機ELパネル等公知の形式のいずれでも良い。
【0054】
有機ELパネルの製造方法においては有機ELパネル製造工程後に、さらに、有機ELパネルを硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離された有機ELパネルは、周知の方法で回収される。
【0055】
また、有機ELパネル剥離工程においては、より好ましくは粘接着剤層の粘接着力を低下させ、有機ELパネル形成工程を経て得られた有機ELパネルを硬質基板から剥離させることが好ましい。
【0056】
粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
しかしながら有機ELパネルの耐熱温度を考慮して、加熱により粘接着力を低下させることにより有機ELパネルを硬質基板から剥離させる場合には、その加熱温度を該耐熱温度より低い温度とすべきであり、この点において、紫外線等の活性エネルギー線による剥離を行う手段が好ましい。
【0057】
粘接着剤層として熱剥離型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球などの発泡剤が膨張及び/又は発泡する温度であり、かつ形成した有機ELパネルを損傷しない温度であればよく、例えば70〜200℃、好ましくは100〜160℃程度である。
【0058】
(電子ペーパー製造工程)
本発明の粘接着剤を使用して電子ペーパーを製造する場合には、薄膜基板である電子ペーパー支持フィルムを硬質基板上に形成された粘接着剤層によりに仮固定した状態で、該電子ペーパー支持フィルム上にTFTを形成してドライバ層を得、さらに、該ドライバ層上に画像表示機能を有する表示層を貼り合わせて電子ペーパーを製造する。
【0059】
具体的には、ドライバ層は、まず、電子ペーパー支持フィルムを硬質基板に粘接着剤層を介して仮固定し、仮固定された電子ペーパー支持フィルム上にTFTを形成することにより得られる。前記硬質基板を構成する材料としては、貼り合わされる電子ペーパー支持フィルムを保持することができればよく、特に限定されないが、電子ペーパー支持フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。このような硬質基板の厚さとしては0.01〜10mm、さらには0.4mm以上(例えば、0.4〜5.0mm)が好ましい。
【0060】
硬質基板上に粘接着剤層を介して電子ペーパー支持フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板と電子ペーパー支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0061】
電子ペーパー支持フィルムを構成する材料としては、表示層と貼り合わせた後にも柔軟性を発揮することができる材料であれば特に限定されることはなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルからなるフィルムを使用することができる。また、電子ペーパー支持フィルムは、透明フィルムであってもよく、不透明フィルムであってもよい。さらに、色印刷フィルムや、色練り込みフィルム、必要に応じて金や銀、アルミニウムで蒸着した蒸着フィルムであっても、絶縁層が形成されていてもよい。
【0062】
電子ペーパー支持フィルムの厚さとしては、例えば800μm以下程度、好ましくは5〜700μm程度、特に好ましくは10〜600μm程度である。
【0063】
電子ペーパー支持フィルム上に形成するTFTの型としては、特に限定されることがなく、例えば、スタガード(staggered)型、インバーテッド・スタガード(inverted staggered)型、コープレーナー(coplanar)型、インバーテッド・コープレーナー(inverted coplanar)型などを形成することができる。そして、トランジスタを構成する半導体層やゲート絶縁膜、電極、保護絶縁膜などは通常のTFT形成と同様に真空蒸着やスパッタリング、プラズマCVD、フォトレジストなどの方法により、電子ペーパー支持フィルム上に薄膜状に形成することができる。
【0064】
表示層は、画像表示機能を有する層である。表示層の画像表示形式としては、電気、磁気による表示機能を有するものであれば特に限定されることなく、例えば、ツイストボール方式や、電気泳動方式、帯電トナー表示方式などを採用することができる。
【0065】
表示層と、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムとを貼り合わせる方法としては、表示層と、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
また、表示層背面に、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムと接着するために粘着剤層が設けられている場合は特に必要としないが、表示層背面に粘着剤層が設けられていない場合は、一般的な接着剤を使用して、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムを接着することができる。
【0066】
本発明に係る電子ペーパーの製造方法においては、電子ペーパー形成工程後に、さらに、電子ペーパーを硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離された電子ペーパーは、周知の方法で回収される。
【0067】
また、電子ペーパー剥離工程においては、より好ましくは粘接着剤層の粘接着力を低下させ、電子ペーパー形成工程を経て得られた電子ペーパーを硬質基板から剥離させることが好ましい。
【0068】
粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
【0069】
粘接着剤層として熱剥離型粘着剤層を有する粘接着剤を使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球等の発泡剤が膨張及び/又は発泡する温度であれば何ら限定されるものではない。
【0070】
(測定方法)
薄膜基板の物性測定
弾性率測定:3mm幅の短冊状に切削し、引っ張り用にチャックに挟み、MD方向とTD方向について、テンシロンを用いて引っ張り測定をおこなった。チャック間距離:50mm、ピール速度:300mm/分で測定をおこなった際の最大ヤング率を弾性率(MPa)として算出した。
【0071】
CTE測定:試料を各々3mm幅の短冊状に切削し、引っ張り用にチャックに挟み、MD方向とTD方向について、TMA測定を行った。装置はエスアイアイ・ナノテクノロジー製TMA/SS6000を用い、引っ張り法の測定モードを用い、荷重19.6mN、チャック間10mm、温度プログラム:室温⇒200℃、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素(流量200ml/分)での140℃〜160℃のTD、MDの平均線膨張係数のMax値を150℃でのCTE値として算出した。
【0072】
粘・接着剤の特性測定
貯蔵弾性率測定
動的粘弾性測定装置:レオメトリックスARESを用い、周波数:1Hz、プレート径:7.9mmφ、歪み:1%、サンプル厚3mmにて23℃〜160℃まで測定したときの150℃でのG’を貯蔵弾性率の値として算出した。
【0073】
初期粘着力:PET基材上に、粘接着剤を塗布し、乾燥後の膜厚が30μmとなるように形成した。粘接着剤層を上面、PET基材面を下面とし、粘着剤面に東レ製PIフィルム(カプトン150EN:厚さ37.5μm)10mm幅を2kgローラー×1往復の条件で貼り付けた後、両面テープを介してSUS基板上に固定した。30分静置後にピール速度300mm/分、ピール角度:180度にて、東レ製PIフィルムを該粘接着剤層から剥離することにより粘着力の測定を実施した。
【0074】
加熱後粘着力
上記サンプルを乾燥機に投入し、150℃×1時間の熱処理を加えた後、30分静置した。
その後、初期粘着力測定時と同様の測定条件にて粘着力を測定した。
【0075】
加熱後粘着力/初期値の比
上述の初期粘着力値、加熱後粘着力値より比を算出した。
【0076】
(評価)
・加熱時基板位置ずれ・浮き
硬質基板となるガラス(0.5mm厚)上に600mm×600mmとなるように粘接着剤を塗布して粘接着剤層を形成した。さらにその上に薄膜基板として東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)を貼り合わせにより固定した。0.5mm間隔で基板・ガラス上の同一位置上に標線を記入した。
この後、150℃×1時間の条件で、乾燥機に投入・取り出し、室温30分静置後に最外周の標線の位置が薄膜基板とフィルム間で1mm以上ずれているものを位置ずれあり、0.5mm以内であったものを位置ずれなしと評価した(N=3)。また、取り出した際に粘接着剤層と薄膜基板の間で浮きが生じたものに関しては全体に対する浮き面積の割合(%)を記載した。
【0077】
加熱後剥離性
加熱時の位置ずれ、浮きを観察したサンプルを、最終的に180度、300mm/分にて剥離を実施した。
剥離後に薄膜基板にカールが生じなかったものを良好、カールが生じたものはカールあり、さらに剥離をこころみたが、困難であったものには剥離困難と記載した。
また紫外線硬化型粘着剤に関しては剥離前に、日東精機製UM−810のUV照射機(高圧水銀ランプ使用)を用い、ガラス面より照度50mW/cm、積算光量:800mJ/cmとなるようにUV照射後、剥離を実施した。
【0078】
(実施例1)
メトキシエチルアクリレート60モルに対し、アクロイルモルフォリン22モル、2−ヒドロキシエチルアクリレート16モルを酢酸エチル中で、常法により共重合させた。2−ヒドロキシエチルアクリレートの側鎖末端OH基の50%に、2-メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ、末端に炭素-炭素2重結合を付与した重量平均分子量90万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」BASF製3重量部及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)3重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
本粘着剤溶液を硬質基材であるガラス上に塗布し、120℃で5分加熱架橋した。これにより厚さ30μm厚の粘着剤層を得た。またコロナ処理の施されたPETフィルム上に塗布後、上述と同様の条件で加熱架橋させることで粘着力測定用のPETテープを作成した。
【0079】
(実施例2)
2−エチルへキシルアクリレート100重量部に対し、2−ヒドロキシエチルアクリレート10重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させ、分子量80万のアクリル系共重合対を含有する溶液を得た。次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製5重量部を加えて、アクリル系の粘着剤溶液を得た。
これらの粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様の条件にて厚み30μm厚の粘着剤層およびPETテープを作成した。
【0080】
(実施例3)
2−エチルへキシルアクリレート100重量部に対し、アクリル酸2重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させ、分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、エポキシ系化合物(商品名「TETRAD−C」、三菱ガス化学製)1重量部を加えて、アクリル系の粘着剤溶液を得た。
これらの粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様の条件にて厚み30μm厚の粘着剤層およびPETテープを作成した。
【0081】
(実施例4)
薄膜基板として、帝人デュポンフィルム(株)製テオネックスフィルムQ51(厚み38μm)を用いた他はすべて実施例1と同様の手順にて粘着剤層およびPETテープを作成した。
【0082】
(比較例1)
2−エチルへキシルアクリレート30重量部に対し、メチルアクリレート70重量部、アクリル酸10重量部をトルエン中で常法により共重合させ、分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、エポキシ系化合物(商品名「TETRAD−C」、三菱ガス化学製)0.05重量部を加えて、アクリル系の粘着剤溶液を得た。
これらの粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様の条件にて厚み30μm厚の粘着剤層およびPETテープを作成した。
【0083】
(比較例2)
実施例1のアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用い、本粘着剤溶液を硬質基材であるガラス上に塗布した後、120℃で5分加熱架橋した。これにより厚さ30μm厚の粘着剤層を得た。この後、シリコーンにて離型処理されたPETフィルムセパレーターを粘着剤面に貼り合わせ、その後、日東精機製UM−810を用いてガラス面より照度50mW/cm、積算光量:800mJ/cmとなるようにUV照射した。その後、PETフィルムセパレーターを剥離し、粘着剤層を得た。
またコロナ処理の施されたPETフィルム上に上記粘着剤溶液を塗布後、上述と同様の条件で加熱架橋させた。その後、シリコーンにて離型処理されたPETフィルムセパレーターを粘着剤面に貼り合わせ、その後、日東精機製UM−810を用いてガラス面より照度50mW/cm、積算光量:800mJ/cmとなるようにUV照射した。その後、PETフィルムセパレーターを剥離し、PETテープを作成した
【0084】
(比較例3)
薄膜基板を、エチレン酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量 18wt%)にして、押し出し成型実施、厚み:100μm厚、弾性率:80MPaを用いた他はすべて実施例2と同様の手順にて粘着剤層およびPETテープを作成した。
本薄膜基板は100℃にて軟化溶融してしまうため、CTE及び各種加熱評価が実施できなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜4においては、本発明にて規定する要件を満たす粘接着剤及び薄膜基板を使用することにより、加熱時においても薄膜基板に位置ずれや浮きを生じることがなく、加熱後の剥離性が良好であるという顕著な効果を奏することを確認できる。
比較例1においては、粘接着剤として室温の貯蔵弾性率は1.0であるものの、150℃での貯蔵弾性率が0.009MPaと低いので、その他の初期及び加熱後粘着力が適正であっても、粘接着剤層が薄膜基板の膨張や収縮を抑制することができず、薄膜基板に変形を生じることになる。このため比較例1においては、加熱時に薄膜基板が位置ずれを生じると共に、薄膜基板が浮くことになり、剥離性も悪化して剥離不良が生じる結果になった。
比較例2においては、使用した粘接着剤の室温及び150℃での貯蔵弾性率が高すぎるために、硬質基板や薄膜基板に対する接着性が不十分である。このため、加熱後の薄利性は良好ではあったが、加熱時において薄膜基板の位置のずれと薄膜基板の浮きが発生した。
比較例3においては、薄膜基板として弾性率が80MPaのものを使用した。その結果評価できるまでの処理を行うことができない程、取り扱うことが困難であった。
【符号の説明】
【0087】
1・・・硬質基板
2・・・粘接着剤層
3・・・薄膜基板
A・・・パターン化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された薄膜基板の製造方法であって、硬質基板表面に設けた粘接着剤層上に薄膜基板を固定した後、該薄膜基板上にパターンを形成し、次いで、薄膜基板を粘接着剤との界面にて剥離することを特徴とする薄膜基板の製造方法。
【請求項2】
該薄膜基板は少なくとも1層以上からなり、その厚みが2mm以下であり、ガラス転移点温度(Tg)が23℃以上かつ引張弾性率が300MPa以上である層を有する請求項1に記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項3】
該薄膜基板の150℃でのCTEが300ppm以下である請求項1又は2に記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項4】
該粘接着剤層は、少なくとも1層以上の層からなり、総厚が1〜1mmであり、23℃から150℃までの貯蔵弾性率が1×10〜1×10である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項5】
該粘接着剤層は、150℃×1hr加熱後の粘着力の値が加熱前測定値の3倍以内であり、且つ薄膜基板を剥離する際のピール速度300mm/分での180度ピール粘着力が1.5N/10mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項6】
パターンを形成する工程は80℃〜270℃に加熱する工程を1回以上含む請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法における粘接着剤層に使用する粘接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法において使用される、硬質基板と硬質基板表面に設けた粘接着剤層からなる積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−186315(P2012−186315A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48375(P2011−48375)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】