説明

薄膜堆積のためのニオブおよびバナジウムの有機金属前駆体

【化1】


式Cp(R1mM(NR222(=NR3)(I)の化合物であって:Mはバナジウム(V)またはニオブ(Nb)から独立して選択される金属でありm≦5であり;R1は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;R2は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;R3はH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において選択される有機配位子である化合物。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は新たな種類の化学物質と金属含有膜堆積におけるそれらの使用とに関する。
【0002】
3Dトポロジーアーキテクチャに関連する現代の集積回路(IC)の特徴部における臨界的な大きさの継続的な縮小はプロセスの複雑さを代償として最高密度を提供する。
【0003】
国際半導体技術ロードマップ(ITRS)によると、半導体産業において薄膜の堆積のために一般に使用されている物理技術は、とりわけ高アスペクト比構造についての将来の技術ノードにおける要件を満たすのにはもはや好適でない。PVD(物理気相堆積)、i−PVD(イオン化物理気相堆積)またはPECVD(プラズマ強化化学気相堆積)などの高エネルギー粒子を用いる技術は、高い付着係数を誘導し、これは乏しい段差被覆性を特に側壁に沿ってもたらす。
【0004】
高度に均一および共形な(conformal)薄膜の堆積を妥当なスループットで高アスペクト比構造において可能にする主な産業的選択肢はMOVCD(有機金属化学気相堆積)またはALD(原子層堆積)などの技術である。
【0005】
しかし、MOCVDによって堆積された膜は高い熱収支を必要としおよびVolmer-Meberモデルによって説明される3D成長メカニズムに一般に従う。クラスター核形成およびこのような技術による薄膜成長は不十分な段差被覆性をもたらす。
【0006】
典型的なALDプロセス(たとえばRITALA M., LESKELA M., Atomic Layer Deposition, Handbook of thin films materialsに記載されたものなど)は不活性ガスパージによって分けられる複数のパルスによって基板上に導かれる気体反応物質を必要とする。MOCVDでは、複数種の気体反応物質が同時に注入され熱的な自己分解によって反応する一方、ALDでは;配位子の損失が基板上の表面基との反応によって熱的に誘導される。ある温度範囲では、表面反応が自己停止して、高度に均一および共形な膜の堆積を可能にする。前駆体は揮発性でありかつ分解なしに反応チャンバに容易に運ばれるように十分に安定でなければならない。
【0007】
さらに、それらは表面の化学基との反応性が妥当な成長速度を確保するのに十分でなければならない。
【0008】
ALDは第V族(V、Nb、Ta)金属含有膜の堆積にとって特に興味深いものである。今日、室温(または室温に近い温度)で液体の状態にあり、高い揮発性および高い汎用性を有し;半導体製造における様々な用途に好適な有機金属前駆体の必要性が未だ存在する。ALDで堆積された導電性(抵抗率<1000μΩ.cm)第V族(V、Nb、Ta)金属含有薄膜に対する興味は過去数年でいくつかの主要な用途たとえば:BEOL用途における銅拡散バリア、CMOS金属ゲート、金属−絶縁物−金属用途(DRAM...)用の電極、および/またはTFT−LCDにおける同様のものにおいて高まってきた。
【0009】
第V族(V、Nb、Ta)金属含有膜はメモリデバイスにおける高誘電率層にとっても特に興味深いものである。
【0010】
ハライドたとえばCpNbCl4(CAS 33114-1507)、NbF5、NbBr5(固体薄膜、1981, 79, 75)、NbCl5(結晶成長、1978, 45, 37)およびたとえばTaCl5はUS6268288に開示されているように広く研究されている。しかし、堆積プロセス中に生じるいくつかの副生成物、たとえばHClまたはCl2は表面/界面を粗くすることがあり、これは最終的な特性に有害でありうる。さらに、ClまたはFの不純物は最終的な電気的特性に有害でありうる。そのため十分な揮発性を有するがCl、F、またはBr原子を含有しない新たな化合物を見つけることが期待されている。
【0011】
多くの第V族前駆体はこのような堆積を可能にすると考えられていた。例は以下に挙げられうる:
アルコキシドたとえばペンタ−エトキシ−タンタル(PET)は広く使用され説明されている。しかし、それらは酸素含有膜をもたらし、特に電極として使用されおよび微量な酸素でさえも含有すべきでない金属含有膜の堆積には相応しくない。同様の問題は、Cp2Nb(H)(CO)、CpNb(CO)4(J.Organomet.Chem557(1998)77-92),V(CO)6(Thermochimica Acta, 1984, 75, 71)、(η5−C55)V(CO)4(M.L. Green, R.A. Levy, J. Metals 37 (1985) 63)などの化合物について認められている。
【0012】
US A 6379748は、PETに対する改良を開示している。Ta(OEt)5(PET)の代わりにTaMe3(OEt)2をたとえば使用してアルキル結合を導入した。それにより、融点に悪影響を与えることなく、揮発性が著しく向上した。
【0013】
しかし、TaMe3(OEt)2は汎用的な堆積を可能にするものではない:特に、酸素フリーの金属を得ることはできない。
【0014】
US A 6368398は、たとえばTa[OC(O)C(CH335を使用するもう1つの改良を開示しているが、上で開示したのと同様の限界がある。
【0015】
WO02/20870は、Ta25の堆積のための、tert−ブチルイミド(トリス(ジエチルアミド)タンタル,TBTDET,の使用を開示している。
【0016】
US A 6593484、US 2004/0219784は、TBTDETまたはTAIMATAと他のNソースとの逐次注入による窒化タンタル膜の堆積方法を開示している。
【0017】
US A 6379748は、ビスシクロペンタジエニルTa水素化物であるTa(Me3SiCp)23を開示しており、これは揮発性が低い固体である。
【0018】
第1の実施形態によると、本発明は式Cp(R1mM(NR222(=NR3)(I):
【化1】

【0019】
の化合物であって:
Mはバナジウム(V)またはニオブ(Nb)から独立して選択される金属でありm≦5であり;
1は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;
2は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;
3はH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において選択される有機配位子である
化合物に関する。
【0020】
あるいは、R1は有機配位子であって、各々がH、直鎖または分枝の;アルキル、アルキルシリル、アルキルアミド、アルキルシリルアミドおよび/またはアルコキシドからなる群より独立して選択される。R2はアルキル、アルキルシリル、アルキルアミド、アルキルシリルアミドおよび/またはアルコキシドの中で選択されてもよい。R3はアルキル、アルキルシリル、アルキルアミド、アルキルシリルアミドおよび/またはアルコキシドの中で選択されてもよく、好ましくは、R3は3または4個の炭素原子を有するアルキルたとえばイソプロピルまたはtert−ブチルである。
【0021】
特定の態様では、各R1およびR2は互いに異なっており、化合物の物理的性質にとって有益な特徴を有しうる。
【0022】
あるいは、R1はH、1ないし4個の炭素原子を含むアルキルからなる群において選択され、好ましくは、R1はHまたはメチルまたはエチルまたはイソプロピルまたはtert−ブチルである;
2は1ないし3個の炭素原子を含むアルキルであり、より好ましくは、R2は1ないし2個の炭素原子を有するアルキルである;および
3は3ないし4個の炭素原子を有するアルキルであり;より好ましくは、R3はイソプロピルまたはtert−ブチルである。
【0023】
他の実施形態によると、本発明は:
−各R1が互いに異なりおよび各R2が互いに異なる化合物。
【0024】
−式(I)においてm=0である化合物。
【0025】
−以下の化合物:
(Cp)V(=NtBu)(NEt22
(Cp)V(=NtBu)(NMe22
(Cp)V(=NtBu)(N(EtMe)2
(Cp)V(=NiPr)(NEt22
(Cp)V(=NiPr)(NMe22
(Cp)V(=NiPr)(N(EtMe)2
(Cp)V(=NC511)(NEt22
(Cp)V(=NC511)(NMe22
(Cp)V(=NC511)(NEtMe)2
(Cp)Nb(=NtBu)(NEt22
(Cp)Nb(=NtBu)(NMe22
(Cp)Nb(=NtBu)(N(EtMe)2
(Cp)Nb(=NiPr)(NEt22
(Cp)Nb(=NiPr)(NMe22
(Cp)Nb(=NiPr)(N(EtMe)2
(Cp)Nb(=NC511)(NEt22
(Cp)Nb(=NC511)(NMe22
(Cp)Nb(=NC511)(NEtMe)2。
もう1つの実施形態によると、本発明は基板上に金属含有層を形成する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)式(I)の少なくとも1種の前駆体化合物を含む蒸気を供給する工程と;
b)式(I)の前記少なくとも1種の化合物を含む前記蒸気を基板と反応させて、堆積プロセスにより、前記基板の少なくとも1つの表面上に金属含有錯体の層を形成する工程と
を含む方法に関する。
【0026】
他の実施形態によると、本発明は:
−前記堆積プロセスが原子層堆積プロセスである方法。
−前記堆積プロセスが化学気相堆積プロセスである方法。
−以下の工程:
c)工程b)で得られた前記錯体の、別種金属のソース、還元剤および/または窒化剤および/または酸化剤から選択される反応物質との反応の工程
をさらに含む方法。
−工程a)で供給される前記蒸気がMおよびM'を含有する薄膜を製造するために1種以上の金属(M')−有機前駆体をさらに含む方法。
【0027】
−少なくとも1種の反応性ガスを供給することをさらに含み、前記少なくとも1種の反応性ガスが、水素、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、一酸化炭素、アンモニア、有機アミン、シラン、ジシラン、高次シラン、シリルアミン、ジボラン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、クロロシランおよびクロロポリシラン、金属アルキル、アルシン、ホスフィン、トリアルキルボロン、酸素、オゾン、水、過酸化水素、一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、アルコール、これら化学種のフラグメント(fragments)を含むプラズマ、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくはオゾンまたは水である方法。
−前記基板の温度が100℃ないし700℃、好ましくは150℃ないし450℃であり、前記基板を収容する堆積チャンバが1.33Pa(=0.01Torr)ないし100kPa(=800Torr)の、好ましくは25kPa(=200Torr)未満の圧力を有する方法。
−式(I)の前記少なくとも1種の化合物を含む過剰な蒸気を、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、およびこれらの混合物からなる群より選択される不活性ガスで基板からパージする工程をさらに含む方法。
−前記金属含有層が0μmよりも大きく10μmまでの厚さを有する方法。
−半導体構造体を製造する方法であって、上で定義した方法の工程を含み、前記基板が半導体基板である方法。
【0028】
バナジウム(V)またはニオブ(Nb)含有膜の堆積に関する技術
金属ソースの気化は前記金属ソースを収容した加熱されたコンテナにキャリアガスを導入することによって実行される。コンテナは好ましくは前記金属ソースを十分な蒸気圧で得ることを可能にする温度で加熱される。キャリアガスはAr、He、H2、N2またはそれらの混合物から選択できる。前記金属ソースはコンテナ内で溶媒もしくは別種金属のソースにまたはそれらの混合物に混合できる。コンテナはたとえば25℃−200℃の範囲内にある温度で加熱できる。当業者はコンテナの温度を調節して気化させる前駆体の量を制御できると考えるであろう。コンテナ内の気化レベルを制御するために、コンテナ内の圧力を変更することができる。コンテナ内の圧力を下げることによって、金属ソースの気化レベルを高めることができる。コンテナ内の圧力はたとえばmTorrから800Torrまでの範囲内で変えられる。
【0029】
前記金属ソースをそれが気化される気化器に液体状態で供給することもできる。前記金属ソースは溶媒に混合できる。前記金属ソースは別種金属のソースに混合できる。金属ソースの前記混合物は溶媒または溶媒の混合物に混合できる。前記金属ソースは安定剤に混合できる。前記溶媒はアルカンたとえばヘキサン、ヘプタン、オクタン、芳香族溶媒たとえばベンゼン、トルエン、メシチレン、キシレン、ケイ素含有溶媒たとえばヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルシラン、硫黄含有溶媒たとえばジメチルスルフォキシド、酸素含有溶媒たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサンからなる群において選択できる。
【0030】
前記気化した金属ソースはその後反応チャンバに導入されそこで基板の表面と接触する。基板は所望の膜を十分な成長速度でならびに所望の物理的状態および組成で得るのに十分な温度に加熱できる。典型的な温度範囲は100℃ないし700℃の範囲内にある。好ましくはこの温度は450℃以下である。このプロセスを、限定されないが前記気化した金属ソースの反応性および/またはこのプロセスで使用される他の気体化学種の反応性を向上させるために選択されるプラズマ技術でアシストできる。
【0031】
ある実施形態では、本発明の方法は、一般式Cp(R1)M(NR222(=NR3)で表される有機バナジウム(V)またはニオブ(Nb)金属前駆体を反応物質と共にまたはこれを用いずに同時に反応チャンバに導入することにある。前記有機金属前駆体は基板表面と自己熱分解によって反応する。前記反応物質は還元剤、窒化剤、酸化剤、またはこれらの混合物から選択される。
【0032】
ある実施形態では、本発明の方法は、反応チャンバに、一般式Cp(R1mM(NR222(=NR3)で表される有機バナジウム(V)またはニオブ(Nb)金属前駆体を反応物質および、第II族、第III−A族、第III−B族の任意の他の元素、硫黄(S)、タンタル(Ta)、遷移金属、ランタノイド、または希土類金属から独立して選択される別種金属ソースと共にまたはこれらを用いずに同時に導入することにある。前記有機金属前駆体は基板表面と自己熱分解によって反応する。前記反応物質は還元剤、窒化剤、酸化剤、またはこれらの混合物から選択される。
【0033】
ある実施形態では、本発明の方法は、反応チャンバに、一般式Cp(R1mM(NR222(=NR3)で表される有機バナジウム(V)またはニオブ(Nb)金属前駆体を反応物質と択一的に導入することにある。ある温度範囲では、前記有機金属前駆体は基板表面上に存在する結合と自己停止式に反応する。好ましくは、堆積していない有機金属前駆体分子が反応チャンバから除去される。導入される反応物質も自己停止式で反応する。基板表面上に存在する全ての錯体が反応物質と反応したら、パージガスによって化学種が反応チャンバから除去される。パージガスはたとえばN2、Ar、He、H2またはこれらの混合物の中で選択できる。パージガスは表面の化学的反応性を変えない他の気体種をさらに含有してもよい。あるいは、パージは減圧によって行うことができる。このプロセスは所望の膜厚に達するのに必要な回数繰り返すことができる。前記反応物質は還元剤、窒化剤、酸化剤、またはこれらの混合物から選択される。
【0034】
ある実施形態では、本発明の方法は、反応チャンバに、第1に一般式Cp(R1mM(NR222(=NR3)で表される有機バナジウム(V)またはニオブ(Nb)金属前駆体を、第2に反応物質または、第II族、第III−A族、第III−B族の任意の他の元素、硫黄(S)、タンタル(Ta)、遷移金属、ランタノイド、または希土類金属から独立して選択される別種金属ソースを択一的に導入することにある。ある温度範囲では、前記有機金属前駆体は基板表面上に存在する結合と自己停止式に反応する。好ましくは、堆積していない有機金属前駆体分子が反応チャンバから除去される。導入される反応物質も自己停止式で反応する。基板表面上に存在する全ての錯体が反応物質と反応したら、パージガスによって化学種が反応チャンバから除去される。パージガスはたとえばN2、Ar、He、H2またはこれらの混合物の中で選択できる。パージガスは表面の化学的反応性を変えない他の気体種をさらに含有してもよい。あるいは、パージは減圧によって行うことができる。このプロセスは所望の膜厚に達するのに必要な回数繰り返すことができる。前記反応物質は還元剤、窒化剤、酸化剤、またはこれらの混合物から選択される。
【0035】
式(I)のまたは混合物中の化合物は、気相堆積を使用する任意の周知堆積方法、たとえばMOCVD(有機金属化学気相堆積)、ALD(原子層堆積)、PE−ALD(プラズマ強化原子層堆積)、および任意の他の堆積方法たとえばPECVD(プラズマ強化化学気相堆積)またパルスCVDなどを使用して様々な組成の膜(以下に開示するものなど)を堆積させるのに使用される。
【0036】
これらの新たな第V族金属前駆体は、たとえば、電極および/または高誘電率層、および/または銅拡散バリア層などを作るための純金属、金属酸化物、酸窒化物、窒化物および/またはケイ化物の膜堆積に有用である。
【0037】
ALDプロセスでは、好ましい温度は100℃ないし450℃の範囲内、より好ましくは150℃ないし350℃の範囲内にあり、ALDにおける好ましいパルス継続時間は1秒であり、好ましい圧力は0.01Torrないし800Torrの範囲内、より好ましくは0.1Torrないし200Torrの範囲内にありおよび好ましいキャリアガスはN2、He、Ar、H2から選択され、より好ましくはArまたはN2である。好ましいN2キャニスタ流量は30−200sccmの範囲内にあり、好ましくは50sccmないし100sccmである。
【0038】
CVDプロセスでは、好ましい温度は100℃ないし700℃の範囲内、より好ましくは200℃ないし500℃の範囲内にあり、好ましい圧力は0.01Torrないし800Torrの範囲内、好ましくは1Torrないし200Torrの範囲内にあり、および好ましいキャリアガスはN2、He、Ar、H2から選択され、より好ましくはArまたはN2である。好ましいN2キャニスタ流量は30−200sccmの範囲内にあり、好ましくは50sccmないし100sccmにある。
【0039】
PECVDプロセスでは、好ましい温度は100℃ないし700℃の範囲内、より好ましくは100℃ないし500℃の範囲内にあり、好ましい圧力は0.01Torrないし800Torrの範囲内、好ましくは1Torrないし200Torrの範囲内にあり、好ましいキャリアガスはN2、He、Ar、H2から選択され、より好ましくはArまたはN2であり、好ましいN2キャニスタ流量は30−200sccmの範囲内にあり、好ましくは50sccmないし100sccmである。HまたはNHラジカルは遠隔プラズマシステムによって作られ共反応物質として使用される。
【0040】
これら上述の使用では、上で定義された式(I)の化合物のうちのいずれかを単独で使用することができるし、または前記式(I)の他の1種もしくはいくつかの種とのおよび/または以下に説明するような金属含有膜を堆積させる際に有用な任意の適切な添加剤との混合物として使用することができる。特定の実施形態によると、本発明は約50℃以下および好ましくは35℃以下の融点を有するような混合物、すなわち液体の形態かまたは液体の形態に近い形態を室温でとり、それらの配送を容易にするような混合物であるか、または100℃で0.01Torrよりも高い蒸気圧を有するような混合物の上で定義した使用に関する。
【0041】
以上で説明した前駆体を使用して基板上に様々な膜、たとえば窒化物、炭化物、ケイ化物、ケイ窒化物(MSiN)、酸化物(たとえばMeOj)、酸窒化物(MOxy)および異なる2種の金属M1およびM2からの酸窒化物(M12xy)を得ることができる。
【0042】
本発明による方法は以下のように纏めることができる:
【表1】

【0043】
ある実施形態によれば、新たな金属ソースの気化は前記新たな金属ソースを収容した加熱されたコンテナにキャリアガスを導入することによって実行される。コンテナは好ましくは十分な蒸気圧にある前記金属ソースを得ることを可能にする温度で加熱される。キャリアガスは、限定なしに、Ar、He、H2、N2またはこれらの混合物から選択できる。前記金属ソースはコンテナ内で溶媒もしくは別種金属のソースにまたはこれらの混合物に混合できる。コンテナはたとえば80℃−140℃の範囲内にある温度で加熱できる。当業者はコンテナの温度を調節して気化させる前駆体の量を制御できると考えるであろう。
【0044】
もう1つの実施形態によれば、前記金属ソースはそれが気化するところ気化器に液体の状態で供給される。前記金属ソースは溶媒に混合できる。前記金属ソースは別種金属のソースに混合できる。金属ソースの前記混合物は溶媒にまたは溶媒の混合物に混合できる。前記金属ソースは安定剤に混合できる。
【0045】
気化した金属ソースはその後反応チャンバに導入され、そこで基板に接触する。基板は所望の膜が十分な成長速度でならびに所望される物理的状態および組成で得られるのに十分な温度まで加熱できる。典型的な温度は100℃ないし700℃の範囲内にある。好ましくはこの温度は450℃以下である。反応チャンバ内の圧力は所望の金属含有膜が十分な成長速度で得られるように制御される。典型的な圧力は1,33Pa(=0,01Torr)ないし13,3kPa(=100Torr)の範囲内にあるかまたはそれ以上である。
【0046】
もう1つの実施形態によると、反応チャンバ内への混合物の導入の前に金属ソースを反応種に混合させることが可能である。
【0047】
本発明のもう1つの実施形態では、金属ソースを反応チャンバ内で反応種に混合してもよい。
【0048】
さらなる実施形態によると、金属ソースおよび反応種は同時に(化学気相堆積)、逐次的に(原子層堆積)またはこれらの任意の組み合わせ(一例としては、金属ソースおよび別種金属のソースを1つのパルスで共におよび酸素を別のパルスで導入すること[改良原子層堆積]が挙げられる;もう1つの例としては、酸素を連続的に導入し金属ソースをパルスで導入することが挙げられる(パルス化学気相堆積))で導入される。
【0049】
反応チャンバから離れて位置したプラズマシステムに反応種を導入して、反応チャンバへのそれらの導入の前にこれらの化学種を分解してラジカルにすることも可能である。
【0050】
目的とする金属ベース膜が酸素、たとえば、限定なしに、金属酸化物または金属酸化窒化物を含有するものであるさらなる他の実施形態によると、反応種としては、酸素(O2)、たとえばリモートプラズマによって生じる酸素ラジカル(たとえばOまたはOH)、オゾン(O3)、NO、N2O、NO2、水分(H2O)およびH22またはこれらの任意の混合物から選択される酸素ソースが挙げられる;
目的とする金属ベース膜が窒素、たとえば金属窒化物または金属炭窒化物を含有するものであるさらなる他の実施形態によると、反応種としては、限定されないが、窒素(N2)、アンモニア、ヒドラジンおよびアルキル誘導体、N含有ラジカル(たとえばN、NH、NH2)、NO、N2O、NO2、アミンから選択される窒素ソースが挙げられる。
【0051】
目的とする金属ベース膜が炭素、たとえば限定なしに金属炭化物または金属炭窒化物を含有するものである場合、反応種としては、限定されないが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、t−ブチレン、イソブチレン、CCl4から選択される炭素ソースが挙げられる。
【0052】
目的とする金属ベース膜がケイ素、たとえば金属のケイ化物、ケイ窒化物、シリケート、珪化炭化窒化物(silico-carbo-nitride)を含有するものである場合は、反応種としては、SiH4、Si26、Si38、TriDMAS、BDMAS、BDEAS、TDEAS、TDMAS、TEMAS、(SiH33N、(SiH32O、トリシリルアミン、ジシロキサン、トリシリルアミン、ジシラン、トリシラン、アルコキシシランSiHx(OR14-x、シラノールSi(OH)x(OR14-x(好ましくはSi(OH)(OR13;より好ましくはSi(OH)(OtBu)3アミノシランSiHx(NR124-x(ここで、xは0ないし4の間に含まれ;R1およびR2は独立してHまたは直鎖、分枝もしくは環式のC1−C6炭素鎖であり;好ましくは、TriDMAS SiH(NMe23、BTBAS SiH2(NHtBu)2);BDEAS SiH2(NEt22)およびこれらの混合物からなる群より選択される珪素ソースが挙げられる。あるいは、目的とする膜はゲルマニウム(Ge)を含有できる。上述のSi含有ソースは、類似したGe含有ソースで置き換えることができる。
【0053】
反応チャンバへの導入の前に金属ソースを別種金属のソースに混合して多種金属を含有する膜を堆積させるか、またはこれら金属ソースを反応チャンバに同時に導入し、反応チャンバ内でこれらを互いにおよび/または他の反応種と混合させることが十分に考えられる。
【0054】
しかし、第1の金属ソース、第2の金属ソースおよび反応種を反応チャンバに同時に(化学気相堆積)、逐次的に(原子層堆積)またはこれらの任意の組み合わせ(一例としては、第1の金属ソースおよび第2の金属ソースを1つのパルスで共におよび酸素を別のパルスで導入すること[改良原子層堆積]が挙げられる;もう1つの例としては、酸素を連続的に導入し金属ソースをパルスで導入することが挙げられる(パルス化学気相堆積))で導入することも考えられる。
【0055】
第2の金属ソースは、タンタル、ランタニドおよび希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd...)のソースたとえば希土類ジケトネートLn(−O−C(R1)−C(R2)−C(R3)−O−)(−O−C(R4)−C(R5)−C(R6)−O−)(−O−C(R7)−(R8)−C(R9)−O−)(ここで各Riは独立してHまたは直鎖、分枝もしくは環式のC1−C6炭素鎖である)、シクロペンタジエニルLn(R1Cp)(R2Cp)(R3Cp)(ここで各Riは独立してHまたは直鎖、分枝もしくは環式のC1−C6炭素鎖である)、Ln(NR12)(NR34)(NR56)およびこれらの混合物からなる群より選択される。あるいは第2の金属ソースは、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウム水素化物、アルコキシアレーンAlRix(OR')3-x(ここでxは0ないし3の間に含まれ;R1およびR2は独立してHまたは直鎖、分枝もしくは環式のいずれかであるC1−C6炭素鎖であり;好ましくはAlR12(OR')、最も好ましくはAlMe2(OiPr)である)、アミドアレーンAlRix(NR'R'')3-x(ここでxは0ないし3の間に含まれ;R1およびR2は独立してHまたは直鎖、分枝もしくは環式のいずれかであるC1−C6炭素鎖である)およびこれらの混合物からなる群より選択されるアルミニウムのソースでもよい。あるいは前記他種金属のソースはタングステンまたはモリブデンのソースでもよい。あるいは前記他種金属のソースは、ハフニウム、ジルコニウムまたはチタンのソースたとえばM(OR14または他のアルコキシド含有金属ソース,M(NR124,またはこれらの種を含有するアダクトでもよい。あるいは第2の金属ソースは二価金属ソース(好ましくはMg、Ca、Zn、Sr、Ba)でもよく、限定されずに、金属β−ジケトネートまたはこれらの種を含有するアダクトから選択される。
【0056】
反応物質は同時に(化学気相堆積)、逐次的に(原子層堆積)これらの任意の組み合わせで導入できる。
【0057】

1.NbCp(=NtBu)(NEtMe)2およびアンモニアを使用するCVDプロセス
NbCp(=NtBu)(NEtMe)2をコンテナ内に貯蔵する。コンテナを120℃で加熱しN2をキャリアガスとして50sccmの流量で使用する。アンモニア(NH3)を窒素ソースとして使用する。基板を400℃で加熱する。前駆体をNH3と同時に反応チャンバに導入する。窒化ニオブの膜が得られる。
【0058】
2.NbCp(=NtBu)(NEtMe)2およびアンモニアを使用するALDプロセス
NbCp(=NtBu)(NEtMe)2をコンテナ内に貯蔵する。コンテナを120℃で加熱しN2をキャリアガスとして50sccmの流量で使用する。アンモニア(NH3)を窒素ソースとして使用する。基板を400℃で加熱する。前駆体をNH3と逐次的に反応チャンバに導入する:第1の工程中NbCp(=NtBu)(NEtMe)2のパルスを8秒間導入し、続いて13秒のN2パージを行う。次にNH3のパルスを反応チャンバに8秒間導入し、続いて13秒のN2パージを行う。次に第1の工程を再度行う。このようにして400サイクルを行う。窒化ニオブの膜が得られる。
【0059】
本発明による前駆体は非常に薄く、均一でありおよび共形な薄膜をアスペクト比が高い構造において原子レベルでの厚さおよび組成を制御しながら製造するのに好適である。これらの膜は、半導体産業におけるたとえば以下のいずれの用途にも非常に望ましい:
a.BEOL用途での銅拡散バリア
b.CMOS金属ゲート
c.金属−絶縁物−金属構造における電極
d.金属−絶縁物−金属構造における高誘電率層。
【0060】
例:NbNx、VNx、Nb、、V、VOx、NbOx、、、TaNbN、TaNbOx、BiNbOx、BiTaNbOx
【0061】
前記前駆体は半導体産業における用途に非常に好適に見えるが、この産業のみに限定されない。VおよびNb含有層は耐磨耗性を向上させるための他の用途、触媒用途、およびセンサの中で使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Cp(R1mM(NR222(=NR3)(I):
【化1】

の化合物であって、
Mはバナジウム(V)またはニオブ(Nb)から独立して選択される金属でありm≦5であり;
1は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;
2は有機配位子であって、各々がH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において独立して選択され;
3はH、1ないし6個の炭素原子を含む直鎖または分枝のヒドロカルビル基からなる群において選択される有機配位子である
化合物。
【請求項2】
1がH、1ないし4個の炭素原子を含むアルキルからなる群において選択され、好ましくは、R1がHまたはメチルまたはエチルまたはイソプロピルまたはtert−ブチルであり;
2が1ないし3個の炭素原子を含むアルキルであり、より好ましくは、R2が1または2個の炭素原子を有するアルキルであり;および
3が3または4個の炭素原子を有するアルキルであり、より好ましくは、R3がイソプロピルまたはtert−ブチルである
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各R1が互いに異なっておりおよび各R2が互いに異なっている請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)においてm=0である請求項1ないし3のうちの1項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の化合物:
(Cp)V(=NtBu)(NEt22
(Cp)V(=NtBu)(NMe22
(Cp)V(=NtBu)(N(EtMe)2
(Cp)V(=NiPr)(NEt22
(Cp)V(=NiPr)(NMe22
(Cp)V(=NiPr)(N(EtMe)2
(Cp)V(=NC511)(NEt22
(Cp)V(=NC511)(NMe22
(Cp)V(=NC511)(NEtMe)2
(Cp)Nb(=NtBu)(NEt22
(Cp)Nb(=NtBu)(NMe22
(Cp)Nb(=NtBu)(N(EtMe)2
(Cp)Nb(=NiPr)(NEt22
(Cp)Nb(=NiPr)(NMe22
(Cp)Nb(=NiPr)(N(EtMe)2
(Cp)Nb(=NC511)(NEt22
(Cp)Nb(=NC511)(NMe22
(Cp)Nb(=NC511)(NEtMe)2。
【請求項6】
基板上に金属含有層を形成する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)請求項1ないし5のうちの1項の式(I)の少なくとも1種の前駆体化合物を含む蒸気を供給する工程と;
b)式(I)の前記少なくとも1種の化合物を含む前記蒸気を基板と反応させて、堆積プロセスにより、前記基板の少なくとも1つの表面上に金属含有錯体の層を形成する工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記堆積プロセスが原子層堆積プロセスである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積プロセスが化学気相堆積プロセスである請求項6に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
c)工程b)で得られた前記錯体の、別種金属のソース、還元剤および/または窒化剤および/または酸化剤から選択される反応物質との反応の工程
をさらに含む請求項6ないし8のうちの1項に方法。
【請求項10】
工程a)で供給される前記蒸気がMおよびM'を含有する薄膜を製造するために1種以上の金属(M')−有機前駆体をさらに含む請求項6ないし9のうちの1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の反応性ガスを供給することをさらに含み、前記少なくとも1種の反応性ガスが、水素、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、一酸化炭素、アンモニア、有機アミン、シラン、ジシラン、高次シラン、シリルアミン、ジボラン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、クロロシランおよびクロロポリシラン、金属アルキル、アルシン、ホスフィン、トリアルキルボロン、酸素、オゾン、水、過酸化水素、一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、アルコール、これら化学種のフラグメントを含むプラズマ、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくはオゾンまたは水である請求項6ないし10のうちの1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板の温度が100℃ないし700℃、好ましくは150℃ないし450℃であり、前記基板を収容する堆積チャンバが1.33Pa(=0.01Torr)ないし100kPa(=800Torr)の、好ましくは25kPa(=200Torr)未満の圧力を有する請求項6ないし11のうちの1項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の前記少なくとも1種の化合物を含む過剰な蒸気を、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、およびこれらの混合物からなる群より選択される不活性ガスで基板からパージする工程をさらに含む請求項6ないし12のうちの1項に記載の方法。
【請求項14】
半導体構造を製造する方法であって、請求項6ないし13のいずれか1項において定義した方法の前記工程を含み、前記基板が半導体基板である方法。

【公表番号】特表2012−505177(P2012−505177A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530470(P2011−530470)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062964
【国際公開番号】WO2010/040741
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】