説明

薄膜塗布装置および薄膜塗布方法

【課題】ウェハ外周部でレジストが薄膜化するのを抑制しつつ、レジストの消費量を低減することが可能な薄膜塗布装置および薄膜塗布方法を提供する。
【解決手段】ウェハW上には、レジストRから気化した溶剤をウェハWの外周部で飽和状態にさせる気化遮蔽プレート5が設けられており、気化遮蔽プレート5とのウェハWと間隔は、レジストRから気化した溶剤がウェハWの外周部で略滞留し飽和状態を形成するように近接して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は薄膜塗布装置および薄膜塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストをウェハ上にスピンコートする場合、レジストの滴下量が少ないと、レジストがウェハ中心から外周に広がる過程で生じるレジスト中のシンナー等溶媒の蒸発(レジスト溶媒濃度低下)に伴い、ウェハ全面にレジストが均一に広がり切る前にレジストが枯渇し、ウェハ外周部でレジスト膜厚が薄くなることが問題となっている。
【0003】
ウェハ外周部での薄膜化を防ぐためには、レジストの滴下量を多くしレジスト溶媒濃度低下を防ぐ必要があるが、この場合、ウェハ上に被膜として残らない不要なレジストの量も増え、レジストの消費量が増加するのでコスト高となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−209036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態の目的は、ウェハの特に外周部でレジストが薄膜化するのを抑制しつつ、レジストの消費量を低減することが可能な薄膜塗布装置および薄膜塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の薄膜塗布装置によれば、回転機構と気化遮蔽プレートとが設けられている。回転機構は、ウェハを載置して回転させる。気化遮蔽プレートは、前記ウェハ上に塗布される塗布膜から気化した溶剤を前記ウェハの外周部で飽和させながらウェハ中心部からウェハ外周部までの気流を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は、第1実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図1(b)は、図1(a)の気化遮蔽プレート5の概略構成を示す平面図である。
【図2】図2(a)は、第2実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図2(b)は、図2(a)の気化遮蔽プレート5´の概略構成を示す平面図である。
【図3】図3(a)は、第3実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図3(b)は、図3(a)の溶剤蒸気圧制御プレート7および溶剤拡散プレート8の概略構成を示す平面図である。
【図4】図4は、第4実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】図5は、第5実施形態に係る薄膜塗布方法を示す断面図である。
【図6】図6(a)は、第6実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図6(b)は、図6(a)の溶剤蒸気圧制御プレート27の概略構成を示す平面図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る薄膜塗布装置における溶媒の飽和状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る薄膜塗布装置および薄膜塗布方法について図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図1(b)は、図1(a)の気化遮蔽プレート5の概略構成を示す平面図である。
図1において、ステージ2上には、回転機構3を介してウェハWが載置されている。なお、ウェハWの材料としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaInAsP、GaNまたはZnSeなどの半導体であってもよいし、ガラスなどのセラミックであってもよい。なお、回転機構3は、ウェハWを載置して水平面内で回転させることができる。また、回転機構3には、ウェハWを固定する真空チャックを設けるようにしてもよい。
【0010】
そして、ステージ2の周囲には外壁部1が設けられ、ウェハWの周囲の気流Kがステージ2と外壁部1との間から下方に排気できるように構成されている。なお、排気機構は、外壁部1と兼用してもよいし、別の構成となっていてもよい。また、外壁部1上には、ウェハWから遠心力で周囲に飛ばされたレジストRを受け止めるカップ4が設けられている。
【0011】
また、ウェハW上には、レジストRからから気化した溶剤をウェハWの外周部で飽和状態にさせる気化遮蔽プレート5が設けられている。なお、気化遮蔽プレート5とのウェハWと間隔は、レジストRから気化した溶剤がウェハWの外周部で略滞留し飽和状態を形成するように近接して設定することが好ましい。ここで本実施例における飽和状態とは、気化した溶剤が少量ずつ排気されつつもウェハW外周部では略滞留するに近い状態を呈する態様を言う。また、気化遮蔽プレート5をウェハW上で保持させるために、気化遮蔽プレート5をカップ4に接続するようにしてもよい。また、気化遮蔽プレート5およびカップ4の材料は、ステンレスなどの金属を用いるようにしてもよいし、エポキシなどの樹脂を用いるようにしてもよい。また、レジストRの溶剤としては、例えば、シクロヘキサノンを用いることができる。
【0012】
また、気化遮蔽プレート5上には、ウェハWの中央部にレジストRを供給するレジスト供給ノズル6が設けられている。ここで、気化遮蔽プレート5の中央部には、レジスト供給ノズル6から供給されたレジストRがウェハW上に到達できるようにする開口部5aが形成されている。気化遮蔽プレート5の外周部には、ウェハWの周囲において下向きに気流Kを生成する開口部5bが形成されている。
【0013】
そして、ウェハW上にレジストRを塗布する場合、気化遮蔽プレート5がウェハW上に保持された状態で、ウェハWの周囲を下向きに排気しながら、ウェハWを回転させる。ここで、ウェハWを回転させると、ウェハWの中心部で吸引圧が発生し、気化遮蔽プレート5の開口部5aを介して空気がウェハWの中心部に引き込まれる。
【0014】
また、ウェハWの周囲を下向きに排気することで、気化遮蔽プレート5の開口部5a、5bを介して外壁部1内に空気が引き込まれる。この結果、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流Kが形成され、この気流KはウェハWの外周部から下向きに排気される。
【0015】
このような状態で、レジスト供給ノズル6から開口部5aを介してウェハWの中央部にレジストRを供給すると、遠心力によってレジストRがウェハWの中央部から外周部に広がり、ウェハW上の全面にレジストRが塗布される。この時、余分なレジストRはウェハWの外周部から周囲に飛ばされ、カップ4にて受け止められる。
【0016】
ここで、ウェハWの周囲において下向きに気流Kを生成する開口部5bを気化遮蔽プレート5に設けることにより、ウェハWの外周部から周囲に飛ばされたレジストRを気流Kに沿って下向きに導くことができ、レジストRの跳ね返りによってウェハWの表面にごみが付着するのを抑制することができる。
【0017】
また、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流Kを形成することにより、レジストRがウェハW上で広がる方向と、ウェハW上での気流Kの方向を一致させることができ、レジストRがウェハW上でミスト状になるのを抑制することができる。
【0018】
また、レジストRから気化した溶剤をウェハW上で飽和させる気化遮蔽プレート5を設けることにより、溶剤の一部が気流Kに乗って少しずつ排気されつつ、レジストRからから気化した溶剤がウェハW上に滞留され、レジストRがウェハW上で広がる途中でレジストRの流動性が低下するのを抑制することができる。このため、レジストRの供給量を減らした場合においても、ウェハWの外周部でレジストRの膜厚が減少するのを防止することができ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0019】
(第2実施形態)
図2(a)は、第2実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図2(b)は、図2(a)の気化遮蔽プレート5´の概略構成を示す平面図である。
図2において、この気化遮蔽プレート5´では、図1の気化遮蔽プレート5の開口部5bが省略されている。
【0020】
ここで、ウェハWを回転させると、ウェハWの中心部で吸引圧が発生し、気化遮蔽プレート5´の開口部5aを介して空気がウェハWの中心部に引き込まれる。そして、ウェハWの外周部から下向きに排気することで、気化遮蔽プレート5´の開口部5aを介して引き込まれた空気はウェハWの中央部から外周部に向かう気流Kを形成し、レジストRから気化した溶剤の一部が気流Kに乗ってウェハWの外周部から下向きに排気される。
【0021】
このため、図1の気化遮蔽プレート5の開口部5bを省略した場合においても、レジストRがウェハW上でミスト状になるのを抑制することが可能となるとともに、ウェハWの外周部でレジストRの流動性が低下するのを抑制することができ、レジストRの消費量を低減しつつ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0022】
(第3実施形態)
図3(a)は、第3実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図3(b)は、図3(a)の溶剤蒸気圧制御プレート7および溶剤拡散プレート8の概略構成を示す平面図である。
図3において、この薄膜塗布装置では、図1の気化遮蔽プレート5の代わりに、レジストRの溶剤YがウェハWの外周部で飽和するように、レジストRの溶剤Yを蒸発させ、それ自体の重みで下方に拡散させる溶剤蒸気圧制御プレート7が設けられている。なお、溶剤蒸気圧制御プレート7は、レジストRの溶剤Yを浸透させることができ、その溶剤YをウェハW上で自然蒸発により気化させることができる。また、溶剤蒸気圧制御プレート7の材料は、例えば、ガラス繊維、フェルト、スポンジまたは布などを用いることができる。
【0023】
また、溶剤蒸気圧制御プレート7とウェハWと間隔は、溶剤蒸気圧制御プレート7から気化した溶剤YがウェハWの外周部で飽和するように設定することが好ましい。また、溶剤蒸気圧制御プレート7をウェハW上で保持させるために、溶剤蒸気圧制御プレート7をカップ4に接続するようにしてもよい。
【0024】
ここで、溶剤蒸気圧制御プレート7の中央部には、レジスト供給ノズル6から供給されたレジストRがウェハW上に到達できるようにする開口部7aが形成されている。溶剤蒸気圧制御プレート7の外周部とカップ4との間には、ウェハWの周囲において下向きに気流Kを生成する隙間7bが設けられている。
【0025】
また、溶剤蒸気圧制御プレート7上には、レジストRの溶剤Yを溶剤蒸気圧制御プレート7全体に拡散させる溶剤拡散プレート8が設けられている。ここで、溶剤拡散プレート8には、レジストRの溶剤Yを通過させる開口部8aが離散的に形成されている。なお、溶剤拡散プレート8は溶剤蒸気圧制御プレート7と一体化するようにしてもよい。また、溶剤拡散プレート8は、レジストRの溶剤Yが浸透しない材料を用いることができ、例えば、ステンレスなどの金属を用いるようにしてもよいし、エポキシなどの樹脂を用いるようにしてもよい。
【0026】
また、溶剤拡散プレート8上には、溶剤拡散プレート8上にレジストRの溶剤Yを供給する溶剤供給ノズル9が設けられている。
【0027】
そして、ウェハW上にレジストRを塗布する場合、溶剤蒸気圧制御プレート7がウェハW上に保持された状態で、ウェハWの周囲を下向きに排気しながら、ウェハWを回転させる。ここで、ウェハWを回転させると、ウェハWの中心部で吸引圧が発生し、溶剤蒸気圧制御プレート7の開口部7aを介して空気がウェハWの中心部に引き込まれる。
【0028】
また、ウェハWの周囲を下向きに排気することで、溶剤蒸気圧制御プレート7の開口部7aおよび溶剤蒸気圧制御プレート7とカップ4との間の隙間7bを介して外壁部1内に空気が引き込まれる。この結果、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流Kが形成され、この気流KはウェハWの外周部から下向きに排気される。
【0029】
また、レジストRの溶剤Yは溶剤供給ノズル9を介して溶剤拡散プレート8上に供給される。そして、溶剤拡散プレート8上を伝わるようにしてレジストRの溶剤Yを溶剤拡散プレート8上の全体に行き渡らせ、そのレジストRの溶剤Yが開口部8aを介してこぼれ落ちることで、溶剤蒸気圧制御プレート7全体に供給される。
【0030】
そして、レジストRの溶剤Yが溶剤蒸気圧制御プレート7からウェハW上に自然蒸発により気化し、それ自体の重みで下方に拡散することで、ウェハW上での溶剤蒸気圧が飽和状態に維持され、気流Kに乗って少しずつ排気される。
【0031】
このような状態で、レジスト供給ノズル6から開口部7aを介してウェハWの中央部にレジストRを供給すると、遠心力によってレジストRがウェハWの中央部から外周部に広がり、ウェハW上の全面にレジストRが塗布される。この時、余分なレジストRはウェハWの外周部から周囲に飛ばされ、カップ4にて受け止められる。
【0032】
ここで、溶剤蒸気圧制御プレート7とカップ4との間の隙間7bを設けることにより、ウェハWの外周部から周囲に飛ばされたレジストRを気流に沿って下向きに導くことができ、レジストRの跳ね返りによってウェハWの表面にごみが付着するのを抑制することができる。
【0033】
また、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流を形成することにより、レジストRがウェハW上で広がる方向と、ウェハW上での気流Kの方向を一致させることができ、レジストRがウェハW上でミスト状になるのを抑制することができる。
【0034】
また、レジストRの溶剤をウェハW上で飽和させる溶剤蒸気圧制御プレート7を設けることにより、レジストRの流動性が低下するのを抑制することができる。このため、レジストRの供給量を減らした場合においても、ウェハWの外周部でレジストRの膜厚が減少するのを防止することができ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0035】
また、レジストRの溶剤を溶剤蒸気圧制御プレート7から自然蒸発により気化させ、それ自体の重みで下方に拡散させることで、溶剤蒸気圧制御プレート7からレジストRの溶剤を供給する際に乱気流が発生するのを防止することができる。このため、レジストRの膜班が付いたり、パーティクルに発生原因となったりするのを防止することができる。
【0036】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図である。
図4において、この薄膜塗布装置には、図1の構成に加え、ウェハWの外周部を冷却する冷却管10が外壁部1の内側に設けられている。なお、冷却管10には、冷却水などの液体を流すようにしてもよいし、冷却ガスなどの気体を流すようにしてもよい。
【0037】
また、この薄膜塗布装置には、図1の構成に加え、レジストRを冷却するレジスト冷却槽11が設けられている。このレジスト冷却槽11は、レジストRを冷却しながらレジストRを貯留することができる。
【0038】
なお、ウェハWおよびレジストRの温度が低くなると、レジストRから溶剤が気化し難くなる一方で、レジストRの粘性が増加する。このため、ウェハWおよびレジストRの温度は、溶剤の気化量およびレジストRの粘性を考慮して決めることができ、10〜20℃の範囲内に設定することが好ましい。
【0039】
そして、レジスト冷却槽11にて冷却されたレジストRは、レジスト供給ノズル6から開口部5aを介してウェハWの中央部に供給される。また、ウェハWの外周部は冷却管10を介して冷却される。
【0040】
これにより、レジストRから溶剤が気化するのを抑制しつつ、ウェハW上にレジストRを塗布することが可能となり、ウェハWの外周部でレジストRの流動性が低下するのを抑制することができる。このため、レジストRの消費量を低減しつつ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0041】
(第5実施形態)
図5は、第5実施形態に係る薄膜塗布方法を示す断面図である。
図5において、ウェハ冷却槽21では、ウェハホルダHにてウェハWが保持された状態でウェハWが冷却される。なお、ウェハWの冷却温度は、例えば、10〜20℃の範囲内に設定することが好ましい。
【0042】
そして、ウェハW上にレジストRを塗布する場合、ウェハ冷却槽21からウェハWを取り出し、そのウェハWの温度が上昇する前に、レジスト供給ノズル6からレジストRをウェハWの中央部に供給し、遠心力でレジストRを外周部に広げる。
【0043】
これにより、レジストRから溶剤が気化するのを抑制しつつ、ウェハW上にレジストRを塗布することが可能となり、ウェハW上でレジストRの流動性が低下するのを抑制することができる。このため、レジストRの消費量を低減しつつ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0044】
(第6実施形態)
図6(a)は、第6実施形態に係る薄膜塗布装置の概略構成を示す断面図、図6(b)は、図6(a)の溶剤蒸気圧制御プレート27の概略構成を示す平面図である。
図6において、この薄膜塗布装置では、図1の気化遮蔽プレート5の代わりに、レジストRの溶剤YがウェハWの外周部で飽和するように、レジストRの溶剤Yを蒸発させ、それ自体の重みで下方に拡散させる溶剤蒸気圧制御プレート27が設けられている。なお、溶剤蒸気圧制御プレート27は、レジストRの溶剤Yを吸着することができ、その溶剤YをウェハW上で自然蒸発により気化させることができる。また、溶剤蒸気圧制御プレート27の材料は、例えば、ガラス繊維、フェルト、スポンジまたは布などを用いることができる。
【0045】
なお、溶剤蒸気圧制御プレート27の材料としてガラス繊維を用いた場合、そのガラス繊維の直径は1〜10μmの範囲内で充填率は10%程度(空隙は数10μm程度)に設定することが好ましい。また、溶剤蒸気圧制御プレート27とウェハWと間隔は、溶剤蒸気圧制御プレート27から気化した溶剤YがウェハWの外周部で飽和するように設定することが好ましい。
【0046】
ここで、溶剤蒸気圧制御プレート27の中央部には、レジスト供給ノズル6から供給されたレジストRがウェハW上に到達できるようにする開口部27aが形成されている。溶剤蒸気圧制御プレート27の外周部とカップ4との間には、ウェハWの周囲において下向きに気流Kを生成する隙間27bが設けられている。
【0047】
また、溶剤蒸気圧制御プレート27下には、溶剤蒸気圧制御プレート27を支持するプレートホルダ28が設けられている。ここで、プレートホルダ28には、レジストRの溶剤Yを通過させる開口部28aが離散的に形成されている。なお、プレートホルダ28は、レジストRの溶剤Yが浸透しない材料を用いることができ、例えば、ステンレスなどの金属を用いるようにしてもよいし、エポキシなどの樹脂を用いるようにしてもよい。また、プレートホルダ28をウェハW上で保持させるために、プレートホルダ28をカップ4に接続するようにしてもよい。
【0048】
また、溶剤蒸気圧制御プレート27には、溶剤蒸気圧制御プレート27にレジストRの溶剤Yを供給する溶剤供給ライン29が設けられている。なお、溶剤供給ライン29は、溶剤蒸気圧制御プレート27に突き刺すようにしてもよい。
【0049】
また、溶剤蒸気圧制御プレート27には、レジストRの溶剤Yを加熱するヒータ線30が埋め込まれている。なお、ヒータ線30はテフロン(登録商標)コートすることができる。
【0050】
そして、ウェハW上にレジストRを塗布する場合、溶剤蒸気圧制御プレート27がウェハW上に保持された状態で、ウェハWの周囲を下向きに排気しながら、ウェハWを回転させる。ここで、ウェハWを回転させると、ウェハWの中心部で吸引圧が発生し、溶剤蒸気圧制御プレート27の開口部27aを介して空気がウェハWの中心部に引き込まれる。
【0051】
また、ウェハWの周囲を下向きに排気することで、溶剤蒸気圧制御プレート27の開口部27aおよび溶剤蒸気圧制御プレート27とカップ4との間の隙間27bを介して外壁部1内に空気が引き込まれる。この結果、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流Kが形成され、この気流KはウェハWの外周部から下向きに排気される。
【0052】
また、レジストRの溶剤Yは溶剤供給ライン29を介して溶剤蒸気圧制御プレート27に供給される。そして、レジストRの溶剤Yが溶剤蒸気圧制御プレート27からウェハW上に自然蒸発により気化し、それ自体の重みで下方に拡散することで、ウェハW上での溶剤蒸気圧が飽和状態に維持され、気流Kに乗って少しずつ排気される。
【0053】
ここで、例えば、排気速度が10リットル/minでウェハWの回転速度が3000rpm以上の場合、レジストRの溶剤YをウェハWの外周部で飽和させるために、ヒータ線30にてレジストRの溶剤Yを加熱し、レジストRの溶剤Yを加熱蒸発させることが好ましい。この時のヒータ線30の温度は20〜50℃の範囲内に設定し、レジストRの溶剤Yの雰囲気温度は−5〜20℃の範囲内に設定することが好ましい。
【0054】
なお、排気速度が10リットル/minでウェハWの回転速度が2000rpm以下の場合、レジストRの溶剤YをウェハWの外周部で飽和させるために、ヒータ線30にてレジストRの溶剤Yを加熱しなくてもよい。
【0055】
このような状態で、レジスト供給ノズル6から開口部27aを介してウェハWの中央部にレジストRを供給すると、遠心力によってレジストRがウェハWの中央部から外周部に広がり、ウェハW上の全面にレジストRが塗布される。この時、余分なレジストRはウェハWの外周部から周囲に飛ばされ、カップ4にて受け止められる。
【0056】
ここで、溶剤蒸気圧制御プレート27とカップ4との間の隙間27bを設けることにより、ウェハWの外周部から周囲に飛ばされたレジストRを気流に沿って下向きに導くことができ、レジストRの跳ね返りによってウェハWの表面にごみが付着するのを抑制することができる。
【0057】
また、ウェハWの中央部から外周部に向かう気流を形成することにより、レジストRがウェハW上で広がる方向と、ウェハW上での気流Kの方向を一致させることができ、レジストRがウェハW上でミスト状になるのを抑制することができる。
【0058】
また、レジストRの溶剤をウェハW上で飽和させる溶剤蒸気圧制御プレート27を設けることにより、レジストRからの溶剤の気化を防止でき、その結果、レジストRの流動性低下を抑制できる。このため、レジストRの供給量を減らした場合においても、ウェハWの外周部でレジストRの膜厚が減少するのを防止することができ、ウェハW上の全面でのレジストRの膜厚均一性を向上させることができる。
【0059】
また、レジストRの溶剤を溶剤蒸気圧制御プレート27から加熱蒸発により気化させ、それ自体の重みで下方に拡散させることで、溶剤蒸気圧制御プレート27からレジストRの溶剤を供給する際に乱気流が発生するのを防止することができる。このため、レジストRの膜班が付いたり、パーティクルに発生原因となったりするのを防止することができる。
【0060】
図7は、本実施形態に係る薄膜塗布装置における溶媒の飽和状態を示す断面図である。図7において、飽和状態HJとは、カップ4の中のウェハWに気化された溶媒が、ウェハW上を含むウェハW全体を包み込むように、カップ全体に気化した溶媒が略滞留しつつ一部は少しずつ排気される状態を言う。ただし、ウェハ回転速度と排気速度のバランス次第では加熱蒸発による飽和状態HJの形成が必要である。例えば、10リットル/分の排気速度で2000rpmまでの塗布および乾燥では加熱蒸発は不要である。ただし、3000rpmからは、加熱蒸発により強制的に飽和状態HJにする必要がある。なお、排気速度は1分間当たりの総排気量である。
【0061】
なお、上述した実施形態では、ウェハW上に塗布される塗布膜としてレジストを例にとって説明したが、レジスト以外にも、例えば、SOG(Spin On Glass)またはPSZ(Polysilazane)などであってもよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
W ウェハ、R レジスト、K 気流、1 外壁部、2 ステージ、3 回転機構、4 カップ、5、5´ 気化遮蔽プレート、5a、5b、7a、8a、27a、28a 開口部、6 レジスト供給ノズル、7、27 溶剤蒸気圧制御プレート、8 溶剤拡散プレート、9 溶剤供給ノズル、7b 隙間、10 冷却管、11 レジスト冷却槽、21 ウェハ冷却槽、H ウェハホルダ、28 プレートホルダ、29 溶剤供給ライン、30 ヒータ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを載置して回転させる回転機構と、
前記ウェハ上に塗布される塗布膜から気化した溶剤を前記ウェハの外周部で飽和させながらウェハ中心部からウェハ外周部までの気流を形成する気化遮蔽プレートとを備えることを特徴とする薄膜塗布装置。
【請求項2】
前記気化遮蔽プレートは、前記ウェハの中央部に対応して配置された第1の開口部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜塗布装置。
【請求項3】
前記気化遮蔽プレートは、前記ウェハの外周部に対応して配置された第2の開口部を備えることを特徴とする請求項3に記載の薄膜塗布装置。
【請求項4】
前記ウェハ中心部からウェハ外周部の面内に沿って気流を排気するための手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の薄膜塗布装置。
【請求項5】
ウェハを載置して回転させる回転機構と、
前記ウェハ上に塗布される塗布膜の溶剤が前記ウェハの外周部で飽和するように、前記溶剤を蒸発させ、それ自体の重みで下方に拡散させる溶剤蒸気圧制御プレートとを備えることを特徴とする薄膜塗布装置。
【請求項6】
前記溶剤蒸気圧制御プレートは、前記溶剤が浸透していることを特徴とする請求項5に記載の薄膜塗布装置。
【請求項7】
前記溶剤蒸気圧制御プレート上に設けられ、前記溶剤を前記溶剤蒸気圧制御プレート全体に拡散させる溶剤拡散プレートをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の薄膜塗布装置。
【請求項8】
前記溶剤拡散プレートに溶剤を供給することを特徴とする請求項7に記載の薄膜塗布装置。
【請求項9】
前記溶剤蒸気圧制御プレートには、前記溶剤を加熱するヒータ線が埋め込まれていることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の薄膜塗布装置。
【請求項10】
前記ウェハを冷却するウェハ冷却機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の薄膜塗布装置。
【請求項11】
前記塗布膜を冷却する塗布膜冷却機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の薄膜塗布装置。
【請求項12】
前記ウェハ全体が飽和状態の中に置かれていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の薄膜塗布装置。
【請求項13】
ウェハ上に塗布された塗布膜から気化した溶剤を前記ウェハの外周部で飽和させ、ウェハ中心部からウェハ外周部までの気流を形成しながら、前記ウェハ上に前記塗布膜をスピンコートすることを特徴とする薄膜塗布方法。
【請求項14】
ウェハ上に塗布される塗布膜の溶剤が前記ウェハの外周部で飽和するように、前記溶剤を蒸発させ、それ自体の重みで下方に拡散させながら、前記ウェハ上に前記塗布膜をスピンコートすることを特徴とする薄膜塗布方法。
【請求項15】
前記ウェハ上に前記塗布膜をスピンコートする前に前記ウェハを冷却することを特徴とする請求項12または13に記載の薄膜塗布方法。
【請求項16】
前記ウェハ上に前記塗布膜をスピンコートする前に塗布液を冷却することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の薄膜塗布方法。
【請求項17】
前記ウェハ全体が飽和状態の中に置かれていることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の薄膜塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50934(P2012−50934A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195805(P2010−195805)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】