説明

薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置

【課題】 薄膜太陽電池パネルに一定間隔で設けられた多数のスクライブ内に付着するパーティクルを確実に除去でき、しかも表面の成膜面に傷を付けたり成膜を剥離したりするおそれがない高圧液噴射洗浄装置を提供する。
【解決手段】 薄膜太陽電池パネルXの各スクライブX2の位置に対応して噴射ノズル3をノズルホルダー2の長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列し、ノズルホルダー2をその両側の支持部13・14でノズルホルダーの長手方向に移動自在に支持し、太陽電池パネルXをスクライブX2に平行に相対的に搬送しながら、ノズルホルダー2の各噴射ノズル3から一本の直線状に噴射する高圧液を太陽電池パネルXの多数のスクライブX2に対し平行に噴射させて洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、薄膜太陽電池パネルの幅方向に一定間隔で設けられたスクライブ(浅い縦溝)内に付着するパーティクル(太陽電池パネルの製造工程で生じるガラス基板表面の微小な粒子や有機物や金属不純物)を高圧液を噴射して除去するために使用できる、薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の薄膜太陽電池パネルの製造では、ガラス板上に透明電極膜(TCO膜)が形成されたガラス板の受け入れ、透明電極膜にレーザでスクライブを形成、透明電極膜上にCVDにてシリコンなどからなる半導体光電変換層を形成、半導体光電変換層にレーザでスクライブを形成、半導体光電変換層上に導体膜を形成、導体膜および半導体光電変換層にレーザでスクライブを形成などの製造工程を経た後、裏面側にガラス板を貼り合わせる工程の前に、パーティクルを除去するための洗浄作業を行わねばならない。図6(c)に示すように、スクライブX2内にパーティクルpが付着していると、直列に接続された光電変換素子層(光電変換セル)X1間で絶縁不良が生じ、目的の発電量が得られなくなるからである。そこで、従来はブラシを回転させ、このブラシに洗浄液をかけながらブラシを前記スクライブ内に押し当て、洗浄対象物を相対的に移動させてスクライブ内に付着するパーティクルを擦り取るロールブラシが使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このようなロールブラシを用いた洗浄装置に関する先行技術に、「洗浄対象物としての薄膜太陽電池パネルがその分割ラインであるスクライブを走行方向と平行にした状態でコンベア上に載置され、コンベアの走行に伴って太陽電池パネルが水洗チャンバ内に導入される。そして、水洗チャンバ内においては、コンベア上面に向けて導電ブラシが設置され、噴射ノズル機構のノズル孔から洗浄水が噴射している。したがって、太陽電池パネルは走行中に噴射される洗浄水によって洗浄されるとともに、導電ブラシの先端は太陽電池パネルの光電変換セル集積領域および周縁領域と摺擦し、電気的に導通状態となって同電位に保たれる。」ところの洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2007年1月発行「エレクトロニクスを支える洗浄技術(発行所:(株)東レリサーチセンター調査研究部門)」(27〜28頁)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−044467号公報(段落0028〜0031および図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したロールブラシにより、太陽電池パネルのスクライブ内のパーティクルを除去する洗浄方法では、つぎのような点で課題がある。
【0007】
・図6(a)に示すように、スクライブX2の幅は50〜80μmであるのに対し、ロールブラシのブラシ径は100μm以上であるから、図6(b)のようにスクライブX2内の隅角部に付着するパーティクルpを除去しにくい。また、ロールブラシのブラシ線径が太いことも、スクライブX2内のパーティクルpの除去を難しくしている。
【0008】
・ロールブラシの先端をスクライブ内の透明電極膜面に押し付けて回転しながらパーティクルを擦り取るから、ブラシ内に混入した異物により成膜後の薄膜を傷つけるおそれがある。また、ブラシが摩耗するのに伴う高さ調整、ブラシ交換などのメンテナンスが必要になり、手間がかかる。
【0009】
・20〜200kg/cm2 に加圧した洗浄液をノズル孔から噴射させてウェハやマスク表面に当て、パーティクルを除去する高圧液噴射洗浄装置が提案されているが、通常、太陽電池パネルの全面に高圧液を噴射させて洗浄する構造である。このため、スクライブ内にだけ高圧液を集中的に噴射させてパーティクルを確実に除去することが困難である。一方、パーティクルの除去能力を向上するために、ノズル孔から噴射させる高圧液の加圧力を上げ過ぎると、太陽電池パネル表面の成膜が剥離するおそれがある。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、薄膜太陽電池パネルに一定間隔で設けられた多数のスクライブ内に付着するパーティクルを確実に除去でき、しかも表面の成膜面に傷を付けたり成膜を剥離したりするおそれがない、薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明に係る薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置は、薄膜太陽電池パネルの幅方向に一定間隔で、かつ前記幅方向に直交する方向に連続して設けられた各スクライブに対し、高圧液を(拡散しない)一本の直線状に噴射して洗浄する高圧液噴射ノズルを備えた高圧液噴射洗浄装置であって、
前記太陽電池パネルの前記各スクライブの位置に対応して前記噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔(前記スクライブの間隔)をあけて配列し、前記ノズルホルダーをその両側の支持部で(固定または前記ノズルホルダーの長手方向に移動自在に)支持し、前記太陽電池パネルを前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向で、かつ前記太陽電池パネルの前記スクライブに平行に相対的に搬送しながら、前記ノズルホルダーの前記各噴射ノズルから高圧液を前記太陽電池パネルの多数のスクライブに対し平行に噴射させて洗浄することを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する高圧液噴射洗浄装置によれば、多数の噴射ノズルから高圧液が一直線状に噴射されるから、高い洗浄強度が得られる。また、各噴射ノズルから高圧液が太陽電池パネルのスクライブに向けて平行にかつ一直線状に噴射され、太陽電池パネルの各スクライブ内に当たるので、各パーティクル内のパーティクルが擦り取られるように除去される。この状態で、ノズルホルダーに対し太陽電池パネルがスクライブと平行な方向に相対的に搬送されるので、各スクライブ内に高圧液が一直線状に噴射され、スクライブ内のパーティクルが除去される。なお、一の前記噴射ノズルから一直線状に噴射される高圧液の外径(実施例の場合)は、図6(b)に示すように太陽電池パネルXの表面に当たった状態で例えば約140μmであり、スクライブX2の幅よりやや大きく設定している。
【0013】
請求項2に記載のように、前記ノズルホルダーをその両側の支持部でノズルホルダーの長手方向に移動自在に支持するとともに、前記支持部の少なくとも一方に、前記ノズルホルダーを微小移動させて位置決め可能な微小位置決め装置を設けることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、前記ノズルホルダーの噴射ノズルから噴射される高圧液が太陽電池パネルに当たる位置が太陽電池パネルの搬送などによりスクライブからずれる場合には、微小位置決め装置によって高圧液の当たる位置を調整してスクライブの位置に正確に合わせることができる。また、ノズルホルダーの一つの噴射ノズルから噴射される高圧液が当たる位置と太陽電池パネルの一つのスクライブの位置とを合わせることによって、太陽電池パネルの全てのスクライブに対しノズルホルダーから噴射される高圧液が正確に当たるようになる。
【0015】
請求項3に記載のように、前記各噴射ノズルから噴射させる高圧液の噴射圧を可変にすることができる。
【0016】
このようにすれば、太陽電池パネルの各スクライブ内の表面に露呈する透明電極などの成膜の硬度に応じて高圧液の噴射圧を調整できるので、高圧液が当たっても成膜が剥離しない圧力に設定できる。
【0017】
請求項4に記載のように、両側の前記支持部に前記ノズルホルダーをその長手方向の軸回りに回転可能に支持して、前記噴射ノズルから噴射される高圧液の向きを調節できるようにすることができる。
【0018】
このようにすれば、太陽電池パネルのスクライブ内の露呈面に対し垂直方向に真上からだけでなく、ある程度(露呈面に対し45°あるいは30°以下に)傾斜させた角度で高圧液を当てるように調整することができるので、スクライブ内からのパーティクルの掻き出しを効率よく行える。
【0019】
請求項5に記載のように、前記ノズルホルダーの下面に前記各噴射ノズルを長手方向に沿って等間隔に配列するとともに、前記ノズルホルダーの長手方向に沿って高圧液供給路を前記各噴射ノズルに連通させて設け、前記高圧液供給路の端部に可撓性の高圧液供給管の一端を接続することができる。
【0020】
このようにすれば、ノズルホルダーを両側の前記支持部に対し長手方向に移動させても、ノズルホルダーの移動時に可撓性の高圧液供給管が屈曲変形してノズルホルダー端部の変位を吸収する。そして、高圧液供給管を通じて高圧液供給路内に供給される高圧液は高圧液供給路内に臨む(連通する)各噴射ノズルからほぼ均等に洗浄液が高圧下で噴射される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る高圧液噴射洗浄装置は上記の構成を有するから、下記のような優れた効果を奏する。すなわち、
・太陽電池パネルの各スクライブ内に付着した導電性や半導電性のパーティクルを確実に除去して、光電変換素子間が短絡するなど太陽電池パネルの品質低下の原因になることを防止する。
【0022】
・太陽電池パネルの各スクライブの位置およびその周辺にだけ的確に高圧液を噴射して洗浄するので、太陽電池パネルの外表面などスクライブ内以外の成膜を剥離したり傷を付けたりするおそれがない。
【0023】
・太陽電池パネルの各スクライブ内にだけ集中的に高圧液を噴射させてパーティクルを除去するので、パーティクル内の隅角部に付着したパーティクルも確実に除去でき、効率的に洗浄できる。
【0024】
・太陽電池パネルのスクライブ内の成膜だけでなく外表面の成膜に対しても、高圧液の圧力が強すぎて剥離するなど品質に悪影響を及ぼすおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置を示す正面図である。
【図2】図2(a)は本発明の洗浄装置1に使用されている高圧液噴射ノズルnを示す正面図、図2(b)は同A−A断面図である。図2(c)はノズルホルダーの実施例を示すもので、図2(d)のc−c断面図、図2(d)は図2(c)のd−d断面図である。
【図3】図3(a)は洗浄液供給管9をホルダー2の一端に接続した状態の正面を示す説明図、図3(b)は洗浄液供給管9の他の実施例を示すもので、図3(b)は高圧ホースからなる洗浄液供給管9’を接続した状態の正面を示す説明図である。
【図4】薄膜太陽電池パネルの一部を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る高圧液噴射洗浄装置を概略的に示す前方上方より見た斜視図である。
【図6】図6(a)は薄膜太陽電池パネルの一部を拡大して概略的に示す一部を断面で表した斜視図、図6(b)(c)は薄膜太陽電池パネルの一部をさらに拡大して詳細に示す一部を断面で表した斜視図で、図6(b)は太陽電池パネルに当たる高圧液の外径とスクライブの幅との関係について示している。
【図7】本発明の実施例3に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。
【図8】本発明の実施例4に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。
【図9】本発明の実施例5に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。
【図10】本発明の実施例6に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る高圧液噴射洗浄装置の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0027】
図1に示すように、本実施例の高圧液噴射洗浄装置1は固定式の洗浄装置で、多数の高圧液噴射ノズル3を一定間隔(スクライブX2間の距離、以下スクライブ幅という)をあけて下面に配列したノズルホルダー2を備えている。ノズルホルダー2の本体2aは、上方より見て長方形状の角筒状体からなり、その下面の長手方向に等間隔に多数の高圧液噴射ノズル3を配列している。ノズルホルダー本体2aの長さは洗浄対象物である太陽電池パネルXの幅よりやや長く、また太陽電池パネルXの幅を十分にカバーできるように噴射ノズル3がノズルホルダー本体2aの下面に装着されている。
【0028】
本例の高圧液噴射洗浄装置1で洗浄する太陽電池パネルXは、図4に示すように、板ガラスX4上に幅10mm前後の光電変換素子層X1が幅50〜80μm程度のスクライブX2を挟んで直列に接続されている。太陽電池パネルXの幅は例えば2200mm前後のものがあり、多数(例えば100〜200個程度)のスクライブX2が図5に示すように、幅方向に直交する方向(長さ方向という)に連続して設けられている。
【0029】
一方、高圧液噴射洗浄装置1のノズルホルダー本体2aの長手方向に一定間隔で設けられる噴射ノズル3は、太陽電池パネルXの各スクライブX2に対応する位置にスクライブ幅と一致するように配置されている。図2(a)は本発明の洗浄装置1に使用されている高圧液噴射ノズルnを示す正面図、図2(b)は同A−A断面図で、図2(a)に示すように、ステンレス製のノズル本体n1の中心部に設けられたチップ孔n2に、ダイヤモンドやサファイヤなどの宝石の中心位置に噴射孔n4を穿設したノズルチップn3が埋設され、ノズル本体n1の1つの高圧液噴射孔nkから高圧液が一本の一直線状に噴射される。噴射ノズルnの形状は本例に示すチップ方式の他、プレートに直接にノズル孔を加工した方式でもよい。なお、n5はストレート孔、n6は先方に向けて円錐状に拡径したテーパー孔である。各噴射ノズル3から噴射される高圧液WJは、図6(b)に示すように太陽電池パネルXに当たる位置で高圧液WJの外径がスクライブX2の溝幅より大きくなるように調整されている。
【0030】
図5に示すように、本例の高圧液噴射洗浄装置1は、太陽電池パネルXをノズルホルダー2に対し直交する方向に、いいかえればスクライブX2と平行な方向に一定速度で搬送しながら洗浄する。図1に示すように、太陽電池パネルXの洗浄室10の両側方に主支持台11と副支持台12が洗浄室10を挟むように設置されている。ノズルホルダー2は両側の支持台11・12間に跨って配置され、各支持台11・12上に設置されたLMガイド13・14に対しノズルホルダー2が長手方向に移動可能に支持されている。ノズルホルダー2は本体2aの両側方に断面四角形の支持杆2b・2cが張り出して連接されている。一方(主支持台11側)の支持杆2cの外端部には、ボールネジのナット部15側が一体に固定され、ナット部15にボールネジ軸16の先端部が螺合している。
【0031】
ボールネジ軸16は、主支持台11上に設置された一対の軸受装置17により回転可能に支持されている。主支持台11上にステッピングモータまたはサーボモータ18がL形ステー19により支持され、ステッピングモータまたはサーボモータ18の駆動軸18a の先端にボールネジ軸16の基端側が一体回転可能に連結されている。そして、ステッピングモータまたはサーボモータ18によりボールネジ軸16を特定方向に所定回転させることにより、ノズルホルダー2が長手方向に微小距離移動し、位置決めされる。本実施例では、図5に示すようにノズルホルダー2の左端の噴射ノズル3から噴射される高圧液が当たる、太陽電池パネルXのスクライブX2の位置において、その延長線上にスクライブ位置センサー20が、図示を省略した洗浄室10のフレームに取り付けられている。この位置センサー20が太陽電池パネルXの左端のスクライブX2の位置を事前に検知し、位置センサー20に接続されたステッピングモータまたはサーボモータ18によりノズルホルダー2の左端の噴射ノズル3から噴射される高圧液が左端のスクライブX2に当たるように位置決めする。この結果、ノズルホルダー2の残りの噴射ノズルから噴射される高圧液が当たる位置も、太陽電池パネルXの各スクライブX2の位置に一致するようになる。したがって、太陽電池パネルXをノズルホルダー2に対し直交する方向に搬送する装置に、後述する直動用キャリッジ21のような高精度の搬送装置を使用する代わりに、例えばベルトコンベアを用いて太陽電池パネルXを搬送することができる。
【0032】
また、図5に示すように太陽電池パネルXは直動用キャリッジ21上に載置され、各スクライブX2の長手方向と平行に移動する。このため、本実施例では、洗浄室10の一方の傍において、レール22が支持台11・12間に跨って配置されたノズルホルダー2の長手方向に直交する方向に敷設されており、レール22に沿って搬送台車23が走行する。搬送台車23は一対の連結部材24・24で直動用キャリッジ21に連結され、搬送台車23の走行に伴って直動用キャリッジ21がレール24と平行に搬送される。なお、太陽電池パネルXは直動用キャリッジ21上に吸盤25を介して固定され、直動用キャリッジ21により搬送される。
【0033】
図2(c)(d)は多数の噴射ノズル3を下面に配列したノズルホルダー本体2aの実施例を示す図面で、本例のノズルホルダー本体2aは、図2(c)・図2(d)に示すように、断面四角形状の長尺なホルダー本体2aの上部に高圧液供給路32が長手方向に沿って設けられている。また、多数の噴射ノズル3を一定ピッチで装着したノズル部4がホルダー本体2aの下部に設けられ、ノズル部4には各噴射ノズル3の下方に臨む下端を開放した開口4cが形成されている。さらに、ノズルホルダー本体2aの下部の一端部には、高圧液供給路32に連通する接続孔4dが設けられ、この接続孔4dに高圧液供給路32の一端が接続されている。なお、本例の場合、金属製またはゴム製で外周面に金属ブレード(ワイヤー)を巻装して強化した高圧ホースからなる可撓性を有する高圧液供給管9(図3(a)参照)を高圧液供給路32の一端部に接続する。
【0034】
金属製供給管9の他端は、高圧液供給ポンプ(図示せず)に接続され、この高圧液供給ポンプから金属製供給管9を介してノズルホルダー本体2aの高圧液供給路32の一端に接続され、その高圧液供給路32から各噴射ノズル3へ高圧液が供給され、各噴射ノズル3から一直線状に高圧液が噴射される。なお、金属製の高圧液供給管9は、図1に示すように螺旋状に複数回巻装した部分を横向きに設けて高圧液供給路32の一端部の上端に接続しているが、高圧液供給管32が可撓性を備えていれば螺旋状にしなくてもよく、例えば直線状にして供給管9の全体が湾曲するようにしてもよい。また、図3(b)は高圧ホースからなる高圧液供給管9’の他の実施例を示している。
【実施例2】
【0035】
図示は省略するが、図1に示す高圧液噴射洗浄装置1において、ノズルホルダー2の本体2aを両側方から張り出して設けられる支持杆2b・2cに対しそれらの軸回りに所定の角度を回転させられるように構成している。
【0036】
本実施例2に係る高圧液噴射洗浄装置1では、太陽電池パネルXのスクライブX2内のパーティクルpを真上から高圧液を垂直に当てただけでは除去しにくい場合に、例えばノズルホルダー2に向かって搬送されてくる太陽電池パネルXに対し対向するように、高圧液を鋭角に当てて除去することができる。本実施例2の高圧液噴射洗浄装置1では、噴射ノズル3から噴射される高圧液の圧力を調整すると同時に、図6に示す太陽電池パネルXに対し高圧液が当たる角度を調整することにより、スクライブX2内のパーティクルpを確実に除去し、パーティクルpも掻き出しを効率よく行うことができる。
【実施例3】
【0037】
図7は本発明の別の実施例に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。図7に示すように、本実施例3に係る高圧液噴射洗浄装置1−3'が上記実施例1の高圧液噴射洗浄装置1と相違する点は、以下のとおりである。太陽電池パネルXを洗浄台10a上に載置して定位置に固定した状態で、ノズルホルダー2を太陽電池パネルXのスクライブX2に沿って移動するようにしている。
【0038】
このため、洗浄台10aの両側方にレール22を敷設し、各レール22に沿って走行する搬送台車23上にノズルホルダー2を支持台11・12ごと搭載している。スクライブ位置センサー20はノズルホルダー2に、図示を省略した支持具で支持し、ノズルホルダー2と一体で移動するようにしている。その他の構成および使用態様については上記実施例1と共通するので、共通する部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
【実施例4】
【0039】
図8は本発明のさらに別の実施例に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。図8に示すように、本実施例4に係る高圧液噴射洗浄装置1−4'が上記実施例1の高圧液噴射洗浄装置1と相違する点は、以下のとおりである。コストダウンを図るために、サーボモータ18やLMガイド13・14などの微動位置決め機構を省くとともに、スクライブ位置センサー20も省いている。一方、ノズルホルダー2の噴射ノズル3から噴射される高圧液の噴流形状を下方へ向けやや拡散するようにするか、高圧液の噴流径を大きくするかして、太陽電池パネルXのスクライブX2に当たる位置が多少ずれても、スクライブX2内のパーティクルpを除去できるようにしている。なお、ノズルホルダー2に対し太陽電池パネルXを相対的に移動させる機構としては、上記実施例1および上記実施例3のいずれでも可能であるが、機構的には上記実施例1の方が簡単である。その他の構成および使用態様については上記実施例1と共通するので、共通する部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
【実施例5】
【0040】
図9は本発明のさらに別の実施例に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。図9に示すように、本実施例5に係る高圧液噴射洗浄装置1−5は上記実施例4の高圧液噴射洗浄装置1−4と同様にコストダウンを図るために構造を簡略したもので、上記実施例5のように噴射される高圧液WJの噴流形状を下方へ向けやや拡散させる代わりに、ノズルホルダー2の一端を電磁発振機26に取り付けて、ノズルホルダー2を長手方向に微振動させるようにしている。これにより、太陽電池パネルXのスクライブX2に当たる位置が多少ずれても、スクライブX2内のパーティクルp(図6)を除去できるようにしている。なお、ノズルホルダー2に対し太陽電池パネルXを相対的に移動させる機構としては、上記実施例1および上記実施例3のいずれの場合も適用可能であるが、機構的には上記実施例1の方が簡単であることから、太陽電池パネルXを移動させるようにしている。その他の構成および使用態様については上記実施例1と共通するので、共通する部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
【実施例6】
【0041】
図10は本発明のさらに別の実施例に係る高圧液噴射洗浄装置を示す前方上方より見た斜視図である。図10に示すように、本実施例6に係る高圧液噴射洗浄装置1−6は上記実施例1の高圧液噴射洗浄装置1において、太陽電池パネルXの全表面を扇状に拡散した加圧力の弱い洗浄液により、均一に洗浄するノズルホルダー2’を組み合わせた洗浄装置からなる。ノズルホルダー2’は太陽電池パネルXの幅方向に対し傾斜させて配置している。なお、洗浄液が扇状に拡散する噴射ノズル3'を設ける代わりに、加圧力の弱い洗浄液を一本の直線状に噴射させながら、ノズルホルダー2’を長手方向の軸回りに所定の回転角度(例えば30°)の範囲内で例えばモータとピストンクランク機構などを用いて往復回転させるようにしてもよい。本例の高圧液噴射洗浄装置1−6により、ノズルホルダー2にて太陽電池パネルXのスクライブX2内を強力に洗浄し、ノズルホルダー2’では洗浄液の加圧力を調整して成膜部に損傷を与えないようにして全体的に均一に洗浄することが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1・1−3・1−4・1−5・1−6 高圧液噴射洗浄装置
2 ノズルホルダー
2aノズルホルダー本体
2b・2c支持杆
3 噴射ノズル
4 ノズル部
4c開口
4d接続孔
9・9’高圧液供給管
10 洗浄室
10a洗浄台
11 主支持台
12 副支持台
13・14 LMガイド
15 ナット部
16 ボールネジ軸
17 軸受装置
18 サーボモータ
19 L形ステー
20 スクライブ位置センサー
21 直動用キャリッジ
22 レール
23 搬送台車
24 連結部材
25 吸盤
26 電磁発振機
32 高圧液供給路
X 太陽電池パネル
X2スクライブ
X3光電変換素子層
X4板ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜太陽電池パネルの幅方向に一定間隔で、かつ前記幅方向に直交する方向に連続して設けられた各スクライブに対し、高圧液を一本の直線状に噴射して洗浄する高圧液噴射ノズルを備えた薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置であって、
前記太陽電池パネルの前記各スクライブの位置に対応して前記噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列し、
前記ノズルホルダーをその両側の支持部で支持し、
前記太陽電池パネルを前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向で、かつ前記太陽電池パネルの前記スクライブに平行に相対的に搬送しながら、前記ノズルホルダーの前記各噴射ノズルから高圧液を前記太陽電池パネルの多数のスクライブに対し平行に噴射させて洗浄することを特徴とする薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルホルダーをその両側の支持部でノズルホルダーの長手方向に移動自在に支持するとともに、前記支持部の少なくとも一方に、前記ノズルホルダーを微小移動させて位置決め可能な微小位置決め装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置。
【請求項3】
前記各噴射ノズルから噴射させる高圧液の噴射圧を可変にしたことを特徴とする請求項1または2記載の薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置。
【請求項4】
両側の前記支持部に前記ノズルホルダーをその長手方向の軸回りに回転可能に支持して、前記噴射ノズルから噴射される高圧液の向きを調節できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズルホルダーの下面に前記各噴射ノズルを長手方向に沿って等間隔に配列するとともに、前記ノズルホルダーの長手方向に沿って高圧液供給路を前記各噴射ノズルに連通させて設け、前記高圧液供給路の端部に可撓性の高圧液供給管の一端を接続したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の薄膜太陽電池パネルの高圧液噴射洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−245344(P2010−245344A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93207(P2009−93207)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】