説明

薄膜形成方法、ガスバリアフィルム、及び有機光電変換素子

【課題】簡易化された装置を用いて、きわめて高いバリア性能を達成できるフィルムの製造方法を提供し、また該フィルムを有機光電変換素子用樹脂基材として用い、更に、該有機光電変換素子用樹脂基材を用いて有機光電変換素子のデバイスを提供する。
【解決手段】基材フィルム上に少なくとも1層のケイ素化合物を有する層を塗設した後に、一対の回転するロール電極からなる対向電極で搬送する工程と、該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させるプラズマ放電手段とを有する薄膜形成装置を用いて、該ケイ素化合物を有する層に酸化性ガス雰囲気下でプラズマ放電する工程とにより、ガスバリア性を有する薄膜とすることを特徴とする薄膜形成方法、ガスバリアフィルム及び有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成方法、ガスバリアフィルム、及び有機光電変換素子に関し、更に詳しくは、電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムを用いた各種デバイス用樹脂基材、および各種デバイス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。
【0003】
この様な分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、ディスプレイ材料では透明性が求められており、全く適用することができない。
【0004】
特に、液晶表示素子、太陽電池などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロールtoロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として、高分子フィルムを用いた例が開示されて(例えば、特許文献1、2参照)いる。上記の透明樹脂フィルムとして例えばポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)等の比較的酸素透過率の高いものを用いる。
【0005】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子の基板として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると水蒸気や空気が浸透して、性能が経時的に低下し易くなるという問題がある。この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリアフィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリアフィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化ケイ素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
蒸着法の代わりに、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布後、表面処理する方法でガスバリア性層を形成する方法として、下記技術が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。しかしながらいずれの技術も、有機EL素子等のガスバリア層としての機能は不十分なものであり、水蒸気透過率として、1×10−2g/m・dayを大きく下回るような、更なるガスバリア性の改善が求められていた。
【0007】
さらなるガスバリア性の改善のための技術として、上記ポリシラザン層と、プラズマ化学蒸着法を併用した技術も知られて(例えば、特許文献5参照)いる。しかしながら、この技術においても上述のガスバリア性目標を達成するにいたっていなかった。
【0008】
ガスバリアフィルムを発光素子に用いた技術としては、下記技術が知られて(例えば、特許文献6参照)いる。この場合、有機ELで発生するダークスポットといわれる、非発光部分の欠陥を完全には排除できず、有機EL素子を高温、高湿下で保存された後のダークスポットの成長が十分に抑えられていなかった。
【0009】
シラザン化合物を原料ガスとして、プラズマ化学蒸着法を用いて緻密で、剥離性、耐傷性、輝度寿命、透過率及び遮光性を有する機能体の形成方法は、知られて(例えば、特許文献7参照)いる。この技術を用いて作製された有機EL素子は、良好な輝度寿命を有する反面、プラズマ化学蒸着法特有の課題である、対向する電極間のプラズマ空間内においてパーティクルとよばれる、サブミクロンからミクロンサイズの原料反応生成物粒子が発生し、この粒子が蒸着膜面に付着することで均一な膜形成が阻害される場合があり、その部分が欠陥となって有機EL素子の発光状態にダークスポットが形成され、発光素子としての品質を低下させる懸念があった。
【0010】
プラスチックフィルム等からなる基材表面に薄膜を積層する表面処理法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、減圧下でのグロー放電を利用したプラズマ・ケミカルベーパーデポジット(CVD)法等が用いられてきた。しかしながら、これらの方法はいずれも真空系処理手段からなるものであって、処理系を相当程度に減圧する必要があるため、使用する成膜装置が、大型処理チャンバーや大型真空ポンプ等の大がかりな機器や機器ユニットとなり、又、高度減圧下の煩瑣な作業を要するものである上、更には、これら機器や機器ユニットの性能上、ロール状に巻回された基材の巻径、巾等のサイズ、薄膜形成用原料等の容量、その他各種の制限・限界がある。
【0011】
こうした真空系処理手段からなる表面処理法の問題を排除するため、大気、常圧プラズマCVD法によって薄膜を形成しようとする試みがある。これらの常圧プラズマを用いた連続表面処理又は連続成膜に用いられる装置としては、尖端放電を防止するため周縁部を滑らかな曲面で縁取りした一対の平行平板電極が放電プラズマ処理電極として用いられている。
【0012】
上記平行平板電極は、電極の製作、電極間距離の設定が容易であり、電極面積が広くとれるので、電極間を移送される被処理フィルムは、移送方向に逐次処理され、成膜速度を速めることができる上に、前記する低圧プラズマに比してプラズマ処理ガス密度を高くとることができ、処理効率に優れた方法である。しかしながら、反面、電極等の設備コストが大きく、設備費用の圧縮、或いは処理能力アップによるコスト低減が実用化の鍵になっている。上記処理能力アップのために、更に、プラズマ密度を高め、或いは電界強度を高める等、エネルギーアップさせることが考えられるが、電界強度を高めた場合、アークによる大電流の集中放電のおそれがある。
【0013】
更に、上記電極は固定電極であるために、成膜するための混合ガスの流れに常時曝され、プラズマ放電が続けられているので、上記電極表面は、次第に汚染され、遂には放電状態に変化を及ぼし、形成される被膜や処理面の性能にバラツキを与え、著しい場合にはスジ、ムラ等の外見上判然と認知される欠点の発生に至るという問題点を有する。
【0014】
上記問題点に対して、電極汚れを抑えるためにロールを対向し、両ロールに基材密着させ、ガス漏れ防止機構(ガス漏れ防止スカート)とノズル先端を放電部に近づけ、サイド漏れ防止のため電極側面を取り囲むことで、製膜初期はもちろん連続製膜時もスジ、ムラがでないことが記載されて(例えば、特許文献8参照)いる。
【0015】
また、供給側では、ガスをプラズマ空間に効率よく流入させる、また不要なガスを放電空間に流入させない、排気側では、不要なガスを吸引しない、また、複数チャンバーでの異なる処理ガスを混合させないための方法などが記載されて(例えば、特許文献9参照)いる。
【0016】
しかしながら特許文献8に記載の手段においては、ノズル・ロール間に隙間があると、ガス漏れ改善はできても完全にはガス漏れをなくすことができない。また、隙間が変動するとガス漏れ量が変化し、膜厚変動が起こり、膜の均一性が得られない。連続製膜時は、振動、熱変動によるノズルのねじれ、歪み、隙間の変動が発生し、また、ガス漏れによる隙間への汚れ付着などにより、ガス漏れ状態が変動し、膜の均一性が得られない。などの問題点が残る。
【0017】
また特許文献9に記載の手段においても、回転電極とチャンバーに隙間があるため、回転により処理済ガスが供給側へ戻り繰り返し放電空間へ流入されてしまう。また、回転電極そのものに処理ガスが付着、製膜され処理時間とともに汚れが堆積する。排気側の吸引により、下側チャンバー内の不要なガスが吸引され、放電空間に流入してしまう。不要なガスを流さないためには、供給部と排気部の制御が必須でその制御バランスを維持するのが大変困難である。つまり、ガス供給から排気にいたるガス流路内に隙間があると不要なガスの混入が発生し、汚れやパーティクルまでも巻き込み目的の処理品質、製膜品質が得られない。また基材搬送速度や製膜条件に合わせてバランス調整が必要となり、連続的に安定した処理や製膜は困難である。更に、連続製膜時、振動、熱変動によるねじれ、歪み、隙間の変動が発生し、ガス漏れによる隙間への汚れ付着などにより、膜の均一性が得られない、という問題点がある。
【0018】
上述のような問題を解決するために、連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電手段を有する薄膜形成装置であって、処理ガスの逆流を抑止し、均一なガス流れにより良好な膜質を有する薄膜形成装置、薄膜形成方法が提案されて(例えば、特許文献10参照)いる。
【0019】
この様な、薄膜形成装置、薄膜形成方法を用いて、1本のロール状ウェブに薄膜を形成する際は、供給ガス流れに対してウェブ搬送方向が順行のローラと逆行のローラが存在するが、それぞれの位置で形成される膜の質が異なることが、本発明者の検討で明らかになっている。
【0020】
具体的に図1を用いて説明する。順行のローラ1A部で堆積される薄膜と比較して、逆行のローラ1B部で堆積される薄膜には、空間で発生した原料プラズマ化学蒸着法特有の課題である、対向する電極間のプラズマ空間内において発生したパーティクルが蒸着膜面に付着しやすいという課題があり、平滑な表面のガスバリアフィルムの形成に課題を残していた。結果として、このバリアフイルムを用いて素子化した有機EL素子は、ダークスポットの発生を十分に抑制することができなかった。(装置の詳しい説明は後述する。)
また、CVD法においては、薄膜形成に必要な原料を供給するための配管の設置が必要であるため装置コストへの影響があり、またプラズマ空間へ均一な原料供給がなされないと薄膜形成にムラや欠陥が生じやすいという課題を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平2−251429号公報
【特許文献2】特開平6−124785号公報
【特許文献3】特開2007−237588号公報
【特許文献4】特開2000−246830号公報
【特許文献5】特開平8−281861号公報
【特許文献6】特開2002−222691号公報
【特許文献7】特開2004−84027号公報
【特許文献8】特開2001−279457号公報
【特許文献9】特開2002−231642号公報
【特許文献10】特開2008−75098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、簡易化された装置を用いて、きわめて高いバリア性能を達成できるフィルムの製造方法を提供し得ることにあり、また該フィルムを有機光電変換素子用樹脂基材として用いることにあり、また、該有機光電変換素子用樹脂基材を用いて有機光電変換素子のデバイスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0024】
1.基材フィルム上に少なくとも1層のケイ素化合物を有する層を塗設した後に、一対の回転するロール電極からなる対向電極で搬送する工程と、該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させるプラズマ放電手段とを有する薄膜形成装置を用いて、該ケイ素化合物を有する層に酸化性ガス雰囲気下でプラズマ放電する工程とにより、ガスバリア性を有する薄膜とすることを特徴とする薄膜形成方法。
【0025】
2.前記対向電極間に放電ガスを供給することを特徴とする前記1記載の薄膜形成方法。
【0026】
3.前記対向電極間に放電ガスと反応ガスを供給することを特徴とする前記1記載の薄膜形成方法。
【0027】
4.前記1〜3のいずれか1項記載の薄膜形成方法により形成された薄膜上にプラズマ化学蒸着法でケイ素化合物を有する層を積層することを特徴とする薄膜形成方法。
【0028】
5.前記1〜4のいずれか1項記載の薄膜形成方法により形成されたことを特徴とするガスバリアフィルム。
【0029】
6.前記5記載のガスバリアフィルムを用いることを特徴とする有機光電変換素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、製造安定性に優れ、高いバリア性能を達成できるガスバリアフィルムを得ることができ、高いガスバリア性に優れた有機光電変換素子用樹脂基材用として有用なガスバリアフィルム、およびその製造方法、該基材を用いて有機光電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のロール電極を用いて基材を往復させて処理する薄膜形成装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明のロール電極を用いて基材を往復させて処理する別の薄膜形成装置を模式的に示した図である。
【図3】従来の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図5】p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図6】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(ガスバリアフィルム)
本発明のガスバリアフィルムについて説明する。
【0034】
ガスバリアフィルムは、樹脂フィルム支持体、例えばポリエチレンテレフタレート上に少なくとも一層のケイ素化合物を有する層を有している。また、本発明のガスバリアフィルムは、ケイ素化合物を有する層を二つ以上積層されていてもよい。
【0035】
ガスバリア性を有する層(以下ガスバリア層)
本発明におけるガスバリア層は、ケイ素原子および酸素原子を含有し、酸素及び水蒸気の透過を阻止する膜で、SiおよびOを含有する。構成する材料として具体的には、ケイ素を有する無機酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等のケイ素化合物を有する層を挙げることができる。この様な、ガスバリア層により、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過率が、10−4g/m/day以下、好ましくは10−5g/m/day以下であり、酸素透過率が0.01ml/m/day以下、好ましくは0.001ml/m/day以下であるガスバリア性に優れた樹脂フィルムを支持体とするフィルムが得られる。
【0036】
本発明のガスバリアフィルムの特に水蒸気透過度としては、有機光電変換素子等の高度の水蒸気バリア性を必要とする用途に用いる場合は、極わずかであっても、エネルギー変換効率が極端に低下す場合があるため、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過度は前記の値以下であることが好ましい。
【0037】
この様なガスバリア性を達成するためには、ガスバリア層表面の表面粗さRaが、1nm以下であることが好ましい。本発明のガスバリアフィルムは、平滑層上にケイ素化合物を塗布してケイ素化合物を有する層を積層形成することにより、平滑層の表面よりもさらに平滑なバリア層を得ることができる。それにより、有機光電変換素子などに用いられる場合には、不規則な突起がもたらす陽極と陰極のショートをきっかけとなるに性能の低下を少なくすることができる。
【0038】
(ガスバリア層の形成方法)
本発明のガスバリア層の形成方法としては、基材上に少なくとも1層のケイ素化合物を含有する塗布液を塗布後、酸化性ガス雰囲気下でプラズマ処理することにより、ケイ素酸化物を含有するバリア層を形成する方法が挙げられる。
【0039】
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚みは、乾燥後の厚みが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
【0040】
次に、塗布された膜をアニールする態様がこのましい。アニール温度は、好ましくは60℃〜200℃、さらに好ましくは70℃〜160℃である。アニール時間は、好ましくは30秒〜24時間程度、さらに好ましくは1分〜2時間程度である。このような範囲でアニールを行うことにより、ポリシラザンの一部が反応して分子が固定化され、良好な特性を有するガスバリアフィルムが得られる。具体的には、下記のようなメカニズムで分子が固定化されると推察される。なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30%RHから90%RH、より好ましくは40%RHから80%RHである。
【0041】
ケイ素酸化物のバリア層を形成するためのケイ素化合物の供給は、CVDのようにガスとして供給されるよりも、ガスバリアフィルム基材表面に塗布したほうがより均一で、平滑なバリア層を形成することができる。CVD法などの場合は気相で反応性が増した原料物質が基材表面に体積する工程と同時に、気相中で不必要なパーティクルよばれる異物が生成することは、よく知られているが、原料をプラズマ反応空間に存在させないことで、これらパーティクルの発生を抑制することが可能になる。
【0042】
本発明で用いることのできるケイ素化合物としては、好ましいものとして、パーヒドロポリシラザン、シルセスキオキサン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げるこができる。
【0043】
なかでも常温で固体である珪素化合物が好ましく、パーヒドロポリシラザン、シルセスキオキサンなどがより好ましく用いられる。酸化ケイ素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。これらを塗布する場合、塗布液と水分が反応するのを抑制するため、溶媒としてキシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ、ターペン等、水分を含有しにくいものを用いることが好ましい。
【0044】
シルセスキオキサンとしては、Mayaterials社製Q8シリーズのOctakis(tetramethylammonium)pentacyclo−octasiloxane−octakis(yloxide)hydrate; Octa(tetramethylammonium)silsesquioxane、Octakis(dimethylsiloxy)octasilsesquioxane、Octa[[3−[(3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]propyl]dimethylsiloxy)] octasilsesquioxane; Octaallyloxetane silsesquioxane、Octa[(3−Propylglycidylether)Dimethylsiloxy] Silsesquioxane; Octakis[[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl] dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[[2−(3,4−epoxycyclohexyl)ethyl] dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[2−(vinyl)dimethylsiloxy]silsesquioxane; Octakis(dimethylvinylsiloxy)octasilsesquioxane、Octakis[(3−hydroxypropyl)dimethylsiloxy] octasilsesquioxane、Octa[(methacryloylpropyl)dimethylsilyloxy]silsesquioxane Octakis[(3−methacryloxypropyl)dimethylsiloxy] octasilsesquioxane、および下記構造式の化合物が挙げられる。
【0045】
【化1】

【0046】
【化2】

【0047】
本発明のガスバリア層は、単層でも、複数の同様な層を積層してもよく、複数の層で、さらにガスバリア性を向上させることも出来る。
【0048】
(プラズマ処理)
本発明に用いられるプラズマ処理は、後述のプラズマCVD法における場合の原材料の供給を行わず、プラズマ状態になりやすい放電ガスを供給しながら、プラズマ放電処理を行う。
【0049】
反応ガスとして、酸化性を有する酸素を供給することで、酸化反応を進めることができる。放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0050】
具体的には、国際公開番号2007−026545号パンフレットに記載される様に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を印加することが好ましい。
【0051】
前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、前記第1の高周波電界の強さV1と、前記第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2 または V1>IV≧V2
を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上である。
【0052】
この様な放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来る。
【0053】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0054】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0055】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0056】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数および高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0057】
本発明に用いられるプラズマ放電処理することにより薄膜を形成する薄膜形成装置を図として例示し説明をするがこれらに限定されない。
【0058】
(薄膜形成装置)
図2は、本発明の製造方法に用いられる薄膜形成装置の一例で、ロール電極を用いて基材を搬送させて処理する薄膜形成装置を模式的に示した図である。この装置は一対のロール電極1Aとロール電極1Bを有し、これらのロール電極1Aと1Bにはプラズマ放電のための電圧を印加できる電源80が電圧供給手段81と82を介して接続されている。ロール電極1Aと1Bは、基材Fを巻き回しながら回転することができる回転電極である。放電部100は大気圧もしくはその近傍の圧力下に維持され、製膜室C内に放電ガスが供給され、放電部100においてプラズマ放電が行われる。図示されていないが、薄膜形成の反応を促進するためにロール電極1Aとロール電極1B間に酸素などの反応ガスを供給しても良い。本発明の薄膜形成方法の態様のひとつとして、パーヒドロポリシラザンを有する塗布液を塗工して、塗膜中あるいは塗設される基材表面から供給される酸素や水との反応で所望のバリア層が形成される場合には、反応ガスは供給されなくても良い。
【0059】
前工程または元巻きロールから供給される基材Fは、ガイドロール20によりロール電極1Aに密着され、同期して回転移送され、放電部100で大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理が施される。
【0060】
一旦処理された基材Fは折り返しロール(Uターンロールともいう)2A、2B、2C及び2Dを経て、逆方向に移送されロール電極1Bに抱かれて再び放電部100でプラズマ放電処理が施されガイドロール21を介して巻き取り、または次工程(何れも図示してない)に移送される。放電部100のロール電極1A及び1Bの側面側を遮蔽しても、また装置全体を囲い、全体を希ガス或いは処理ガスでみたしてもよい。
【0061】
本発明の比較として、特許文献10の薄膜形成装置、薄膜形成方法を用いて、1本のロール状ウェブにCVD法を用いて薄膜を形成する際は、供給ガス流れに対してウェブ搬送方向が順行のローラと逆行のローラが存在するが、それぞれの位置で形成される膜の質が異なり、順行のローラ部で堆積される薄膜と比較して、逆行のローラ部で堆積される薄膜には、空間で発生した原料プラズマ化学蒸着法特有の課題である、対向する電極間のプラズマ空間内において発生したパーティクルが蒸着膜面に付着しやすい。その結果、平滑な表面のガスバリアフィルムの形成が困難であり、このバリアフイルムを用いて素子化した有機EL素子は、高温、高湿下で保存された場合のダークスポットの発生を十分に抑制することができない。
【0062】
また、CVD法においては、薄膜形成に必要な原料を供給するための配管の設置が必要であるため装置コストへの影響があり、またプラズマ空間へ均一な原料供給がなされないと、薄膜形成にムラや欠陥が生じやすい。
【0063】
これに対して本発明は、薄膜の原料であるケイ素化合物を塗膜として供給されるため、均一性に優れ、かつプラズマ処理空間において、パーティクルの発生もなく、良好な質の薄膜を形成することができる。
【0064】
(ロール電極)
次に本発明に使用されるロール電極について説明する。ロール電極は、金属等の導電性母材でできており、その表面が固体誘電体で被覆されていることが望ましい。固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の金属酸化物あるいはチタン酸バリウム等の複合金属酸化物等を挙げることができる。特に好ましいものは、セラミックスを溶射後に無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体である。また、電極の金属等の導電性母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等を挙げることができるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、ライニング材としては、珪酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いという点でより好ましく用いられる。
【0065】
本発明に使用される電極は必要に応じて加熱あるいは冷却等の温度調整することが望ましい。例えばロールの内部に液体を供給して、電極表面の温度及び基材の温度を制御する。温度を与える液体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましい。基材の温度は処理条件によって異なるが、通常、室温〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは室温〜120℃とすることである。
【0066】
ロール電極の表面は、基材が密着して基材と電極とが同期して移送及び回転するので高い平滑性が求められる。平滑性はJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)及び中心線平均表面粗さ(Ra)として表される。本発明に使用するロール電極の表面粗さのRmaxは10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは7μm以下である。またRaは0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0067】
本発明において、ロール電極間の間隙は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的、電極の形状等を考慮して決定される。電極表面同士の距離は、プラズマ放電を均一に発生させるという観点から0.5〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mmである。本発明におけるロール電極間の間隙とは対向する電極表面が互いに最も接近している間隔をいう。また、ロール電極の場合には、間隙がロール電極の回転によっても一定であることが望ましい。具体的には、ロールが1回転した時にロール間の間隙の変動が±30%未満であることが好ましく、好ましくは±10%未満で、より好ましくは±5%未満であり、最も好ましくは±0である。ロール電極の間隙にある基材の幅方向の変動も上記と同様である。ロール電極の直径は10〜1000mmが好ましく、20〜500mmがより好ましく、30〜300mmが更に好ましい。
【0068】
本発明において、プラズマ放電を行う処理室は、電極と絶縁性の材質のフレームや容器で囲むことが好ましく、電極との絶縁がとれれば金属製のものを用いてもよい。例えば、金属製のものとしては、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けたものでもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性を持たせたものでもよい。またパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器で装置全体を囲うのも好ましい。この様な外側の囲いではなく、放電部、電極、基材搬送手段等の側面を局部的に囲むことも、処理ガスを適切に放電部に供給し、排ガスを排気することができるため、ガス濃度や組成を一定にでき、プラズマ放電処理を安定して行うことができ好ましい。
【0069】
本発明におけるプラズマ放電を発生させるための電圧を加える手段は、ロール電極の一方の電極に電源を接続し、もう一方の電極にアースを接地して、電圧を印加するようになっている。本発明における電源は、高周波電源が好ましく用いられる。またはパルス電源も使用できる。電源より電極に印加する電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧は0.5〜10kV程度が好ましく、また電源周波数としては1kHz〜150MHzに調整するが、特に100kHzを超え13.56MHz以下であると、安定した放電により均一な薄膜が得られ好ましい。その波形はパルス波であってもサイン波であってもよい。また、電極間の放電電流密度は0.01〜500mA/cmが好ましい。プラズマ放電処理の放電強度は、アーク放電も起こらず安定した効果的な処理を行うには、50W・min/m以上500W・min/m未満が好ましい。この範囲でプラズマ放電処理を行うことにより、処理の均一性を有し、ダメージもなく仕上げることができる。
【0070】
図3は、本発明の薄膜形成方法の比較としての従来の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0071】
プラズマ放電処理装置において、アンワインダ(巻き出し軸)700に取り付けられた巻き芯に巻かれた元巻き71から繰り出された基材フィルムFは、基材と対向して配置された加熱部材72により、基材フィルムを予め加温する余熱ゾーン72’を通過した後、放電部100に入る。
【0072】
余熱ゾーン72’は放電部にはいる前に付設される。放電部100において、基材フィルムは、90℃〜200℃程度に保持された状態で、プラズマ放電処理を受けるため、予め放電部に入る前に、余熱ゾーンを設けることで、急激な温度上昇による基材の収縮等、変形を避けられる。
【0073】
余熱ゾーンにおいて基材を加熱するための加熱部材72はその両側をマイカでサンドイッチした板状の電気ヒーター又はセラミックヒーターやシーズヒータ等が好ましく用いられる。
【0074】
放電部100は、円筒電極73上に配置された二つのニップローラ75、78の間にあって、円筒電極73およびこれと対向した電極74(此処では角型)間の空間からなり、該円筒電極をバックアップローラとした基材の搬入側のニップローラ75及び仕切板76とプラズマ放電処理容器77により、また搬出側のニップローラ78及び仕切板79により仕切られており、基材Fは、この放電部を、円筒電極が回転することで、円筒電極に接して搬送される。なお711、712はそれぞれ反応ガスの供給口(供給手段)、処理後の排ガスを排出する排出口(排出手段)であり、該反応ガス供給口より反応ガス(薄膜形成ガスまたは処理ガス)を供給しつつ、前記対向する第1、第2の電極即ち、ここにおいては、円筒電極73およびこれに対向する電極74の間に、電圧印加手段720により高周波電位を印加することで、電極間の放電部にプラズマ放電を発生させ、円筒電極73上を搬送される基材フィルム表面に薄膜を形成させ、また表面改質処理を施す。処理後の排ガスは、排出口712より排出される。
【0075】
円筒電極73、また角型の対向電極74等は導電性の金属質母材上に誘電体が被覆された構造を有する。即ち、それぞれ導電性の金属質母材上に誘電体としてセラミックスを溶射、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものが好ましい。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度の被覆があればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0076】
導電性の金属質母材としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0077】
対向する電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離で、均一な放電を行う観点から0.1〜20mmである。
【0078】
この大気圧プラズマ放電処理装置においては、対向する電極間に印加する高周波電圧は、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、処理ガスを励起してプラズマを発生させる。
【0079】
電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、200kHz以上である。
【0080】
また、電極間に供給する電力の上限値は、50W/cm以下である。下限値は、1.2W/cm以上である。
【0081】
なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0082】
高周波電源より印加電極に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV/cm程度で、上記のように電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。
【0083】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良い。
【0084】
印加電極に電圧を印加する電源としては、100kHz超〜150MHzの高周波電源であり、好ましくは、200kHz〜150MHzの高周波電源であり、特に好ましくは、800kHz〜15MHzのものである。
【0085】
次いで、これらプラズマ放電処理された基材は、被処理面がニップローラ78に接するのみで、放電部から外部に搬送され、直接、ワインダ(巻き取り軸)701に取り付けられた、巻き芯にロールとして巻き取られる。
【0086】
本発明の薄膜形成方法に用いられる前述の図1の薄膜形成装置と比較して図3の薄膜形成装置は、反応ガスの供給口(供給手段)、処理後の排ガスを排出する排出口(排出手段)の有無が大きな差異であり、該反応ガス供給口より反応ガス(薄膜形成ガスまたは処理ガス)を供給する際のガスの流れを均一に制御できなければ、均一な薄膜が達成できない。また、円筒電極73と角型の対向電極74の間で形成されるプラズマ空間で、薄膜形成と同時にパーティクルが発生するため、これが薄膜に付着する前に排出口より迅速に排出するために、多量のガス供給が必要になり、製造コストとして不利である。しかも、薄膜形成中に表面に付着するパーティクルを完全に無くすことは出来ないため、薄膜表面の平滑性が低下したり、有機EL素子に用いた場合にダークスポットの発生を引き起こす場合がある。
【0087】
(基材フィルム)
次に本発明のガスバリアフィルムで用いられる基材フィルムについて説明する。
【0088】
基材フィルムの支持体は、後述のバリア性を有するガスバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0089】
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。支持体の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0090】
また、本発明に係る樹脂フィルム支持体は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0091】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた樹脂フィルム支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0092】
本発明に用いられる樹脂フィルム支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0093】
また、本発明に係る樹脂フィルム支持体においては、蒸着膜を形成する前にコロナ処理、てもよい。
【0094】
さらに、本発明に係る支持体表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0095】
(平滑層)
本発明においては、薄膜を形成する基材フィルムの表面に、突起等が存在する透明樹脂フィルム支持体の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム支持体に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設け、平滑層にすることが好ましい。このような平滑層は、たとえば感光性樹脂を硬化させて形成される。
【0096】
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0097】
反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0098】
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0099】
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0100】
平滑層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、Raが、1nm以下であることが好ましい。この値よりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
【0101】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
【0102】
(ブリードアウト防止層)
基材フィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面にブリードアウト防止層を設けることが好ましい。
【0103】
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
【0104】
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0105】
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0106】
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0107】
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0108】
また本発明の平滑層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0109】
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0110】
また熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0111】
また電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
【0112】
また光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0113】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0114】
本発明におけるブリードアウト防止層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるガスバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0115】
(プラズマ化学蒸着法で積層されるケイ素化合物を有する層)
本発明のガスバリアフィルムは、前述の基材フィルム上に少なくとも1層のケイ素化合物を有する層を塗設した後に、一対の回転するロール電極からなる対向電極と、該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させるプラズマ放電手段とを有する薄膜形成装置を用いて、該ケイ素化合物を有する層を、ガスバリア性を有する薄膜に形成された面に、さらにスパッタリング法、イオンアシスト法、後述する真空または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して、ケイ素化合物を有する層が積層されて形成されたものであることが好ましく、特に大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い製膜方法であり好ましい。上記ケイ素化合物を有する層にプラズマCVDによりガスバリア層を追加形成することで、更に、ガスバリア性の高いガスバリアフィルムが、容易に形成出来る。
【0116】
スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法では、バリア性の高い膜を形成できる反面、製膜工程において、パーティクルと呼ばれる微粒子状の異物が発生し、ガスバリア層中あるいは表面に付着した欠陥を生じやすい欠陥がある。
【0117】
本発明のガスバリアフィルムは、この様な欠陥が生じても、前述のケイ素化合物を有する層の存在により、欠陥部からのガス透過を抑制することができ、より高いガスバリア性を実現できるものである。
【0118】
本発明におけるこれらのケイ素化合物を有する層の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、1〜2000nmの範囲内であることが好ましい。ケイ素化合物を有する層の厚さが、上記の範囲より薄い場合には、均一な膜が得られず、ガスに対するバリア性の向上を得られにくいからである。また、ケイ素化合物を有する層の厚さが上記の範囲より厚い場合には、ガスバリアフィルムにフレキシビリティを保持させることが困難であり、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因により、ガスバリアフィルムに亀裂が生じる等のおそれがあるからである。
【0119】
厚みがこれ以下であると膜欠陥が多く、充分な防湿性が得られない。また、厚みが大きい方が理論的には防湿性は高いが、余り大きいと内部応力が不必要に大きくなり、割れやすく好ましい防湿性が得られない。
【0120】
また、本発明においては、上記ケイ素化合物を有する層が、透明であることが好ましい。透明であることにより、ガスバリアフィルムを透明なものとすることが可能となり、EL素子の透明基板等の用途にも使用することが可能となるからである。ガスバリアフィルムの光透過率としては、例えば試験光の波長を550nmとしたとき透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0121】
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるケイ素化合物を有する層は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物等のケイ素化合物を有する層を、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属窒化炭化物など)も作り分けることができるため好ましい。
【0122】
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0123】
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール,エタノール,n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0124】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0125】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0126】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
【0127】
このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0128】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0129】
本発明に係るケイ素化合物を有する層においては、含有する無機化合物が、SiOxCy(x=1.5〜2.0、y=0〜0.5)または、SiOx、SiNyまたはSiOxNy(x=1〜2、y=0.1〜1)であることが好ましく、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、SiOxであることが好ましい。
【0130】
本発明に係るケイ素化合物を有する層が含有する無機化合物は、例えば、上記有機ケイ素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
【0131】
以上のように、上記のような原料ガスを放電ガスと共に使用することにより様々な無機薄膜を形成することができる。
【0132】
次いで、本発明のガスバリアフィルムの製造方法において、本発明に係るケイ素化合物を有する層の形成に好適に用いることのできる大気圧プラズマCVD法について、更に詳細に説明する。
【0133】
CVD法(化学的気相成長法)は、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の支持体表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものであり、このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、プラスチック支持体への製膜には使用することが難しいが一方、プラズマCVD法は、支持体近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に支持体上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカルなどの励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。したがって、無機物を製膜する支持体についても低温化することができ、樹脂フィルム支持体上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
【0134】
またこの方法によれば、樹脂フィルム上に前記ケイ素化合物を有する層を形成させたときの膜密度が緻密であり、安定した性能を有する薄膜が得られる。
【0135】
次いで、大気圧或いは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いた前記ケイ素化合物を有する層の積層方法の一例について述べる。
【0136】
プラズマ放電処理装置においては、ガス供給手段から、前記金属を含む原料ガス、分解ガスを適宜選択して、またこれらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合してプラズマ放電発生装置にガスを送りこむことで前記の層を得ることができる。
【0137】
放電ガスとしては、前記のように窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0138】
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
【0139】
本発明のガスバリアフィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
【0140】
本発明のガスバリアフィルムは、例えば有機光電変換素子に用いることができる。このガスバリアフィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に有機光電変換素子層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて前記ガスバリアフィルムと周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子層を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることが出来る。
【0141】
有機光電変換素子用の樹脂支持体はこの様にして形成されたガスバリアフィルムのケイ素化合物を有する層上に、透明導電性膜を形成することによって得られる。透明導電膜は有機光電変換素子を形成したとき陽極となる導電膜である。
【0142】
透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
【0143】
透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0144】
次いでこれらガスバリアフィルム、またこれに透明導電膜が形成された有機光電変換素子用の樹脂支持体を用いた有機光電変換素子について説明する。
【0145】
(封止フィルムとその製造方法)
本発明のガスバリアフィルムは、本発明に係る有機光電変換素子の封止フィルムとして、用いることが好ましい。また、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリアフィルム、例えばプラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なケイ素化合物を有する層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリアフィルム等を本発明に係る有機光電変換素子の封止フィルムとして用いることが出来る。また特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取りだし側のガスバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合封止フィルムとして好ましい。
【0146】
本発明において金属箔とはスパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔またはフィルムを指す。
【0147】
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
【0148】
金属箔の厚さは6〜50μmが好ましい。6μm未満の場合は、金属箔に用いる材料によっては使用時にピンホールが空き、必要とするバリア性(透湿度、酸素透過率)が得られなくなる場合がある。50μmを越えた場合は、金属箔に用いる材料によってはコストが高くなったり、有機光電変換素子が厚くなりフィルムのメリットが少なくなる場合がある。
【0149】
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔において樹脂フィルムとしては、機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、さらに塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
【0150】
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、ガスバリアフィルム同士の封止は、フィルム膜厚が300μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのとインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
【0151】
(有機光電変換素子の封止)
本発明では、本発明のガスバリアフィルム上に透明導電膜を形成し、作製した有機光電変換素子用樹脂支持体上に、有機光電変換素子各層を形成した後、上記封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
【0152】
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
【0153】
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にケイ素化合物を有する層を形成し、このケイ素化合物を有する層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生したり、それに伴う電蝕が発生し、これによってダークスポットが発生することがある。
【0154】
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
【0155】
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。ただし接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0156】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0157】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0158】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
【0159】
(有機光電変換素子および太陽電池の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクへテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
【0160】
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発光層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発光層/電子輸送層/陰極
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを形成していても良いし、1層の内部で混合された状態となっているバルクへテロジャンクションを形成しても良いが、バルクへテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
【0161】
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であっても良い。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であっても良い。
【0162】
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を、図を用いて説明する。
【0163】
図4は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図4において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極(一般に陽極)12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び対電極(一般に陰極)13が順次積層されている。
【0164】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対電極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対電極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0165】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0166】
図4において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対電極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対電極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対電極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対電極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対電極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0167】
なお図4には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0168】
さらに好ましい構成としては、前記光電変換部14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図5)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、14i層単体であるが、p型半導体材料単体からなる14p層、およびn型半導体材料単体からなる14n層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0169】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図4は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0170】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0171】
(有機光電変換素子材料)
(p型半導体材料)
本発明の発電層(バルクへテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0172】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0173】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0174】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0175】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0176】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
【0177】
また、発電層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いても良い。
【0178】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0179】
(n型半導体材料)
本発明のバルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0180】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0181】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0182】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクへテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層を、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0183】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006019270号公報等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0184】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクへテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0185】
また電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0186】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0187】
(透明電極(第1電極))
本発明の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0188】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0189】
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0190】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0191】
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤ、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0192】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0193】
(中間電極)
また、前記(v)(または図6)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0194】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0195】
(金属ナノワイヤ)
本発明の導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが好ましい。
【0196】
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0197】
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0198】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0199】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0200】
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに、金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
【0201】
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0202】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0203】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0204】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0205】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0206】
(製膜方法・表面処理方法)
(各種の層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクへテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0207】
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0208】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0209】
発電層(バルクヘテロジャンクション層)は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0210】
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0211】
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0212】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【実施例】
【0213】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0214】
実施例1
〔有機光電変換素子1の作製〕
(基材フィルム)
基材フィルムとして、両面に易接着加工された125μm厚みの、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO)の基材を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0215】
(平滑層およびブリードアウト防止層を有するフィルムの作製)
以下の形成方法により、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成し、ガスバリアフィルム用基材とした。
【0216】
(ブリードアウト防止層の形成)
上記基材フィルムの片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;0.8J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0217】
(平滑層の形成)
続けて上記基材フィルムの反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;0.8J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0218】
平滑層を形成後は、55℃、80%RHの環境で7日間調湿処理を行った後に、結露しないように常温、常湿(23℃45℃%RH)環境に取り出した。
【0219】
このときの表面粗さRaは0.4nmであった。
【0220】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を20回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0221】
(ガスバリアフィルムの作製)
(バリア層の形成)
次に、上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた試料の平滑層の上にケイ素化合物を有する層を以下に示す条件で、形成した。
【0222】
(ケイ素化合物を有する層の塗布)
パーヒドロキシポリシラザン(PHPS)(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20)の20質量%ジブチルエーテル溶液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の膜厚が、0.2μmとなるように塗布、乾燥した試料を得た。
【0223】
(プラズマ処理)
得られた試料を、下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア性を有する薄膜(ガスバリア層)(ケイ素化合物を有する層)を形成してガスバリアフィルム1を作製した。
【0224】
図2で示されるプラズマ放電処理装置によりプラズマ処理を行った。放電ガスである窒素ガスを充填した製膜室Cの中において、巻き出し工程または元巻きロールから供給された基材Fは最初にガイドロール20を経て、ロール電極1Aに抱かれ密着して放電部100でプラズマ放電処理が施され、ついで、折り返しローラ(Uターンローラ)2A〜2Dを経てロール電極1Bに抱かれて密着して放電部100で二度目の処理が施される。処理された基材Fはロール電極1B上をその回転と共に移送され、ガイドロール21を経て、巻き取り工程に移送される。なお、80は電源であり、81、82は電圧供給手段である。また製膜時の支持体保持温度は、120℃とし、塗工面をプラズマ処理した。
【0225】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0226】
放電ガス:Nガス
低周波側電源電力:80kHzを3W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
プラズマ処理後のRaは0.5nmであった。
【0227】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を20回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0228】
(有機光電変換素子の作製)
上記作製した、ガスバリアフィルム1を、あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返したものに、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0229】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
【0230】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
【0231】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
【0232】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、以下の封止方法により封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を作製した。
【0233】
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、屈折処理を行っていないガスバリアフィルム1の2枚を用い、ガスバリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した。上述した方法によって得られた有機光電変換素子を、上記接着剤を塗布した2枚のガスバリアフィルム1の接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、有機光電変換素子1とした。
【0234】
〔有機光電変換素子2の作製〕
ガスバリアフィルム1のケイ素化合物を有する層にプラズマ処理を行ったガスバリア性を有する薄膜上に、図3の装置を用いて、さらにCVD(化学蒸着法)にて下記のケイ素化合物を有する層を積層して、ガスバリアフィルム2を作製した。
【0235】
膜厚は50nmである。また製膜時の支持体保持温度は、120℃とした。
【0236】
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に原料及び電力を投入し以下のように薄膜を形成した。
【0237】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0238】
〈ケイ素化合物を有する層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し7%
反応ガス2:TEOSを全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:100kHzを3W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cmで変化
誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0239】
また、円筒電極は直径500mm、幅500mm、対向する角型電極は、放電面積500cmのものを用いた。また、ニップローラはシリコーンゴム製(JIS硬度70)で円筒電極と同じ幅で、径75mmのものを用いた。
【0240】
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム2に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子2を作製した。
【0241】
〔有機光電変換素子3の作製〕
ガスバリアフィルム1で用いたパーヒドロキシポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液を、下記オクタ(ヒドロジメチルシロキシ)シルセスキオキサンの10%トルエン溶液に変更した以外は同様にして、ガスバリアフィルム3を作製した。
【0242】
【化3】

【0243】
ワイヤレスバーにて、乾燥後の膜厚が、0.3μmとなるように塗布、乾燥した試料を得た。ガスバリアフィルム1と同様に良好なガスバリア性のガスバリアフィルム3を得た。ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム3に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子3を作製した。
【0244】
〔有機光電変換素子4の作製〕
ガスバリアフィルム1のガスバリア層形成工程を2回繰り返して、2層からなるガスバリア層を形成した以外は同様にしてガスバリアフィルム4を作製した。
【0245】
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム4に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子4を作製した。
【0246】
〔有機光電変換素子5の作製〕
ガスバリアフィルム2の製造工程において、ケイ素化合物を有する層にプラズマ処理を行ったガスバリア性を有する薄膜の形成工程を省いた以外は有機光電変換素子5の作製と同様にして、ガスバリアフィルム5を作製した。
【0247】
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム5に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子5を作製した。
【0248】
〔有機光電変換素子6の作製〕
図1の装置を用い、ケイ素化合物を有する層塗布液の塗布を行わず、代わりにCVD(化学蒸着法)にて下記のケイ素化合物を有する層を積層した以外は同様にしてガスバリアフィルム6を作製した。
【0249】
ここで誘電体は対向するロール電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0250】
ロール電極は直径500mm、幅500mm。また、ニップローラ20、21はシリコーンゴム製(JIS硬度70)で円筒電極と同じ幅で、径100mmのものを用いた。
【0251】
製膜後の基材は、放電処理室から、外気から放電処理室を隔てる隔室を経て排出された後、ワインダにより巻き取った。
【0252】
基材として、アクリル系クリアハードコート層付きPENフィルム(厚み150μm、幅500mm、150mのロール)を用い、これを巻き出し軸上にセットし、元巻きロールから基材を繰り出した。移送されてくる基材上に以下のように、それぞれ図1で示されるプラズマ放電処理工程を有するプラズマ放電処理装置において、放電部100を用いて、基材上に密着層/ケイ素化合物を有する層をこの順に薄膜形成し積層した。各膜厚は、密着層が15nmで、ケイ素化合物を有する層は40nmとなるよう、条件を調整した。また製膜時の基材保持温度は、120℃とした。
【0253】
各層の形成条件(高周波側電源の電力、薄膜形成ガス)は以下の通りである。
【0254】
〈ケイ素化合物を有する層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し5%
反応ガス2:ヘキサメチルジシラザンを全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:80kHzを10W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cmで変化
〈密着層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:水素ガスを全ガスに対し1%
反応ガス2:テトラエトキシシラン(TEOS)を全ガスに対し0.5%
低周波側電源電力:80kHzを10W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを5W/cm
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム6に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子6を作製した。
【0255】
〔有機光電変換素子7の作製〕
ガスバリアフィルム6で用いたケイ素化合物を有する層ガス組成を下記に変更した以外はガスバリアフィルム6と同一の条件でガスバリアフィルム7を作製した。
【0256】
〈ケイ素化合物を有する層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し5%
反応ガス2:テトラエトキシシラン(TEOS)を全ガスに対し0.1%
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム7に変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子7を作製した。
【0257】
〔有機光電変換素子8の作製〕
ガスバリアフィルム1におけるプラズマ処理を、下記UVオゾン処理に変更した以外は同様にして、ガスバリアフィルム8を作製した。
【0258】
乾燥剤を通じた窒素4:酸素1の比率の混合ガスを導入し、塗膜面から4mmの距離からXe2エキシマランプを用いて中心波長172nm、出力25mW/cmの紫外光照射を180分行った。反応時の温度は30℃に保持した。照射終了後、オゾンを含む酸素ガスを導入した。温度を190℃に保持し、酸素ガス中のオゾン濃度は、80g/Nm、ガス流量は、2L/分とした。この状態で4時間加熱処理を行った。
【0259】
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム8変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子8を作製した。
【0260】
〔有機光電変換素子9の作製〕
ガスバリアフィルム1で用いた、支持体のブリードアウト防止層および平滑層の形成後の、55℃、80%RHの環境で7日間調湿処理を行わず、常温、常湿(23℃45℃%RH)環境で3日間保管したものを基材フィルムとして用いた。
【0261】
また、プラズマ処理は図1の装置を用い、反応ガスである酸素ガスをロール電極間に全ガスに対し5%の濃度で供給を行った以外は、ガスバリアフィルム1と同様にして、ガスバリアフィルム9を作製した。
【0262】
ガスバリアフィルム1をガスバリアフィルム9変えた以外は有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子9を作製した。
【0263】
上記のようにして、得られた、ガスバリアフィルム1〜9及び有機光電変換素子1〜9について、以下の評価を行い、結果を表1に示す。
【0264】
(評価)
<水蒸気透過率の評価>
以下の測定方法により評価した。
【0265】
(装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments社製DI3100。
【0266】
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)。
【0267】
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返したガスバリアフィルム1〜9のケイ素化合物を有する層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
【0268】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0269】
なお、ガスバリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
【0270】
5:1×10−5g/m/day未満
4:1×10−5g/m/day以上、1×10−4g/m/day未満
3:1×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
2:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
1:1×10−2g/m/day以上。
【0271】
<有機光電変換素子耐久性の評価>
《エネルギー変換効率の評価》
100回屈曲を繰り返したフィルム試料1〜9から作製した光電変換素子1〜9について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
(式1)PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
【0272】
強制劣化試験後の変換効率/初期変換効率の比
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
それぞれの評価結果を表1に示す。
【0273】
(薄膜膜面の観察)
光学顕微鏡で100倍の倍率で、100μm角の領域に観察される、1μm以上の異物の個数をカウントした。
【0274】
弱粘着シートやエアガン等で容易に除去可能な膜面に載っているだけの異物は除外した。
【0275】
5:2個以下
4:3個〜6個
3:7個〜20個
2:21個〜100個
1:100個以上。
【0276】
【表1】

【0277】
表1から明らかなように、本発明のガスバリアフィルムは、折り曲げ耐性に優れ、水蒸気透過率も低く、更に、本発明のガスバリアフィルムを用いて作製した有機光電変換素子は、ダークスポットが発生し難い。
【符号の説明】
【0278】
1A、1B ロール電極
2A、2B、2C、2D 折り返しロール(Uターンロール)
20、21 ガイドロール
30 処理ガス供給部
32 ブレード
40 排出口
80 電源
81、82 電圧供給手段
100 放電部
F 基材
G 処理ガス
G′ 処理後のガス
71 元巻き
72 加熱部材
72’ 余熱ゾーン
73 円筒電極
74 電極
75、78 ニップローラ
76、79 仕切板
100 放電部
711 供給口
712 排出口
713 テンションメータ
714 EPCセンサ
715 ゴムローラ
716 粘着ローラ
700 アンワインダ(巻き出し軸)
701 ワインダ(巻き取り軸)
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 透明電極(陽極)
13 対電極(陰極)
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に少なくとも1層のケイ素化合物を有する層を塗設した後に、一対の回転するロール電極からなる対向電極で搬送する工程と、該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させるプラズマ放電手段とを有する薄膜形成装置を用いて、該ケイ素化合物を有する層に酸化性ガス雰囲気下でプラズマ放電する工程とにより、ガスバリア性を有する薄膜とすることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記対向電極間に放電ガスを供給することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記対向電極間に放電ガスと反応ガスを供給することを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の薄膜形成方法により形成された薄膜上にプラズマ化学蒸着法でケイ素化合物を有する層を積層することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の薄膜形成方法により形成されたことを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項6】
請求項5記載のガスバリアフィルムを用いることを特徴とする有機光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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